説明

穀物の抽出液を生成する方法と、この方法で使用されるために適した装置

本発明は、1時間当り少なくとも100kgの乾燥穀物の割合で穀物を粉砕して、粉砕された前記穀物から液体を抽出することによって、穀物の液体抽出物を生成する、連続的な方法を提供する。この方法は、穀物を液体に連続的に組み合わせることと、自由に浮遊している穀物の粒子を少なくとも1つの回転ブレードに衝突させることによって、前記液体中の穀物の粒子を連続的に粉砕して、粉砕懸濁液を生成することと、前記粉砕懸濁液の少なくとも一部を、必要に応じては更なる処理の後に、使用済みの穀物と抽出液とに分離するための分離装置へと連続的に送ることとを含む。前記少なくとも1つの回転ブレードは、少なくとも10m/sの先端速度で回転しており、前記少なくとも1つの回転ブレードによって前記粉砕懸濁液中に伝達される全機械的エネルギーが、1kgの乾燥穀物当り5乃至1000kJの範囲内であり、前記少なくとも1つの回転ブレードの先端部と、回転軸との間の距離が、2乃至25cmの範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物の抽出液を生成する方法に関わる。本発明に係るこの方法は、例えば、醸造業で、例えば麦芽汁の生産のために、適切に使用され得る。
【0002】
本発明は、前述の方法で使用されるために適した粉砕装置及び分離装置を有するシステムを、更に提供する。
【背景技術】
【0003】
醸造業では、麦芽汁の生産のために、マッシングの前に原材料を粉砕することが、以下の技術、即ち、
ローラ粉砕による乾式粉砕
ハンマー粉砕による乾式粉砕
浸漬及びローラ粉砕による湿式粉砕
(穀物の殻を柔軟にするために麦芽の湿度レベルがわずかに高められていることを除いて、ローラ粉砕による乾式粉砕に類似した)条件粉砕
散布ポンプ粉砕
の1つによって、通例為される。
【0004】
これら動作の各々は、抽出量、酸素のピックアップ、マッシング分離での分離性能、下流での処理への影響、(マッシング時の)粉砕用穀物の酵素性能、衛生的態様、電力消費量、粉塵爆発の危険性、殻からのタンニンの抽出、流出液の濾過などに関する、効果及び欠点を有している。
【0005】
湿式粉砕は、粉砕技術に関するいくつかの主要な欠点のために、特に、マッシングのための長い耐性時間の分配と、十分に変化されていない麦芽の不十分な粉砕とのために、人気がなくなってきている。しかしながら、湿式粉砕は、乾式粉砕以上に、いくつかの重要な効果を有している。例えば、粉塵爆発に対する更なる安全規定には、予防措置が必要であり、このような予防措置が、乾式粉砕動作の費用を跳ね上がらせている。湿式粉砕技術は、このような措置を必要としないことが明らかである。
【0006】
発明者達は、乾式粉砕に対する実施可能な代案として、散布ポンプ技術を研究している。しかしながら、麦芽ではない粒子によるステータとロータとの組み合わせの摩滅が、高い維持費と不安定な性能とをもたらすことが、判っている。
【0007】
従って、湿式粉砕の効果(粉塵が無く、安全措置が最小限であり、低費用であること)と、例えば前記ハンマー粉砕処理の単純さとを兼ね備えている粉砕技術が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明者は、穀物の粒子が液体中に浮遊している間に粉砕される連続的な粉砕法によって、前述の目的が達成されることを発見した。この粉砕は、自由に浮遊している穀物の粒子を、少なくとも10m/sの非常に速い先端速度で回転する少なくとも1つのブレードに衝突させることによって、果たされる。この方法では、少なくとも1つの回転ブレードの先端と回転軸との間の間隔が、2乃至25cmの範囲であり、前記少なくとも1つの回転ブレードによって伝達される全機械エネルギーが、1kgの乾燥穀物当り5乃至1000kJの範囲である。かくして、この方法は、少なくとも1つの比較的小さな回転ブレードを使用する。この回転ブレードは、高速で回転し、穀物の粒子の大きさを大いに減じるために十分な長い時間、粒子を含んでいる懸濁液に接し続ける。
【0009】
本発明に係るこの方法は、湿式粉砕法のすべての利点を提供し、ハンマー粉砕と同様に複雑でなく、非常に丈夫である。この方法は、標準のキッチンブレンダー、即ち高速で回転するブレードに当てはまる同じ原理を使用する。前記浮遊している穀物の粒子が不活性であるために、高速で回転するブレードは、これら穀物の粒子を、衝撃によって粉砕することができる。工業規模で穀物を粉砕するために使用されてきた粉砕技術とは異なって、この方法での穀物の粒子の粉砕は、2つの固い面間で穀物の粒子を押しつぶすことに、依存しない。
【0010】
他の態様に従えば、穀物の抽出液を生成するためのシステムが提供される。このシステムは、粉砕装置と、この粉砕装置に下流側で接続されている、使用済みの穀物と抽出液とを分離するための分離装置とを有している。前記粉砕装置は、粉砕懸濁液を収容するための粉砕チャンバに接続されている液体入口を有している。ロータが、前記粉砕チャンバ中に配置されている。前記ロータは、このロータの回転軸から延びている少なくとも1つのブレードを有している。前記ブレードは、前記粉砕チャンバ中に配置されており、前記少なくとも1つのブレードの先端部と前記回転軸との間の距離が、2乃至25cmの範囲内である。このロータは、回転のための駆動ユニットに接続されている。この駆動ユニットは、少なくとも10m/sの先端速度で、前記ブレードを駆動するように構成されている。
【0011】
この方法とシステムとの主要な効果は、以下のようにまとめられることができる。
設備資金と維持費とを節約すること、
一括醸造と連続醸造との両方に適用可能であること、
粉砕時間が短いこと、
システム中の一定の流れによって衛生的な構成であること。
更に、多くの他の粉砕技術とは異なって、この方法は、湿度12%以上の含水率を有する穀物を粉砕及び抽出するために、適切に使用されることができることを、発明者は発見している。最後に、この方法は、例えば大麦を抽出するために使用されると、β−グルカンの含有量が減じられた抽出液を生成することを、発明者は思いがけず発見している。β−グルカンのレベルの減少は、製品の質と下流での処理とに建設的な効果をもたらす。
【0012】
この方法の利点は、穀物からの抽出液を工業規模で生成する場合に、特に顕著である。かくして、この方法は、1時間当り少なくとも100kgの乾燥穀物の割合で穀物を加工することによって穀物の抽出液を生成するために、使用され得ることが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係るシステムの第1の実施形態を概略的に示す図である。
【図2】図2は、本発明に係るシステムの第2の実施形態を概略的に示す図である。
【図3a】図3aは、本発明の実施形態に係るブレードの一細部を概略的に示す図である。
