説明

移動機械の位置決め制御方法及び装置

【課題】比較的安価に且つ安定性良く、移動機械の位置決めを高精度に行うことができる位置決め制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る位置決め制御方法は、絶対位置情報が書き込まれ、移動機械10の設定され得る複数の目標停止位置の数と同数のICタグ3を、移動機械の移動方向に沿って、各目標停止位置に対応する減速開始点と最終制動点との間にそれぞれ設置し、ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取るためのICタグリーダ4を移動機械に設置し、移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する減速開始点を通過してから最終制動点に達する前に、ICタグリーダでICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取り、該読み取った絶対位置情報に基づき移動機械の現在位置を補正し、該補正後の移動機械の現在位置が最終制動点に達すると、移動機械を制動して停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉で用いられる装炭車などの移動機械の位置決め制御方法及び装置に関する。特に、本発明は、比較的安価に且つ安定性良く、移動機械の位置決めを高精度に行うことができる位置決め制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在広く普及している室炉式コークス炉(以下、単に「コークス炉」という)には、隣接する燃焼室からの熱により石炭を乾留してコークス化する炭化室と、燃料ガスの燃焼により隣接する炭化室に熱を供給する燃焼室とが、交互に多数配列されている。通常、1炉団のコークス炉は、50〜100室程度の炭化室から構成されており、炭化室の連なる方向を炉団方向という。
【0003】
上記のコークス炉では、炭化室に原料を装入する装炭車、コークスを押し出す押し出し機、押し出されたコークスを受け取るガイド車、或いはガイド車から払い出されたコークスを消化する消化車などのいわゆる移動機械が用いられている。移動機械は、予め炉団方向に延びる軌道上において、移動開始前に設定された目標停止位置に向けた移動及び停止、停止位置での所定作業(コークスの押し出し等)、並びに作業終了後の次の目標停止位置に向けた移動及び停止を繰り返し行っている。上記移動機械の動作は、通常は自動化されており、昼夜連続して無人で行われている。
【0004】
具体的には、移動中の移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置から一義的に決まる減速開始点に達すると、移動機械を減速させて低速移動状態にし、さらに移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置から一義的に決まる最終制動点に達すると、低速移動状態の移動機械を制動して停止させる位置決め制御が行われている。
【0005】
ここで、1台の移動機械が多数の目標停止位置(例えば、各炭化室の中心(窯芯))を有するため、前述した移動機械の移動、停止、及び作業終了後の再移動という動作を効率的に行う必要がある。このため、目標停止位置に精度良く停止させることが要求されており、具体的には、10mm以下の位置決め精度が要求されている。
一方で、コークス炉は、粉塵や暑熱を伴う煉瓦構造物である上、天候変化の影響も受ける。このため、このようなコークス炉の環境下においても精度良く移動機械を位置決めできる位置決め制御方法が必要とされている。
従来提案されている移動機械の位置決め制御方法としては、例えば、特許文献1〜3に記載の方法が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、コークス炉で使用される移動機械の目標停止位置(窯芯)を、CCDラインセンサを用いた光学式の窯芯検出装置で検出し、この検出した目標停止位置に移動機械を停止させる方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、光学式の窯芯検出装置を使用しているため、コークス炉における粉塵の堆積や雨などの影響で、目標停止位置の検出精度が劣化する。このため、窯芯検出装置の光学系を定期的に清掃する必要が生じ、検出精度維持のために多額の費用と時間を要するという問題がある。
【0007】
特許文献2には、コークス炉で使用される移動機械の移動方向に沿って布設した誘導無線線路から得た絶対位置データと、移動機械の従動輪に取り付けられたシンクロ発信器から得た相対位置データとを組み合わせて移動機械の現在位置を検出し、目標停止位置に移動機械を停止させる方法が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、移動機械の移動範囲全域に亘って、高価で嵩張る誘導無線線路を布設する必要があるため、布設工事に莫大な費用が掛かるという問題がある。
【0008】
特許文献3には、移動機械(エレベータの乗りかご)の移動方向に沿って多数設置されたICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取り、パルス信号発生手段によって発生するパルス信号に基づき演算される移動機械の現在位置を、前記読み取った絶対位置情報で補正することにより、目標停止位置に移動機械を停止させる方法が開示されている。
