説明

移動体通信システムでの自動IPトラフィック最適化

移動体通信環境におけるきめ細かいサービス品質の実施のためのシステムおよび方法は、Auto−IP Policy Decision Point(220)を使用して、様々なネットワーク状態に対応してどのトラフィック最適化アクションを取るべきかを決定する。Auto−IP PDP(220)は、入力としてGインターフェイスプローブ(230)からの情報を使用して、IPデータフローのユーザの識別を決定する。情報はネットワーク輻輳に関する無線アクセスネットワーク(RAN)ネットワーク管理システム(240)からのものである。セルのトラフィック情報は、リアルタイムのトラフィック情報をn次元のトラフィックモデルにマッピングするトラフィック分析および処理エンジン、Auto−IP PDP(220)に渡される。自動ポリシー決定案内アルゴリズムは、n次元トラフィックモデル上で実行され、人間の介入無しにトラフィックおよびセルの輻輳状態に基づいてポリシーを選択する。さらに、新しいポリシーが既存のポリシーと一致することを確認するために整合性のチェックが行われる。ポリシー決定の結果は、トラフィック問題がRANで起こる場所とは異なるネットワークG(151)のある点でネットワークに作用するAuto−IP Traffic Optimizer(210)に転送される。Auto−IP Traffic Optimizer(210)は、トラフィックシェーピング、TCPウィンドウクランプまたは他のトラフィック最適化手順をセルごとに実行することによってAuto IP−PDP(220)の決定を行う。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワークにおけるデータサービスの提供に関する。より詳細には、本発明は、音声サービスやデータサービスを送信するのに現在の無線ネットワークを効率的に使用できるようにするための、ネットワーク構成の動的管理およびネットワークトラフィックの自動最適化のための方法およびシステムに関する。無線アクセスネットワーク向けのトラフィックに、トラフィックシェーピングなどの様々な最適化技術を選択的に適用することによって、そのセルにおける全体的な負荷を低減し、次いでネットワーク性能を向上させることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
第2世代(2G)モバイルネットワークなどの通信システムにおいて、通信容量の制約は、ユーザ当たりの平均収益の目減りをもたらし、それが、携帯電話会社(mobile operator)に、それらのネットワークおよびサービスの第3世代(3G)ネットワークへのアップグレードを検討させる働きかけとなっている。しかし、インターネットバブルがはじけたことに加えて、データサービスに対する顧客の反応が比較的鈍いことが、より慎重な設備投資、およびそれに続く3Gの配置の延期の一因となっている。ほとんど大部分の携帯電話会社は、現在、データサービスを提供するのに、汎用パケット無線サービス(GPRS)、GSM展開用機能強化データ(Enhanced Data for GSM Evolution:EDGE)、符号分割多重接続(CDMA)無線伝送技術(1xRTT)など、中間の2.5世代ネットワーク技術の使用にまだ依然として依存している。
【0003】
3Gネットワークの構築の遅れと、無線送信機をより多く導入することへの嫌気は、限られた無線リソースをより効率的に使用する方法を見つけることが望ましいという状態にしている。同時に、移動電話(モバイル)需要者は、より多くのサービスおよびより高いサービス品質を要望している。携帯電話会社は、失敗した無線アクセスプロトコル(「WAP」)に関連付けられているような負のユーザの使用体験(ユーザエクスペリエンス)を作り出すのも慎重に避けなければならない。これらのすべての努力目標は、2.5Gネットワークを最適化するための斬新な解決策の機会につながり得る。
【0004】
無線アクセスネットワーク(RAN)のリソース(資源)の不足は、無線ネットワークのデータサービスの品質に重大な影響を与え、その受け取りに悪影響を与える可能性がある。無線2.5Gデータネットワークは、基本的に、オーバーレイ(重層)無線ネットワークである。無線リソースの共有は、音声およびデータの両方に同じ無線機器を使用することができながら、大規模な設備投資無しに無線データサービスの導入を可能にするので望ましい。しかし、「良好な」音声品質を満たすために、平均して、移動体通信用グローバル方式(Global System for Mobile Communications:GSM)モバイルシステムにおける時分割多元接続(TDMA)タイムスロットの半分が音声によって使用されていることがわかる。GSMシステムでは、音声は、通常データを先取りし、したがって、データを運ぶのに使用できるTMDAスロットは半分未満である。この状況は、ピークの音声利用時間中、より悪くなる。
【0005】
モバイル環境において、最大の性能障害(パフォーマンス・ボトルネック)は、無線アクセスネットワーク(RAN)で起こる。RANをアップグレードし、無線容量を増やすための大規模な設備投資を行うことを引き延ばすと、RANで輻輳(回線混雑)が起こることは避けられない。輻輳が起こったときには、一部の顧客のトラフィックに、他顧客のトラフィックと比べて異なる扱いを与えることが望ましい。差別化サービス(Differentiated service:差別的サービスとも称されている)とは、より多くのネットワークリソースをプレミアム(割増価格)の(または優先の)顧客のセッションに提供したり、または劣化が避けられないときには、特定のトラフィックに対してより高い優先順位を与えたりすることを意味している。差別化サービスの提供には、サービス品質(QoS)スキーム(仕組み)が必要である。しかし、2.5G無線ネットワークでは、無線ネットワークにおける明確なQoS制御は存在しない。3G/UMTSネットワークでは、QoSは部分的に取り組まれているが、大規模な3Gの配備は、数年間期待できない。
【0006】
法人顧客など一部の顧客は投資に対する大きい回収(収益)を非法人顧客よりも生み出すことが期待されているため、ほとんどのサービスプロバイダは、それら一部の顧客について差別化サービスを提供する気になっている。差別化サービスの提供は、有線の相手よりも無線環境においてより手腕を問われるものである。無線リソースの不足に加えて、モバイルの顧客の位置を突き止め、セッションおよびそのネットワークリソースを追跡することが根本的な課題である。この情報が無ければ、特別なプレミアム顧客の組に対して、差別化してネットワークリソースを制御し、割り振ることは非常に難しい。
【0007】
3G UMTS(第3世代ユニバーサル移動体通信システム)は、エンドツーエンド(end−to−end)のサービス品質(QoS)をサポートするアーキテクチャ案である。これは、インターネットプロトコル(IP)QoSと、ゲートウェイGPRSサポートノード(Gateway GPRS Support Node:GGSN)およびポリシー制御機能(Policy Control Function:PCF)と呼ばれる新しい機能との間で定義されるQoSポリシーインターフェイス(G)とに基づいている。PCFは、IMS(IPベースのマルチメディアサービスプラットフォーム)アーキテクチャの一部である、P−CSCF(Policy−Call State Control Function:ポリシー−呼び出し状態制御機能)と呼ばれるモジュールの一部である。
【0008】
UMTSのQoSサポートは、DiffServ(差別化サービス)、Intserv(統合サービス)、リソース予約プロトコル(RSVP)、およびインターネット技術作業部会(Internet Engineering Task Force:IETF)からの共通公開ポリシーサービス(Common Open Policy Service:COPS)プロトコルによるQoSポリシー管理を含むIP QoS機構に基づいている。現在のUMTSシステム(ユニバーサル移動体通信システム)では、より高レベルのQoS要求が、PCFモジュールでのポリシー(指針、方針)内にマッピングされる。ポリシーは、PCFと、GGSNおよびモバイル端末に配置されているIP BS(ベアラサービス)マネージャとの間に伝えられる。IP BS QoS要件は、そのポリシー決定ポイント(PDP)コンテキストレベルでUMTS QoS要件にさらにマッピングされる。QoSポリシーのサポートは、PDPコンテクスト(PDPContext)セットアップを介する。PDPコンテクストセットアップ中、GGSNは、PCFモジュールから許可を求める。許可後、PCFは、ポリシーが施行されるGGSNに決定を返送する。次いでGGSNは、SGSNに戻される「PDPを作成」応答を生成し、次いでSGSNは、「PDPを稼働」メッセージを移動局に送信して、PDPセットアップを完了する。また、初期セットアップ後、QoSポリシーを変更することも可能である。これは、MSまたはPCFによって開始することができる。
【0009】
3G UMTSでのQoS制御は、IMSアーキテクチャによって駆動される。UMTSは、多くのQoS機能をネットワークに追加している。これは主に、IP QoSおよびQoSポリシー決定ポイント(PDP)に依存している。これは、アドミッション制御機能(Admission Control function)を、SGSN(リリース99)の外に移動させ、現在ではPCF(リリース5)に置いている。このことは、2.5GシステムではOSSにアクセスできなかったアドミッション制御に関して非常に柔軟かつ強力なアーキテクチャを提供する。
