説明

移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法

【課題】配置や個数の変更が可能である移動式バッファを提供する。
【解決手段】資材101を一時的に保管するバッファ装置1と、バッファ装置1に設けられ、バッファ装置を移動させる移動装置2と、移動装置2に対して、所定の個所まで移動させる制御をする移動制御装置3とを備え、自走して倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cのいずれかに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式バッファに関し、特に、生産ラインに用いる移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶(LCD)等の基板を製作する場合には、大型の資材(例えば、ガラス基板、半導体基板)上に同一の回路パターンを複数形成し、この資材をダイシングして所望の回路基板を得て、次のボンディング工程に送っている。このように、液晶等の基板を製作する場合、大型の資材が倉庫に搬入・保管され、その倉庫から搬出された資材がライン中の工程を経ることで回路基板の形成を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
倉庫及び基板等を製作するライン中においては、工程の処理待ちや故障が発生すると資材を一時的に保管しなければならず、一時的な保管場所としてバッファが配置されている。バッファを設置して資材を一時的に保管することで、稼働率の低下を防いでいる。バッファは、倉庫や各工程の前後に固定して設置されたり、問題を発生した工程の前後に設置されたり、どの工程からもアクセスできるように設置されたりしている。
【0004】
しかしながら、バッファが倉庫や各工程の前後に固定して設置されている場合は、大型の資材を保管することができるバッファを設置するので、設置面積や費用が大きくなってしまう。
【0005】
また、バッファが問題を発生した工程の前後に設置される場合は、問題発生や問題解決がある度に各工程の稼働率が変化するので、稼働率の変化に対応できるようにバッファが設置されていなければならない。そのため、ライン設計時には、稼働率の変化等を想定してバッファを予め冗長に組み入れる必要があり、設備が増大してしまう。
【0006】
また、バッファがどの工程からもアクセスできるように設置される場合は、バッファは汎用的になるため、バッファが必要な位置や個数が変化しても対応できるが、搬送装置が増えてしまう。更に、バッファがどの工程からもアクセスできるように設置される場合は、工程とバッファが遠くなってしまうこともあるので、資材の搬送に時間がかかりスループットが悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−251049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、配置や個数の変更が可能である移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の一態様によれば、資材を一時的に保管するバッファ装置と、バッファ装置に設けられ、バッファ装置を移動させる移動装置と、移動装置に対して、所定の個所まで移動させる制御をする移動制御装置とを備え、自走して倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかに配置される移動式バッファであることを要旨とする。
【0010】
本願発明の他の態様によれば、倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかでバッファ装置が必要であるか判断する工程と、倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかでバッファ装置が必要であるか判断する工程において、倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかでバッファ装置が必要であると判断された場合、バッファ装置の配置変更が必要であるか判断する工程と、バッファ装置の配置変更が必要であるか判断する工程において、バッファ装置の配置変更が必要であると判断された場合、バッファ装置に設けられた移動装置によって、バッファ装置を移動させる工程とを含む移動式バッファ配置制御方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配置や個数の変更が可能である移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に移動式バッファの運用を示す模式的平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るバッファ装置であるランダムアクセスバッファ装置の模式的斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るバッファ装置であるインラインバッファ装置の模式的斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る移動式バッファ配置制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る移動式バッファ10は、図1〜図3に示すように、資材101を一時的に保管するバッファ装置1と、バッファ装置1に設けられ、バッファ装置を移動させる移動装置2と、移動装置2に対して、所定の個所まで移動させる制御をする移動制御装置3とを備え、自走して倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cのいずれかに配置される。
【0015】
