移動局測位システムおよび移動局測位方法
【課題】短時間で基地局間の時刻の補正を行うことのできる移動局測位システムを提供する。
【解決手段】受信間隔算出部82(SA1)により、基準基地局11が1回発信し各普通基地局12が受信した拡散符号列における2つの拡散符号の受信間隔が算出され、クロック速度比算出部54(SA2)により各普通基地局12における受信間隔と基準基地局11による2つの拡散符号の発信間隔とに基づいて各普通基地局12と基準基地局11とのクロック速度比が算出され、時計ずれ算出部56(SA3)により基準基地局11の時計44に対する各普通基地局12の時計の時刻ずれが算出され、受信時刻補正部58(SA4)により、各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻が基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正され、測位部60(SA5)により補正された受信時刻を用いた移動局10の測位が行われる。
【解決手段】受信間隔算出部82(SA1)により、基準基地局11が1回発信し各普通基地局12が受信した拡散符号列における2つの拡散符号の受信間隔が算出され、クロック速度比算出部54(SA2)により各普通基地局12における受信間隔と基準基地局11による2つの拡散符号の発信間隔とに基づいて各普通基地局12と基準基地局11とのクロック速度比が算出され、時計ずれ算出部56(SA3)により基準基地局11の時計44に対する各普通基地局12の時計の時刻ずれが算出され、受信時刻補正部58(SA4)により、各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻が基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正され、測位部60(SA5)により補正された受信時刻を用いた移動局10の測位が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である基地局のそれぞれにおける受信時刻の時間差に基づいて移動局の位置の推定を行なう位置推定方法ならびに測位システムに関するものであり、特に、前記複数の基地局間のクロック速度比に基づいて受信時刻を補正することにより、精度のよい移動局の測位を行なうことのできる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信時刻の時間差に基づいて、移動局の位置の検出を行なう測位システムおよび測位方法が提案されている。
【0003】
かかる測位システムあるいは測位方法においては、複数の基地局間の電波の受信時間差を算出する必要があることから、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を共通した時刻に時刻合わせをしておく必要がある。
【0004】
一方、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を時刻合わせすることに代えて、予め前記複数の基地局のそれぞれが有する時計の傾向、すなわち、時計のクロック比や、時刻のずれなどを検出あるいは算出するなどにより把握しておき、それぞれの基地局の時計により検出された移動局からの電波の受信時刻を、前記時計の傾向に基づいて補正する技術が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術がそれである。
【0005】
【特許文献1】特許第3801123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の記載によれば、1の基地局から複数回にわたって発信される信号の受信時間を複数ある他の基地局が各々のクロックにより測定し、それらの受信時間などに基づいて各基地局のクロック速度比を推定し、推定されたクロック速度比に基づいて移動局からの電波の各基地局における受信時間を補正して移動局の位置の検出を行なう技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術によれば、クロック速度比の算出のためには、1の基地局から他の基地局へ複数回の信号の発信を有する。そのため、測位に要する時間が長くなるおそれがあった。
【0008】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、前記複数の基地局のいずれか1の基地局である基準基地局から他の基地局への信号の発信を1回行なうことで、複数の基地局のそれぞれが有する時計のクロック速度比を算出することができ、短時間で精度のよい移動局の位置の推定を行なうことができる移動局測位システムおよび移動局測位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、(b)前記複数の基地局のうち、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、(c)前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、(d)前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、(e)前記受信間隔算出手段によって算出された前記2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、(f)前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離に基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、(g)前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、(h)該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、好適には、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、(a)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、(b)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、(c)前記受信間隔算出手段は、前記オンライン受信時刻検出手段による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出手段を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出すること、
を特徴とする。
【0012】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位方法であって、(b)前記複数の基地局のうち少なくとも1つは、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する基準基地局であり、(c)前記複数の基地局のうち少なくとも2つは、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する普通基地局であり、(d)前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出工程と、(e)前記受信間隔算出工程によってそれぞれ算出された普通基地局のそれぞれにおける前記2つの拡散符号のそれぞれについての受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出工程と、(f)前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と、前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離に基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出工程と、(g)前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出工程によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出工程により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正工程と、(h)該受信時刻補正工程により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれることを特徴とする。
【0016】
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、(a)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出工程と、(b)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出工程よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出工程と、を有し、(c)前記受信間隔算出工程は、前記オンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出工程を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出工程によって検出すること、を特徴とする。
【0017】
また、請求項9にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信することを特徴とする。
【0018】
また、請求項10にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1にかかる移動局測位システムあるいは請求項6にかかる移動局測位方法によれば、前記受信間隔検出手段あるいは前記受信間隔検出工程により、前記基準基地局が1回発信し2以上の前記普通基地局がそれぞれ受信した2つの拡散符号を含む拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段あるいは前記クロック速度比算出工程により、前記受信間隔検出手段あるいは前記受信間隔検出工程によってそれぞれ検出された各普通基地局における前記2つの拡散符号の受信時刻の間隔である受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比が算出され、前記時計ずれ算出手段あるいは前記時計ずれ算出工程により、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離に基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計のずれが算出され、前記受信時刻補正手段あるいは前記受信時刻補正工程により、前記普通基地局のそれぞれにより、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出された前記移動局からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比と前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正され、前記測位手段あるいは前記測位工程により、該受信時刻補正手段あるいは受信時刻補正工程により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置が推定されるので、前記基準基地局による1回の拡散符号列の発信に基づいて前記普通基地局のそれぞれの時計と前記基準基地局の時計とのクロック速度比が算出されるため、短時間で高精度の測位が可能となる。
【0020】
また、請求項2にかかる移動局測位システムあるいは請求項7にかかる移動局測位方法によれば、前記基準基地局による前記拡散符号列の送信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれるので、前記複数の基地局において移動局からの電波が受信された場合に、すみやかに前記クロック速度比を用いた受信時刻の補正を行なうことができ、測位に要する時間が短縮される。
【0021】
また、請求項3にかかる移動局測位システムあるいは請求項8にかかる移動局測位方法によれば、前記受信間隔算出手段あるいは受信間隔算出工程においては、前記拡散符号の受信に伴って受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を行なうことにより前記電波の受信時刻を検出する前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程よりも詳細な精度により電波の受信時刻を検出する前記オフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出するので、前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程よりもより精度の高い検出が可能な前記オフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程によって行なうことができる。また、より多くの電力を必要とする前記オフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程の実行を、前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて決定されるオフライン検出実行区間において行なうことができ、消費電力の低減が図られる。
【0022】
また、請求項4にかかる移動局測位システムあるいは請求項9にかかる移動局測位方法によれば、前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信するので、前記2つの拡散符号が同一である場合には、拡散符号の同期検出のための構成を簡素にすることができる。また、前記2つの拡散符号が相互に異なる場合には、前記普通基地局は受信した前記2つの拡散符号のそれぞれを識別することができ、受信間隔を確実に算出することができる。
【0023】
また、請求項5にかかる移動局測位システムあるいは請求項10にかかる移動局測位方法によれば、前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を送信するので、同時に複数の基準基地局が存在することが可能であり、基準基地局が故障した場合における冗長性を有することができる。また、前記複数の普通基地局が第2の基準基地局としての機能を有することにより、測位可能な領域を重畳的に増加することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の移動局位置推定システムの構成の一例を示した図である。図1には、平面上の任意の形状に設けられる移動局10が移動可能な領域として一辺30(m)の正方形からなる測位可能領域5が設けられている。また、前記測位可能領域5には、後述する移動局10と無線による通信を行う機能を有する基地局として、1つの基準基地局11、および、3つの普通基地局として第1普通基地局12A、第2普通基地局12B、第3普通基地局12Cがそれぞれ設けられる。なお、基準基地局および普通基地局の数は、その機能から、それぞれ基準基地局は1つ以上、普通基地局は2つ以上が存在する。また、移動局の測位を行うには、後述するように、平面上を移動する移動局10の位置を電波の伝搬時間を用いて算出する場合には少なくとも3個の基地局が必要である。従って、前記測位可能領域の何れの地点においても、少なくとも移動局が3個の基地局と通信可能となるように基地局が配置されている。なお、基地局の数が多いほど移動局の位置の算出は正確に行うことができる。本図1においては、正方形の測位可能領域5の4隅にそれぞれ基準基地局11および普通基地局12A乃至12Cが1つずつ配置されており、4つの基地局が存在しており、移動局の測位を行うために必要となる要件を満たす。また、移動局10は前記測位可能領域5内において測位可能とされている。なお、本実施例においては、移動局10の数は1個とされているが、移動局の個数は特に限定されない。また、各基地局と例えば有線ケーブル52により接続されることにより通信可能とされた測位サーバ14が設けられ、前記移動局10によって発信され前記基地局12によって受信された電波に基づいて、前記測位可能領域内における基地局10の位置を算出する。なお、本明細書において、特に個々の普通基地局12A乃至12Cを区別しない場合には普通基地局12と表記する。また、基準基地局11と普通基地局12を区別しない場合には、基地局11、12と表記する。
【0026】
このとき、測位可能領域5は、便宜上図2に示す様にx軸およびy軸が定義され、測位可能領域5上の点はこの軸に基づいて座標が規定される。すなわち、基準基地局11は座標(0,0)上に、第1基地局12Aは座標(0,30)上に、第2基地局12Bは座標(30,30)上に、第3基地局12Cは座標(30,0)上にそれぞれ配置されている。
【0027】
図3は移動局10の機能の概要を示す機能ブロック図である。移動局10は、移動局が電波の送受信を行なうアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29などを有している。
【0028】
無線通信部26は、移動局10の無線通信を行なうものであって、移動局10が電波を発信する際において、電波を発信する発信手段である。具体的には、後述する発信符号生成部29によって生成された拡散符号列を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バラン(balun)などにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波が前記アンテナ20により発信される。また無線通信部26は基地局から送信される制御信号を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ20によって受信された電波に対し、無線通信部26は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0029】
信号処理部28は、無線通信部26により復調された信号を処理することにより基地局から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部30に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0030】
発信符号生成部29は、移動局が基地局11、12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部32によって生成される拡散符号と予告符号生成部33によって生成される予告符号とに基づいて生成する。この発信符号生成部29によって生成された発信符号は無線通信部26により無線により発信される。この発信符号生成部29は、後述する詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部32と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部33を有する。
【0031】
このうち、拡散符号生成部32は、後述する基地局11、12の詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する。また、予告符号生成部33は、前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は例えば、前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差であり、例えば予め決定され基地局11、12と移動局10との間で既知とされた値が用いられる。すなわち、前記発信符号生成部29によって生成される拡散符号列は、少なくとも前記予告符号と、前記所定時間だけ後に発信される前記拡散符号とを含んで構成される。
【0032】
また、時計31は、移動局10において電波の発信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0033】
制御部30は前記無線通信部26、信号処理部28、発信符号生成部29などの作動を制御する。例えば、移動局10の位置を測定するために基地局12に対し電波を発信する指令を受けた場合に、所定の出力で電波を発信する。
【0034】
また、制御部30は、移動局10が電波を発信する場合と電波を受信する場合とに応じて、前記無線通信部26、信号処理部28などの作動を切り換えるよう制御する。また制御部30は、基地局からの制御指令に基き測位のための拡散符号送信要求を受信したときに、発信符号生成部32に対して所定の時刻に拡散符号を無線通信部26に送信するように制御する
【0035】
図4は、基地局11、12の機能の概要を示す機能ブロック図である。基地局11、12はアンテナ35、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72を有し、これらはそれぞれ前述の移動局10が有するアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29と同様の機能を有する、また、基地局11、12はこれらのアンテナ20、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72に加え、リアルタイム受信時刻検出部78、詳細受信時刻検出部80、受信間隔算出部82、制御信号生成部37などを有する。
【0036】
すなわち、無線通信部34は、基地局11、12の無線通信を行なうものであって、基地局11、12が電波を受信する際において、電波を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ35によって受信された電波に対し、無線通信部34は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0037】
また、信号処理部36は、無線通信部34により復調された信号を処理することにより基地局から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部38に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0038】
制御信号生成部37は後述する基準基地局における空きチャンネル探索のための制御信号の生成および普通基地局における空きチャンネル探索の応答信号を生成する。また移動局に対して測位信号の送信を要求する信号を生成する。制御信号生成部37において生成された制御信号は無線通信部34に送信されてアンテナ35により無線送信される。
【0039】
なお、制御部38は移動局10の制御部30が移動局における電波の発信する状態と受信する状態を切り換えるの同様に、基地局12の制御部38は、基地局12が電波を発信する状態と電波を受信する状態とを切り換えることができ、これらの状態に応じて、前記無線通信部34、信号処理部36などの作動を切り換えて制御する。
【0040】
また、無線通信部34は、制御信号生成部37によって生成された信号を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バランなどにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波がアンテナ35により発信される。このように、基地局12は電波を受信することに加え、発信することも可能である。一方、前述のように移動局10は電波を発信することに加え受信することも可能であることから、基地局12は移動局10に対し無線によりその作動を制御することが可能である。
【0041】
発信符号生成部72は、基地局11、12が基準基地局11として作動する場合において、基準基地局11が普通基地局12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部74によって生成される拡散符号と予告符号生成部76によって生成される予告符号とに基づいて生成する。また、発信符号生成部72はこの拡散符号列を発信する際において、前記第2の拡散符号の発信完了時刻についての情報を、後述するサーバ通信部40を介して測位サーバ14に送信する。この発信符号生成部72は、後述する詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部74と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部76を有する。
【0042】