しかしながら、エレベータの乗りかごの場合には、コークス炉で使用される移動機械と異なり、移動開始前に目標停止位置(階)が設定されるとは限らず、移動中に急に目標停止位置が設定される場合(例えば、移動中の乗りかご内で人間が降りる階を急に押しボタンで決定する場合)を想定する必要がある。このため、目標停止位置への位置決め精度を高めるには、目標停止位置の数に比べて極めて多くのICタグを設置(特に、目標停止位置の近傍に密集して設置)する必要がある。これは、目標停止位置が設定された瞬間の乗りかごの位置と目標停止位置との間にICタグが設置されていないと、乗りかごの現在位置をICタグに書き込まれた絶対位置情報で補正できないからである。上記のように、特許文献3に記載の方法では、極めて多くのICタグを設置する必要があるため、ICタグの故障が生じる虞が高くなる。また、目標停止位置の近傍にICタグを密集して配置する必要があるため、ICタグに書き込まれた絶対位置情報の読み取りミスが生じる可能性もある。
【特許文献1】特開平7−63514号公報
【特許文献2】特開平9−13040号公報
【特許文献3】特開2006−273541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、比較的安価に且つ安定性良く、移動機械の位置決めを高精度に行うことができる位置決め制御方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討し、以下の(1)及び(2)の事項に着眼した。
(1)コークス炉で使用される移動機械の場合、移動を開始する前に予め目標停止位置が設定され、移動中に目標停止位置が設定されたり変更されることはない。従って、設定された目標停止位置から一義的に決まる減速開始点及び最終制動点についても、移動機械が移動中に設定されたり変更されることはない。
(2)最終制動点の直前では、低速移動状態で高精度に速度制御されているのが一般的であるため、移動機械の停止位置の位置決め精度に直接影響を及ぼすのは、実質的には最終制動点における移動機械の現在位置の検出精度である。従って、減速開始点と最終制動点との間における移動機械の現在位置の検出精度さえ高めれば、移動機械の停止位置の位置決め精度を高めることが可能である。
【0011】
上記(1)及び(2)の事項より、本発明者らは、移動機械の現在位置をICタグに書き込まれた絶対位置情報で補正することを考える場合、移動機械の設定され得る複数の目標停止位置の数と同数のICタグを、各目標停止位置に対応する減速開始点と最終制動点との間にそれぞれ設置しさえすれば、移動機械の停止位置の位置決め精度を高めることが可能であることに想到し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、移動開始前に目標停止位置が設定される移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する減速開始点に達すると、前記移動機械を減速させて低速移動状態にし、さらに前記移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する最終制動点に達すると、前記移動機械を制動して停止させる移動機械の位置決め制御方法であって、絶対位置情報が書き込まれ、前記移動機械の設定され得る複数の目標停止位置の数と同数のICタグを、前記移動機械の移動方向に沿って、前記各目標停止位置に対応する前記減速開始点と前記最終制動点との間にそれぞれ設置し、前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取るためのICタグリーダを前記移動機械に設置し、前記移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する前記減速開始点を通過してから前記最終制動点に達する前に、前記ICタグリーダで前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取り、該読み取った絶対位置情報に基づき前記移動機械の現在位置を補正し、該補正後の移動機械の現在位置が前記最終制動点に達すると、前記移動機械を制動して停止させることを特徴とする移動機械の位置決め制御方法を提供する。
【0013】
また、前記課題を解決するため、本発明は、移動開始前に目標停止位置が設定される移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する減速開始点に達すると、前記移動機械を減速させて低速移動状態にし、さらに前記移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する最終制動点に達すると、前記移動機械を制動して停止させる移動機械の位置決め制御装置であって、前記移動機械の移動量に応じた信号を発生する信号発生手段と、前記信号発生手段によって発生する信号に基づき、前記移動機械の現在位置を演算する現在位置演算手段と、絶対位置情報が書き込まれ、前記移動機械の設定され得る複数の目標停止位置の数と同数のICタグであって、前記移動機械の移動方向に沿って、前記各目標停止位置に対応する前記減速開始点と前記最終制動点との間にそれぞれ設置されたICタグと、前記移動機械に設置され、前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取るためのICタグリーダと、前記移動機械を制動