【0010】
UMTSのQoS機能を提供することは、進化の過程であると思われている。しかし、こうした機能の初期の形態は、本格的なGインターフェイスを要せず、簡単なGGSNおよびポリシー決定ポイントアーキテクチャで実施することができる。したがって、最終的なUMTSのQoS機能に向かって進化するに伴って、近い将来(1〜2年)多くのQoS機能を提供できるようになる戦略から移行できることが重要である。
【0011】
取り組むべき現在の課題は、無線リソースの不足およびサービスの差別化の問題である。2.5G無線ネットワークでは、無線ネットワークにおける明確なQoS制御は存在しない。3G/UMTSネットワークはもっと多くのQoS機能を提供するが、少なくとも3年間は大規模な3Gの配置は見込まれない。しかし、3GにおいてさえRANのQoSが依然として存在していないため、現在の3GPP UMTSリリース5でさえ、サービスに必要とする品質に十分に取り組んでいない。
【0012】
一般に、無線リソースの不足を扱う有効な方法の1つは、ソースコンテンツのデジタル圧縮によること、またはソフトウェアアクセラレータ(圧縮の別の用語)を使用することによると結論付けられている。このことは特に、ほとんどのデータアプリケーションの場合、RANの輻輳がほとんどはダウンリンク(サーバからMSへの方向)で起こると予想されるので、有用である。圧縮の別の理由は、あらゆるサイズのモバイル端末が揃っており、その多くはフル解像度の表示を必要としないことである。これは、かなりの柔軟性、および多くのモバイル端末のデータ転送速度要件を大幅に低減する機会を提供する。しかし、圧縮だけでは、顧客が望む様々なサービスを提供するのに必要な帯域幅を十分に節約できない。
【0013】
モバイルネットワークにおけるQoS問題に関して、過去には、差別化サービス(DiffServ)、RSVPを介した統合サービス(IntServ)、マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)、およびフレームリレー(FR)や非同期転送モード(ATM)などの仮想回路技術を含めて、多くのQoS制御機構が提案されている。これらの技術のそれぞれにはそれ自体の長所および短所があり、携帯電話会社は、最も普及していると考えられ、かつ顧客セッションサービス要件をQoSの下層ネットワーク実装に関連付けるための焦点である基本的なプロトコルとしてIPに集中している。IPで使用可能な2つのQoS機構の間では、DiffServは、IntServよりも望ましい機能となるべく登場した。Intservモデルは、ルータでのすべてのIPフローまたはセッションの状態情報を必要とし、これによって拡張可能性の問題がもたらされ、この拡張可能性の問題がその実装を非現実的なものにさせる。一方DiffServは、各ルータに1組の小さいQoSクラスを処理するよう求めるだけであり、したがって、フロー当たりのIntservと通常の「ベストエフォート」サービスとの間のうまい歩み寄りであると考えられる。
【0014】
IP DiffServは、IPネットワークにおいてサービス品質を提供する共通機構である。DiffServは、各IPルータに1組の小さいQoSクラスを処理するよう求め、これらのクラスに基づいてトラフィックに優先順位を付ける。DiffServサービスクラスは、IPパケット内のいくつかのヘッダーフィールド、つまりIPソースアドレスおよび宛先アドレス、IPプロトコルフィールド、IPポート番号、およびDiffServコードポイント(DSCP)、またはIP先行(サービスのタイプ、TOS)ビットに基づいている。DiffServは、トラフィックシェーピング/レート制限、ポリシーベースのルーティング、およびパケットドロップポリシーを使用してQoS制御を提供することができる。DiffServの意志決定およびポリシーの施行は、ルータに対する局所情報(information local)に基づいて各ルータ(パケットがトラバースする各ホップ)で行われる。2.5Gネットワーク(GPRSなど)の場合、モバイルホスト向けのパケットの最後のホップ(飛び移り)は、無線コアネットワークとIPネットワークとの間のゲートウェイである(GPRSの場合GGSN)。しかし、輻輳は、IPゲートウェイに直接には隣接していない無線アクセスネットワーク(RAN)で起こる可能性が最も高い。したがって、ゲートウェイは、輻輳を観察せずに、DiffServを使用して輻輳の課題に取り組むことができない。
【0015】
インターネットDiffServアーキテクチャは、QoSを制御する強力な機構を提供する。しかし、それがモバイルネットワークに成功裡に使用できるようになる前に熟慮を要するいくつかの問題がある。DiffServアーキテクチャは、鍵となるQoSポリシーエンフォーサ(QoS policy Enforcer)として、ルータまたは帯域幅仲介機(bandwidth broker)など、ローカル装置の周りに的を絞る。しかし、多くのシナリオでは、RANでの輻輳などの、トリガイベントは、実行ポイントから離れている。QoSポリシーの決定は、原因(輻輳点)と解決策(PEP)との間の関係をしっかりと考慮して行うことが重要である。QoSポリシーおよび施行の「原因および効果」は検証が難しく、また、約束したものが得られていることをプロバイダ(インターネット接続業者)に納得させるために別々のOSS構造が必要である。IP QoS、顧客、およびサービスレベルSLAの間の連係は定義されておらず、マッピングはその場限りであり複雑である。このことは、携帯電話会社が、正しいQoSポリシーが何であるか、およびエンドツーエンドのQoSの目的が満たされるように、複数のQoSポリシー実行ポイントの間でポリシーがどのように調整されるべきかを「分かる」ことを必要としている。
【0016】
【非特許文献1】Telcordia SR-3389「ISCP Generic Data Interface Specification for TCP/IP」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、DiffServおよびIntservの不足分を打開するQoSポリシー施行およびトラフィック最適化システムを備えることが望ましいであろう。
【0018】
さらに、RANリソースの最適な使用を可能にするシステムおよび方法を備えることが望ましいであろう。
【0019】
さらに、Intservなどのようなセッションごとのシステムによってオーバーヘッド問題が生み出されること無く、モバイルネットワークにおいてきめ細かいQoSを提供し、それによって、ユーザごとにサービス品質を提出することができる方法およびシステムを備えることも望ましいであろう。
【0020】
さらに、様々なユーザの要求を満たすようにポリシーベースのQoSを実施することができる方法およびシステムを備えることが望ましいであろう。
【0021】
また、RANの輻輳点から離れたネットワークのある点におけるトラフィックの制御、シェーピング(shaping)、および最適化を可能にする方法およびシステムを備えることが望ましい。
【0022】
最後に、広範囲におよぶ異なる様々なアクセスネットワークをサポートすることができる方法およびシステムを備えることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、RANにおいて使用可能な帯域幅の使用を最大にするために、無線ネットワークにおけるトラフィックフロー(トラフィックの流れ)の自動最適化の方法およびシステムを提供する。本発明の方法およびシステムは、モバイルネットワークとインターネット間のインターフェイス上のある点における移動局向けのリソースの最適化に基づいて、RANの輻輳およびサービスの差別化問題に対する解決策を提供することによって、これらの課題を処理する。RAN内の各セルのトラフィックプロファイルおよび輻輳状態は、連続的に監視される。これは、Gインターフェイスでのプローブ(Gプローブ)、並びにネットワークの1つまたは複数の点におけるディープパケット処理(deep packet processing)および相関関係(correlation)を介して達成される。セルのトラフィック情報は、リアルタイムのトラフィック情報をn次元のトラフィックモデルにマッピングするトラフィック分析および処理エンジン、自動−IP PDPに渡される。自動ポリシー決定案内アルゴリズム(automated policy decision−guiding algorithm)は、n次元トラフィックモデル上で自動−IP PDPで実行され、ポリシーは、人の介入無しにトラフィックおよびセルの輻輳状態に基づいて選択される。
【0024】
ポリシー決定結果は、トラフィック問題(RAN)が起こる場所とは異なるネットワークのある点(G)にある自動−IPトラフィック・オプティマイザ(最適化装置)によって作用される。これは、拡張性、機構を制御するQoSの可用性、および下位互換性を含むいくつかの理由のために重要である。
【0025】
本発明は、セルごとにQoS最適化を行う。この考えは、QoSをグローバル(全体的)にクラスごとに適用するIP DiffServ、あるいはフローまたはセッションごとに定義される統合サービス(IntServ)とは異なる。このアルゴリズムは、そのセル内のトラフィックに基づいて各セルに向けられるすべてのIPフローの最適化を可能にする。したがって、DiffServまたはIntServの機構では入手できない、きめの細かな最適化を可能にする。
【0026】
