説明

移植機

【課題】植付に係る複数の作業装置を統括的に操作し、オペレータの負担を軽減し得るようにした移植機を提供する。
【解決手段】乗用田植機に対し、圃場端である枕地における作業にあっては、植付部、油圧制御装置、整地装置、或いはマーカ等の複数の作業部が同時に、枕地での制御状態となるように設定又は警報する1個の枕地スイッチ63を備えさせた。これにより、枕地での植付作業時に生じる複数の作業部の操作を1個の枕地スイッチ63によって統括的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業を行う乗用田植え機等の移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、乗用田植え機等の移植機として、前輪と後輪とで支持された走行機体の後部に、昇降リンク機構を介して複数条の苗を同時に植付ける植付装置を昇降自在に支持したものが知られている。
【0003】
上記した移植機のなかには、植付装置の昇降制御に係る制御感度を設定する感度設定器を備え、該感度設定器が設定する制御感度を、設定位置などに対応して増減方向にシフトする補正器を備えたものが存在する(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記した移植機のなかには、後輪の後方で植付装置の前方に配設され、植付装置と連動して昇降されるとともに、該植付装置に対して位置調整可能となる整地装置を有したものがある。このような整地装置を有した移植機のなかには、例えば、田面を整地する整地装置を作業位置と非作業位置に上下動する操作と、整地装置への動力伝達を入切する操作とを、1個の操作レバーにて行わせることにより、整地装置を作業位置に下降した状態でクラッチの入操作を忘れないようにさせたものがある(特許文献2参照)。
【0005】
また、上記した移植機のなかには、植付装置の左右側方に配設した線引きマーカを植付装置の上昇作動に連動して自動退入させるとともに、人為的に選択された側の線引きマーカを植付装置の下降作動に連動して突出作動させるよう構成したものがある。
【0006】
このような線引きマーカを備えた移植機のなかには、例えば、植付装置の上昇作動ごとに次回突出作動させる線引きマーカを自動的に左右交互に切換え選択するオートマーカ入り状態と、これを解除するオートマーカ切り状態に人為選択可能なマーカ作動選択手段を設け、オートマーカ入り状態では、植付装置の接地検出に基づいて植え付けクラッチが自動的に入り作動し、オートマーカ切り状態では、ワンショットレバー(操作レバー)の前後操作でマーカ選択操作のみが可能となるよう構成したものも知られている(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−210820号公報
【特許文献2】特開2006−81521号公報
【特許文献3】特開2004−187637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1ないし3に記載された移植機においては、それぞれ整地装置等の個別の作業装置では操作の容易化が図られているが、圃場端の枕地で作業を行う場合などにあっては、複数の作業装置を同時に作動させることがあるため、必ずしも全体的な操縦性が容易化されるものとはならず、オペレータの操作が煩雑化する等の不都合があった。
【0009】
そこで本発明は、植付に係る複数の作業装置を統括的に操作し、オペレータの負担を軽減し得るようにした移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図13参照)、走行機体(6)と、該走行機体(6)に昇降自在に支持される植付装置(30)と、を備えてなる移植機(1)において、
圃場(100)端である枕地(M)における作業にあっては、圃場(100)内方の往復植付作業とは異なる制御状態となる複数の作業部(18,30,36,50)と、
前記複数の作業部(18,30,36,50)が同時に、前記枕地(M)での制御状態となるように設定又は警報する1個の枕地制御操作手段(63)と、を備えた、
ことを特徴とする移植機(1)にある。
【0011】
請求項2に係る本発明は(例えば図1ないし図13参照)、前記複数の作業部(18,30,36,50)の少なくとも1個が、前記枕地制御操作手段(63)により設定された制御状態をキャンセルして通常の作業の制御状態を保持し得るように構成した、
請求項1記載の移植機(1)にある。
【0012】
請求項3に係る本発明は(例えば図4ないし図11参照)、前記複数の作業部(18,30,36,50)の1個が、前記植付装置(30)の対地高さを油圧により制御して植付深さを自動的に一定に保つ油圧制御装置(18)であって、
前記枕地制御操作手段(63)により、前記油圧制御装置(18)の油圧感度が変更されてなる、
請求項1記載の移植機(1)にある。
【0013】
請求項4に係る本発明は(例えば図4ないし図10、及び図11参照)、前記複数の作業部(18,30,36,50)の1個が、前記走行機体(6)と前記植付装置(30)との間に配置され、圃場(100)面を整地する整地装置(36)であって、
前記枕地制御操作手段(63)により、前記整地装置(36)が非作業位置にあることを警報してなる、
請求項1記載の移植機(1)にある。
【0014】
請求項5に係る本発明は(例えば図4ないし図10、及び図11参照)、前記複数の作業部(18,30,36,50)の1個が、前記走行機体(6)と前記植付装置(30)との間に配置され、圃場(100)面を整地する整地装置(36)であって、
前記枕地制御操作手段(63)により、前記整地装置(36)が作業位置になるように設定してなる、
