説明

積層体、その製造方法及びそれを用いたタイヤ

【課題】 インナーライナーなどとして好適に用いることができる、樹脂フイルム層とゴム状弾性体層とが、接着剤層を介して接合、一体化され、かつその製造工程における作業性がよい上、剥離抗力に優れる積層体、及びそれを用いてなるタイヤを提供する。
【解決手段】(A)樹脂フイルム層と(B)ゴム状弾性体層とが、(C)接着剤層を介して接合されてなる積層体であって、前記(C)接着剤層を構成する接着剤組成物が、(a)ゴム成分100質量部当り、(b)チウラム系及び/又は置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤0.1質量部以上、(c)シランカップリング剤0.1質量部以上及び(d)架橋剤及び架橋助剤としてポリ−p−ジニトロソベンゼン、1,4−フェニレンジマレイミドのうち少なくとも一種を0.1質量部以上含む積層体、その製造方法及びそれを用いたタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、その製造方法及びそれを用いたタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、樹脂フイルム層とゴム状弾性体層とが、接着剤層を介して接合、一体化された積層体であって、その製造工程における作業性がよい上、剥離抗力に優れ、空気入りタイヤのインナーライナーなどとして好適に用いられる積層体、このものを効率よく製造する方法、及び該積層体を用いてなるタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤの内面には、空気漏れを防止しタイヤ空気圧を一定に保つために、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどの低気体透過性ブチル系ゴムを主成分とするインナーライナー層が設けられている。しかし、これらのブチル系ゴムの含有量を多くすれば、未加硫ゴムの強度が低下し、ゴム切れやシート穴空きなどを生じ易く、特にインナーライナーを薄ゲージ化する場合には、タイヤ製造時に内面のコードが露出し易いという問題を生じる。
したがって、前記のブチル系ゴムの配合量は自ずから制限され、該ブチル系ゴムを配合したゴム組成物を用いる場合、空気バリア性の点からインナーライナー層の厚さは、1mm前後が必要であった。そのため、タイヤに占めるインナーライナー層の重量は約5%程度となり、タイヤの重量を低減し、自動車燃費を向上するための障害となっていた。
そこで、近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車タイヤの軽量化を目的として、インナーライナー層を薄ゲージ化するための手法が提案されている。例えば、ナイロンフイルム層や塩化ビニリデン層をインナーライナー層として従来のブチル系ゴムの代わりに用いる手法が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂とエラストマーとのブレンドからなる組成物のフイルムをインナーライナー層に用いることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、これらのフイルムを用いる方法は、タイヤ軽量化はある程度可能ではあるとしても、マトリックス剤が結晶性の樹脂材料であるために、特に5℃以下の低温での使用における耐クラック性や耐屈曲疲労性が通常用いられるブチル系ゴム配合組成物層の場合より劣るという欠点があり、また、タイヤ製造も複雑となる。
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある。)はガスバリア性に優れていることが知られている。EVOHは、空気透過性がブチル系ゴムを配合したインナーライナーゴム組成物の100分の1以下であるため、50μm以下の厚さでも、内圧保持性を大幅に向上することができる上、タイヤ重量を低減することが可能である。
したがって、空気入りタイヤの空気透過性を改良するために、EVOHをタイヤインナーライナーに用いることは有効であると言える。例えばEVOHからなるタイヤインナーライナーを有する空気入りタイヤが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、このEVOHをタイヤインナーライナーとして用いた場合は、内圧保持性効果は大きいが、弾性率が通常タイヤに用いられているゴムに比べて大幅に高いため、屈曲時の変形で破断、あるいはクラックが生じることがあった。
このため、EVOHからなるインナーライナーを用いる場合、タイヤ使用前の内圧保持性は大きく向上するものの、タイヤ転動時の屈曲変形を受けた使用後のタイヤでは、内圧保持性が使用前と比べて低下することがあるなどの問題を有していた。
この問題を解決するために、例えばエチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%および疎水性可塑剤1〜40重量%からなる樹脂組成物を用いてなるタイヤ内面インナーライナーが開示されているが(例えば、特許文献5参照)、耐屈曲性については必ずしも十分満足し得るものではない。
したがって、ガスバリア性を保持したまま、高度の耐屈曲性を有し、薄ゲージ化が可能なインナーライナーの開発が望まれていた。
このようなインナーライナーとしては、例えば耐屈曲性に優れるゴム状弾性体フイルム又はシートとガスバリア性の良好な樹脂フイルムとが接合、一体化してなる積層体が考えられる。この場合、該積層体の製造工程における作業性がよく、かつ剥離抗力に優れることが要求されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−40702号公報
【特許文献2】特開平7−81306号公報
【特許文献3】特開平10−26407号公報
【特許文献4】特開平6−40207号公報
【特許文献5】特開2002−52904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、薄ゲージ化が可能なインナーライナーなどとして好適に用いることができる、樹脂フイルム層とゴム状弾性層とが、接着剤層を介して接合、一体化され、かつその製造工程における作業性がよい上、剥離抗力に優れる積層体、及びそれを用いてなるタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、樹脂フイルム層とゴム状弾性体層とが、特定の組成の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を介して接合、一体化されてなる積層体により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1) (A)樹脂フイルム層と(B)ゴム状弾性体層とが、(C)接着剤層を介して接合される積層体であって、前記(C)接着剤層を構成する接着剤組成物が、(a)ゴム成分100質量部当り、(b)チウラム系及び/又は置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤0.1質量部以上、(c)シランカップリング剤0.1質量部以上及び(d)架橋剤及び架橋助剤としてポリ−p−ジニトロソベンゼン、1,4−フェニレンジマレイミドのうち少なくとも一種を0.1質量部以上含むことを特徴とする積層体、
(2) 接着剤組成物がさらに、ゴム成分として(e)クロロスルホン化ポリエチレン10質量%以上を含む上記(1)の積層体、
(3) (c)成分におけるシランカップリング剤が、下記平均組成式(I)で表される硫黄含有シランカップリング剤である上記(1)の積層体、
【化1】