ポリシーの設計および操作は、専門家の分析に相当するもの無しに、ポリシーの整合性をチェックする自動ポリシーチェックアルゴリズムを導入することによって大幅に簡略化される。この自動チェックは、ポリシー機能競合の難しい問題も回避する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、一般的なGPRS/UMTSモバイルネットワークを示している。移動局110は、無線基地局(BTS)120との間の信号の送受信によってネットワークと通信する。各BTS120は、1つまたは複数のBTS装置を制御する基地局コントローラ(BSC)125と通信する。複数のBTS装置およびBSC装置は、全体でしばしば基地局システム(BSS)130と呼ばれる。さらに、無線アクセスネットワーク(RAN)135は、BSS、およびMS装置110間で空中を通って送信される信号を含む。
【0028】
BSC125は、BSS仮想回路(BSSVC)131を介して、移動局110の移動およびデータセッションの管理を行うSGSN(Serving GPRS Support Node)140と通信する。SGSN140は、GPRSコアネットワーク145を介してGGSN(Gateway GPRS Support Node)150と通信する。GGSN150は、GPRSコアネットワーク145と、インターネット155などの外部パケットデータネットワークとの間のゲートウェイとして働く。GGSN150は、インターネット155を介して複数のサーバ160と通信する。サーバ160は、移動局110のユーザが望むWebページまたは他の情報を格納する。
【0029】
ネットワークにおける輻輳のほとんどは、セルラー式システムで使用可能な帯域幅が限られていることにより、RAN135と移動局110間のインターフェイスで起こる。ダウンリンク方向で、BSS130は、BSS仮想回路(BSSVC)131ごとにバッファを維持する。バッファがいっぱいのときには、パケットはドロップされる。BSS130で実行される優先キューはない。アップリンク方向にはバッファがない。というのは、アップリンク方向には多くのトラフィックが予想されないからである。パケットがドロップされるとき、SGSNがBSSへのパケットの送信を減速するように、メッセージが、フロー制御のためにBSS130からSGSN140に送信される。概して、優先度またはQoSの差別化は、RANでの輻輳を扱うために、BSSまたはSGSNでは実施されない。さらに、GGSN150はRAN輻輳を経験しない。そのため、(DiffServのように)GGSNに局地情報(information local)に基づいてGGSNでQoSポリシーを適用することでは、RAN輻輳問題は緩和されない。
【0030】
RAN135と移動局110との間のインターフェイスでの輻輳は、GGSNが「感じる」ことができないほどGGSNから離れているにも関わらず、GGSN150は、QoS制御を適用する最適な場所である。というのは、GGSNは、インターネットIPルーティングアーキテクチャの観点から言えば、移動局からの第1のIPホップだからである。SGSN140などの他のノード、BSC125、BTS120、またはGPRSコアネットワーク145内の他のノードは、すべてIPトランスポート層の下の層で稼働している。これは、GTPを運ぶIPトランスポート層を含む。ユーザ識別との相関がより難しくなるため、これらのより低い層は、QoS制御を提供するには理想的ではない。一方、GGSN150は、IPの第1のホップであり、端のIP装置として働き、したがってQoSポリシーの施行の最適な場所である。すべてのIPネットワーク、またはいわゆるIP RAN(Nokiaによるものなど)において、第1のホップはQoS制御を適用すべき場所であるという同じ原理が適用されることに留意されたい。
【0031】
GGSN150は、QoSポリシーを施行するための論理的な場所であるため、GGSNにおいてQoSポリシーの施行を引き起こすために取り組むべき根本的課題が3つある。GGSN150は、RAN135での輻輳に気付く必要がある。サービスを要求する移動局110のユーザは、そのサービスをサポートするデータのIPフローおよびGGSN150と関連付けられていなければならない。最後に、移動局110のユーザは追跡され、輻輳や無線ネットワークで発見された他の問題と相互に関連付けられなければならない。
【0032】
GGSN150にRANでの遅延を気付かせる問題は、GGSN150とセルタワー、BTS120との間のコンポーネントの総バッファサイズによって引き起こされる。単一のTCPセッションでの強度のバッファTCP問題は、重大な遅延をもたらす可能性がある。BTS120、BSC125、およびSGSN140は、50Kbyteから200Kbyteの間の総バッファを含む。一般に、TCPの輻輳制御機構は、TCPセッションごとに最高64キロバイト(kbyte)までのバッファの増大を可能にする。1秒当たり50キロビット(kbps)のセルの場合、64kbyteは、10秒を上回るバッファ遅延に変わる。複数のTCPセッションでは、強度のバッファ問題は、重大な遅延をもたらす可能性があり、新しいパケットはすべて、既存のセッションによって遅れることになる。したがって、リソースをTCPトラフィックと共有する、音声トラフィックなどのスピードが重視されるタイムクリティカルなトラフィックでは、数十秒までの遅延を経験する可能性がある。Webダウンロードなどの対話型セッションも上乗せ待ち時間を経験する。
【0033】
図2を参照すると、本発明によるモバイルネットワークにおけるIPトラフィックの自動最適化のシステムの一実施形態は、自動−IPトラフィック・オプティマイザ210を含む。自動−IPトラフィック・オプティマイザ210を、GGSN150のすぐ上流のGインターフェイス151に配置する、またはその機能をGGSN150自体に組み込むことができる。自動−IPトラフィック・オプティマイザ210は、RAN135、およびGプローブ230など他の様々なソースからの情報を集める別個の装置によって、各RANセル(または使用可能な情報の解像度次第で、セルセレクタ)に入るトラフィックを制御する決定を行うように、構成/制御される。本発明では、この装置は、ポリシーの専門用語に基づいて自動−IPポリシー決定ポイント(自動−IP PDP)220と呼ばれる。自動−IPトラフィック・オプティマイザ210は、一種のポリシー実行ポイント(PEP)である。また、自動−IPトラフィック・オプティマイザ210および自動−IP PDP220の機能を単一の装置に組み込むことも可能である。
【0034】
自動−IP PDP220および自動−IPトラフィック・オプティマイザ210は、記載されている機能を実施するソフトウェアルーチンに組み込まれる可能性が最も高いが、一部分は、必要に応じて性能の速度を上げるために、ハードウェア、または専用ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせに実装することができる。自動−IP PDP220および自動−IPトラフィック・オプティマイザ210を実装するソフトウェアは、様々な汎用コンピュータで実行することができ、また、それだけには限定されないが、IBM AIXプラットフォーム、専用の他のUNIX(登録商標)ベースのオペレーティングシステム、オープンソースLinux(リナックス)オペレーティングシステム、およびMicrosoft Windows(登録商標)オペレーティングシステムを含む様々なオペレーティングシステムで動作するように移植することができる。自動−IP PDP220および自動−IPトラフィック・オプティマイザ210を含むソフトウェアモジュールの実行に使用される汎用コンピュータのタイプは、本発明の実施には重要ではない。
【0035】
自動−IP PDP220は、RANネットワーク管理システム(NMS)240からの入力を使用する。RAN NMS240は、1つまたは複数のBSS130内の様々なコンポーネントの構成、制御、および監視を可能にする。RAN NMS240は、RANインターフェイスでのネットワークトラフィック輻輳に関する情報を移動局110に提供する。
【0036】
また、顧客データベース250は、様々な顧客または顧客群のサービスレベル契約を含めて、顧客の加入情報の形で自動−IP PDP220へ入力を供給する。この情報は、自動−IP PDP220が加入情報に基づいてQoSポリシーを作成できるようにする。
【0037】
IPプローブ260は、IPセッションごとにIPトラフィック量を監視するために使用され、IPトラフィックミックス(混合)、およびミックス内のトラフィックのタイプ(すなわち音声、データ、Webアクセス、電子メールなど)に関して、自動−IP PDP220に入力を供給する。また、IPプローブは、幾つかのポリシー施行機構(TCPウィンドウクランプ(Window Clamping)など)で使用するために、ネットワーク内の往復遅延を測定することに使用することもできる。
【0038】
プローブ230は、Gインターフェイス125と接触する。包括的なプローブは、通常、性能分析のための様々な情報を収集する。本発明の目的達成のためには、表1の情報を集めることができるGプローブが望ましい。最低限、プローブは、IMSI(International Mobile Station Identifier:国際移動局識別子)によって識別される可能性が最も高い加入者、現在のセッションについて割り当てられたIPアドレス、および加入者が目下いる場所のセルのアイデンティの間のマッピングを供給することができるべきである。また、Gプローブ230は、各セルでのIPトラフィックの最大(タイプおよび量)に関する情報を収集する立場にある。Gプローブ230は、セルに関するこの情報を格納し、更新することができるべきである。使用可能なGプローブの一例は、Steleus ProTraffic(ステレウス・プロトラフィック)Gプローブである。
