説明

積層被覆物としての使用に適した生分解性ポリマーフィルムおよびシートならびにラップその他のパッケージング材料

【課題】「ハード」バイオポリマーおよび「ソフト」バイオポリマーから製造された積層被覆物、ラップ及びその他のパッキング材料に適した生分解性ブレンドを提供する。
【解決手段】「ハード」バイオポリマーはより脆く、硬く、約10℃より高いガラス転移温度を有する。「ソフト」バイオポリマーはより可撓性、柔軟で、約0℃より低いガラス転移温度を有する。生分解性ポリマーはポリエステル、ポリエステルアミド、および熱可塑的処理可能デンプンを含む。ポリマーブレンドは無機充填剤を任意に含む。ポリマーブレンドから作られたフィルムおよびシートは嵩高い手触りを増すためにテクスチャ化してもよい。ラップが典型的に製造され、良好な「折れ固定性」を有し、ラップ位置を保持し、「非ラップ」の平面に戻らない。積層フィルムは、水蒸気透過係数(WVPC)により測定される典型的に良好な水蒸気バリヤ特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に生分解性ポリマーブレンドに関する。特に、本発明は可撓性および伸び率等の物理的特性が改良されたシートおよびフィルムを得るために、生分解性ポリエステルおよびポリエステルアミド等の2種またはそれより多いバイオポリマーのブレンドに関する。生分解性ポリマーブレンドは使い捨て可能なラップ、バッグその他のパッケージング材料または被覆物材料の製造における等多くの用途に適している。
【背景技術】
【0002】
豊かになると購買力が高まり物がより溜まってくる。世界の歴史においてこのように多くの人々がこのように高い購買力を持ったことはかつてなかった。本、道具、玩具、および食物等の比較的安価な物品に対する購買力は、より貧困な末端の範囲にあると考えられる人々によってさえ、現実的に社会の全てのレベルの人々によって楽しまれる贅沢である。購入した物の多くは販売前に包装されている必要があるので、固形廃棄物として環境中に日常的に排気される使い捨て可能な包装材料の量は非常に増大してきた。したがって、社会がより豊かになるにつれて、より多くのゴミが生まれる。
【0003】
多くの場合、包装材料は、卸売および小売り店舗から購入される多くの商品に使用されるボックス、カートン、ポーチ、およびラップ等使い捨てのみを意図している。コンピュータおよび「ペーパレス」処置の到来は包装廃棄物の増大傾向を止められなかった。実際、「電子商取引」の始まりにより多くのメールによる注文を一時的に引き起こし、これによって、製品は発送に適した箱の中で個々に包装される必要があるので、使用される包装材料の量は減少する代りに増加した。
【0004】
今突き進んでいる、信じられないほどの速さのライフスタイルにより人々が自分たちの食事を用意して家族やグループとして座って取っていた伝統的な食事の日常性が大きく破壊された。これに代わって、人々は急いで食物をつかみ、使用され直後に廃棄されるファーストフード包装材料が絶えず増加の一途を辿っている。使い捨て可能な包装材料の増加傾向の観点から、幾つかの国々、特にヨーロッパの国々では、ファーストフードからの廃棄物のリサイクルかまたは「生分解性」あるいは「堆肥化可能」である包装材料の使用のいずれかを命じ始めた。したがって、マクドナルド等の巨大なファーストフードチェーンは発泡ポリスチレン等の非生分解性包装材料の廃止を、政府発行法によりまたは環境保護団体による圧力により本質的に強制された。したがって、非生分解性の紙、プラスチック、および金属に対して代替する生分解性代替物の開発の必要性が絶えず存在する。
【0005】
バイオポリマーに対する要求に応じて、環境中に廃棄した際に生物分解を示す多くの新しいバイオポリマーが開発された。生分解性プラスチック市場における大企業の幾つかには、周知の化学会社であるデュポン、BASF、カーギルダウポリマー、ユニオンカーバイド、バイエル、モンサント、三井アンドイーストマンケミカル等がある。これらの会社の各々は1つまたはそれより多いクラスまたはタイプのバイオポリマーを開発した。例えば、BASFおよびイーストマンケミカルは両方共、それぞれECOFLEXおよびEASTAR BIOの商標で販売される「脂肪族−芳香族」共重合体として知られるバイオポリマーを開発した。バイヤーはBAKの商標で販売されるポリエステルアミドを開発した。デュポンはBIOMAX、すなわち改質ポリエチレンテレフタレート(PET)を開発した。カーギルダウはポリ乳酸(PLA)に基づく種々のバイオポリマーを販売している。モンサントは、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリヒドロキシバレラート(PHV)、およびポリヒドロキシブチラート−ポリヒドロキシバレラート共重合体(PHBV)等のポリヒドロキシアルカノアート(PHA)として知られるポリマーのクラスを開発した。ユニオンカーバイドはTONEの商標で販売されるポリカプロラクトン(PCL)を製造する。
【特許文献1】特表平11-500468号公報