請求項1記載の移植機(1)にある。
【0015】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る本発明によると、植付装置を備える移植機に、圃場端である枕地における作業にあっては、圃場内方の往復植付作業とは異なる制御状態となる複数の作業部と、該複数の作業部が同時に、枕地での制御状態となるように設定又は警報する1個の枕地制御操作手段と、を備えさせる。これにより、枕地での植付作業時に生じる複数の作業部の操作を1個の枕地制御操作手段によって統括的に行うことができる。従って、オペレータの操作の煩雑さを解消して作業時の負担を軽減することができ、複数の作業部での設定忘れ等の発生を防ぐことができるものとなる。
【0017】
請求項2に係る本発明によると、複数の作業部の少なくとも1個が、枕地制御操作手段により設定された制御状態をキャンセルして通常の作業の制御状態を保持し得るように構成したので、複数の作業部における制御状態の設定の取捨選択を容易に行うことができる。
【0018】
請求項3に係る本発明によると、複数の作業部の1個が、植付装置の対地高さを油圧により制御して植付深さを自動的に一定に保つ油圧制御装置であって、枕地制御操作手段により油圧制御装置の油圧感度が変更されるので、往復植付作業での設定を変えることなく、枕地制御操作手段によって枕地での油圧感度を容易に変更することができる。
【0019】
請求項4に係る本発明によると、複数の作業部の1個が、走行機体と植付装置との間に配置され、圃場面を整地する整地装置であって、枕地制御操作手段により、整地装置が非作業位置にあることを警報するので、枕地での植付作業の際に、整地装置を作業位置に移動し忘れることを防ぐことができる。
【0020】
請求項5に係る本発明によると、複数の作業部の1個が、走行機体と植付装置との間に配置され、圃場面を整地する整地装置であって、枕地制御操作手段により、整地装置が作業位置になるように設定するので、枕地での植付作業の際に、整地装置を作業位置に移動し忘れることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に沿って、本実施の形態について説明する。なお、図1は本発明に係る移植機を適用した乗用田植機の要部を示す側面図、図2は該乗用田植機の要部を示す平面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態における乗用田植機(移植機)1は、前輪2及び後輪3により支持される走行機体6を有している。この走行機体6には、その前輪前方部分のボンネット5内にエンジン(図示せず)が搭載されており、走行機体6の前後方向の中間部には、座席シート7を有する運転席9が配設されている。この運転席9には、ステアリングホイール10等の操作部材が配設され、運転席9下方のステップ上にはメインクラッチと走行用ブレーキを操作するペダル15が突出している。
【0023】
走行機体6の後方には、アッパリンク20aとロアリンク20bを有する昇降リンク機構20を介して植付部(植付装置、作業部)30が昇降自在に支持され、植付部30には複数の植付杆35、フロート32、及びマット苗を載置し得る苗載せ台31が備えられている。フロート32は、その後部を、伝動ケース43の下部に設けられた軸45を中心として回動可能に軸着され、その前部には感知プレート46(後述の図6参照)が枢支・連結されている。
【0024】
なお、植付部30は、昇降リンク機構20の後端部のリンク支え枠47に設置されたローリング軸(図示せず)により、ローリング自在とされている。
【0025】
植付部30におけるフロート32と走行機体6後部との間には、圃場における田面を平滑に整地する整地装置(作業部)36が配設されている。該整地装置36は、植付部30にて上下方向に移動自在(作業位置と非作業位置との間)に支持されており、該作業位置にて上記整地作業を行う。
【0026】
植付部30の左右両端部には、マーカ(作業部)50(R,L)が取付けられている。この左右マーカ50(R,L)は、操作により、例えば植付部30の昇降に伴い機体側方に繰出す作業位置と、収納する非作業位置とに自動的かつ交互に切換え可能となっており、作業位置にあっては、圃場面に、圃場端でターンした後の走行機体6の走行基準線となる細溝を引くことが可能となる。
【0027】
走行機体6後方の昇降リンク機構20には、油圧シリンダ24が配設されている。該油圧シリンダ24は、後述する作業機操作レバー12(図3参照)の操作に基づき、座席シート7下方のカバー内に配置されたマイコンからなる制御部75(図9参照)の制御による油圧コントロールバルブ27(図5参照)によって伸縮制御され、植付部30を昇降作動する。すなわち、植付部30は、油圧シリンダ24の伸縮により昇降され、油圧シリンダ24は、常時、不図示の油圧ポンプより圧送される作動油を、作業機操作レバー12の操作に基づく油圧コントロールバルブ27によって制御される。なお、上述したような植付部30の昇降作動時において、植付部30の上昇高さは、リフタ角ポテンショメータ77(図9参照)により検出される。
【0028】
座席シート7下部のカバー内には、図5に示すように、油圧コントロールバルブ27と共に作動体28が配置され、この作動体28によって油圧コントロールバルブ27が操作される。作動体28は、油圧コントロールバルブ27の近傍に配置されたリフタカムモータ21と、リフタカムモータ21のモータ軸と一体的に回転する小ギヤ29と、該小ギヤ29に噛合するリフタカム22とを有している。リフタカム22の支点軸には、該支点軸の回転角を検出するリフタカムポテンショメータ23が取り付けられている。