(R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の炭化水素基、R3は炭素数1〜15の二価の炭化水素基、pは0〜2の整数、R4は下記一般式(II)で表される二価の官能基である。)
【化2】

(R5〜R7は直鎖状又は分岐を有する炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、二価の芳香族基又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であって、R5〜R7はそれぞれ同一でも異なってもよく、xはそれぞれ平均値として1以上4未満の数である。)
(4) (c)成分におけるシランカップリング剤が、下記平均組成式(III)で表されるシランカップリング剤である上記(1)の積層体、
【化3】

(nは1〜3の整数、mは1〜9の整数、yは1以上の整数で分布を有する。)
(5) (c)成分におけるシランカップリング剤が、下記組成式(IV)の硫黄含有シランカップリング剤である上記(1)の積層体、
【化4】

(R8及びR9はそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、R10は炭素数1〜15の二価の炭化水素基、pは0〜2の整数である。)
(6) 接着剤組成物において、(a)ゴム成分100質量部当り、50質量%以上のブチル系ゴムを含む上記(1)〜(5)の積層体、
(7) ブチル系ゴム系ゴムが、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムである上記(6)の積層体、
(8) 接着剤組成物において、(a)ゴム成分が、ハロゲン化ブチルゴム70質量部%以上と、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム5質量%以上を含む上記(1)〜(7)の積層体、
(9) 接着剤組成物において、(a)ゴム成分100質量部に対して、(f)充填剤を2〜50質量部含む上記(1)〜(8)の積層体、
(10) (f)充填剤がカーボンブラック、湿式法によるシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムの中から選ばれる少なくとも一種である上記(8)の積層体、
(11) (b)加硫促進剤が、置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤である上記(1)〜(10)の積層体、
(12) 置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛である上記(11)の積層体、
(13) (A)樹脂フイルム層の厚さが200μm以下であり、(B)ゴム状弾性体層の厚さが200μm以上である上記(1)〜(12)の積層体、
(14) (A)樹脂フイルム層が、熱可塑性ウレタン系エラストマー層を含む上記(1)〜(13)の積層体、
(15) (A)樹脂フイルム層が、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層を含む上記(1)〜(14)の積層体、
(16) (A)樹脂フイルム層が、熱可塑性ウレタン系エラストマー層を含むと共に、変性エチレン‐ビニルアルコール共重合体層を一層以上含む多層フイルムからなる層である上記(14)、(15)の積層体、
(17) (B)ゴム状弾性体層を構成するゴム状弾性体が、ブチル系ゴム50質量%以上を含むゴム成分を含有する上記(1)〜(16)の積層体、
(18) ブチル系ゴムが、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムである(17)の積層体、
(19) 有機溶媒を含む接着剤組成物からなる塗工液を、樹脂フイルム表面に塗工、乾燥したのち、その上にゴム状弾性体フイルム又はシートを貼合し、加熱・加硫処理をすることを特徴とする、(1)〜(18)の製造方法、
(20) 有機溶媒を含む接着剤組成物からなる塗工液を、ゴム状弾性体フイルム又はシート表面に塗工、乾燥したのち、その上に樹脂フイルムを貼合し、加熱・加硫処理をする、上記(1)〜(18)の積層体の製造方法、
(21) 有機溶媒として、ヒルデブランド(Hildebrand)溶解性パラメーターδ値が14〜20MPa1/2の範囲にあるものを用いる上記(19)、(20)の積層体の製造方法、
(22) 加熱・加硫温度が120℃以上である上記(19)〜(21)の積層体の製造方法、及び
(23) 上記(1)〜(18)の積層体を用いたことを特徴とするタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄ゲージ化が可能なインナーライナーなどとして好適に用いることができる、樹脂フイルム層とゴム状弾性体層とが、接着剤層を介して接合、一体化され、かつその製造工程における作業性がよい上、剥離抗力に優れる積層体、及びおよびそれを用いてなるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の積層体は、(A)樹脂フイルム層と(B)ゴム状弾性体層とが、(C)接着剤層を介して接合、一体化されてなる構造を有している。
本発明の積層体における(A)層を構成する樹脂フイルムとしては、ガスバリア性が良好で、適度の機械的強度を有するものであればよく、特に制限されず、様々な樹脂フイルムを用いることができる。このような樹脂フイルムの素材としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、さらには熱可塑性ウレタン系エラストマーなどを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの素材を用いて作製された樹脂フイルムは、単層フイルムであってもよく、二層以上の多層フイルムであってもよい。
前記素材のなかで、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、耐水性とゴムに対する接着性に優れており、特に多層フイルムにおいて、外層部分に配置して使用することが好ましい。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂は、空気透過量が極めて低く、ガスバリア性に優れており、好ましい素材である。
【0010】
前記熱可塑性ウレタン系エラストマー(以下、TPUと略記することがある。)は、分子中にウレタン基(−NH−COO−)をもつエラストマーであり、(1)ポリオール(長鎖ジオール)、(2)ジイソシアネート、(3)短鎖ジオールの三成分の分子間反応によって生成する。ポリオールと短鎖ジオールは、イソシアネートと付加反応をして線状ポリウレタンを生成する。この中でポリオールはエラストマーの柔軟な部分(ソフトセグメント)になり、ジイソシアネートと短鎖ジオールは硬い部分(ハードセグメント)になる。TPUの性質は、原料の性状、重合条件、配合比によって左右され、この中で、ポリオールのタイプがTPUの性質に大きく影響する。基本的特性の多くは長鎖ジオールの種類で決定されるが、硬さはハードセグメントの割合で調整される。
種類としては、(イ)カプロラクトン型(カプロラクトンを開環して得られるポリラクトンエステルポリオール)、(ロ)アジピン酸型(=アジペート型)〈アジピン酸とグリコールとのアジピン酸エステルポリオール〉、(ハ)PTMG(ポリテトラメチレングリコール)型(=エーテル型)〈テトラヒドロフランの開環重合で得られたポリテトラメチレングリコール〉などがある。
【0011】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂としては、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体にエポキシ化合物を反応させて得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。このように変性することにより、未変性のエチレン−ビニルアルコール共重合体の弾性率を大幅に下げることができ、屈曲時の破断性、クラックの発生度合いを改良することができる。
この変性処理に用いられるエチレン−ビニルアルコール共重合体においては、エチレン単位含有量は25〜50モル%であることが好ましい。良好な耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点からは、エチレン単位含有量は、より好適には30モル%以上であり、さらに好適には35モル%以上である。また、ガスバリア性の観点からは、エチレン単位含有量は、より好適には48モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。エチレン単位含有量が25モル%未満の場合は耐屈曲性及び耐疲労性が悪化するおそれがある上、溶融成形性が悪化するおそれがある。また、50モル%を超えるとガスバリア性が不足するおそれがある。
