説明

積層プリント基板

【課題】本発明は、コイルを一体形成して、そのコイルの巻回密度を高め、面積あたりのインダクタンスの効率向上を得られる積層プリント基板を提供する。
【解決手段】複数枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合わせ、第1層面(主面)aに複数の並行な外側上配線パターン1、第4層面(裏面)dに複数の並行な外側下配線パターン8を形成し、これら配線パターンの両端部相互を外側導通孔3で連通して外側コイル10Aを構成し、第2層面(内層面)bに複数の並行な内側上配線パターン4、第3層面(内層面)cに複数の並行な内側下配線パターン6を形成し、これら配線パターンの両端部相互を内側導通孔5で連通することで内側コイル10Bを構成し、外側コイルの一端部と内側コイルの一端部とを連通路Rで連通して電気的に接続された1つのコイルK構造となす。また、積層プリント基板の厚み方向にコイルを積層して一体形成することで、コイルを取付けるための手間の軽減および部品点数削減と、部品実装面積の有効利用を図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル構造を一体形成した積層プリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
配線パターンによる回路が形成されたプリント基板にコイルを実装するには、一般的に、別途製造されるコイル部品をプリント基板に半田付けしている。しかるに、極く少量の需要しか求められない回路を備えたプリント基板に対し、特別規格のコイルを実装する場合にも、その都度コイルを設計し、製造しなければならない。
【0003】
したがって、プリント基板にコイルを設ける作業の効率が悪いものである。そこで、たとえば[特許文献1]に開示される発明が提供されるに至った。この発明によれば、基板にコイルを設ける際に、コイル部品を準備する必要がなく、基板にコイルを設ける作業が向上する、と記載されている。
【0004】
前記発明は、基板の両面に複数のプリント配線パターンが、公知のプリント配線パターン形成方法により設けられる。さらに、導電層を備える貫通孔をスルーホールプリン配線方式など、基板両面のプリント配線パターンを電気的に導通させるための公知の配線方式によって形成して、プリント基板に直接、n個のコイルを形成するようになっている。
【特許文献1】特開2000−223316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[特許文献1]によれば、基板の両面に形成された配線パターンの両端部と、基板を貫通して設けられたスルーホールである貫通孔を順次接続して、基板に直接コイルを形成することが可能である。ただし、基板はあくまでも1枚のものを使用していて、その両面と板厚を利用した、単相巻きのコイルとなる。
【0006】
ところで、近時の情報収集機器や、通信機器等は超小型化が実現されつつあり、これらの機器に組み込まれる発振器、受信回路、電磁波検出センサ等に用いられるコイルやトランス類の小型化がより求められる。その一方で、これらの電子部品を備えたプリント基板を複数枚重ね合せて積層したプリント基板が多用される傾向にある。
【0007】
しかしながら、単純に[特許文献1]の技術を応用し、1枚もののプリント基板を積層プリント基板に置き換えたとしても、基本的には積層プリント基板の主面(表面)と裏面に配線パターンが形成されるのみである。これら配線パターンを接続するスルーホールも、積層プリント基板の表面から裏面に亘って貫通して設けられることになる。
【0008】
その結果、導体を1回しか巻けない単相巻きコイルしか形成できないこととなり、限られた面積で大きなインダクタンスが得られない。さらに、導体パターンを積層プリント基板の主面もしくは裏面に作るので、その分、実装すべき電子部品に対する実装面積が少くなってしまう。
【0009】
本発明は上記事情にもとづきなされたものであり、その目的とするところは、多相巻きのコイルを一体形成して、そのコイルの巻回密度を高め、面積あたりのインダクタンスの効率向上を得られる積層プリント基板を提供するものとする。
【0010】
さらに、プリント基板にコイルを一体形成し、コイルを取付けるための手間の軽減および部品点数削減と、電子部品を実装する外層面の面積を有効に利用可能な積層プリント基板を提供するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を満足するため本発明の積層プリント基板は、複数枚のプリント基板を重ね合わせ、主面と、この主面とは反対側の裏面およびプリント基板相互の合せ面に配線パターンを形成可能とした複数の層面を有していて、主面に形成される複数の並行な配線パターンと、裏面に形成される複数の並行な配線パターンとの、配線パターン相互の両端部を主面から裏面に亘って設けられる内壁面に導電層を備えるスルーホールである導通孔(以下、同じ)で連通することで外側コイルを構成し、主面と裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、この内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンとの、配線パターン相互の両端部を互いの内層面に亘って設けられる導通孔で連通することで内側コイルを構成し、外側コイルの一端部と内側コイルの一端部とを連通して1つのコイル構造となす。
【0012】
したがって、積層プリント基板に内側コイルと外側コイルが一体形成されるとともに、これら外側・内側コイルは連通路を介して連通され、多相巻線をなしたコイルが一体形成される。特にコイル部品を製作し実装する必要がなく、作業手間の軽減化を図れるとともに、導体を多相巻きの形態にすることによりコイルの巻回密度を高めることができる。
【0013】
また、積層プリント基板において、外側コイルとともに内側コイルも主面から裏面に亘って設けられる内壁面に導電層を備える導通孔で連通し、これら外側コイルの一端部と内側コイルの一端部を連通路で連通して1つのコイル構造となす。
【0014】
外側コイルと内側コイルのそれぞれに対応する導通孔を設ける必要がなく、全て主面から裏面に貫通する導通孔を設ければよい。得られるコイル構造は何ら変りがないうえに、作業手間の軽減を図れる。
【0015】
また、積層プリント基板において、主面と裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンの両端部相互を、互いの内層面相互に亘って設けられる導通孔で連通することで1つのコイル構造をなし、主面および裏面は電子部品の実装スペースおよび他の配線パターンの形成スペースとした。
【0016】
厚み方向における電子部品の実装部(電子部品と実装配線パターン)の投影面積の内層面に一体形成しながら、外層面に対して必要な電子部品を実装するためのスペースを確保し、外層面の面積を部品実装スペースとして有効に利用できる。
【0017】