【0029】
油圧コントロールバルブ27の操作軸には、バルブ操作板49が固定されていて、該油圧コントロールバルブ27から、油圧ホース72,73が油圧シリンダ24及び図示しない油圧ポンプに連結されている。なお、上記したリフタカム22、油圧コントロールバルブ27及びバルブ操作板49は、側面視においてオーバラップするように配置されている。
【0030】
油圧コントロールバルブ27は、油圧シリンダ24によりバルブ操作板49を上昇、固定、下降(自動)、植付けの4位置に状態変化させることで操作される。そして、リフト機能である上記上昇により、植付部30を上昇させ、該植付部30が最上昇位置に達した際には、自動的に固定の状態となる。該固定状態では、油圧シリンダ24への作動油の流入が止まるため、植付部30は一定の高さで保持されることとなる。また、リフト機能である上記下降、又は植付けにより、植付部30を下降させ、フロート32が田面に接地した際には、自動制御に設定される。該自動制御においては、バルブ操作板49が、フロート32に連結されるリンクによって直接的に動かされることから、圃場面の凹凸をフロート32によって感知し、植付部30を自動的に上下動させるものとなっている。なお、油圧コントロールバルブ27とフロート32と感知プレート46とにより、油圧制御装置18が構成される。
【0031】
一方、図3及び図4に示すように、運転席9におけるステアリングホイール10の下部にはスイッチボックス11が設けられ、該スイッチボックス11には、図3の矢印方向に操作可能な作業機操作レバー12が設けられている。なお、図4においてステアリングホイール10は、スイッチボックス11等の視認を容易にする目的から図示を省略している。また、ステアリングホイール10やスイッチボックス11を囲むように配設されたフロントパネル13の手前側には、本発明の特徴である枕地スイッチ63(枕地制御操作手段)が配設されるとともに、マーカ自動スイッチ61、作業スイッチ62、油圧感度調節ダイヤル65、及び警報停止スイッチ66等が配設されている。そして、フロントパネル13上部のパネル面には、植付モニタ67、水平自動モニタ69、対地作業機モニタ70等の各種モニタが配設され、該フロントパネル13の左右には、HSTレバーやスロットルレバー等(図示は省略)を配置する平面状のカバー部60,71が設けられている。上記スイッチ61,62,63はステアリングホイール10の左方に集中配置され、油圧感度調節ダイヤル65は右方に配置されている。
【0032】
ここで、図5に基づき、植付部30の昇降制御について説明する。
【0033】
作業機操作レバー12(図3参照)が操作された際、その操作内容はスイッチボックス11(図3参照)内に配置された切換スイッチ(図示せず)によって判別されるとともに、該切換スイッチからの信号が制御部75(図9参照)へと送られる。制御部75は、上記切換スイッチからの信号に応じた制御信号をリフタカムモータ21へと送信する。従って、切換スイッチからの制御信号に基づき作動するリフタカムモータ21によってリフタカム22が回動し、これにより作動する油圧コントロールバルブ27を介して油圧シリンダ24(図1参照)が伸縮制御される。これにより、植付部30は、昇降リンク機構20を介して昇降制御されることとなる。
【0034】
そして、作業機操作レバー12は、フロントパネル13における作業スイッチ62(図4参照)と連係しており、作業スイッチ62がオン状態の際には、該作業機操作レバー12によって「植付クラッチの入切」、「植付部30の昇降」、「マーカ50の操作」を行うことができる。なお、作業スイッチ62がオフ状態の際には、作業機操作レバー12によって「植付部30の昇降」のみ行うことができる。
【0035】
ここで、作業スイッチ62が上記したオン・オフの各状態の場合における作業機操作レバー12の具体的な操作について説明する。
【0036】
作業スイッチ62がオン状態の際には、作業機操作レバー12は、中央の基準位置にある状態から、上下前後方向にそれぞれ操作自在となる(図3の矢印参照)。上下方向の操作は、植付部30の制御に関するもので、前後方向の操作は、マーカ50に関するものである。
【0037】
例えば、植付部30が接地して植付クラッチが入っている状態から作業機操作レバー12が、上方向に1回操作されると「植付クラッチ切」となり、再度上方に操作されると「植付クラッチ切」の状態から更に「植付部上昇」となる。逆に、植付部30が上昇して停止している状態から下方向に1回操作されると「植付部下降」となり、再度下方に操作されると「植付部下降」の状態から更に「植付クラッチ入」となる。なお、上記「植付部上昇」中に停止させたい場合には下方向に1回の操作を行い、上記「植付部下降」中に停止させたい場合には上方向に1回の操作を行う。
【0038】
また、上記「植付部上昇」にて植付部30が最上位置にあり、かつフロントパネル13におけるマーカ自動スイッチ61がオン状態にある際には、作業機操作レバー12が、前方向に操作されると「マーカ左のセット」となり、後方向に操作されると、「マーカ右のセット」となる。また、「マーカ左のセット」又は「マーカ右のセット」がされた状態にあって、上記「植付部下降」により植付部30を降下操作した後、例えば7秒以内に、当該マーカセットと反対側へ作業機操作レバー12を操作すると、マーカ50が左右側にセットされる「マーカ両落ち」となる。更に、エンジン始動後にマーカ自動スイッチ61をオフ状態とすると、マーカ50がセットされない「マーカOFF」の状態となる。
【0039】
そして、作業スイッチ62がオフ状態の際には、作業機操作レバー12を中央の基準位置にある状態から、上下の各方向に操作することによって植付部30の昇降操作のみが可能となる。