【0039】
【表1】

【0040】
自動−IP PDP 220は、GPRSネットワークにおけるセルの帯域幅など、限られたリソースを共有する複数のアプリケーションの実行を最適化するためのポリシーを選択する。これは、帯域幅を共有する様々なトラフィックタイプを識別し、トラフィックプロファイルによって記述されているn次元の空間を作成することによって達成される。これらのn次元トラフィックプロファイル(テンプレートと呼ばれる)がいくつか作成され、様々なビジネス要件を満たすために様々な基準に従って使用される。各n次元トラフィック空間は、n本の軸から成る。軸の数は、トラフィックタイプの数によって決定される。異なるテンプレートは、軸ごとに異なるトラフィックタイプを使用していても良く、また、異なる数の軸を有していてもよい。
【0041】
特定のテンプレートの場合、各軸は、トラフィックタイプおよびトラフィック記述子(すなわち帯域幅またはセッション数)を表す。トラフィックテンプレートの軸の例には、プレミアムトラフィックの帯域幅、ベストエフォートトラフィック(best effort traffic)の帯域幅、プレミアムクラスのセッション数、ベストエフォートクラスのセッション数がある。上記の例は、4次元空間を表しており、例えば、ピーク帯域幅が50kbpsで、VoIPセッションの最大数が同時の呼10本に等しいプレミアムQoSのSLAなどの、プレミアムトラフィックプロファイルにQoSを保証するサービスレベル契約(「SLA」)の提供に使用することができる。
【0042】
トラフィック制御の場合、n次元空間は、いくつかの領域(または状態)に仕切られる。領域は、ネットワークトラフィック状態、および他のビジネスニーズに従って定義される。ネットワークの現在の状態は、常にn次元トラフィック空間における状態によって表すことができる。「許容できる状態」と呼ばれる一部の状態は、トラフィック制約が満たされるネットワークの状態を表す。「許容できない状態」と呼ばれる他の状態は、制約が満たされないネットワーク状態を表す。「最適とはいえない状態」と呼ばれる一部の例では、トラフィック制約は満たされるが、リソースは効率的には使用されていない。
【0043】
状態ごとに、許容できない状態または最適とはいえない状態から許容できる状態またはより許容できる状態へとネットワークの移動を促進するために稼働することができる1組のポリシーが識別される。一般に、状態間の移動は、ネットワークに入るトラフィックが増減するにつれて自然に行われるが、ポリシーは、状態間の移動を促進することができる。時として、アドミッション制御ポリシーなど他の状態で稼働されるポリシーのために到達することができない状態があり得る。図3に、仕切られたネットワーク状態空間の一例を示している。また、図4には、ネットワーク状態および遷移を状態遷移図として表している。特定の状態に到達できないいくつかの場合、これらの状態は、状態遷移図から省かれる。
【0044】
ネットワークの状態および自動−IP PDP220の挙動は、有限状態マシーン(FSM)によりモデリングされる。自動−IP PDP220はFSMの状態を維持し、そのアクションはFSMに基づく。自動−IP PDP220は、プローブからの、およびオプションでRAN NMS240からの、情報を使用してネットワークの現在の状態を監視する。Gプローブ230は、マッピング情報を決定し、GプローブまたはIPプローブ260は、各セルにおけるトラフィックミックス(タイプおよび量)を決定することができる。RAN NMS240は、セルの輻輳状況に関する情報を提供することができる。自動−IP PDP220は、ネットワークの現在の状態を、上述したn次元空間内の領域の1つにマッピングし、FSMの対応する状態を識別する。FSMが新しい状態に入るたびに、自動−IP PDP220は、人の介入の必要が無く、その状態に関連付けられている任意のアクションを実行する。このアクションは、ポリシーが異なる状態へ(許容できない状態から許容できる状態へ、または最適とはいえない状態から最適であるいえる状態へ)の移動を促進(アドミッション制御ポリシーなど)し、または移動をもたらす(トラフィックシェーピングポリシーなど)ことを可能にすることができる。場合によっては、アクションは、もはや必要ないポリシーを無効にすることができる。
【0045】
自動−IP PDP220内の自動ポリシー決定案内アルゴリズムの一部として自動的に使用するためのFSMは、図5に図示した以下のプロセスを使用して作成される。ステップ510で、管理されるべきリソースの総量(GPRSセルの総帯域幅/容量など)、およびリソースを共有する必要があるトラフィッククラスが識別される。次に、ステップ520で、1組のトラフィックタイプがn次元空間に変換される。この場合、nはトラフィックタイプ数であり、軸は、各タイプのトラフィック量(リソース利用率)を表す。ステップ530で、n次元空間は、どのトラフィック制約が満たされているか、またはいないかについてネットワークの状態を表す領域に分けられる。その分離は、SLA閾値または暗黙のトラフィック制約に基づき得る(例えば、特定のリアルタイムアプリケーションが適切に動作するには、指定された帯域幅が必要である。または、トラフィックタイプの混合が良く動作するのは、タイプの特定のバランスが維持される場合のみである)。各領域に名前(A、B、C、1、2、3など)が付けられる。
【0046】
トラフィック制約を満たさない(またはトラフィック制約を最適には満ただない)状態ごとに、ステップ540で、トラフィック制約を満たす状態にネットワークを移動させる(または移動を促進する)1組のアクションが識別される。次に、ステップ550で状態遷移図が作成される。ノードは各領域/状態を表し、ノード間のエッジ(縁)は隣接する領域を表す。最後に、ステップ560で、各エッジは、遷移をもたらすトラフィックのタイプでラベル付けされる。許容できない状態から許容可能な(またはより最適な)状態(ステップ540で識別)にネットワークを移動させるエッジについても、遷移をもたらす、または促進するアクションの名前でエッジにラベル付けする。
【0047】
このプロセスの一例について以下に記載する。この例では、優先順位が高いトラフィッククラス(高優先度トラフィッククラス)および優先順位が低いトラフィッククラス(低優先度トラフィッククラス)が識別されている。優先順位が高いトラフィックは、ほとんど遅延またはジッター(デジタル信号の位置のゆれ)がないように保護される必要がある。優先順位が高いトラフィックが少量ある場合、優先順位が低いトラフィックを大量に許容することができる。しかし、優先順位が高いトラフィックが閾値を超えると、優先順位が高いトラフィックを干渉することができないように、優先順位が低いトラフィックを厳しく制限する必要がある。また、優先順位が高いトラフィックの量は、常に総セル容量未満でなければならない。図3に、これらの制約に対応するネットワーク状態空間を示している。リセット状態R 310を含めて5つの状態が識別されている。リセット状態R 310では、トラフィックが非常に少ないためポリシーを有効にする必要がなく、以前に有効にされたポリシーを無効にするか、デフォルトのポリシーと取り替えることができる。状態1 320で、トラフィック制約が満たされているため、有効にされたすべてのポリシーを有効のままにしておくことができる。状態2 330、および状態3 340では、優先順位が低いトラフィックが多すぎ、優先順位が低いトラフィックを、優先順位が高いトラフィックへの干渉を防ぐのに適したレベルに制限し、状態4 350では、すべての種類のトラフィックが多すぎる。
【0048】
優先順位が高いトラフィックの総制限は、(例えばセッション開始プロトコル、すなわちSIPに基づいて)アドミッション制御を使用して施行することができ、これは、ネットワークが状態4 350に入るのを防ぐ。優先順位が低いトラフィックの制限は、ネットワークを状態2 330(ポリシーD1)および状態3 340(ポリシーD2)から移動させるためにIPトラフィックシェーピングを使用して施行する必要がある。図4に、この例の対応する有限状態マシーンを示している。表2は、この優先順位が高い/低いトラフィックミックスについての自動−IP PDP220で実施されるポリシーの説明を示している。
【0049】
【表2】

【0050】
図6がネットワーク状態空間の図解を提供する第2の例では、2つのトラフィッククラス、つまり優先順位が低いトラフィックおよび音声トラフィック(最小限の帯域幅要件で)が存在する。この場合、ネットワーク状態空間は、帯域幅よりもむしろセッション数に基づいている。状態A 610は、トラフィックが無い、および優先順位が低いトラフィックがセルの全容量を使用することが許可されているデフォルトの状態である。状態B 620および状態C 630のように優先順位が低いトラフィックが無いとき、帯域幅は、最高3つまでの音声セッションに割り当てられる。しかし、状態E 650および状態F 660など優先順位が低いトラフィックがある場合、優先順位が低いトラフィックに使用可能な帯域幅が存在するように、帯域幅は、音声セッション2つのみのために確保されている。アドミッション制御(SIPに基づく)を使用して、許可された2つまたは3つを超える音声セッションがネットワークに入るのを防ぐ。その結果、SIPアドミッション制御ポリシーのために、状態D 640および状態H 680には到達することができない。3つの音声セッションがすでにネットワークを使用している場合、優先順位が低いトラフィックが開始すると、状態G 670、現存のセッションは先取りされない。この場合、SIPポリシーは、音声セッションが2つだけ入ることができるように変更されるが、現在の3つの音声セッションのうちの1つまたは複数が終了するまでそれらが続行することを可能にする。その時点で、音声のリソースの割り振りは、3セッションから2セッションに低減される。図6は、この例のネットワーク状態空間を示しており、図7は、同じ例の有限状態マシーンを示している。様々な状態で取られるアクションを、次の表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