また、積層プリント基板において、主面に形成される複数の並行な配線パターンと、裏面に形成される複数の並行な配線パターンの両端部相互を主面から裏面に亘って設けられる外側導通孔で連通することで外側コイルを構成し、主面と裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、前記内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンの両端部相互を内層面相互に亘って設けられる内側導通孔で連通することで内側コイルを構成した。
【0018】
互いに独立した外側コイルと内側コイルが形成され、いずれか一方を一次巻線とし、他方を二次巻線に割り当てることで、変圧器を構成できる。さらに、積層プリント基板の厚み方向の同一投影面積内に1次巻線と2次巻線のコイルを一体形成することにより、製作したコイルを取付けるための手間の軽減および部品点数削減を図れる。
【0019】
また、積層プリント基板において、主面に形成される複数の並行な配線パターンと、主面と裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンの両端部相互を主面から内層面に亘って設けられる第1の導通孔で連通することで第1のコイルを構成し、前記内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、裏面に形成される複数の並行な配線パターンの両端部相互を内層面から裏面に亘って設けられる第2の導通孔で連通することで第2のコイルを構成した。
【0020】
その厚み方向に互いに独立した複数のコイルを積層して一体形成でき、別途、コイルを製作する必要がなく、製作したコイルを取付けるための手間の軽減および部品点数削減を図れる。また、巻き回数および導体間隔を異ならせることにより、異なる特性のコイルを一体形成可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プリント基板に直接コイルを形成し、そのコイルの巻回密度を高めて、面積あたりのインダクタンスの効率向上を得られる。さらに、コイルを取付けるための手間の軽減および部品点数削減と、電子部品を実装する外層面を部品実装スペースとして有効利用が図れる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて説明する。
図1〜図3は第1の実施の形態を示し、図1は積層プリント基板Pの斜視図、図2(A)は外側コイル10Aを模式的に表した斜視図、図2(B)は内側コイル10Bを模式的に表した斜視図、図3(A)は第1層面aの概略斜視図、図3(B)は第2層面bの概略斜視図、図3(C)は第3層面cの概略斜視図である。
【0023】
図中1は積層プリント基板であり、ここでは3枚のプリント基板1A〜1Cが重ね合わされて一体形成されるが、より多くのプリント基板を重ね合わせてもよい。
最上段プリント基板1Aの上面を第1層面a、最上段プリント基板1Aと中段プリント基板1Bとの合せ面を第2層面b、中段プリント基板1Bと最下段プリント基板1Cとの合せ面を第3層面c、最下段プリント基板1Cの下面を第4層面dとする。
【0024】
したがって、積層プリント基板Pとして、第1層面aが主面であり、第4層面dが主面とは反対側の裏面となる。これら主面(第1層面a)と裏面(第4層面d)との間の第2層面bおよび第3層面cは、内層面となる。いずれの層面a〜dにおいても、配線パターンが形成可能に構成される。
【0025】
実際には、中段のプリント基板1Bはスルーホールが設けられるのみであり、配線パターンが全く形成されない単なる中間板材である。前記中間板材1Bを間にして、中間板材1Bの上面に最上段プリント基板1Aが重ね合わされ、下面に最下段プリント基板1Cが重ね合わされて一体となっている。
【0026】
最上段プリント基板1Aの上面である第1層面aと、下面である第2層面bに後述する配線パターンが形成される。そして、最下段プリント基板1Cの上面である第3層面cと下面である第4層面dに後述する配線パターンが形成される。さらに、全てのプリント基板1A〜1Cに、後述するスルーホールからなる導通孔が設けられる。
【0027】
図3(A)に示すように、第1層面aには、複数(ここでは3本)の外側上配線パターン1が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、1つのジャンピングパターン2が設けられる。
【0028】
前記外側上配線パターン1は、プリント基板1Aの長手方向に対して斜めに設けられ、この両端部は第1層面aから第2層面bに亘って設けられ外側コイル10Aを形成するスルーホールである外側導通孔3に接続される。すなわち、外側導通孔3は、プリント基板1Aの幅方向に対して2列で、長手方向に沿って所定の絶縁間隔を存して設けられる。
【0029】
前記外側上配線パターン1の形状から、最も右側部で一方(手前)側の外側導通孔3e(図1,2,3参照)には外側上配線パターン1が設けられておらず、代って前記ジャンピングパターン2の一端部が接続される。さらに、最も左側部で他方(奥)側の外側導通孔3fには、ジャンピングパターン2の他端部が接続される。
【0030】
前記ジャンピングパターン2は、一方側の外側導通孔3eから最も右側の外側上配線パターン1と並行して設けられ、プリント基板1Aの幅方向端縁の近傍部位で折曲形成される。そして、他方側の外側導通孔3とプリント基板1Aの長手方向端縁との間に沿って延長され、前記最も左側部にある他方側の外側導通孔3fに接続される。
【0031】
図3(B)に示すように、第2層面bには複数(ここでは3本)の内側上配線パターン4が互いに所定の絶縁間隔を存して設けられるとともに、第2層面bから第3層面cに亘って内側コイル10Bを形成するスルーホールである内側導通孔5および外側導通孔3が設けられる。
前記外側導通孔3(3e,3fを含む、以下同)は、先に図3(A)で説明した外側導通孔3と連通する位置に設けられる。したがって、ここまでで外側導通孔3は第1層面aから第2層面bを介して第3層面cまで貫通されることになる。
【0032】
内側上配線パターン4は、プリント基板1Bの長手方向に対し斜めに設けられる。この傾き方向は外側上配線パターン1と同一であるが、傾き角度は外側上配線パターン1よりも大きく形成される。
前記内側上配線パターン4の傾きは、コイルの特性(たとえば、インダクタンスおよび巻き密度等)にもとづき、配線パターン(導体)の所定の絶縁間隔を保ちながら任意に形成してよい。
【0033】
これら内側上配線パターン4の両端部は、第2層面bから第3層面cに亘って設けられるスルーホールである前記内側導通孔5に接続される。すなわち、前記内側導通孔5は、プリント基板1Bの幅方向に対向して2列で、長手方向に沿って所定の絶縁間隔を存して設けられる。
【0034】
