説明

積層型ZnO系単結晶シンチレータおよびその製造方法

【課題】発光量を増加させた積層型ZnO系単結晶シンチレータおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】バンドギャップが異なるZnO系半導体の積層体を製造し、バンドギャップが小さい層をα線や電子線などの電離放射線が侵入できる厚みである5μm〜50μmにすることで、積層型ZnO系単結晶シンチレータ110の発光量を大幅に増加させる。ZnO系単結晶の組成は(Zn1-x-yMgxCdy)O[0≦x≦0.145、0≦y≦0.07]である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレーション検出器におけるシンチレータとして用いる積層型ZnO系単結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を計測するためのデバイスとして、シンチレーション検出器がある。典型的なシンチレーション検出器の構成を図1に示す。図1において、放射線がシンチレーション検出器100に入射すると、シンチレータ結晶110で入射した放射線に応じた蛍光が生じ、この光を光電子倍増管や半導体検出器120で検出することで、放射線を検出することができる。
【0003】
次世代シンチレータ・デバイスの候補として、TOF(Time of Flight)方式が提案されフッ化物を中心に検討が進められている。時間分解を行うためには、蛍光寿命が短ければ短いほど分解能を向上させることが可能であり、BaF2が最も理想に近いとされてきた。しかしながら、BaF2は発光量が少ない、発光波長が短いため石英窓を具備する高価な光電子倍増管(PMT)が必要になり、汎用のPMTが使用できないなどの問題点を抱えている。
【0004】
そこで、BaF2に替わる蛍光寿命が短いシンチレータとして、ワイドバンドギャップ化合物半導体の励起子発光シンチレータが提案されている。ZnO、CdSなどの化合物半導体をシンチレータとして用いれば、蛍光寿命が短く、発光波長も370nmとなり、汎用的なPMTや半導体検出器が使用可能となる。
【0005】
一方、シンチレーション応用として汚染物質の放射能分布の確認用途がある。従来は、この確認にオードジオグラフィー(ARG)やイメージングプレートが利用されてきた。これらは数十年にわたり使用されてきているため動作が安定している利点はあるが、前者は現像フィルムが必要で、かつフィルムからでは放射能強度がわからないという問題を持つ。後者はプレートそのものは使いやすいが、大型の測定装置にかけて解析する必要がある。また、両者とも測定対象物(汚染物)から測定試料を作製し、装置にセットする必要があるとともに、事前に露光時間を決定する(適切な露光時間を推測する)必要があるため、その場での確認はできずに、結果が出るまでに時間を要するという問題点がある。
【0006】
これらパッシブな計測装置に対し、リアルタイムに放射線を検知したら発光し、それを電気信号に変換することができれば、放射能汚染の早期発見、迅速対応に活かすことが可能となる。
【0007】
上記問題点を解決する手段として、ワイドバンドギャップ化合物半導体の励起子発光シンチレータがDerenzoらによって提案されている(非特許文献1;Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A505 (2003) 111−117、特許文献1;米国特許出願公開第2006/219928号明細書)。
【0008】
ZnO、CdSなどのワイドギャップ型化合物半導体をシンチレータとして用いれば、蛍光寿命が短く、発光波長も370〜380nmとなり、汎用的なPMTや半導体検出器が使用可能となる。同文献によれば、X線励起による蛍光寿命は0.11nsec〜0.82nsecと蛍光寿命が短い。しかしながら、これらの文献に記載されたシンチレータ材料は多結晶体である。多結晶体の場合、微結晶の向きなどにより発光強度のムラが生ずることがあり、粒径により空間分解能が左右されるという欠点を有する。高空間分解能および効率的なシンチレータ発光のためにはシンチレータは単結晶である方が好ましい。
【0009】
また、III族およびランタノイドを1ppm〜10mol%程度ドープしたZnO単結晶の励起子発光型シンチレータ応用が提案されている(特許文献2;国際公開第2007/094785号パンフレット、非特許文献2;Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A505 (2003) 82−84)。
【0010】
同文献によれば、InドープZnO単結晶において蛍光寿命が0.6nsecと記載されている。しかしながら、これらの文献に記載されたシンチレータ材料は“High pressure direct melting technique"法で作製されている。同法では、高圧かつ高温が必要で結晶成長コストが高い上、単結晶部分と多結晶部分の混在するため、前記多結晶体と同様の不具合が存在する。
【0011】
上記多結晶体の問題点を解決する手法として、ワイドバンドギャップ型ZnO単結晶の励起子発光を利用したシンチレータが提案されている(特許文献3;国際公開第2005/114256号パンフレット、非特許文献3;独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 平成17年度研究成果報告書“実用型TOF検出器用超高速シンチレータ単結晶材料の開発”)。
【0012】