【図3b】図3bは、本発明の実施形態に係るブレードの一細部を概略的に示す図である。
【図4】図4は、本発明に係るシステムの第3の実施形態を概略的に示す図である。
【図5】図5は、本発明に係る粉砕装置の他の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従って、本発明の一態様は、1時間当り少なくとも100kgの乾燥穀物の割合で穀物を粉砕し、そして粉砕された穀物から液体を抽出することによって穀物の抽出液を生成する、連続した方法に関わる。この方法は、
穀物を液体に連続的に組み合わせることと、
自由に浮遊している穀物の粒子を少なくとも1つの回転ブレードに衝突させることによって、前記液体中の穀物の粒子を連続的に粉砕して、粉砕懸濁液を生成することと、
粉砕懸濁液の少なくとも一部を、必要に応じては更なる処理の後に、使用済みの穀物と抽出液とに分離するための分離装置へと、連続的に送ることとを含む。前記少なくとも1つの回転するブレードは、少なくとも10m/sの先端速度で回転する。前記少なくとも1つの回転するブレードによって前記粉砕懸濁液に伝達される全機械的エネルギーが、1kgの乾燥穀物当り5乃至1000kJの範囲内である。前記少なくとも1つの回転ブレードの先端部と回転軸との間の距離が、2乃至25cmの範囲内である。
【0015】
本書で使用されているような「穀物」という用語は、粒子状の穀物、果物の種(穀果)、もしくはこれら材料の2つ以上の組み合わせを示す。本発明は、使用される穀物が予め粉砕された穀物である場合での方法を含む。
【0016】
本書で使用されているような「ブレード」という用語は、回転軸を中心として回転するように構成されている固形の物体を示し、また、このような物体は、中心点(重心)から互いに異なる方向、例えば反対方向に、径方向に延びている少なくとも2つの(ブレード)ウィングを、通例有している。前記ブレードの1つの必要条件は、ブレードが、衝撃による穀物の粉砕のために、適切に使用可能であることである。更に、前記ブレードは、穀物を液体と融合させるために、攪拌作用を与えることが求められる。かくして、穀物の粒子の均一な粉砕が、助長される。
【0017】
本書で使用されているような「粉砕」という用語は、1つの固形の粒子を、2つ以上の固形の粒子へと粉砕することを示す。この「粉砕」という用語は、塊のような、粗く結合した粒子の粉砕を含まない。
【0018】
本書で使用されているような「機械的エネルギー」という用語は、少なくとも1つのブレードによって前記粉砕懸濁液中に伝達される全位置エネルギーと全運動エネルギーとを示す。この方法で伝達される機械的エネルギーの量は、例えば、前記回転ブレードによって生じられる温度の上昇から推測されることができ、また/あるいは、前記ブレードを回転させるために使用されるトルクから算出されることができる。
【0019】
「少なくとも1つの回転ブレード」という表現は、穀物の粒子を含んでいる液体を通って回転通路中を移動しているブレードを示すということが、理解されなければならない。一実施形態に従えば、少なくとも1つの回転ブレードは、回転軸、もしくは回転する本体(例えば回転するシリンダの内側)に設けられている。本発明によって含まれる他の実施形態に従えば、少なくとも1つの回転ブレードは、静止した本体に設けられており、穀物を含む液体は、前記ブレードを通って、例えば回転するパドルの影響を受けて、回転させられる。回転する本体に設けられているブレードを使用することによって、並びに、液体を、前記ブレードが回転する方向とは反対の方向で回転させることによって、この方法の効果を高めることが、当然可能である。
【0020】
この方法は、連続した方法で、果たされる。即ち、このような処理は、穀物のほぼ連続した流れと液体のほぼ連続した流れとを使用するか、代わって、穀物と液体とを含むほぼ連続した流れを使用する。更に、このような処理は、粉砕懸濁液のほぼ連続した流れを生じさせる。分離装置に送られる粉砕懸濁液の一部は、抽出液と使用済みの穀物とに有効に連続して分離されることが有効である。このようにして得られた抽出液は、一括処理、もしくは連続的な操作による処理、例えば醸造プロセスで、適切に使用され得る。かくして、この方法は、一括の麦芽汁製造及び一括発酵のような一括動作を使用する醸造プロセスに、使用され得る。特に好ましい実施形態に従えば、この方法は、連続した煮沸と、連続した粕(trub)除去と、連続した発酵とを更に含む連続した醸造プロセスに、使用される。
【0021】
更に、システムが、穀物の抽出液を生成するために提供され、このシステムは、本書に前述された方法を動作するために、適している。このシステムは、粉砕装置と、この粉砕装置の下流に接続されている、抽出液から使用済みの穀物を分離するための分離装置とを、有している。前記粉砕装置は、粉砕懸濁液を収容するための粉砕チャンバに接続されている液体入口を有している。ロータが、前記粉砕チャンバ中に配置されており、このロータは、前記ロータの回転軸から延びている少なくとも1つのブレードを有している。前記ブレードは、前記粉砕チャンバ中に配置されており、前記少なくとも1つのブレードの先端部と前記回転軸との間の距離が、2乃至25cmの範囲内である。前記ロータは、回転用の駆動ユニットに接続されており、この駆動ユニットは、少なくとも10m/sの先端速度で前記ブレードを駆動するように、設定されている。
【0022】
前述のように、この方法とシステムとは、工業規模で、適切に動作されることができる。代表的に、この方法では、穀物は、1時間当り少なくとも150kg、好ましくは200kg、より好ましくは少なくとも300kgの乾燥穀物の割合で、粉砕される。
【0023】
この方法とシステムとは、穀物の大きさの縮小が、高速回転ブレードの動作のみによって果たされ得る、という効果をもたらす。かくして、例えば石のような異質の物質による、粉砕装置の異なる部材間の直接的もしくは間接的接触によって生じる磨耗及び破壊が、最小限に抑えられる。従って、本発明の特に好ましい実施形態に従えば、少なくとも1つの回転ブレードの作用による穀物の粒子の粉砕は、前記少なくとも1つの回転ブレードの表面と他の固い面との間で穀物を押しつぶすことによって生じるのではない。この特徴によって、この方法は、浸漬とローラ粉砕とによる湿式粉砕のような湿式粉砕技術と、条件粉砕と、散布ポンプ粉砕とから、明確に区別される。
【0024】
この方法とシステムとは、穀物の粒子の粒の大きさを大いに縮小させるために、有効に使用されることができる。代表的に、前記少なくとも1つの回転ブレードの作用による穀物の粒子の粉砕は、少なくともファクター(factor)2、好ましくは少なくともファクター4だけ、穀物の粒子の質量加重平均(mass weighted average)の大きさを縮小させる。最も好ましくは、前記少なくとも1つの回転ブレードは、少なくともファクター8だけ、前記平均の粒子の大きさを縮小させる。
【0025】
