説明

移動体駆動装置

【課題】移動体を駆動する時に発生する振動や騒音を軽減することができるとともに、長期間使用しても故障しない移動体駆動装置を提供する。
【解決手段】基準体5に設けたベルト車7、9、11の回転をタイミングベルト17により移動体3の往復動に変換する。タイミングベルト17は、一端側ベルト部分17aと、第1および第2のベルト側部17b、17cと、中間ベルト部分17cとを有するように形成されている。タイミングベルト17は、一端側ベルト部分17aと、他端側ベルト部分17bと、一端側ベルト部分および他端側ベルト部分と一体成形により結合されている中間ベルト部分17cとを有する。他端側ベルト部分17bは、その幅方向に互い間隔をおいて位置する第1および第2のベルト側部17b1、17b2からなり、これら第1および第2のベルト側部は、それぞれ、前記幅方向に関して、一端側ベルト部分17aから一方側と他方側にずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫のスタッカークレーンなどの搬送装置に設けられる移動体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体駆動装置は、例えば、荷受け用の腕(移動体)を基準体に対し往復動させるスライドフォークである。
このスライドフォークにおいて、例えば、基準体と移動体との間の動力伝達手段として、チェーンが用いられる。このチェーンを、基準体に設けたスプロケットで駆動することで、移動体を基準体に対し往復動させる。この往復動により、移動体を、ラックに収納されている荷物の下方に差し入れ、別の機構により、移動体を上昇させることで荷物を移動体に載せる。次いで、上述の往復動により、移動体を基準体側に戻す。このようにして、ラックから荷物を取り出す。
【0003】
このような移動体駆動装置は、例えば、下記の特許文献1、2に記載されている。
【0004】
一方、荷物の重量が小さい場合には、基準体と移動体との間の動力伝達手段として、上述のチェーンの代わりに、ラックおよびピニオンを用いることが考えられる。この場合、基準体には、回転駆動されるピニオンが設けられ、移動体には、往復動方向に延びるラックが設けられる。ラックに噛み合うピニオンの回転駆動により、移動体が往復動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−316860号公報
【特許文献2】特開平10−35820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動力伝達手段としてチェーンを用いる場合には、チェーンと、該チェーンを駆動するスプロケットとの噛み合い部分におけるガタにより振動や騒音が生じる。
【0007】
動力伝達手段としてラックを用いる場合も、同様に、ラックと、該ラックを駆動するピニオンとの噛み合い部分におけるガタにより振動や騒音が生じる。
【0008】
一方、移動体駆動装置を長期間使用しても、故障しないようにすることが望ましい。
【0009】
そこで、本発明の目的は、移動体を駆動する時に発生する振動や騒音を軽減することができるとともに、長期間使用しても故障しない移動体駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明によると、移動体を基準体に対し往復動させる移動体駆動装置であって、
基準体に、第1および第2のベルト車が設けられ、第1および第2のベルト車は、それぞれ、前記往復動の方向における一方側と他方側に位置し、
基準体に、第1および第2のベルト車を回転駆動する駆動装置が設けられ、
ベルト車の回転を移動体の往復動に変換するタイミングベルトが設けられ、該タイミングベルトは、前記一方側に位置する移動体の第1の結合位置から、第2のベルト車、第1のベルト車を順に経由して、前記他方側に位置する移動体の第2の結合位置まで延びており、
前記タイミングベルトは、その長手方向一端側に位置する一端側ベルト部分と、その長手方向他端側に位置する他端側ベルト部分と、その長手方向において一端側ベルト部分と他端側ベルト部分との間に位置し両者と一体成形により結合されている中間ベルト部分と、を有し、
タイミングベルトの幅方向から見た場合、一端側ベルト部分は、第1の結合位置から第2のベルト車に向かって延びる途中で、第2の結合位置から第1のベルト車に向かって延びている他端側ベルト部分と交差し、
