説明

積層包装体の製造装置

【課題】版ベルトが有していた、発熱組成物が版ベルト以外の部分に付着するトラブルや、版ベルトの板厚等の構造上の問題を解消するとともに、伸縮性および柔軟性を有している包材上に発熱組成物を正確で且つ均一な形状に積層することを課題とする。
【解決手段】回転する筒状の版ドラム本体12に、積層用抜孔13が設けられてなる版ドラム10と、該版ドラム内側に設けられ、且つ発熱組成物3を版ドラムに供給する吐出口部20aを備える供給ノズル20と、前記発熱組成物が積層される基材シートS1を走行させるベルト状搬送装置6とを備え、前記ベルト状搬送装置は、前記版ドラムの下方に配置され、前記ベルト状搬送装置の搬送用ベルト33と版ドラムとが、前記基材シートの一部を版ドラム本体の外周面に沿うように面状に挟着保持し、該挟着保持された範囲内で前記供給ノズルから発熱組成物を版ドラムの積層用抜孔に充填し基材シート上に積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱組成物を一対のシート状の包装材で積層状に包装する積層包装体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冬季において、暖を採る目的から使い捨てカイロが衣服内に入れて使用されている。かかる使い捨てカイロは、空気中の酸素との接触による酸化反応に伴う発熱作用を得るために、鉄粉、水、塩類、活性炭等を主な組成として配合された発熱組成物が袋内に収容された積層包装体からなる。
【0003】
かかる積層包装体の製造装置としては、円筒状の版ドラム(パターンロール)の積層用抜孔に、粘体状の発熱組成物を素材押出ノズルから押し出し供給するとともに、パターンロールに基材シートを接触させながら走行させ、基材シート上に積層用抜孔の形状の発熱組成物を膜状に積層し、さらに、基材シート上に被膜材シートを積層させて発熱組成物を被覆するものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の積層包装体の製造装置として、版ベルトとベルト状搬送装置を組み合わせたものも公知である(例えば、特許文献2参照)。すなわち、かかる積層包装体の製造装置の版ベルトは、積層用抜孔を設けた無端帯ベルト状の版体から構成されている。また、ベルト状搬送装置は、上流部の傾斜搬送路と下流部の水平搬送路とから構成されている。そして、版ベルトを傾斜させ、かかる傾斜する版ベルトと、ベルト状搬送装置の傾斜搬送路とで、基材シートを傾斜状に挟着保持して走行させ、版ベルトに形成された積層用抜孔に充填供給された粘体状の発熱組成物を、傾斜状の基材シート上に積層する。さらに、被覆材シートを積層して基材シートにシールすると共に、所定形状に打ち抜くことによって、積層包装体(発熱体)を連続的に製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3164782号公報
【特許文献2】特開2007−44100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の装置(版ドラムと受けロールを備えた積層装置)において、素材押出ノズルは、その吐出口部が積層用抜孔側に指向するように、パターンロール内側に設けられている。かかる素材押出ノズルの吐出口部から積層用抜孔に充填された発熱組成物を、包材(基材シート)上に薄板状と成して均一に積層するには、素材押出ノズルに適宜設けられたドクターで、発熱組成物を摺り切る必要がある。基材シートに積層された発熱組成物をドクターで摺り切るときに生じる抵抗は、所定速度で走行する基材シートを停止させようとする。
【0007】
しかしながら、基材シートは伸縮性および柔軟性を有しているとともに、円筒状の版ドラムと円形の受けロールとの接触位置が、版ドラムと受けロールとの回転中心方向に沿う線であるため、接触面積が小さい。すなわち、円形部材同士が接触するため、基材シートを挟着保持する範囲が小さくなる。
【0008】