このうち、拡散符号生成部74は、後述する詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号であって、第1の拡散符号と第2の拡散符号の2つの拡散符号を含む拡散符号列を生成する。また、予告符号生成部76は、前記拡散符号生成部74によって生成される2つの拡散符号を含む拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は測位システムにより予め決められており、その情報にもとづき制御部38は拡散符号生成部74と予告符号生成部76を制御する。
【0043】
前述のように、基地局11、12は共通する構成を有することから、基準基地局11として作動する基地局が、その作動に代えて、あるいはその作動に加えて普通基地局12としての作動を行うことが可能である。このようにすれば、基準基地局11として作動していた基地局が故障した場合に、それまで普通基地局12として作動していた基地局が新たに基準基地局11として作動することが可能となり、測位システム8としての冗長性を有することができる。
【0044】
図6は、発信符号生成部72が生成する拡散符号列の一例を説明する図である。図6においては、時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。すなわち、左に行くほど時刻が後において発生される拡散符号を表している。図6において、前記第1の拡散符号はPN1、前記第2の拡散符号はPN2、前記予告符号はPN3でそれぞれ表されている。
【0045】
まず、予告符号生成部76によって生成された予告符号PN3が、第1の拡散符号の発信の所定時間p前に発信される。このとき、予告符号PN3の発信完了時刻がTaq1’である。その後、この所定時間pの経過後に、拡散符号生成部74により生成される第1の拡散符号PN1が発信され、続いて同じく拡散符号生成部74により生成される第2の拡散符号PN2が前記PN1に連続して発信される。このとき、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻をtim_b0_trfend_b0、第2の拡散符号PN2の発信完了時刻をtim_b0_trlend_b0とする。また、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差tim_b0_trlend_b0−tim_b0_trfend_b0はTsとする。また、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻はtim_b0_trfend_b0は、前述の予告符号PN3の発信完了時刻Taq1’と前記発信時間差pを用いて、tim_b0_trfend_b0=Taq1’+pと表される。
【0046】
また、図6に示す符号列において、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されている。これは、この符号列を受信した場合において、受信側で同期検出を行う際のレプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さい符号であればよい。従って、レプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さいのであれば、PN0が全て同一の拡散符号である必要はない。このとき前記所定時間pは、前記予告符号PN3と第1の拡散符号PN1の間に発信される符号PN0の個数によって決定される。また、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3としては、例えば同一の拡散符号が用いられる。
【0047】
図4に戻って、リアルタイム受信時刻検出部78は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波と、その受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局12による電波の受信時刻とする。なお、このような処理を同期検出という。このリアルタイム受信時刻検出部78は、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。このリアルタイム受信時刻検出部78は、例えば移動局10から測位のために発信される予告符号の各基地局11、12における受信時刻を検出するほか、普通基地局12においては、基準基地局11から発信される前記予告符号の受信時刻の検出にも用いられる。なお、前述のように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3として、同一の拡散符号が用いられる場合には、この同一の拡散符号と同一の符号である1つのレプリカ符号についてのみ同期検出を行なえばよい。
【0048】
このとき、リアルタイム受信時刻検出部78は、前記無線通信部34による電波の受信に伴って、すなわち前記無線通信部34の受信信号に対して即座に同期検出を行ういわゆるリアルタイムによる同期検出を行う。言い換えれば、受信する拡散符号の速度に合った速度で同期検出処理を行わなければならず、例えば拡散符号を順次受信する場合において、ある符号を受信したら、その符号の同期検出は次の符号を受信するまでに完了しなければならい。なお、このリアルタイム受信時刻検出部78がオンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程に対応する。ところで、前述のように同期検出は、受信波とその受信波を発信する際に行なった拡散処理に用いた拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、その相関値のピークが出現した時刻を受信時刻とするものであるが、この同期検出の精度は、前記受信信号を微小時間ごとにずらす際に、どれほど細かく微小時間を設定し得るかによって左右される。すなわち、前記微小時間の長さと同期検出に要する計算の回数が反比例するためである。従って、前述のようなリアルタイムで同期検出を行う場合においては、計算を行うことのできる時間、すなわち計算の回数に制約が存在し、そのため、同期検出を行う際の精度に限界がある。
【0049】
詳細受信時刻検出部80は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を前記リアルタイム受信時刻検出部78がおこなうよりもより高精度に測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波を一旦図示しない記憶装置に記憶しておき、その記憶された受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局12による電波の受信時刻とする。このとき、前記微小時間を前記リアルタイム受信時刻検出部78の同期検出における微小時間よりも短いものとすることにより、高精度の検出が可能となる。この詳細受信時刻検出部80は、前記図示しない記憶装置に加え、前述のリアルタイム受信時刻検出部78と同様に、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。なお、この詳細受信時刻検出部80がオフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程に対応する。
【0050】
この詳細受信時刻検出部80は、特に定められる時間区間においてのみ実行されることが可能である。すなわち、基地局11、12は前記リアルタイム受信時刻検出部78による受信時刻の検出を常時行うようにしておき、特に詳細受信時刻検出部80により高精度な受信時刻の検出を行うように定められた時間区間においてのみ、前記リアルタイム受信時刻検出部78による受信時刻の検出に加えてあるいはこれに代えて詳細受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うようにしてもよい。このようにすれば、詳細受信時刻検出部80はリアルタイム受信時刻検出部78に比べて演算に要する電力をより多く必要とするため、特に定められた時間区間においてのみ詳細受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うことにより、基地局11、12の省電力化を図ることができる。
【0051】
例えば、後述する受信間隔算出部82によって算出される各普通基地局12における前記第1の拡散符号の受信時刻と前記第2の拡散符号の受信時刻との受信時間差はより高精度に算出されることが望ましい。そこで、詳細受信時刻検出部80は、前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。例えば、詳細受信時刻検出部80は前記基準基地局11において前記第1の拡散符号に先立って発信される予告符号に基づいて前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。
【0052】
図7は、前記基準基地局11が発信する前記予告符号、前記第1の拡散符号および前記第2の拡散符号を含む符号列を普通基地局12が受信した場合の受信信号を示した図である。図7においては、図6と同様に時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。ここで、普通基地局12においては、リアルタイム受信時刻検出部78が予告符号PN3の受信を検出すると、詳細受信時刻検出部80は、その受信完了時刻Taq1から予告符号と第1の拡散符号との発信時間差pの経過後を中心として、前後の幅がそれぞれマージンmの時間区間を詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間とする。すなわち、Taq1+p−m≦t≦Taq1+p+mにおいて、高精度な受信時刻の検出を実行する。この検出対象時間区間がオフライン検出実行区間に対応する。ここで、マージンmは、第1の拡散符号および第2の拡散符号の受信に要する時間と、基準基地局11の時計44と全ての普通基地局12の時計44との時刻のずれや、クロック速度の比などを考慮し、前記第1の拡散符号および第2の拡散符号の両方について詳細受信時刻検出部80による高精度な時刻の受信時刻の検出が行うことができるように設定される値である。
【0053】
図4に戻って受信間隔算出部82は、前記詳細受信時刻検出部80によって検出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信間隔が算出される。すなわち、前記詳細受信時刻検出部80においては、同期検出により、第1の拡散符号の受信完了時刻と第2の拡散符号の受信完了時刻とが検出されることから、これらの差を算出することにより、前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔が算出される。すなわち、この受信間隔算出部82と前記詳細受信時刻検出部80とによって受信間隔検出手段もしくは受信間隔検出工程は実現される。
【0054】
制御部38はまた、前記無線通信部34、信号処理部36、サーバ通信部40などの作動を制御する。
【0055】
サーバ通信部40は、有線ケーブル52を介して接続された後述する測位サーバ14との通信を必要に応じて行なうものであり、例えば、基地局11、12が移動局10から受信した電波について詳細受信時刻検出部80によって検出された受信時刻や、普通基地局12が基準基地局11から受信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との受信間隔や、基準基地局11の第2の拡散符号の発信終了時刻、発信符号生成部72が発信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との発信間隔などの値を測位サーバ14に対し発信したり、サーバーより指定される発信符号生成部72において生成する拡散符号列における第1の拡散符号と第2の拡散符号の間隔、あるいは基地局12に対する指令や移動局10に対し無線で行なう制御作動の指令を測位サーバ14から受信するなどの作動を行う。
【0056】
また、時計44は、基地局12において電波の発信時刻や受信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0057】
なお、図2および図3に示した移動局10および基地局12においては、本発明における制御作動に直接関与しない機能に対応する機能ブロックは省略されている。例えば、移動局10および基地局12においては、図示しない電源などが含まれている。この電源は、移動局10、基地局および測位サーバ14のそれぞれに必要な電力を供給するものである。
【0058】
図5は測位サーバ14の機能の概要を示す機能ブロック図である。測位サーバ14は、ケーブル52を介して各基地局12と接続されており、基地局通信部53、クロック速度比算出部54、時計ずれ算出部56、受信時刻補正部58、測位部60、測位結果出力部62などを有する。このうち、基地局通信部53は、有線ケーブル52を介して接続された前記基地局11、12のサーバ通信部40との間で必要な通信、例えば測定データの送受信や、基地局12や移動局10の作動を制御する指令の送信などを行なう。
【0059】
クロック速度比算出部54は、前記各普通基地局12の受信間隔算出部82によって算出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、前記基準基地局11の発信符号生成部72において生成され、無線通信部34などにより発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、前記普通基地局12のそれぞれが有する時計44と、前記基準基地局11の有する時計44との速度の比であるクロック速度比を算出する。このクロック速度比算出部54がクロック速度比算出手段あるいはクロック速度比算出工程に相当する。
【0060】
具体的には、このクロック速度比rera_b0biは、基準基地局11が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準とした詳細受信時刻検出部80による受信時刻であるtim_bi_rvlend_b0bi、前記第1の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準とした詳細受信時刻検出部80による受信時刻tim_bi_rvfend_b0bi、および前記基準基地局11の発信符号生成部72による前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔である符号周期Tsを用いて、以下の式(1)により得られる。
rera_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )/ Ts …(1)
【0061】
時計ずれ算出部56は、基準基地局11の時計44の時刻に対する普通基地局12のそれぞれの時計44の時刻のずれである時計ずれを算出する。この時計ずれは、基準基地局11の時計44の時刻に対する時刻の進みあるいは遅れであり、例えば基準基地局11から発信される電波の発信時刻と、その電波を受信した普通基地局12におけるその電波の受信時刻と、さらに基準基地局11と普通基地局12との既知の距離から算出される前記電波の伝搬時間とに基づいて算出される。この時計ずれ算出部が時計ずれ算出手段あるいは時計ずれ算出工程に対応する。
【0062】
具体的には例えば、この時計ずれte_aq_b0biは、基準基地局11の無線通信部34が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の送信完了を基準基地局11の時計44で測定した送信完了時刻である時刻tim_b0_trlend_b0と、前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信時刻を詳細受信時刻検出部80により普通基地局12の時計44を用いて測定した受信完了時刻tim_bi_rvlend_b0biと、予めシステム8により既知である基準基地局11と普通基地局12との距離(例えば30m)に電波の速度c(=2.997×108(m/s))を除することにより算出される伝搬時間tau0_iを用いた以下の式(2)により得られる。
te_aq_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i …(2)
すなわち、前記第2の拡散符号を例として、基準基地局11における発信完了時刻と普通基地局12における受信完了時刻とから算出される見かけの電波の伝搬時間と、実際の基準基地局11と普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とを比較し、これらの値に差があれば、それが基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれである。
【0063】
受信時刻補正部58は、移動局10から発信された電波が各普通基地局12において受信された際に各普通基地局12におけるリアルタイム受信時刻検出部78によって各普通基地局12の時計44に基づいて検出された受信時刻を、前記クロック速度比算出部54において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44とのクロック速度比、および前記時計ずれ算出部56において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44との時刻ずれに基づいて、前記基準基地局11の時計44での時刻に補正する。この受信時刻補正部58が受信時刻補正手段あるいは受信時刻補正工程に対応する。
【0064】
具体的には例えば、受信時刻補正部58は次の手順により受信時刻の補正を行う。まず、移動局10から発信された電波が基準基地局11および普通基地局12において受信された際の、それぞれのリアルタイム受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻が、基準基地局11においては、tim_b0_rvend_m1b0であり、普通基地局12においてはtim_bi_rvend_m1biであったとする。このとき、普通基地局12のリアルタイム受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを基準基地局11の時計44に基づいた時刻に換算すると、換算後の前記普通基地局12の受信時刻TOA_m1biは、次式(3)で表される。
TOA_M1bi = tim_bi_rvend_m1bi - ( tim_bi_rvend_m1b0 - tim_b0_rvend_m1b0 ) …(3)
ここで、この式(3)の右辺第1項であるtim_bi_rvend_m1b0は移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻tim_b0_rvend_m1b0を普通基地局12の時計44に換算した時刻である。すなわち、右辺の括弧で囲まれた第2項は、移動局10からの電波を基準基地局11が受信した際の基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれを表す項である。
【0065】
また、前記式(3)におけるtim_bi_rvend_m1b0は、前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比rera_b0biを用いて、以下の式(4)で表される。
tim_b1_rvend_m1b0 = tim_bi_aq
+ ( tim_b0_rvend_m1b0 - tim_b0_aq ) × rera_b0bi …(4)
ここで、この式(4)の右辺第1項であるtim_bi_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の普通基地局12の時計44における時刻である。また、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、tim_b0_rvend_m1b0は移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻であり、rera_b0biは前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比である。すなわち、前記式(4)の右辺第2項は、前記基準基地局11において前記時計ずれ算出部56により時刻ずれが算出されてから前記移動局10からの電波を受信するまでの時間を前記基準基地局11の時計44により計測したものに、前記基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44とのクロック速度比を乗ずることにより、その時間を普通基地局12の時計44に対応する時間に換算した値となる。
【0066】
更に、前記式(4)におけるtim_bi_aqは、前記時計ずれ算出部56によって算出される基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれte_aq_b0biを用いて、以下の式(5)で表される。
tim_bi_aq = tim_b0_aq + te_aq_b0bi …(5)
ここで、前述のように、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、前述のように時刻ずれ算出部56は基準基地局11における第2の拡散符号の送信完了時刻(送信時刻)であるので、
tim_b0_aq=tim_b0_trlend_b0 …(6)
である。この式(6)と前記時刻ずれte_aq_b0biを表す式(2)を用いて前記式(5)を変形すると、
tim_bi_aq = tim_b0_trlend_b0 + ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i
= tim_bi_rvlend_b0bi - tau0_i …(7)
となる。以上より、受信時刻補正部58は、普通基地局12の詳細受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0067】
受信時刻補正部58は、前述の手順を普通基地局12の数だけ繰り返すことにより、全ての普通基地局12について、その詳細受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0068】
なお、本実施例においては、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮していない。これは、現実には前記伝搬時間は数ナノ(10-9)秒程度であり、したがって伝搬中のクロック速度比により発生する誤差は無視できるほど小さく、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮しないとしても差し支えないためである。もちろん、これを考慮することも可能である。
【0069】
図5に戻って、移動局の位置の算出、すなわち測位を行う測位部60は、前記受信時刻補正部58により基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正された各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、前記基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、既知の各基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の測位を行う。
【0070】
このとき、移動局10から発信される電波には、前述のように、発信符号生成部29によって生成された拡散符号列が含まれる。この拡散符号列は、予告符号生成部33によって生成された予告符号と、予告符号の発信後所定時刻経過後に発信される拡散符号生成部32により生成される拡散符号とからなる。そのため、各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記クロック速度比算出部54などにおいて用いる基準基地局11からの電波の受信時刻を算出したのと同様の手順により、まず、リアルタイム受信時刻検出部78によって移動局10から発信される前記予告符号を受信するとともに、詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間を決定し、この区間において詳細受信時刻検出部80により移動局10から発信される前記拡散符号を受信することにより、精度よく移動局からの電波の受信時刻を検出することが可能となる。
【0071】
また、このようにして検出される各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記受信時刻補正部58によって基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正されているので、各基地局11、12の時計44の時刻が実際には同期させられていなくても、前記補正後の受信時刻を用いることにより、あたかも各基地局11、12の時計44が基準基地局11の時計44に同期されているかのように扱うことができる。なお、測位部60が測位手段あるいは測位工程に対応する。