【特許文献2】国際公開第00/36014号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記バイオポリマーの各々は独特な特性、利点、および、弱点を持っている。例えば、BIOMAX,BAK,PHB,およびPLA等のバイオポリマーは強いが、硬いかさらには脆い傾向にある。このため、良好な曲げ性や折り畳み性が要求されるラップ、バッグその他のパッケージング材料を作る際に使用する等可撓性シートやフィルムが所望される場合には候補には挙がりにくい。BIOMAXについて、デュポンはそれから得られるブローイングフィルムに適した仕様または条件を現在提供しておらず、このためにフィルムがBIOMAXからブロー成形可能であることを現在は信じることができないことになる。
【0007】
一方、PCL、ECOFLEXおよびEASTAR BIO等のバイオポリマーは、上記のより硬いバイオポリマーに比較して何倍も可撓性が高い。しかし、これらは比較的融点が低いので、新しく製造されおよび/または熱にさらされるとそれ自体接着する傾向にある。容易にフィルムにブロー成形されるが、他の場所や会社に販売および移送のために典型的に要求されるスプール上への巻取りの際に自己接着する傾向があるので大規模製造が困難である。このようなフィルム自己接着(または「ブロッキイング」)を防止するために、シリカその他のフィラーを組み合わせる必要がある。
【0008】
パッケージングに使用されるシートおよびフィルムに対する別の重要な基準は、温度安定性である。「温度安定性」は、高温または低温にさらされた場合、または発送または貯蔵の間の広範な温度にさらされた場合にさえ、所望の特性を維持する能力である。例えば、より可撓性が高いバイオポリマーの多くは室温よりかなり高い温度に加熱されると軟化し粘着性を有する傾向がある。したがって、所望のパッケージング特性を維持する能力について妥協される。他のポリマーは冷凍(すなわち0℃)よりかなり低く冷却されると硬くかつ脆くなる可能性がある。したがって、単一ポリマーまたはコポリマーは単独では広範な温度範囲内で充分な安定性を持ち得ない。
【0009】
冷凍食品またはファーストフード等の食物のパッケージングの場合、そのパッケージング材料は幅広い温度変化にさらされ、急速な温度変化を受ける可能性がある。室温に全く適したバイオポリマーは例えば熱い食物をラップするために使用する際には全く不適当であり、特に熱い水蒸気を多量に出す食物には不適当である。食物の場合、冷蔵または冷凍温度等の低温または室温で使用する際に適したラッピングは食物をマイクロ波解凍の間に軟化し粘着性を帯びるようになる。勿論、バイオポリマーが提供される食物またはファーストフードに溶融したり接着することは、ある理由で人がバイオポリマーを実際に消費することを望まない場合、通常受け入れられない。
【0010】
上記の観点において、パッケージング材料としての使用に適した強度および可撓性を有するシートおよびフィルムに容易に形成可能な生分解性バイオポリマーを提供することはこの業界における前進となるであろう。
特に、折り曲げたり、封止したり、または容易に閉止したり、基体に封止したりするために操作できるシートおよびフィルムに容易に形成可能な改良したバイオポリマーを提供することはパッケージング業界における進歩となるであろう。
【0011】
望ましくない自己接着等の問題を避けるかあるいは最小化しつつ、充分な可撓性を有するシートおよびフィルムに容易に形成可能な改良された生分解性ポリマーを提供することはこの業界においてさらなる進歩である。
さらに、現存するバイオポリマーに比べて広範な温度範囲にわたって温度安定性が高いシートおよびフィルムに容易に形成可能な改良された生分解性ポリマーを提供することはこの業界において進歩である。
このような、改良されたバイオポリマーを本明細書において開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は改良された強度、可撓性、伸び率、および温度安定性を有する生分解性ポリマーブレンドを含む。このようなポリマーブレンドは、ラップ、バッグ、ポーチ、および積層被覆物等の広範な種々のパッケージング材料において使用するために、押出、ブローまたは他の方法でシートおよびフィルムに形成される。
以下は原出願の国際出願日の請求の範囲である。
[特許請求の範囲]
[請求項1] 約10℃より高いガラス転移温度を有する少なくとも1種の硬質合成生分解性ポリマー;および
約0℃より低いガラス転移温度を有する少なくとも1種の軟質生分解性ポリマー;
を含んで構成される生分解性ポリマーブレンドであって、
前記ポリマーブレンドが押出成形シートおよびブロー成形フィルムのうち少なくとも1種への形成に適する、生分解性ポリマーブレンド。