この結果、基材シートに積層された発熱組成物をドクターで摺り切るときに生じる抵抗により、基材シートにおける発熱組成物の積層部よりも直前の上流側にしわが発生し、基材シートは、しわの状態で発熱組成物が積層され、その後に伸長されることとなり、このような基材シートの伸縮により、積層された発熱組成物の形状がゆがむなどの問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の装置(版ベルトとベルト状搬送装置を組み合わせた装置)は、版ベルトに供給した発熱組成物をドクターで摺り切った際に、ドクターの取り付け調整不良やドクターの磨耗などにより、版ベルト上の発熱組成物が完全に除去できない場合、版ベルトを巻き掛けたシャフトロールに発熱組成物が付着し、その結果、版ベルト全体に汚れが広がり基材シートを汚し、製品の汚れの原因となる問題があった。
【0010】
また、版ベルトの材質にステンレススチール使用する場合、版ベルトの板厚が薄いと、版ベルトのピッチあわせ駆動用の穴の強度が不足するため、版ベルトの寿命が短くなる欠点があった。反対に、版ベルトの板厚を厚くすると剛性が大きくなりシャフトロール径を大きくする必要があり装置が大掛かりになる欠点があった。
【0011】
厚い版ベルトの剛性を小さくするために、ステンレススチールベルトにゴムシートや樹脂シートを張り合わせることが可能であるが、ステンレススチールベルトにゴムシート等を張り合わせた場合には、長期の使用でベルトとシートとの接着が剥がれる問題がある。また、版ベルトの製作に手間がかかるとともに、版ベルトの形状に制約を受けるなどの欠点があり、版ベルトの製作には、長期間を必要とし価格も高価である。
【0012】
そこで、本発明は、円筒状の版ドラムを採用することにより、版ベルトが有していた、発熱組成物が版ベルト以外の部分に付着するトラブルや、版ベルトの板厚等の構造上の問題を解消するとともに、包材上に発熱組成物を正確で且つ均一な形状に積層することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の積層包装体の製造装置は、前記課題を解決するためになされたもので、回転する筒状の版ドラム本体に、積層用抜孔が設けられてなる版ドラムと、該版ドラム内側に設けられ、且つ発熱組成物を版ドラムに供給する吐出口部を備える供給ノズルと、前記発熱組成物が積層される基材シートを走行させるベルト状搬送装置とを備え、前記ベルト状搬送装置は、前記版ドラムの下方に配置され、前記ベルト状搬送装置の搬送用ベルトと版ドラムとが、前記基材シートの一部を版ドラム本体の外周面に沿うように面状に挟着保持し、該挟着保持された範囲内で前記供給ノズルから発熱組成物を版ドラムの積層用抜孔に充填し基材シート上に積層することにある。
【0014】
前記積層包装体の製造装置は、前記ベルト状搬送装置の搬送用ベルトと版ドラムとが、前記基材シートの一部を版ドラム本体の外周面に沿うように面状に挟着保持し、この挟着保持された範囲内で前記供給ノズルから発熱組成物を版ドラムの積層用抜孔に充填し基材シート上に積層するため、基材シートに積層された発熱組成物をドクターで摺り切るときに生じる抵抗が発生しても、基材シートの発熱組成物を積層する部分にしわが起こり難くなり、発熱組成物の形状が乱れの少ない積層が可能となる。
【0015】
前記積層包装体の製造装置において、前記搬送用ベルトと版ドラムとが接する範囲は、版ドラム中心角が5°以上に設定されている。なお、版ドラムの中心角が5°以上に設定したのは、中心角が5°よりも小さいと、搬送用ベルトと版ドラムとで挟持された範囲が小さくなり、積層パターンの大きさ(積層用抜孔の大きさ)が制限され、前記効果が得られなくなるためである。
【0016】
前記積層包装体の製造装置において、無端帯状の搬送用ベルトがシャフトロールにより回転され、前記基材シートの上流側のシャフトロールが、前記基材シートが介在された搬送用ベルトを版ドラムに接触させる構成である。
【0017】
前記積層包装体の製造装置において、前記供給ノズルの位置で且つ搬送用ベルトの下側には、充填補助用の磁石が設けられていることにある。
【0018】
前記積層包装体の製造装置において、前記版ドラムと前記搬送用ベルトが離れる位置における搬送用ベルトの下側には、版離れ用の磁石が設けられていることにある。
【0019】
前記積層包装体の製造装置において、前記版ドラムの下流位置には、前記基材シートに後工程で吸水剤等の粉体を散布する粉体散布装置が設置されていることにある。
【0020】