他端側ベルト部分は、その幅方向に互い間隔をおいて位置する第1および第2のベルト側部からなり、これら第1および第2のベルト側部は、それぞれ、前記幅方向に関して、一端側ベルト部分から一方側と他方側にずれている、ことを特徴とする移動体駆動装置が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記タイミングベルトは、一体として成形されている除去加工対象のタイミングベルトを部分的に除去することで、一端側ベルト部分と、第1および第2のベルト側部と、中間ベルト部分とを有するように形成され、
一端側ベルト部分は、除去加工対象のタイミングベルトの長手方向一端側において、当該タイミングベルトから幅方向の両側部分を除去することで残された幅方向の中央部として形成され、
第1および第2のベルト側部は、除去加工対象のタイミングベルトの長手方向他端側において、当該タイミングベルトから幅方向の中央部分を除去することで、それぞれ、残された幅方向の両側部分として形成されている。
【0012】
好ましくは、一端側ベルト部分の幅は、第1および第2のベルト側部の幅方向間隔よりも小さい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、移動体の前記第1の結合位置には、1対の挟持部が設けられ、該1対の挟持部は、一端側ベルト部分の長手方向端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯と、該挟持部に形成された歯とが噛み合っており、
移動体の前記第2の結合位置には、1対の挟持部が設けられ、該1対の挟持部は、ベルト側部の長手方向端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯と、該挟持部に形成された歯とが噛み合っている。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によると、タイミングベルトを用いて、ベルト車の回転を移動体の往復動に変換するので、移動体を駆動する時に発生する振動や騒音を軽減することができる。すなわち、タイミングベルトとベルト歯車との噛み合い部におけるガタは、チェーンとスプロケットとの噛み合い部におけるガタや、ラックとピニオンとの噛み合い部におけるガタよりも小さいので、移動体を駆動する時に発生する振動や騒音が軽減される。
【0015】
また、次の(A)、(B)により、長期間使用してもタイミングベルトが破断したりすることが無くなり、その結果、移動体駆動装置を長期間使用しても故障しないようにすることが可能となる。
(A)他端側ベルト部分は、その幅方向に互い間隔をおいて位置する第1および第2のベルト側部からなり、これら第1および第2のベルト側部は、それぞれ、前記幅方向に関して、一端側ベルト部分から一方側と他方側にずれている。これにより、駆動力をバランスよく、移動体に伝達することができる(例えば、図1(C)の駆動力F1またはF2のように駆動力を伝達することができる)。その結果、当該駆動力の反力が、タイミングベルトにバランスよく作用する。
(B)一端側ベルト部分、他端側ベルト部分、および中間ベルト部分は、一体成形により互いに結合されている。これにより、一端側ベルト部分、他端側ベルト部分、および中間ベルト部分は、互いに強固に結合されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態による移動体駆動装置を示す。
【図2】本発明の実施形態によるタイミングベルトの製作方法を示す。
【図3】(A)は、図1(B)の3A−3A矢視図であり、(B)は、図1(B)の3B−3B矢視図であり、(C)は、図1(B)の3C−3C矢視図である。
【図4】図1(A)の状態から移動体を前方へ移動させた状態を示す。
【図5】(A)は、図1(A)の5A−5A矢視断面図であり、(B)は、(A)の5B−5B矢視断面図である。
【図6】(A)は、図1(A)の6A−6A矢視断面図であり、(B)は、(A)の6B−6B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による移動体駆動装置10の構成図である。図1(A)は、側面図であり、図1(B)は、図1(A)の1B−1B線矢視の平面図である。図1(C)は、図1(B)において移動体3に作用する駆動力F1またはF2を示す。
【0019】