して停止させる制動手段とを備え、前記現在位置演算手段は、前記移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する前記減速開始点を通過してから前記最終制動点に達する前に、前記ICタグリーダで読み取った前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報に基づき前記移動機械の現在位置を補正し、該補正後の現在位置が前記最終制動点に達すると、前記制動手段を駆動することを特徴とする移動機械の位置決め制御装置としても提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る移動機械の位置決め制御方法及び装置によれば、移動機械の現在位置を補正するための絶対位置情報が書き込まれた媒体としてICタグを用いるため、特許文献1に記載の方法のように粉塵の堆積や雨などの影響を受けることがなく、特許文献2に記載の方法のように高価で嵩張る誘導無線線路を布設する必要もない。
また、本発明によれば、必要最小限の数(設定され得る複数の目標停止位置と同数)のICタグを設置するだけで良いため、特許文献3に記載の方法のようにICタグの故障が生じる虞やICタグに書き込まれた絶対位置情報の読み取りミスが生じる可能性も低い。
さらに、本発明によれば、移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する減速開始点を通過してから最終制動点に達する前に、ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取り、該読み取った絶対位置情報に基づき移動機械の現在位置を補正するため、移動機械の停止位置の位置決め精度に直接影響を及ぼす最終制動点における移動機械の現在位置の検出精度を高めることができ、移動機械の停止位置の位置決め精度を高めることが可能である。
以上のように、本発明によれば、比較的安価に且つ安定性良く、移動機械の位置決めを高精度に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について、コークス炉で用いられる移動機械を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る移動機械の位置決め制御装置(以下、適宜「位置決め制御装置」という)の概略構成を示す模式図である。図2は、図1に示す位置決め制御装置による移動機械の位置決め制御方法の概要を示す図である。
図1、図2に示すように、本実施形態に係る位置決め制御装置100は、コークス炉で使用される移動機械10の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する減速開始点に達すると、移動機械10を減速させて低速移動状態にし、さらに移動機械10の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する最終制動点に達すると、移動機械10を制動して停止させるように構成されている。
【0016】
具体的には、図1に示すように、位置決め制御装置100は、信号発生手段1と、現在位置演算手段2と、ICタグ3と、ICタグリーダ4と、制動手段5とを備える。
【0017】
信号発生手段1は、移動機械10の移動量に応じた信号(本実施形態ではパルス信号)を発生する。具体的には、信号発生手段1は、移動機械の車輪8の回転軸に取り付けられており、車輪8の回転に伴ってパルス信号を発生する。これにより、移動機械10の移動量に応じたパルス信号が発生することになる。信号発生手段1は、要求される位置決め精度(10mm以下)を得るために必要なパルス数のパルス信号を発生する。本実施形態に係る信号発生手段1は、移動機械10の単位移動量(1m)当たり数千パルスのパルス信号を発生するように構成されている。これにより、移動機械10の移動量の検出分解能(1パルス当たりの移動量)は1mm以下となる。信号発生手段1で発生したパルス信号は、現在位置演算手段2に入力される。
【0018】
現在位置演算手段2は、移動機械10に搭載されており、信号発生手段1によって発生するパルス信号に基づき、移動機械10の現在位置を演算する。具体的には、現在位置演算手段2は、移動機械10が移動を開始してから入力されるパルス信号のパルス数を積算し、この積算したパルス数と1パルス当たりの移動量とを乗算して、移動を開始してからの移動機械10の移動量を算出する。そして、現在位置演算手段2は、移動を開始した時点の現在位置と、上記演算によって得られた移動量とを加算することにより、移動機械10の現在位置を算出する。
【0019】
しかしながら、信号発生手段1によって発生するパルス信号のパルス数を積算して移動機械10の現在位置を演算するだけでは、車輪8の空転や、長時間使用による車輪8の摩耗等に起因して、1パルス当たりの移動量に変化が生じ、現在位置の演算結果に誤差が生じてしまう。このため、現在位置演算手段2は、ICタグ3に書き込まれた絶対位置情報に基づき、移動機械10の現在位置を補正するように構成されている。その詳細については、後述する。
【0020】