前記積層包装体の製造装置において、前記搬送用ベルトの表面には、基材シートとのスリップを防止する手段が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、版ドラムとベルト状搬送装置とにより、基材シートの一部を面状に挟着保持し、その挟着保持された範囲内に発熱組成物を積層するので、柔軟性や伸縮性のある基材シートであっても、基材シートの発熱組成物を積層する部分にしわが起こり難くなり、発熱組成物の形状が乱れの少ない積層が可能である。この結果、基材シート上に積層される発熱組成物が歪んで変形するのを防止して、包材上に発熱組成物を正確で且つ均一な形状に積層することができる。
【0022】
また、版ベルトのドクター面にシャフトロールを必要とした版ベルト方式に対し、シャフトロールを不要とした版ドラムにより、発熱組成物が版ベルト以外の部分に付着するトラブルや、版ベルトの板厚等の構造上の問題も解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態の概略を示す正面図である。
【図2】同概略を示す平面図である。
【図3】同全体概略を示す正面図である。
【図4】積層包装体を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
先ず、製造される積層包装体50は、図4(a)および(b)に示すように、一方の包材51上面の周囲所定幅のシール部52を除いた発熱領域に、粘体状(粘調質)の発熱組成物3を積層すると共に、該発熱組成物3上面などに粉体状の吸水剤4を積層し、発熱組成物3および吸水剤4等を他方の包材53で被覆し、両方の包材51、53の周囲をシール(粘着、熱接着、熱融着)している。
【0026】
さらに、両方の包材51、53の少なくとも一方は通気性を有しており、積層包装体50の使用時に空気流通を可能と成すと共に、流通段階では発熱しないように、積層包装体50全体は気密性(非通気性)の外装材(図示省略)に包装される。
【0027】
発熱組成物3としては、主に磁性材である鉄粉、水、塩類、活性炭が配合されると共に、増粘剤その他の素材を配合して混合したインキ状ないしクリーム状のものが挙げられる。
【0028】
吸水剤4としては、水や塩類の水溶液を円滑に且つ、大量に吸収する高分子材料(吸水性ポリマー)が挙げられる。
【0029】
次に、本発明の一実施の形態に係る積層包装体の製造装置1について、図1〜図3を参照しながら説明する。かかる製造装置1は、ロール状に巻かれた基材シートS1(製造後における一方の包材51に相当)を走行させる多数のローラー2a、2b、2cと、基材シートS1に発熱組成物3を供給する素材供給手段5と、発熱組成物3が供給された基材シートS1を走行させるベルト状搬送装置6と、発熱組成物3が積層された基材シートS1上に被膜材シートS2(製造後における他方の包材51に相当)を走行させるローラー3a、3b、3cと、発熱組成物3を基材シートS1と被膜材シートS22a、2b、2cとで包装する積層包装手段7とを備えている。
【0030】
前記素材供給手段5は、筒状の版ドラム10と、発熱組成物3を版ドラム10に充填供給する供給ノズル20と、粉体としての吸水剤4を散布する粉体散布装置27とを備えている。
【0031】
版ドラム10は、図2に示すように、一対の回転枠11、11と、両方の回転枠11、11間にステンレス板、アルミ板等の非磁性材によって筒状に形成された版ドラム本体12とからなる。そして、一対の回転枠11、11は、装置本体側の機枠8の両側に対向して設けられた複数の支持ローラー9a、9b、9c、9dによって回転自在に支持されている。版ドラム本体12には、所定形状の積層用抜孔13が円周方向に複数形成されている。なお、積層用抜孔13の形状は特に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0032】
回転枠11、11の外周には歯車14が周設されており、この歯車14にモータ等の回転駆動源15に連結された駆動歯車16が歯合されている。そして、回転駆動源15によって版ドラム10を所望する速度で回転制御するようになっている。
【0033】
供給ノズル20は、版ドラム本体12内に配置されている。供給ノズル20を固定させる手段は、特に限定されるものではないが、例えば、版ドラム本体12内に挿通された連結棒(図示省略)を介して機枠8側に固定することができる。