この方法とシステムとは、幅広い種類の穀物の原料から抽出液を生成するために、適切に使用されることができる。前記少なくとも1つの回転ブレードの作用による粉砕の前に、液体中に含まれている穀物の粒子が、0.5mm乃至1cm、好ましくは1mm乃至8mmの質量加重平均の粒子の大きさを有している場合に特に、良い結果が得られる。
【0026】
この方法とシステムとは、代表的に粉砕懸濁液を発生させる。このとき、粒子は、50乃至1000μmの範囲、好ましくは100乃至800μmの範囲の質量加重平均の直径を有している。
【0027】
この方法の好ましい実施形態に従えば、少なくとも0.5mmの直径を有する粒子のような大きな(粗い)粒子が、粉砕動作中、もしくはこの動作後に、そしてこのような粒子が前記分離装置に達する前に、液体懸濁液を、こし器、スクリーン、ハイドロサイクロンのような適切な分離装置を通り抜けさせることによって、粉砕懸濁液から選択的に取り除かれる。「選択的に取り除かれる」もしくは「選択的に分離される」という用語は、粗い粒子が取り除かれることと、小さい粒子が懸濁液中に残されることとを、意味する。より好ましくは、少なくとも1.0mmの直径を有する粒子が、前記粉砕懸濁液から取り除かれる。最も好ましくは、少なくとも2.0mmの直径を有する粒子が、取り除かれる。前記粉砕懸濁液から取り除かれた大きい粒子は、特に、このような分離された粒子を前記粉砕された穀物を含む液体中に導入することによって、好ましくは、粉砕の行程へと再循環される。特に好ましい実施形態に従えば、前記分離された粒子は、連続して再循環される。
【0028】
フィードバックループが、前記粉砕装置の下流からこの粉砕装置の上流に、設けられ得る。一実施形態では、戻りダクトが、大きい粒子を含んでいる懸濁液を、本発明に係る少なくとも1つの粉砕装置に戻し得る。後者の実施形態は、前記分離された粒子を直接に前記粉砕装置に、もしくはこの粉砕装置の上流に、(例えば、供給される穀物の粒子を液体と組み合わせる混合装置に、)再循環させることを含むことが、理解されなければならない。
【0029】
液体と穀物とが、乾燥物質の6乃至50重量%、好ましくは10乃至45重量%、より好ましくは15乃至40重量%を為すように、この方法で適切に組み合わされる。本書で、「乾燥物質」とは、溶解された材料と溶解されていない材料との両方を含む。
【0030】
穀物と組み合わされる液体は、好ましくは水を含んだ液体である。使用される水を含んだ液体は、醸造水であることができる。しかしながら、本発明は、醸造行程で、他の場所から生じる再循環用の水を含んだ液体の流れを使用することを含む。このような再循環される水を含んだ液体の例は、使用済みの穀物を洗浄するために、この方法で使用されている洗浄水である。
【0031】
この方法とシステムとの粉砕効果は、回転ブレードの作用によって穀物の粒子の粉砕が中で生じるチャンバの容量によって、影響される。容量が大きい場合、粒子の大きさを縮小するのに、受け入れがたいほどに長い時間がかかることがある。容量が非常に小さい場合、滞留時間がとても短いために、穀物の粒子の一部しか前記回転ブレードに衝突しないので、粒子の大きさを縮小することが難しい。発明者は、穀物の有効な粉砕が、穀物と液体とが組み合わされた流れを、前述のような少なくとも1つの回転ブレードを各々収容している比較的小さい容量の一連のチャンバに通すことによって、果たされ得ることを、発見した。代わって、有効な粉砕は、前記組み合わされた流れを、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの一連の回転ブレードを収容しているチューブに通すことによって、果たされ得る。前記チューブは、真っ直ぐであっても良く、曲がっていても良い。前記チューブの断面は、円形もしくは矩形のような種々の形状を有し得る。
【0032】
従って、このような好ましい実施形態に従えば、穀物の粒子は、穀物の粒子を保持している液体を、前記少なくとも1つの回転ブレードを各々収容している少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの粉砕チャンバに通すことによって、粉砕される。前記各粉砕チャンバ中の滞留時間は、好ましくは、0.1乃至10分の範囲内、好ましくは0.1乃至4分の範囲内である。最も好ましくは、前記各粉砕チャンバ中の滞留時間は、0.2乃至2分の範囲内である。
【0033】
この方法とシステムとで使用される前記回転ブレードは、高速回転シャフトに適切に設けられる。好ましくは、この方法とシステムとは、前記回転軸と一致する重心から径方向に、異なる方向、例えば互いに反対の方向に延びている少なくとも2つのブレードウィングを各々有している少なくとも1つの回転ブレードを使用する。
【0034】
前記回転ブレードのウィングは、前縁と後縁とを有している。好ましくは、前記ブレードウィングの前縁の少なくとも一部は、切縁を設けるように傾斜されている。前記ウィングの前縁に切縁を設けることによって、穀物の粒子を粉砕する時の前記回転ブレードの有効性が、更に向上されることができる。
【0035】
この方法とシステムとに使用されている前記少なくとも1つのブレードは、動作中に攪拌作用を与えることが有効である。前記少なくとも1つのブレードが、粉砕される粒子を保持している液体中で回転すると、前記ブレードの(切)縁は、切断路を規定し、前記ウィングは、液体と穀物の粒子との流れを生じさせる。前記少なくとも1つのブレードの回転の結果、前記ウィングによって発生される流れは、液体と粉砕された穀物の粒子とを、これら構成要素が均一に混ぜられて、液体中の穀物の粒子が切断ブレードによって粉砕されるように、前記切断路から引く。
【0036】
有効な実施形態に従えば、前記少なくとも1つの回転ブレードは、攪拌用のプロペラとして作用し、即ち、前記ブレードは、回転ウィングとして作用し、前記ブレードの前面と後面との間で圧力に違いを生じさせる。前記ブレードの攪拌作用によって、粉砕された粒子は、前記回転ブレードによって押し出され、従ってこれら粒子は、他の粒子によって取り換えられ得る。
【0037】
特に好ましい実施形態に従えば、少なくとも1つのブレードは、少なくとも2つのブレードウィングを有している。これら少なくとも2つのブレードウィングは、(回転軸が垂直である場合、)前縁が、後縁の上方、もしくは下方で、垂直に向けられるように、ねじられているか、整えられているか、別の形状に形成されている。例えば、前記ブレードウィングが、前記前縁が前記後縁の上方で垂直に向けられるようにねじられている場合、前記ブレンダーのブレードの回転が、(穀物の粒子を含んでいる)液体を、前記切断路から繰り返し引く。かくして、前記ブレンダーのブレードの回転は、前記穀物の粒子を、前記切断路から下方に連続して引き、そして前記粒子を、前記粉砕チャンバの内面に沿って押し上げる。この結果、穀物の粒子が、前記ブレードの回転によって、連続して粉砕されて、前記粉砕チャンバの中身と混ぜ合わされるので、前記穀物の粒子と液体とは、均一に混ぜ合わされる。