移動体駆動装置10は、移動体3を基準体5に対し往復動させる。この例では、移動体3は、搬送対象物(例えば荷物)を受ける腕(フォーク)であり、基準体5は、移動可能な搬送装置(例えばスタッカークレーン)の本体フレームである。図1(A)などにおいて、移動体3と基準体5を一点鎖線で示す。
移動体駆動装置10は、第1および第2のベルト車7、9と、駆動装置15、タイミングベルト17とを備える。
【0020】
第1および第2のベルト車7、9は、基準体5に設けられる。第1および第2のベルト車7、9は、それぞれ、図1のように、前記往復動の方向(以下、往復動方向という)における一方側と他方側に位置する。なお、符号7aは、第1のベルト車7の回転軸を示し、符号9aは、第2のベルト車9の回転軸を示す。回転軸7a、7bは、基準体5に設けられた軸受機構(図示せず)により回転可能に支持される。
【0021】
駆動装置15は、第1および第2のベルト車7、9を回転駆動する。図1(B)の例では、駆動装置15は、第3のベルト車11を直接的に回転駆動することで、タイミングベルト17を介して第1および第2のベルト車7、9を間接的に回転駆動するモータである。この場合、モータ15の出力軸が、第3のベルト車11の回転軸11aに同軸に直結されていてよい。
【0022】
タイミングベルト17は、第1〜第3のベルト車7、9、11の回転を移動体3の往復動に変換する。該タイミングベルト17は、前記一方側に位置する移動体3の第1の結合位置X1から、第2のベルト車9、第3のベルト車11、第1のベルト車7を順に経由して、前記他方側に位置する移動体3の第2の結合位置X2まで延びている。これにより、第1〜第3のベルト車7、9、11の回転運動が移動体3の前記往復動に変換される。なお、基準体5には、図示しない往復動ガイドが設けられており、この往復動ガイドが、移動体3が往復動方向以外に移動することを規制しつつ、移動体3を前記往復動方向に案内する。
図1の例では、タイミングベルト17は、その両面に歯が形成されている両歯ベルトであり、回転自在に基準体5に設けられた2つの案内ベルト車13にも係合している。符号13aは、基準体5に設けられた案内ベルト車13の回転軸を示す。回転軸13aは、基準体5に設けられた軸受機構(図示せず)により回転可能に支持される。
【0023】
タイミングベルト17は、その長手方向一端側に位置する一端側ベルト部分17aと、その長手方向他端側に位置する他端側ベルト部分17bと、その長手方向において一端側ベルト部分17aと他端側ベルト部分17bとの間に位置し両者と一体成形により結合されている中間ベルト部分17cと、を有する。タイミングベルト17の幅方向から見た場合、図1(A)のように、一端側ベルト部分17aは、第1の結合位置X1から第2のベルト車9に向かって延びる途中で、第2の結合位置X2から第1のベルト車7に向かって延びている他端側ベルト部分17b(17b1、17b2)と交差する。他端側ベルト部分17bは、その幅方向に互い間隔をおいて位置する第1および第2のベルト側部17b1、17b2からなり、これら第1および第2のベルト側部17b1、17b2は、それぞれ、前記幅方向に関して、一端側ベルト部分17aから一方側と他方側にずれている。
【0024】
タイミングベルト17は、図2のように形成される。図2は、タイミングベルト17(除去加工対象のタイミングベルト19)を平面状に延ばしてその上面から見た図である。図2(A)〜(C)のように、タイミングベルト17は、一体として成形された除去加工対象のタイミングベルト19を部分的に除去する(この例では、切り取る)ことで、一端側ベルト部分17a、第1および第2のベルト側部17b1、17b2、中間ベルト部分17cを有するように形成される。
すなわち、次のようにタイミングベルト17を形成することができる。
まず、図2(A)のように、その上面から見た形状が、横長の長方形であるタイミングベルト19を用意する。なお、タイミングベルト19は、ゴム(例えば、クロロプレンゴム)を用いて成形されたものであってよい。
次に、図2(B)のように、除去加工対象のタイミングベルト19を部分的に切り取る。図2(B)において、破線は、タイミングベルト19における切り取り線である。すなわち、図2(B)の破線に沿って、タイミングベルト19を切り取る。この切り取りにより、一端側ベルト部分17aの幅Wcが、第1および第2のベルト側部17b1、17b2の幅方向間隔Wiよりも小さくなるようにするのがよい。