同報告では、ZnO単結晶成長法としてPt内式のオートクレーブを用いて水熱合成法を採用している。同成長法を用いると、高い結晶性を有する大型のIII族ドープZnO単結晶を成長することが可能となる。しかしながら、ZnOなどを用いた励起子発光型シンチレータには、自己吸収が原因となって発光量が少ないという問題点があった。すなわち、励起子発光波長域では、結晶そのものが吸収体となるため、特に透過型シンチレータデバイスではシンチレータ発光量が少なくなっていた。したがって、ZnO系励起子発光型シンチレータの発光量は、一般的なシンチレータであるBi4Ge312(BGO)の約10〜15%程度に留まっていた(非特許文献4;高エネルギーニュース Vol.21 No.2 41−50 2002)。
【0013】
一方、レーザパルス堆積法(PLD)、MBEおよびMOCVD法などの気相成長法を用いると高品質なZnO単結晶が成長可能であるが、気相成長法では製膜速度が遅く、1μm以上の膜厚を有するZnO単結晶を成長させるためには多大な時間が掛かる欠点を有していた。ZnO単結晶の場合、α線や電子線では5〜50μm程度の侵入深さがあり、ZnO単結晶だけでα線や電子線を阻止するのに十分な厚みを気相成長法では短時間で成長できない問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/219928号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/094785号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/114256号パンフレット
【特許文献4】特開平2008−230906号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A505 (2003) 111−117
【非特許文献2】Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A505 (2003) 82−84
【非特許文献3】独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 平成17年度研究成果報告書“実用型TOF検出器用超高速シンチレータ単結晶材料の開発”
【非特許文献4】高エネルギーニュース Vol.21 No.2 41−50 2002
【非特許文献5】Appl. Phys. Lett. 78 1237 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述するような状況において、発光量を増加させた積層型ZnO系単結晶シンチレータおよびその製造方法の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、Mgを含有するZnO系半導体を含む積層体について出願している(特許文献4;特開平2008−230906号公報)。同出願の方法を用いれば、バンドギャップが異なるZnO系単結晶積層体を製造することができる。本発明者らは鋭意研究の結果、バンドギャップが異なるZnO系半導体の積層体を製造し、バンドギャップが小さい層をα線や電子線などの電離放射線が侵入できる厚みにすることで発光量を大幅に増加させることができることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、バンドギャップが異なるZnO系半導体の積層体を製造し、バンドギャップが小さい層をα線や電子線などの電離放射線が侵入できる厚みにすることで発光量を大幅に増加させた積層型ZnO系単結晶シンチレータおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、典型的なシンチレーション検出器の構成である。
【図2】図2は、本発明の第3〜5の実施形態において使用する一般的なLPE(Liquid phase epitaxial:LPE)成長炉である。
【図3】図3は、実施例で用いたLPE成長炉の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。ZnOなどの化合物半導体は、α線や電子線などの電離放射線を照射するとバンドギャップに応じた励起子発光を発生する。ZnO単体のバンドギャップは3.30eV程度である。励起子発光自体はZnO自身にほとんど吸収され、電離放射線を照射した面の反対側にはほとんど透過しない。したがって、シンチレータの発光量に寄与するのは、基本的に、励起子発光の長波長成分が照射面の反対側に透過したシンチレータ光だけであり、励起子発光型シンチレータの発光量は比較的少ないことになる。本発明は、この原理に限定されるわけではないが、この自己吸収を緩和することでシンチレータ発光量を増加させる。
【0021】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態は、バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体であり、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層が、電離放射線の照射面を有しかつ5μm〜50μmの厚みを有し、0≦x≦0.145、0≦y≦0.07であることを特徴とする、積層型ZnO系単結晶シンチレータである。
【0022】
本発明者らが出願しているようにZnとMgを混晶化することでバンドギャップを3.30〜3.54eVまで制御することができる。一方、ZnとCdを混晶化することでバンドギャップを3.00〜3.30eVまで制御することができる(非特許文献5;Appl. Phys. Lett. 78 1237 (2001))。したがって、バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体を形成し、バンドギャップがより小さい層の表面(照射面)から電離放射線を照射し、電離放射線を照射する(Zn1-x-yMgxCdy)O層の厚みを電離放射線が侵入できる5μm〜50μmにするにより、電離放射線をバンドギャップが小さい層で吸収してシンチレータ光に変換する。電離放射線が照射される層から数えて2層目以降は、シンチレータ光が発生する層(第1層)よりバンドギャップが大きいので、より多くのシンチレータ光を透過できることになる。