【0034】
供給ノズル20は発熱組成物3を加圧送給するポンプ(図示省略)と接続され、発熱組成物3を所定幅で薄板状に吐出させるスリット状の吐出口部20aが形成されると共に、発熱組成物3の吐出方向を版ドラム本体12の積層用抜孔13側に指向させている。また、供給ノズル20の吐出口部20aで且つ基材シートS1の走行方向の下流側には、版ドラム本体12内周面に摺接するように、発熱組成物3を摺り切るためのドクター25が設けられている。
【0035】
ベルト状搬送装置6は、版ドラム10の下方に設けられており、上流側の搬送用シャフトロール31と、下流側の搬送用シャフトロール32と、両方のロール31、32に巻き掛けられ、且つ版ドラム10とで基材シートS1を挟着保持する無端帯状の搬送用ベルト33と、駆動手段としてのモータ35とを備えている。なお、上流側とは基材シートS1の走行方向の上流側をいう。
【0036】
モータ35は減速機(図示省略)を介して下流側の搬送用シャフトロール32を回転駆動することにより、搬送用ベルト33を図1に示す矢印方向に回転制御する。上流側の搬送用シャフトロール31の回転中心(回転軸)31aは、版ドラム10の回転中心10aよりも上流側に位置している。また、上流側の搬送用シャフトロール31の回転中心31aと下流側の搬送用シャフトロール32の回転中心32aとの高さは同等に設定されているとともに、上流側の搬送用シャフトロール31の直径D1は、下流側の搬送用シャフトロール32の直径D2よりも大きく設定されている。
【0037】
また、上流側の搬送用シャフトロール31の上面は、版ドラム本体12の下面よりも上方に位置するとともに、上流側の搬送用シャフトロール31の外周面と、版ドラム本体12の外周面とを接近させることにより、版ドラム本体12は、搬送用ベルト33の上部側で且つ上流部を下方に押圧することとなる。
【0038】
この結果、搬送用ベルト33の一部は版ドラム本体12の外周面に沿うように湾曲した状態で版ドラム本体12に押圧されるため、搬送用ベルト33に湾曲部33aが形成される。この湾曲部33aは、版ドラム本体12の円周方向に沿って所定の長さ(搬送用ベルト33と版ドラムとが接する所定範囲)を有している。具体的には、供給ノズル20の充填部となる吐出口部20aが、湾曲部33aの下流部Aに設けられ、版ドラム10の回転中心10aから下流部Aと上流部Bとを結ぶ半径間の角度(中心角)αが、5°以上に設定されている。
【0039】
このように、中心角αを5°以上に設定することにより、搬送用ベルト33と版ドラム本体12とで基材シートS1を挟着保持する範囲を大きく確保できる。そして、この挟着保持された範囲において、搬送用ベルト33にはテンションが付与されており、この挟着保持された範囲の湾曲部33aは、基材シートS1を版ドラム本体12の外周面に押圧させ、供給ノズル20は、かかる面状に挟着保持された範囲内において、基材シートS1に発熱組成物3を積層する構成である。
【0040】
なお、38は、搬送用ベルト撓み防止テンションローラである。この搬送用ベルト撓み防止テンションローラ38は、版ドラム本体12が搬送用ベルト33から離脱する際に、搬送用ベルト33が撓むのを防止するためのもので、搬送用ベルト33の下部側部分を下方に押圧して搬送用ベルト33にテンションを付与している。この搬送用ベルト撓み防止テンションローラ38の個数は単数であっても複数であってもよく、また、搬送用ベルト撓み防止テンションローラ38は、搬送用ベルト33にテンションを付与する限りにおいて任意の位置に設けることができる。
【0041】
また、供給ノズル20の下方で且つ搬送用ベルト33の内側には、磁気を備えさせるために、磁気力を可変制御できる磁石55が設けられている。磁石55は、磁気力が一定な永久磁石であってもよい。かかる磁石55は、搬送用ベルト33の走行方向に所定長さを有しており、版ドラム本体12の積層用抜孔13に充填された発熱組成物3を基材シートS1に吸着させる充填補助用として機能するとともに、版ドラム10と搬送用ベルト33とが離れる位置における版離れ用として機能するものである。なお、磁石55は、充填補助用のものと、版離れ用のものとそれぞれ別体のものであってもよい。
【0042】