外側コイル10Aを形成する外側上配線パターン1と内側コイル10Bを形成する内側上配線パターン4とも、プリント基板1A,1Bの幅方向の中心位置から幅方向(図1の手前から奥側方向)に沿って左右均等に振り分けられた長さを有する。当然ながら、内側上配線パターン4の全長である内側導通孔5の相互間隔は、外側上配線パターン1の全長である外側導通孔3の相互間隔よりも短く形成されている。
【0035】
図3(C)に示すように、第3層面cには複数(ここでは2本)の内側下配線パターン6が互いに所定の絶縁間隔を存して設けられるともに、1つのガイドパターン7が形成される。さらに、第3層面cから第4層面dに亘ってスルーホールである複数の外側導通孔3および1つの内側導通孔5fが設けられる。
【0036】
前記外側導通孔3は、先に図3(A)および(B)で説明した外側導通孔3と連通する位置に設けられている。したがって、外側導通孔3は、第1層面aから第2層面bと第3層面cを介して第4層面dまで貫通する。
なお、本実施形態における前記最も右側部で一方側の外側導通孔3eのみは、第1層面aから第2層面bを介して第3層面cまでしか設けられておらず、第4層面dには貫通しない。
【0037】
第3層面cにおける前記内側下配線パターン6は、第2層面bの内側上配線パターン4とは逆の斜め方向に設けられる。この両端部は第2層面bから第3層面cに亘って設けられる前記内側導通孔5に接続される。
先に説明したように、内側導通孔5は内側上配線パターン4の両端部に接続されるが、最も左側部で一方側の内側導通孔5fのみ、第3層面cから第4層面dに亘って設けられる。換言すれば、最も左側部で一方側の内側導通孔5fを除く他の内側導通孔5は、第2層面bから第3層面cまでしか設けられておらず、ここから上下端部は閉塞される。
【0038】
第3層面cに設けられる前記ガイドパターン7の一端部は、第1層面aから第2層面bを介して第3層面c止まりに設けられた最も右側部で一方側の外側導通孔3に接続し、他端部は、最も右側部で他方側の内側導通孔5に接続する。したがって、ガイドパターン7は外側導通孔3eと内側導通孔5に亘って設けられる。
【0039】
さらに図3(C)に示す第4層面dには、破線で示すように複数の外側下配線パターン8が互いに所定の絶縁間隔を存して設けられるとともに、第1の端子パターン9aと第2の端子パターン9bが形成される。
前記外側下配線パターン8は、第1層面aに形成される外側上配線パターン1とは逆の方向に傾斜していて、それぞれの両端部は前記外側導通孔3に接続される。
【0040】
前記第1の端子パターン9aの一端部は、第3層面cから第4層面dに亘って設けられる最も左側部で一方側の前記内側導通孔5fに接続され、プリント基板1Cの長手方向に設けられる。
形成されるコイルの巻き開始部および終端部に設けられる前記第2の端子パターン9bの一端部は、第1層面aから第4層面dまで貫通して設けられる、最も右側部で他方側の外側導通孔3に接続され、前記第1の端子パターン9aとは反対側のプリント基板1C長手方向に設けられている。
【0041】
なお、これ等の端子パターン9a,9bの配線方向は、図示しない電子部品の実装配線パターンに応じて適宜変更して配線されるものであり、上記形状に限定されない。
このようにして第1層面a〜第4層面dに亘って複数種の配線パターンが形成されるとともに、外側導通孔3および内側導通孔5が設けられている。これら3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合せることにより、図2(A)に示す外側コイル10Aと、図2(B)に示す内側コイル10Bが形成される。
【0042】
はじめに、図2(B)の内側コイル10Bから説明すると、第4層面dに形成される第1の端子パターン9aから内側導通孔5f、5で第2層面bに上がり、ここに形成される最も左側部の内側上配線パターン4に連通する。
前記内側上配線パターン4から他方側の内側導通孔5で第3層面cに下がって、内側下配線パターン6に連通し、この内側下配線パターン6から一方側の内側導通孔5で第2層面bに上がって、内側上配線パターン4に連通する。
【0043】
さらに、内側上配線パターン4から他方側の内側導通孔5で第3層面cに下がって、内側下配線パターン6に連通し、一方側の内側導通孔5で第2層面bに上がって、内側上配線パターン4に連通する。以下、この構成を順次繰り返すことで、角部を有するが略螺旋状に巻回される内側コイル10Bが形成される。
【0044】
最終的に内側コイル10Bは、最も右側部の他方側の内側導通孔5で第3層面cに下がって、ここに形成されるガイドパターン7に接続される。前記ガイドパターン7は、一方側の外側導通孔3eを介して第1層面aに形成されるジャンピングパターン2に連通し、さらに図2(A)に示す外側コイル10Aに接続される。
すなわち、ガイドパターン7と外側導通孔3およびジャンピングパターン2は、内側コイル10Bと外側コイル10Aとを連通する連通路Rを構成する。
【0045】
図2(A)に示すようにジャンピングパターン2は、最も右側部の外側上配線パターン1と並行し、かつ他方側の外側導通孔3とプリント基板1Aの長手方向に沿う端縁との間に沿って設けられ、最も左側部で他端側の外側導通孔3fに連通する。
この外側導通孔3fで第1層面aから第2層面bと第3層面cを介して第4層面dに下がり、ここに形成される最も左側部の外側下配線パターン8に連通する。前記外側下配線パターン8から一方側の外側導通孔3で第1層面aに上がり、ここに形成される外側上配線パターン1に連通する。
【0046】
そして、外側上配線パターン1から他方側の外側導通孔3で第4層面dまで下がり、外側下配線パターン8に連通する。前記外側下配線パターン8から一方側の外側導通孔3で第1層面aに上がり、外側上配線パターン1に連通して他方側の外側導通孔3で第4層面dに下がる。
【0047】
以下、前記状態を複数回繰り返すことで、角部を有するが略螺旋状の外側コイル10Aが形成される。最終的に外側コイル10Aは、最も右側部の他方側外側導通孔3で第4層面dに下がり、ここに形成される第2の端子パターン9bに接続される。
図1に示すように、積層プリント基板Pに、互いに内側コイル10Bと外側コイル10Aが一体形成されるとともに、これら外側・内側コイル10A、10Bは連通路Rを介して連通され、多相巻線をなしたコイルKが一体形成される。
【0048】
前記積層プリント基板Pに電気的に接続されたコイルKを一体形成することで、特にコイル部品を製作し実装する必要がなく、作業手間の軽減化を図れるとともに、導体を2相巻きの形態にすることによりコイルKの巻回密度を高めることができ、面積当たりのインダクタンス効率が向上する。
また、本実施形態では、一体形成コイルKの配線パターン1,4,6,8の長手方向ピッチを密着させ巻回数を増やすのに適している。
【0049】
図4および図5(A)(B)は、第1の実施の形態における変形例を示していて、図4は積層プリント基板Pの斜視図、図5(A)は外側コイル10Aを模式的に表した斜視図、図5(B)は内側コイル10Bを模式的に表した斜視図である。