【0038】
特に好ましい実施形態に従えば、少なくとも1つのブレードは、少なくとも2つのウィングをそれぞれ有している。これらウィングの前縁が、切断路を規定している。前記ブレードのウィングは、前記ブレンダーのブレードに複合切断路を形成するように、前記ブレードの重心を通って前記回転軸に直交して延びている面に対して、複合角で方向付けられている。
【0039】
前記ウィングの各々は、ウィングの前縁が後縁の上方もしくは下方で垂直に向けられるように、ねじられているか、別の方法で形作られていることが、有効である。また、(前記回転軸が垂直である場合、)ウィングの先端部が中心点の上方もしくは下方で垂直に向けられるように、傾斜されていることが、有効である。特に好ましい実施形態に従えば、前記ブレードウィングの前縁は、前記ウィングの後縁の上方で垂直に向けられており、前記ウィングの先端部は、前記中心点の上方もしくは下方で、垂直に向けられている。
【0040】
閾値に至るまで、前記ウィングの角度、特に、前記ウィングのねじれが大きいほど、前記ブレンダーのブレードに関わる揚力が大きくなる。前記ブレードウィングは、前記ウィングの全長に沿ってねじられ得るか、代わりに、前記ブレードウィングの一部が、適切な揚力を発生させるようにねじられ得る。代表的に、前記前縁から前記後縁までの傾斜の角度は、60度を超えず、より好ましくは、45度を超えない(前記傾斜の角度は、水平面に対して、垂直の回転軸を為すように、規定される)。最も好ましくは、前記前縁から前記後縁までの傾斜の最大角度は、5乃至30度の範囲である。
【0041】
このプロセスで使用される前記ブレードウィングは、回転軸から径方向外側に延びていることが有効である。前記ブレードウィングは、ラジアル平面(radial plane)に対して上向きの角度もしくは下向きの角度で外側に延び得る。前記ラジアル平面に対する前記上向きもしくは下向きの角度は、好ましくは、5乃至70度の範囲内、より好ましくは10乃至45度の範囲内である。好ましくは、前記ウィングの先端部は、前記ラジアル平面に対して前述の角度で傾斜されている。代表的に、前記先端部は、前記ブレードウィングの全長の60%より小さく、より好ましくは、前記全長の50%より小さい。
【0042】
有効な実施形態では、前記少なくとも1つの回転ブレードは、上向き及び下向きの異なる角度で同じ径方向に延びている少なくとも2つのブレードウィングを有している。前記ブレードウィングのこのような配置は、粉砕作用の有効性を高める効果を提供する。
【0043】
前記ブレードウィングの各々は、前記回転軸と前記ウィングの先端部との間で推測される有効な幅と全長とを有している。前記ウィングの有効な幅の、前記ウィングの全長に対する比率は、1:1乃至1:20の範囲内であり、好ましくは、1:2乃至1:15の範囲内である。
【0044】
本書で前述されたように、この方法及びシステムで使用される前記回転ブレードは、非常に高速で回転する。代表的に、前記少なくとも1つの回転ブレードは、少なくとも2000rpmの速度で、より好ましくは少なくとも1000rpmの速度で回転している。少なくとも1つの回転ブレードの先端速度は、代表的に、少なくとも12m/sであり、より好ましくは少なくとも15m/sであり、更に好ましくは少なくとも20m/sであり、更により好ましくは少なくとも50m/sであり、最も好ましくは少なくとも70m/sである。
【0045】
本発明の効果は、比較的小さいディメンションの回転ブレードを使用することによって得られる。しかし、前記ブレードの全長の主要部に沿って、前記ブレードが穀物の粒子にぶつかる衝撃が、これら粒子の粉砕を確実にするような十分に長い回転ブレードを使用することが重要である。しかしながら、同時に、前記ブレードを高速の先端速度で回転させるために必要なトルクが、ブレードの全長が長くなると急激に大きくなるので、また、長いブレードは、高いrpmで動作された場合に非常にもろいため、前記ブレードの全長には、最大限度が設けられなければならない。代表的に、この方法で使用される前記少なくとも1つの回転ブレードの先端部と前記回転軸との間の距離(即ち、前記少なくとも1つのブレードの全長)が、2.5乃至20cmの範囲内、より好ましくは2.5乃至18cmの範囲内、最も好ましくは、3乃至15cmの範囲内である。特に好ましい実施形態に従えば、少なくとも10m/sの先端速度で、特に少なくとも20m/sの先端速度で回転するすべての前記回転ブレードの先端部が、回転軸の25cmの範囲内に、より好ましくは20cmの範囲内に、更により好ましくは18cmの範囲内に、最も好ましくは15cmの範囲内に、配置される。
【0046】
この方法が、メンテナンスをほとんどしないで動作され得るようにするために、金属、セラミック、合成物質、ポリマー、ダイアモンド、これらの組み合わせから成るグループから選択された剪断抵抗の材料によって形成された回転ブレードを使用することが、望ましい。
【0047】
特に好ましい実施形態に従えば、前記少なくとも1つの回転ブレードは、0.1乃至1cm、より好ましくは0.2乃至0.8cmの、最も好ましくは0.25乃至0.6cmの厚さを有している。最小限の厚さのブレードを使用することが、有効である。これは、最小限の厚さのブレードが、回転摩擦を最小限にし、前記ブレードの「切断」能力を最大限にするからである。しかしながら、当然、このような厚さは、前記回転ブレードの適切な動作寿命を保証するために十分でなければならない。
【0048】
前記回転ブレードの作用による粉砕の前の穀物と組み合わされた液体の温度は、広い範囲で変わり得る。代表的に、穀物と組み合わされているときの液体の温度は、5乃至100℃の範囲内であり、好ましくは10乃至60℃の範囲内である。
【0049】
穀物の粒子の大きさの十分な縮小を果たすために、相当の量の機械的エネルギーが、少なくとも1つの回転ブレードによって、粉砕懸濁液中に伝達されなければならない。代表的に、前記少なくとも1つの回転ブレードによって前記粉砕懸濁液中に伝達される全機械的エネルギーは、1kgの乾燥穀物当り、少なくとも8kJ、より好ましくは少なくとも10kJ、最も好ましくは少なくとも15kJである。この方法は、穀物の大きさの大幅な縮小が、少量のエネルギー供給によって果たされ得る、という効果をもたらす。従って、前記少なくとも1つの回転ブレードによって前記粉砕懸濁液中に伝達される全機械的エネルギーは、1kgの乾燥穀物当り800kJを超えず、より好ましくは500kJを超えず、更に好ましくは300kJを超えないことが、有効である。
【0050】