自動−IP PDP220は、後述するように、自動ポリシー整合性チェックアルゴリズムも実行する。まず、自動−IP PDP220に配置されているポリシーを記述する表記について説明する。ポリシーPiは、次のように表される。
Pi:C−i=[C1,C2,...]が真の場合、アクションA−i={A1,A2...}を適用する。 (1)
指数iはi番目のポリシーを指す。C−iは、ポリシー条件または単に条件と呼ばれる。C−iはいくつかの副条件C1,C2...Cnから成る。各副条件は、次のように表すことができる。
Cx:{条件cxを満たす1組の要素{e}} (2)
Cxは、真または偽と評価することができる。次は、要素{e}および副条件ciの例である。
e−PDPセッション
C1:1〜1000の範囲内のセルID
C2:APN=Company.gprs.com
C3:契約したQoS=レベル5
C4:平日午前9時〜10時
C5:輻輳した無線セル
【0053】
条件C={C1,C2,...C5}は真であると仮定する。これは、条件Cが、セルIDが1〜1000の範囲内の輻輳したセル内にあり、APN=Company.gprs.comを有し、契約したQoS=レベル5であり、平日午前9時〜10時の間の1組のPDPセッションを表すことを意味する。
【0054】
ポリシーステートメントの第2の部分は、1組のアクションA={A1,A2...}を伴い、これは、IPセッションなどの1組の要素に適用する1組の「操作」を表す。アクション操作の例は、次の通りである。
A1:レート制限
A2:TCPウィンドウクランプ
A3:コンテンツ圧縮
A4:アドミッション制御
A5:ブロッキング(遮断)
【0055】
操作Aiが適用されるアクションステートメント内の1組の要素(1組のIPセッションなど)は「被アクショングループ(Actioned group)(Ag)」と呼ばれる。「Ag」(IPv4の場合)の一例を次に示す。
Ag:{方向=ダウンリンク、IPソースアドレス=128.96.100.10、IP宛先アドレス=任意、ソースポート番号=任意、宛先ポート番号=任意、インターネットプロトコル=6(TCP)、TOS=01010000}
アクションの一例は、次の通りである。
アクション:契約したQoS=5のPDPContentsに対応する輻輳したセルx内のIPセッションの帯域幅をそれぞれ5Kb/sに制限する
【0056】
このアクションを実行するには、輻輳したセルxおよび契約したQoS=5のIPセッションの被アクショングループが最初に識別される。次いで、レート制限アクションがこのAgに適用される。
【0057】
全ポリシーをひとまとめにし、自動 IP−PDP220は、条件に基づいて適用すべきアクションを決定する。
Ci=[C1,C2,....]が真の場合、A1をAg−1に、A2をAg−2に....適用する。 (3)
【0058】
自動−IP PDP220は、以下の例で説明するように、既存の1組の整合性のあるポリシーに対して比較したある1つのポリシーの整合性のチェックを自動化する。2つのポリシーP1およびP2が与えられると、P1およびP2は整合性があるか整合性がないかを決定する必要がある。表4は、2つのポリシーを、その関連の条件およびアクションと共に示している。関連のアクションは、2つのアクショングループ、つまり輻輳したセルに対応するすべてのIPセッションに関連するAg−1、およびすべてのVoIPセッションに関連するAg−2に適用される。
【0059】
【表4】

【0060】
自動−IP PDP220は、次のように自動ポリシー整合性チェックアルゴリズムを実行する。1組の既存のポリシー(整合性があると仮定する)で開始する。新しいポリシーP2が既存のポリシーと照合される。1組の既存のポリシーからポリシーP1を選択する。既存のポリシーP1:C−1→A−1と新しいポリシーP2:C−2→A−2との照合は、図8aのステップ810で開始し、新しいポリシーP2を比較すべき既存のポリシーP1が選択される。第1のチェックステップ、ステップ820で、A−2の自己一貫性(自己整合性)が一度チェックされる。これは、まず、A−2の重複する1組の被アクショングループ(共通要素を備える被アクショングループ)を識別することによって達成される。A−2の1組の重複するアクショングループ例である、Ag−01およびAg−02と呼ばれるものを表5に示している。この表は、A−2を構成するすべてのアクションを、アクションが識別された各被アクショングループに適用されるかどうかについてのY(Yes)またはN(No)の指示と共に列挙している。
【0061】
【表5】

【0062】
A−2に自己一貫性がある場合、表5のすべての行は一致していなければならない。すなわち、表の任意の行は、両方ともYesまたは両方ともNoのいずれかでなければならない。YesおよびNoを含む任意の行は、A−2に自己一貫性がないことを意味する。したがって、表5で示したA−2には自己一貫性がない。ポリシーアクションの重複したすべての被アクショングループが一致しているものと示されている場合、アクションに自己一貫性があると結論付けられ、プロセスは引き続きステップ830に進む。自己一貫性が欠如(自己矛盾)している場合、プロセスはステップ822へ分岐し、自動−IP PDP220のユーザに対応策をとるようにとの警報が発せられる。
【0063】
次のステップ、ステップ830は、条件C−1およびC−2が重複しているかどうかをチェックする。C−1およびC−2は、C−1およびC−2の両方に属する要素がある場合に重複(少なくとも部分的に重なる)する。つまり、次の通りである。
(C11,C12,....を満たす要素}∩{C21,C22,....を満たす要素)≠空のセット
【0064】
チェック手順を簡単にするために、まず、表6のすべての列の論理AND(論理積)を行ってAND行を取得することができる。AND行のすべてのエントリが1(真)である場合、C−1およびC−2は重複する。AND行のエントリのいずれかが「0」(偽)の場合、C−1およびC−2は重複せず、ポリシーP1およびP2は、整合性があると決定され、プロセスは引き続きステップ850に進む。
【0065】
【表6】

【0066】
表6の例に示すようにC−1およびC−2が重複する場合、アルゴリズムはステップ840に進み、P1のA−1およびP2のA−2は、整合性があるかどうかについてチェックされる。図8bに、ステップ840のサブステップを示している。ステップ844で、A1およびA2の整合性は、ステップ846でP1およびP2の重複する被アクショングループAg−iを識別し、ステップ848でP1およびP2のAg−iのAiが一致しているかどうかをチェックすることによって、チェックされる。このテストにパスすると、P2はP1と一致しており、プロセス(処理)は引き続きステップ850に進む。ステップ848の決定ボックスでの回答が「no」である場合、ポリシーP1およびP2は一致しておらず、プロセスはステップ842に分岐し、警報が発せられる。
【0067】
最後に、ステップ850で、すべてのポリシーがチェックされたかどうかが判断される。もしそうでない場合は、ステップ860で、1組の既存のポリシーから別の既存のポリシー(P1)が選択され、同じチェック手順がステップ820から繰り返される。既存のポリシーのすべてがP2と照合され、警報状態が発せられない場合には、ステップ852で、P2は現在のすべてのポリシーと一致していると結論付けられ、ステップ854でプロセスが終了する。
【0068】
自動−IP PDP220は、決定を行うために様々な情報を必要とする。ネットワーク構成情報、例えば、各セルのタイプ(GPRS、EDGEなど)は、各セルで使用可能な全リソースの上限を提供する。セル、IPアドレス、およびモバイル加入者のアイデンティの間のマッピングは、セルトラフィックと輻輳状態との相関、Gインターフェイスでの制御のための加入者のトラフィックの識別、および各セル内の加入者のサービスレベル契約の識別を可能にする。モバイル加入者のアイデンティによって識別されたユーザのサービスレベル契約(SLA)は、各ユーザのサービスレベル予想、およびサービスプロバイダのコミットメント(責務)についての情報を提供する。各セルの輻輳状態に関する情報は、自動−IP PDP220が、トラフィック制約を満たすのに何らかのアクションが必要かどうかを決定できるようにする。各セル内の各タイプのトラフィックの量に関する情報は、セルのトラフィック状態を決定するのに必要である。
【0069】