【0072】
例えば、図8において、時刻t0において移動局10から電波が発信され、3つの基地局である基準基地局11、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bにおいてそれぞれ詳細受信時刻検出部80によりtim_b0_rvend_m1b0、tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2において移動局からの電波が受信されたとする。これらのうち普通基地局12においてそれら普通基地局12の時計44によって検出された受信時刻は、受信時刻補正部58は、基準基地局11の時計44の時刻を基準とする時刻に補正されている。すなわち、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bにおける移動局10からの電波の受信時刻tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2は、それぞれ、TOA_m1b1、TOA_M1b2に補正されている。なお、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻は受信時刻補正部58による補正がされないが、記号の統一のために、以下、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻をTOA_m1b0と記す。すなわち、TOA_m1b0 = tim_b0_rvend_m1b0である。
【0073】
このとき、実際の電波の伝搬時間は、各基地局11、12によって測定される受信時刻と移動局10の時計31によって測定される発信時刻との差に、前記基地局11、12の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれを考慮したものとなる。なお、前述のように、本発明においては、各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻は、基準基地局11の時計44の時刻に対応する受信時刻に補正されていることから、この補正後の受信時刻を用いることにより、各基地局11、12の時計44は基準基地局11の時計44と同期しているとみなすことができる。従って、前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれをΔtとすると、移動局10から基準基地局11への電波の伝搬時間は(TOA_m1b0−t0+Δt)移動局10から第1普通基地局12Aへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b1−t0+Δt)、移動局10から第2普通基地局12Bへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b2−t0+Δt)となる。前述のように、図8において各基地局12の位置は既知であって、その位置を示す座標は、基準基地局11は(x0,y0)、第1普通基地局12Aは(x1,y1)、第2普通基地局12Bは(x2,y2)であり、測位の対象である移動局10の位置を示す座標を(x,y)とすると、電波の速度をc(m/s)を用いて、
(x−x0)2+(y−y0)2=(c×(TOA_m1b0−t0)+s)2,
(x−x1)2+(y−y1)2=(c×(TOA_m1b1−t0)+s)2, …(8)
(x−x2)2+(y−y2)2=(c×(TOA_m1b3−t0)+s)2
となる。ただしs=Δt×cである。また、図8におけるr1、r2、r3はそれぞれ、r0=c×(TOA_m1b0−t0)、r1=c×(TOA_m1b1−t0)、r2=c×(TOA_m1b2−t0)を表している。ここで、式(8)の第2式および第3式のそれぞれの両辺の平方根をとり、更にその両辺から、第1式の両辺の平方根をとったものを引いて導出される式、
【数1】
を例えばニュートンラフソン法などにより解くことで、移動局10の位置(x,y)が算出される。なお、前記式(8)が式(9)のように変形されると、移動局10による電波の発信時刻t0および移動局10の時計31と基準基地局11の時計44の時刻ずれΔtに伴う距離sは式(9)から消去され、解の算出にあたりこれらの値を得る必要がない、いわゆるTDOA(Time Difference of Arrival)方式による測位となる。なお、図8においては、1つの基準基地局11および2つの普通基地局である3つの基地局11、12からなる場合について説明したが、4以上の基地局11、12が移動局10からの電波を受信した場合も同様であるので、説明を省略する。また3次元測位の場合においても未知数が一つ増えるだけであるので説明を省略する。
【0074】
図5に戻って、制御部56は、基地局通信部54、測位部60などの作動を制御するものである。また出力部62は、測位部60によって算出された移動局10の位置についての情報などを所定の方法、例えば図示しない出力装置として設けられたディスプレイ装置に表示するなどによって出力する。
【0075】
図9は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の概要を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、所定の間隔で基準基地局11から発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記各普通基地局12において受信される際の受信間隔が算出される受信間隔算出ルーチンが実行される。
【0076】
図10は、この受信間隔算出ルーチンの一例を説明するフローチャートである。まずSB1においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、基準基地局11から普通基地局12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSB2においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSB3以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSB1の探索が続けられる。
【0077】
SB3においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、基準基地局11から発信される拡散符号列を受信する命令がされる。続くSB4においては、SB3の命令を受けた各普通基地局12から、前記拡散符号列の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB5以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SB3における受信命令の送信が再度行われる。
【0078】
SB5においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、前記SB1で探索され発見された空きチャンネルを使用して前記拡散符号列を無線により送信する命令が送信される。そして、基準基地局11の発信符号生成部72、信号処理部36、無線通信部34などに対応するSB6においては、SB5の命令を受信した基準基地局11によって、前記予告符号PN3および第1の拡散符号PN1が所定の間隔pで、そして、第1の拡散符号PN1に続いて第2の拡散符号PN2が発信されるように生成された拡散符号列が無線により発信される。
【0079】
普通基地局12の無線通信部34、信号処理部36、リアルタイム受信時刻検出部78などに対応するSB7においては、SB6において基準基地局11から発信された拡散符号列を受信したか否かが判断される。そして、全ての普通基地局12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB8が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SB5乃至SB7がくり返し実行され、全ての普通基地局12が基準基地局11から発信される拡散符号列を受信されるまで反復される。
【0080】
詳細受信時刻検出部80、受信間隔算出部82などに対応するSB8においては、前記SB6において基準基地局11から発信され、SB7において受信された電波に含まれる前記第1の拡散符号および前記第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻が検出されるとともに、その受信間隔が算出される。このとき、受信時刻の検出においては、例えば受信波がいったん図示しない記憶装置などに記憶され、その記憶装置から適宜読み出された受信波をリアルタイムで同期検出を行う場合よりも小さい値に設定された遅延時間ごとに遅延させる遅延回路とマッチドフィルタなどを用いてレプリカ信号との相関値が算出され、相関値のピークを検出した受信完了時刻を受信時刻とするなどの方法により行われる。なお、本ステップは例えば、SB7において予告符号の受信を検出した時刻Taq1から所定時間後の予め算出された所定時間間隔であるTaq1+p−m≦t≦Taq1+p+mにおいて実行される。このようにして算出された前記受信間隔が測位サーバ14に送信され、本ルーチンは終了する。
【0081】
図9に戻って、クロック速度比算出部54に対応するSA2においては、SA1において算出された各普通基地局12における前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との受信間隔( tim_bi_rvend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )と、SB6において基準基地局11から発信された前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との発信間隔Tsとに基づいて、基準基地局11の時計44と各普通基地局12のそれぞれの時計44とのクロック速度比rera_b0biが算出される。
【0082】
時計ずれ算出部56に対応するSA3においては、例えば、SA1において各普通基地局12における前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記基準基地局11による第2の拡散符号の発信時刻tim_bi_rvfend_b0biと、前記各普通基地局12における第2の拡散符号の受信時刻tim_bi_rvend_b0biと、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間tau0_iとに基づいて、前記基準基地局11の時計44の時刻と前記各普通基地局12の時計44の時刻との時刻ずれte_aq_b0biがそれぞれの普通基地局12について算出される。
【0083】
受信時刻補正部58に対応するSA4においては、前記各普通基地局12において受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記基準基地局11の時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SA2において算出されるクロック速度比、SA3において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0084】
測位部60に対応するSA5においては、移動局10の位置の算出を行うための測位ルーチンが実行される。
【0085】
図11は、この測位ルーチンの一例を説明する図である。まずSC1においては、図10の受信間隔算出ルーチンにおけるSB1乃至SB2と同様に、測位サーバ14から基準基地局11に対し、移動局10から各基地局11、12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSC2においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSC3以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSC1の探索が続けられる。
【0086】
SC3においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、移動局10から発信される拡散符号を受信する命令がされる。続くSC4においては、SC3の命令を受けた各基地局11、12から、前記拡散符号の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての基地局11、12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC5以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SC3における受信命令の送信が再度行われる。
【0087】
SC5においては、測位サーバ14から移動局10に対し、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が、例えば基準基地局11を介して送信される。すなわち、測位サーバ14からの命令を受けた基準基地局11により、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が無線により発信される。そして、移動局10の信号処理部28、無線通信部26、制御部30などに対応するSC6においては、SC5の命令を受信した移動局10によって、移動局10の測位のための拡散符号が発信される。このとき発信される拡散符号は、予め受信する基地局11、12においてレプリカ符号が準備される既知のものであれば何れの拡散符号でもよいが、例えば前述の予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、更に、これらの拡散符号の間に送信される拡散符号PN0の何れとも異なる拡散符号であれば、これを受信した基地局11、12において、移動局10から発信された拡散符号と基準基地局11から発信された予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2のそれぞれと区別をすることが可能である。
【0088】
基地局11、12の無線通信部34、信号処理部36、リアルタイム受信時刻検出部78、詳細受信時刻検出部80などに対応するSC7においては、SC6において移動局10から発信された移動局10の測位のための拡散符号を受信したか否かが判断される。そして、全ての基地局11、12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC8が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SC5乃至SC7がくり返し実行され、全ての基地局11、12が移動局10から発信される拡散符号を受信されるまで反復される。
【0089】
リアルタイム同期検出部78、詳細受信時刻検出部80などに対応するSC8においては、前記SC6において移動局10から発信され、SC7において基地局11、12によって受信された電波に含まれる移動局10の測位のための拡散符号の受信時刻が同期検出により検出される。そして、算出された受信時刻が測位サーバ14に送信される。
【0090】
受信時刻補正部58に対応するSC9においては、前記SC8において検出され、測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、普通基地局12における受信時刻が、SA4において算出された補正のための式に従って基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正される。
【0091】
測位部60に対応するSC10においては、前記SC8において検出され測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、基準基地局11における受信時刻と、SC9において基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正された普通基地局12における受信時刻と、基準基地局11および普通基地局12の位置についての情報とにもとづいて、移動局10の測位が行われる。
【0092】
前述の実施例によれば、受信間隔検出手段あるいは受信間隔検出工程に対応する受信間隔算出部82(SA1)により、前記基準基地局が1回発信し2以上の普通基地局12がそれぞれ受信した2つの拡散符号である第1の拡散符号と第2の拡散符号を含む拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段あるいは前記クロック速度比算出工程に対応するクロック速度比算出部54(SA2)により、受信間隔算出部82によってそれぞれ検出された各普通基地局12における前記2つの拡散符号の受信間隔と、基準基地局11が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、普通基地局12のそれぞれと基準基地局11とのクロック速度の比が算出され、前記時計ずれ算出手段あるいは前記時計ずれ算出工程に対応する時計ずれ算出部56(SA3)により、基準基地局11による前記拡散符号列のうち第2の拡散符号の発信完了時刻と普通基地局12のそれぞれによる前記拡散符号列のうち第2の拡散符号の受信完了時刻と、予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離とに基づいて、基準基地局11の時計44に対する普通基地局12のそれぞれの時計44のずれが算出され、前記受信時刻補正手段あるいは前記受信時刻補正工程に対応する受信時刻補正部58(SA4)により、普通基地局12のそれぞれにより、普通基地局12のそれぞれの有する時計44に基づいて算出された移動局10からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比と前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて基準基地局11の有する時計44に基づいた時刻に補正され、前記測位手段あるいは前記測位工程に対応する測位部60(SA5)により、受信時刻補正部58により補正された普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、普通基地局12および基準基地局11の位置情報とに基づいて移動局10の位置が推定されるので、基準基地局11による1回の拡散符号列の発信に基づいて普通基地局12のそれぞれの時計44と基準基地局11の時計44とのクロック速度比が算出され、測位に要する時間が短縮される。
【0093】
また、前述の実施例によれば、基準基地局11による拡散符号列の送信は、移動局10による測位のための電波の発信に先立って行なわれるので、複数の基地局11、12において移動局10からの電波が受信された場合に、すみやかに前記クロック速度比を用いた受信時刻の補正を行なうことができ、測位に要する時間が短縮される。
【0094】
また、前述の実施例によれば、受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するリアルタイム受信時刻検出部78と、受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記リアルタイム受信時刻検出部78よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出する詳細受信時刻検出部80とを有し、前記リアルタイム受信時刻検出部78による前記予告符号PN3の受信時刻の検出結果と、予め定められた予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との発信時間差pとに基づいて前記詳細受信時刻検出部80を実行する詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間(Taq1+p−m≦t≦Taq1+p+m)を決定し、この詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記詳細受信時刻検出部80によって検出するので、前記第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号の受信時刻を前記リアルタイム受信時刻検出部78よりもより精度の高い検出が可能な前記詳細受信時刻検出部80によって行なうことができる。また、より多くの電力を必要とする前記詳細受信時刻検出部80の実行を、前記リアルタイム受信時刻検出部による予告符号PN3の受信時刻の検出結果などに基づいて決定される詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間において行なうことができ、消費電力の低減が図られる。
【0095】
また、前述の実施例によれば、基準基地局11は、前記2つの拡散符号として相互に同一もしくは異なる拡散符号である第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2をそれぞれ発信するので、前記2つの拡散符号が同一である場合には、拡散符号の同期検出のための構成を簡素にすることができる。また、前記2つの拡散符号が相互に異なる場合には、前記普通基地局は受信した前記2つの拡散符号のそれぞれを識別することができ、受信間隔を確実に算出することができる。
【0096】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0097】
図12は、本発明の移動局測位システム8の別の例を説明する図であって、図1に対応する図である。本実施例においては、図12に示すように、領域5Aおよび領域5Bからなる測位可能領域5においては、基準基地局として第1基準基地局11Aが設けられ、普通基地局として第1普通基地局12A乃至第7普通基地局12Gの7つが設けられている。なお、図12に示すように、第1基準基地局11Aは、第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dと相互に無線により通信可能とされているものの、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gとは無線により通信を行うことができない。また、かかる移動局測位システム8においては、自己以外の全ての基地局11、12と無線により通信可能な基地局11、12は存在しない。
【0098】
前述のように、第1基準基地局11Aは、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gとは無線により通信を行うことができず、従って、第1基準基地局11Aが前記拡散符号列を発信した場合であっても、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gはその拡散符号列を受信することができない。そのため、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの各普通基地局と前記第1基準基地局11Aとの間の前記クロック速度比算出部54によるクロック速度比の算出や時計ずれ算出部56による時刻ずれの算出を行うことができず、移動局10からの電波を第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおいてそれらの時計44に基づいて受信した場合であっても、受信時刻補正部58によりその受信時刻を前記第1基準基地局11Aの時計44の時刻を基準とする時刻に補正することができない。
【0099】
ところで、図12に示すように、前記第4普通基地局12D乃至第7普通基地局12Gは相互に無線により通信可能とされている。すなわち、前記第4普通基地局12D乃至第7普通基地局12Gのいずれかをこれらの4つの基地局の基準基地局とすることができれば、少なくともこれら4つの基地局の間においては、前述の基準基地局と普通基地局の関係が成り立つ。すなわち、クロック速度比54により基準基地局の時計と普通基地局の時計とのクロック速度比を算出し、また時計ずれ算出部56により基準基地局の時計の時刻と普通基地局の時計の時刻との時刻ずれを算出し、更にこれらのクロック速度比および時計ずれを用いて、受信時刻補正部58により普通基地局における電波の受信時刻を基準基地局の時計における時刻に対応するように補正することができる。
【0100】