ここで、倉庫とは、図1に示したレール30上に設けられたコンベア等の搬送装置32に資材101を搬送する前、又は、搬送装置32から搬送された後に、資材101を貯蔵・保管する個所である。
【0016】
製造ラインの各工程20a〜20cとは、液晶表示装置及び半導体装置等を製造するための種々の工程である。例えば、液晶表示装置の製造ラインであれば、工程20a〜20cは、回路パターン工程、ダイシング工程、ボンディング工程等である。資材101は、製造ラインの各工程20a〜20cを経ることで、液晶表示装置及び半導体装置等として製品化及び検査等がなされる。
【0017】
バッファ装置1は、ガラス基板及び半導体基板等の大型の資材101を保管する装置である。バッファ装置1としては、例えば、図2に示すようなランダムアクセスバッファ装置や、図3に示すようなインラインバッファ装置等を採用することができる。
【0018】
ランダムアクセスバッファ装置(バッファ装置)1は、図2に示すように、ガラス基板及び半導体基板等の大型の資材101を保管する複数の保管部11と、保管部11の両側に昇降可能な資材支持機構12とを備えるランダムアクセスバッファ装置とすることができる。ランダムアクセスバッファ装置の資材支持機構12は、資材101を支持して、複数の保管部11のうちの任意の保管部11へ挿入させることができる。また、ランダムアクセスバッファ装置の資材支持機構12は、複数の保管部11の任意の保管部11で保管されている資材101を支持して、任意の保管部11から資材101を取り出すことができる。なお、このランダムアクセスバッファ装置の構成については、本願出願人が先に提案した特開2005−170675号公報及び特開2005−175429号公報に記載されている。
【0019】
また、インラインバッファ装置(バッファ装置)1は、図3に示すように、大型の資材101を保管する複数の保管部11と、保管部11の下方に昇降可能な資材支持機構13とを備えるインラインバッファ装置とすることができる。インラインバッファ装置の資材支持機構13は、複数の保管部11に対して上方から順に資材101を挿入することができる。また、インラインバッファ装置の資材支持機構13は、保管部11で保管されている資材101を下方から順に取り出すことができる。
【0020】
移動装置2は、バッファ装置1(移動式バッファ10)を移動させる装置である。移動装置2は、例えば、資材101を搬送する搬送装置32に沿って移動可能な装置であれば、搬送装置32に沿ってバッファ装置1(移動式バッファ10)を移送させることができる。また、移動装置2は、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)であれば、バッファ装置1(移動式バッファ10)を任意の場所に移動させることができ、移動式バッファ10の位置の自由度を上げることができる。
【0021】
移動装置2による具体的な移動例を図1(a)及び(b)を参照して説明する。図1(a)に示すように、工程1と工程2の間にバッファ装置1が必要である場合、移動装置2によって移動することで工程1と工程2の間に配置される。そして、生産条件等が変わり、工程2と工程3の間にバッファ装置1が必要となり、工程1と工程2の間にバッファ装置1が必要なくなった場合、移動装置2によって移動することで工程2と工程3の間に配置される。
【0022】
移動制御装置3は、移動装置2に接続して設けられ、移動装置2に対して、所定の個所まで移動させる制御をする装置である。また、移動制御装置3は、倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cのいずれかでバッファ装置1が必要であるか判断する制御を行う。そして、移動制御装置3は、いずれかでバッファ装置1が必要であるかの判断結果に基づいて、移動装置2を移動させるか否かを制御する。
【0023】
以下に、実施の形態に係る移動式バッファ10を用いる移動式バッファ配置制御方法について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0024】
(イ)まず、ステップS11において、倉庫等に貯蔵・保管されている資材101を出庫し、資材101を搬送装置32で搬送する。資材101は、搬送装置32で搬送されることで製造ラインの各工程20a〜20cを経ていく。
【0025】
(ロ)次に、ステップS12において、倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cのいずれかでバッファ装置1が必要であるか判断する。バッファ装置1が必要であるか判断する基準としては、例えば、各工程20a〜20cで処理待ちや故障等の不具合が生じた場合であって、資材101を一時的に保管しなければならない状況が起きていれば、不具合が生じた倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cの前後にバッファ装置1が必要であると判断する。ステップS12で倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cのいずれかでバッファ装置1が必要であるか判断して、必要であればステップS13へ移行し、必要なければ処理を終了する。
【0026】
(ハ)次に、ステップS13において、バッファ装置1の配置変更が必要であるか判断する。バッファ装置1の配置変更が必要であるか判断する基準としては、例えば、倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cのいずれかでバッファ装置1が必要である場合であって、必要とされている個所にバッファ装置1が配置されていない場合に配置変更が必要であると判断する。ステップS13でバッファ装置1の配置変更が必要であるか判断して、必要であればステップS14へ移行し、必要なければ処理を終了する。
【0027】