図2(B)の切り取りにより、図2(C)に示すタイミングベルト17が形成される。すなわち、図2(B)のように、タイミングベルト19の長手方向一端側において、タイミングベルト19から幅方向の両側部分を除去する(切り取る)ことで残された幅方向の中央部として一端側ベルト部分17aが形成され、タイミングベルト19の長手方向他端側において、タイミングベルト19から幅方向の中央部分を除去することで、残された幅方向の両側部分として第1および第2のベルト側部17b1、17b2がそれぞれ形成される。
【0025】
図3(A)は、図1(B)の3A−3A線矢視図であり一端側ベルト部分17aを示し、図3(B)は、図1(B)の3B−3B線矢視図であり第1のベルト側部17b1を示し、図3(C)は、図1(B)の3C−3C線矢視図であり第2のベルト側部17b2を示す。
図3(A)では、一端側ベルト部分17aを実線で示し、第1のベルト側部17b1と中間ベルト部分17cとを破線で示している。図3(B)では、第1のベルト側部17b1を実線で示し、一端側ベルト部分17aとベルト結合17dとを破線で示している。図3(C)では、第2のベルト側部17b2を実線で示し、中間ベルト部分17cを破線で示している。
図3において、符号P1は、一端側ベルト部分17aと中間ベルト部分17cとの結合位置を示し、符号P2は、第1または第2のベルト側部17b1、17b2と中間ベルト部分17cとの結合位置を示す。
【0026】
一端側ベルト部分17aと第1または第2のベルト側部17b1、17b2とは、この例では、移動体3の往復動方向と直交する水平幅方向へ互いに間隔(幅方向隙間)を置いて配置される。また、この例では、一端側ベルト部分17a、第1のベルト側部17b1、第2のベルト側部17b2の各々は、移動体3の往復動方向と平行な鉛直面と平行に配置される。
【0027】
タイミングベルト19は、その両面全体にわたって、第1〜第3のベルト車7、9、11または案内ベルト車13と噛み合う歯が形成されている。従って、一端側ベルト部分17aとベルト側部17b1、17b2も、その両面全体にわたって、第1〜第3のベルト車7、9、11または案内ベルト車13と噛み合う歯が形成されている。
【0028】
図4は、図1(A)の状態から、駆動装置15が、第3のベルト車11を回転駆動することで、移動体3を移動させた状態を示す。このように、例えば、図1(A)に示す移動体位置と、図4に示す移動体位置との間で、移動体3を往復動させることができる。
なお、移動体3は、水平幅方向(即ち、図4の紙面と直交する方向)の中央部が、タイミングベルト17により駆動され、水平幅方向の両端部が、それぞれ基準体5に設けられた前記往復動ガイドにより前記往復動方向に案内されつつ鉛直方向に支持されてよい。
【0029】
図5(A)は、図1(A)の5A−5A矢視断面図である。図5(B)は、図5(A)の5B−5B矢視断面図である。
図5に示すように、移動体3の第1の結合位置X1には、1対の挟持部21、23が設けられ、該1対の挟持部21、23は、一端側ベルト部分17aにおける長手方向端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯26と、該挟持部21、23に形成された歯21a、21bとが噛み合っている。この例では、一端側ベルト部分17aの両面に歯26が形成されており、一端側ベルト部分17aの上面の歯26が、挟持部21の歯21aと噛み合い、一端側ベルト部分17aの下面の歯26が、挟持部23の歯23aと噛み合っている。
図5の例では、各挟持部21、23は、ボルト25により移動体3に結合されている部材である。各挟持部21、23には、一端側ベルト部分17aの前記端部を受け入れる窪みが形成され、この窪みの底面に上述の歯21a、23aが形成されている。
【0030】
図6(A)は、図1(A)の6A−6A矢視断面図である。図6(B)は、図6(A)の6B−6B矢視断面図である。
図6に示すように、移動体3の第2の結合位置X2には、図5の場合と同様に、1対の挟持部21、23が設けられ、該1対の挟持部21、23は、第1のベルト側部17b1における長手方向端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯26と、該挟持部21、23に形成された歯21a、23aとが噛み合っている。この例では、第1のベルト側部17b1の両面に歯26が形成されており、ベルト側部17b1の上面の歯26が、挟持部21の歯21aと噛み合い、ベルト側部17b1の下面の歯26が、挟持部23の歯23aと噛み合っている。この例では、各挟持部21、23には、ボルト25により移動体3に結合されている部材である。各挟持部21、23は、ベルト側部17b1の前記端部を受け入れる窪みが形成され、この窪みの底面に上述の歯21a、23aが形成されている。