ここで、前記第4普通基地局12Dは、前記第1基準基地局11Aと無線により通信可能であり、前記第1基準基地局11Aからみて普通基地局として振る舞っている。そのため、第4普通基地局12Dの時計44の時刻を基準とする時刻は前記受信時刻補正部58により第1基準基地局11Aの時計44を基準とする時刻に補正が可能である。そこで、前記第4普通基地局12Dを、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの基準基地局である第2基準基地局11Bとすれば、まず、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの時計44を基準とする時刻は、前記受信時刻補正部58により前記第2基準基地局11Bである第4普通基地局12Dの時計44を基準とする時刻に補正される。そして、前述のように第4普通基地局12Dの時計44を基準とする時刻は第1基準基地局11Aの時計44を基準とする時刻に補正可能であるので、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの時計44を基準とする時刻は、前記受信時刻補正部58による2回の補正により第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に補正することが可能である。このようにすれば、第1の基準基地局からみて普通基地局である基地局に同時に第2の基準基地局として機能させることにより、前記第1の基準基地局と直接通信可能にない基地局についても、間接的に第1の基準基地局に対応する普通基地局とすることができる。
【0101】
なお、各基地局11、12は例えば図4に示すような機能構成、すなわち、基準基地局として作動する際に必要となる発信符号生成部72と、普通基地局として作動する際に必要となるリアルタイム受信時刻検出部78、詳細受信時刻検出部80、および受信間隔算出部82との両方を有する構成であるため、一つの基地局が同時に基準基地局としての機能と普通基地局としての機能を同時に有することができる。
【0102】
すなわち、図12において、領域5Aは、第1基準基地局11Aとその第1基準基地局11Aに対応する普通基地局を囲む領域であり、領域5Bは、第2基準基地局11Bとその第2基準基地局11Bに対応する普通基地局を囲む領域である。
【0103】
このとき、第2基準基地局11Bとしての機能をも有する第4普通基地局Dは、第2の基準基地局11Bとして前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおいて前記受信時間差を算出するための拡散符号列として、前記第1基準基地局11Aが発信するものと異なる拡散符号列を送信することができる。具体的には、第2基準基地局11Bが発信する予告符号PN3’、第1の拡散符号PN1’、第2の拡散符号PN2’およびそれらの拡散符号間に発信される拡散符号PN0’はそれらが全て異なるものであると同時に、前記第1基準基地局11Aが発信する予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2およびそれらの拡散符号間に発信される拡散符号PN0の何れとも異なるものとされる。
【0104】
図13は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップSD1においては、例えば図10に示される受信間隔算出ルーチンが実行され、所定の間隔で第1基準基地局11Aから発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記第1基準局11Aに対応する普通基地局12である第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおいて受信される際の受信間隔が算出される。
【0105】
クロック速度比算出部54に対応するSD2においては、SD1において算出された前記第1基準基地局11Aに対応する普通基地局12である第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、SD1において実行される受信間隔算出ルーチンにおけるSB6において第1基準基地局11Aから発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、第1基準基地局11Aの時計44と第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれの時計44とのクロック速度比が算出される。
【0106】
時計ずれ算出部56に対応するSD3においては、例えば、SD1において第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記第1基準基地局11Aによる第2の拡散符号の発信時刻と、前記第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれにおける第2の拡散符号の受信時刻と、予め既知である前記第1基準基地局11Aと前記第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とに基づいて、前記第1基準基地局11Aの時計44の時刻と前記第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dの時計44の時刻との時刻ずれが第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれについて算出される。
【0107】
受信時刻補正部58に対応するSD4においては、前第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれにおいて受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記第1基準基地局11Aの時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SD2において算出されるクロック速度比、SD3において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記第1基準基地局11Aと第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0108】
また、ステップSD5においては、例えば図10に示される受信間隔算出ルーチンが実行され、所定の間隔で第2基準基地局11B(第4普通基地局12D)から発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記第2基準局11Bに対応する普通基地局12である第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおいて受信される際の受信間隔が算出される。
【0109】
クロック速度比算出部54に対応するSD6においては、SD5において算出された前記第2基準基地局11Bに対応する普通基地局12である第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、SD5において実行される受信間隔算出ルーチンにおけるSB6において第2基準基地局11Bから発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、第1基準基地局11Aの時計44と第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれの時計44とのクロック速度比が算出される。
【0110】
時計ずれ算出部56に対応するSD7においては、例えば、SD5において第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記第2基準基地局11Bによる第2の拡散符号の発信時刻と、前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれにおける第2の拡散符号の受信時刻と、予め既知である前記第2基準基地局11Bと前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とに基づいて、前記第2基準基地局11Bの時計44の時刻と前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの時計44の時刻との時刻ずれが第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれについて算出される。
【0111】
受信時刻補正部58に対応するSD8においては、前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれにおいて受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記第2基準基地局11Bの時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SD6において算出されるクロック速度比、SD7において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記第2基準基地局11Bと第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0112】
受信時刻補正部58に対応するSD9においては、前記SD8において第2基準基地局11Bの時計を基準とする時刻に補正された、前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれにおいて受信される拡散符号の受信時刻を、第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に補正するための式、すなわち前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。このとき、前記第2基準基地局11Bは前記第4普通基地局12Dであることから、本ステップにおける補正式の算出は、前記SD4において算出された、前記普通基地局12Dの時計を基準とした時刻を第1基準基地局11Aの時計を基準とした時刻に変換するための式が用いられる。これらのステップにより、全ての普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、第1基準基地局11Aの時計を基準とした時刻に補正するための式が導出される。
【0113】
測位部60に対応するSD10においては、移動局10の位置の算出を行うための図11に示す測位ルーチンが実行される。すなわち、移動局10が測位のための拡散符号を含む電波を発信すると、各基地局11、12においてこれが受信される。そして、第1基準基地局11Aに対応する第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおける受信時刻は、SD4において算出される補正式を用いて、第1基準基地局11Aの時計を基準とした時刻に補正される。また、第2基準基地局11Bに対応する第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおける受信時刻は、SD8及びSD9において算出される補正式を用いて、第2基準基地局11Bの時計を基準とする時刻、第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に順次補正される。このようにして、第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に補正された全ての基地局11、12における受信時刻を用いて、測位が行われる。
【0114】
前述の実施例によれば、第1基準基地局11Aおよび第2基準基地局11Bは、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2符号長の同一の連続した拡散符号列を送信するので、それぞれの基準基地局に対応する普通基地局が前記拡散符号を区別することが可能となり、複数の基準基地局が同時に存在することができるので基準基地局が故障した場合における冗長性を有することができる。また、前記複数の普通基地局が第2の基準基地局としての機能を有することにより、測位可能な領域を重畳的に増加することが可能となる。
【0115】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0116】
例えば、前述の実施例においては、基準基地局11と普通基地局12はともに図4に示すような共通する機能構成を有するものとされた。このようにすれば基地局は基準基地局11と普通基地局12の機能を切り換えたり、あるいは前述の実施例2に示すように、基準基地局11と普通基地局12の機能を同時に有したりすることができる。しかしながら、逆に言えばこのような態様に限られず、基準基地局11としてのみ作動する基地局においては、普通基地局12として作動する際に必要な受信間隔算出部82を有する必要がなく、また普通基地局12としてのみ作動する基地局においては、基準基地局11として作動する際に必要な発信符号生成部72を有する必要がない。このようにすれば、基準基地局11および普通基地局12はそれぞれ簡易な構成とすることができる。
【0117】
また、前述の実施例においては、普通基地局12における受信間隔算出部82は詳細受信時刻検出部80によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出したが、これに限られず、例えば、リアルタイム受信時刻検出部78によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出してもよい。すなわち、詳細受信時刻検出部80がなくても一定の効果が生ずる。
【0118】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72が生成する拡散符号列において、予告符号と第1の拡散符号との間隔は予め定められた所定時間とされたが、これに限られない。例えば、予告符号と第1の拡散符号との間隔を前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部74によって生成される前記第1の拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差としてその都度測定された値を用いることもできる。このとき、予告符号生成部76は、例えば前記制御部38を介して後述する普通基地局12の詳細受信時刻検出部80にこの発信時刻の差についての情報を伝達してもよい。この場合所定時間情報はサーバ14を介して普通基地局12へ送信される。
【0119】
また、前述の実施例においては、予告符号生成部76が生成する予告符号PN3と、拡散符号生成部74が生成する第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2のそれぞれは同一の拡散符号であるとされたが、これに限られない。すなわち、予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2はそれぞれ異なった拡散符号でもよく、この場合、受信する普通基地局12においてはそれぞれの異なる拡散符号と同一のそれぞれのレプリカ符号を用いて同期検出処理を行なう必要がある一方、受信側において予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2を取り違えることがない。なお、移動局10の発信符号生成部29において生成される拡散符号列についても同様であり、予告符号生成部33が生成する予告符号と拡散符号生成部32が生成する測位のための受信時刻検出のための拡散符号とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0120】
また、前述の実施例において、予告符号生成部76が生成する拡散符号列において、予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されるとしたが、これに限られない。例えば前記拡散符号PN0を発信するのに代えて、この拡散符号PN0を発信する時間に相当する時間は何も発信しないようにしてもよい。このようにすれば、前記拡散符号PN0を発信する時間に相当する時間は電波を発信しないことから省電力化を図ることができる。
【0121】
また、前述の実施例においては、測位部60は各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻の時間差を用いて移動局10の測位を行ったが(TDOA方式)、これに限られない。例えば、測位の前に少なくとも前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻の同期を行うことができれば、電波の発信時刻と受信時刻から算出される電波の伝搬時間に基づいて移動局10の測位を行うことができる(TOA方式)。
【0122】
また、前述の実施例においては、図10のステップSB4およびSB7において、全ての普通基地局からの応答があったか否かを判断したが、これに限られず、例えば移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局からの応答が合った場合にはこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。また、図11のステップSC4およびSC7においても同様であり、基準基地局11と移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局12からの応答が合った場合にこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。
【0123】
また、前述の実施例においては、図11のステップSC5において、基準基地局11から移動局10に対し測位のための電波の発信命令が行われたが、これに限られない。すなわち、移動局10に対して無線通信可能ないずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われてもよく、測位サーバ14によっていずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われるかが定められればよい。
【0124】
また、前述の実施例においては、各基地局11、12と測位サーバ14とは有線ケーブル52により接続され通信可能とされていたが、このような態様にかぎられず、各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能な状態とされていれば、その手段は限定されない。例えば、赤外線や、超音波、電波などにより各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能にされてもよく、この場合、有線ケーブルで接続される必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の移動局測位システム8の構成の概要の一例を説明する図である。
【図2】本発明の移動局測位システム8の領域5に設けられる座標を説明する図である。
【図3】本発明の移動局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図4】本発明の基地局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図5】本発明の測位サーバの有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図6】基準基地局が発信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図7】普通基地局が受信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図8】測位部による測位の原理を説明する図である。
【図9】本発明の移動局測位システムによる測位における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおいて実行される受信間隔算出ルーチンを説明するフローチャートである。
【図11】図9のフローチャートにおいて実行される測位ルーチンを説明するフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施例における移動局測位システム8の構成の概要を説明する図であって、図1に対応する図である。
【図13】本発明の別の実施例における移動局測位システム8の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0126】
8:測位システム
11:基準基地局
12:普通基地局
14:測位サーバ
54:クロック速度比算出部
56:時計ずれ算出部
58:受信時刻補正部
60:測位部
80:詳細受信時刻検出部
82:受信間隔算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である基地局のそれぞれにおける受信時刻の時間差に基づいて移動局の位置の推定を行なう位置推定方法ならびに測位システムに関するものであり、特に、前記複数の基地局間のクロック速度比に基づいて受信時刻を補正することにより、精度のよい移動局の測位を行なうことのできる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信時刻の時間差に基づいて、移動局の位置の検出を行なう測位システムおよび測位方法が提案されている。
【0003】
かかる測位システムあるいは測位方法においては、複数の基地局間の電波の受信時間差を算出する必要があることから、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を共通した時刻に時刻合わせをしておく必要がある。
【0004】
一方、前記複数の基地局のそれぞれが有する時計を時刻合わせすることに代えて、予め前記複数の基地局のそれぞれが有する時計の傾向、すなわち、時計のクロック比や、時刻のずれなどを検出あるいは算出するなどにより把握しておき、それぞれの基地局の時計により検出された移動局からの電波の受信時刻を、前記時計の傾向に基づいて補正する技術が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術がそれである。
【0005】
【特許文献1】特許第3801123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の記載によれば、1の基地局から複数回にわたって発信される信号の受信時間を複数ある他の基地局が各々のクロックにより測定し、それらの受信時間などに基づいて各基地局のクロック速度比を推定し、推定されたクロック速度比に基づいて移動局からの電波の各基地局における受信時間を補正して移動局の位置の検出を行なう技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術によれば、クロック速度比の算出のためには、1の基地局から他の基地局へ複数回の信号の発信を有する。そのため、測位に要する時間が長くなるおそれがあった。
【0008】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、前記複数の基地局のいずれか1の基地局である基準基地局から他の基地局への信号の発信を1回行なうことで、複数の基地局のそれぞれが有する時計のクロック速度比を算出することができ、短時間で精度のよい移動局の位置の推定を行なうことができる移動局測位システムおよび移動局測位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、(b)前記複数の基地局のうち、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、(c)前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、(d)前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、(e)前記受信間隔算出手段によって算出された前記2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、(f)前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離に基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、(g)前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、(h)該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、好適には、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、(a)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、(b)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、(c)前記受信間隔算出手段は、前記オンライン受信時刻検出手段による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出手段を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出すること、