【0040】
作業機操作レバー12が、上方向に1回の操作がなされると「植付部上昇」となり、逆に、下方向に1回の操作がなされると「植付部下降」となる。なお、「植付部上昇」を途中で停止させたい場合には下方向に1回の操作を行い、「植付部下降」を途中で停止させたい場合には上方向に1回の操作を行う。また、作業スイッチ62がオフ状態の際には、マーカ50に関する操作をすることはできない。
【0041】
なお、本乗用田植機1にあっては、不図示の主変速レバーを後進に入れた際には、後進シフト検出スイッチ76(後述する図9参照)がオン状態とされ、リフタカム22をリフタカムモータ21(図5参照)で回動させて植付クラッチを切り、植付部30を所定高さまで上昇させる機能を有している。
【0042】
次いで、植付部30における油圧自動感知について説明する。
【0043】
油圧自動感知に係る機構は、田面の「軟硬」によって浮き沈みするフロート32の動きを昇降リンク機構20によって油圧コントロールバルブ27に伝え、植付部30を適正な位置に保つ一種の自動制御装置である。この自動制御装置は、エンジン回転、作業速度、機体姿勢の変化に応じて油圧感度を変更制御し、自動的に圃場にあった油圧感度にて植付を行わせるものである。
【0044】
上記エンジン回転による制御を行う場合には、パルスユニットであるエンジン回転パルス81(エンジン回転センサ)でエンジン回転をダイレクトに検出し、制御部75(図9参照)の演算処理によって感知ワイヤ25(図6参照)を進退させてフロート32の基本の姿勢を補正する。これにより、エンジンの回転変動に油圧感知が追従し、高速で良好な植付が可能となる。しかし、エンジンドロップした場合には油圧ポンプも低回転となり、油圧シリンダ24に送られる油量が低下し、植付深さが深くなる傾向が見受けられる。従って、エンジン回転をダイレクトに検出し、感知ワイヤ25の進退によってフロート32の基本の姿勢を変更して油圧感度を敏感に補正することによって植付深さを所定深さに保つようにするものである。
【0045】
また、上記作業速度による制御について詳述すると、植付速度が高速になると、水の抵抗が増し、田面でなく水面を感知して植付深さが浅くなることがあるため、不図示の主変速レバーを増速側に操作した際、該主変速レバーと油圧コントロールバルブ27(図5参照)のリンク部とをつないだHST連動ワイヤ75(図6参照)を引くことによってフロート32の感知荷重を重くすることで油圧感度を鈍感側に補正してフロート32の浮き上がりを防止することによって、植付深さを所定深さに保つようにする。
【0046】
また、上記機体姿勢による制御を行う場合には、機体センサで走行機体6の前後方向の傾きを検出し、制御部75の演算処理によって感知ワイヤ25を進退させる。これにより、走行機体6の前後姿勢の変化による植付深さのばらつきを防止することができる。例えば、走行機体6がヘッドアップすると、機体と相対的にフロートの前部が下がることとなり、油圧バルブが下げ側に操作され、フロート32が沈み気味になって泥を押すことがあり、植付深さが深くなる状況が生じる。このような走行機体6の前後姿勢の変化を検出し、走行機体に対するフロート32の姿勢を補正して植付深さを所定深さに保つようにする。
【0047】
ところで、上記した油圧自動感度は、圃場の条件(田面の柔らかさ)によって不足したり過剰となったりすることがあり、そのような場合にはフロート32が沈下したり浮いたりする状況が生じ得る。このような際には、油圧感度調節ダイヤル65によってフロート32の基準姿勢を補正する。
【0048】
また、図4に示した油圧感度調節ダイヤル65は、標準感度となる基準位置から操作を開始し、やわらかい圃場、又は硬い圃場に適応する位置まで該ダイヤル65を回転させることでフロート32の基準姿勢を調節する。
【0049】
やわらかい圃場にあっては、フロートの前部が沈みがちとなり、フロート32の前部側が土圧を受け易いため、感知プレート46から続く油圧リンクを介して油圧コントロールバルブ27が上昇する方向に作用する。また、硬い圃場にあっては、フロートの前部が浮き上がり気味となり、フロート32の後部側が土圧を受け易いため、油圧コントロールバルブ27が下降する方向に作用する。
【0050】
次に、図7(a)、(b)に基づき、整地装置36について説明する。
【0051】
整地装置36(以下対地作業機ともいう)は、図7(a)に示すように、田面に接地して整地するかご型の整地ロータ56と、植付部30の作業位置において整地ロータ56を上下方向に移動させる上下移動機構57とを有している。整地ロータ56は、ロータ軸に複数支持されており、不図示の動力伝達装置からの動力により回転駆動される。なお、整地ロータ56は、その上方に配設されたロータカバー58により覆われている。
【0052】
整地装置36は、その操作部として苗載せ台31の前面側に、レバーガイド37と、該レバーガイド37によって案内される対地作業機レバー39とを有している。レバーガイド37の表面には、対地作業機レバー39を案内する案内溝が設けられており、対地作業機レバー39を該案内溝上部の切り欠き部41にセットした際には、整地ロータ56は非作業位置に格納される。また、対地作業機レバー39が操作された際、案内溝における範囲CR1(図7(b)参照)では、整地ロータ56の動力伝達装置におけるクラッチが切状態となり、範囲CR2(図7(b)参照)では、クラッチが入状態となる。また、レバーガイド37の表面右上部には、対地作業機高さ検出スイッチ45が配設されている。
【0053】
次いで、図8に基づき、マーカ50の自動制御について説明する。
【0054】