前記少なくとも1つの回転ブレードによって前記粉砕懸濁液中に伝達される機械的エネルギーは、冷却もしくは相当の蒸発をしない場合、前記粉砕懸濁液の温度の上昇を生じさせる。この方法では、前記穀物の粒子の粉砕は、代表的に、100℃以下、好ましくは60℃以下、最も好ましくは30℃以下の前記粉砕懸濁液の温度の上昇に伴って生じられる。過度の温度上昇を防ぐために、穀物の前記懸濁液は、粉砕動作の間に冷却され得る。しかしながら、好ましい実施形態に従えば、穀物の粒子の粉砕は、前記懸濁液の冷却をしないで果たされる。
【0051】
前記粉砕懸濁液は、使用済みの穀物と抽出液とに分けるための分離装置へ送られる前に、少なくとも1つの更なる処置を受けることが適切であり得る。好ましい実施形態に従えば、使用済みの穀物と抽出液とへの分離の前に、前記粉砕懸濁液は、酵素が、抽出された麦芽糖を糖に、特にマルトースに分解することができるように、マッシング動作を受ける。
【0052】
使用済みの穀物と抽出液とへの分類は、この分野で知られているいかなる固体液体分離技術によっても適切に果たされ得る。好ましくは、前記分離は、マッシングフィルタと、遠心分離機と、ラータータン(lautertun)と、こし器とから選択された少なくとも1つの分離装置によって、果たされる。この方法は、マッシングフィルタによって非常に有効に分離され得る粉砕懸濁液を生成するために、特に適切である。従って、特に有効な実施形態では、この方法は、前記粉砕懸濁液を使用済みの穀物と抽出液とに分けるために、マッシングフィルタを使用する。
【0053】
この方法によって適切に処理され得る穀物の例は、大麦、モロコシ、米、トウモロコシ、そば、ライ麦、雑穀、これら穀物の麦芽種、これら穀物の組み合わせである。特に好ましい実施形態では、この方法の穀物は、大麦、特に麦芽大麦である。
【0054】
更に、本発明は、以下の図を参照して説明される。
図1は、本発明の実施形態に係るシステムの第1の実施形態を概略的に示している。
図2は、第2の実施形態を概略的に示している。
図3a及び図3bは、本発明の一実施形態に係るブレードの一細部を概略的に示している。
図4は、第3の実施形態を概略的に示している。
図5は、本発明に係る粉砕装置の他の構成を概略的に示している。
【0055】
図1は、本発明の実施形態の概略的な例を示している。この図は、粉砕装置1の断面を示している。更に、図1は、本発明に係る反応装置50(例えば、熱交換器)と、分離装置20(固体を液体から分離するための装置)とを、概略的に示している。前記粉砕装置1と反応装置50と分離装置20とを有しているシステムが、麦芽汁のような穀物の抽出液の準備と生産とに使用されることができる。
【0056】
本発明に係るシステムは、少なくとも1つの粉砕装置1を有している。一実施形態では、本発明に係るシステムは、少なくとも2つの一連の粉砕装置1を有している。前記少なくとも2つの粉砕装置1は、好ましくは直列に接続されている。また、例えば少なくとも2つの回転ブレードを保持するチューブを使用することによって、一連の回転ブレードを収容している粉砕装置を使用することが、適切である。少なくとも2つの粉砕装置の使用、もしくは、一連の回転ブレードの使用は、以下に更に詳しく説明されるように、穀物の粒子の有効な粉砕を可能にする。
【0057】
図1では、液体が、粉砕装置1中に、入口2から粉砕チャンバ3中へと、導入される。この図に係る実施形態では、前記粉砕チャンバ3は、容器もしくはコンテナである。第2の入口4が、前記粉砕チャンバ3中に穀物を供給するための入口を、概略的に示している。これら入口2、4は、所定の位置で示されているが、当業者は、これら入口2、4を所望の位置に配置することができる。一実施形態では、前記入口2、4の一方が、液体もしくは穀物を、粉砕チャンバ3の中心部に、例えばブレード30、31の近くに移動させる。他の実施形態では、液体と穀物との混合物が、入口2から粉砕装置1へと導入される。
【0058】
前記粉砕チャンバ3は、穀物の懸濁液を収容している。この懸濁液は、この図では、液面13を有するように示されている。しかしながら、好ましい実施形態では、前記粉砕チャンバ3は、流体が完全に充填されている。
【0059】
液体と穀物との前記粉砕チャンバへの流入を、制御することが、可能である。(調整バルブ44もしくは投与スクリュー45の形態で、図1に概略的に示されている)流入の量を示すパラメータが、処理装置と記憶装置(示されていない)とを有している制御装置5で集められ得る。この制御装置5は、流入の量を測定するための測定装置(示されていない)に、例えば無線で、接続されている。前記調整バルブ44と前記投与スクリュー45とは、前記粉砕チャンバ3中への流入の量を制御するための手段を有し得る。
【0060】
前記制御装置5は、駆動ユニット6に接続されており、この駆動ユニット6を制御することができる。駆動ユニット6は、ロータ7を所望の速度で回転させることができるユニットを概略的に示している。駆動ユニット6は、機械的に制御されたエンジンであり得る。この駆動ユニット6は、変速装置を有し得る。
【0061】
ロータ7は、概略的に示されている密封されたシャフトベアリング12を通るように吊るされて、前記粉砕チャンバ3中に延びているシャフト8を有している。一実施形態では、前記駆動ユニット6も、前記粉砕チャンバ3中に収容されている。一実施形態では、変速装置が、前記粉砕チャンバ3中に収容されている。
【0062】
一実施形態では、前記駆動ユニット6の回転軸は、変速装置を介して前記シャフト8に接続されている。一実施形態では、駆動ユニット6が、他の粉砕装置1の少なくとも1つのシャフト8を駆動するように、使用され得る。一実施形態では、1つの粉砕装置1が、異なる2つのブレード30、31を各々が備えている少なくとも1つのシャフト8を有している。
【0063】
2つのブレード30、31は、シャフト8に設けられている。ブレード30、31は、シャフトに対してロック、及びロック解除されることができる取り外し可能な装置である。示されている例では、スリーブ46が、前記ブレード30、31間に配置されている。当業者は、ブレード30、31を前記シャフト8に取り付け及びロックするための、異なる形式の取り付けシステムを構成することができるであろう。
【0064】
一実施形態では、ブレード30は、図3bの実施形態に示されているように、3つのブレードウィング9、10、11を有している。前記回転軸14からブレードの先端部16までの距離15が、少なくとも2cmである。好ましくは、前記距離15は、少なくとも5cm、より好ましくは少なくとも10cmである。一実施形態では、前記ブレードは、長くても25cm、より好ましくは長くても20cmの最大の全長15を有している。前記ブレード30は、回転中に、尖った端部29がウィング9乃至11の前端部を規定するように、時計回りの方向28に回転するように配置及び構成されている。更に、前記ウィング9乃至11の先端部27は、上方に曲げられているフィン26を有している。フィン26と尖った前端部29とは、前記粉砕チャンバ中に収容されている流体中にある穀物の粉砕のために、配置及び構成されている。フィン26は、動作中に前記流体を攪拌するために、更に配置及び構成されている。