を特徴とする。
【0012】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位方法であって、(b)前記複数の基地局のうち少なくとも1つは、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する基準基地局であり、(c)前記複数の基地局のうち少なくとも2つは、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する普通基地局であり、(d)前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出工程と、(e)前記受信間隔算出工程によってそれぞれ算出された普通基地局のそれぞれにおける前記2つの拡散符号のそれぞれについての受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出工程と、(f)前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と、前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離に基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出工程と、(g)前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出工程によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出工程により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正工程と、(h)該受信時刻補正工程により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれることを特徴とする。
【0016】
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、(a)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出工程と、(b)受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出工程よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出工程と、を有し、(c)前記受信間隔算出工程は、前記オンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出工程を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出工程によって検出すること、を特徴とする。
【0017】
また、請求項9にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信することを特徴とする。
【0018】
また、請求項10にかかる発明の要旨とするところは、前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1にかかる移動局測位システムあるいは請求項6にかかる移動局測位方法によれば、前記受信間隔検出手段あるいは前記受信間隔検出工程により、前記基準基地局が1回発信し2以上の前記普通基地局がそれぞれ受信した2つの拡散符号を含む拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段あるいは前記クロック速度比算出工程により、前記受信間隔検出手段あるいは前記受信間隔検出工程によってそれぞれ検出された各普通基地局における前記2つの拡散符号の受信時刻の間隔である受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比が算出され、前記時計ずれ算出手段あるいは前記時計ずれ算出工程により、前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離に基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計のずれが算出され、前記受信時刻補正手段あるいは前記受信時刻補正工程により、前記普通基地局のそれぞれにより、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出された前記移動局からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比と前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正され、前記測位手段あるいは前記測位工程により、該受信時刻補正手段あるいは受信時刻補正工程により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置が推定されるので、前記基準基地局による1回の拡散符号列の発信に基づいて前記普通基地局のそれぞれの時計と前記基準基地局の時計とのクロック速度比が算出されるため、短時間で高精度の測位が可能となる。
【0020】
また、請求項2にかかる移動局測位システムあるいは請求項7にかかる移動局測位方法によれば、前記基準基地局による前記拡散符号列の送信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれるので、前記複数の基地局において移動局からの電波が受信された場合に、すみやかに前記クロック速度比を用いた受信時刻の補正を行なうことができ、測位に要する時間が短縮される。
【0021】
また、請求項3にかかる移動局測位システムあるいは請求項8にかかる移動局測位方法によれば、前記受信間隔算出手段あるいは受信間隔算出工程においては、前記拡散符号の受信に伴って受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を行なうことにより前記電波の受信時刻を検出する前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて、前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程よりも詳細な精度により電波の受信時刻を検出する前記オフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出するので、前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程よりもより精度の高い検出が可能な前記オフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程によって行なうことができる。また、より多くの電力を必要とする前記オフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程の実行を、前記オンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて決定されるオフライン検出実行区間において行なうことができ、消費電力の低減が図られる。
【0022】
また、請求項4にかかる移動局測位システムあるいは請求項9にかかる移動局測位方法によれば、前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信するので、前記2つの拡散符号が同一である場合には、拡散符号の同期検出のための構成を簡素にすることができる。また、前記2つの拡散符号が相互に異なる場合には、前記普通基地局は受信した前記2つの拡散符号のそれぞれを識別することができ、受信間隔を確実に算出することができる。
【0023】
また、請求項5にかかる移動局測位システムあるいは請求項10にかかる移動局測位方法によれば、前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を送信するので、同時に複数の基準基地局が存在することが可能であり、基準基地局が故障した場合における冗長性を有することができる。また、前記複数の普通基地局が第2の基準基地局としての機能を有することにより、測位可能な領域を重畳的に増加することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の移動局位置推定システムの構成の一例を示した図である。図1には、平面上の任意の形状に設けられる移動局10が移動可能な領域として一辺30(m)の正方形からなる測位可能領域5が設けられている。また、前記測位可能領域5には、後述する移動局10と無線による通信を行う機能を有する基地局として、1つの基準基地局11、および、3つの普通基地局として第1普通基地局12A、第2普通基地局12B、第3普通基地局12Cがそれぞれ設けられる。なお、基準基地局および普通基地局の数は、その機能から、それぞれ基準基地局は1つ以上、普通基地局は2つ以上が存在する。また、移動局の測位を行うには、後述するように、平面上を移動する移動局10の位置を電波の伝搬時間を用いて算出する場合には少なくとも3個の基地局が必要である。従って、前記測位可能領域の何れの地点においても、少なくとも移動局が3個の基地局と通信可能となるように基地局が配置されている。なお、基地局の数が多いほど移動局の位置の算出は正確に行うことができる。本図1においては、正方形の測位可能領域5の4隅にそれぞれ基準基地局11および普通基地局12A乃至12Cが1つずつ配置されており、4つの基地局が存在しており、移動局の測位を行うために必要となる要件を満たす。また、移動局10は前記測位可能領域5内において測位可能とされている。なお、本実施例においては、移動局10の数は1個とされているが、移動局の個数は特に限定されない。また、各基地局と例えば有線ケーブル52により接続されることにより通信可能とされた測位サーバ14が設けられ、前記移動局10によって発信され前記基地局12によって受信された電波に基づいて、前記測位可能領域内における基地局10の位置を算出する。なお、本明細書において、特に個々の普通基地局12A乃至12Cを区別しない場合には普通基地局12と表記する。また、基準基地局11と普通基地局12を区別しない場合には、基地局11、12と表記する。
【0026】
このとき、測位可能領域5は、便宜上図2に示す様にx軸およびy軸が定義され、測位可能領域5上の点はこの軸に基づいて座標が規定される。すなわち、基準基地局11は座標(0,0)上に、第1基地局12Aは座標(0,30)上に、第2基地局12Bは座標(30,30)上に、第3基地局12Cは座標(30,0)上にそれぞれ配置されている。
【0027】
図3は移動局10の機能の概要を示す機能ブロック図である。移動局10は、移動局が電波の送受信を行なうアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29などを有している。
【0028】
無線通信部26は、移動局10の無線通信を行なうものであって、移動局10が電波を発信する際において、電波を発信する発信手段である。具体的には、後述する発信符号生成部29によって生成された拡散符号列を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バラン(balun)などにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波が前記アンテナ20により発信される。また無線通信部26は基地局から送信される制御信号を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ20によって受信された電波に対し、無線通信部26は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0029】
信号処理部28は、無線通信部26により復調された信号を処理することにより基地局から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部30に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0030】
発信符号生成部29は、移動局が基地局11、12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部32によって生成される拡散符号と予告符号生成部33によって生成される予告符号とに基づいて生成する。この発信符号生成部29によって生成された発信符号は無線通信部26により無線により発信される。この発信符号生成部29は、後述する詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部32と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部33を有する。
【0031】
このうち、拡散符号生成部32は、後述する基地局11、12の詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する。また、予告符号生成部33は、前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は例えば、前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部32によって生成される拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差であり、例えば予め決定され基地局11、12と移動局10との間で既知とされた値が用いられる。すなわち、前記発信符号生成部29によって生成される拡散符号列は、少なくとも前記予告符号と、前記所定時間だけ後に発信される前記拡散符号とを含んで構成される。
【0032】
また、時計31は、移動局10において電波の発信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0033】
制御部30は前記無線通信部26、信号処理部28、発信符号生成部29などの作動を制御する。例えば、移動局10の位置を測定するために基地局12に対し電波を発信する指令を受けた場合に、所定の出力で電波を発信する。
【0034】
また、制御部30は、移動局10が電波を発信する場合と電波を受信する場合とに応じて、前記無線通信部26、信号処理部28などの作動を切り換えるよう制御する。また制御部30は、基地局からの制御指令に基き測位のための拡散符号送信要求を受信したときに、発信符号生成部32に対して所定の時刻に拡散符号を無線通信部26に送信するように制御する
【0035】
図4は、基地局11、12の機能の概要を示す機能ブロック図である。基地局11、12はアンテナ35、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72を有し、これらはそれぞれ前述の移動局10が有するアンテナ20、無線通信部26、信号処理部28、制御部30、時計31、発信符号生成部29と同様の機能を有する、また、基地局11、12はこれらのアンテナ20、無線通信部34、信号処理部36、制御部38、時計44、発信符号生成部72に加え、リアルタイム受信時刻検出部78、詳細受信時刻検出部80、受信間隔算出部82、制御信号生成部37などを有する。
【0036】
すなわち、無線通信部34は、基地局11、12の無線通信を行なうものであって、基地局11、12が電波を受信する際において、電波を受信する受信手段である。具体的には、前記アンテナ35によって受信された電波に対し、無線通信部34は通信方式に対応したデジタル復調などの復調処理を行う。
【0037】
また、信号処理部36は、無線通信部34により復調された信号を処理することにより基地局から送信される制御指令を取り出す。この制御指令は後述する制御部38に送信され制御部の制御判定に使用される。
【0038】
制御信号生成部37は後述する基準基地局における空きチャンネル探索のための制御信号の生成および普通基地局における空きチャンネル探索の応答信号を生成する。また移動局に対して測位信号の送信を要求する信号を生成する。制御信号生成部37において生成された制御信号は無線通信部34に送信されてアンテナ35により無線送信される。
【0039】
なお、制御部38は移動局10の制御部30が移動局における電波の発信する状態と受信する状態を切り換えるの同様に、基地局12の制御部38は、基地局12が電波を発信する状態と電波を受信する状態とを切り換えることができ、これらの状態に応じて、前記無線通信部34、信号処理部36などの作動を切り換えて制御する。
【0040】
また、無線通信部34は、制御信号生成部37によって生成された信号を通信に適した形式に変調するとともに、所定の周波数の搬送波と合成した合成波をアンプにより増幅し、バランなどにより不平衡線路を平衡線路に変換する。このようにして生成された電波がアンテナ35により発信される。このように、基地局12は電波を受信することに加え、発信することも可能である。一方、前述のように移動局10は電波を発信することに加え受信することも可能であることから、基地局12は移動局10に対し無線によりその作動を制御することが可能である。
【0041】
発信符号生成部72は、基地局11、12が基準基地局11として作動する場合において、基準基地局11が普通基地局12に対して送信する拡散符号列を、後述する拡散符号生成部74によって生成される拡散符号と予告符号生成部76によって生成される予告符号とに基づいて生成する。また、発信符号生成部72はこの拡散符号列を発信する際において、前記第2の拡散符号の発信完了時刻についての情報を、後述するサーバ通信部40を介して測位サーバ14に送信する。この発信符号生成部72は、後述する詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号を生成する拡散符号生成部74と、この受信時刻の検出に用いられる拡散符号に先立って発信される予告符号を生成する予告符号生成部76を有する。
【0042】
このうち、拡散符号生成部74は、後述する詳細受信時刻検出部80によって受信時刻の検出に用いられる拡散符号であって、第1の拡散符号と第2の拡散符号の2つの拡散符号を含む拡散符号列を生成する。また、予告符号生成部76は、前記拡散符号生成部74によって生成される2つの拡散符号を含む拡散符号よりも所定時間だけ先に発信される予告符号を生成する。この所定時間は測位システムにより予め決められており、その情報にもとづき制御部38は拡散符号生成部74と予告符号生成部76を制御する。
【0043】
前述のように、基地局11、12は共通する構成を有することから、基準基地局11として作動する基地局が、その作動に代えて、あるいはその作動に加えて普通基地局12としての作動を行うことが可能である。このようにすれば、基準基地局11として作動していた基地局が故障した場合に、それまで普通基地局12として作動していた基地局が新たに基準基地局11として作動することが可能となり、測位システム8としての冗長性を有することができる。
【0044】
図6は、発信符号生成部72が生成する拡散符号列の一例を説明する図である。図6においては、時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。すなわち、左に行くほど時刻が後において発生される拡散符号を表している。図6において、前記第1の拡散符号はPN1、前記第2の拡散符号はPN2、前記予告符号はPN3でそれぞれ表されている。
【0045】
まず、予告符号生成部76によって生成された予告符号PN3が、第1の拡散符号の発信の所定時間p前に発信される。このとき、予告符号PN3の発信完了時刻がTaq1’である。その後、この所定時間pの経過後に、拡散符号生成部74により生成される第1の拡散符号PN1が発信され、続いて同じく拡散符号生成部74により生成される第2の拡散符号PN2が前記PN1に連続して発信される。このとき、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻をtim_b0_trfend_b0、第2の拡散符号PN2の発信完了時刻をtim_b0_trlend_b0とする。また、第1の拡散符号PN1と第2の拡散符号PN2との発信時間差tim_b0_trlend_b0−tim_b0_trfend_b0はTsとする。また、第1の拡散符号PN1の発信完了時刻はtim_b0_trfend_b0は、前述の予告符号PN3の発信完了時刻Taq1’と前記発信時間差pを用いて、tim_b0_trfend_b0=Taq1’+pと表される。
【0046】
また、図6に示す符号列において、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されている。これは、この符号列を受信した場合において、受信側で同期検出を行う際のレプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さい符号であればよい。従って、レプリカ符号との相互相関が自己相関より十分に小さいのであれば、PN0が全て同一の拡散符号である必要はない。このとき前記所定時間pは、前記予告符号PN3と第1の拡散符号PN1の間に発信される符号PN0の個数によって決定される。また、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3としては、例えば同一の拡散符号が用いられる。
【0047】
図4に戻って、リアルタイム受信時刻検出部78は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波と、その受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局12による電波の受信時刻とする。なお、このような処理を同期検出という。このリアルタイム受信時刻検出部78は、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。このリアルタイム受信時刻検出部78は、例えば移動局10から測位のために発信される予告符号の各基地局11、12における受信時刻を検出するほか、普通基地局12においては、基準基地局11から発信される前記予告符号の受信時刻の検出にも用いられる。なお、前述のように、前記第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、および予告符号PN3として、同一の拡散符号が用いられる場合には、この同一の拡散符号と同一の符号である1つのレプリカ符号についてのみ同期検出を行なえばよい。
【0048】
このとき、リアルタイム受信時刻検出部78は、前記無線通信部34による電波の受信に伴って、すなわち前記無線通信部34の受信信号に対して即座に同期検出を行ういわゆるリアルタイムによる同期検出を行う。言い換えれば、受信する拡散符号の速度に合った速度で同期検出処理を行わなければならず、例えば拡散符号を順次受信する場合において、ある符号を受信したら、その符号の同期検出は次の符号を受信するまでに完了しなければならい。なお、このリアルタイム受信時刻検出部78がオンライン受信時刻検出手段あるいはオンライン受信時刻検出工程に対応する。ところで、前述のように同期検出は、受信波とその受信波を発信する際に行なった拡散処理に用いた拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、その相関値のピークが出現した時刻を受信時刻とするものであるが、この同期検出の精度は、前記受信信号を微小時間ごとにずらす際に、どれほど細かく微小時間を設定し得るかによって左右される。すなわち、前記微小時間の長さと同期検出に要する計算の回数が反比例するためである。従って、前述のようなリアルタイムで同期検出を行う場合においては、計算を行うことのできる時間、すなわち計算の回数に制約が存在し、そのため、同期検出を行う際の精度に限界がある。
【0049】