(ニ)次に、ステップS14において、バッファ装置1に設けられた移動装置2によって、バッファ装置1を必要とされる倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cのいずれかに移動させる。
【0028】
以上の移動式バッファ配置制御方法によって、移動式バッファ10の移動制御がなされる。
【0029】
移動式バッファ配置制御方法において、ステップS12及びステップS13の判断工程は、移動制御装置3が行うこともできるし、製造ラインに設けられた判断部で行うこともできる。また、ステップS12及びステップS13の判断工程は、製造ラインの管理者や作業者が判断しても構わない。
【0030】
実施の形態に係る移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法によれば、必要な個所に必要な個数のバッファ装置1を配置することができるので、設置面積や費用を減らすことができる。
【0031】
また、実施の形態に係る移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法によれば、必要な個所に必要な個数のバッファ装置1を配置することができるので、必要とする工程の近傍に配置することで、スループットを向上させることができる。
【0032】
また、実施の形態に係る移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法によれば、各工程20a〜20cで処理待ちや故障等の問題が生じた場合に、必要とされるバッファ装置1を配置して、問題が解決した後にはバッファ装置1を撤去することができる。つまり、実施の形態に係る移動式バッファ及び移動式バッファ配置制御方法であれば、各工程20a〜20cの稼働率が変化した場合であっても、稼働率の変化に対応することができる。
【0033】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0034】
例えば、実施の形態においては、倉庫及び製造ラインの各工程20a〜20cの必要とする個所に移動式バッファ10を配置すると記載したが、各工程20a〜20c等にある程度のバッファ装置を標準で配置し、移動式バッファ10は予備として運用してもよい。
【0035】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0036】
1…バッファ装置
2…移動装置
3…移動制御装置
10…移動式バッファ
11…保管部
12,13…資材支持機構
20a〜20c…工程
30…レール
32…搬送装置
101…資材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
資材を一時的に保管するバッファ装置と、
前記バッファ装置に設けられ、前記バッファ装置を移動させる移動装置と、
前記移動装置に対して、所定の個所まで移動させる制御をする移動制御装置
とを備え、自走して倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかに配置されることを特徴とする移動式バッファ。
【請求項2】
前記移動制御装置は、倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかで前記バッファ装置が必要となった場合に、前記移動装置に対して、前記バッファ装置が必要となった倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかの近傍に移動させる制御をすることを特徴とする請求項1に記載の移動式バッファ。
【請求項3】
前記移動装置は、前記資材を搬送する搬送装置に沿って移送することを特徴とする請求項1又は2に記載の移動式バッファ。
【請求項4】
前記移動装置は、無人搬送車であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動式バッファ。
【請求項5】
前記バッファ装置は、ランダムアクセスバッファ装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動式バッファ。
【請求項6】
倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかでバッファ装置が必要であるか判断する工程と、
前記倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかでバッファ装置が必要であるか判断する工程において、倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかで前記バッファ装置が必要であると判断された場合、前記バッファ装置の配置変更が必要であるか判断する工程と、
前記バッファ装置の配置変更が必要であるか判断する工程において、前記バッファ装置の配置変更が必要であると判断された場合、前記バッファ装置に設けられた移動装置によって、前記バッファ装置を移動させる工程
とを含むことを特徴とする移動式バッファ配置制御方法。
【請求項7】
前記バッファ装置を移動させる工程は、前記バッファ装置に設けられた移動装置によって、前記バッファ装置を移動させることを特徴とする請求項6に記載の移動式バッファ配置制御方法。
【請求項8】
前記倉庫及び製造ラインの各工程のいずれかでバッファ装置が必要であるか判断する工程は、前記移動装置に対して、所定の個所まで移動させる制御をする移動制御装置が判断することを特徴とする請求項6に記載の移動式バッファ配置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−241554(P2010−241554A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91803(P2009−91803)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】