【0023】
電離放射線を照射する層の厚みは、5μm〜50μmであり、好ましくは10μm〜45μmであり、好ましくは20μm〜40μmである。電離放射線を照射する層の厚みが5μm未満では、2層目(またはそれ以降の層)まで電離放射線が侵入してしまい、電離放射線の一部が2層目以降でシンチレータ光を発生することになる。しかしながら、2層目以降で発生したシンチレータ光は2層目以降の各層のバンドギャップに応じた波長となるため、結局自己吸収が発生してトータルの発光量が低下するので好ましくない。また、電離放射線を照射する層の厚みが50μmを超えると、この第1層目で電離放射線の全てが吸収されるが、発生したシンチレータ光が第1層を進むことになるため、結局自己吸収が発生して好ましくない。
【0024】
また、積層するZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層数は3層以上を選択することができるが、この場合はバンドギャップが小さい層から順番に積層する方が発光量増加の面で好ましい。
【0025】
励起子発光型のシンチレータ単結晶の発光量を多くするためには、結晶性の高い単結晶が必要となる。液相エピタキシャル法(Liquid phase epitaxial:LPE法)は熱平衡成長に近いため、比較的結晶性の高いZnO系単結晶を成長させることができる。その反面、平衡固溶限界以上のMgやCdを固溶することは困難となる。本発明者らが特許文献4に記載しているようにZnOに対するMgOの平衡固溶量は、0≦x≦0.145となる。xが0.145を超えると、MgO単相が析出するので好ましくない。また、非特許文献4に記載されるようにZnOに対するCdOの平衡固溶量は、0≦y≦0.07となる。yが0.07を超えるとCdO単相が析出するので好ましくない。
【0026】
具体的には、高品質かつ大面積で供給されている水熱合成ZnO単結晶基板を種結晶基板として、該基板上にZnOよりバンドギャップが大きい(Zn,Mg)O混晶体を厚膜成長させ、基板に用いた水熱合成ZnO単結晶をエッチングまたは研磨することで、目的とするバンドギャップが異なるZnO系単結晶積層体を製造することができる。また、水熱合成ZnO単結晶基板上にZnOよりバンドギャップが小さい(Zn,Cd)O混晶体を成長させた後、目的とする厚みまで(Zn,Cd)O層をエッチングまたは研磨することでも目的とするバンドギャップが異なるZnO系単結晶積層体を製造することができる。
【0027】
積層型ZnO系単結晶シンチレータに照射される電離放射線としては、α線、γ線、電子線、X線、中性子線などが挙げられる。
【0028】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態は、Al、Ga、In、H、Fおよびランタノイドからなる群より選択される1以上を含有する、上記積層型ZnO系単結晶シンチレータである。
【0029】
ZnO系単結晶には、格子間亜鉛や酸素空孔などのn型結晶欠陥が存在し、この結晶欠陥にα線や電子線などの電離放射線が照射されると450〜600nmの波長域で減衰寿命が長い発光が生じる。このような長波長発光は蛍光寿命が長いため、放射線検出の弁別機能の安定性を害するという欠点を有していた。
【0030】
これに対して、本実施形態のように、III族元素、水素、フッ素およびランタノイド元素をドープしたZnO単結晶を用いると、450〜600nmの発光が少ない励起子発光型ZnO単結晶を製造することができる。α線および電子線などの電離放射線による励起時の蛍光寿命が短い励起子発光のみが支配的となり、蛍光寿命が長い発光成分が低減され、放射線検出の弁別機能を安定化することが可能となる。本実施形態で得られたZnO単結晶シンチレータは、高速のα線や電子線などの検出器に応用が可能となる。
【0031】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態は、バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体であり、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層が、電離放射線の照射面を有しかつ5μm〜50μmの厚みを有し、0≦x≦0.145、0≦y≦0.07であることを特徴とする積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法であって、前記積層体の少なくとも一層が、溶質であるZnO、MgOおよびCdOと溶媒であるPbOおよびBi23との混合・溶融物に、基板を直接接触させることにより、ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを基板上に成長させる液相エピタキシャル成長法により作製されることを特徴とする、積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法である。
【0032】
すなわち、溶質であるZnO、MgOおよびCdOと、溶媒であるPbOおよびBi23とを混合して融解させた後、得られた融液に種結晶または基板を直接接触させ、さらに温度を降下させることで過飽和となった融液中に析出するZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを、基板上に成長させるLPE法により、バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体を製造する方法である。