【0065】
本発明に従えば、先端部16は、粉砕中にブレンダーに似た効果を生じさせるように、少なくとも10m/sの最低速度を有し得る。
【0066】
図3aは、ブレード90の他の実施形態を示している。ブレード90は、中心のスリーブ形状の本体91を有しており、このスリーブ形状の本体91は、この本体91から径方向外側に延びている4つのウィング92、93、94、95を有している。ウィング92乃至95の各々は、一般に径方向に延びている部分96と、この部分96より先端側の先端部分97とを有している。前記先端部分97は、ラジアル平面98に対して上方もしくは下方に、角度aで延びている。また、一実施形態では、前記ウィング92乃至95には、フィンが設けられている。フィンは、図3aに示されていない。前記フィン、もしくは、前記回転軸14に対して平行の方向に延びている前記ウィングの他の部分が、回転中に流体中に攪拌を生じさせ、使用されている流体の混合を生じさせ、前記粉砕チャンバ3中に収容されている完全な流体の粉砕を可能にする。
【0067】
一実施形態では、前記フィンは、これの回転中に、流体を、前記ウィングに対して接離するように吸引及び押圧し、前記流体中で攪拌を生じさせるように、配置及び構成されている。
【0068】
一実施形態では、前記シャフト8は、前記粉砕チャンバ3の下端部から上方に、前記粉砕チャンバ3中に収容されている流体中へと延びている。前記ブレードは、前記粉砕チャンバの底面に近い前記シャフトから延びている。
【0069】
前記制御装置5は、前記ブレードを回転させるために駆動ユニット6を制御することができる。前記駆動ユニットは、少なくとも10m/sで、好ましくは少なくとも15m/sで、前記ブレードウィングの先端部16を回転させることができる。このことによって、キッチンブレンダー効果を工業規模で得ることが可能となる。この結果、1時間当り少なくとも100kgの乾燥穀物の割合で穀物を粉砕することによって穀物の抽出液を生成するシステムが、従来のシステムより有効となる。
好ましくは、前記装置1は、液体と穀物との連続した供給のために配置されている。
【0070】
図2は、他の実施形態を示している。この実施形態では、混合チャンバ60が、3つの一連の粉砕装置61の上流に配置されており、他の部材が、第1の実施形態に類似している。混合チャンバ60は、穀物と水、もしくは水を含んだ液体とのための、2つの入口62、63を有している。穀物と水、もしくは水を含んだ液体とは、概略的に示されている混合装置64を備えた一般にドラム形状のコンテナ中に、一緒に運ばれる。前記混合装置は、ブレード65と、駆動ユニット66とを有している。駆動ユニット66とブレード65とは、流体と穀物とを混合するように配置されている。好ましくは低いRPMが、混合のために使用される。一実施形態では、前記混合チャンバ60は、懸濁液の粉砕前処理を果たすために、配置されている。示されている実施形態では、前記混合された懸濁液は、粉砕装置1と類似した設定を有している3つの粉砕装置61の第1の粉砕装置に、流れる。
【0071】
動作中に、前記ブレード30、31は、特に、ブレードウィング9乃至11の前記先端部16は、前記粉砕チャンバ3中の液体中に浮遊している穀物の粒子を、粉砕し得る。前記ブレードウィングは、高速の角速度によって、特に、前記ブレードウィング9乃至11の先端部16の高速の先端速度によって、前記懸濁液中に、相当量の運動エネルギーを伝達する。好ましくは、伝達される全機械的エネルギーは、1kgの乾燥穀物当り少なくとも5kJである。前記制御装置5は、回転速度が前記懸濁液中に適切な量の運動エネルギーを伝達することを、即ち、前記懸濁液中の穀物を粉砕するために十分な運動エネルギーを伝達することを、確実にするように、監視することができる。
【0072】
前記粉砕装置1の動作の結果、粉砕された粒子の混合を増やすために、前記粉砕チャンバは、示されている実施形態では前記粉砕チャンバ3の壁から径方向内側に延びている少なくとも1つのバッフル74、75を有し得る。前記バッフル74、75は、前記粉砕チャンバ3中に位置されているバッフル本体の一部であり得る。
【0073】
図1に示されている前記第1の粉砕装置は、出口18を有している。この出口18は、制御装置5によって制御され得るバルブ19(もしくはポンプ)を有している。この出口18は、穀物の懸濁液を次の粉砕装置へと送ることを、可能にする。最後の粉砕装置は、出口21を有しており、この出口21は、前記粉砕懸濁液を反応チャンバ50へと、そして更に分離装置20の下流へ送ることを、可能にする。この実施形態の分離装置20は、概略的に示されているメッシュ22を、出口23の上流に有している。
【0074】
一実施形態では、前記分離装置20は、遠心分離機を更に有している。穀物の抽出液の生成に関する当業者は、示されている実施形態に係る粉砕装置と組み合わせて使用され得る異なる設定に、精通しているであろう。
【0075】
一実施形態では、前記出口18は、前記粉砕チャンバ3のほぼ半分の高さのところに、位置されている。このことによって、前記チャンバ3から、粉砕された流体を連続して送ることが可能となる。前記出口18が前記底面に近いほど、より多くの粉砕された粒子が集められるのに対して、上側の端部に近いほど、粉砕された粒子が少ない。
【0076】
図1は、液面13を示しているが、前記粉砕装置1中にあるヘッドスペースに気相を設けないで前記チャンバを動作させることが、可能であり、いくつかの実施形態では、この方が好ましい。
【0077】
一実施形態では、前記粉砕装置1、61間での搬送と、反応チャンバ50での搬送とが、連続的である。実際の搬送ステップは、一括的と連続的との両方か、どちらか一方である。
【0078】
図1は、本発明に係るシステムを非常に概略的に示しており、当業者は、本書で開示されている本発明によって、示されている実施形態の効果を、工業規模で向上させることが可能であろう。特に、当業者は、本発明に係るシステムを、醸造に提供することができる。
【0079】
図4は、本発明に係るシステムの第3の実施形態を概略的に示している。図4は、混合装置100と粉砕装置104とを有するシステムを示している。このシステムでは、前記粉砕装置は、概略的に示されている3つの駆動ユニットとロータ101、102、103とが配置されている1つの粉砕チャンバ105を有している。穀物120と、水もしくは水を含んだ液体121とが、前記混合チャンバ112に加えられて、懸濁液に転換される。
【0080】
混合装置100は、混合チャンバ112中に収容されているロータ111を有しており、前記ロータ111に接続されている駆動ユニット113が、前記混合チャンバ112中に完全に収容されている。
【0081】