図2には、必要な情報の潜在的なソースの多くが示されている。各セルの技術および容量などのネットワーク情報を自動−IP PDP220で直接構成したり、外部データベースから持ってきたりすることができる(図2には図示せず)。セル、IPアドレス、およびモバイル加入者のアイデンティの間のマッピングは、Gインターフェイス125で取得することができる。というのは、マッピング情報は、(GPRSにおける)パケットデータプロトコルコンテキストの稼働中、およびユーザがセル間を移動するときに、インターフェイスを介して転送されるからである。Gインターフェイス125のGプローブ230は、マッピング情報を抽出することができる。また、マッピング情報は、SGSN140内でも入手可能であるが、容易にリアルタイムで入手することはできない。ユーザSLAは、モバイル加入者のアイデンティを検索キーとして使用して顧客データベース250から取得することができる。一部の加入情報(「契約したQoS」など)は、ホームロケーションレジスタ(HLR)(図2には図示せず)からも入手可能であり、SGSN140とHLRとの間の対話は、この加入情報を収集するためにGインターフェイス(図示せず)上のプローブによって監視することができる。HLRは、顧客データベース250に加えて、加入者情報の代替のまたは補足のソースとして使用することができる。
【0070】
セルの輻輳状態は、時々RAN要素管理システム(EMS)とも呼ばれるRANネットワーク管理システム(NMS)240から取得することができる。輻輳状態は、トラフィックおよび容量の情報から推定することもできる。最後に、IPアドレス、モバイル加入者のアイデンティ、およびセルの間のマッピングが与えられると、Gインターフェイス125またはGインターフェイス151のいずれかでトラフィックを監視して、各セル内の各タイプのトラフィックの量を決定して、ネットワークの現在の状態を決定することができる。
【0071】
自動−IPトラフィック・オプティマイザ210は、ポリシー実行ポイントであり、本発明の第2の主要な構成要素である。以下で、使用することができる様々な方法として、GPRSまたは3GネットワークのGiインターフェイス(または異なる技術のネットワークにおける同様の場所)に挿入された装置に収納することができるトラフィック最適化について説明する。これらの方法の一部またはすべては、本発明による一実施形態で使用することができる。最適化の一部は、トラフィックが向けられるセルのタイプ、および/または自動−IP PDP220を介してセルごとに取得されるトラフィックおよび輻輳の情報に基づいて適用される。一般論としてとにかく無線ネットワークに固有のプロパティに基づいて、セルのタイプおよび状況に依存しない方法で、他のものを適用することができる。
【0072】
セル固有のトラフィックおよびリソース情報を自動−IP PDP220によって収集した状態で、自動−IPトラフィック・オプティマイザ210で様々な最適化を適用して、各セル内のリソースを管理することができる。図9は、本発明の自動−IPトラフィック・オプティマイザ210の一実施形態を示す図である。ポリシーおよびユーザ位置のマッピングは、自動−IP PDP220によって自動−IPトラフィック・オプティマイザ220に入力される。ポリシーおよびマッピングは、最初に、ポリシーを解釈し、トラフィックフィルタ920を制御するフィルタ管理モジュール910に到着する。音声およびデータのIPパケットは、サーバ160から到着し、IPアドレスおよびポート番号に基づいてトラフィックフィルタ920によって分けられる。トラフィックフィルタ920は、トラフィックを、そのセル(トラフィックが向けられるセル)およびトラフィックタイプに適したキュー(待ち行列)940に向ける。トラフィックフィルタ920は、様々な最適化技術(後述)をフローごと、およびセルごとに実施し、それによって必要なきめ細かいQoSサポートを提供できるように、フローを分けることができる。自動−IP PDP220から得られるポリシー指示によって要求されるようにトラフィック最適化が実行されると、トラフィックを、図2に示すように、GPRS(または他の)ネットワーク145に送信し、RAN135およびモバイルクライアント110に送信することができる。
【0073】
トラフィックシェーピングは、特定のトラフィックストリームまたはトラフィックのクラスに割り振られる帯域幅を制限することができる。トラフィックシェーピングは、トラフィックを円滑にすることができ、それによりバースト性(通信量の爆発)は低くなる。また、リソースがより公平に(あるいは、より高い優先順位を特定のトラフィッククラスに与えるなど、少ない公平さで)割り振られるように、トラフィックシェーピングがスケジューリングと優先順位とを結合することもできる。輻輳したセルにおいて(または輻輳の無いセルでさえ)、優先順位がより高いトラフィックにより多くの帯域幅が使用可能なように、優先順位がより低いトラフィックの帯域幅を制限することができる。自動−IP PDP220は、セルの総容量、およびネットワークに入るトラフィックの各クラスの量に基づいてトラフィックシェーピングを構成する必要がある。
【0074】
TCPウィンドウクランプは、TCP輻輳ウィンドウのサイズを制限して、小さい帯域幅遅延積(bandwidth−delay product)によりネットワークでのバッファの増大を防ぐための機構である。TCPにおける輻輳制御は、ウィンドウ機構を使用して、送信済み受信未確認のデータ(in−flight data)(送信されたが確認応答されていないデータ)の量を制限する。ウィンドウのサイズ(輻輳ウィンドウサイズ)は、常に伝送することができるデータの最大量を決定する。TCPのスロースタートおよび輻輳回避機構は、セッションを小さい輻輳ウィンドウで開始し、パケットが正常に送信され、確認応答されると、構成された最大値に到達するまでウィンドウを大きくする。この最大の輻輳ウィンドウサイズは、一般に64Kbyteである。輻輳制御機構によって、送信側は、往復時間(パケットを送信し、その確認応答を受信する間の時間)当たり1つの輻輳ウィンドウサイズのデータを送信することができる。受信側または受信ネットワークがより低いレート(伝送速度)でデータを処理した場合、送信済み受信未確認のデータの残りをネットワークにバッファする必要があり、ネットワークの遅延に拍車をかける。
【0075】
ネットワークにおいてバッファの増大を回避するTCP輻輳ウィンドウの最適なサイズは帯域幅遅延積であり、この場合、帯域幅はセッションから使用可能なネットワーク容量であり、遅延は宛先ホストに送信されるTCPパケットの往復時間である。輻輳ウィンドウサイズ(に最大値を設定する)のクランピングは、受信側(移動局)から送信側(サーバ)に送信されたパケット(確認応答パケットなど)内の広告ウィンドウ(advertised window)フィールドを取り替えることによって実施することができる。セル容量およびトラフィック情報により、所望の帯域幅がセッションごとに決定され、クランプ値を選択するために帯域幅遅延積が計算される(クランプ値は、少なくとも、送信側によって送信することができる最大パケットサイズと同程度とする必要があることに留意されたい)。各セッションを適切な値にクランプすることによって、その帯域幅が制限され、ネットワークにおけるバッファの増大に対するその貢献が制限される。自動−IP PDPは、セルの容量およびセルに向けられる他のトラフィックに基づいて各TCPセッションに適切なクランプ値を決定することができる。複数のTCPセッションの場合、バッファの占有は増大し続け、IPトラフィックシェーピングが推奨される。しかし、TCPウィンドウクランプは、GPRS RAN容量に関して、TCPの使用を最適にするように働く。
【0076】
アドミッション(入場許可)制御機構を使用して、あまりにも多くのセッション、またはあまりにも多くの帯域幅を必要とするセッションが限られた容量のネットワークに入るのを防ぐことができる。セッション開始プロトコル(SIP)などのプロトコルを使用して、ネットワークへのアクセスを要求することができる。自動−IP PDPは、SIPサーバと対話して、セッション数、またはネットワークに入ることを許可されるセッションの総帯域幅の制限を設定することができる。PDPは、各セルにどのユーザがいるか(およびそのセッション)についての情報を有しているため、セルごとに独立して制限を設定することができる。
【0077】
画像データを圧縮して、ネットワークをトラバース(行き来き)する必要のあるトラフィック量を低減することができる。ほとんどの画像データは、すでに、GIF、JPEG、PNGなどの圧縮フォーマットで保管されている。輻輳したセル、または制限された帯域幅を有するセルでは、画像は、自動−IPトラフィック・オプティマイザ210でインターセプト(途中で捕まえる)され、宛先に再送される前に、より高い圧縮率で再度圧縮されることができる。さらに圧縮するためには、例えばより情報の損失の大きいJPEGフォーマットを使用する、またはGIFカラーマップのカラー数を低減するなど、情報の損失の大きい圧縮アルゴリズムを使用する必要がある場合がある。
【0078】
セル固有の最適化に加えて、自動−IPトラフィック・オプティマイザ210で他の様々な無線固有の最適化を実施して、ネットワークの性能を向上させることができる。TCPウィンドウクランプ(上述)を使用して、特定のセルの知識無しに、待ち時間を制限することもできる。例えばすべてGPRSセルなど、同種のネットワークにおいて、セルの最大容量を帯域幅遅延積に使用して、輻輳ウィンドウの制限を計算することができる。例えばGPRSおよびEDGEのセルの混合など、ネットワークが同質ではない場合でさえ、最大輻輳ウィンドウがデフォルト値(通常64kbyte)未満のレベルまで低減される限り、最も高い最大セル容量を使用して、いくばくかの待ち時間の短縮を提供することができる。
【0079】
GPRSネットワークにおいては、最小往復時間は約0.5秒であり、セルの容量は約50kbpsであり、これが3125byteの帯域幅遅延積をもたらしている。輻輳ウィンドウがその最大値(一般に64kbyte)まで増大したTCPセッションでは、付加的バッファリング遅延はほぼ10秒となり得る。本発明の現実施形態は、TCPウィンドウクランプ930を使用して、最大輻輳ウィンドウを64kbyteから3125byteまで低減している。それによってTCPセッション当たりの最大遅延は、10秒以上から1秒未満まで短縮され、ほぼすべての帯域幅が獲得される。
