説明

積層体及び積層体の製造方法

【課題】金属又は合金からなる基材と、この基材の表面に形成した溶射皮膜層との間の密着強度が高い積層体及び該積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】積層体10は、金属又は合金から形成された基材11と、金属又は合金の粉末材料を該粉末材料の融点より低い温度に加熱されたガスと共に加速し、基材表面に固相状態のままで吹き付けて堆積させた中間層12と、該中間層上に溶射により形成された溶射皮膜層13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は合金からなる基材の表面に硬質皮膜を形成した積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属又は合金からなる基材の表面に硬質皮膜を形成した積層体は、機械部品、工具、金型、医療用部材、スポーツ用品等の様々な用途に用いられている。硬質皮膜としては、例えば、セラミックス(酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス、BCN系超硬質材料)、金属とセラミックスとの混合材、金属又は合金等が用いられ、材料に応じて、耐食性、耐熱性、耐磨耗性といった機能を基材に付与することができる。
【0003】
このような硬質皮膜は、化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、溶射法等によって基材表面に形成される。最近では、皮膜の形成速度が速い、幅広い種類の基材や皮膜材料に適用できる、基材の寸法に対する制限が少ないといった利点から、溶射法が積極的に利用されている。
【0004】
金属の基材上にセラミックス皮膜を形成した積層体に関連する技術として、例えば特許文献1には、金属基材と、該金属基材の表面を覆うセラミック被覆層と、金属基材側に配置された微粒子の凝集体層及びセラミック被覆層側に配置された粗粒子の凝集体層を有する金属結合層とを具備する耐熱材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−41619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、溶射によって形成される皮膜は、溶融した皮膜の材料が基材表面の凹凸に入り込む所謂アンカー効果によって、基材に付着する。そのため、従来、溶射法によって積層体を作製する場合、図9に示すように、金属等の基材91とその表面に形成される硬質皮膜93との間の密着強度を高めるために、基材91の表面92に予めブラスト処理を施して粗面化することが行われている。しかしながら、このような方法により作製した積層体においては、機械的な応力が加えられた場合に、基材91と硬質皮膜93との密着強度が十分ではないという問題があった。
【0007】
基材と硬質皮膜との間の密着強度に関して、特許文献1には、高温若しくは熱変動の激しい環境下において積層体を使用する場合に、セラミック被覆層の亀裂やこの亀裂に起因する金属基材からのセラミック被覆層の剥離を防止するため、両者の間に金属結合層を設けることが開示されている。しかしながら、特許文献1には、積層体に機械的な応力が加えられた場合における金属基材とセラミック被覆層との密着強度については一切開示されていない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、金属又は合金からなる基材と、この基材の表面に形成した溶射皮膜層との間の密着強度が高い積層体及び該積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る積層体は、金属又は合金からなる基材と、金属又は合金の粉末材料を該粉末材料の融点より低い温度に加熱されたガスと共に加速し、前記基材表面に固相状態のままで吹き付けて堆積させた中間層と、前記中間層上に溶射により形成された溶射皮膜層とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記積層体において、前記基材は、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金の内のいずれか1種からなることを特徴とする。
【0011】
上記積層体において、前記中間層は、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金の内のいずれか1種からなることを特徴とする。
【0012】
上記積層体において、前記中間層は、前記基材と同種の金属又は合金からなることを特徴とする。
【0013】
上記積層体において、前記中間層は、5〜100μmの厚さを有することを特徴とする。
【0014】
上記積層体において、前記溶射皮膜層は、セラミックス系材料、金属及びセラミックスの混合材料、金属、又は合金材料からなることを特徴とする。
【0015】