変性処理に用いられるエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり、最適には99モル%以上である。ケン化度が90モル%未満では、ガスバリア性および積層体作製時の熱安定性が不充分となるおそれがある。
【0012】
変性処理に用いられるエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、21.18N荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分である。但し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは21.18N荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
変性処理は、前記の未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して、エポキシ化合物を、好ましくは1〜50質量部、よりこのましくは2〜40質量部、さらに好ましくは5〜35質量部を反応させることにより行なうことができる。この際、適当な溶媒を用いて、溶液中で反応させるのが有利である。
【0013】
溶液反応による変性処理法では、エチレン−ビニルアルコール共重合体の溶液に酸触媒あるいはアルカリ触媒存在下でエポキシ化合物を反応させることによって変性エチレン−ビニルアルコール共重合体が得られる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドン等のエチレン−ビニルアルコール共重合体の良溶媒である極性非プロトン性溶媒が好ましい。反応触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸および三弗化ホウ素等の酸触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキサイド等のアルカリ触媒が挙げられる。これらの内、酸触媒を用いることが好ましい。触媒量としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対し、0.0001〜10質量部程度が適当である。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体およびエポキシ化合物を反応溶媒に溶解させ、加熱処理を行うことによっても変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造することができる。
【0014】
変性処理に用いられるエポキシ化合物は特に制限はされないが、一価エポキシ化合物であることが好ましい。二価以上のエポキシ化合物である場合、エチレン−ビニルアルコール共重合体との架橋反応が生じゲル、ブツ等の発生により積層体の品質が低下するおそれがある。変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造の容易性、ガスバリア性、耐屈曲性および耐疲労性の観点から、好ましい一価エポキシ化合物としてグリシドール及びエポキシプロパンが挙げられる。
本発明に用いられる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体のメルトフローレート(MFR)(190℃、21.18N荷重下)は特に制限はされないが、良好なガスバリア性、耐屈曲性および耐疲労性を得る観点からは、0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることがより好ましく、0.5〜20g/10分であることがさらに好ましい。但し、変性EVOHの融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは21.18N荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
【0015】
この変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を素材とするフイルム層の20℃、65RH%における酸素透過量は3×10-15cm3・cm/cm2・sec・Pa以下であることが好ましく、7×10-16cm3・cm/cm2・sec・Pa以下であることがより好ましく、3×10-16cm3・cm/cm2・sec・Pa以下であることがさらに好ましい。
本発明の積層体において、(A)層を構成する樹脂フイルムの成形方法に特に制限はなく、単層フイルムの場合従来公知の方法、例えば溶液流延法、溶融押し出し法、カレンダー法などを採用することができるが、これらの方法の中で、Tダイ法やインフレーションなどの溶融押し出し法が好適である。また、多層フイルムの場合は、共押し出しによるラミネート法が好ましく用いられる。
本発明の積層体における(A)樹脂フイルム層の厚さは、該積層体をインナーライナーとして用いる場合の薄ゲージ化の観点から、200μm以下が好ましい。また、薄すぎると(A)層を(B)層に接合した効果が十分に発揮されないおそれが生じる。
したがって、(A)層の厚さの下限は1μm程度であり、より好ましい厚さは10〜150μm、さらに好ましい厚さは20〜100μmの範囲である。
本発明の積層体においては、(A)樹脂フイルム層として熱可塑性ウレタン系エラストマー層を含むものが好ましく、特に熱可塑性ウレタン系エラストマー層を含むと共に、前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層を一層以上含む多層フイルムからなる層が好ましい。
【0016】
このような多層フイルムの具体例としては、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体フイルムの両面に、それぞれ熱可塑性ウレタン系エラストマーフイルムが積層された三層構造の多層フイルムを挙げることができる。
この(A)層を構成する樹脂フイルムは、その上に設けられる接着剤層との密着性を向上させるために、所望により、少なくとも接着層側の面に、酸化法や、凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などがあげられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フイルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0017】
本発明の積層体において、(B)層を構成するゴム状弾性体としては、ブチル系ゴム50質量%以上を含むゴム成分を含有するものが好ましく用いられる。前記ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムを挙げることができるが、ブチル系ゴムの中では、加硫速度が速く、耐熱性、接着性、他の不飽和ゴムとの相溶性に優れる点から、ハロゲン化ブチルゴムが好ましい。
前記ハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、その変性ゴムなどが含まれる。例えば塩素化ブチルゴムとしては「Enjay Butyl HT10−66」(エンジェイケミカル社製、商標)があり、臭素化ブチルゴムとしては「ブロモブチル2255」(エクソン社製、商標)がある。また、変性ゴムとしてイソモノオレフィンとパラメチルスチレンとの共重合体の塩素化又は臭素化変性共重合体を用いることができ、例えば「Expro50」(エクソン社製、商標)などとして入手可能である。
当該ゴム状弾性体におけるゴム成分中のブチル系ゴムの好ましい含有量は、耐空気透過性の点から70〜100質量%であり、該ゴム成分中には、0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%の割合で、ジエン系ゴムやエピクロロヒドリンゴムを含有させることができる。
【0018】
ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR),シス1,4−ポリブタジエン(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(1,2BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
