説明

積層板の製造方法

【課題】接着剤の硬化に要する時間の短縮化を図れる積層板の製造方法を提供すること。
【解決手段】積層工程では、塗布工程で塗布された樹脂板20の各側面に塗布された樹脂接着剤が木板10及び樹脂板20の互いに対向する側面の間に介設されるように、木板10及び樹脂板20が交互に積層される。その後、行われる圧締工程では、木板10及び樹脂板20の互いに対向する各側面同士を接着するために、積層された木板10及び樹脂板20の側面が積層方向に加圧されると共に木板10及び樹脂板20が加圧された状態で木板10及び樹脂板20の平面13,23と直交する積層板1の上下方向から電磁波が照射される。よって、樹脂接着剤を誘電加熱して内部から発熱させるので、外部から加熱する場合と比べて、熱効率が高く経済的であると共に、電磁波電力の自在な制御などにより、スピーディーな温度制御ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層板の製造方法に関し、特に、接着剤の硬化に要する時間の短縮化を図れる積層板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂接着剤を介して樹脂材と木材と一体に接着した積層板が知られている。例えば、特許文献1には、アクリル樹脂材(樹脂材)と木板(木材)とをレゾルシノール系の接着剤(樹脂接着剤)を介して一体に接着された積層板が開示されている。
【0003】
かかる従来の積層板は、アクリル樹脂材と木板との接着面にレゾシノール系の接着材を塗布すると共にその接着面でアクリル樹脂材と木板とを重ね合わせ、その重ね合わせたものに均等な圧力をかける圧締工程を行うことにより、アクリル樹脂材と木板とが接着される。
【0004】
レゾシノール系の接着材は、常温で用いることができるものの、常温で用いた場合は硬化時間が長いため、圧締工程に約24時間を要するが、圧締工程において、アクリル樹脂材と木板とを外部から加熱することにより、接着剤の硬化を促進できる。これにより、接着材の硬化に要する時間を短縮できるので、圧締工程に要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3051584号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のアクリル樹脂材と木板との接着方法では、アクリル樹脂材と木板とを外部から加熱するので、アクリル樹脂材と木板とは表面側から徐々に温度が高くなる。よって、外部から加えられる熱が内部(最深部)にまで到達し、対象物全体の温度が接着剤の乾燥を促進できる所定温度よりも高くなるまでに時間を要する。従って、圧締工程に要する時間の短縮化が図れないという問題点があった。
【0007】
一方、アクリル樹脂材と木板とを加熱する加熱温度を上げれば、その分、圧締工程に要する時間の短縮化が図れるが、アクリル樹脂材は熱に弱く100℃以上の熱で変形するおそれがあるので、加熱温度を高く(100℃以上)することができない。よって、加熱温度を上げるという方法によっては、圧締工程に要する時間の短縮化を図れないという問題点があった。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、接着剤の硬化に要する時間の短縮化を図れる積層板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1記載の積層板の製造方法によれば、塗布工程において木材および樹脂材の少なくともいずれか一方の接着面にレゾシノール系の樹脂接着剤が塗布されると共に、かかる樹脂接着剤が塗布された接着面が木材および樹脂材の間に介設されるように、積層工程において木材および樹脂材の接着面が重ね合わせられることにより木材および樹脂材が積層される。その後、圧締工程において積層工程で積層された木材および樹脂材が積層方向に加圧されると共に、積層方向に加圧された木材および樹脂材に電磁波が照射されることにより樹脂接着剤が誘電加熱され内部から発熱し、その発熱した樹脂接着剤が硬化することにより積層された木材および樹脂材が接着され一体化される。一方、樹脂材は電磁波を吸収し難いため、樹脂材に電磁波が照射されても樹脂材の温度が上昇し難い。
【0010】
よって、電磁波により木材および樹脂材の間に介設される樹脂接着剤を誘電加熱して内部から発熱させて硬化させるので、樹脂材の変形を防止できると共に木材および樹脂材を外部から加熱して樹脂接着剤を硬化させる場合に比べて、樹脂接着剤の硬化に要する時間を短くできるという効果を有する。