積層プリント基板P自体は先に説明したように、3枚のプリント基板1A,1B,1Cを重ね合わせて構成され、最上段プリント基板1Aの上面を第1層面a、最上段プリント基板1Aと中段プリント基板1Bとの合せ面を第2層面b、中段プリント基板1Bと最下段プリント基板1Cとの合せ面を第3層面c、最下段プリント基板1Cの下面を第4層面dと呼ぶことは、変りがない。
【0050】
したがって、積層プリント基板Pとして、第1層面aが主面であり、第4層面dが主面とは反対側の裏面となる。これら主面(第1層面a)と裏面(第4層面d)との間の第2層面bおよび第3層面cは、内層面となる。いずれの層面a〜dにおいても、配線パターンが形成可能に構成される。
【0051】
第1層面aに外側上配線パターン1およびジャンピングパターン2が形成され、第2層面bに内側上配線パターン4が形成される。第3層面cに内側下配線パターン6が形成され、第4層面dに外側下配線パターン8と、第1の端子パターン9aおよび第2の端子パターン9bが形成されることも、変りがない。
【0052】
ここでは全ての外側導通孔3および内側導通孔5が、第1層面aから第2層面bと第3層面cを介して第4層面dまで貫通して設けられることが特徴である。すなわち、先に説明した実施の形態では、一部の外側導通孔3および全ての内側導通孔5の上端および/もしくは下端が閉塞状態にある。
【0053】
そのため、3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合わせる前に、必要な部位に外側コイル10Aを形成する外側導通孔3もしくは、内側コイル10Bを形成する内側導通孔5に対するスルーホール加工を行わなければならない。この加工は第1層面aから第4層面dに亘って貫通する外側導通孔3に対する加工とは別に行うこととなるので、作業手間がかかってしまう。
【0054】
これに対して、図4および図5(B)に示すように、ガイドパターン7とジャンピングパターン2に接続する外側導通孔3を含めて、全ての内側導通孔5は第1層面aから第2層面bおよび第3層面cを介して第4層面dまでに亘り、3枚のプリント基板1A〜1Cを貫通するスルーホールとなる。
【0055】
換言すれば、3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合わせて積層プリント基板Pを構成した後に、全ての外側導通孔3と内側導通孔5に対するスルーホール加工を行うことができる。先に説明した実施の形態のように、1つの外側導通孔3と全ての内側導通孔5に対する加工を異ならせる必要がなく、作業手間の軽減化を図れる。
【0056】
完成した外側コイル10Aは、先に図2(A)で説明した外側コイル10A構造と全く同一であり、完成した内側コイル10B自体は、先に図2(B)で説明した内側コイル形状10Bと全く同一である。積層プリント基板Pに、電気的に接続された外側コイル10Aと内側コイル10Bおよび連通路RからなるコイルKが一体形成されることは、変りがない。
したがって、図4に示すコイルK構造としては、先に図1で説明したコイルK構造と何ら変りがなく、全く同一の効果を得られる。さらに、プリント基板の積層数を3層より増やすことにより、一体形成されるコイルKの巻き相数を増やすことが可能となる。
【0057】
図6は第2の実施の形態を示す積層プリント基板Pの斜視図、図7(A)は第1層面aの概略斜視図、図7(B)は第2層面bの概略斜視図、図7(C)は第3層面cの概略斜視図である。
3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合わせて積層プリント基板Pを構成し、最上段プリント基板1Aの上面を第1層面a、最上段プリント基板1Aと中段プリント基板1Bとの合せ面を第2層面b、中段プリント基板1Bと最下段プリント基板1Cとの合せ面を第3層面c、最下段プリント基板1Cの下面を第4層面dとする、ことは変りがない。
【0058】
したがって、積層プリント基板Pとして、第1層面aが主面であり、第4層面dが主面とは反対側の裏面となる。これら主面(第1層面a)と裏面(第4層面d)との間の第2層面bおよび第3層面cは、内層面となる。いずれの層面a〜dにおいても、配線パターンが形成可能に構成される。
【0059】
図7(A)に示すように、第1層面aには、たとえば半導体素子等の電子部品Dが実装され、この電子部品Dに接続する配線パターン(図示しない)と、コイルの端子パターン12a,12bが形成されている。
図7(B)に示すように、第2層面bには、複数(ここは3本)の上配線パターン11が所定の絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、前記端子パターン12a、12bに連通するスルーホールである導通孔13が、第1層目aから第2層目bに亘って形成されている。
【0060】
前記上配線パターン11は、プリント基板1Bの長手方向に対して斜めに設けられ、この両端部は第2層面bから第3層面cに亘って設けられるスルーホールである導通孔13に接続される。すなわち、導通孔13はプリント基板1Bの幅方向に対向して2列で、長手方向に沿って所定の絶縁間隔を存して設けられる。
【0061】
前記上配線パターン11の形状から、最も左側部で一方(手前)側の導通孔13には上配線パターン11が接続されておらず、第1の端子パターン12aに連通するコイルの巻き線端部(始点あるいは終点)が設けられている。
また、最も右側部で他方(奥)側の導通孔13にも上配線パターン11が接続されておらず、第2の端子パターン12bに連通するコイルの巻き線端部(終点あるいは始点)が設けられている。
【0062】
図7(C)に示すように、第3層面cには複数(ここでは4本)の下配線パターン14が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられる。なお説明すると、最も左側部の下配線パターン14は、最も左側部で第2層面bの一方側の導通孔13を介して前記第1層面aの第1の端子パターン12aと連通する。
また、最も右側部の下配線パターン14は、最も右側部で第2層面bの他方側の導通孔13を介して前記第1層面aの第2の端子パターン12bと連通する。
【0063】
このようにして、内層面である第2層面bと第3層面cに、上下配線パターン11,14と導通孔13を備え、3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合わせて積層プリント基板Pを構成することにより、図6に示すようなコイルKa構造を得られる。
すなわち、第1層面aに形成される第1の端子パターン12aから一方側の導通孔13を介して第3層面cに下がり、ここに形成される下配線パターン14に接続される。前記下配線パターン14から他方側の導通孔13で第2層面bに上がり、ここに形成される上配線パターン11に連通する。
【0064】
さらに、上配線パターン11から一方側の導通孔13で第3層面cに下がり、下配線パターン14に連通し、他方側の導通孔13で第2層面bに上がり上配線パターン11に連通する。