一方、エピクロロヒドリンゴムとしては、エピクロロヒドリン単独重合体ゴム、エピクロロヒドリントエチレンオキシドとの共重合体ゴム、エピクロロヒドレンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体ゴム、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの三元共重合体ゴムなどがあり、本発明においては、いずれも用いることができる。
本発明においては、前記ジエン系ゴムやエピクロロヒドリンゴムは、一種を単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
当該ゴム状弾性体には、耐空気透過性、耐低温クラック性及び耐屈曲疲労性などを向上させるために、前記ゴム成分以外に無機充填剤を含有させることができる。特に耐空気透過性を改良する無機充填剤としては、層状又は板状のものが好ましくこのようなものとしては、例えばカオリン、クレー、マイカ、長石、シリカ及びアルミナ含水複合体などが挙げられる。
この無機充填剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部あたり、通常10〜180質量部程度、好ましくは20〜120質量部の範囲である。
また、未加硫ゴムの強度を向上させるなどの目的で前記ゴム成分100質量部あたり、さらにカーボンブラック0〜50質量部、好ましくは10〜50質量部を含有させることができる。上記カーボンブラックの種類は特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填剤として慣用されているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができ、例えば、SRF、GPF、FEF,HAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。
本発明においては、前記無機充填剤とカーボンブラックとの合計の含有量は、耐空気透過性、耐屈曲疲労性、耐低温クラック性及び加工性などのバランス面から、ゴム成分100質量部当り、30〜200質量部の範囲が好ましく、特に50〜140質量の範囲が好適である。
【0020】
当該ゴム状弾性体はゴム成分中への無機充填剤やカーボンブラックの分散性を良くし、所望の物性を向上させる目的で、ゴム成分100質量部当り、さらに分散改良剤0〜5質量部を含有させることができる。この分散改良剤としては、例えば、シランカップリング剤、ジメチルステアリルアミン、トリエタンールアミン等が挙げられる。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもちいてもよい。
さらに、当該ゴム状弾性体においては、前記のカーボンブラックを配合した場合には、ナフテン系またはパラフィン系オイルをゴム成分100質量部当り、1質量部以上、特に3〜20質量部の割合で含有させることが好ましい。ここで、ナフテン系オイルは環分析による%CNが30以上のものが好ましく、パラフィン系オイルは%CP60以上のものが好適である。
【0021】
また、当該ゴム状弾性体には、所望により、有機短繊維を含有させることができる。この有機短繊維を含有させることにより、本発明の積層体をインナーライナーとして用いる場合、インナーライナーを薄ゲージ化してタイヤを製造する際に生じる内面コード露出を抑制することができる。この有機短繊維は、平均径1〜100μmで、平均長が0.1〜0.5mm程度であるものが好ましい。この有機短繊維は、FRR(短繊維と未加硫ゴムとの複合体)として配合してもよい。
このような有機短繊維の含有量は、ゴム成分100質量部当り、0.3〜15質量部が好ましい。有機短繊維の材質には特に制限はなく、例えばナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリエチレンなどを挙げることができるが、これらの中ではポリアミドが好ましい。
【0022】
また、有機繊維配合ゴムのモジュラスを増大させるためにはヘキサメチレンテトラミンやレゾルシンなどのゴムと繊維との接着向上剤をさらに配合することができる。
当該ゴム状弾性体には、本発明の目的が損なわれない範囲で、前記配合剤以外に、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などの加硫促進助剤を配合させることができる。
本発明の積層体において、(B)層を構成するゴム状弾性体は、前記の各成分を含むゴム組成物を、従来の方法により、未加硫の段階でフイルム状又はシート状に押し出し加工することにより得ることができる。
本発明の積層体における(B)層のゴム状弾性体層の厚さは、通常200μm以上である。インナーライナーとして用いる場合の薄ゲージ化を考慮するとタイヤサイズにより適宜決められるが、その上限は、1500μm程度である。好ましい厚さは200〜1200μmであり、特に300〜800μmであることが好ましい。
【0023】
(B)ゴム状弾性層を設けた、本発明の積層体を、タイヤのインナーライナーに適用した場合、上記(A)樹脂フイルム層が、200μm以下の薄ゲージで使用されるため耐屈曲性、耐疲労性が向上し、タイヤの転動時の屈曲変形で破断およびクラックが生じにくくなる。また、たとえ破断しても(A)樹脂フイルム層が、後に詳述する(C)接着剤層を介して(B)ゴム状弾性層との接着性が非常に良好で剥離しにくく、亀裂が伸展しにくいため大きな破断およびクラックが生じない。また、生じた場合においても(A)樹脂フイルム層に生じた破断およびクラック部分のガスバリア性を(B)ゴム弾性層が補うため、タイヤ使用後においても良好な内圧保持が可能となる。
【0024】
本発明の積層体において(C)接着剤層を構成する接着剤組成物としては、(a)ゴム成分100質量部に当り、(b)チウラム系及び/又は置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤0.1質量部以上、(c)シランカップリング剤0.1質量部以上及び(d)架橋剤及び架橋助剤としてポリ−p−ジニトロソベンゼン、1,4−フェニレンジマレイミドのうち少なくとも一種を0.1質量部以上含む組成のものが用いられる。
当該接着剤組成物における(a)ゴム成分としては、接着剤組成物を形成するものであれば特に限定されないが、ハロゲン化ブチルゴム及び/又はジエン系ゴムであることが好ましい。ハロゲン化ブチルゴム及びジエン系ゴムについては、前述の(B)層を構成するゴム状弾性体の説明において例示したとおりである。ジエン系のゴムの中では、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)が好ましい。
これらのハロゲン化ブチルゴム及びジエン系ゴムは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、剥離抗力の点から、特にハロゲン化ブチルゴム70質量%以上と、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム5質量%以上を含むことが好ましい。
【0025】
当該接着剤組成物においては、(a)ゴム成分として、所望により(e)クロロスルホン化ポリエチレン10質量%以上含むことが好ましい。該クロロスルホン化ポリエチレン(以下CSMと略記することがある)は、塩素と亜硫酸ガスを用いてポリスチレンを塩素化ならびにクロロスルホン化して製造される二重結合を含まない飽和構造を有する合成ゴムであり耐侯性、耐オゾン性、耐熱性などの安定性に優れている。CSMは商品名「ハイパロン」としてデュポン社より市販されている。接着剤層の剥離抗力の向上、耐熱性等の点から、CSMを10〜40質量%含むものが好ましい。
また、(a)ゴム成分中には、ジエン系ゴムやブチルゴムを0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%の割合で含有させることができる。ジエン系ゴムについては、前述の(B)層を構成するゴム状弾性体の説明において例示したとおりである。
本発明においては、剥離抗力の点から、特にハロゲン化ブチルゴム70質量%以上、クロロスルホン化ポリエチレン10質量%以上及び天然ゴム及び/又はイソプレンゴム5質量%以上を含むことが好ましい。
【0026】
当該接着剤組成物における(c)成分のシランカップリング剤は(A)樹脂フイルム層と(B)ゴム状弾性体層の貼り付け作業性(タック)の確保と加熱・加硫接着後の剥離抗力向上のために用いられる。
(c)成分であるシランカップリング剤としては、硫黄を含むシランカップリング剤が好ましく用いられる。この硫黄を含むシランカップリング剤は以下に示す三種のものが好適であり、第1のシランカップリング剤Aは、分子の両末端にオルガノオキシシリル基を有し、分子中央部にスルフィド又はポリスルフィドを有する平均組成式(I)で表される化合物である。
【化5】