マーカ50は、図8に示すように、植付部30から左右それぞれの側方に突出して上下に回動するマーカアーム52が設けられ、該マーカアーム52の先端には回転体マーカ51が装着されている。マーカ50は、マーカモータ53とロータリスイッチ55とが連繋されており、その駆動に基づいてマーカアーム52の姿勢が制御される。
【0055】
そして、マーカ50における自動制御は、作業スイッチ62(図4参照)がオン状態でかつマーカ自動スイッチ61(図4参照)がオン状態の際に、植付部30が最上位置に上昇制御されると開始される。マーカ50における自動制御が作動すると、植付作業中は植付部30の上下動作ごとに左右交互に振り出しが行われる。なお、作業スイッチ62がオフ状態の際には、マーカ50の振り出しは行われない。
【0056】
ここで、作業スイッチ62及びマーカ自動スイッチ61がともにオン状態の場合の、マーカ50の振り出しに係る作業機操作レバー12の具体的な操作について説明する。
【0057】
すなわち、作業スイッチ62及びマーカ自動スイッチ61がともにオン状態の際、作業機操作レバー12を中央の基準位置にある状態から手前側(図3参照)に操作すると右側のマーカ50がセットされる。逆に、作業機操作レバー12を中央の基準位置にある状態から前方側(図3参照)に操作すると左側のマーカ50がセットされる。
【0058】
また、植付部30が最上位置に位置しているとき、マーカ自動スイッチ61が押下されると、ランプが消灯してマーカ50の自動制御を停止させることができる(マーカ切替)。この設定は、マーカ自動スイッチ61を再び押下するか、作業機操作レバー12を手前又は前方に操作することにより元の自動制御状態に戻すことができる。
【0059】
また、植付部30を下降させ、その時点で振り出されているマーカ50と反対方向の作業機操作レバー12を操作すると、該反対方向のマーカ50も振り出され、両落ちの状態にすることができる(マーカ両落ち)。
【0060】
次に、本実施の形態における制御系を図9に沿って説明する。図9は、本実施の形態における制御ブロック図である。
【0061】
図9に示すように、制御部75には、主に1点鎖線A内に示すような、植付部30の制御に係る信号(1点鎖線A内上段)、マーカ50の制御に係る信号(1点鎖線A内中段)、枕地制御、及び油圧自動感知の制御に係る信号が入力される。
【0062】
植付部30の制御にあっては、作業機操作レバー12、作業スイッチ62、後進シフト検出スイッチ76、リフタカムポテンショメータ23、及びリフタ角ポテンショメータ77からそれぞれ信号が入力される。また、マーカ50の制御にあっては、マーカ自動スイッチ61、作業機操作レバー12、及びマーカスイッチ83からそれぞれ信号が入力される。また、枕地制御、及び油圧自動感知の制御にあっては、警報停止スイッチ66、枕地スイッチ63、油圧感度調節ダイヤル65、エンジン回転パルス81、ピッチングセンサ82、感知ワイヤポテンショメータ79、及び対地作業機レバー39からそれぞれ信号が入力される。
【0063】
また、制御部75からは、主に1点鎖線B内に示すような、植付部30の制御に係る信号(1点鎖線B内上段)、マーカ50の制御に係る信号(1点鎖線B内中段)、枕地制御及び油圧自動感知の制御に係る信号(1点鎖線B内下段)が出力される。
【0064】
植付部30の制御にあっては、上述した入力信号に基づき、制御部75を介して、植付モニタ67、水平自動モニタ69、警報ブザー80、及びリフタカムモータ21が制御される。また、マーカ50の制御にあっては、マーカ自動モニタ85、マーカモニタ86、及びマーカモータ53が制御される。また、枕地制御、及び油圧自動感知の制御にあっては、上述した入力信号に基づき、制御部75を介して、対地作業機モニタ70、及び感知ワイヤモータ26が制御される。
【0065】
本実施形態における乗用田植機1は、所定の操作が行われた際、上述の制御部75の制御により、油圧制御装置18、整地装置36、或いはマーカ50等を含む複数の作業部が、圃場端である枕地における作業にあって圃場内方の往復植付作業とは異なる制御状態とされ、枕地制御操作手段である1個の枕地スイッチ63が、上記複数の作業部が同時に、枕地での制御状態となるように設定又は警報する基本制御パターンを有する。
【0066】
そして、制御部75は、上記基本制御パターン内で、以下に示すような種々の制御を個々に実行し得る。つまり、上記枕地スイッチ63の操作に基づいて制御状態が設定された場合にあっても、上記複数の作業部の少なくとも1個をキャンセルして上記通常の作業の制御状態を保持し得るように制御する第1制御を実行する。また、制御部75の制御対象である複数の作業部の1個が、植付部(植付装置)30の対地高さを油圧により制御し、植付深さを自動的に一定に保つ油圧制御装置18である際には、枕地スイッチ63の操作により、油圧制御装置18の油圧感度を変更するように制御する第2制御を実行する。
【0067】
そして、制御部75の制御対象である複数の作業部の1個が、走行機体6と植付部30との間に配置され、圃場面を整地する整地装置36である際には、枕地スイッチ63の操作により、整地装置36が非作業位置にあることを警報するように制御する第3制御を実行する。更に、制御部75の制御対象である複数の作業部の1個が上記整地装置36である際には、枕地スイッチ63の操作により、整地装置36が作業位置になるように設定制御する第4制御を実行する。
【0068】
これら各制御に関する具体的な内容は、以下に説明する。
【0069】
まず、図10及び図13に基づき、枕地制御設定について説明する。図10は枕地制御設定に関するフローチャート、図13は乗用田植機1にて植付作業を行う場合の圃場内での一例を示した模式図である。