以下、この構成を順次繰り返すことにより、角部を有するが略螺旋状のコイルKaが形成される。最終的にコイルKaは他方側の導通孔13を介して第1層面aに上がり、第2の端子パターン12bに接続される。
【0065】
結局、この実施の形態では、内層面である第2層面bと第3層面cのみを使用したコイルKaが一体に得られる。外層面である第1層面aには導通孔13と端子パターン12a,12bを設けたが、第4層面dには配線パターン11,14と導通孔13が設けられていない。
【0066】
なお、端子パターン12a、12bを第3層面dに形成し、導通孔13を介して連通可能に形成してもよい。
換言すれば、電気的に接続されたコイルKaを積層プリント基板Pの厚み方向における電子部品Dの実装部(電子部品Dと実装配線パターン)の投影面積の内層面に一体形成しながら、外層面である第1層面aと第4層面dに対して必要な電子部品Dを実装するためのスペースを確保し、外層面の面積を部品実装スペースとして有効に利用できる。
さらに、そのコイルKaの巻回密度を高め、面積あたりのインダクタンスの効率向上を図る場合は、新たに第4層面dに別のプリント基板を積層して、上述したように配線パターンを形成すればよい。
【0067】
図8ないし図10は第3の実施の形態を示し、図8は積層プリント基板Pの斜視図、図9(A)は外側コイル30Aを模式的に表した斜視図、図9(B)は内側コイル30Bを模式的に表した斜視図、図10(A)は第1層面aの概略斜視図、図10(B)は第2層面bの概略斜視図、図10(C)は第3層面cの概略斜視図である。
【0068】
3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合せて積層プリント基板Pを構成し、最上段プリント基板1A上面を第1層面a、最上段プリント基板1Aと中段プリント基板1Bとの合せ面を第2層面b、中段プリント基板1Bと最下段プリント基板1Cとの合せ面を第3層面c、最下段プリント基板1Cの下面を第4層面dとすることは、変りがない。
【0069】
したがって、積層プリント基板Pとして、第1層面aが主面であり、第4層面dが主面とは反対側の裏面となる。これら主面(第1層面a)と裏面(第4層面d)との間の第2層面bおよび第3層面cは、内層面となる。いずれの層面a〜dにおいても、配線パターンが形成可能に構成される。
【0070】
図10(A)に示すように、第1層面aには、複数(ここでは2本)の外側コイル30Aを形成する外側上配線パターン22が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、1つの第1の外側端子パターン23aおよび第2の外側端子パターン23bが設けられる。
【0071】
前記外側上配線パターン22は、プリント基板1Aの長手方向に対して斜めに設けられ、この両端部は第1層面aから第2層面bに亘って設けられる外側コイル30Aを形成するスルーホールである外側導通孔24に接続される。すなわち、外側導通孔24は、プリント基板1Aの幅方向に対向して2列で、プリント基板1Aの長手方向に沿って所定の絶縁間隔を存して設けられる。
【0072】
前記外側上配線パターン22の形状から、最も左側部で一方(手前)側の外側導通孔24には外側上配線パターン22は設けられておらず、前記第1の外側端子パターン23aが接続される。第1の外側端子パターン23aは、最も左側部の外側上配線パターン22と略並行して形成されるとともに、他方(奥)側の外側導通孔24の近傍で折曲形成され、プリント基板1Aの長手方向に設けられる。
【0073】
最も右側部で他方側の外側導通孔24には、前記第2の外側端子パターン23bが接続される。第2の外側端子パターン23bは、最も右側部の外側上配線パターン22と略並行するとともに、一方側の外側導通孔24の近傍部位で折曲形成され、前記第1の外側端子パターン23aとは反対側のプリント基板1Aの長手方向に設けられる。
【0074】
これ等の端子パターン23a,23bの配線方向は、図示しない電子部品の実装配線パターン(図示しない)に応じて適宜変更して配線されるものであり、上記形状に限定されない。
図10(B)に示すように、第2層面bには複数(ここでは3本)の内側コイル30Bを形成する内側上配線パターン25が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、1つの第1の内側端子パターン26aおよび第2の内側端子パターン26bが設けられる。
【0075】
なお、第1および第2の内側端子パターン23a,23bは、外側導通孔24を介して、第1層面aあるいは第3層面dに設けてもよい(たとえば、図10(C)の26aa、26bb参照)。
これらの端子パターン23a,23bの配線方向は、第1層面aあるいは第3層面dに実装される図示しない電子部品の実装配線パターン(図示しない)に応じて適宜変更して配線されるものであり、上記形状に限定されない。
【0076】
さらに、第2層bから第3層cに亘って、複数の内側コイル30Bを形成するスルーホールである内側導通孔27および複数の外側導通孔24が設けられる。前記内側導通孔27は、プリント基板1Bの幅方向に対向して2列で、長手方向に沿って所定の絶縁間隔を存して設けられる。
【0077】
前記外側導通孔24は、先に図10(A)で説明した外側導通孔24と連通する位置に設けられていて、したがって、ここまでで外側導通孔24は第1層面aから第2層面bを介して第3層面cに亘って設けられることとになる。
前記内側上配線パターン25は、プリント基板1Bの長手方向に対して斜めに設けられ、この傾き方向は前記外側上配線パターン22と同一であるが、傾き角度は外側上配線パターン22よりも大きく形成される。内側上配線パターン25の両端部は、前記内側導通孔27に接続される。
【0078】
内側上配線パターン25の形状から、最も左側部で一方側の内側導通孔27には内側上配線パターン25が設けられておらず、代って前記第1の内側端子パターン26aが接続される。この第1の内側端子パターン26aはプリント基板1Bの長手方向に設けられる。
【0079】
最も右側部で他方側の内側導通孔27にも内側上配線パターン25が設けられておらず、代って前記第2の内側端子パターン26bが接続されている。この第2の内側端子パターン26bは、第1の内側端子パターン26aとは反対側のプリント基板1B長手方向に設けられる。
【0080】
外側上配線パターン22と内側上配線パターン25とも、プリント基板1A,1Bの幅方向の中心位置から幅方向に沿って左右に均等に振り分けられた長さを有する。当然ながら、内側上配線パターン25の全長である内側導通孔27の相互間隔は、外側上配線パターン22の全長である外側導通孔24の相互間隔よりも短く形成されている。
【0081】
図10(C)に示すように、第3層面cには複数の内側下配線パターン28が互いに所定絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、第3層面cから第4層面dに亘ってスルーホールである複数の外側導通孔24が設けられる。