この組成式において、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の炭化水素基であって、例えば、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,t−ブチル基,ビニル基,アリル基,イソプロペニル基等が挙げられる。尚、R1とR2は同一でも異なってもよい。また、R3は炭素数1〜15の2価の炭化水素基であって、例えば、メチレン基,エチレン基,プロピレン基,n−ブチレン基,イソブチレン基,へキシレン基,デシレン基,フェニレン基,メチルフェニルエチレン基等が挙げられる。pは0〜2の整数を示す。
組成式(I)のR4は下記一般式(II)に記載される二価の官能基である。
【化6】

ここでR5〜R7は直鎖状又は分岐を有する炭素数1〜20の脂肪族もしくは脂環式2価の炭化水素基、2価の芳香族基又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む2価の有機基であり、例えばメチレン基,エチレン基,プロピレン基,n−ブチレン基,イソブチレン基,へキシレン基,デシレン基,シクロへキシレン基、フェニレン基,フェニルメチレン基、メチルフェニルエチレン基等及びこれらに硫黄及び酸素以外のヘテロ元素である窒素,リン等が導入された基などが挙げられる。尚、上記R5〜R7はそれぞれ同一でも異なってもよい。
また、R4は硫黄原子を含むことを必須とし、xは平均値として1以上4未満である。xはそれぞれ平均値として1.5以上4未満であることが好ましく、さらには1.5以上3以下であることが最も好ましい。
【0027】
当該接着剤組成物に用いられる第二のシランカップリング剤Bは、下記平均組成式(III)で表される化合物であり、
【化7】

ポリサルファイド部Syは、yが1以上、例えばS1 〜S9 のような異なる硫黄原子数の分布を有している。また全ポリスルフィドシラン成分量に対してyが3のトリスルフィドシラン含有量が25%以上、好ましくは30%以上であり、かつyが5以上のポリスルフィドシラン含有量が50%以下、好ましくは40%以下である。トリスルフィドシランが25%未満、あるいはyが5以上のポリスルフィドシランが50%を越えると混練り中のゲル化による加工性が低下して好ましくない。
また、式中、nは1〜3の整数、mは1〜9の整数を示し、好ましくは2〜5の整数を示す。
さらに、ポリサルファイド部Syのyの平均数は、2〜3の範囲にあることが望ましい。yの平均数が2未満では抗破壊性および弾性率が低下しやすく、またyの平均数が3を越えると混練り中のゲル化による加工性の低下が起こり易くなるので、上記の範囲にあることが望ましい。
【0028】
シランカップリング剤としては、例えば平均組成式(III)のビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリサルファイドのアルコキシ基が例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基;アルキル基が例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基;ポリサルファイド基−Sy−が上記硫黄原子の分布を有する基である化合物等が用いられる。
平均組成式(III)のシランカップリング剤の製法は特に制限されないが、例えば特開平7−228588号公報記載の方法などに準拠し次のように製造することができる。無水硫化ナトリウムと硫黄とを不活性ガス雰囲気下、極性溶媒中で適切なモル比例えば1:1〜1:3の範囲で反応させて多硫化ナトリウムを得、次いでこの多硫化ナトリウムをハロゲノアルコキシシランを加えて不活性ガス雰囲気下で反応させて得られる。
【0029】
当該接着剤組成物に用いられる第三の硫黄含有シランカップリング剤Cは、下記組成式(IV)で表される化合物である。
【化8】