【0011】
請求項2記載の積層板の製造方法は、請求項1記載の積層板の製造方法において、圧締工程において積層方向と交差する方向から電磁波が照射されるので、積層方向と異なる方向から木材および樹脂材に電磁波が照射される。よって、木材および樹脂材を加圧する加圧作業と加圧された木材および樹脂材に電磁波を照射する照射作業とが互いに干渉することなく円滑に行うことができるという効果を有する。
【0012】
請求項3記載の積層板の製造方法は、請求項2記載の積層板の製造方法において、木材および樹脂材は、底面とその底面の各辺よりも長い側辺を有する側面とを備える角柱状に形成されており、積層工程において、木材および樹脂材はそれらの側面同士が突き合わせられることにより積層される。積層工程において積層された木材および樹脂材は、圧締工程において側面が加圧されると共に側面と直交し側辺と平行な平面と公差する方向から電磁波が照射される。
【0013】
ここで、積層工程において積層された木材および樹脂材は、それらの側面と直交し側辺と平行な平面(以下「平行面」と称す)で切断された断面の面積を、それらの側面の面積より大きく形成できる。よって、積層工程において積層された木材および樹脂材は、側面の面積が平行面で切断された断面の面積より大きく形成される場合に比べて、圧締工程において加圧される面積を側面の面積より小さく形成できると共に平面と公差する方向における木材および樹脂材の長さを短く形成できる。従って、圧締工程において木材および樹脂材の側面を加圧する荷重を小さくしつつ電磁波を照射する時間を短くできるという効果を有する。
【0014】
請求項4記載の積層板の製造方法は、請求項1から3のいずれかに記載の積層板の製造方法において、樹脂材はメタクリル樹脂により構成されるので、製造された積層板のメタクリル樹脂の部分はガラスより高い光線透過率を有し、透明性に優れている。よって、光源から積層板に向けて投光された光は、木材の部分を通過できないがメタクリル樹脂部分を通過できる。従って、積層板をテーブル等の家具や床等の建具に利用することによりメタクリル樹脂部分を通過した光により家具および建具の装飾性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施の形態における積層板の斜視図である。
【図2】接着される前の状態を示す木板及び樹脂板の斜視図である。
【図3】積層板の正面図である。
【図4】積層板の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】(a)は試験片Xの斜視図であり、(b)は試験片Yの斜視図である。
【図6】(a)は接着力についての試験結果を示す表であり、(b)は接着面の剥離についての試験結果を示す表である。
【図7】本発明の第2実施の形態における積層板を示しており、(a)は積層板の斜視図であり、(b)は積層板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における積層板1の斜視図であり、木板10及び樹脂板20が接着された状態を示している。図2は接着される前の状態を示す木板10及び樹脂板20の斜視図である。図3は積層板1の正面図である。
【0017】
図1において積層板1の積層方向における中間部分の図示が省略されており、Zで示す部分が拡大図示されている。かかる拡大部分において樹脂接着剤30を図示するためにその樹脂接着剤30の塗布量が多めに図示されている。図2において、積層される複数の木板10及び樹脂板20のうち一部のみが図示されている。図3において、加圧方向と照射方向とが異なる矢印で図示されている。なお、図1〜図3では、図面の理解を容易とするために、複数ある同一の構成には、それら複数の構成のうちの一部の構成のみに符号を付して図面を簡略化している。図5及び図7においても同様である。
【0018】
図1に示すように、積層板1は、交互に積層された木板10及び樹脂板20が接着面(後述する一対の側面12)に塗布された樹脂接着剤30で接着されることにより一体化される板状部材であって、木板10と樹脂板20とで縦縞模様に構成される。積層板1の表面にはバフ仕上げ(布、皮、ゴムなど柔軟性のある素材でできた軟らかいバフに、砥粒を付着させ、このバフを回転させながら工作物に押し当てて表面を磨く加工)が施されている。これにより、樹脂板20の透明度を向上させることができるので、積層板1を透過する光による装飾性を向上できる。
【0019】