前記外側導通孔24は、先に図10(A)および(B)で説明した外側導通孔24と連通する位置に設けられる。したがって、全ての外側導通孔24は第1層面aから第2層面bと第3層面cを介して第4層面dまで貫通して設けられることになる。
【0082】
第3層面cにおける前記内側下配線パターン28は、第2層面bに設けられる内側上配線パターン25とは逆の斜め方向に設けられる。この両端部は内側上配線パターン25の両端部に第2層面bから第3層面cに亘って設けられる前記内側導通孔27に接続される。
上述したように、全ての外側導通孔24は第1層面aから第4層面dに亘って設けられるのに対して、全ての内側導通孔27は、第2層面bから第3層面cまでしか設けられておらず、ここから上下端部は閉塞状態となっている。
【0083】
さらに、図10(C)に示す第4層面dには、破線で示すように複数の外側下配線パターン29が形成される。前記外側下配線パターン29は、第1層面aに形成される外側上配線パターン22とは逆の斜め方向に設けられていて、それぞれの両端部は前記外側導通孔24に接続される。
【0084】
このようにして第1層面a〜第4層面dのそれぞれに複数種の配線パターンが形成されるとともに、内外側導通孔27,24が設けられている。これら3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合せて積層プリント基板Pを構成することにより、図9(A)に示す外側コイル30Aと、図9(B)に示す内側コイル30Bが一体形成される。
【0085】
はじめに、図9(A)の外側コイル30Aから説明すると、第1層面aに形成される第1の外側端子パターン23aから外側導通孔24で第4層面dに下がり、ここに形成される最も左側部の外側下配線パターン29に連通する。
前記外側下配線パターン29から他方側の外側導通孔24で第1層面aに上がって、外側上配線パターン22に連通し、一方側の外側導通孔24で第4層面dに下がって外側下配線パターン29に連通し、他方側の外側導通孔24で第1層面aの外側上配線パターン22に連通する。
【0086】
以下、この構成を順次繰り返すことで、角部を有するが略螺旋状に巻回される外側コイル30Aが形成される。最終的に、前記外側コイル30Aは最も右側部の他方側外側導通孔24で第1層面aに上がり、第2の外側端子パターン23bに接続される。このようにして外側コイル30Aは、第1層面aと第4層面dを用いて積層プリント基板Pに独立して一体形成される。
【0087】
つぎに、図9(B)の内側コイル30Bについて説明すると、第2層面bに形成される第1の内側端子パターン26aから内側導通孔27で第3層面cに下がり、最も左側部の内側下配線パターン28に連通する。前記内側下配線パターン28から他方側の内側導通孔27で第2層面bに上がり、内側上配線パターン25に連通する。
【0088】
前記内側上配線パターン25から一方側の内側導通孔27で第3層面cに下がり、内側下配線パターン28に連通する。前記内側下配線パターン28から他方側の内側導通孔27で第2層面bに上がり、内側上配線パターン25に連通する。以下、この構成を順次繰り返すことで、角部を有するが略螺旋状に巻回される内側コイル30Bが形成される。
【0089】
最終的に内側コイル30Bは、最も右側部の他方側内側導通孔27を介して第2の内側端子パターン26bに接続される。すなわち、内側コイル30bは第2層面Bと第3層面Cを用いて積層プリント基板Pに独立して一体形成される。
【0090】
図8に示すように、積層プリント基板Pに、互いに独立して電気的に接続された外側コイル30Aと内側コイル30Bが形成される。したがって、いずれか一方を一次巻線とし、他方を二次巻線に割り当てることで、変圧器(トランス)を構成することができる。
また、積層プリント基板Pの厚み方向の同一投影面積内に1次巻線と2次巻線のコイルを一体形成することにより、製作したコイルを取付けるための手間の軽減および部品点数削減を図れる。
【0091】
図11〜図13は第4の実施の形態を示していて、図11は積層プリント基板Pの斜視図、図12(A)は第1のコイル40Aを模式的に表した斜視図、図12(B)は第2のコイル40Bを模式的に表した斜視図、図13(A)は第1層面aの概略斜視図、図13(B)は第2層面bの概略斜視図、図13(C)は第3層面cの概略斜視図である。
【0092】
3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合せて積層プリント基板Pを構成し、最上段プリント基板1A上面を第1層面a、最上段プリント基板1Aと中段プリント基板1Bとの合せ面を第2層面b、中段プリント基板1Bと最下段プリント基板1Cとの合せ面を第3層面c、最下段プリント基板1Cの下面を第4層面dとすることは、変りがない。
【0093】
したがって、積層プリント基板Pとして、第1層面aが主面であり、第4層面dが主面とは反対側の裏面となる。これら主面(第1層面a)と裏面(第4層面d)との間の第2層面bおよび第3層面cは、内層面となる。いずれの層面a〜dにおいても、配線パターンが形成可能に構成される。
【0094】
図13(A)に示すように、第1層面aには複数(ここでは3本)の第1上配線パターン31が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、1つの上A端子パターン32aおよび上B端子パターン32bが設けられる。
前記第1上配線パターン31は、プリント基板1Aの長手方向に対して斜めに設けられ、この両端部は第1層面aから第2層面bに亘って設けられるスルーホールである第1導通孔33に接続される。したがって、第1導通孔33は、プリント基板1Aの幅方向に2列で、長手方向に沿って所定の絶縁間隔を存して設けられる。
【0095】
前記第1上配線パターン31の形状から、最も左側部で一方(手前)側の第1導通孔33には第1上配線パターン31は設けられておらず、代って前記上A端子パターン32aが接続される。この上A端子パターン32aは、第1導通孔33からプリント基板1Aの長手方向に設けられる。
【0096】
また、最も右側部で他方側の第1導通孔33にも第1上配線パターン31は設けられておらず、代って上B端子パターン32bが接続される。この上B端子パターン32bは、前記上A端子パターン32aとは反対側のプリント基板1A長手方向に設けられる。
なお、これらの端子パターン32a,32bの配線方向は、図示しない電子部品の実装配線パターン(図示しない)に応じて適宜変更して配線されるものであり、上記形状に限定されない。
【0097】
図13(B)に示すように、第2層面bには複数(ここでは4本)の第1下配線パターン34が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられる。これら第1下配線パターン34は、前記第1上配線パターン31とは逆の斜め方向に設けられていて、それぞれの両端部は第1層面aから第2層面bに亘って設けられる前記第1導通孔33に接続される。