上記積層体において、前記溶射皮膜層は、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、イットリア、イットリア安定化ジルコニア、ステアタイト、フォルステライト、ムライト、チタニア、シリカ、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンクロム、窒化クロム、窒化ジルコニウム、炭化クロム、炭化タングステン、炭化ホウ素、窒化ホウ素、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金、タングステン、タングステン合金の内の少なくとも1種からなることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る積層体の製造方法は、金属又は合金からなる基材の表面に、金属又は合金の粉末材料を該粉末材料の融点より低い温度に加熱されたガスと共に加速し、固相状態のままで吹き付けて堆積させることにより中間層を形成する中間層形成工程と、前記中間層上に溶射によって溶射皮膜層を形成する溶射皮膜層形成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属又は合金からなる基材に対し、金属又は合金の粉末材料を該粉末材料の融点より低い温度に加熱されたガスと共に加速し、基材表面に固相状態のままで吹き付ける所謂コールドスプレー法により中間層を堆積させ、この中間層上に溶射皮膜層を形成するので、基材と溶射皮膜層との間の密着強度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る積層体の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る積層体の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る積層体の製造に使用されるコールドスプレー装置の概要を示す模式図である。
【図4】図4は、実施例に係る試験片の構造を示す模式図である。
【図5】図5は、中間層(CS皮膜)表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、比較例に係る試験片の構造を示す模式図である。
【図7】図7は、ブラスト加工された基材表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、引張試験の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、基材表面に溶射皮膜が形成された積層体の従来の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る積層体の構成を示す模式図である。
図1に示す積層体10は、金属又は合金からなる基材11と、該基材11の表面にコールドスプレー(CS)法により形成された中間層(CS皮膜)12と、該中間層12上に溶射法により形成された溶射皮膜層13とを備える。
【0021】
基材11は、例えば、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金といった金属又は合金により形成される。なお、図1に示す基材11は板状をなしているが、表面に溶射による皮膜形成が可能な形状であれば、基材11の形状は板状に限定されない。
【0022】
中間層12は、後述するコールドスプレー法により溶射皮膜層13の下地として形成されている。中間層12も、基材11と同様に、例えば、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金といった金属又は合金により形成されるにより形成される。中間層12の材料は、基材11と同種の金属又は合金であっても良いし、基材11と異種の金属又は合金であっても良い。
【0023】
コールドスプレー法とは、粉末材料を該粉末材料の融点よりも低い温度に加熱されたガスと共に加速し、基材11表面に固相状態のままで吹き付けて粉末材料を堆積させる成膜方法である。コールドスプレー法においては、粉末材料が基材11に高速に衝突することで、材料粉末と基材11との間に塑性変形が生じ、アンカー効果及び金属結合によって、基材11と中間層12との結合が得られる。
【0024】
溶射皮膜層13は、セラミックス系材料、金属及びセラミックスの混合材料、又は、金属若しくは合金材料からなる硬質皮膜であり、中間層12上に溶射により形成されている。溶射皮膜層13の材料は、例えば耐食、耐熱、耐磨耗といった基材11に対して付与する機能に応じて選択される。なお、溶射皮膜層13として金属若しくは合金材料を用いる場合、基材11及び中間層12とは異なる材料が選択される。
【0025】
セラミックス系材料としては、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、イットリア、イットリア安定化ジルコニア、ステアタイト、フォルステライト、ムライト、チタニア、シリカ、サイアロン、等の酸化物セラミックスや、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンクロム、窒化クロム、窒化ジルコニウム、炭化クロム、炭化タングステン等の非酸化物セラミックスや、炭化ホウ素、窒化ホウ素等のBCN系超硬質材料が挙げられる。
【0026】
金属若しくは合金材料としては、例えば、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金、タングステン、タングステン合金が挙げられる。
【0027】
金属及びセラミックスの混合材料としては、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物等のセラミックス(例えば、上述したセラミックス系材料)を主成分とし、金属又は合金を結合相(繋ぎ材)とする混合材料(サーメットとも呼ばれる)が挙げられる。例えば、炭化タングステンの粉末に、コバルトやニッケル等の金属粉末を繋ぎ材として分散させた混合材料を用いても良い。或いは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)とニッケル(Ni)−クロム(Cr)合金との混合組成物といった材料も挙げられる。
【0028】
次に、本実施の形態に係る積層体の製造方法を説明する。図2は、積層体10の製造方法を示すフローチャートである。
まず、工程S1において、所望の材料により所望の形状をなす基材11を作製する。