【0070】
本実施の形態における乗用田植機1では、前述した、植付部30に係る制御、整地装置36に係る制御、油圧制御装置18に係る制御、及びマーカ50に係る制御が、植付作業の際にそれぞれ適宜に実行される。
【0071】
図13に示すような矩形の圃場100にて、乗用田植機1における植付作業を行う場合には、例えば、乗用田植機1は矢印INに示すように圃場100へと進入し、そのまま圃場100内に示されたコース線に沿って所謂一筆書きのようにして作業を進め、終了後には矢印OUTから退場する。
【0072】
この圃場100内に示されたコースのうち、左右幅方向に示された実線101は、このような矩形の圃場における主な植付位置(前述した、圃場内方の往復植付作業に相当)を示しており、1点鎖線102で示した部分はそのような植付位置を通過するための畦際の切り返し位置を示すものである。
【0073】
上記した左右幅方向の実線101で示した主な植付位置にあっては、オペレータは、植付部30を下降させるとともに、マーカ50を適宜に振り出させて走行基準線を引きつつ植付作業を行う。その際、フロート32における油圧自動感知を行わせる。
【0074】
また、1点鎖線102で示した畦際の切り返し位置にあっては、オペレータは、植付作業を停止させるとともに植付部30を上昇させて乗用田植機1を切り返す。このとき、植付部30を上昇させた際には、整地装置36は植付部30と共に上昇し、マーカ50は非作業位置に格納される。
【0075】
一方、圃場100には、その左右端部の範囲Mに示すような枕地という畦際の切り返し位置の集合部分が生じる。この枕地には、切り返し時の車輪の跡が大きく残るため、圃場100内方の主な植付位置に比して田面が荒れた状態となり易い。本発明は、この荒れた枕地における植付作業の制御に特徴を有するものである。
【0076】
ついで、図10を参照し、上記第1制御を含む、本乗用田植機1による枕地での植付作業に際しての枕地制御設定の処理動作を説明する。
【0077】
まず、制御部75が、入力される信号に基づき、フロントパネル13における作業スイッチ62がオン又はオフのいずれの状態であるかを判定する(ステップS81)。その結果、該スイッチ62がオフ状態である場合には、最初に戻る。一方、制御部75は、ステップS81にて、作業スイッチ62がオン状態であると判定した場合には、植付部30の高さが最上昇位置にあるか否かを判定する(ステップS82)。
【0078】
そして、ステップS82にて、植付部30が最上昇位置にある場合には最初に戻る。一方、植付部30が最上昇位置より低い位置にある場合には、制御部75は更に、枕地スイッチ63が操作されたか否かを判定する(ステップS83)。該スイッチ63が操作無しである場合には、最初に戻る。一方、ステップS83にて、枕地スイッチ63が操作有りの場合には、制御部75は、枕地スイッチ63が長押しされたか否かを判定する(ステップS84)。
【0079】
ステップS84にて、枕地スイッチ63が長押しでないオン/オフ状態である場合には、制御部75は、枕地モードがオフ状態であるか否かを判定し(ステップS90)、枕地モードがオフ状態以外である場合には、枕地モードをオフ状態にセットして(ステップS92)最初に戻る。一方、ステップS90にて、枕地モードがオフ状態である場合には、制御部75は、枕地モードをオン状態にセットして(ステップS91)最初に戻る。ここで、上記ステップS91にて処理を終了した際には、枕地モードはオン状態に設定され、油圧自動感知に係る制御及びマーカ50の振り出しに係る制御は予め設定した枕地制御用の初期設定値によって制御される。なお、枕地モードのオン状態における枕地制御用の初期設定としては、例えば、マーカ50に係る「マーカ切替無し」、油圧自動感知に係る「油圧感度を所定量鈍感にする」、そして「整地装置36の格納時には警報を鳴らす」等を設定することが挙げられる。
【0080】
また、ステップS84にて、枕地スイッチ63が長押しされると、制御部75は更に、マーカ自動スイッチ61が操作されたか否かを判定する(ステップS85)。ここで、マーカ自動スイッチ61が操作有りと判定した場合には、次に枕地モードにおいてマーカの切替有が設定されているか切替無が設定されているかを判定する(ステップS86)。制御部75は、この枕地モードに切替有が設定されている場合には切替無に設定し(ステップS87)、切替無が設定されている場合には切替有に設定する(ステップS93)。これらステップS87,S93において枕地モードにおけるマーカ50の制御状態を、枕地での植付作業中に、マーカ50の振り出しに係る自動制御を継続して、植付部30の昇降に伴ってマーカの振り出し方向を左右交互に切替える「切替有」の設定と、上記マーカ50の振り出しに係る自動制御を停止して、植付部30の昇降に伴って次回の振り出し方向を切替えない「切替無」の状態とに任意に設定することが可能となる。
【0081】
次いで、上記ステップS85におけるマーカ自動スイッチ61が操作無しの場合、及び上記ステップS87,S93において枕地モードにおけるマーカ制御状態の設定がなされた後には、制御部75は、油圧感度調節ダイヤル65が操作有りであるか否かを判定する(ステップS88)。
【0082】
ステップS88にて、油圧感度調節ダイヤル65が操作無しである場合には最初に戻る。ステップS88にて、油圧感度調節ダイヤル65が操作有りの場合には、枕地制御設定値として「油圧感度ダイヤル位置M」を設定して(ステップS89)、最初に戻る。このステップS89にて枕地モードにおける植付作業時の枕地制御設定値Mを圃場条件に合致した値に変更することができるようになる。また、上記ステップS88において、油圧感度調節ダイヤル65が操作無しであると判定された場合には、枕地制御設定値Mを変更しない、つまり枕地モードにおける初期設定値で制御されることとなる。