【0098】
前記第1下配線パターン34の形状から、最も左側部に形成される第1下配線パターン34の一方(手前)側の端部は、第1導通孔33を介して前記上A端子パターン32aに連通する。また、最も右側部に形成される第1下配線パターン34の他方(奥)側の端部は、第1導通孔33を介して前記上b端子パターン32bに連通する。
【0099】
図13(C)に示すように、第3層面cには複数(ここでは4本)の第2上配線パターン35が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、第3層面cから第4層面dに亘ってスルーホールである複数の第2導通孔36が設けられる。
第2上配線パターン35は、第2層面bの第1下配線パターン34とは逆の斜め方向に設けられていて、それぞれの両端部は、前記第2導通孔36に接続される。したがって、第2導通孔36はプリント基板1Cの幅方向に沿って2列で、長手方向に所定の絶縁間隔を存して設けられる。
【0100】
さらに図13(C)に示す第4層面dには、破線で示すように複数(ここでは4本)の第2下配線パターン37が互いに所定の絶縁間隔を存して並行に設けられるとともに、1つの下A端子パターン38aおよび下B端子パターン38bが設けられる。前記第2下配線パターン37は、前記第2上配線パターン35とは逆の斜め方向に設けられ、両端部は前記第2導通孔36に接続される。
【0101】
前記下A端子パターン38aは、最も左側部の他端側第2導通孔36に接続され、プリント基板1Cの長手方向の端縁まで設けられる。そして、下A端子パターン38aは、第2導通孔36を介して最も左側部の第2上配線パターン35と連通する。
前記下B端子パターン38bは、最も右側部の他端側第2導通孔36に接続され、下A端子パターン38aとは逆方向のプリント基板1Cの端縁に亘って設けられる。そして、下B端子パターン38bは、第2導通孔36を介して最も右側部の第2上配線パターン35と連通する。
【0102】
このようにして第1層面a〜第4層面dのそれぞれに、複数種の配線パターンが形成されるとともに、第1導通孔33と第2導通孔36が設けられる。3枚のプリント基板1A〜1Cを重ね合せて積層プリント基板Pを構成することにより、図12(A)に示す第1のコイル40Aと、図12(B)に示す第2のコイル40Bが形成される。
【0103】
はじめに、図12(A)の第1のコイル40Aから説明すると、第1層面aに形成される上A端子パターン32aから第1導通孔33で第2層面bに下がり、ここに形成される最も左側部の第1下配線パターン34に連通する。さらに、第1下配線パターン34から他方側の第1導通孔33で第1層面aに上がって、第1上配線パターン31に連通する。
【0104】
前記第1上配線パターン31から一方側の第1導通孔33で第2層面bに下がり、第1下配線パターン34に連通し、他方側の第1導通孔33で第1層面aに上がって第1上配線パターン31に連通する。以下、順次この構成を繰り返すことで、角部を有するが略螺旋状に巻回される第1のコイル40Aが形成される。
【0105】
最終的に前記第1のコイル40Aは、最も右側部の他方側第1導通孔33から第1層面aに上がって上B端子パターン32bに接続される。すなわち、第1のコイル40Aは、第1層面aと第2層面bを用いて積層プリント基板Pに独立して一体形成される。
【0106】
つぎに、図12(B)の第2のコイル40Bについて説明すると、第4層面dに形成される下A端子パターン38aから第2導通孔36で第3層面cに上がり、最も左側部の第2上配線パターン35に連通する。さらに、前記第2上配線パターン35から他方側の第2導通孔36で第4層面dに下がって、第2下配線パターン37に連通する。
【0107】
この第2下配線パターン37から一方側の第2導通孔36で第3層面cに上がり、第2上配線パターン35に連通し、前記第2上配線パターン35から他方側の第2導通孔36で第4層面dに下り、第2下配線パターン37に連通する。以下、この構成を順次繰り返すことで、角部を有するが略螺旋状に巻回される第2コイル40Bが形成される。
【0108】
最終的に第2のコイル40Bは、最も右側部の一方側第2導通孔36から第4層面dに下がって下B端子パターン38bに接続される。すなわち、第2のコイル40Bは第3層面cと第4層面dを用いて積層プリント基板Pに独立して一体形成される。
図13に示すように、積層プリント基板Pに互いに独立して電気的に接続された複数(第1、第2)のコイル40A,40Bを一体形成できる。つまり、第1のコイル40Aと第2のコイル40Bは、いずれか一方の占有面積が前記積層プリント基板Pの厚み方向に投影される投影面積範囲内で積層して形成される。
【0109】
さらに、同一配線パターンからなる等インダクタンス特性のコイルを積層して形成可能であり、巻き回数および導体(並行な配線パターン)間隔を異ならせることにより、異なるインダクタンス特性のコイルを形成可能である。したがって、別途、コイルを製作する必要がなく、製作したコイルを取付けるための手間の軽減および部品点数の削減を図れる。
【0110】
なお、以上説明した実施の形態における配線パターンの本数および配線パターンの傾き角度と方向は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定できる。すなわち、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係る、積層プリント基板の斜視図。
【図2】同実施の形態に係る、外側コイルと、内側コイルを模式的に表した斜視図。
【図3】同実施の形態に係る、第1層面の概略斜視図と、第2層面の概略斜視図と、第3層面の概略斜視図。
【図4】同実施の形態の変形例に係る、積層プリント基板の斜視図。
【図5】同変形例に係る、外側コイルと、内側コイルを模式的に表した斜視図。
【図6】本発明における第2の実施の形態に係る、積層プリント基板の斜視図。
【図7】同実施の形態に係る、第1層面の概略斜視図と、第2層面の概略斜視図と、第3層面の概略斜視図。
【図8】本発明における第3の実施の形態に係る、積層プリント基板の斜視図。
【図9】同実施の形態に係る、外側コイルと、内側コイルを模式的に表した斜視図。
【図10】同実施の形態に係る、第1層面の概略斜視図と、第2層面の概略斜視図と、第3層面の概略斜視図。
【図11】本発明における第4の実施の形態に係る、積層プリント基板の斜視図。
【図12】同実施の形態に係る、第1のコイルと、第2のコイルを模式的に表した斜視図。
【図13】同実施の形態に係る、第1層面の概略斜視図と、第2層面の概略斜視図と、第3層面の概略斜視図。
【符号の説明】
【0112】