[請求項2] 硬質生分解性ポリマーが、改質ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルアミド、またはラクチドまたは炭素数4以下のヒドロキシ酸のうち少なくとも1種から形成される単位を有する脂肪族ポリエステルのうち少なくとも1種を含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項3] 硬質生分解性ポリマーが、ポリ乳酸;ポリ乳酸誘導体;テレフタレート基の一部がスルホン化されエチレン基の一部がアルキレンオキシド基またはポリアルキレンオキシド基のうち少なくとも1種で置換された改質ポリエチレンテレフタレート;グリコリド、ラクチドおよびε−カプロラクトンから形成された単位を含むターポリマー;または少なくとも1種の二酸、少なくとも1種のジオール、および少なくとも1種のアミノ酸から形成されたポリエステルアミド;のうち少なくとも1種を含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項4] 軟質生分解性ポリマーが、ラクチドまたは少なくとも5の炭素数を有するヒドロキシ酸のうち少なくとも1種から形成される単位を有する脂肪族ポリエステル;脂肪族ジオール、脂肪族二酸および芳香族二酸から形成される単位を有するポリエステル;またはコハク酸および脂肪族ジオールから形成される単位を有するポリエステル;のうち少なくとも1種を含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項5] 軟質生分解性ポリマーが、アジピン酸、ジアルキルテレフタレート、および少なくとも1種の脂肪族ジオールから形成される単位を有する脂肪族−芳香族コポリエステル;ポリカプロラクトン;ポリヒドロキシブチラート−ヒドロキシバレラートコポリマー;ポリブチレンスクシネート;ポリブチレンスクシネートアジペート;またはポリエチレンスクシネート;のうち少なくとも1種を含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項6] 軟質生分解性ポリマーが熱可塑性的処理可能性デンプンを含む請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項7] 硬質生分解性ポリマーが生分解性ポリマーブレンドのうち約20〜約99重量%の範囲の濃度で含まれ、かつ軟質生分解性ポリマーが生分解性ポリマーブレンドのうち約1〜約80重量%の範囲の濃度で含まれる、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項8] 硬質生分解性ポリマーが生分解性ポリマーブレンドのうち約50〜約98重量%の範囲の濃度で含まれ、かつ軟質生分解性ポリマーが生分解性ポリマーブレンドのうち約2〜約50重量%の範囲の濃度で含まれる、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項9] 硬質生分解性ポリマーが生分解性ポリマーブレンドのうち約80〜約95重量%の範囲の濃度で含まれ、かつ軟質生分解性ポリマーが生分解性ポリマーブレンドのうち約5〜約20重量%の範囲の濃度で含まれる、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項10] 硬質生分解性ポリマーが約20℃より高いガラス転移温度を有する、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項11] 硬質生分解性ポリマーが約30℃より高いガラス転移温度を有する、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項12] 硬質生分解性ポリマーが約40℃より高いガラス転移温度を有する、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項13] 軟質生分解性ポリマーが約−10℃より低いガラス転移温度を有する、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項14] 軟質生分解性ポリマーが約−20℃より低いガラス転移温度を有する、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項15] 軟質生分解性ポリマーが約−30℃より低いガラス転移温度を有する、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項16] 少なくとも1種の非生分解性ポリマーをさらに含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項17] 少なくとも1種の粒子充填剤をさらに含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項18] 少なくとも1種の可塑化剤をさらに含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項19] 硬質ポリマーおよび軟質ポリマーのうち少なくとも1種が、1種以上のジイソシアネート連鎖延長剤を含む請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項20] 