粉砕チャンバ105は、仕切りパネル109、110によって概略的に分離されている3つの粉砕装置106、107、108を有している。前記仕切りパネル109、110は、前記粉砕チャンバ105から流れる懸濁液中に収容されている大きい(即ち粗い)粒子が粉砕ユニット106、107中に保持されるように、有効に配置されている。示されている例では、このような大きな粒子は、前記仕切りパネル109、110によって保持される。これは、前記混合チャンバ105中の前記懸濁液の液面122が、前記懸濁液がこれらパネルを越えて次の粉砕ユニット中に溢れ出るように、しかしこの懸濁液中に含まれている大きな粒子をこの懸濁液と一緒に運ばないように、十分な高さを有しているからである。かくして、大きな粒子は、粉砕ユニット106中と粉砕ユニット107中とに保持されて、仕切りパネル109もしくは仕切りパネル110を通過できる粒子の大きさまで、粉砕作用によって粉砕される。
【0082】
粉砕チャンバ105の下流では、ポンプ115が、図に示されている矢印に従って、前記懸濁液の流れを支持している。大きな粒子の更なる分離が、ポンプ115の下流で、分離部材116中で果たされ得る。再循環ダクト125が、分離された大きな粒子の、少なくとも1つの前記粉砕ユニット106、107、108へのフィードバック流を生じさせ得る。
【0083】
適切に粉砕された粒子を含んでいる懸濁液は、反応装置117の下流に流れ、この場所から、抽出液119を得るために、使用済みの穀物を分離する装置118へと流れる。
【0084】
図5は、粉砕装置130の異なる実施形態を示している。駆動ユニット131が、示されていないフレームに接続されている。更に、固定部材135が、このフレームに固定して接続されている。駆動ユニット131は、矢印138に従ってブレード136を回転させるロータ本体133を駆動する。ロータ本体133は、固定部材135に、134で示されているところで、回転可能に取り付けられている。本書では、前記固定部材135は、回転軸の位置に配置されている。前記ブレード136の先端部は、139で示されているところの近くに配置されている。
【0085】
本発明は、以下の制限的でない例によって、更に説明される。

例1
麦芽の128kg/hの連続した流れが、醸造水の283kg/hの連続した流れと一緒に粉砕チャンバ中に導入された。6Lの容量を有しているこの粉砕チャンバ中では、8.5cmの直径のブレードが、21,500rpmで回転した。生成物の流れが、このチャンバから、同じ処理設定で操作される2つの類似したチャンバに送られた。この粉砕システムは、一定の供給状態で、少なくとも20分間粉砕することによって、定常状態となった。
【0086】
第3の粉砕チャンバからの生成物が、集められ、攪拌してマッシングする100Lの容器中に入れられた。代表的なマッシングプロフィールが、即ち、20分間はプロテインを58℃で静止させ、15分間で66℃に達するまで加熱し、25分間は糖化物を66℃で静止させ、15分間は再度76℃まで加熱し、最後に、10分間はこの温度で静止させることが、適用された。この後、マッシングされたもの(mash)が、2チャンバのマッシングフィルタに送られた。マッシングフィルタが、ハンマーによって粉砕された麦芽の場合と同じようにして、動作された。
【0087】
この結果生じる麦芽汁が、煮沸容器へと吐出され、この麦芽汁は、90分間煮沸された。発酵温度まで冷却するように熱い粕と麦芽汁とを分離した後、酸素とイーストとが、加えられ、通常のビールの発酵が、果たされた。麦芽汁の試料が、取り出され、分析されて、12.9%(w/w)の麦芽汁の本来の重量を示した。
【0088】
最終的なビール製品が、適切なコンテナ(ボトル)に詰められ、ビールの品質のパラメータが分析された。麦芽汁のパラメータとビールのパラメータとにおける分析が、良好なマッシング性能と、良好な品質とを示した。特に重要なことは、マッシングプロセス中に形成された発酵性糖の量が、麦芽穀物の粉砕によって生じた発酵のための、でんぷんの使用可能性を示していることである。この例では、69.8%(w/w)の値の炭水化物が、発酵性糖であり、この結果、86%(w/w)の明白な最終減衰制限となる。
【0089】
例2
200kg/hの麦芽と、400kg/hの水との連続した流れが、混合容器中に導入され、懸濁液を得るために、連続的に、インペラによって攪拌される。混合物が、6Lの容量を有する第1の粉砕チャンバ中に送られる。8.5cmの直径を有するブレードが、前記チャンバ中で、21,500rpmで連続的に回転される。このチャンバから発生した流れが、同じプロセスの設定で、直列で動作される2つの類似したチャンバ中に、送られる。
【0090】
このような連続した混合チャンバの後に、容積型ポンプが、混合物を、600Lの容量の、垂直転換反応装置中に送る。この反応装置は、回転軸に取着されており、この回転軸には、混合を果たすために、複数の円盤が設けられている。前記反応装置の高さ方向に沿った温度プロフィールには、58℃でのプロテインの静止と、67℃での糖化物の静止と、78℃での最終物の静止とが、適用されている。この後、麦芽汁が、粒子を取り除くために、デカンタ型の遠心分離機に、送られる。
【0091】
結果として生成された麦芽汁は、従来の反応装置と同じ幾何学形状の煮沸反応装置へと、引かれる。この麦芽汁は、103℃で60分間煮沸される。発酵温度まで冷却するために熱い粕と麦芽汁とを分離した後、酸素とイーストとが加えられ、標準のビール発酵が、果たされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1時間当り少なくとも100kgの乾燥穀物の割合で、穀物を粉砕し、そして粉砕された穀物から液体を抽出することによって、穀物の抽出液を生成する方法であって、この方法は、
穀物と液体とを連続して組み合わせることと、
自由に浮遊している穀物の粒子を、少なくとも1つの回転ブレードに衝突させることによって、前記液体中の穀物の粒子を連続的に粉砕して、粉砕懸濁液を生成することと、
前記粉砕懸濁液の少なくとも一部を、必要に応じては更なる処理の後に、使用済みの穀物と抽出液とに分離するための分離装置へと、連続的に送ることとを具備し、
前記少なくとも1つの回転ブレードは、少なくとも10m/sの先端速度で回転しており、
前記少なくとも1つの回転ブレードによって前記粉砕懸濁液中に伝達される全機械的エネルギーが、1kgの乾燥穀物当り5乃至1000kJの範囲内であり、