1A,1B,1C…プリント基板、a…第1層面(主面)、d…第4層面(裏面)、b…第2層面(内層面)、c…第3層面(内層面)、P…積層プリント基板、1…外側上配線パターン、3…外側導通孔(スルーホール)、4…内側上配線パターン、5…内側導通孔(スルーホール)、6…内側下配線パターン、8…外側下配線パターン、10A…外側コイル、10B…内側コイル、R…連通路、K…コイル、11…上配線パターン、12a,12b…端子パターン、13…導通孔(スルーホール)、14…下配線パターン、Ka…コイル、D…半導体素子(電子部品)、22…外側上配線パターン、24…外側導通孔(スルーホール)、25…内側上配線パターン、27…内側導通孔(スルーホール)、28…内側下配線パターン、29…外側下配線パターン、30A…外側コイル、30B…内側コイル、31…第1上配線パターン、33…第1導通孔、34…第1下配線パターン、35…第2上配線パターン、36…第2導通孔(スルーホール)、37…第2下配線パターン、40A…第1のコイル、40B…第2のコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のプリント基板を重ね合わせ、主面と、この主面とは反対側の裏面およびプリント基板相互の合せ面に配線パターンを形成可能とした複数の層面を有する積層プリント基板であって、
前記主面に形成される複数の並行な配線パターンと、前記裏面に形成される複数の並行な配線パターンと、これら配線パターン相互の両端部を主面から裏面に亘って設けられる外側導通孔で連通することで外側コイルを構成し、
主面と裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、前記内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、これら配線パターン相互の両端部を内側導通孔で連通することで内側コイルを構成し、
前記外側コイルの一端部と内側コイルの一端部とを連通して、1つのコイル構造となすことを特徴とする積層プリント基板。
【請求項2】
前記内側導通孔を、互いの前記内層面に亘って形成したことを特徴とする請求項1記載の積層プリント基板。
【請求項3】
前記内側導通孔を、前記主面から前記裏面に亘って貫通して形成したことを特徴とする請求項1記載の積層プリント基板。
【請求項4】
前記内側コイルは、前記主面と前記裏面の外層面に亘って形成される前記外側コイルの占有面積が前記プリント基板の厚み方向に投影された投影面積範囲内で、前記積層プリント基板の内層面に形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の積層プリント基板。
【請求項5】
前記積層プリント基板の外層面に亘って形成する前記外側コイルと前記内層面に形成する前記内側コイルが連通して、2相巻きコイル構造をなすことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の積層プリント基板。
【請求項6】
複数枚のプリント基板を重ね合わせ、主面と、この主面とは反対側の裏面およびプリント基板相互の合せ面に配線パターンを形成可能とした複数の層面を有する積層プリント基板であって、
前記主面と前記裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、前記内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、これら配線パターンの両端部相互を、互いの内層面相互に亘って設けられる導通孔で連通することで1つのコイル構造をなし、
前記主面および前記裏面は、電子部品の実装スペースおよび他の配線パターンの形成スペースとしたことを特徴とする積層プリント基板。
【請求項7】
前記プリント基板の内層面に形成する前記コイルの複数の並行な配線パターンの両端部に導通孔を介して、前記積層プリント基板の前記主面あるいは前記裏面に前記コイルの端子パターンを形成することを特徴とする請求項6記載の積層プリント基板。
【請求項8】
複数枚のプリント基板を重ね合わせ、主面と、この主面とは反対側の裏面およびプリント基板相互の合せ面に配線パターンを形成可能とした複数の層面を有する積層プリント基板であって、
前記主面に形成される複数の並行な配線パターンと、前記裏面に形成される複数の並行な配線パターンと、これら配線パターン相互の両端部を主面から裏面に亘って設けられる外側導通孔で連通することで外側コイルを構成し、
主面と裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、前記内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、これら配線パターン相互の両端部を互いの内層面相互に亘って設けられる内側導通孔で連通することで内側コイルを構成し、前記外側コイルと前記内側コイルが互いに独立していることを特徴とする積層プリント基板。
【請求項9】
前記内側コイルは、主面と裏面の外層面に亘って形成される前記外側コイルの占有面積が前記プリント基板の厚み方向に投影された投影面積範囲内で、電気的に独立して前記プリント基板の内層面に形成されることを特徴とする請求項8記載の積層プリント基板。
【請求項10】
前記プリント基板に互いに独立して形成された前記外側コイルと前記内側コイルにおいて、いずれか一方を一次巻線とし、他方を二次巻線に割り当てることで、変圧器を構成すること特徴とする請求項8および請求項9のいずれかに記載の積層プリント基板。
【請求項11】
複数枚のプリント基板を重ね合わせ、主面と、この主面とは反対側の裏面およびプリント基板相互の合せ面に配線パターンを形成可能とした複数の層面を有する積層プリント基板であって、
前記主面に形成される複数の並行な配線パターンと、主面と前記裏面との間の内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、これら配線パターン相互の両端部を主面から内層面に亘って設けられる第1の導通孔で連通することで第1のコイルを構成し、
前記内層面とは異なる内層面に形成される複数の並行な配線パターンと、前記裏面に形成される複数の並行な配線パターンと、これら配線パターン相互の両端部を内層面から裏面に亘って設けられる第2の導通孔で連通することで第2のコイルを構成し、互いに独立した複数のコイルを形成したことを特徴とする積層プリント基板。
【請求項12】
前記第1のコイルと前記第2のコイルは、いずれか一方の占有する面積が前記プリント基板の厚み方向に投影される投影面積範囲内で積層されて、互いに電気的に独立して形成されることを特徴とする請求項11記載の積層プリント基板。
【請求項13】
前記第1のコイルと前記第2のコイルが等インダクタンスもしくは異インダクタンス特性を有することを特徴とする請求項11および請求項12のいずれかに記載の積層プリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−283771(P2009−283771A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135707(P2008−135707)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】