説明

移動体に筐体が固定される電子機器の筐体取外し検出装置

【課題】製造コストが安く、信頼性の高い盗難や違法操業等の不正を防止するための電子機器の筐体取外し検出装置を提供する。
【解決手段】移動体の導電性保持部材に一対の導電性連結部材で固定される電子機器の筐体取外し検出装置であって、前記連結部材と電気的に接続される1対の電極9c、9c間の導通検出手段と、情報発信手段とを備え、前記導通検出手段が前記電極9c、9c間の非導通を検出すると、前記情報発信手段が前記電子機器のIDを含む筐体取外しの情報を発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船舶や自動車等の移動体の電子機器に係わり、特に、その筐体取外し検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から船舶や自動車等の移動体には自位置発信装置やナビゲーション装置等の電子機器が利用されている。このような電子機器は盗難防止機能や不正使用防止機能を備えることが望ましい。特開2002−62145号公報に開示されたナビゲーション装置は、電源オフ時に現在の位置情報を記憶部4に記憶させておき、次に、電源をオンとしたときに現在の位置情報を先に記憶した位置情報と比較し、これらが不一致であればナビゲーション動作を行わないように構成している。
【0003】
このような構成によりナビゲーション装置を車両から取り外して他の車両に取り付けて使用としても、ナビゲーション動作が行われないため、ナビゲーション装置として利用できない。このようなナビゲーション装置の作用が知られると、盗難防止の効果が得られる。
【0004】
この特開2002−62145号公報に開示されたナビゲーション装置は、盗難防止のために現在の位置情報を保存する手段、次に、電源をオンとしたときの位置情報を先に記憶した位置情報と比較する手段およびナビゲーション動作を不作動とする手段が必要となるために、装置が複雑となり製造コストが高くなるという問題があった。さらに、盗難があったときに、盗難時にそれを報知することができないという問題もある。
【0005】
図6および図7に従来の船舶に用いられていた自位置発信装置を示す。この自位置発信装置20は、船舶に取り付けられ、自動的に船舶の自位置を発信する。すなわち、自位置を特定するためのGPS装置を備えており、自位置を示す信号を衛星を介して監視している監視基地局に発信する。また、同時に固有のIDを持っており、IDも同時に発信する。
【0006】
自位置発信装置20の筐体には検出スイッチ21が設けられており、筐体が保持金具22にボルト23で固定されると検出スイッチ21がオンとなり、この状態で自位置発信装置20は正常に動作する。図6(a)は自位置発信装置20が保持金具22に取付けられる前の状態を示しており、このとき検出スイッチ21のアクチュエータは筐体から突出して検出スイッチ21はオフとなっている。図6(b)は自位置発信装置20が保持金具22に取付られた状態を示しており、このとき検出スイッチ21のアクチュエータは保持金具22により筐体内に押し込まれ検出スイッチ21はオンとなっている。
【0007】
図7に示すように、自位置発信装置20が保持金具22から外されると、検出スイッチ21のアクチュエータは筐体から突出して検出スイッチ21はオフとなる。検出スイッチ21がオフとなると、自位置発信装置20は保持金具22から外された情報とIDを発信する。領海侵入等の違法操業はこのようにして監視される。
【0008】
上記図6および図7に示す従来の自位置発信装置は検出スイッチを用いるため、部品コストや検出スイッチ取付けのため組立てコストが掛かるという問題があった。また、検出スイッチ不良により信頼性が損なわれるという問題もあった。
【0009】
又、検出スイッチが外部から見える場所に設けられているため、自位置発信装置を取り外して違法操業しようとするとき、検出スイッチに細工して領海侵入等の違法操業が発覚しないようにすることも可能であった。
【特許文献1】特開2002−62145号公報、段落0019〜段落0026、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、製造コストが安く、信頼性の高い盗難や違法操業等の不正を防止するための電子機器の筐体取外し検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の電子機器の筐体取外し検出装置は、移動体の導電性保持部材に一対の導電性連結部材で固定される電子機器の筐体取外し検出装置であって、前記連結部材と電気的に接続される1対の電極間の導通検出手段と、情報発信手段とを備え、前記導通検出手段が前記電極間の非導通を検出すると、前記情報発信手段が前記電子機器のIDを含む筐体取外しの情報を発信するものである。