【0080】
RFC3135に記述されているようなTCP ACKスペーシングを使用することもできる。GPRSなどの無線アクセスネットワークでは、TCP確認応答(ACK)は集中する傾向がある。これは、TCP確認応答が次から次と到着することにより、TCP送信側からのデータのバーストをもたらす。こうしたバーストは、アクセスネットワークにおいて、定期的に(すなわち往復時間ごとに一度)バッファをいっぱいにして、大量のジッターを引き起こし、このジッターは、一部のリアルタイムアプリケーション(Voice over IPなど)の性能を害する可能性がある。ジッターは、送信側がもはやデータをバースト状態で送信しないように、ACKをインターセプト(途中で押さえる)し、それらACKをより定期的な間隔で再送することによって、低減される。
【0081】
IETFのRFC3135に記述されているようなローカルTCP確認応答をトラフィック最適化に使用することもできる。PEP装置は、下流のTCPパケットが移動局によって確認応答される前にそれらを確認応答して、送信側によって測定される往復時間を短縮することができる。これは、TCPセッションの開始時またはパケットが失われた後により早く最大帯域幅に到達するように、TCPスロースタートおよび輻輳回避を加速する。ローカルTCP確認応答が生成された場合には、パケットがアクセスネットワークで失われたときに、PEPはデータリカバリを扱う必要があることに留意されたい。
【0082】
さらに、IETFのRFC3135に記述されているように、ローカルTCP再伝送を利用することができる。アクセスネットワークにおいてパケットが失われたときに、確認応答の重複を阻止し、かつ/またはローカルTCP確認応答をPEPから送信することによって、紛失をサーバから隠すことができる。これにより、失われたデータからのリカバリを加速することができる。というのは、これは、サーバがスロースタートまたは輻輳回避に入るのを防ぐからである。この場合、サーバはもはや再送信を扱わないため、PEPが、失われたデータを再送信する必要がある。PEPは、自分自体のタイムアウトメカニズムを維持することによって失われたパケットを識別し、確認応答が受信されるまでパケットを格納する必要がある。PEPは、パケットが失われたことを検出すると、失われたデータを自分自体のストレージ(記憶装置)から再送信する必要がある。
【0083】
装置固有のデータ低減は、別の最適化技術である。画像サイズが小さいモバイル装置では、大きいサイズの画像を、画面に合うように縮小することができる。これは、実質的に、アクセスネットワークを介して送信する必要のあるデータ量を低減することができ、データの受信側により早いダウンロードを提供し、他のユーザにより多くの帯域幅を残す。モバイル装置の型式(タイプ)は、多くの場合、HTTP要求ヘッダー内の情報から決定することができる。暗号化されていない任意のファイルフォーマットの画像を縮小することができる。この最適化は、すべてのトラフィックに適用することができ、または輻輳した、または容量が少ないセルに向けられるトラフィックにぴったり適用することができる。
【0084】
IPトラフィックシェーピングおよびTCPウィンドウクランプは、試作品の自動−IPトラフィック・オプティマイザ210で実施されている。トラフィックシェーピングはセルごとに適用され、ウィンドウクランプは一定のクランプ値により適用されている。現在の実装は、パケット転送(ルーティング)が可能なLinuxを基にしている。トラフィックシェーピングは、シェーピング、スケジューリング、優先順位を実施する多くのオプションを提供するLinuxのtcコマンドセットを使用して実施されている。現在好ましい実施形態のシェーピング機構は、Hierarcal Token Bucket(階層的トークンバケツ)であり、これは、重み付けされた公平なキューに似ている。各サービスクラス内で、Stochastic Fair Queuing(確率的不偏キューイング)を使用してセッションをスケジューリングする。TCPウィンドウクランプの現在の実装は、Linux ip_tablesモジュールを使用して、パケットおよびlibipqルーチンをインターセプトして、パケットを処理する(移動局から上流に送信されたパケット内の広告ウィンドウフィールドと取り替える)。
【0085】
顧客およびサービスの差別化は、一人のユーザまたは1組のユーザ、および/または請け負ったサービスの識別を必要とする。次いでサービスの差別化は、サービス品質の保証、アクセス優先順位、あるいは課金または融資インセンティブ(credit incentives)に関して提供される。モバイルの状況(mobile context)でユーザを識別するために、表7に列挙したような1組の共通の属性が使用されており、この場合、焦点はGSM/GPRSネットワーク(TDMAネットワークの類似の属性が適用される)に置かれている。
【0086】
【表7】

【0087】
表7で、左列は、ユーザの識別のための属性のリストを与える。第2の列は、属性を見つけることができる場所を知らせ、第3の列は、ユーザ識別属性が固定的(すなわち永続的に割り当てられる)か動的(すなわちセッション(PDPcontextやPPPセッションなど)がアクティブなときに割り当てられる)か、を示す。表6の属性が使用可能である場合、これらの属性のサブセットを顧客の差別化に使用することができる。しかし、顧客およびサービスの差別化を実施するために、OSSは、属性を識別するこのユーザがどのようにセッションおよび/またはIPフローにマッピングされるかに関する情報を有することが必要である。マッピングの知識は必須である。というのは、サービス差別化機構の多くは、セッションおよびIP層に存在するからである。例えば、IP層DiffServ QoS制御がAPN=company.gprs.comに対応するすべてのセッションのサービス品質の差別化に使用される場合、company.gprs.comに対応するすべてのIPフローを見つけ出す必要がある。company.gprs.comに対応するIPフローに対してDiffServ QoS(コードポイント)を割り当てることができる。
【0088】
ユーザ識別属性とIPフローなどのネットワークエンティティとの間のマッピングの取得は、IPアドレスが固定的である場合は簡単である。その場合、IPアドレスは、特定の移動局に提供され、変わらない。しかし、モバイル環境では、IPv6が完全に配置される前に動的アドレスの割当がサポートされていることは非常に一般的であり、必要である。動的アドレスの割当では、PDPContextが作成されると、IPアドレスは、DHCPを介してMSに割り当てられ、その割り当てられたIPアドレスは、PDPセッションの終わりでリリース(解放)することができる(ネットワークアドレス変換(NAT)をGGSNで使用することができるという事実はDHCPのサポートの必要性を変えないことに留意されたい)。したがって、マッピング情報は、PDPContextセットアッププロセス中存在し、SGSNおよびGGSNで入手可能である。マッピングは、コール詳細レコード(CDR)でも入手可能であり、したがってCDR仲介装置でキャプチャーされる。同様に、マッピングは、RADIUSなどのアカウンティングデータベース(accounting database)にも記録される。実際に、RADIUS MIBはこうしたマッピングを定義している。残念ながら、ユーザIDからIPアドレスへのマッピングへのアクセスは、依然として問題である。SGSNやGGSNでは、マッピングは存在するが、通常、外部装置からは使用できない。CDRおよびRADIUSでは、通常、会計のサポートに使用されており、情報は、通常、セッションが終了した後、または非リアルタイムで取り出し可能である。QoS制御の多くはリアルタイムの機能を必要とするため、マッピングの取り出しの際のタイムラグによって、それらは役に立たなくなる。マッピング情報をタイムリーに取得するのが難しいのは、リアルタイムまたはほぼリアルタイムの装置でなければならないGプローブがユーザ(IMSI)場所−IPアドレスマッピングを取得するための好ましい機構として選択されるからである。
【0089】
本発明のシステムおよび方法は、図10に開示した実施形態による、Telcordia(テレコディア)ISCPなど、インテリジェントサービス制御ポイント(ISCP:Intelligent Service Control Point)を使用して実施することができる。ISCP400は、自動−IP PDP220の論理を形成するアルゴリズムを実行するプラットフォームとして使用することができる。非特許文献1で指定されている現在の汎用データインターフェイス(GDI)、および/またはベンダー独自の専用インターフェイスを使用して、上記のRAN NMS240、Gプローブ230、および顧客データベース250から情報を入力することができる。ISCP400は、上記の自動ポリシー生成および整合性チェックアルゴリズムを実行し、GDIまたはベンダー固有の専用のインターフェイスを介して自動−IPトラフィック・オプティマイザ210と通信し、それによってポリシー制御指示を自動−IPトラフィック・オプティマイザ 210に渡し、次いでセルごとに上記の技術の最適化技術を行う。ISCP400は、IETFによって定義されているGまたはCOPSインターフェイスを介してGGSN150と直接通信することもできる。
【0090】