詳細受信時刻検出部80は、基地局11、12が受信した電波の受信時刻を前記リアルタイム受信時刻検出部78がおこなうよりもより高精度に測定する。具体的には例えば、前記無線通信部34によって復調処理のされた受信波を一旦図示しない記憶装置に記憶しておき、その記憶された受信波に含まれる拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値を、前記受信波を微小時間ごとにずらして算出し、算出された自己相関値がピークとなった時刻を基地局12による電波の受信時刻とする。このとき、前記微小時間を前記リアルタイム受信時刻検出部78の同期検出における微小時間よりも短いものとすることにより、高精度の検出が可能となる。この詳細受信時刻検出部80は、前記図示しない記憶装置に加え、前述のリアルタイム受信時刻検出部78と同様に、例えば前記受信波を微小時間ごとに遅延させる遅延回路や、前記遅延回路によって遅延された受信波と前記レプリカ符号との相関値を算出するマッチドフィルタをなどを組み合わせることによって実現される。なお、この詳細受信時刻検出部80がオフライン受信時刻検出手段あるいはオフライン受信時刻検出工程に対応する。
【0050】
この詳細受信時刻検出部80は、特に定められる時間区間においてのみ実行されることが可能である。すなわち、基地局11、12は前記リアルタイム受信時刻検出部78による受信時刻の検出を常時行うようにしておき、特に詳細受信時刻検出部80により高精度な受信時刻の検出を行うように定められた時間区間においてのみ、前記リアルタイム受信時刻検出部78による受信時刻の検出に加えてあるいはこれに代えて詳細受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うようにしてもよい。このようにすれば、詳細受信時刻検出部80はリアルタイム受信時刻検出部78に比べて演算に要する電力をより多く必要とするため、特に定められた時間区間においてのみ詳細受信時刻検出部80による高精度な受信時刻の検出を行うことにより、基地局11、12の省電力化を図ることができる。
【0051】
例えば、後述する受信間隔算出部82によって算出される各普通基地局12における前記第1の拡散符号の受信時刻と前記第2の拡散符号の受信時刻との受信時間差はより高精度に算出されることが望ましい。そこで、詳細受信時刻検出部80は、前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。例えば、詳細受信時刻検出部80は前記基準基地局11において前記第1の拡散符号に先立って発信される予告符号に基づいて前記第1の拡散符号と第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻の検出を高精度な受信時刻の検出により行う。
【0052】
図7は、前記基準基地局11が発信する前記予告符号、前記第1の拡散符号および前記第2の拡散符号を含む符号列を普通基地局12が受信した場合の受信信号を示した図である。図7においては、図6と同様に時刻tの経過を表す時刻軸が図中右から左に向かう向きに設定されている。ここで、普通基地局12においては、リアルタイム受信時刻検出部78が予告符号PN3の受信を検出すると、詳細受信時刻検出部80は、その受信完了時刻Taq1から予告符号と第1の拡散符号との発信時間差pの経過後を中心として、前後の幅がそれぞれマージンmの時間区間を詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間とする。すなわち、Taq1+p−m≦t≦Taq1+p+mにおいて、高精度な受信時刻の検出を実行する。この検出対象時間区間がオフライン検出実行区間に対応する。ここで、マージンmは、第1の拡散符号および第2の拡散符号の受信に要する時間と、基準基地局11の時計44と全ての普通基地局12の時計44との時刻のずれや、クロック速度の比などを考慮し、前記第1の拡散符号および第2の拡散符号の両方について詳細受信時刻検出部80による高精度な時刻の受信時刻の検出が行うことができるように設定される値である。
【0053】
図4に戻って受信間隔算出部82は、前記詳細受信時刻検出部80によって検出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信間隔が算出される。すなわち、前記詳細受信時刻検出部80においては、同期検出により、第1の拡散符号の受信完了時刻と第2の拡散符号の受信完了時刻とが検出されることから、これらの差を算出することにより、前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔が算出される。すなわち、この受信間隔算出部82と前記詳細受信時刻検出部80とによって受信間隔検出手段もしくは受信間隔検出工程は実現される。
【0054】
制御部38はまた、前記無線通信部34、信号処理部36、サーバ通信部40などの作動を制御する。
【0055】
サーバ通信部40は、有線ケーブル52を介して接続された後述する測位サーバ14との通信を必要に応じて行なうものであり、例えば、基地局11、12が移動局10から受信した電波について詳細受信時刻検出部80によって検出された受信時刻や、普通基地局12が基準基地局11から受信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との受信間隔や、基準基地局11の第2の拡散符号の発信終了時刻、発信符号生成部72が発信した前記第1の拡散符号と第2の拡散符号との発信間隔などの値を測位サーバ14に対し発信したり、サーバーより指定される発信符号生成部72において生成する拡散符号列における第1の拡散符号と第2の拡散符号の間隔、あるいは基地局12に対する指令や移動局10に対し無線で行なう制御作動の指令を測位サーバ14から受信するなどの作動を行う。
【0056】
また、時計44は、基地局12において電波の発信時刻や受信時刻を決定する際に参照されるほか、例えば所定間隔ごとに作動を行なう場合などに用いられる。
【0057】
なお、図2および図3に示した移動局10および基地局12においては、本発明における制御作動に直接関与しない機能に対応する機能ブロックは省略されている。例えば、移動局10および基地局12においては、図示しない電源などが含まれている。この電源は、移動局10、基地局および測位サーバ14のそれぞれに必要な電力を供給するものである。
【0058】
図5は測位サーバ14の機能の概要を示す機能ブロック図である。測位サーバ14は、ケーブル52を介して各基地局12と接続されており、基地局通信部53、クロック速度比算出部54、時計ずれ算出部56、受信時刻補正部58、測位部60、測位結果出力部62などを有する。このうち、基地局通信部53は、有線ケーブル52を介して接続された前記基地局11、12のサーバ通信部40との間で必要な通信、例えば測定データの送受信や、基地局12や移動局10の作動を制御する指令の送信などを行なう。
【0059】
クロック速度比算出部54は、前記各普通基地局12の受信間隔算出部82によって算出された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、前記基準基地局11の発信符号生成部72において生成され、無線通信部34などにより発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、前記普通基地局12のそれぞれが有する時計44と、前記基準基地局11の有する時計44との速度の比であるクロック速度比を算出する。このクロック速度比算出部54がクロック速度比算出手段あるいはクロック速度比算出工程に相当する。
【0060】
具体的には、このクロック速度比rera_b0biは、基準基地局11が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準とした詳細受信時刻検出部80による受信時刻であるtim_bi_rvlend_b0bi、前記第1の拡散符号の普通基地局12の時計44を基準とした詳細受信時刻検出部80による受信時刻tim_bi_rvfend_b0bi、および前記基準基地局11の発信符号生成部72による前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔である符号周期Tsを用いて、以下の式(1)により得られる。
rera_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )/ Ts …(1)
【0061】
時計ずれ算出部56は、基準基地局11の時計44の時刻に対する普通基地局12のそれぞれの時計44の時刻のずれである時計ずれを算出する。この時計ずれは、基準基地局11の時計44の時刻に対する時刻の進みあるいは遅れであり、例えば基準基地局11から発信される電波の発信時刻と、その電波を受信した普通基地局12におけるその電波の受信時刻と、さらに基準基地局11と普通基地局12との既知の距離から算出される前記電波の伝搬時間とに基づいて算出される。この時計ずれ算出部が時計ずれ算出手段あるいは時計ずれ算出工程に対応する。
【0062】
具体的には例えば、この時計ずれte_aq_b0biは、基準基地局11の無線通信部34が普通基地局12へ送信する前記第2の拡散符号の送信完了を基準基地局11の時計44で測定した送信完了時刻である時刻tim_b0_trlend_b0と、前記第2の拡散符号の普通基地局12における受信時刻を詳細受信時刻検出部80により普通基地局12の時計44を用いて測定した受信完了時刻tim_bi_rvlend_b0biと、予めシステム8により既知である基準基地局11と普通基地局12との距離(例えば30m)に電波の速度c(=2.997×108(m/s))を除することにより算出される伝搬時間tau0_iを用いた以下の式(2)により得られる。
te_aq_b0bi = ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i …(2)
すなわち、前記第2の拡散符号を例として、基準基地局11における発信完了時刻と普通基地局12における受信完了時刻とから算出される見かけの電波の伝搬時間と、実際の基準基地局11と普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とを比較し、これらの値に差があれば、それが基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれである。
【0063】
受信時刻補正部58は、移動局10から発信された電波が各普通基地局12において受信された際に各普通基地局12におけるリアルタイム受信時刻検出部78によって各普通基地局12の時計44に基づいて検出された受信時刻を、前記クロック速度比算出部54において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44とのクロック速度比、および前記時計ずれ算出部56において算出された前記基準基地局11の時計44と前記各普通基地局12の時計44との時刻ずれに基づいて、前記基準基地局11の時計44での時刻に補正する。この受信時刻補正部58が受信時刻補正手段あるいは受信時刻補正工程に対応する。
【0064】
具体的には例えば、受信時刻補正部58は次の手順により受信時刻の補正を行う。まず、移動局10から発信された電波が基準基地局11および普通基地局12において受信された際の、それぞれのリアルタイム受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻が、基準基地局11においては、tim_b0_rvend_m1b0であり、普通基地局12においてはtim_bi_rvend_m1biであったとする。このとき、普通基地局12のリアルタイム受信時刻検出部78によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを基準基地局11の時計44に基づいた時刻に換算すると、換算後の前記普通基地局12の受信時刻TOA_m1biは、次式(3)で表される。
TOA_M1bi = tim_bi_rvend_m1bi - ( tim_bi_rvend_m1b0 - tim_b0_rvend_m1b0 ) …(3)
ここで、この式(3)の右辺第1項であるtim_bi_rvend_m1b0は移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻tim_b0_rvend_m1b0を普通基地局12の時計44に換算した時刻である。すなわち、右辺の括弧で囲まれた第2項は、移動局10からの電波を基準基地局11が受信した際の基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれを表す項である。
【0065】
また、前記式(3)におけるtim_bi_rvend_m1b0は、前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比rera_b0biを用いて、以下の式(4)で表される。
tim_b1_rvend_m1b0 = tim_bi_aq
+ ( tim_b0_rvend_m1b0 - tim_b0_aq ) × rera_b0bi …(4)
ここで、この式(4)の右辺第1項であるtim_bi_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の普通基地局12の時計44における時刻である。また、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、tim_b0_rvend_m1b0は移動局10から発信された拡散符号の基準基地局11における受信時刻であり、rera_b0biは前記クロック速度比算出部54によって算出されたクロック速度比である。すなわち、前記式(4)の右辺第2項は、前記基準基地局11において前記時計ずれ算出部56により時刻ずれが算出されてから前記移動局10からの電波を受信するまでの時間を前記基準基地局11の時計44により計測したものに、前記基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44とのクロック速度比を乗ずることにより、その時間を普通基地局12の時計44に対応する時間に換算した値となる。
【0066】
更に、前記式(4)におけるtim_bi_aqは、前記時計ずれ算出部56によって算出される基準基地局11の時計44と普通基地局12の時計44との時刻ずれte_aq_b0biを用いて、以下の式(5)で表される。
tim_bi_aq = tim_b0_aq + te_aq_b0bi …(5)
ここで、前述のように、tim_b0_aqは前記時計ずれ算出部56による時刻ずれが算出された際の基準基地局11の時計44における時刻であり、前述のように時刻ずれ算出部56は基準基地局11における第2の拡散符号の送信完了時刻(送信時刻)であるので、
tim_b0_aq=tim_b0_trlend_b0 …(6)
である。この式(6)と前記時刻ずれte_aq_b0biを表す式(2)を用いて前記式(5)を変形すると、
tim_bi_aq = tim_b0_trlend_b0 + ( tim_bi_rvlend_b0bi - tim_b0_trlend_b0 ) - tau0_i
= tim_bi_rvlend_b0bi - tau0_i …(7)
となる。以上より、受信時刻補正部58は、普通基地局12の詳細受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0067】
受信時刻補正部58は、前述の手順を普通基地局12の数だけ繰り返すことにより、全ての普通基地局12について、その詳細受信時刻検出部80によりそれぞれの時計44に基づいて検出された受信時刻であるtim_bi_rvend_m1biを、基準基地局11の時計44に基づいた受信時刻TOA_m1biに変換することができる。
【0068】
なお、本実施例においては、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮していない。これは、現実には前記伝搬時間は数ナノ(10-9)秒程度であり、したがって伝搬中のクロック速度比により発生する誤差は無視できるほど小さく、基準基地局11から普通基地局12への電波の伝搬時間についてはクロック速度比を考慮しないとしても差し支えないためである。もちろん、これを考慮することも可能である。
【0069】
図5に戻って、移動局の位置の算出、すなわち測位を行う測位部60は、前記受信時刻補正部58により基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正された各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、前記基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、既知の各基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の測位を行う。
【0070】
このとき、移動局10から発信される電波には、前述のように、発信符号生成部29によって生成された拡散符号列が含まれる。この拡散符号列は、予告符号生成部33によって生成された予告符号と、予告符号の発信後所定時刻経過後に発信される拡散符号生成部32により生成される拡散符号とからなる。そのため、各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記クロック速度比算出部54などにおいて用いる基準基地局11からの電波の受信時刻を算出したのと同様の手順により、まず、リアルタイム受信時刻検出部78によって移動局10から発信される前記予告符号を受信するとともに、詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間を決定し、この区間において詳細受信時刻検出部80により移動局10から発信される前記拡散符号を受信することにより、精度よく移動局からの電波の受信時刻を検出することが可能となる。
【0071】
また、このようにして検出される各普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、前記受信時刻補正部58によって基準基地局11の時計44の時刻に対応するよう補正されているので、各基地局11、12の時計44の時刻が実際には同期させられていなくても、前記補正後の受信時刻を用いることにより、あたかも各基地局11、12の時計44が基準基地局11の時計44に同期されているかのように扱うことができる。なお、測位部60が測位手段あるいは測位工程に対応する。
【0072】
例えば、図8において、時刻t0において移動局10から電波が発信され、3つの基地局である基準基地局11、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bにおいてそれぞれ詳細受信時刻検出部80によりtim_b0_rvend_m1b0、tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2において移動局からの電波が受信されたとする。これらのうち普通基地局12においてそれら普通基地局12の時計44によって検出された受信時刻は、受信時刻補正部58は、基準基地局11の時計44の時刻を基準とする時刻に補正されている。すなわち、第1普通基地局12A、第2普通基地局12Bにおける移動局10からの電波の受信時刻tim_b1_rvend_m1b1、tim_b2_rvend_m1b2は、それぞれ、TOA_m1b1、TOA_M1b2に補正されている。なお、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻は受信時刻補正部58による補正がされないが、記号の統一のために、以下、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻をTOA_m1b0と記す。すなわち、TOA_m1b0 = tim_b0_rvend_m1b0である。
【0073】
このとき、実際の電波の伝搬時間は、各基地局11、12によって測定される受信時刻と移動局10の時計31によって測定される発信時刻との差に、前記基地局11、12の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれを考慮したものとなる。なお、前述のように、本発明においては、各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻は、基準基地局11の時計44の時刻に対応する受信時刻に補正されていることから、この補正後の受信時刻を用いることにより、各基地局11、12の時計44は基準基地局11の時計44と同期しているとみなすことができる。従って、前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻のずれをΔtとすると、移動局10から基準基地局11への電波の伝搬時間は(TOA_m1b0−t0+Δt)移動局10から第1普通基地局12Aへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b1−t0+Δt)、移動局10から第2普通基地局12Bへの電波の伝搬時間は(TOA_m1b2−t0+Δt)となる。前述のように、図8において各基地局12の位置は既知であって、その位置を示す座標は、基準基地局11は(x0,y0)、第1普通基地局12Aは(x1,y1)、第2普通基地局12Bは(x2,y2)であり、測位の対象である移動局10の位置を示す座標を(x,y)とすると、電波の速度をc(m/s)を用いて、
(x−x0)2+(y−y0)2=(c×(TOA_m1b0−t0)+s)2,
(x−x1)2+(y−y1)2=(c×(TOA_m1b1−t0)+s)2, …(8)
(x−x2)2+(y−y2)2=(c×(TOA_m1b3−t0)+s)2
となる。ただしs=Δt×cである。また、図8におけるr1、r2、r3はそれぞれ、r0=c×(TOA_m1b0−t0)、r1=c×(TOA_m1b1−t0)、r2=c×(TOA_m1b2−t0)を表している。ここで、式(8)の第2式および第3式のそれぞれの両辺の平方根をとり、更にその両辺から、第1式の両辺の平方根をとったものを引いて導出される式、
【数1】
を例えばニュートンラフソン法などにより解くことで、移動局10の位置(x,y)が算出される。なお、前記式(8)が式(9)のように変形されると、移動局10による電波の発信時刻t0および移動局10の時計31と基準基地局11の時計44の時刻ずれΔtに伴う距離sは式(9)から消去され、解の算出にあたりこれらの値を得る必要がない、いわゆるTDOA(Time Difference of Arrival)方式による測位となる。なお、図8においては、1つの基準基地局11および2つの普通基地局である3つの基地局11、12からなる場合について説明したが、4以上の基地局11、12が移動局10からの電波を受信した場合も同様であるので、説明を省略する。また3次元測位の場合においても未知数が一つ増えるだけであるので説明を省略する。
【0074】
図5に戻って、制御部56は、基地局通信部54、測位部60などの作動を制御するものである。また出力部62は、測位部60によって算出された移動局10の位置についての情報などを所定の方法、例えば図示しない出力装置として設けられたディスプレイ装置に表示するなどによって出力する。
【0075】
図9は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の概要を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、所定の間隔で基準基地局11から発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記各普通基地局12において受信される際の受信間隔が算出される受信間隔算出ルーチンが実行される。
【0076】
図10は、この受信間隔算出ルーチンの一例を説明するフローチャートである。まずSB1においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、基準基地局11から普通基地局12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSB2においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSB3以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSB1の探索が続けられる。
【0077】
SB3においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、基準基地局11から発信される拡散符号列を受信する命令がされる。続くSB4においては、SB3の命令を受けた各普通基地局12から、前記拡散符号列の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB5以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SB3における受信命令の送信が再度行われる。
【0078】