【0083】
次に、図11(a),(b)に示すフローチャートを参照し、本乗用田植機1による植付作業に際しての油圧感知制御の処理動作を説明する。
【0084】
すなわち、図11(a)に示すように、油圧感知制御を行うにあたっては、制御部75は、油圧感知目標値の設定を行う(ステップS101)。油圧感知目標値の設定は、図11(b)に示すように、エンジン回転数パルス81からのエンジン回転数Epと、ピッチングセンサ82からのピッチングセンサ値Psと、油圧感度調節ダイヤル65からの油圧感度調節ダイヤル値Ydと、枕地制御設定値Mとをそれぞれ取得する(ステップS111)。
【0085】
次いで、制御部75は、枕地制御フラグがオン又はオフのいずれの状態であるかを判定する(ステップS112)。ステップS112にて、枕地制御フラグがオン状態である場合には、油圧感知目標値を「Yd+Ps×α+Ep×β+M」に設定し(ステップS113)、枕地制御フラグがオフ状態である場合には、油圧感知目標値を「Yd+Ps×α+Ep×β」に設定する(ステップS114)。
【0086】
制御部75は、ステップS113,S114にて油圧感知目標値を設定した後、リフタカム22の位置が上げ状態であるか否かを判定する(ステップS115)。リフタカム22の位置が、上げ状態である場合には、感知規制タイマに所定値をセットする(ステップS116)。このステップS116の終了後、及び、前述したステップS115にてリフタカム22の位置が上げ状態以外(つまり下げ状態又は植付状態)であった場合には、制御部75は、次に、感知規制タイマの値が0であるか否かを判定する(ステップS117)。
【0087】
ステップS117にて、制御部75は、感知規制タイマの値が0以外であった場合には感知規制位置を油圧感知目標値に設定し(ステップS118)、感知規制タイマの値が0以外であった場合には当該処理を終了し、ともに図11(a)に示す処理へと戻る。
【0088】
図11(b)に示した処理にて油圧感知目標値が設定されると、制御部75は、感知ワイヤポテンショメータ79の値から油圧感知目標値を減算し、その絶対値をとることで偏差を求める(ステップS102)。次に、その偏差が不感帯外か不感帯内であるかを判定する(ステップS103)。偏差が不感帯内である場合には、感知ワイヤ25の長さを変える感知ワイヤモータ26の動作を停止して(ステップS106)処理を終了する。
【0089】
上記ステップS103にて、偏差が不感帯外である場合には、制御部75は、感知ワイヤポテンショメータ79の値が、油圧感知目標値以下であるか否かを判定する(ステップS104)。感知ワイヤポテンショメータ79の値が、油圧感知目標値以下である場合には、制御部75は、感知ワイヤモータ26を油圧感知感度が鈍くなる方向に作動させ(ステップS105)、処理を終了する。また、感知ワイヤポテンショメータ79の値が、油圧感知目標値を超える場合には、制御部75は、感知ワイヤモータ26を油圧感知感度が鋭くなる方向に作動させ(ステップS107)、処理を終了する。このように、上記ステップS105,S107の処理を行うことにより、油圧制御装置18の油圧感度の変更制御が行われる。
【0090】
次に、図12に示すフローチャートを参照し、本乗用田植機1による枕地での植付作業に際しての対地作業機警報制御の処理動作を説明する。
【0091】
まず、制御部75が、入力される信号に基づき、フロントパネル13における作業スイッチ62がオン又はオフのいずれの状態であるかを判定する(ステップS121)。その結果、該スイッチ62がオフ状態である場合には、処理を終了する。一方、制御部75は、ステップS121にて、作業スイッチ62がオン状態であると判定した場合には、対地作業機レバー39の位置が作業位置にあるか格納位置にあるかを判定する(ステップS122)。
【0092】
ステップS122にて、対地作業機レバー39の位置が作業位置にあると判定された場合には、対地作業機モニタ70が点灯出力するようセットして(ステップS123)、処理を終了する。同じくステップS122にて、対地作業機レバー39の位置が格納位置にあると判定された場合には、制御部75は、枕地モードがオン状態であるかオフ状態であるかを判定し(ステップS124)、枕地モードがオフ状態である場合には、対地作業機モニタ70が消灯出力するようセットして(ステップS125)、処理を終了する。
【0093】
上記ステップS124にて、枕地モードがオン状態である場合には、制御部75は、対地作業機モニタ70が点滅出力するようセットし且つ警報ブザー80にて警報出力する(ステップS126)。このステップS126の処理により整地装置36が非作業位置にあることを警報する制御が行われる。ステップS126の後、制御部75は、警報停止スイッチ66の入力を判定し(ステップS127)、警報停止スイッチ66の入力がオフ状態であれば処理を終了する。警報停止スイッチ66の入力がオン状態である場合には、制御部75は、警報ブザー80における警報出力を停止して(ステップS128)、処理を終了する。このステップS128の処理により、整地装置36の警報制御が行われる。なお、枕地モードがオン状態で且つ整地装置36が作業位置にないと判定した場合には、上記ステップS126では警報ブザー80による警報出力をするとして説明したが、このような警報制御をせず、別途設けたアクチュエータによって、整地装置36を植付部30に対して自動的に下降させるように構成してもよい。
【0094】