8及びR9はそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、R10は炭素数1〜15の二価の炭化水素基、pは0〜2の整数である。硫黄成分はメルカプト基として含まれる。
【0030】
当該接着剤組成物に用いられる前記硫黄含有シランカップリン剤は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上配合するが、本発明の目的である、貼り付け作業性、剥離抗力改良の効果の観点から配合されるシランカップリング剤の上限は30質量部が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0031】
当該接着剤組成物においては(f)成分として充填剤を含むことができる。この充填材としては、無機フィラー及び/又はカーボンブラックを用いることができる。無機フィラーとしては、例えば湿式法によるシリカ(以下、湿式シリカと称する。)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムなどを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、カーボンブラックについては、前述の(B)層を構成するゴム状弾性体の説明において例示したとおりである。
当該接着剤組成物においては、この(f)成分である充填剤の含有量は、前記(a)成分であるゴム成分100質量部当たり、タック性及び剥離抗力などの点から、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜35質量部の範囲で選定される。特にタック性の点から、カーボンブラックと共に、無機フィラー5質量部以上含むことが好ましい。
【0032】
当該接着剤組成物においては、(b)成分として、ゴム成分100質量部当たり、チウラム系及び/又は置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤を0.1質量部以上含むことにより、得られる積層体は所望の剥離抗力を発揮することができる。前記加硫促進剤の含有量の上限については特に制限はないが、通常5質量部程度である。前記加硫促進剤の好ましい含有量は0.3〜3質量部の範囲である。
チウラム系加硫促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、活性化テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどが挙げられる。
【0033】
一方、置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えばジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、エチルフェニルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジンなどが挙げられる。
本発明においては、前記のチウラム系加硫促進剤及び置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の中から選ばれる少なくとも一種が用いられるが、これらの中で、置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が好ましく、特にジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛が好適である。
【0034】
当該接着剤組成物においては、加熱処理後の剥離抗力を改良するために、(d)架橋剤及び架橋助剤として、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、1,4−フェニレンジマレイミドのうち少なくとも一種を配合することを要する。
ポリ−p−ジニトロソベンゼンは、ハロゲン化ブチルゴムのような二重結合の少ないゴムに対して、有効な架橋剤であり、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを加えて熱処理することにより未加硫配合物のコールドフローを防止し、押し出し特性、加硫物の物理特性を改良するし、また可塑度を調節することができる。
また、1,4−フェニレンジマレイミドを用いた加硫は炭素−炭素の共有結合が生成し、耐熱性、耐老化性を向上させる。特にクロロスルホン化ポリエチレンゴムに対しても有効な架橋剤である。
これら(d)成分の接着剤組成物に対する配合量は、該接着剤組成物のゴム成分100質量部に対して0.2〜10質量部配合することが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0035】
当該接着剤組成物においては、前記(b)成分の加硫促進剤以外の加硫促進剤を併用することができる。この併用することができる加硫促進剤としては、例えばグアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、キサンテート系などの中から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
当該接着剤組成部においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、粘着性付与樹脂、加硫剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤などを含有させることができる。
前記粘着性付与樹脂としては、例えばクマロン−インデン樹脂;β−ピネン樹脂、α−ピネン樹脂などのテルペン樹脂;フェノール−テルペン樹脂;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂などの石油系炭化水素樹脂;アルキルフェノールとホルムアルデヒドとの反応によるフェノール系樹脂;キシレン樹脂;ロジン樹脂;ジシクロペンタジエン樹脂;スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0036】
次に本発明の積層体の製造方法について説明する。
まず、有機溶媒に、前記接着剤組成物を構成する各成分を加え、溶解又は分散させて、有機溶媒を含む接着剤組成物からなる塗工液を調製する。
この際、有機溶媒として、(a)ゴム成分の良溶媒であるヒルデブランド(Hildebrand)溶解性パラメーターδ値が14〜20MPa1/2の有機溶剤が用いられる。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、クロロホルムなどを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
このようにして調製された塗工液の固形分濃度は、塗工性や取り扱い性などを考慮して適宜選定されるが、通常5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲である。
次に、前記塗工液を、(A)層を構成する樹脂フイルム表面に塗工・乾燥したのち、その上に、(B)層を構成するゴム状弾性体フイルム又はシートを貼合し、加熱・加硫処理することにより、本発明の積層体が得られる。
【0037】
あるいは、前記塗工液を、(B)層を構成するゴム状弾性体のフイルム又はシートの表面に塗工・乾燥したのち、その上に、(A)層を構成する樹脂フイルムを貼合し、加熱・加硫処理することにより、本発明の積層体が得られる。
この2つの方法の中では、通常前者の方法が用いられる。
前記方法において、(A)層を構成する樹脂フイルムが、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層を有する場合、この樹脂フイルムとゴム状弾性体フイルム又はシートを、接着剤組成物層を介して貼合する前に、該樹脂フイルムに、予めエネルギー線を照射して、該変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層を架橋しておくことが好ましい。この架橋操作を行わないと、後で行われる加熱・加硫工程において、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層が著しく変形し、均一な層を保持することができなくなり、得られる積層体が所定の機能を発揮しなくなるおそれがある。
エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、好ましくは電子線が挙げられる。
電子線の照射方法に関しては、樹脂フイルムを電子線照射装置に導入し、電子線を照射する方法が挙げられる。電子線の線量に関しては特に限定されないが、好ましくは10〜60Mradの範囲内である。照射する電子線量が10Mradより低いと、架橋が進み難くなる。一方、照射する電子線量が60Mradを超えると樹脂フイルムの劣化が進行しやすくなる。より好適には電子線量の範囲は20〜50Mradである。
【0038】
前記加熱・加硫処理は、通常120℃以上、好ましくは125〜200℃、より好ましくは130〜180℃の温度で実施される。なお、本発明の積層体が空気入りタイヤのインナーライナーとして用いられる場合、前記加熱・加硫処理は、通常タイヤ加硫時に行われる。
本発明の積層体は、特定組成の接着剤組成物を用いることにより、タック性が良好で、作業性よく作製し得る上、剥離抗力に優れるなどの特徴を有し、例えば、空気入りタイヤの薄ゲージ化可能なインナーライナーなどとして好適に用いられる。
本発明はまた、前記の積層体を用いたタイヤをも提供する。
図1は、本発明の積層体をインナーライナー層に用いてなる空気入りタイヤの一例を示す部分断面図であって、該タイヤはビードゴア1の周りに巻回されてコード方向がラジアル方向に向くカーカスプライを含むカーカス層2と、カーカス層のタイヤ半径方向内側に配設された本発明の積層体からなるインナーライナー層3と、該カーカス層のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配設された2枚のベルト層4を有するベルト部と、ベルト部の上部に配設されたトレッド部5と、トレッド部の左右に配置されたサイドウォール部6から構成されている。
図2は、前記空気入りタイヤにおける本発明の積層体からなるインナーライナー層の一例の断面詳細図であって、インナーライナー層(本発明の積層体層)3は、未変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層11の両面に、それぞれ熱可塑性ウレタン系エラストマー層12a及び12bがラミネートされてなる樹脂フイルム層13と、ゴム状弾性体層15が、接着剤層14を介して接合され、一体化してなる構造を有している。なお、ゴム状弾性体層15は、接着剤層14とは反対側の面が、図1におけるカーカス層2と接合されている。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