また、同様に、移動体3の第2の結合位置X2には、1対の挟持部21、23が設けられ、該1対の挟持部21、23は、第2のベルト側部17b2における長手方向端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯と、該挟持部に形成された歯とが噛み合っている。この第2のベルト側部17b2は、第1のベルト側部17b1と同じ方法・構成で結合位置X2にて移動体3に結合されているので、その説明を省略する。
【0031】
図2のように、タイミングベルト19を部分的に除去することで形成した本実施形態のタイミングベルト17は、図1のように移動体駆動装置10に用いた場合に、その耐用期間が十分に長いことを実験で確認した。これは、次の(A)、(B)、(C)によるものと考えられる。
(A)図1(C)に示すように、タイミングベルト17を介して、駆動装置15から移動体3に駆動力F1またはF2をバランスよく伝達することができる。その結果、当該駆動力の反力が、タイミングベルト17にバランスよく作用する。図1(C)において、矢印F1は、移動体3を図の右側に駆動する時に、一端側ベルト部分17aが移動体3に伝達する駆動力を示すベクトルであり、矢印F2は、移動体3を図の左側に駆動する時に、ベルト側部17b1、17b2が移動体3に伝達する駆動力を示すベクトルである。
(B)一端側ベルト部分17a、他端側ベルト部分17b、および中間ベルト部分17cは、一体成形により互いに結合されている。これにより、一端側ベルト部分17a、他端側ベルト部分17b、および中間ベルト部分17cは、互いに強固に結合されている。
(C)移動体3に設けた1対の挟持部21、23により、一端側ベルト部分17a、第1のベルト側部17b1、または第2のベルト側部17b2の前記端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯26と、該挟持部21、23に形成された歯21a、23aとが噛み合っている。これにより、一端側ベルト部分17a、第1のベルト側部17b1、または第2のベルト側部17b2と移動体3とを強固に結合できる。タイミングベルト17の両面に歯26が形成されていることで、タイミングベルト17の一方面に歯26が形成されている場合と比較して、当該結合が一層強固になっている。
【0032】
好ましくは、上述のように、図2(C)において、一端側ベルト部分17aの幅Wcは、第1および第2のベルト側部17b1、17b2の幅方向間隔Wiよりも小さくなるように、タイミングベルト19を部分的に除去する(切り取る)。これにより、一端側ベルト部分17aと、ベルト側部17b1、17b2との間に、幅方向隙間が確保される。従って、タイミングベルト17の幅方向から見た場合に、図1(A)のように、一端側ベルト部分17aと、第1および第2のベルト側部17b1、17b2とが交差するようになっているが、図1(B)のように、一端側ベルト部分17aと、第1および第2のベルト側部17b1、17b2とが干渉することを防止できる。しかも、新たな部材を設けることなく、前記の幅方向隙間を確保することができる。
【0033】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変形例1〜3を、任意に組み合わせて、または単独で採用してよい。
【0034】
(変形例1)
上述の実施形態では、駆動装置15(モータ)は、第3のベルト車11を直接的に回転駆動させたが、代わりに、第1および第2のベルト車7、9の一方または両方を直接的に回転駆動してもよい。この場合、モータ15の出力軸が、第1または第2のベルト車の回転軸に同軸に直結されていてよい。また、この場合、第3のベルト車11を省略してもよい。
【0035】
(変形例2)
上述の実施形態では、タイミングベルト17は、その両面に歯が形成されているものであったが、その片面にのみ歯が形成されたものであってもよい。この場合、案内ベルト車13を省略し、他の点は、上述と同様であってよい。例えば、移動体3に設けた1対の挟持部21、23により、一端側ベルト部分17a、第1のベルト側部17b1、または第2のベルト側部17b2の前記端部を挟み込み、この状態で、該端部の一方面に形成された歯26と、該挟持部21、23に形成された歯21aまたは23aとが噛み合う。