前記発熱組成物3および吸水剤4が積層された基材シートS1の上方部に、被覆材シートS2(製造後における他の包材53に相当)が、ローラー3a、3b、3cにより繰り出される。なお、56は、かかる被覆材シートS2にホットメルト等の接着剤をスプレー状に塗布する接着剤塗布手段である。
【0043】
前記積層包装手段7は、基材シートS1と被覆材シートS2の接合以降の搬送途中に設けられ、両方のシートS1、S2を接着する上下一対の熱ロールなどから成るシール手段57と、所望外形形状に切断する上下一対のカッターロールなどから成る裁断手段58とからなる。
【0044】
次に、前記積層包装体の製造装置1による製造方法について説明する。
【0045】
先ず、製造ラインの上流側において、版ドラム10とベルト状搬送装置6との間に、基材シートS1を所定速度で走行させる。また、基材シートS1は、版ドラム10とベルト状搬送装置6との協働により、湾曲されながら走行する。すなわち、ベルト状搬送装置6の搬送用ベルト33と、版ドラム10の版ドラム本体12とは、基材シートS1の一部を版ドラム本体12の外周面に沿わせて面状に挟着保持する。
【0046】
また、基材シートS1の走行速度に一致させるように、版ドラム10を回転駆動源15によって回転制御するとともに、ポンプによって加圧送給された発熱組成物3が、供給ノズル20の吐出口部20aから押し出しされる。供給ノズル20から押し出しされた発熱組成物3は、版ドラム本体12の積層用抜孔13を通って、基材シートS1上で且つ搬送用ベルト33と版ドラム10とで挟着保持された範囲内に、積層用抜孔13の外形形状で積層される。
【0047】
かかる発熱組成物3の積層時にあっては、磁石55により、発熱組成物3中に含まれる磁性材である鉄分によって、発熱組成物3が基材シートS1上に吸着されながら積層される。また、ドクター25は、回転する版ドラム本体12の内周面を摺動するため、積層用抜孔13に充填された余分な発熱組成物3を摺り切る。
【0048】
ドクター25による摺切り時の抵抗が基材シートS1に作用するが、ドクター25の直前部(発熱組成物3の充填部よりも上流部)は、搬送用ベルト33と版ドラム本体12とで挟着保持されているため、基材シートS1にしわが発生することはなく、基材シートS1が不用意に伸長するのを防止できる。この結果、発熱組成物3を、しわの発生していないシートS1に所定形状で変形することなく、正確に且つ均一に積層することができる。
【0049】
さらに、積層された発熱組成物3は、磁石55により基材シートS1に吸着されていることから、回転する版ドラム本体12から容易に離間させることができる。
【0050】
次に、搬送用ベルト33上の基材シートS1の発熱組成物3に、後工程で粉体散布装置27から吸水剤4が散布され、被膜材シートS2の重ね合わせ面に、接着剤塗布部56によって接着剤が塗布される。さらに、基材シートS1と被膜材シートS2はシール手段57によりシールされた後に、裁断手段58により個別の所望形状の積層包装体50に打ち抜きされ、その後に、個別の積層包装体50は気密状の袋(図示せず)で包装される。
【0051】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、基材シートS1を湾曲させる手段としては、搬送用シャフトロール31とは別部材の単数または複数のロール36であってもよい。かかる場合には、上流側の搬送用シャフトロール31は下流側の搬送用シャフトロール32と同等の直径に設定できる。なお、前記実施の形態と同一部材は、同一符号を付してそれぞれの説明は省略する。
【0052】
また、供給ノズル20は、必ずしも鉛直下向きでなくてもよく、図5に仮想線で示すように、基材シートS1の上流側に若干傾斜させることも可能である。この供給ノズル20傾斜角度は、供給ノズル20の上流側直前に基材シートS1の挟着保持された部分を有するように、任意に設定可能である。
【0053】
また、前記搬送用ベルト33の表面(基材シートS1に接する面)には、基材シートS1とのスリップを防止する手段が設けられている。具体的には、図2に示すように、かかる手段としては、搬送用ベルトの表面全面または一部の表面に設けられた摩擦係数の大きなゴム板40を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0054】