【0033】
この実施形態によれば、結晶成長法として熱平衡成長に近いLPE法を用い、さらにZnO結晶内へ取込まれづらいイオン半径の大きい元素で構成される融剤であるPbOおよびBi23を用いることにより、結晶内への不純物の混入が少ない高品質なZnO単結晶を製造することができる。特に、フッ素不純物の混入を低減した高品質なZnO単結晶を製造することができる。この実施形態で得られたバンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体は、高速のα線や電子線などの検出器に応用が可能となり、発光量を増加させることができる。
【0034】
溶媒組成としては、PbO:Bi23=0.1〜95mol%:99.9〜5mol%が好ましい。より好ましくは、PbO:Bi23=30〜90mol%:70〜10mol%であり、特に好ましくは、PbO:Bi23=60〜80mol%:40〜20mol%である。PbOもしくはBi23単独溶媒では、液相成長温度が高くなるので、上記のような混合比を有するPbOとBi23との混合溶媒が好適である。
【0035】
溶質であるZnO、MgOおよびCdOと溶媒であるPbOおよびBi23との混合比は、ZnOのみに換算した溶質:溶媒=5〜30mol%:95〜70mol%であることが好ましい。より好ましくは、溶質濃度が5mol%〜10mol%である。溶質濃度が、5mol%未満では成長速度が遅く、30mol%を超えると成長温度が高くなることがある。なお、「ZnOのみに換算した溶質」とは、[ZnO(mol)]/([ZnO(mol)]+[PbO(mol)]+[Bi23(mol)])である。
【0036】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態は、バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体であり、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層が、電離放射線の照射面を有しかつ5μm〜50μmの厚みを有し、0≦x≦0.145、0≦y≦0.07であることを特徴とする積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法であって、前記積層体の少なくとも一層が、溶質であるZnO、MgOおよびCdOと溶媒であるPbF2およびPbOとの混合・溶融物に、基板を直接接触させることにより、ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを基板上に成長させる液相エピタキシャル成長法により作製されることを特徴とする、積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法である。
【0037】
すなわち、溶質であるZnO、MgOおよびCdOと、溶媒であるPbF2およびPbOとを混合して融解させた後、得られた融液に種結晶または基板を直接接触させ、さらに温度を降下させることで過飽和となった融液中に析出するZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを、基板上に成長させるLPE法により、バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体を製造する方法である。
【0038】
溶媒組成としては、PbF2:PbO=80〜20mol%:20〜80mol%が好ましい。より好ましくは、PbF2:PbO=70〜30mol%:30〜70mol%であり、特に好ましくは、PbF2:PbO=60〜40mol%:40〜60mol%である。溶媒の混合比が上記範囲内であると、溶媒であるPbF2とPbOの蒸発量を抑制でき、その結果、溶質濃度の変動が少なくなるので、安定的にZnO系混晶単結晶を成長させることができる。
【0039】
溶質であるZnO、MgOおよびCdOと溶媒であるPbF2とPbOとの混合比は、ZnOのみに換算した溶質:溶媒=2〜20mol%:98〜80mol%であることが好ましい。より好ましくは、溶質濃度が5mol%〜10mol%である。溶質濃度が5mol%未満では実効的成長速度が遅く、20mol%を超えると溶質成分を溶解させる温度が高くなり、溶媒蒸発量が多くなることがある。
【0040】
<第5の実施形態>
本発明の第5の実施形態は、ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを基板として該ZnO系混晶体とは異なる組成のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを成長させることで積層体を製造した後、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層の厚みを研磨またはエッチングにより5μm〜50μmとすることを特徴とする、上記積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法である。
【0041】
第1の実施形態で説明したように、水熱合成ZnO単結晶基板を種結晶基板として、該基板上にZnOよりバンドギャップが大きい(Zn,Mg)O混晶体を厚膜成長させ、基板に用いた水熱合成ZnO単結晶をエッチングまたは研磨することで、目的とするバンドギャップが異なるZnO系単結晶積層体を製造することができる。また、水熱合成ZnO単結晶基板上にバンドギャップが小さい(Zn,Cd)O混晶を成長させた後、目的とする厚みまで(Zn,Cd)O層をエッチングまたは研磨することでも目的とするバンドギャップが異なるZnO系単結晶積層体を製造することができる。これらの方法では、LPE成長が1度ですむため、工数の削減および低コスト化の面で優れている。