【0012】
また、この発明の電子機器の筐体取外し検出装置は、移動体の導電性保持部材に一対の導電性連結部材で固定される電子機器の筐体取外し検出装置であって、前記連結部材と電気的に接続される1対の電極間の導通検出手段と、情報発信手段とを備え、前記導通検出手段が前記電極間の導通を検出している間は前記情報発信手段は定期的に情報を発信しており、前記導通検出手段が前記電極間の非導通を検出すると、前記情報発信手段が前記情報の発信を停止するものである。
【0013】
また、前記各電子機器の筐体取外し検出装置において、電子機器がGPS受信装置を備え、前記GPS受信装置で取得した自位置のデータを前記IDを含む筐体取外しの情報と共に発信し、または情報の発信を停止するものである。
【0014】
また、前記各電子機器の筐体取外し検出装置において、船舶に取り付けられる自位置発信装置に適用されるものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の移動体に筐体が固定される電子機器の筐体取外し検出装置によれば、信頼性の高い盗難や違法操業等の不正を防止するため情報が得られ、しかも製造コストが安い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1はこの発明の実施例1である位置発信装置11を示すブロック図、図2は同位置発信装置11を示す断面図、図3は同位置発信装置11を図2の断面と直角方向の断面を示す断面図である。
【0018】
図1〜図3に示す制御部2はプリント基板に実装された電子部品で構成されており、装置全体を制御する。GPSモジュール3はGPS用人工衛星から発信した信号がアンテナ4を介して入力され、自位置信号を算出してその信号を制御部2に出力する。
【0019】
制御部2は、筐体取外し検出装置9と接続されており、検出装置9がオンであるときには、GPSモジュール3から得られた自位置信号と装置固有のIDを定期的に衛星通信モジュール5に出力する。
【0020】
衛星通信モジュール5は制御部2からの入力された自位置信号と装置固有のIDにより発信信号を生成して電力増幅して衛星通信アンテナ6から電波として発信する。この電波は通信衛星を介して船舶監視局に送信される。
【0021】
筐体取外し検出装置9がオフとなると、制御部2は位置発信装置の筐体が取外されたことを示す信号と自位置信号およびIDを前記と同様に船舶監視局に送信する。バッテリ7は制御部2、GPSモジュール3およびGPSモジュール3に電力を供給する。制御部2は、自位置信号をコネクタ8に出力しており、コネクタ8に外部機器である表示装置10が接続されているときには、表示装置10に地図画面と自位置とが表示される。
【0022】
次に、筐体取外し検出装置9の構造を図4をも参照して説明する。上記した制御部(プリント基板)2、GPSモジュール3、GPSアンテナ4、衛星通信モジュール5、衛星通信アンテナ6およびバッテリ7は図2および図3で示すように不導体樹脂製の下側筐体1bと上側筐体1aとがボルト23、23…で締着して形成される筐体1に収容される。コネクタ8は下側筐体1bに形成されている。
【0023】
筐体取外し検出装置9は図4に示すインサートナット9a、ボルト9bおよびワッシャ9cにより形成されている。インサートナット9aは下側筐体1bに形成されたボス1c内に埋めこれまるようにインサート成形されている。このインサートナット9a、9aは夫々のボス1c、1cに2個埋め込まれている。
【0024】
これらのインサートナット9a、9aの上側にワッシャ9c、9cを介してボルト9b、9bがねじ込まれる。ワッシャ9c、9cは夫々コード9d、9dを介して制御部2を構成するプリント基板の2か所の導電膜パターンに接続さることにより夫々閉回路を形成する2個の電極となっている。
【0025】
インサートナット9a、9aの下側に従来例で用いられた保持金具22の穴を挿通するボルトがねじ込まれることにより、下側筐体1bが保持金具22に固定されると共に、インサートナット9a、9a及びおよびボルトと保持金具22とでワッシャ9c、9cが導通状態となる。