積層板1は、厚さ40mm、幅920mm、全長2440mmの大型の板状に形成される。このように、積層板1を大型化することにより、椅子、テーブル等の家具だけでなく、階段、ドア、壁および床等の建具にも利用できるので、積層板1の利用範囲を拡大でき商品性の向上を図れる。
【0020】
図2に示すように、木板10は、底面11とその底面11の各辺よりも長い側辺14を有し対向する一対の側面12と、側辺14が側面12と共通し対向する一対の平面13とを備える四角柱状に形成される。木板10はナラ材等の木材により構成され、その含水率は、温度が35℃以下の状態で6%〜15%となっている。
【0021】
図2に示すように、樹脂板20は、底面21とその底面21の各辺よりも長い側辺24を有すると共に対向する一対の側面22と、側辺24が側面22と共通すると共に対向する一対の平面23とを備える四角柱状に形成され、メタクリル樹脂等の樹脂材料により構成されている。樹脂板20の側面22は木板10の側面12と略同一形状に形成されるものの、樹脂板20の平面23は樹脂板20の長手方向(図1上下方向)における長さが木板10の平面13と同一であって積層板1の板厚方向(図1左右方向)の長さが木板10の平面13の略4分の1程度に形成されている。
【0022】
樹脂接着剤30は、レゾシノール系接着剤であり、樹脂板20の一対の側面にそれぞれ塗布される。また、レゾシノール系接着剤は、レゾルシノール樹脂またはフェノール・レゾルシノール樹脂を主成分として構成され、主剤であるレゾルシノールとホルムアルデヒドを酸またはアルカリを触媒として縮合反応させ水やアルコールに溶解させた水溶液に、硬化剤としてパラホルムアルデヒド粉末を添加することにより生成される。主剤と硬化剤との標準配合は、質量比で主剤が100%の割合である場合に硬化剤が15%の割合に設定される。
【0023】
次いで、図2〜図4を参照して、積層板1の製造方法について説明する。図4は、積層板1の製造方法を示すフローチャートである。積層板1を製造するに際しては、図4に示すように、塗布工程S1および積層工程S2の後に圧締工程S3が行われる。具体的には、まず、木板10及び樹脂板20の各接着面、即ち樹脂板20の各側面22の全面に均等に樹脂接着剤30が塗布され(塗布工程S1)。当該各側面22に塗布される樹脂接着剤30の塗布量は、200g/mである。樹脂接着剤30の塗布後、木板10及び樹脂板20の対向する側面12,22同士を重ね合わせるまで10分の推積時間をおいた後に積層工程S2が行われる。この推積時間により塗布された樹脂接着剤30の水分や溶剤を揮散させることができる。
【0024】
図2に示すように、積層工程S2では、樹脂板20の各側面22に塗布された樹脂接着剤30が木板10及び樹脂板20の互いに対向する側面12,22の間に介設されるように、それらの対向する各側面12,22同士が重ね合わせられ、木板10及び樹脂板20が交互に積層される。その後、積層された木板10及び樹脂板20に対して圧締工程S3が行われる。
【0025】
図3に示すように、圧締工程S3では、木板10及び樹脂板20の互いに対向する各側面12,22同士を接着するために、積層された木板10及び樹脂板20の側面12,22が積層方向(図3左右方向)に加圧されると共に木板10及び樹脂板20が加圧された状態で電磁波が照射され樹脂接着剤30(図2参照)が加熱される。かかる圧締工程S3において、電磁波は、積層方向と交差する方向、具体的には、木板10及び樹脂板20の平面13,23と直交する積層板1の上下方向(図3上下方向)から照射される。
【0026】
積層された木板10及び樹脂板20が加圧される圧力は、0.68〜1.47MPaの間に設定される。即ち、木板10の乾燥時の重さ及び木板10の乾燥時の重さと同じ体積の水の重さを体積比率で表した値である気乾比重が0.6以上の場合、即ち硬材では0.98〜1.47MPaに設定され、気乾比重が0.6以下の場合、即ち軟材では0.68〜0.98MPaの間に設定される。
【0027】
積層板1の上下方向から照射される電磁波は、3MHz〜300MHzの周波数領域に設定される高周波であり、図示しない高周波誘電加熱出力装置を用いて7〜10KWの出力で樹脂接着剤30の温度が70〜80度になるように照射される。例えば、高周波を8KWの出力で照射して樹脂接着剤30の温度が80度になるように内部から発熱させると、厚さ40mm、幅920mm、全長2440mmの大きさの積層板1に使用された樹脂接着剤30の硬化に要する時間(圧締工程に要する時間)は40分であり、かかる樹脂接着剤30を完全に硬化させるための養生期間も2日で済む。