【0042】
しかしながら、水熱合成基板では、α線や電子線を用いた励起の場合、450〜600nmの範囲で蛍光寿命が長い発光が生じる問題点がある。したがって、まず第1の実施形態で説明した方法により水熱合成基板上に(Zn1-x-yMgxCdy)O層を形成して、さらにLPE成長に用いた水熱合成基板をエッチングまたは研磨で完全に除去した後、次に該LPE成長膜を基板として、バンドギャップが異なる別の(Zn1-x-yMgxCdy)O層を形成してもよい。このとき、α線や電子線などの電離放射線が入射する層については、III族元素やランタノイド元素などをドープして長波長発光成分の発生を抑制することも可能になる。
【0043】
<本発明に適当な結晶成長法>
ZnO単結晶を成長させる方法としては、大別して気相成長法と液相成長法が用いられてきた。気相成長法としては、化学気相輸送法(特開2004−131301号公報参照)、分子線エピタキシーや有機金属気相成長法(特開2004−84001号公報参照)、昇華法(特開平5−70286号公報参照)などが用いられてきたが、転移、欠陥などが多く、結晶品質が不十分であった。
【0044】
一方、液相成長法では、原理的に熱平衡で結晶育成が進行するため、気相成長法より高品質な結晶を製造しやすい利点を有する。しかしながら、ZnOは融点が1975℃程度と高温である上、蒸発しやすいことから、シリコン単結晶などで採用されているチョクラルスキー法を用いてZnO単結晶を成長させることは困難であった。そのため、ZnO単結晶を成長させる方法としては、目的物質を適当な溶媒に溶解し、その混合溶液を降温して飽和状態とし、目的物質を融液から成長させる静置徐冷法、水熱合成法、フラックス法、フローティングゾーン法、トップシードソリューショングロース(TSSG)法、溶液引上法およびLPE成長法などが用いられてきた。
【0045】
本発明におけるZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの単結晶成長法としては、液相エピタキシャル法(LPE法)、フラックス法、TSSG法および溶液引上法などを用いることができる。これらの様々な方法の中でも、ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを成長させる方法としては、比較的低コストかつ大面積成長が可能であり、特にシンチレータなどへの応用を考慮すると、機能別の層構造を形成しやすいLPE法が好適である。特に、結晶性が高く大面積基板を容易に得ることができる水熱合成法で製造されたZnO単結晶を基板として、ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)O単結晶をLPE法で成長させる方法(液相ホモエピタキシャル成長法)が好適である。
【0046】
<本発明に適当なLPE成長炉>
本発明の第3〜5の実施形態において使用する一般的なLPE成長炉を図2に示す。LPE成長炉内には、原料を溶融し融液として収容する白金るつぼ4が、ムライト(アルミナ+シリカ)製のるつぼ台9の上に載置されている。白金るつぼ4の外側にあって側方には、白金るつぼ4内の原料を加熱して溶融する3段の側部ヒーター(上段ヒーター1、中央部ヒーター2、下段ヒーター3)が設けられている。ヒーターは、それらの出力が独立に制御され、融液に対する加熱量が独立して調整される。ヒーターと製造炉の内壁との間にムライト製の炉心管11が、炉心管11上部にはムライト製の炉蓋12が設けられている。白金るつぼ4の上方には引上げ機構が設けられている。引上げ機構にアルミナ製の引上軸5が固定され、その先端には、基板ホルダー6とホルダーで固定された基板7が設けられている。引上軸5上部には、軸を回転させる機構が設けられている
【0047】
従来、LPE炉を構成する部材において、上記るつぼ台9、炉心管11、引上軸5および炉蓋12にはアルミナやムライトが専ら使用されてきた。したがって、LPE成長温度や原料溶解温度である700〜1100℃の温度域では、アルミナやムライト炉材からAl成分が揮発し、溶媒内に溶解して、これがZnO単結晶薄膜内に混入していると考えられる。
【0048】
本発明ではIII族のドープ量の制御が重要である。III族のドープ量は仕込み組成で制御することが望ましい。したがって、LPE炉を構成する炉材を非Al系材料にすることで、LPE成長ZnO単結晶薄膜へのAl不純物混入を低減することができる。非Al系炉材としては、ZnO炉材が最適であるが、市販されていないことを考慮すると、ZnO薄膜に混入してもキャリヤとして働かない材料としてMgOが好適である。また、アルミナとシリカで構成されるムライト製炉材を使用してもLPE膜中のSi不純物濃度が増えないSIMS分析結果を考慮すると、石英炉材も好適である。その他には、カルシヤ、シリカ、ZrO2およびジルコン(ZrO2+SiO2)、SiC、Si34なども利用可能である。
【0049】
以上より、本発明の好ましい実施形態では、非Al系の炉材としてMgOおよび/または石英から構成されるLPE成長炉を用いてZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを製造する。さらに、成長炉が、るつぼを載置するためのるつぼ台、該るつぼ台の外周を取り囲むように設けられた炉心管、該炉心管の上部に設けられ、炉内の開閉を行う炉蓋、および種結晶または基板を上下させるための引上軸を備え、これらの部材が、それぞれ独立に、MgOまたは石英によって作製されている態様も好ましい。