ICタグ3には、絶対位置情報(ICタグ3が設置されている場所の絶対位置そのもの、或いは、絶対位置に対応付けられた識別子など)が書き込まれ、ICタグ3は、移動機械10の設定され得る複数の目標停止位置の数と同じ数だけ配置されている。具体的には、ICタグ3は、移動機械10の移動方向(図1に示す白抜き矢符の方向)に沿った地上において、各目標停止位置に対応する減速開始点と最終制動点との間にそれぞれ設置されている。図2に示す例では、目標停止位置Aに対応する減速開始点A1と最終制動点A2との間に、目標停止位置Aに対応するICタグ3Aが設置されている。また、他のICタグ3Bは、目標停止位置B(図示せず)に対応する減速開始点と最終制動点との間に設置され、他のICタグ3Cは、目標停止位置C(図示せず)に対応する減速開始点と最終制動点との間に設置されている。
【0021】
移動機械10の目標停止位置としては、窯芯の他、乾式消火設備(CDQ)の位置、消化塔の位置、コークワーフの位置、待機位置など、コークス炉の配置や消火設備の配置により異なるが、一般的には炭化室の数(窯数)よりも多い100〜200程度である。従って、ICタグ3も、目標停止位置の数と同じ100〜200個程度配置することになる。
また、隣接する窯芯の距離は1.2〜1.6m程度であり、減速開始点から目標停止位置までの距離は数m程度、最終制動点から目標停止位置までの距離は0.5m程度である。目標停止位置としての各窯芯に対応するICタグ3は、互いに窯芯の配置ピッチ(1.2〜1.6m程度)と同等のピッチで設置することが好ましい。
【0022】
なお、ICタグ3の設置位置としては、移動機械3の設定され得る各目標停止位置の近傍に設置することが好ましい。具体的には、各目標停止位置への位置決め精度の許容範囲内にICタグ3を設置することが好ましい。これにより、ICタグ3に書き込まれた絶対位置情報を、移動機械10の現在位置を補正するために用いるのみならず、停止後の移動機械3の位置決め精度を評価するために用いることが可能である。
また、ICタグ3を各目標停止位置の近傍に設置する場合、ICタグ3は、炭化室等に直接設置する必要はなく、炭化室等の前に停止した移動機械10に設置されたICタグリーダ4からICタグ3に書き込まれた絶対位置情報を読み取れる場所に設置すれば良い。例えば、移動機械10から見て、炭化室等の反対側に設置することも可能である。
【0023】
ICタグリーダ4は、移動機械10に設置され、ICタグ3に書き込まれた絶対位置情報を読み取る。具体的には、ICタグリーダ4は、移動機械10が移動することによって、各ICタグ3に対向し得る位置に設置されており、ICタグリーダ4が何れかのICタグ3に対向する位置に到達した際、ICタグリーダ4は、前記対向する位置にあるICタグ3に書き込まれた絶対位置情報を受信して読み取るように構成されている。
【0024】
制動手段5は、移動機械10を制動して停止させる。具体的には、制動手段5は、移動機械10の車輪8を回転駆動するモータ7にブレーキをかけて、車輪8を停止させる。
【0025】
以上の構成を有する位置決め制御装置100において、移動機械10が移動を開始する前に現在位置演算手段2に目標停止位置が設定される(この際、この設定された目標停止位置に対応する減速開始点及び最終制動点も自動的に設定される)と、現在位置演算手段2は、記憶されている現在位置と、設定された目標停止位置とに基づき、目標停止位置までの残距離を演算し、この残距離に応じた速度指令を移動機械10に搭載された速度制御手段6に出力する。速度制御手段6は、入力された速度指令に応じた回転駆動力をモータ7に与え、これにより車輪8が回転して、移動機械10が移動を開始する。
【0026】
現在位置演算手段2は、前述のように、信号発生手段1によって発生するパルス信号に基づき、移動機械10の現在位置を演算する。そして、現在位置演算手段2は、演算された現在位置が設定された目標停止位置に対応する減速開始点に達すると、速度制御手段6に出力する速度指令を低速度(クリープ速度)に変更する。速度制御手段6は、入力された速度指令に応じた回転駆動力をモータ7に与え、これにより車輪8の回転速度が低下して、移動機械10が減速し、低速移動状態になる。
【0027】
さらに、現在位置演算手段2は、演算された現在位置(後述する補正後の現在位置)が設定された目標停止位置に対応する最終制動点に達すると、速度制御手段6に出力する速度指令をゼロに変更すると共に、制動手段5に制動指令を出力する。制動手段5は、入力された制動指令に基づき、移動機械10の車輪8を回転駆動するモータ7にブレーキをかけて、車輪8を停止させる。
【0028】
ここで、現在位置演算手段2は、移動機械2の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する減速開始点を通過してから最終制動点に達する前に、ICタグリーダ4で読み取ったICタグ3に書き込まれた絶対位置情報に基づき移動機械10の現在位置を補正する。具体的には、現在位置演算手段2には、ICタグリーダ4で読み取ったICタグ3に書き込まれた絶対位置情報が順次入力される。そして、現在位置演算手段2は、パルス信号に基づき演算された移動機械10の現在位置が減速開始点に達した後、初めて入力された絶対位置情報のみに基づき、移動機械10の現在位置を補正する。具体的には、現在位置演算手段2は、パルス信号に基づき演算された移動機械10の現在位置を、減速開始点に達した後に初めて入力された絶対位置情報に対応する絶対位置に置き換える。そして、現在位置演算手段2は、現在位置を絶対位置に置き換えた後は、置き換えた時点から入力されるパルス信号のパルス数を積算し、この積算したパルス数と1パルス当たりの移動量とを乗算して、置き換えた時点からの移動機械10の移動量を算出する。現在位置演算手段2は、置き換えた時点の現在位置(絶対位置)と、上記演算によって得られた移動量とを加算することにより、移動機械10の現在位置を算出する。現在位置演算手段2は、上記のようにして補正した後の現在位置が最終制動点に達すると、制動手段5を駆動して移動機械10を停止させる。