【0028】
一方、樹脂接着剤30はレゾシノール系接着剤であるので、硬化剤を加えて常温で硬化させることができるが、常温で硬化させると、積層板1が上述した大きさの場合では樹脂接着剤30の硬化に要する時間(圧締工程に要する時間)は24時間ほど必要となり、養生期間も7日を要する。また、樹脂接着剤30を木板10及び樹脂板20を介して外部から加熱する場合は、樹脂接着剤30を常温で硬化させる場合に比べて硬化時間を短縮化できるものの、100°C以上の高温で加熱できないので、数時間が必要となる。
【0029】
これに対し、電磁波により木板10及び樹脂板20の間に介設される樹脂接着剤30を誘電加熱して内部から発熱させる場合は樹脂接着剤30自身が発熱するので、外部から加熱する場合と比べて、熱効率が高く経済的であると共に、電磁波電力の自在な制御などにより、スピーディーな温度制御ができる。加えて、樹脂接着剤30の温度を上げるために燃焼をしないので、有毒ガスの発生や周囲環境が高温にならず作業環境が良好に保つことができる。また、積層板1の外部から樹脂接着剤30を加熱する場合に比べて樹脂板20の温度が上昇し難いので、熱により樹脂板20が変形することを防止できる。
【0030】
また、電磁波は、積層方向(加圧方向)と交差する方向から照射されるので、加圧方向と照射方向とを異なる方向とできる。よって、木板10及び樹脂板20を加圧する加圧作業と加圧された木板10及び樹脂板20に電磁波を照射する照射作業とが互いに干渉することなく円滑に行うことができる。
【0031】
さらに、積層工程S2において積層された木板10及び樹脂板20は、それらの側面12,22と直交し側辺14,24と平行な平面(積層板1の上面または下面と平行な平面)で切断された断面の面積を、木板10及び樹脂板20の側面12,22の面積より大きく形成できる。よって、積層板1は電磁波が照射される上面の面積より加圧される側面の面積を小さく形成できるので、木板10及び樹脂板20を平板状に形成して上下方向に積層する場合に比べて(図7の第2実施の形態参照)、圧締工程において加圧される面積を小さく形成できると共に電磁波の照射方向(図3上下方向)における積層板1の長さ(板厚)を短く(薄く)形成できる。従って、圧締工程S3において木板10及び樹脂板20の側面12,22を加圧する荷重を小さくしつつ電磁波を照射する時間を短くできる。
【0032】
また、製造された積層板1の樹脂板20はメタクリル樹脂で構成されているので、ガラスより高い光線透過率を有する。よって、積層板1は透明性に優れているので、光源から積層板1に向けて投光された光は木板10を通過できないが樹脂板20を通過できる。従って、積層板1をテーブル等の家具や床等の建具に利用することにより樹脂板20を通過した光により家具および建具の装飾性を向上できる。
【0033】
ここで、上述した製造方法により図5(a)に示す試験片Xを製造すると共に試験片Xから図5(b)に示す試験片Yを切削加工し、これらの試験片X及び試験片Yを用いて接着力および接着面の剥離に関する試験を行った結果、図6で示す数値を得た。図5及び図6を参照して、接着力および接着面の剥離に関する試験の結果について説明する。図5(a)は試験片Xの斜視図であり、図5(b)は試験片Yの斜視図である。また、図5(a)においてMで示す部分が拡大図示されている。さらに、図6(a)は接着力についての試験結果を示す表であり、図6(b)は接着面の剥離についての試験結果を示す表である。
【0034】
図5(a)に示すように、試験片Xは、5枚の木板110と、メタクリル樹脂で構成される4枚の樹脂板120とを交互に積層し各樹脂板120の一対の側面122(合計8面)に塗布された樹脂接着剤30を高周波により硬化させて一体化したものである。木板110は厚さ25mm、幅20mm、全長490mmの大きさで形成されると共に樹脂板120は厚さ25mm、幅5mm、全長490mmの大きさで形成される。よって、試験片X全体では、厚さ25mm、幅120mm、全長490mmの大きさに形成され、接着総面積は25mm×490mm×8=98mとなる。図5(b)に示すように、試験片Yは試験片Xを切削加工することにより形成されるものであって、木板110aと樹脂板120aとの接着面積が25mm×13mm=3.23cmに設定される。
【0035】