SB5においては、測位サーバ14から基準基地局11に対し、前記SB1で探索され発見された空きチャンネルを使用して前記拡散符号列を無線により送信する命令が送信される。そして、基準基地局11の発信符号生成部72、信号処理部36、無線通信部34などに対応するSB6においては、SB5の命令を受信した基準基地局11によって、前記予告符号PN3および第1の拡散符号PN1が所定の間隔pで、そして、第1の拡散符号PN1に続いて第2の拡散符号PN2が発信されるように生成された拡散符号列が無線により発信される。
【0079】
普通基地局12の無線通信部34、信号処理部36、リアルタイム受信時刻検出部78などに対応するSB7においては、SB6において基準基地局11から発信された拡散符号列を受信したか否かが判断される。そして、全ての普通基地局12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB8が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SB5乃至SB7がくり返し実行され、全ての普通基地局12が基準基地局11から発信される拡散符号列を受信されるまで反復される。
【0080】
詳細受信時刻検出部80、受信間隔算出部82などに対応するSB8においては、前記SB6において基準基地局11から発信され、SB7において受信された電波に含まれる前記第1の拡散符号および前記第2の拡散符号のそれぞれの受信時刻が検出されるとともに、その受信間隔が算出される。このとき、受信時刻の検出においては、例えば受信波がいったん図示しない記憶装置などに記憶され、その記憶装置から適宜読み出された受信波をリアルタイムで同期検出を行う場合よりも小さい値に設定された遅延時間ごとに遅延させる遅延回路とマッチドフィルタなどを用いてレプリカ信号との相関値が算出され、相関値のピークを検出した受信完了時刻を受信時刻とするなどの方法により行われる。なお、本ステップは例えば、SB7において予告符号の受信を検出した時刻Taq1から所定時間後の予め算出された所定時間間隔であるTaq1+p−m≦t≦Taq1+p+mにおいて実行される。このようにして算出された前記受信間隔が測位サーバ14に送信され、本ルーチンは終了する。
【0081】
図9に戻って、クロック速度比算出部54に対応するSA2においては、SA1において算出された各普通基地局12における前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との受信間隔( tim_bi_rvend_b0bi - tim_bi_rvfend_b0bi )と、SB6において基準基地局11から発信された前記第1の拡散符号PN1と前記第2の拡散符号PN2との発信間隔Tsとに基づいて、基準基地局11の時計44と各普通基地局12のそれぞれの時計44とのクロック速度比rera_b0biが算出される。
【0082】
時計ずれ算出部56に対応するSA3においては、例えば、SA1において各普通基地局12における前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記基準基地局11による第2の拡散符号の発信時刻tim_bi_rvfend_b0biと、前記各普通基地局12における第2の拡散符号の受信時刻tim_bi_rvend_b0biと、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間tau0_iとに基づいて、前記基準基地局11の時計44の時刻と前記各普通基地局12の時計44の時刻との時刻ずれte_aq_b0biがそれぞれの普通基地局12について算出される。
【0083】
受信時刻補正部58に対応するSA4においては、前記各普通基地局12において受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記基準基地局11の時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SA2において算出されるクロック速度比、SA3において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記基準基地局11と前記普通基地局12との距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0084】
測位部60に対応するSA5においては、移動局10の位置の算出を行うための測位ルーチンが実行される。
【0085】
図11は、この測位ルーチンの一例を説明する図である。まずSC1においては、図10の受信間隔算出ルーチンにおけるSB1乃至SB2と同様に、測位サーバ14から基準基地局11に対し、移動局10から各基地局11、12へ符号列を無線により送信する際に使用できるチャンネルがあるか、すなわち、空きチャンネルが存在するかを探索する命令が行われ、基準基地局11はこの空きチャンネルの探索を行う。そして、続くSC2においては、探索を行った基準基地局11によって、空きチャンネルの有無が測位サーバ14に送信される。このとき、空きチャンネルがある場合には、本ステップの判断が肯定され続くSC3以降が実行される一方、空きチャンネルがない場合には、本ステップの判断が否定され空きチャンネルが発見されるまでSC1の探索が続けられる。
【0086】
SC3においては、測位サーバ14から各普通基地局12に対し、移動局10から発信される拡散符号を受信する命令がされる。続くSC4においては、SC3の命令を受けた各基地局11、12から、前記拡散符号の受信の待機を開始した旨の応答が測位サーバ14に対して行われる。このとき、全ての基地局11、12から受信の待機を開始した旨の応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC5以降が実行される。一方、いずれかの普通基地局12から受信の待機を開始した旨の応答がない場合には、本ステップの判断が否定され、SC3における受信命令の送信が再度行われる。
【0087】
SC5においては、測位サーバ14から移動局10に対し、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が、例えば基準基地局11を介して送信される。すなわち、測位サーバ14からの命令を受けた基準基地局11により、前記SC1で探索され発見された空きチャンネルを使用して移動局10が前記拡散符号列を無線により送信する命令が無線により発信される。そして、移動局10の信号処理部28、無線通信部26、制御部30などに対応するSC6においては、SC5の命令を受信した移動局10によって、移動局10の測位のための拡散符号が発信される。このとき発信される拡散符号は、予め受信する基地局11、12においてレプリカ符号が準備される既知のものであれば何れの拡散符号でもよいが、例えば前述の予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2、更に、これらの拡散符号の間に送信される拡散符号PN0の何れとも異なる拡散符号であれば、これを受信した基地局11、12において、移動局10から発信された拡散符号と基準基地局11から発信された予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2のそれぞれと区別をすることが可能である。
【0088】
基地局11、12の無線通信部34、信号処理部36、リアルタイム受信時刻検出部78、詳細受信時刻検出部80などに対応するSC7においては、SC6において移動局10から発信された移動局10の測位のための拡散符号を受信したか否かが判断される。そして、全ての基地局11、12において前記拡散符号列が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSC8が実行される。一方、いずれかの普通基地局12において前記拡散符号列の受信が失敗された場合には、本ステップの判断が否定され、再度SC5乃至SC7がくり返し実行され、全ての基地局11、12が移動局10から発信される拡散符号を受信されるまで反復される。
【0089】
リアルタイム同期検出部78、詳細受信時刻検出部80などに対応するSC8においては、前記SC6において移動局10から発信され、SC7において基地局11、12によって受信された電波に含まれる移動局10の測位のための拡散符号の受信時刻が同期検出により検出される。そして、算出された受信時刻が測位サーバ14に送信される。
【0090】
受信時刻補正部58に対応するSC9においては、前記SC8において検出され、測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、普通基地局12における受信時刻が、SA4において算出された補正のための式に従って基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正される。
【0091】
測位部60に対応するSC10においては、前記SC8において検出され測位サーバ14に送信された各基地局11、12における受信時刻のうち、基準基地局11における受信時刻と、SC9において基準基地局11の時計を基準とする時刻に補正された普通基地局12における受信時刻と、基準基地局11および普通基地局12の位置についての情報とにもとづいて、移動局10の測位が行われる。
【0092】
前述の実施例によれば、受信間隔検出手段あるいは受信間隔検出工程に対応する受信間隔算出部82(SA1)により、前記基準基地局が1回発信し2以上の普通基地局12がそれぞれ受信した2つの拡散符号である第1の拡散符号と第2の拡散符号を含む拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻が検出され、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔が算出され、前記クロック速度比算出手段あるいは前記クロック速度比算出工程に対応するクロック速度比算出部54(SA2)により、受信間隔算出部82によってそれぞれ検出された各普通基地局12における前記2つの拡散符号の受信間隔と、基準基地局11が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、普通基地局12のそれぞれと基準基地局11とのクロック速度の比が算出され、前記時計ずれ算出手段あるいは前記時計ずれ算出工程に対応する時計ずれ算出部56(SA3)により、基準基地局11による前記拡散符号列のうち第2の拡散符号の発信完了時刻と普通基地局12のそれぞれによる前記拡散符号列のうち第2の拡散符号の受信完了時刻と、予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離とに基づいて、基準基地局11の時計44に対する普通基地局12のそれぞれの時計44のずれが算出され、前記受信時刻補正手段あるいは前記受信時刻補正工程に対応する受信時刻補正部58(SA4)により、普通基地局12のそれぞれにより、普通基地局12のそれぞれの有する時計44に基づいて算出された移動局10からの電波を受信した受信時刻が、前記クロック速度の比と前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて基準基地局11の有する時計44に基づいた時刻に補正され、前記測位手段あるいは前記測位工程に対応する測位部60(SA5)により、受信時刻補正部58により補正された普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻と、基準基地局11における移動局10からの電波の受信時刻と、普通基地局12および基準基地局11の位置情報とに基づいて移動局10の位置が推定されるので、基準基地局11による1回の拡散符号列の発信に基づいて普通基地局12のそれぞれの時計44と基準基地局11の時計44とのクロック速度比が算出され、測位に要する時間が短縮される。
【0093】
また、前述の実施例によれば、基準基地局11による拡散符号列の送信は、移動局10による測位のための電波の発信に先立って行なわれるので、複数の基地局11、12において移動局10からの電波が受信された場合に、すみやかに前記クロック速度比を用いた受信時刻の補正を行なうことができ、測位に要する時間が短縮される。
【0094】
また、前述の実施例によれば、受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号を受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するリアルタイム受信時刻検出部78と、受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記リアルタイム受信時刻検出部78よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出する詳細受信時刻検出部80とを有し、前記リアルタイム受信時刻検出部78による前記予告符号PN3の受信時刻の検出結果と、予め定められた予告符号PN3と第1の拡散符号PN1との発信時間差pとに基づいて前記詳細受信時刻検出部80を実行する詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間(Taq1+p−m≦t≦Taq1+p+m)を決定し、この詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記詳細受信時刻検出部80によって検出するので、前記第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2の2つの拡散符号の受信時刻を前記リアルタイム受信時刻検出部78よりもより精度の高い検出が可能な前記詳細受信時刻検出部80によって行なうことができる。また、より多くの電力を必要とする前記詳細受信時刻検出部80の実行を、前記リアルタイム受信時刻検出部による予告符号PN3の受信時刻の検出結果などに基づいて決定される詳細受信時刻検出部80による検出対象時間区間において行なうことができ、消費電力の低減が図られる。
【0095】
また、前述の実施例によれば、基準基地局11は、前記2つの拡散符号として相互に同一もしくは異なる拡散符号である第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2をそれぞれ発信するので、前記2つの拡散符号が同一である場合には、拡散符号の同期検出のための構成を簡素にすることができる。また、前記2つの拡散符号が相互に異なる場合には、前記普通基地局は受信した前記2つの拡散符号のそれぞれを識別することができ、受信間隔を確実に算出することができる。
【0096】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0097】
図12は、本発明の移動局測位システム8の別の例を説明する図であって、図1に対応する図である。本実施例においては、図12に示すように、領域5Aおよび領域5Bからなる測位可能領域5においては、基準基地局として第1基準基地局11Aが設けられ、普通基地局として第1普通基地局12A乃至第7普通基地局12Gの7つが設けられている。なお、図12に示すように、第1基準基地局11Aは、第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dと相互に無線により通信可能とされているものの、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gとは無線により通信を行うことができない。また、かかる移動局測位システム8においては、自己以外の全ての基地局11、12と無線により通信可能な基地局11、12は存在しない。
【0098】
前述のように、第1基準基地局11Aは、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gとは無線により通信を行うことができず、従って、第1基準基地局11Aが前記拡散符号列を発信した場合であっても、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gはその拡散符号列を受信することができない。そのため、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの各普通基地局と前記第1基準基地局11Aとの間の前記クロック速度比算出部54によるクロック速度比の算出や時計ずれ算出部56による時刻ずれの算出を行うことができず、移動局10からの電波を第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおいてそれらの時計44に基づいて受信した場合であっても、受信時刻補正部58によりその受信時刻を前記第1基準基地局11Aの時計44の時刻を基準とする時刻に補正することができない。
【0099】
ところで、図12に示すように、前記第4普通基地局12D乃至第7普通基地局12Gは相互に無線により通信可能とされている。すなわち、前記第4普通基地局12D乃至第7普通基地局12Gのいずれかをこれらの4つの基地局の基準基地局とすることができれば、少なくともこれら4つの基地局の間においては、前述の基準基地局と普通基地局の関係が成り立つ。すなわち、クロック速度比54により基準基地局の時計と普通基地局の時計とのクロック速度比を算出し、また時計ずれ算出部56により基準基地局の時計の時刻と普通基地局の時計の時刻との時刻ずれを算出し、更にこれらのクロック速度比および時計ずれを用いて、受信時刻補正部58により普通基地局における電波の受信時刻を基準基地局の時計における時刻に対応するように補正することができる。
【0100】
ここで、前記第4普通基地局12Dは、前記第1基準基地局11Aと無線により通信可能であり、前記第1基準基地局11Aからみて普通基地局として振る舞っている。そのため、第4普通基地局12Dの時計44の時刻を基準とする時刻は前記受信時刻補正部58により第1基準基地局11Aの時計44を基準とする時刻に補正が可能である。そこで、前記第4普通基地局12Dを、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの基準基地局である第2基準基地局11Bとすれば、まず、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの時計44を基準とする時刻は、前記受信時刻補正部58により前記第2基準基地局11Bである第4普通基地局12Dの時計44を基準とする時刻に補正される。そして、前述のように第4普通基地局12Dの時計44を基準とする時刻は第1基準基地局11Aの時計44を基準とする時刻に補正可能であるので、第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの時計44を基準とする時刻は、前記受信時刻補正部58による2回の補正により第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に補正することが可能である。このようにすれば、第1の基準基地局からみて普通基地局である基地局に同時に第2の基準基地局として機能させることにより、前記第1の基準基地局と直接通信可能にない基地局についても、間接的に第1の基準基地局に対応する普通基地局とすることができる。
【0101】
なお、各基地局11、12は例えば図4に示すような機能構成、すなわち、基準基地局として作動する際に必要となる発信符号生成部72と、普通基地局として作動する際に必要となるリアルタイム受信時刻検出部78、詳細受信時刻検出部80、および受信間隔算出部82との両方を有する構成であるため、一つの基地局が同時に基準基地局としての機能と普通基地局としての機能を同時に有することができる。
【0102】
すなわち、図12において、領域5Aは、第1基準基地局11Aとその第1基準基地局11Aに対応する普通基地局を囲む領域であり、領域5Bは、第2基準基地局11Bとその第2基準基地局11Bに対応する普通基地局を囲む領域である。
【0103】
このとき、第2基準基地局11Bとしての機能をも有する第4普通基地局Dは、第2の基準基地局11Bとして前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおいて前記受信時間差を算出するための拡散符号列として、前記第1基準基地局11Aが発信するものと異なる拡散符号列を送信することができる。具体的には、第2基準基地局11Bが発信する予告符号PN3’、第1の拡散符号PN1’、第2の拡散符号PN2’およびそれらの拡散符号間に発信される拡散符号PN0’はそれらが全て異なるものであると同時に、前記第1基準基地局11Aが発信する予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、第2の拡散符号PN2およびそれらの拡散符号間に発信される拡散符号PN0の何れとも異なるものとされる。
【0104】
図13は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップSD1においては、例えば図10に示される受信間隔算出ルーチンが実行され、所定の間隔で第1基準基地局11Aから発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記第1基準局11Aに対応する普通基地局12である第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおいて受信される際の受信間隔が算出される。
【0105】
クロック速度比算出部54に対応するSD2においては、SD1において算出された前記第1基準基地局11Aに対応する普通基地局12である第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、SD1において実行される受信間隔算出ルーチンにおけるSB6において第1基準基地局11Aから発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、第1基準基地局11Aの時計44と第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれの時計44とのクロック速度比が算出される。
【0106】
時計ずれ算出部56に対応するSD3においては、例えば、SD1において第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記第1基準基地局11Aによる第2の拡散符号の発信時刻と、前記第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれにおける第2の拡散符号の受信時刻と、予め既知である前記第1基準基地局11Aと前記第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とに基づいて、前記第1基準基地局11Aの時計44の時刻と前記第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dの時計44の時刻との時刻ずれが第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれについて算出される。
【0107】
受信時刻補正部58に対応するSD4においては、前第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれにおいて受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記第1基準基地局11Aの時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SD2において算出されるクロック速度比、SD3において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記第1基準基地局11Aと第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dのそれぞれとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0108】
また、ステップSD5においては、例えば図10に示される受信間隔算出ルーチンが実行され、所定の間隔で第2基準基地局11B(第4普通基地局12D)から発信された第1の拡散符号と第2の拡散符号とが前記第2基準局11Bに対応する普通基地局12である第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおいて受信される際の受信間隔が算出される。
【0109】
クロック速度比算出部54に対応するSD6においては、SD5において算出された前記第2基準基地局11Bに対応する普通基地局12である第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔と、SD5において実行される受信間隔算出ルーチンにおけるSB6において第2基準基地局11Bから発信された前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との発信間隔とに基づいて、第1基準基地局11Aの時計44と第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれの時計44とのクロック速度比が算出される。