【0029】
図2に示す例では、現在位置演算手段2は、パルス信号に基づき演算された移動機械10の現在位置が減速開始点A1に達した後、目標停止位置Aに対応するICタグ3Aから入力された絶対位置情報のみに基づき移動機械10の現在位置を補正し、補正後の現在位置が最終制動点A2に達すると、制動手段5を駆動して移動機械10を停止させる。
【0030】
以上に説明したように、本実施形態に係る位置決め制御装置100及びこれを用いた位置決め制御方法によれば、移動機械10の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する減速開始点を通過してから最終制動点に達する前に、ICタグ3に書き込まれた絶対位置情報を読み取り、該読み取った絶対位置情報に基づき移動機械10の現在位置を補正するため、移動機械10の停止位置の位置決め精度に直接影響を及ぼす最終制動点における移動機械10の現在位置の検出精度を高めることができ、移動機械10の停止位置の位置決め精度を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る移動機械の位置決め制御装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す位置決め制御装置による移動機械の位置決め制御方法の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・信号発生手段
2・・・現在位置演算手段
3・・・ICタグ
4・・・ICタグリーダ
5・・・制動手段
6・・・速度制御手段
7・・・モータ
8・・・車輪
10・・・移動機械
100・・・位置決め制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動開始前に目標停止位置が設定される移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する減速開始点に達すると、前記移動機械を減速させて低速移動状態にし、さらに前記移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する最終制動点に達すると、前記移動機械を制動して停止させる移動機械の位置決め制御方法であって、
絶対位置情報が書き込まれ、前記移動機械の設定され得る複数の目標停止位置の数と同数のICタグを、前記移動機械の移動方向に沿って、前記各目標停止位置に対応する前記減速開始点と前記最終制動点との間にそれぞれ設置し、
前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取るためのICタグリーダを前記移動機械に設置し、
前記移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する前記減速開始点を通過してから前記最終制動点に達する前に、前記ICタグリーダで前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取り、該読み取った絶対位置情報に基づき前記移動機械の現在位置を補正し、該補正後の移動機械の現在位置が前記最終制動点に達すると、前記移動機械を制動して停止させることを特徴とする移動機械の位置決め制御方法。
【請求項2】
移動開始前に目標停止位置が設定される移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する減速開始点に達すると、前記移動機械を減速させて低速移動状態にし、さらに前記移動機械の現在位置が、前記設定された目標停止位置に対応する最終制動点に達すると、前記移動機械を制動して停止させる移動機械の位置決め制御装置であって、
前記移動機械の移動量に応じた信号を発生する信号発生手段と、
前記信号発生手段によって発生する信号に基づき、前記移動機械の現在位置を演算する現在位置演算手段と、
絶対位置情報が書き込まれ、前記移動機械の設定され得る複数の目標停止位置の数と同数のICタグであって、前記移動機械の移動方向に沿って、前記各目標停止位置に対応する前記減速開始点と前記最終制動点との間にそれぞれ設置されたICタグと、
前記移動機械に設置され、前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報を読み取るためのICタグリーダと、
前記移動機械を制動して停止させる制動手段とを備え、
前記現在位置演算手段は、前記移動機械の現在位置が、設定された目標停止位置に対応する前記減速開始点を通過してから前記最終制動点に達する前に、前記ICタグリーダで読み取った前記ICタグに書き込まれた絶対位置情報に基づき前記移動機械の現在位置を補正し、該補正後の現在位置が前記最終制動点に達すると、前記制動手段を駆動することを特徴とする移動機械の位置決め制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−55234(P2010−55234A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217555(P2008−217555)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】