【0050】
<本発明に適当なその他の要件>
本発明の第3〜5の実施形態において、ZnO溶解度やPbF2とPbOの蒸発量あるいはPbOとBi23の蒸発量が大きく変化しない範囲で、LPE成長温度の制御、溶媒粘性の調整を目的として、溶媒に第三成分を1種または2種以上添加することができる。例えば、第三成分としては、B23、P25、V25、MoO3、WO3、SiO2、MgO、BaOなどが挙げられる。また、本発明の第4の実施形態の溶媒に、第三成分としてBi23を添加してもよい。
【0051】
本発明の第3〜5の実施形態において用いられる基板としては、ZnOと同類の結晶構造を有し、成長薄膜と基板とが反応しないものであれば特に限定されず、格子定数が近いものが好適に用いられる。例えば、サファイヤ、LiGaO2、LiAlO2、LiNbO3、LiTaO3、ZnOなどが挙げられる。本発明における目的単結晶がZnOであることを考慮すると、基板と成長結晶の格子整合度が高いZnOが最適である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の一実施態様に係るドープZnO単結晶の育成法としてZnO基板単結晶上にZnO混晶薄膜をLPE法で製膜する方法について説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。実施例で用いたLPE成長炉の構成図を図3に示す。
【0053】
<LPE成長炉の運転条件の概要>
実施例で用いたLPE成長炉の構成図を図3に示す。単結晶製造炉内には原料を溶融し融液として収容する白金るつぼ4がるつぼ台9’の上に設けられている。白金るつぼ4の外側にあって側方には、白金るつぼ4内の原料を加熱して溶融する3段の側部ヒーター(上段ヒーター1、中央部ヒーター2、下段ヒーター3)が設けられている。ヒーターは、それらの出力が独立に制御され、融液に対する加熱量が独立して調整される。ヒーターと製造炉の内壁との間には、炉心管11’が設けられ、炉心管11’の上部には炉内の開閉を行う炉蓋12’が設けられている。白金るつぼ4の上方には引上げ機構が設けられている。引上げ機構には石英製の引上軸5’が固定され、その先端には、基板ホルダー6とホルダーで固定された種結晶または基板7が設けられている。石英製の引上軸5’上部には、引上軸5’を回転させる機構が設けられている。白金るつぼ4の下方には、るつぼ内の原料を溶融するための熱電対10が設けられている。
【0054】
白金るつぼ内の原料を溶融するため、原料が溶融するまで製造炉を昇温する。好ましくは800〜1100℃まで昇温し、2〜3時間静置して原料融液を安定化させる。Pt製攪拌羽根で攪拌することで、静置時間を短縮してもよい。このとき、3段ヒーターにオフセットを掛け、融液表面よりるつぼ底が数度高くなるよう調節する。好ましくは、−100℃≦H1オフセット≦0℃、0℃≦H3オフセット≦100℃、さらに好ましくは、−50℃≦H1オフセット≦0℃、0℃≦H3オフセット≦50℃である。
【0055】
るつぼ底温度が700〜950℃の種付け温度になるよう調節し、融液の温度が安定化した後、基板を5〜120rpmで回転させながら、引上軸を下降させることで基板を融液表面に接液する。基板を融液になじませた後、温度一定または、0.025〜1.0℃/hrで温度降下を開始し、基板面に目的とするMg含有(またはCd含有)ZnO系混晶単結晶を成長させる。成長時も基板は引上軸の回転によって5〜300rpmで回転しており、一定時間ごとに逆回転させる。
【0056】
30分から100時間程度かけて結晶成長させた後、基板を融液から切り離し、引上軸を200〜300rpm程度の高速で回転させることで、融液成分を分離させる。その後、室温まで1〜24時間かけて冷却して目的のMg含有(またはCd含有)ZnO系混晶単結晶薄膜を得る。また、成長膜厚によっては、経時的あるいは連続的に石英軸を引上げながら成長させることもできる。
【0057】
<実施例1〜4、比較例1〜3>
以下の工程により、Zn0.9Mg0.1O単結晶を液相エピタキシャル成長法で作製した。
【0058】
内径75mmφ、高さ75mmh、厚さ1mmの白金るつぼに、原料としてZnO、MgO、PbOおよびBi23をそれぞれ、32.94g、1.81g、800.61gおよび834.39g仕込んだ。このときの溶質であるZnOの濃度は7mol%で、MgO/(ZnO+MgO)=10mol%、溶媒であるPbOおよびBi23の濃度は、PbO:Bi23=66.70mol%:33.30mol%となる。
【0059】
原料を仕込んだるつぼを図3に示す炉に設置し、るつぼ底温度約900℃で1時間保持しPt攪拌冶具で攪拌し溶解させた。その後、るつぼ底温度が約808℃になるまで降温してから、水熱合成法で育成した+c面方位でサイズが10mm×10mm×0.5mmtのZnO単結晶基板を種結晶として接液し、引上軸を60rpmで回転させながら同温度で48時間成長させた。このとき、軸回転方向は2分おきに反転させた。その後、引上軸を上昇させることで、融液から切り離し、100rpmで軸を回転させることで、融液成分を振り切り、無色透明のZn0.9Mg0.1O単結晶膜250μmを得た。このときの成長速度は約5.2μm/hrであった。
【0060】
得られたZn0.9Mg0.1OのPL発光波長から求めたバンドギャップは3.46eVであった。また、(002)面のロッキングカーブ半値幅は60arcsecであり、結晶性が十分に高いことを確認した。
【0061】