接着力および接着面の剥離に関する試験では、異なる条件(常温、高温及び低温)下に置かれた10片の試験片Yの接着力を測定すると共に、高温および低温下においては接着面の剥離の状態について観察した。また、接着面の剥離に関する試験では、耐湿耐乾の条件下に置かれた試験片Xの接着面の剥離の状態を観察した。接着力については、図示しない2t万能試験機を用いて引張速度10mm/分で引張り剪断試験を行い、試験片Yの接着面が剥離した場合の引張力を測定し、かかる引張力を接着力とした。
【0036】
図5及び図6(a)を参照して、接着力についての試験結果について説明する。常温(常態)の条件下の10片の試験片Yについて上述した引張り剪断試験を行った。10片の試験片Yの平均接着力は15.89MPaであり、最小接着力は18.83MPaであり、最大接着力は17.46MPaであった。高温の条件下の試験片Y、具体的には80℃の温水中に5時間侵漬させた後に常温にて約24時間乾燥させた10片の試験片Yについて、常温(常態)の場合と同様に引張り剪断試験を行った。10片の試験片Yの平均接着力は16.18MPaであり、最小接着力は10.2MPaであり、最大接着力は19.02MPaであった。低温の条件下の試験片Y、具体的には−10℃に設定した恒温恒湿槽内に24時間投入された後に常温にて約24時間乾燥させた10片の試験片Yについて、常温(常態)及び高温の場合と同様に引張り剪断試験を行った。10片の試験片Yの平均接着力は16.97MPaとなり、最小接着力は12.16MPaであり、最大接着力は21.08MPaとなった。
【0037】
次に、図6(b)を参照して、接着面の剥離についての試験結果について説明する。上述した高温の条件下の10片の試験片Y及び上述した低温の条件下の10片の試験片Yのいずれについても、接着面の剥離は見られなかった。また。耐湿耐乾の条件下、具体的には、温度40℃で湿度90%の槽内に72時間投入された後に温度60℃で湿度30%の槽内に72時間投入された1片の試験片Xについて、接着面の剥離の状態について観察した。試験片Xについて接着面の剥離は発見されなかった。
【0038】
上述した試験結果から、常温、高温および低温のいずれの条件下の場合も、上述した製造方法により製造された試験片Xの接着力は良好であり、接着面の木破率も100%で安定している。また、高温、低温および耐湿耐乾のいずれの条件下の場合も、上述した製造方法により製造された試験片X,Yに剥離は認められなかった。
【0039】
なお、樹脂接着剤30を常温で硬化させて形成した試験片X,Yについても、上述した接着力および接着面の剥離に関する試験を行った。その結果、いずれの試験片Xについても、樹脂接着剤30を高周波で硬化させて形成した試験片Yと同様の接着力が認められ、いずれの試験片X,Yについても剥離は認められなかった。よって、上述した製造方法により製造された積層板1は、常温で硬化させた場合と同様の品質を有しつつ、硬化に要する時間を短縮できるので生産性が向上されている。
【0040】
図7を参照して、本発明の第2実施の形態における積層板200の製造方法について説明する。図7は、本発明の第2実施の形態における積層板200を示しており、(a)は積層板200の斜視図であり、(b)は積層板200の正面図である。図7において積層板200の積層方向と直交する方向における中間部分の図示が省略されており、Nで示す部分が拡大図示されている。
【0041】
第1実施の形態における積層板1は、木板10及び樹脂板20が角柱状に形成され木板10と樹脂板20とで縦縞模様に構成されるのに対して、第2実施の形態における積層板200は、木板210及び樹脂板220が平板状に形成され木板210と樹脂板220とで横縞模様に構成される。積層板200では樹脂接着剤30が樹脂板220の各平面223に塗布される。積層板200は平板状に形成される木板210及び樹脂板220で形成されるので、積層板1,200が同一の体積に設定される場合は、積層板1に比べて積層板200を形成する木板210及び樹脂板220の枚数を削減できる。よって、塗布工程S1における樹脂板220の平面223に樹脂接着剤30を塗布する回数および積層工程S2における積層作業の回数を削減できるので、作業性を向上できる。
【0042】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0043】
例えば、上記各実施の形態では、木板10,210及び樹脂板20,220が積層工程において交互に積層されていたが、必ずしもこれに限られるものではなく、積層方向で中央部分又は端部のみに樹脂板20,220を配置する構成であってもよい。この場合は、木板10,210と樹脂板20,220とのコントラストを際立たせることができるので、商品性を向上できる。