しかも、磁石55には、基材シートS1の湾曲部33aに沿うように、搬送用ベルト33を下方から案内するガイド部材59を設けることも可能である。かかるガイド部材は、磁石55とは別部材として設けることも可能である。
【0055】
また、発熱組成物3としては、粘体状のものを例示したが、発熱組成物は、粉体状のものであってもよい。発熱組成物3が粉体状の場合において、発熱組成物3を供給ノズル20に搬送供給する供給手段としては、ベルト搬送装置や、スクリュー搬送装置を挙げることができる。また、供給ノズル20から発熱組成物3は、自重で落下し前記磁石55の磁力吸着により、基材シートS1に吸着させることができる。なお、粉体散布装置27を必ずしも設ける必要はない。
【符号の説明】
【0056】
1 積層包装体の製造装置
3 発熱組成物
4 吸水剤
5 素材供給手段
6 ベルト状搬送装置
7 積層包装手段
10 版ドラム
12 版ドラム本体
13 積層用抜孔
20 供給ノズル
20a 吐出口部
25 ドクター
27 粉体散布装置
31 上流側の搬送用シャフトロール
32 下流側の搬送用シャフトロール
33 搬送用ベルト
33a 湾曲部
36 ロール
40 ゴム板
50 積層包装体
51 一方の包材
53 他方の包材
55 磁石
S1 基材シート
S2 被膜材シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する筒状の版ドラム本体に積層用抜孔が設けられてなる版ドラムと、
該版ドラム内側に設けられ、且つ発熱組成物を版ドラムに供給する吐出口部を備える供給ノズルと、
前記発熱組成物が積層される基材シートを走行させるベルト状搬送装置とを備え、
前記ベルト状搬送装置は、前記版ドラムの下方に配置され、前記ベルト状搬送装置の搬送用ベルトと版ドラムとが、前記基材シートの一部を版ドラム本体の外周面に沿うように面状に挟着保持し、該挟着保持された範囲内で前記供給ノズルから発熱組成物を版ドラムの積層用抜孔に充填し基材シート上に積層することを特徴とする積層包装体の製造装置。
【請求項2】
前記請求項1記載の積層包装体の製造装置において、前記搬送用ベルトと版ドラムとが接する範囲は、版ドラム中心角が5°以上であることを特徴とする積層包装体の製造装置。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の積層包装体の製造装置において、
前記ベルト状搬送装置は、無端帯状の搬送用ベルトがシャフトロールにより回転され、前記基材シートの上流側のシャフトロールが、前記基材シートが介在された搬送用ベルトを版ドラムに接触させる構成であることを特徴とする積層包装体の製造装置。
【請求項4】
前記請求項1〜3の何れか一つに記載の積層包装体の製造装置において、
前記供給ノズルの位置で且つ搬送用ベルトの下側には、充填補助用の磁石が設けられていることを特徴とする積層包装体の製造装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の積層包装体の製造装置において、
前記版ドラムと前記搬送用ベルトが離れる位置における搬送用ベルトの下側には、版離れ用の磁石が設けられていることを特徴とする積層包装体の製造装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れか一つに記載の積層包装体の製造装置において、
前記版ドラムの下流位置には、前記基材シートに後工程で吸水剤等の粉体を散布する粉体散布装置が設置されていることを特徴とする積層包装体の製造装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6の何れか一つに記載の積層包装体の製造装置において、
前記搬送用ベルトの表面には、基材シートとのスリップを防止する手段が設けられていることを特徴とする積層包装体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−254369(P2010−254369A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109740(P2009−109740)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(395023565)株式会社元知研究所 (5)
【Fターム(参考)】