得られたZn0.9Mg0.1O(250μm)/水熱合成ZnO基板(500μm)の両面にラップとポリッシュを施し、Zn0.9Mg0.1O(220μm)/水熱合成ZnO基板(70μm)のZnO系混晶積層体に加工した(比較例1の積層体)。バンドギャップが小さい水熱合成ZnO基板側からα線を照射し、シンチレータ発光量をBGO(Bi4Ge312)および水熱合成基板と比較した。その後、水熱合成基板側の研磨量を増やして、該基板の厚みを50μm、30μm、10μm、5μm、3μmに加工し(それぞれ実施例1〜4、比較例2の積層体)、その都度シンチレータ特性測定を行った。
【0062】
シンチレータ特性として、α線励起シンチレータ発光量の測定を実施した。α線源として241Amを用いた。受光素子としてPMT(R7600:浜松ホトニクス製)を用い、研磨した積層体の5面をテフロン(登録商標)テープで覆い、シンチレーション光を1面のみから得られるようにした。その際、α線通過用に1mm角の窓を残した。シンチレーション光が出る面にPMTを設置し、PMTに高電圧をかけてシグナルを増幅して読み出しを行った。波高値はpre−ampで増幅し、Pulse shape ampで波形を整え、multi channel analyzerを経てコンピューターに信号として取得して発光量とし、BGOと比較した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から分かるように、Zn0.9Mg0.1O(220μm)/水熱合成ZnO基板の積層体のZnO基板面からα線を照射したときの発光量は、バンドギャップが小さいZnO基板の厚みが5μm〜50μmのとき、比較例3の水熱合成基板単独における発光量を超え、BGO比70%〜98%となり、従来ZnOシンチレータの発光量を増加させることができた。一方、比較例1に示すようにバンドギャップが小さいZnO基板側の厚みが50μmを超える場合では、発光量が水熱合成基板と同程度であった。また、バンドギャップが小さいZnO基板側の厚みが5μmより小さい比較例2では、α線が第一層を突き抜け、第一層および第二層でシンチレータ発光が起こり、発光量分布が2ピーク発生し、エネルギー分解能が低下した。
【0065】
<実施例5〜8、比較例4〜6>
実施例1と同様の方法で水熱合成ZnO基板の厚みを変化させたZnO系混晶積層体を作製し、電子線(加速電圧数10〜数千V)を照射したときの発光量を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2から分かるように、Zn0.9Mg0.1O(220μm)/水熱合成ZnO基板の積層体のZnO基板面から電子線を照射したときの発光量は、バンドギャップが小さいZnO基板の厚みが5μm〜50μmのとき、比較例6の水熱合成基板単独における発光量を超え、BGO比80%〜101%となり、従来ZnOシンチレータの発光量を増加させることができた。一方、比較例4に示すようにバンドギャップが小さいZnO基板側の厚みが50μmを超える場合では、発光量が水熱合成基板と同程度であった。また、バンドギャップが小さいZnO基板側の厚みが5μmより小さい比較例5では、α線が第一層を突き抜け、第一層および第二層でシンチレータ発光が起こり、発光量分布が2ピーク発生し、エネルギー分解能が低下した。
【0068】
<実施例9〜13および比較例7>
実施例1に順ずる方法により、本実施例では水熱合成ZnO基板層(厚み:30μm)とZnO系混晶層(厚み:220μm)の各層の厚みは変化させず、バンドギャップが大きいZnO系混晶層のバンドギャップのみを変化させた。それぞれの積層体の組成、バンドギャップおよび発光量を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3から分かるように、作製したZn1-xMgxO(220μm)/水熱合成ZnO基板(30μm)の積層体において、0≦x≦0.145の範囲で作製したZn1-xMgxO混晶層を用いた積層体(実施例9〜13)では、バンドギャップを水熱合成ZnO基板より高めることが可能となる。その結果、水熱合成ZnO基板側からα線を照射した場合、発光量をBGO比70〜119%まで高めることが可能となる。比較例7のようにx組成が0.145を超えるとMgO単相が析出してしまい、混晶層のみをLPE成長させることができなかった。
【0071】
<実施例14〜17および比較例8>
実施例1に順ずる方法により、本実施例では水熱合成ZnO基板層(厚み:500μm)とZnO系混晶層(厚み:30μm)の各層の厚みは変化させず、バンドギャップが小さいZnO系混晶層のバンドギャップのみを変化させた。それぞれの積層体の組成、バンドギャップおよび発光量を表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
表4から分かるように、作製したZn1-yCdyO(30μm)/水熱合成ZnO基板(500μm)の積層体において、0≦y≦0.07の範囲で作製したZn1-yCdyO混晶層を用いた積層体(実施例14〜17)では、バンドギャップを水熱合成ZnO基板より小さくすることが可能となる。その結果、Zn1-yCdyO混晶層からα線を照射した場合、発光量をBGO比75〜135%まで高めることが可能となる。比較例8のようにy組成が0.07を超えるとCdO単相が析出してしまい、混晶層のみをLPE成長させることができなかった。
【0074】
<実施例18>
実施例1と同様に水熱合成ZnO基板上でZn0.9Mg0.1OのLPE成長を行った後、水熱合成ZnO基板を研磨で完全に除去して、単独のZn0.9Mg0.1O薄膜を得た。次に、これを基板として、ZnOに対しGa23を59ppmドープしたGaドープZnO層のLPE成長を行った。その後、再度研磨を施し、Zn0.9Mg0.1O層(220μm)/GaドープZnO層(30μm)の積層体を得た。
【0075】