生分解性ポリマーブレンドがシートまたはフィルムの形態を有する、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項21] シートまたはフィルムがパッキングラップとして使用するのに適した折れ固定性を有する請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項22] シートまたはフィルムが少なくとも約100MPaのヤング率を有する、請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項23] シートまたはフィルムが少なくとも約150MPaのヤング率を有する、請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項24] シートまたはフィルムが少なくとも約200MPaのヤング率を有する、請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項25] シートまたはフィルムが嵩高い手触りを増すためにテクスチャ化されている、請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項26] シートまたはフィルムが少なくとも1部に印刷されている、請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項27] シートまたはフィルムが少なくとも1種の付加的なシートまたはフィルムで積層される、請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項28] シートまたはフィルムが製造されたモールド物品で積層される、請求項20記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項29] 軟質ポリマーが合成ポリマーを含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
[請求項30] 約10℃より高いガラス転移温度を有する少なくとも1種の合成生分解性ポリマー;および
約0℃より低いガラス転移温度を有する少なくとも1種の合成生分解性ポリマー;
を含む生分解性ポリマーブレンドであって、
前記ポリマーブレンドが押出成形シートおよびブロー成形フィルムのうち少なくとも1種への形成に適する、生分解性ポリマーブレンド。
[請求項31] 約10℃より高いガラス転移温度を有する少なくとも1種の合成生分解性ポリマー;および
約0℃より低いガラス転移温度を有する少なくとも1種の生分解性ポリマー;
を含み、シートまたはフィルムの形態を有する生分解性ポリマーブレンドであって、
前記生分解性シートまたはフィルムがパッキングラップとしての使用に適する折れ固定性を有する、生分解性ポリマーブレンド。
【0013】
本発明は、比較的高い可撓性を有する少なくとも1種のバイオポリマーと比較的硬質な少なくとも1種のバイオポリマーをブレンドすることにより前記改良を達成する。例えば、比較的硬質のBIOMAXポリマーすなわちデュポン社から販売される改質PET、および比較的軟質または可撓性のECOFLEXポリマーすなわちBASFから販売される脂肪族−芳香族コポリマーを含有するブレンドを見いだし、いずれかの単独のバイオポリマーより優れた強度および伸び率を具えたブレンドを得た。したがって、本発明はこれらの2種のバイオポリマーブレンドの驚くべき相乗効果を達成した。
【0014】
BIOMAXは比較的高いガラス転移温度を有するとして特徴付けられ、室温において高結晶性である。したがって、BIOMAXは、フィルムまたはシートに形成する際、かなり硬質であるか脆い傾向がある。さらに伸び率または弾性が乏しい。一方、ECOFLEXは比較的低いガラス転移温度を有するとして特徴付けられ、室温においてアモルファスすなわち非結晶性である。これはECOFLEXの著しい軟質、弾性、および高伸び率に寄与する。さらに、本発明はBIOMAXおよびCOFLEXの種々のブレンドがECOFLEXそれ自体より高い伸び率およびBIOMAXまたはECOFLEXのいずれかと比較してより高い破壊応力を示すという驚くべき結果を発見した。
【0015】
他のポリマーブレンドとしては、ECOFLEX,PLAおよび熱可塑的処理加工可能デンプン(TPS)のブレンドおよびBAKおよびTPSのブレンド等が考えられる。各場合において、比較的低いガラス転移温度を有するバイオポリマーを比較的高いガラス転移温度を有するバイオポリマーとブレンドすることにより、多くの場合、ポリマーブレンドが各ポリマーそれ自体の所望の特性を示す結果となり、ある場合には各バイオポリマーそれ自体の負の特性を減じるか最小化しつつ、より良好な結果を示す。
【0016】
一般に、「硬質」またはより低い可撓性であるとして特徴付けられるこれらのバイオポリマーは、約10℃より高いガラス転移温度を有するポリマーを含み、一方、一般に「可撓性」であるとして特徴付けられるバイオポリマーは約0℃より低いガラス転移温度を有するポリマーを含む。硬質のバイオポリマーは約20℃より高いガラス転移温度を有すると好ましく、より好ましくは約30℃より高く、最も好ましくは約40℃より高いことである。可撓性のバイオポリマーは約−10℃より低いガラス転移温度を有し、より好ましくは約−20℃より低く、最も好ましくは約−30℃より低いことである。
【0017】
さらに、「硬質」ポリマーは一般により結晶性であり、「可撓性」ポリマーは一般に結晶性がより低く非晶性がより高い。