前記少なくとも1つの回転ブレードの先端部と、回転軸との間の距離が、2乃至25cmの範囲内である、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの回転ブレードの作用による穀物の粒子の粉砕が、前記少なくとも1つの回転ブレードの一面と他の固い面との間で穀物の粒子を押しつぶすことによって生じるのではない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの回転ブレードの作用による穀物の粒子の粉砕は、少なくともファクター2、好ましくはファクター4だけ、穀物の粒子の質量加重平均の大きさを縮小させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの回転ブレードの作用による粉砕の前で、液体中の穀物の粒子は、0.5mm乃至1cmの質量加重平均の粒子の大きさを有している、請求項1乃至3のいずれか1に記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕懸濁液中の粒子は、50乃至1000μmの範囲、好ましくは100乃至800μmの範囲の質量加重平均の直径を有している、請求項1乃至4のいずれか1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体と前記穀物とは、乾燥物質の6乃至50wt%を為すように組み合わされる、請求項1乃至5のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体は、水を含んだ液体である、請求項1乃至6のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの回転ブレードは、少なくとも15m/sの、より好ましくは少なくとも20m/sの、より好ましくは少なくとも50m/sの、より好ましくは少なくとも70m/sの先端速度で回転する、請求項1乃至7のいずれか1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの回転ブレードの先端部と、前記回転軸との間の距離が、2.5乃至20cmの範囲内、好ましくは3乃至15cmの範囲内である、請求項1乃至8のいずれか1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの回転ブレードによって前記粉砕懸濁液中に伝達される全機械的エネルギーが、1kgの乾燥穀物当り8乃至5000kJの範囲内、より好ましくは10乃至300kJ/kgの範囲内である、請求項1乃至9のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記穀物は、大麦と、モロコシと、米と、トウモロコシと、そばと、ライ麦と、雑穀と、これら穀物の麦芽種と、これら穀物の組み合わせとから選択される、請求項1乃至10のいずれか1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1に規定されている方法によって、穀物の抽出液を生成するためのシステムであって、
少なくとも1つの粉砕装置(1)と、この粉砕装置(1)に下流側で接続され、使用済みの穀物と抽出液とを分離するための分離装置(20)とを具備しており、
前記粉砕装置(1)は、粉砕懸濁液を収容するための粉砕チャンバ(3)に接続されている液体入口(2)を有しており、
ロータ(7)が、前記粉砕チャンバ(3)中に配置されており、このロータ(7)は、このロータ(7)の回転軸(14)から延びている少なくとも1つのブレード(30、31)を有しており、前記ブレード(30、31)は、前記粉砕チャンバ(3)中に配置されており、
前記少なくとも1つのブレード(30、31)の先端部(16)と前記回転軸(14)との間の距離(15)が、2乃至25cmの範囲内であり、前記ロータ(7)は、回転用の駆動ユニット(6)に接続されており、この駆動ユニット(6)は、前記少なくとも1つのブレード(30、31)が、少なくとも10m/sの先端速度で駆動するように設定されている、システム。
【請求項13】
このシステムは、前記駆動ユニット(6)を制御するための制御装置(5)を更に具備しており、この制御装置(5)は、全機械的エネルギーを、前記少なくとも1つのブレード(30、31)によって、液体中に浮遊している1kgの乾燥穀物当り5乃至1000kJの範囲内で、前記粉砕懸濁液中に伝達するように、制御するように設定及び構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのブレード(30、31)は、少なくとも2つのウィング(9、10、11)を有しており、これらウィングの前縁が、切断路(24)を規定しており、前記ブレードウィングは、ブレンダーのブレードに複合切断路(24)を形成するように、前記ブレード(30、31)の重心を通って前記回転軸(14)に直交して延びている面に対して、複合角で方向付けられている、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、反応装置(50)を更に有しており、前記分離装置(20)は、マッシングフィルタか、遠心分離機か、ラータータンか、こし器である、請求項12乃至14のいずれか1に記載のシステム。
【請求項16】
前記粉砕装置(1)は、少なくとも1つの一連の粉砕ユニット(106、107、108)と、粉砕ユニット(106、107、108)の下流側に、及び前記反応装置(50)の上流側に配置されている分離ユニット(109、110、116)と、を具備し、前記分離ユニットは、粉砕懸濁液から粗い粒子を選択的に分離することができ、前記粗い粒子は、少なくとも0.5mmの、より好ましくは少なくとも1mmの、最も好ましくは少なくとも2mmの直径を有している、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
このシステムは、分離された粗い粒子を、前記分離ユニット(109、110、116)から、少なくとも1つの前記粉砕ユニット(106、107、108)へと、もしくは前記粉砕ユニットの上流に向かって、再循環させるための再循環ダクト(125)を有している、請求項1乃至16のいずれか1に記載のシステム。
【請求項18】
このシステムは、少なくとも2つの、このましくは少なくとも3つの一連の粉砕ユニット(106、107、108)を具備する、請求項16又は17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−516696(P2012−516696A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549106(P2011−549106)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050052
【国際公開番号】WO2010/090522
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(508343478)ハイネケン・サプライ・チェーン・ビー.ブイ. (8)
【氏名又は名称原語表記】Heineken Supply Chain B.V.
【住所又は居所原語表記】Burgemeester Smeetsweg 1,NL−2382 PH Zoeterwoude, The Netherlands
【Fターム(参考)】