上記の説明は、本発明を示し、説明するために提示したにすぎない。それは包括的なものではなく、あるいは本発明を開示した何らかの正確な形に限定するためのものではない。上記の教示に照らして、多くの変更および変形が可能である。例えば、2.5G汎用パケット無線サービス(GPRS)および3G UMTSネットワークで使用することに加えて、この方法およびシステムは、EDGE(Enhanced Data for GSM Evolution)、符号分割多重接続(CDMA)無線伝送技術(1xRTT)ネットワークで使用することができる。記載したアプリケーションは、当業者が本発明を様々な用途で、また企図された特定の使用に適するように様々な変更を加えて最適に使用できるようにするために、本発明およびその実質的なアプリケーションの原理を最適に説明するために選択され、説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】一般的なGPRS/UMTSネットワークアーキテクチャを示す図である。
【図2】GPRS/UMTSアーキテクチャに配置される本発明のシステムの要素を示す図である。
【図3】仕切られたネットワーク状態空間の一例を示す図である。
【図4】図3の例のネットワーク状態および遷移を状態遷移図で表す図である。
【図5】本発明の自動−IP PDPで使用するための有限状態マシーンを開発するプロセスを示すフロー図である。
【図6】仕切られたネットワーク状態空間の別の例を示す図である。
【図7】図6の例のネットワーク状態および遷移を状態遷移図で表す図である。
【図8a】本発明の自動−IP PDPの整合性チェックアルゴリズムを示す概略図である。
【図8b】本発明の自動−IP PDPの整合性チェックアルゴリズムを示す概略図である。
【図9】自動−IPトラフィック・オプティマイザを示す図である。
【図10】ISCP(Intelligent Services Control Point)を使用して実施する本発明を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動局が、無線アクセスネットワーク(RAN)を介し、少なくとも1つのSGSN(Serving GPRS Support Node:サービングGPRSサポートノード)および少なくとも1つのGGSN(Gateway GPRS Support Node:ゲートウェイGPRSサポートノード)を有するネットワークを介し、インターネットを介して、複数のサーバと通信する移動体通信ネットワークにおけるトラフィックの自動最適化のためのシステムであって、
特定のデータフローに関連付けられている各ユーザのアイデンティを含めて、前記RANと前記SGSNとの間のインターフェイスから情報を抽出する1つまたは複数のGプローブと、
前記RANから輻輳およびトラフィック情報を提供するネットワーク管理システム(NMS)と、
移動局の各ユーザに対するサービスのタイプおよび品質に関する情報を提供する顧客データベースと、
前記Gプローブからの情報、前記NMS、および前記顧客データベースを使用して、セルごとに各データフローのトラフィックを最適化するために取られるべきアクションを決定するポリシー決定ポイントと、
前記ポリシー決定ポイントによって決定された前記アクションを実施するトラフィックオプティマイザと
を具備することを特徴とするシステム。
【請求項2】
インターネットでの遅延に関する情報を提供するIPプローブをさらに具備し、該情報は前記ポリシー決定ポイントに提供されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ポリシー決定ポイントは、前記ネットワークの状態に関して受信された前記情報に応じて取られるべきアクションを自動的に決定する有限状態マシーンに基づいてポリシー決定を自動的に生成する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ポリシー決定ポイントは、新しいポリシーの既存のポリシーに対する整合性をチェックする手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
新しいポリシーが既存のポリシーと整合性がないと識別された場合、前記ポリシー決定ポイントの警報がユーザに発せられることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記トラフィックオプティマイザは、インターネットから到着するトラフィックを、該トラフィックが通過する予定の前記RAN内の前記セルのアイデンティによって識別される成分に分けることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記分けられたトラフィックは、TCP(通信制御プロトコル)ウィンドウクランプ、アドミッション制御機構、圧縮、TCP ACK(確認オ応答)間隔、ローカルTCP確認応答、IP(インターネットプロトコル)トラフィックシェーピング、およびローカルTCP再送信から成るグループから選択された最適化技術を使用してセルごとに最適化されることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記トラフィックオプティマイザはGインターフェイスに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
ホームロケーションレジスタ(HLR)は、前記ネットワーク内の移動局の前記ユーザに関する付加情報を提供することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ポリシー決定ポイントはインテリジェントサービス制御ポイント(ISCP)に実装されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
移動局のユーザと、無線アクセスネットワーク(RAN)、パケットベースのコアネットワーク、およびインターネットを介して接続されるサーバとの間のトラフィックフローの自動最適化の方法であって、
特定のトラフィックフローに関連付けられている各ユーザの前記アイデンティティを含めて、前記RANと前記パケットベースのネットワーク間の情報を前記インターフェイスから抽出するステップと、
前記RANからの輻輳およびトラフィック情報に関する情報をネットワーク管理システム(NMS)から収集するステップと、
移動局の各ユーザのサービスのタイプおよび品質に関するデータを顧客データベースから取り出すステップと、
前記抽出されたRAN情報、収集されたNMS情報、および取り出された顧客データをポリシー決定ポイントに入力するステップと、
データフローごとにトラフィックを最適化するためにどのアクションが取られるべきかを前記ポリシー決定ポイントで決定するステップと、
トラフィックオプティマイザに前記アクションを送信して、前記アクションをセルごとに実施するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
1つまたは複数のIPプローブからインターネットにおける遅延に関するデータを収集し、該収集されたデータを前記ポリシー決定ポイントに入力するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
取られるべき前記アクションを決定する前記ステップは、有限状態マシーンを使用して、許容できない状態から許容できる状態に、または最適とはいえない状態から許容できる状態に移動させるのにどのアクションが必要であるかを自動的に決定することをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
取られるべき前記アクションを決定する前記ステップは、新しいポリシーの既存のポリシーに対する整合性をチェックするステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記整合性をチェックする前記ステップは、新しいポリシーが既存のポリシーと整合性がないと識別された場合、前記ユーザに前記ポリシー決定ポイントの警報を発するステップをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記インターネットから前記トラフィックオプティマイザに到着するトラフィックを、前記トラフィックが通過する予定の前記RAN内の前記セルのアイデンティによって識別される成分に分けるステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記分けられたトラフィックは、TCPウィンドウクランプ、アドミッション制御機構、圧縮、TCP ACKスペーシング、ローカルTCP確認応答、IPトラフィックシェーピング、およびローカルTCP再送信から成るグループから選択された最適化技術を使用してセルごとに最適化されることを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−502584(P2007−502584A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523421(P2006−523421)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/026420
【国際公開番号】WO2005/017707
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
2.リナックス
【出願人】(399047921)テルコーディア テクノロジーズ インコーポレイテッド (61)
【Fターム(参考)】