【0044】
上記各実施の形態では、木板10,210の板厚を樹脂板20,220の板厚より厚く構成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、両者を同一の板厚に構成してもよく、逆に、樹脂板20,220の板厚を木板10,210の板厚より厚く構成しても良い。この場合は、樹脂板20,220を透過する光の量を変更できるので、積層板1,200の商品性を向上できる。
【0045】
また、上記各実施の形態では、樹脂板20,220をメタクリル樹脂で構成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ナイロン、ABS樹脂等他の樹脂材料で構成してもよい。この場合は、積層板1,200の樹脂板20,220を非透過に構成できる。よって、積層板1,200の利用範囲を拡大でき商品性を向上できる。
【0046】
加えて、上記第1実施の形態では、木板10及び樹脂板20を四角柱状に形成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、対向する一対の平行な側面12,22を有していれば十分である。よって、五角柱状や六角柱状に形成してもよく、一対の平面13,23を曲面状に形成してもよい。この場合は、樹脂板20を透過する光の屈曲率を変化させることができるので、積層板1の利用範囲を拡大でき商品性を向上できる。
【0047】
さらに、上記各実施の形態では、照射される電磁波を高周波に設定したが、必ずしもこれに限られるものではなく、積層板1,200の大きさが小さい場合や積層板1,200の形状が複雑な場合は、300MHz〜3GHzのマイクロ波を用いてもよい。この場合は、マイクロ波により積層板1,200が複雑な形状であってもほぼ均一に加熱できる。
【符号の説明】
【0048】
1,200 積層板
10,210 木板(木材)
11 底面
12 側面
14 側辺
20,220 樹脂板(樹脂材)
21 底面
22 側面
24 側辺
30 樹脂接着剤
S1 塗布工程
S2 積層工程
S3 圧締工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材および樹脂材を積層し、積層された前記木材および樹脂材をレゾシノール系の樹脂接着剤で接着することにより一体化した積層板の製造方法であって、
前記木材および樹脂材の少なくともいずれか一方の接着面に前記樹脂接着剤を塗布する塗布工程と、
前記接着面に塗布された前記樹脂接着剤が前記木材および樹脂材の間に介設されるように、前記木材および樹脂材の接着面を重ね合わせ前記木材および樹脂材を積層する積層工程と、
その積層された前記木材および樹脂材を積層方向に加圧すると共に前記木材および樹脂材を加圧した状態で電磁波を照射し前記樹脂接着剤を加熱する圧締工程と、を備えることを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項2】
前記圧締工程において、前記電磁波を前記積層方向と交差する方向から照射することを特徴とする請求項1記載の積層板の製造方法。
【請求項3】
前記木材および樹脂材は、底面とその底面の各辺よりも長い側辺を有する側面とを備える角柱状に形成され、
前記積層工程において、前記木材および樹脂材はそれらの側面同士を突き合わせて積層され、
前記圧締工程において、積層された前記木材および樹脂材の側面が加圧されると共に、積層された前記木材および樹脂材は、前記側面と直交し前記側辺と平行な平面で切断された断面の面積が前記側面の面積より大きく形成され、前記木材および樹脂材は前記側面と直交し前記側辺と平行な平面と公差する方向から前記電磁波が照射されることを特徴とする請求項2記載の積層板の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材はメタクリル樹脂により構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−167986(P2011−167986A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35245(P2010−35245)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(399032905)朝日木材加工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】