続く工程S2において、コールドスプレー法により基材11の表面に中間層12を形成する。
【0029】
図3は、中間層12の形成に使用されるコールドスプレー装置40の概要を示す模式図である。図3に示すように、コールドスプレー装置40は、圧縮ガスを加熱するガス加熱器41と、基材11に噴射する材料の粉末を収容し、スプレーガン43に供給する粉末供給装置42と、加熱された圧縮ガス及びそこに供給された材料粉末を基材11に噴射するガスノズル44と、ガス加熱器41及び粉末供給装置42に対する圧縮ガスの供給量をそれぞれ調節するバルブ45及び46とを備える。なお、材料粉末としては、例えば平均粒径が5〜100μm程度のものが用意される。
【0030】
圧縮ガスとしては、ヘリウム、窒素、空気などが使用される。ガス加熱器41に供給された圧縮ガスは、例えば50℃以上であって、中間層12の材料粉末の融点よりも低い範囲の温度に加熱された後、スプレーガン43に供給される。圧縮ガスの加熱温度は、好ましくは300〜900℃である。
一方、粉末供給装置42に供給された圧縮ガスは、粉末供給装置42内の材料粉末をスプレーガン43に所定の吐出量となるように供給する。
【0031】
加熱された圧縮ガスは、末広形状をなすガスノズル44により超音速流(約340m/s以上)にされる。この際の圧縮ガスのガス圧力は、1〜5MPa程度とすることが好ましい。圧縮ガスの圧力をこの程度に調整することにより、基材11と中間層12との間の密着強度の向上を図ることができるからである。スプレーガン43に供給された粉末材料は、この圧縮ガスの超音速流の中への投入により加速され、固相状態のまま基材11に高速で衝突して堆積し、皮膜を形成する。なお、材料粉末を基材11に固相状態で衝突させて皮膜を形成できる装置であれば、図3に示すコールドスプレー装置40に限定されるものではない。
【0032】
図4は、コールドスプレー法によって形成された中間層12の表面を拡大して示す写真である。上述したとおり、コールドスプレー法においては、粉末材料が固相状態のまま下層(基材11及び基材11上に先に堆積した中間層12)に衝突して結合するので、中間層12の表面は、外側(この後で形成される溶射皮膜層13側の界面)に向かって凸の形状をなしている。
【0033】
また、中間層12の厚さは、約5μm以上とすることが望ましい。それにより、基材11表面全体を中間層12で一通り覆うことができ、溶射皮膜層13が密着するのに十分な凸形状を形成することができるからである。一方、中間層12の厚さの上限については、中間層12が基材11の表面全体を一通り覆った状態になれば、中間層12を厚くしても効果に大きな差異は生じないので、中間層12の形成工程に要する時間等を考慮し、100μm程度を上限にすると良い。
【0034】
続く工程S3において、溶射法により中間層12上に所望の厚さの溶射皮膜層13を形成する。それにより、図1に示す積層体10が完成する。
【0035】
このように作製された積層体10は、次のような特徴を有している。まず、中間層12と基材11との界面及び中間層12の内部においては、アンカー効果及び金属結合により強固な結合が得られている。また、中間層12の表面は、溶射皮膜層13側に向かって、複雑な凸の形状をなしている。そのため、溶射炎によって溶融した溶射皮膜層13の材料が、中間層12表面の凸と凸との間の狭く凹んだ部分に入り込むことで、溶射皮膜13のアンカー効果を向上させる。それにより、中間層12及び溶射皮膜層13も互いに強固に結合する。その結果、基材11と溶射皮膜層13との間において高い密着強度を得ることができる。
【0036】
なお、中間層12をコールドスプレー法により形成したか否かについては、基材11と中間層12との界面(アンカー層の有無)や、中間層12の表面(図4参照)を観察することにより判別することができる。例えば、溶射法の場合、扁平微粒子の積層により、所謂ラメラ構造を有する積層構造が形成されるため、コールドスプレー法を溶射法から識別することは可能である。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、金属若しくは合金からなる基材11表面に、コールドスプレー法による中間層12を介して溶射による溶射皮膜層13を積層することにより、基材11と溶射皮膜層13との間における密着強度を向上させることが可能となる。
【実施例】
【0038】
<試験片の作製>
実施例に係る試験片として、図4に示すように、直径約25mm、厚さ約20mmの円柱状のアルミニウムテストピース20を用意し、このアルミニウムテストピース20の一方の底面に、厚さ約5mmの銅基材21を接着剤により接着した。銅基材21としては、無酸素銅C1020を用いた。この銅基材21上に、下地処理として、コールドスプレー法により、厚さ約30μmの銅中間層(CS皮膜)22を形成した。この際、原料粉として平均粒径が約30μmの銅粉末を用い、圧縮ガスとして、約800℃、ガス圧力を4MPaの窒素を用いた。図5は、銅中間層22の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。この銅中間層22表面の平均面粗さRaは、5〜8μm程度であった。さらに、銅中間層22上に、溶射皮膜層として、厚さ約400μmのアルミナ(Al)層23を形成した。このアルミナ層23の上面に、アルミニウムテストピース20を接着剤により接着した。
【0039】