製造例1 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造
加圧反応槽に、エチレン含量44モル%、ケン化度99.9モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(MFR:5.5g/10分(190℃、21.18N荷重下))2質量部およびN−メチル−2−ピロリドン8質量部を仕込み、120℃で、2時間加熱攪拌することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体を完全に溶解させた。これにエポキシ化合物としてエポキシプロパン0.4質量部を添加後、160℃で4時間加熱した。加熱終了後、蒸留水100質量部に析出させ、多量の蒸留水で充分にN−メチル−2−ピロリドンおよび未反応のエポキシプロパンを洗浄し、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を得た。さらに、得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を粉砕機で粒子径2mm程度に細かくした後、再度多量の蒸留水で十分に洗浄した。洗浄後の粒子を8時間室温で真空乾燥した後、2軸押出機を用いて200℃で溶融し、ペレット化した。
【0040】
製造例2 3層フイルムの作製
製造例1で得られた変性EVOHと、エラストマーとして熱可塑性ポリウレタン((株)クラレ製、クラミロン3190)とを使用し、2種3層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で3層フイルム(熱可塑性ポリウレタン層/変性EVOH層/熱可塑性ポリウレタン層)を作製した。各層の厚みは、変性EVOH層、熱可塑性ポリウレタン層ともに20μmである。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
熱可塑性ポリウレタン/変性EVOH/熱可塑性ポリウレタン
(厚み20/20/20、単位はμm)
各樹脂の押出温度:
C1/C2/C3/ダイ=170/170/220/220℃
各樹脂の押出機仕様:
熱可塑性ポリウレタン:
25mmφ押出機 P25−18AC(大阪精機工作株式会社製)
変性EVOH:
20mmφ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
Tダイ仕様:
500mm幅2種3層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
【0041】
製造例3 未加硫ゴム状弾性体シートの作製
下記の配合のゴム組成物を調製し、厚さ500μmの未加硫ゴム状弾性体シートを作製した。
ゴム組成物(配合単位:質量部)
Br−IIR(JSR(株)製 Bromobutyl 2244): 100
GPFカーボンブラック(旭カーボン(株)製 #55): 60
SUNPAR2280(日本サン石油(株)製): 7
ステアリン酸(旭電化工業(株)製): 1
ノクセラーDM(大内新興化学工業(株)製): 1.3
酸化亜鉛(白水化学工業(株)製): 3
硫黄(軽井沢精錬所製): 0.5
【0042】
製造例4 平均組成式(I)のシランカップリング剤の合成
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート型コンデンサー及び滴下ローとを備えた0.5リットルのセパラブルフラスコに、エタノール80g、無水硫化ナトリウム10.92g(0.14モル)、硫黄4.48g(0.14モル)を仕込み、80℃に昇温した。この溶液を攪拌しながら平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−Clで表される化合物49.91g(0.14モル)と1,6−ジクロロヘキサン10.85g(0.07モル)の混合液をゆっくり滴下した。滴下終了後、80℃にて10時間攪拌を続けた。攪拌終了後、冷却し、生成した塩を濾別した後、溶媒のエタノールを減圧蒸留したところ、褐色透明の溶液55.1gが得られた。このもののIR分析、1H−NMR分析及び超臨界クロマトグラフィー分析を行った結果、平均組成式(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33で表される化合物であることを確認した。すなわち、平均組成式(I)において、R1がエチル基、R3がn−プロピル基、R4が(CH26−S2−(CH26−S2−(CH26(R4が一般式(II)に該当し、R5,R6及びR7は(CH26、xは平均値で1.5である)、p=0及
びm=1であった。このもののGPC分析における純度は85.5%であった。
【0043】
実施例1〜11
第1表に示す種類と量の各成分のうちゴム成分、充填剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤及び硫黄については、あらかじめ常法に従って混練を行い、混練されたゴム組成物と第1表に示す残りの成分を、有機溶剤としてトルエン
(δ値:18.2MPa1/2)1000質量部に加え、溶解又は分散して各接着剤塗工液を調製した。
日新ハイボルテージ株式会社製電子線照射装置「生産用キュアトロンEBC200−100」を使用して、製造例2で得た3層フイルムに、加速電圧200kV、照射エネルギー30Mradの条件にて電子線照射し架橋処理を施したのち、その片面に前記の各接着剤塗工液を塗布、乾燥し、次いでその上に製造例3で得た未加硫ゴム状弾性体シートを貼合した。
次に、このものを160℃にて15分間加熱・加硫処理して図2に示す各積層体を作製した。
【0044】
比較例1
接着剤として、東洋化学研究所製メタロックR−46を用いた以外は、実施例1〜10と同様にして積層体を作製した。
比較例2
接着剤として、ゴム成分であるポリイソプレン100質量部、促進剤である、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛のみを用いた以外は、実施例1〜11と同様にして積層体を作製した。
比較例3
接着剤として、ゴム成分である臭素化ブチルゴム100質量部、促進剤である、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛のみを用いた以外は、実施例1〜11と同様にして積層体を作製した。
比較例4
接着剤として、ゴム成分である臭素化ブチルゴム100質量部、促進剤である、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドのみを用いた以外は、実施例1〜11と同様にして積層体を作製した。
比較例5
接着剤として、ゴム成分である臭素化ブチルゴム100質量部、促進剤である、テトラベンジルチウラムジスルフィドのみを用いた以外は、実施例1〜11と同様にして積層体を作製した。
実施例1〜11で調製した接着剤塗工液及び比較例1で用いた市販の接着剤及び、比較例2〜5の接着剤塗工液について、JIS Z0237に準拠してプローブタック試験を行い、タックを測定し、比較例1のタックを100として指数表示した。
また、実施例1〜11及び比較例1〜5で作製した積層体について、JIS K6854に準拠してT型剥離試験を行い、剥離抗力を測定し、比較例1の剥離抗力を100として指数表示した。
これらの結果を第1表に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
(注)
*Br−IIR:ブロモブチルゴム、JSR社製、「Bromobutyl2244」
*IR:イソプレン合成ゴム、JSR社製、「IR2200」
*クロロスルホン化ポリエチレン:DuP0nt・Dow ElasromersLLC社製、「ハイパロン」
*シランカップリング剤A:製造例4で製造したもの。R1がエチル基、R3がプロピレン基、R5〜R7がへキシレン基、p=0、x=平均1.5のもの
*シランカップリング剤B:デグサ社製、「Si75」
*シランカップリング剤C:3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製、「KBE803」
*カーボンブラック:旭カーボン社製、「旭#80」
*湿式シリカ:東ソー・シリカ社製、「AQ」
*酸化マグネシウム:神島化学工業社製、「スターマグL」
*ZTC・ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学工業社製、「ノクセラ‐ZTC」
*TOT:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製、「ノクセラ−TOT−N」
*TBzTD:テトラベンジルチウラムジスルフィド、三新化学工業社製、「サンセラーTBzTD」
*促進剤DM:ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学工業社製、「ノクセラーDM」
*促進剤D:ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業社製、「ノクセラーD」
*C5樹脂:日本ゼオン社製、「クレイトンA100」
*ステアリン酸:新日本理化学社製、「ステアリン酸50S」
*亜鉛華:白水テック社製、酸化亜鉛、粉末品
*硫黄:鶴見化学社製、「金華印微分硫黄」
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の積層体は、樹脂フイルム層とゴム状弾性体層とが、接着剤層を介して接合、一体化された積層体であって、その製造工程における作業性がよい上、剥離抗力に優れ、空気入りタイヤのインナーライナーなどとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のタイヤの一例を示す部分断面図である。
【図2】本発明の積層体の構成の一例を示す断面詳細図である。
【符合の説明】
【0050】
1:ビートコア
2:カーカス層
3:インナーライナー層(本発明の積層体層)
4:ベルト部
5:トレッド部
6:サイドウォール部
7:ビードフィラー
11:変性エチレン−ビニルアルコール共重合体層
12a、12b:熱可塑性ウレタン系エラストマー層
13:樹脂フイルム層
14:接着剤層
15:ゴム状弾性体層