なお、以上で説明した本実施の形態における乗用田植機1では、圃場端である枕地における作業にあっては、植付部30、油圧制御装置18、整地装置36、或いはマーカ50等の複数の作業部が同時に、枕地での制御状態となるように設定又は警報する1個の枕地スイッチ63を備えさせた。これにより、枕地での植付作業時に生じる複数の作業部の操作を1個の枕地スイッチ63によって統括的に行うことができる。従って、オペレータの操作の煩雑さを解消して作業時の負担を軽減することができ、複数の作業部での設定忘れ等の発生を防ぐことができる。
【0095】
また、上記したような複数の作業部の少なくとも1個が、枕地スイッチ63により設定された制御状態をキャンセルして、圃場内方の往復植付作業である通常の作業の制御状態を保持し得るように構成したので、複数の作業部における制御状態の設定の取捨選択を容易に行うことができる。更に、上記したような複数の作業部の1個が、植付部30の対地高さを油圧により制御して植付深さを自動的に一定に保つ油圧制御装置18であって、枕地スイッチ63により、油圧制御装置18の油圧感度が変更されるので、通常の往復植付作業での設定を変えることなく、枕地スイッチ63の操作によって枕地での油圧感度を容易に変更することができる。
【0096】
また、上記したような複数の作業部の1個が、走行機体6と植付部30との間に配置され、圃場面を整地する整地装置36であって、枕地スイッチ63の操作により対地作業機モニタ70が点滅出力するようセットし且つ警報ブザー80にて警報出力することで、整地装置36が非作業位置にあることを警報するので、枕地での植付作業の際に、整地装置36を作業位置に移動し忘れることを防ぐことができる。更に、上記したような複数の作業部の1個が、走行機体6と植付部30との間に配置され、圃場面を整地する整地装置36であって、枕地スイッチ63の操作により、整地装置36が作業位置になるように設定されるので、枕地での植付作業の際に、整地装置36を作業位置に移動し忘れることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る移植機を適用した乗用田植機の要部を示す側面図である。
【図2】乗用田植機の要部を示す平面図である。
【図3】フロントパネル及びステアリングホイールを斜め上方から示す概略斜視図である。
【図4】フロントパネル及びその周辺を示す概略正面図である。
【図5】リフタカム及びその周辺を示す側面図である。
【図6】フロート及び感知プレート周辺を示す側面図である。
【図7】整地装置を示す図で、(a)整地装置を走行機体側から見た正面図、(b)対地作業機レバー周辺を取り出して示した正面図である。
【図8】マーカ及びマーカ周辺を示す平面図である。
【図9】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図10】枕地制御設定に関するフローチャートである。
【図11】油圧感知制御に関する図で、(a)油圧感知制御に関する主な処理を示すフローチャート、(b)(a)における油圧感知目標値設定に関するフローチャートである。
【図12】対地作業機警報制御のフローチャートである。
【図13】乗用田植機にて植付作業を行う場合の圃場内での一例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0098】
1 移植機(乗用田植機)
6 走行機体
18 油圧制御装置、作業部(油圧制御装置)
30 植付装置(植付部)、作業部(植付部)
36 整地装置、作業部(整地装置)
50 作業部(マーカ)
63 枕地制御操作手段(枕地スイッチ)
100 圃場
M 枕地(範囲)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、該走行機体に昇降自在に支持される植付装置と、を備えてなる移植機において、
圃場端である枕地における作業にあっては、圃場内方の往復植付作業とは異なる制御状態となる複数の作業部と、
前記複数の作業部が同時に、前記枕地での制御状態となるように設定又は警報する1個の枕地制御操作手段と、を備えた、
ことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記複数の作業部の少なくとも1個は、前記枕地制御操作手段により設定された制御状態をキャンセルして通常の作業の制御状態を保持し得るように構成した、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記複数の作業部の1個は、前記植付装置の対地高さを油圧により制御して植付深さを自動的に一定に保つ油圧制御装置であって、
前記枕地制御操作手段により、前記油圧制御装置の油圧感度が変更されてなる、
請求項1記載の移植機。
【請求項4】
前記複数の作業部の1個は、前記走行機体と前記植付装置との間に配置され、圃場面を整地する整地装置であって、
前記枕地制御操作手段により、前記整地装置が非作業位置にあることを警報してなる、
請求項1記載の移植機。
【請求項5】
前記複数の作業部の1個は、前記走行機体と前記植付装置との間に配置され、圃場面を整地する整地装置であって、
前記枕地制御操作手段により、前記整地装置が作業位置になるように設定してなる、
請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−72936(P2008−72936A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254970(P2006−254970)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】