【0026】
下側筐体1bが保持金具22から外されると、ワッシャ9c、9c間が非導通状態となり、筐体9が保持金具22から外されたことが検出される。このように簡単な構成により筐体9が外されたことを確実に検出する筐体取外し検出装置9を構成できる。
【実施例2】
【0027】
図5はこの発明の実施例2である位置発信装置の部分を示す断面図である。この例では、実施例1の図4で説明した筐体取外し検出装置9が図5で示す筐体取外し検出装置で置き換えられている。具体に説明すると、実施例1のワッシャ9cが、プリント基板2と置き換えられている。
【0028】
そして、実施例1と同様のインサートナット9aにプリント基板2の穴を挿通するボルト9bがねじ込まれる。プリント基板2の穴の周囲には2個の電極を夫々形成する導電膜パターンが設けられている。他の構成は実施例1のものと同様であり、このような構成によも筐体取外し検出装置を得ることができる。この例は実施例1で用いられたプリント基板2の導体膜に接続されるワッシャ9c、9cが不要となるため、組立て工程が簡単となる。
【0029】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、筐体取外し検出装置9がオフとなると、定期的に発信していた位置情報等の発信を停止するようにしてもよい。
【0030】
また、車載用ナビゲーション装置にこの発明を適用して車載用ナビゲーション装置が車両から取り外されると、その情報を携帯電話機等を介して発信することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施例1である位置発信装置を示すブロック図である。
【図2】同位置発信装置を示す断面図である。
【図3】同位置発信装置を図2の断面と直角方向の断面を示す断面図である。
【図4】同位置発信装置の部分を示す断面図である。
【図5】この発明の実施例2である位置発信装置の部分を示す断面図である。
【図6】図6(a)は従来の位置発信装置の取付前の状態を示す側面図、図6(b)は同位置発信装置の取付状態を示す側面図である。
【図7】同位置発信装置の取外し状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 筐体、1a 上側筐体、1b 下側筐体、1c ボス
2 制御部(プリント基板)
3 GPSモジュール
4 GPSアンテナ
5 衛星通信モジュール
6 衛星通信アンテナ
7 バッテリ
8 コネクタ
9 筐体取外し検出装置、9a インサートナット、9b ボルト、9c ワッシャ
9d コード
10 表示装置
11 位置発信装置
20 位置発信装置
21 検出スイッチ
22 保持金具
23 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の導電性保持部材に一対の導電性連結部材で固定される電子機器の筐体取外し検出装置であって、前記連結部材と電気的に接続される1対の電極間の導通検出手段と、情報発信手段とを備え、前記導通検出手段が前記電極間の非導通を検出すると、前記情報発信手段が前記電子機器のIDを含む筐体取外しの情報を発信する電子機器の筐体取外し検出装置。
【請求項2】
移動体の導電性保持部材に一対の導電性連結部材で固定される電子機器の筐体取外し検出装置であって、前記連結部材と電気的に接続される1対の電極間の導通検出手段と、情報発信手段とを備え、前記導通検出手段が前記電極間の導通を検出している間は前記情報発信手段は定期的に情報を発信しており、前記導通検出手段が前記電極間の非導通を検出すると、前記情報発信手段が前記情報の発信を停止する電子機器の筐体取外し検出装置。
【請求項3】
GPS受信装置を備え、前記GPS受信装置で取得した自位置のデータを前記IDを含む筐体取外しの情報と共に発信し、または情報の発信を停止する請求項1または2の電子機器の筐体取外し検出装置。
【請求項4】
船舶に取り付けられる自位置発信装置に利用される請求項1から3のいずれかに記載した電子機器の筐体取外し検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−193393(P2009−193393A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34037(P2008−34037)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】