【0110】
時計ずれ算出部56に対応するSD7においては、例えば、SD5において第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおける前記第1の拡散符号と前記第2の拡散符号との受信間隔を算出する過程で行われた、前記第2基準基地局11Bによる第2の拡散符号の発信時刻と、前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれにおける第2の拡散符号の受信時刻と、予め既知である前記第2基準基地局11Bと前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間とに基づいて、前記第2基準基地局11Bの時計44の時刻と前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gの時計44の時刻との時刻ずれが第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれについて算出される。
【0111】
受信時刻補正部58に対応するSD8においては、前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれにおいて受信される拡散符号のそれらの各普通基地局12の時計44を基準として算出される受信時刻を、前記第2基準基地局11Bの時計44を基準とする時刻に補正するための補正式が算出される。すなわち、SD6において算出されるクロック速度比、SD7において算出される時刻ずれ、あるいは、予め既知である前記第2基準基地局11Bと第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれとの距離に基づいて算出される真の電波の伝搬時間などを用いて、前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。
【0112】
受信時刻補正部58に対応するSD9においては、前記SD8において第2基準基地局11Bの時計を基準とする時刻に補正された、前記第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gのそれぞれにおいて受信される拡散符号の受信時刻を、第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に補正するための式、すなわち前記式(3)乃至式(7)の各式が決定される。このとき、前記第2基準基地局11Bは前記第4普通基地局12Dであることから、本ステップにおける補正式の算出は、前記SD4において算出された、前記普通基地局12Dの時計を基準とした時刻を第1基準基地局11Aの時計を基準とした時刻に変換するための式が用いられる。これらのステップにより、全ての普通基地局12における移動局10からの電波の受信時刻は、第1基準基地局11Aの時計を基準とした時刻に補正するための式が導出される。
【0113】
測位部60に対応するSD10においては、移動局10の位置の算出を行うための図11に示す測位ルーチンが実行される。すなわち、移動局10が測位のための拡散符号を含む電波を発信すると、各基地局11、12においてこれが受信される。そして、第1基準基地局11Aに対応する第1普通基地局12A乃至第4普通基地局12Dにおける受信時刻は、SD4において算出される補正式を用いて、第1基準基地局11Aの時計を基準とした時刻に補正される。また、第2基準基地局11Bに対応する第5普通基地局12E乃至第7普通基地局12Gにおける受信時刻は、SD8及びSD9において算出される補正式を用いて、第2基準基地局11Bの時計を基準とする時刻、第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に順次補正される。このようにして、第1基準基地局11Aの時計を基準とする時刻に補正された全ての基地局11、12における受信時刻を用いて、測位が行われる。
【0114】
前述の実施例によれば、第1基準基地局11Aおよび第2基準基地局11Bは、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2符号長の同一の連続した拡散符号列を送信するので、それぞれの基準基地局に対応する普通基地局が前記拡散符号を区別することが可能となり、複数の基準基地局が同時に存在することができるので基準基地局が故障した場合における冗長性を有することができる。また、前記複数の普通基地局が第2の基準基地局としての機能を有することにより、測位可能な領域を重畳的に増加することが可能となる。
【0115】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0116】
例えば、前述の実施例においては、基準基地局11と普通基地局12はともに図4に示すような共通する機能構成を有するものとされた。このようにすれば基地局は基準基地局11と普通基地局12の機能を切り換えたり、あるいは前述の実施例2に示すように、基準基地局11と普通基地局12の機能を同時に有したりすることができる。しかしながら、逆に言えばこのような態様に限られず、基準基地局11としてのみ作動する基地局においては、普通基地局12として作動する際に必要な受信間隔算出部82を有する必要がなく、また普通基地局12としてのみ作動する基地局においては、基準基地局11として作動する際に必要な発信符号生成部72を有する必要がない。このようにすれば、基準基地局11および普通基地局12はそれぞれ簡易な構成とすることができる。
【0117】
また、前述の実施例においては、普通基地局12における受信間隔算出部82は詳細受信時刻検出部80によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出したが、これに限られず、例えば、リアルタイム受信時刻検出部78によって検出された受信時刻を用いて受信間隔を算出してもよい。すなわち、詳細受信時刻検出部80がなくても一定の効果が生ずる。
【0118】
また、前述の実施例においては、発信符号生成部72が生成する拡散符号列において、予告符号と第1の拡散符号との間隔は予め定められた所定時間とされたが、これに限られない。例えば、予告符号と第1の拡散符号との間隔を前記予告符号を発信する際の発信完了時刻と前記拡散符号生成部74によって生成される前記第1の拡散符号の発信完了時刻との発信時間の差としてその都度測定された値を用いることもできる。このとき、予告符号生成部76は、例えば前記制御部38を介して後述する普通基地局12の詳細受信時刻検出部80にこの発信時刻の差についての情報を伝達してもよい。この場合所定時間情報はサーバ14を介して普通基地局12へ送信される。
【0119】
また、前述の実施例においては、予告符号生成部76が生成する予告符号PN3と、拡散符号生成部74が生成する第1の拡散符号PN1および第2の拡散符号PN2のそれぞれは同一の拡散符号であるとされたが、これに限られない。すなわち、予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2はそれぞれ異なった拡散符号でもよく、この場合、受信する普通基地局12においてはそれぞれの異なる拡散符号と同一のそれぞれのレプリカ符号を用いて同期検出処理を行なう必要がある一方、受信側において予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2を取り違えることがない。なお、移動局10の発信符号生成部29において生成される拡散符号列についても同様であり、予告符号生成部33が生成する予告符号と拡散符号生成部32が生成する測位のための受信時刻検出のための拡散符号とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0120】
また、前述の実施例において、予告符号生成部76が生成する拡散符号列において、予告符号PN3、第1の拡散符号PN1、および第2の拡散符号PN2以外は、これらの何れでもない拡散符号PN0が発信されるとしたが、これに限られない。例えば前記拡散符号PN0を発信するのに代えて、この拡散符号PN0を発信する時間に相当する時間は何も発信しないようにしてもよい。このようにすれば、前記拡散符号PN0を発信する時間に相当する時間は電波を発信しないことから省電力化を図ることができる。
【0121】
また、前述の実施例においては、測位部60は各基地局11、12における移動局10からの電波の受信時刻の時間差を用いて移動局10の測位を行ったが(TDOA方式)、これに限られない。例えば、測位の前に少なくとも前記基準基地局11の時計44と移動局10の時計31との時刻の同期を行うことができれば、電波の発信時刻と受信時刻から算出される電波の伝搬時間に基づいて移動局10の測位を行うことができる(TOA方式)。
【0122】
また、前述の実施例においては、図10のステップSB4およびSB7において、全ての普通基地局からの応答があったか否かを判断したが、これに限られず、例えば移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局からの応答が合った場合にはこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。また、図11のステップSC4およびSC7においても同様であり、基準基地局11と移動局10の測位に必要となる最小の普通基地局12からの応答が合った場合にこれらのステップの判断が肯定されるようにしてもよい。
【0123】
また、前述の実施例においては、図11のステップSC5において、基準基地局11から移動局10に対し測位のための電波の発信命令が行われたが、これに限られない。すなわち、移動局10に対して無線通信可能ないずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われてもよく、測位サーバ14によっていずれの基地局11、12から電波の発信命令が行われるかが定められればよい。
【0124】
また、前述の実施例においては、各基地局11、12と測位サーバ14とは有線ケーブル52により接続され通信可能とされていたが、このような態様にかぎられず、各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能な状態とされていれば、その手段は限定されない。例えば、赤外線や、超音波、電波などにより各基地局11、12と測位サーバ14とが通信可能にされてもよく、この場合、有線ケーブルで接続される必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の移動局測位システム8の構成の概要の一例を説明する図である。
【図2】本発明の移動局測位システム8の領域5に設けられる座標を説明する図である。
【図3】本発明の移動局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図4】本発明の基地局の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図5】本発明の測位サーバの有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図6】基準基地局が発信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図7】普通基地局が受信する拡散符号列の一例と、その時間関係を説明する図である。
【図8】測位部による測位の原理を説明する図である。
【図9】本発明の移動局測位システムによる測位における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートにおいて実行される受信間隔算出ルーチンを説明するフローチャートである。
【図11】図9のフローチャートにおいて実行される測位ルーチンを説明するフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施例における移動局測位システム8の構成の概要を説明する図であって、図1に対応する図である。
【図13】本発明の別の実施例における移動局測位システム8の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0126】
8:測位システム
11:基準基地局
12:普通基地局
14:測位サーバ
54:クロック速度比算出部
56:時計ずれ算出部
58:受信時刻補正部
60:測位部
80:詳細受信時刻検出部
82:受信間隔算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、
前記複数の基地局のうち、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、
前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、
前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、
前記受信間隔算出手段によって算出された前記2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、
前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、
該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号の受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、
前記受信間隔算出手段は、前記オンライン受信時刻検出手段による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出手段を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信すること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位方法であって、
前記複数の基地局のうち少なくとも1つは、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する基準基地局であり、
前記複数の基地局のうち少なくとも2つは、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する普通基地局であり、
前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出工程と、
前記受信間隔算出工程によってそれぞれ算出された普通基地局のそれぞれにおける前記2つの拡散符号のそれぞれについての受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出工程と、
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と、前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出工程と、
前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出工程によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出工程により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正工程と、
該受信時刻補正工程により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位工程と、
を有することを特徴とする移動局測位方法。
【請求項7】
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれること
を特徴とする請求項6に記載の移動局測位方法。
【請求項8】
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号の受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出工程と、
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出工程よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出工程と、を有し、
前記受信間隔算出工程は、前記オンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出工程を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出工程によって検出すること、を特徴とする請求項6または7に記載の移動局測位方法。
【請求項9】
前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信すること
を特徴とする請求項6乃至8のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項10】
前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信すること
を特徴とする請求項6乃至9のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項1】
移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位システムであって、
前記複数の基地局のうち、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する少なくとも1つの基準基地局と、
前記複数の基地局のうち、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する2以上の普通基地局と、
前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれの受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出手段と、
前記受信間隔算出手段によって算出された前記2つの拡散符号の前記普通基地局のそれぞれにおける受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出手段と、
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出手段と、
前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出手段によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出手段により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正手段と、
該受信時刻補正手段により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位手段と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号の受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出手段と、
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出手段よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出手段と、を有し、
前記受信間隔算出手段は、前記オンライン受信時刻検出手段による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出手段を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出手段によって検出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信すること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
移動局から発信された電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻の時間差と該複数の基地局の位置とに基づいて該移動局の位置を推定する移動局測位方法であって、
前記複数の基地局のうち少なくとも1つは、2つの拡散符号を含む拡散符号列を1回発信する基準基地局であり、
前記複数の基地局のうち少なくとも2つは、該基準基地局から発信される前記拡散符号列を受信する普通基地局であり、
前記普通基地局のそれぞれが受信した拡散符号列に含まれる2つの拡散符号のそれぞれについての受信時刻を検出し、該検出された受信時刻に基づいて前記2つの拡散符号の受信間隔を算出する受信間隔算出工程と、
前記受信間隔算出工程によってそれぞれ算出された普通基地局のそれぞれにおける前記2つの拡散符号のそれぞれについての受信間隔と、前記基準基地局が前記2つの拡散符号を発信する際の発信間隔とに基づいて、前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比を算出するクロック速度比算出工程と、
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信時刻と、前記普通基地局のそれぞれによる前記拡散符号列の受信時刻と予め既知である前記基準基地局と前記普通基地局との距離とに基づいて、前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれを算出する時計ずれ算出工程と、
前記普通基地局のそれぞれが、該普通基地局のそれぞれの有する時計に基づいて算出した前記移動局からの電波を受信した受信時刻を、前記クロック速度比算出工程によって算出された前記普通基地局のそれぞれと前記基準基地局とのクロック速度の比と、前記時計ずれ算出工程により算出された前記基準基地局の時計に対する前記普通基地局のそれぞれの時計の時刻のずれとに基づいて、前記基準基地局の有する時計に基づいた時刻に補正する受信時刻補正工程と、
該受信時刻補正工程により補正された普通基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記基準基地局における移動局からの電波の受信時刻と、前記普通基地局および基準基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を推定する測位工程と、
を有することを特徴とする移動局測位方法。
【請求項7】
前記基準基地局による前記拡散符号列の発信は、移動局による測位のための電波の発信に先立って行なわれること
を特徴とする請求項6に記載の移動局測位方法。
【請求項8】
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記拡散符号の受信に伴って行なうことにより前記電波の受信時刻を検出するオンライン受信時刻検出工程と、
受信した電波に含まれる拡散符号の同期検出処理を、前記オンライン受信時刻検出工程よりも詳細な精度により前記電波の受信時刻を検出するオフライン受信時刻検出工程と、を有し、
前記受信間隔算出工程は、前記オンライン受信時刻検出工程による検出結果に基づいて前記オフライン受信時刻検出工程を実行するオフライン検出実行区間を決定し、該オフライン検出実行区間において前記2つの拡散符号の受信時刻を前記オフライン受信時刻検出工程によって検出すること、を特徴とする請求項6または7に記載の移動局測位方法。
【請求項9】
前記基準基地局は、前記2つの拡散符号として同一もしくは相互に異なる拡散符号を発信すること
を特徴とする請求項6乃至8のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【請求項10】
前記基準基地局は、基準基地局ごとに異なる拡散符号を用いて、前記2つの拡散符号を含む拡散符号列を発信すること
を特徴とする請求項6乃至9のいずれか1に記載の移動局測位方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−52982(P2009−52982A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218920(P2007−218920)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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