【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂フイルム層と(B)ゴム状弾性体層とが、(C)接着剤層を介して接合される積層体であって、前記(C)接着剤層を構成する接着剤組成物が、(a)ゴム成分100質量部当り、(b)チウラム系及び/又は置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤0.1質量部以上、(c)シランカップリング剤0.1質量部以上及び(d)架橋剤及び架橋助剤としてポリ−p−ジニトロソベンゼン、1,4−フェニレンジマレイミドのうち少なくとも一種を0.1質量部以上含むことを特徴とする積層体。
【請求項2】
接着剤組成物がさらに、ゴム成分として(e)クロロスルホン化ポリエチレン10質量%以上を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
(c)成分におけるシランカップリング剤が、下記平均組成式(I)で表される硫黄含有シランカップリング剤である請求項1に記載の積層体。
【化1】

(R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の炭化水素基、R3は炭素数1〜15の二価の炭化水素基、pは0〜2の整数、R4は下記一般式(II)で表される二価の官能基である。)
【化2】

(R5〜R7は直鎖状又は分岐を有する炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、二価の芳香族基又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であって、R5〜R7はそれぞれ同一でも異なってもよく、xはそれぞれ平均値として1以上4未満の数である。)
【請求項4】
(c)成分におけるシランカップリング剤が、下記平均組成式(III)で表されるシランカップリング剤である請求項1に記載の積層体。
【化3】

(nは1〜3の整数、mは1〜9の整数、yは1以上の整数で分布を有する。)
【請求項5】
(c)成分におけるシランカップリング剤が、下記組成式(IV)の硫黄含有シランカップリング剤である請求項1に記載の積層体。
【化4】

(R8及びR9はそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、R10は炭素数1〜15の二価の炭化水素基、pは0〜2の整数である。)
【請求項6】
接着剤組成物において、(a)ゴム成分100質量部当り、50質量%以上のブチル系ゴムを含む請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
ブチル系ゴム系ゴムが、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムである請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
接着剤組成物において、(a)ゴム成分が、ハロゲン化ブチルゴム70質量部%以上と、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム5質量%以上を含む請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
接着剤組成物において、(a)ゴム成分100質量部に対して、(f)充填剤を2〜50質量部含む請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
(f)充填剤がカーボンブラック、湿式法によるシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムの中から選ばれる少なくとも一種である請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
(b)加硫促進剤が、置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤である請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
置換ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛である請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
(A)樹脂フイルム層の厚さが200μm以下であり、(B)ゴム状弾性体層の厚さが200μm以上である請求項1〜12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
(A)樹脂フイルム層が、熱可塑性ウレタン系エラストマー層を含む請求項1〜13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
(A)樹脂フイルム層が、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体である層を含む請求項1〜14のいずれかに記載の積層体。
【請求項16】
(A)樹脂フイルム層が、熱可塑性ウレタン系エラストマー層を含むと共に、変性エチレン‐ビニルアルコール共重合体層を一層以上含む多層フイルムからなる層である請求項14又は15に記載の積層体。
【請求項17】
(B)ゴム状弾性体層を構成するゴム状弾性体が、ブチル系ゴム50質量%以上を含むゴム成分を含有する請求項1〜16のいずれかに記載の積層体。
【請求項18】
ブチル系ゴムが、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムである請求項17に記載の積層体。
【請求項19】
有機溶媒を含む接着剤組成物からなる塗工液を、樹脂フイルム表面に塗工、乾燥したのち、その上にゴム状弾性体フイルム又はシートを貼合し、加熱・加硫処理をすることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項20】
有機溶媒を含む接着剤組成物からなる塗工液を、ゴム状弾性体フイルム又はシート表面に塗工、乾燥したのち、その上に樹脂フイルムを貼合し、加熱・加硫処理をすることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項21】
有機溶媒として、ヒルデブランド(Hildebrand)溶解性パラメーターδ値が14〜20MPa1/2の範囲にあるものを用いる請求項19又は20に記載の積層体の製造方法。
【請求項22】
加熱・加硫温度が120℃以上である請求項19〜21いずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれかに記載の積層体を用いたことを特徴とするタイヤ。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−167919(P2006−167919A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359002(P2004−359002)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】