また、比較例に係る試験片として、図6に示すように、アルミニウムテストピース20の一方の底面に、厚さ約5mmの銅基材31を接着剤により接着した。銅基材31としては、実施例と同様に、無酸素銅C1020を用いた。この銅基材31の上面を、下地処理として、ブラスト加工した。この際、平均粒径が350μmのホワイトアルミナの砥粒を用いた。図7は、銅基材31の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。このとき、銅基材31表面の平均面粗さRaは、4〜6μm程度であった。さらに、銅基材31上に、溶射皮膜層として、厚さ約400μmのアルミナ層32を形成した。このアルミナ層32の上面に、アルミニウムテストピース20を接着剤により接着した。
【0040】
参考例に係る試験片として、比較例における銅基材31の代わりに、Al−Mg系アルミニウム合金A5052を用いた。
【0041】
<引張り試験>
実施例、比較例、及び参考例に係る試験片に対し、一方(例えば図の上側)のアルミニウムテストピース20を固定し、他方のアルミニウムテストピース20に対して円柱の高さ方向(例えば図中の引張り方向)に荷重をかける引張り試験を行い、銅基材21、31とアルミナ層23、32との間で剥離が生じたときの引張り強度(剥離強度)を測定した。このような実験を、実施例については8個の試験片、比較例については3個の試験片、参考例については3個の試験片について行った。
【0042】
図8は、引張り試験の結果を示すグラフであり、実施例、比較例、及び参考例に対する実験により測定された剥離強度の平均値を示している。
実施例において剥離が生じた際の剥離強度は、平均で約18MPaであった。この剥離は全て、銅中間層22とアルミナ層23との間で生じていた。これは、銅中間層22と銅基材21とは金属結合で結合しているので、特に密着強度が高い(例えば、70MPa以上)ためと考えられる。
【0043】
それに対して、比較例における剥離強度は平均で約5MPa弱であり、実施例の1/3にも満たなかった。また、参考例における剥離強度は平均約8.5MPaであり、大きくても9MPa程度に留まっていた。
【符号の説明】
【0044】
10 積層体
11、91 基材
12 中間層
13 溶射皮膜層
20 アルミニウムテストピース
21、31 銅基材
22 銅中間層(CS皮膜)
23、32 アルミナ層(溶射皮膜層)
40 コールドスプレー装置
41 ガス加熱器
42 粉末供給装置
43 スプレーガン
44 ガスノズル
45、46 バルブ
92 表面(皮膜形成面)
93 硬質皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又は合金からなる基材と、
金属又は合金の粉末材料を該粉末材料の融点より低い温度に加熱されたガスと共に加速し、前記基材表面に固相状態のままで吹き付けて堆積させた中間層と、
前記中間層上に溶射により形成された溶射皮膜層と、
を備えることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記基材は、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金の内のいずれか1種からなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記中間層は、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金の内のいずれか1種からなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記中間層は、前記基材と同種の金属又は合金からなることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記中間層は、5〜100μmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記溶射皮膜層は、セラミックス系材料、金属及びセラミックスの混合材料、金属、又は合金材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記溶射皮膜層は、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、イットリア、イットリア安定化ジルコニア、ステアタイト、フォルステライト、ムライト、チタニア、シリカ、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化チタンクロム、窒化クロム、窒化ジルコニウム、炭化クロム、炭化タングステン、炭化ホウ素、窒化ホウ素、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、クロム、クロム合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、銀、銀合金、錫、錫合金、タンタル、タンタル合金、タングステン、タングステン合金の内の少なくとも1種からなることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
金属又は合金からなる基材の表面に、金属又は合金の粉末材料を該粉末材料の融点より低い温度に加熱されたガスと共に加速し、固相状態のままで吹き付けて堆積させることにより中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層上に溶射によって溶射皮膜層を形成する溶射皮膜層形成工程と、
を含むことを特徴とする積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67825(P2013−67825A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205365(P2011−205365)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】