バンドギャップが小さいGaドープZnO層を照射面として、α線を照射した時の発光量は実施例1と同様BGO比90%となった。また、当該積層体のα線照射透過スペクトルを測定したところ、450〜600nm域の長波長発光成分はほとんど見られなかった。以上の結果から、ZnO系積層体を形成し、α線などの電離放射線を照射する層の厚みを5μm〜50μmとすることで電離放射線を照射した時の発光量をBGO比で90%程度と高めることができる。また、α線などの電離放射線を照射するZnO単結晶にGaなどのIII族元素を添加すると、450〜600nmの長波長発光も低減できるため、α線などの電離放射線の弁別機能を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・上段ヒーター
2・・・中央部ヒーター
3・・・下段ヒーター
4・・・白金るつぼ
5・・・引上軸
6・・・基板ホルダー
7・・・基板
9・・・るつぼ台
11・・・炉心管
12・・・炉蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体であり、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層が、電離放射線の照射面を有しかつ5μm〜50μmの厚みを有し、0≦x≦0.145、0≦y≦0.07であることを特徴とする、積層型ZnO系単結晶シンチレータ。
【請求項2】
前記電離放射線がα線であることを特徴とする、請求項1に記載する積層型ZnO系単結晶シンチレータ。
【請求項3】
前記電離放射線が電子線であることを特徴とする、請求項1に記載する積層型ZnO系単結晶シンチレータ。
【請求項4】
Al、Ga、In、H、Fおよびランタノイドからなる群より選択される1以上を含有する、請求項1から3のいずれかに記載する積層型ZnO系単結晶シンチレータ。
【請求項5】
バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体であり、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層が、電離放射線の照射面を有しかつ5μm〜50μmの厚みを有し、0≦x≦0.145、0≦y≦0.07であることを特徴とする積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法であって、
前記積層体の少なくとも一層が、溶質であるZnO、MgOおよびCdOと溶媒であるPbOおよびBi23との混合・溶融物に、基板を直接接触させることにより、ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを基板上に成長させる液相エピタキシャル成長法により作製されることを特徴とする、積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法。
【請求項6】
前記溶質と溶媒との混合比が、ZnOのみに換算した溶質:溶媒=5〜30mol%:95〜70mol%であり、溶媒であるPbOとBi23との混合比がPbO:Bi23=0.1〜95mol%:99.9〜5mol%である、請求項5に記載する積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法。
【請求項7】
バンドギャップが異なる2層以上のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oの積層体であり、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層が、電離放射線の照射面を有しかつ5μm〜50μmの厚みを有し、0≦x≦0.145、0≦y≦0.07であることを特徴とする積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法であって、
前記積層体の少なくとも一層が、溶質であるZnO、MgOおよびCdOと溶媒であるPbF2およびPbOとの混合・溶融物に、基板を直接接触させることにより、ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを基板上に成長させる液相エピタキシャル成長法により作製されることを特徴とする、積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法。
【請求項8】
前記溶質と溶媒との混合比が、ZnOのみに換算した溶質:溶媒=2〜20mol%:98〜80mol%であり、溶媒であるPbF2とPbOとの混合比がPbF2:PbO=80〜20mol%:20〜80mol%である、請求項7に記載する積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法。
【請求項9】
ZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを基板として該ZnO系混晶体とは異なる組成のZnO系混晶体(Zn1-x-yMgxCdy)Oを成長させることで積層体を製造した後、バンドギャップがより小さいZnO系混晶体層の厚みを研磨またはエッチングにより5μm〜50μmとすることを特徴とする、請求項5から8のいずれかに記載する積層型ZnO系単結晶シンチレータの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−280826(P2010−280826A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135468(P2009−135468)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】