【0036】
(変形例3)
上述の実施形態では、タイミングベルト19を部分的に除去することでタイミングベルト17を形成したが、タイミングベルト17を、元々一体として成形してもよい。すなわち、図2(C)に示すタイミングベルト17の形状に整合する型を用意し、当該型を用いてタイミングベルト17を成形してよい。
【符号の説明】
【0037】
3 移動体、5 基準体、7 第1のベルト車、9 第2のベルト車、10 移動体駆動装置、11 第3のベルト車、13 案内ベルト車、15 駆動装置(モータ)、17 タイミングベルト、17a 一端側ベルト部分、17b 他端側ベルト部分、17b1 第1のベルト側部、17b2 第2のベルト側部、17c 中間ベルト部分、19 タイミングベルト、21、23 挟持部、25 ボルト、X1 第1の結合位置、X2 第2の結合位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を基準体に対し往復動させる移動体駆動装置であって、
基準体に、第1および第2のベルト車が設けられ、第1および第2のベルト車は、それぞれ、前記往復動の方向における一方側と他方側に位置し、
基準体に、第1および第2のベルト車を回転駆動する駆動装置が設けられ、
ベルト車の回転を移動体の往復動に変換するタイミングベルトが設けられ、該タイミングベルトは、前記一方側に位置する移動体の第1の結合位置から、第2のベルト車、第1のベルト車を順に経由して、前記他方側に位置する移動体の第2の結合位置まで延びており、
前記タイミングベルトは、その長手方向一端側に位置する一端側ベルト部分と、その長手方向他端側に位置する他端側ベルト部分と、その長手方向において一端側ベルト部分と他端側ベルト部分との間に位置し両者と一体成形により結合されている中間ベルト部分と、を有し、
タイミングベルトの幅方向から見た場合、一端側ベルト部分は、第1の結合位置から第2のベルト車に向かって延びる途中で、第2の結合位置から第1のベルト車に向かって延びている他端側ベルト部分と交差し、
他端側ベルト部分は、その幅方向に互い間隔をおいて位置する第1および第2のベルト側部からなり、これら第1および第2のベルト側部は、それぞれ、前記幅方向に関して、一端側ベルト部分から一方側と他方側にずれている、ことを特徴とする移動体駆動装置。
【請求項2】
前記タイミングベルトは、一体として成形されている除去加工対象のタイミングベルトを部分的に除去することで、一端側ベルト部分と、第1および第2のベルト側部と、中間ベルト部分とを有するように形成され、
一端側ベルト部分は、除去加工対象のタイミングベルトの長手方向一端側において、当該タイミングベルトから幅方向の両側部分を除去することで残された幅方向の中央部として形成され、
第1および第2のベルト側部は、除去加工対象のタイミングベルトの長手方向他端側において、当該タイミングベルトから幅方向の中央部分を除去することで、それぞれ、残された幅方向の両側部分として形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の移動体駆動装置。
【請求項3】
一端側ベルト部分の幅は、第1および第2のベルト側部の幅方向間隔よりも小さい、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の移動体駆動装置。
【請求項4】
移動体の第1の結合位置には、1対の挟持部が設けられ、該1対の挟持部は、一端側ベルト部分の長手方向端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯と、該挟持部に形成された歯とが噛み合っており、
移動体の第2の結合位置には、1対の挟持部が設けられ、該1対の挟持部は、ベルト側部の長手方向端部を挟み込み、この状態で、該端部の歯と、該挟持部に形成された歯とが噛み合っている、ことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の移動体駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−225309(P2011−225309A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94861(P2010−94861)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】