約10℃より高いガラス転移温度を一般に有するポリマーとして特徴付けられる比較的硬質なポリマーは、生分解性ポリマーブレンドにおいて約20〜約99重量%の範囲の濃度を有すると好ましく、より好ましくは約50〜約98重量%であり、最も好ましくは約80%〜約95重量%である。
約0℃より低いガラス転移温度を有するポリマーとして特徴付けられる比較的軟質のポリマーは、生分解性ポリマーブレンドのうち、約1%〜約80重量%の濃度範囲を有すると好ましく、より好ましくは約2%〜約50重量%の範囲であり、最も好ましくは約5%〜約20重量%である。
【0018】
本発明の範囲内のバイオポリマーは典型的には硬質ポリエステルまたはポリエステルアミドである。しかし、デンプン、セルロースその他の多糖類および蛋白質から誘導される誘導体およびポリマー等の天然のポリマーおよびそれらの誘導体を含むことも本発明の範囲内に入る。自己接着を下げ、コストを下げ、ポリマーブレンドの弾性モジュラス(ヤング率)を高めるために、無機充填剤を組み合わせることも本発明の範囲内である。さらに、広範な種々の可塑化剤を所望の軟化および伸び特性を与えるために使用可能である。
【0019】
肉その他の腐り易い食物、特にファーストフード(例えばサンドイッチ、バーガー、デザート)を封止するのために使用されるラップ等「ラップ」として使用されることを意図されるシートまたはフィルムの場合、一端所望の方向に折ったり、ラップしたり等他の操作をすると、多くのプラスチックシートやフィルム(ポリエチレン)について生じるような、そのラップが自然には折れが外れたりラップが開いたりしないようにその方向を維持しようとする、良好な「一定の折れ」特性を有するシートおよびフィルムを提供することが望まれる。シートまたはフィルムの一定の折れ特性を改良するために、バイオポリマーブレンド(任意に充填剤を含む)は比較的高いヤング率、好ましくは約100MPaより高い、より好ましくは約150MPaより高い、最も好ましくは約200MPaより高いヤング率を有するフィルムを得るために設計される。一般に、硬質バイオポリマーが濃いとヤング率を上げる傾向がある。
【0020】
上記のように、無機充填剤を含有することは、ヤング率を上げる別の方法である。したがって、約5重量%より多く、好ましくは約10重量%より多く等、無機充填剤を有意な量で添加することによりこのようなポリマーブレンドから製造されたシートおよびフィルムの一定の折れ特性を改良することがわかった。
【0021】
この折れ固定性(永久折れ目性)を高める別の方法は、シートの「嵩高い手触り」を高めることであり、これはシートまたはフィルムの一般的に平面特性を乱すことによりなされる。これは、単純な平面のシートよりむしろ一連の山谷ができるように例えばシートをエンポス加工、クリンピング、キルティング、またはその他テクスチャ化によりなされる。また、これは例えば刻み付きまたは他のエンボス型の一対のローラにシートまたはフィルムを通すことによりなされる。このようなテクスチャ化により、折られてそれを維持するシートの能力を高め、したがって、シートの折れ固定性が改良される。
【0022】
ラップの製造においてバイオポリマーを使用することの別の重要な利点は、バイオポリマーが一般に、従来のプラスチックまたはパラフィン紙よりずっと容易に印刷ができそれを保持可能であることである。多くのプラスチックおよびワックスは、インクが接着可能な化学的感受性表面を提供するために、酸化表面である必要があり高度に疎水性である。一方、バイオポリマーは典型的に、インクが容易に接着可能なエステルまたはアミド基等の酸素含有部分を含む。
本発明のこれらのおよび他の特徴は以下の記載からより充分に明らかになり、以下に説明した発明を実施することによりわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
I.導入
本発明は、非ブレンドの生分解性ホモポリマーおよびコポリマーに比較して非常に改良された特性を有する生分解性ポリマーブレンドに関する。このような特性としては、改良された強度、可撓性、伸び率、および温度安定性を含む。さらに、このようなブレンドは、環境中に廃棄された際分解不可能であり、特別な処理なしでは容易に印刷できず、かつ固定された折れ特性に乏しい、従来のプラスチックより優れている。
【0024】
本発明のポリマーブレンドとしては、比較的高硬質を有する少なくとも1種のバイオポリマーおよび比較的高可撓性を有する少なくとも1種のバイオポリマーを含む。正しい比率においてブレンドされる場合に、フィルムおよびシートを製造するために使用される場合における各ポリマーの負の特性を相殺するかまたは除去しつつ、各ポリマーからの有利な特性を誘導することが可能である。本発明のポリマーブレンドは、ラップ、バッグ、ポーチ、および積層コーティング等の広範な種々のパッケージング材料において使用するために、押出、ブローその他の成形法でシートおよびフィルムに形成可能である。比較的硬質なポリマーを比較的可撓性のポリマーとブレンドすることにより、発明者はある場合においてブレンドの有益な特性が、個々に使用される場合の各ポリマーの所望の特性を実際に超えることを発見した。したがって、驚くべき結果として得られた予期しない相乗効果を説明する。
【0025】
本発明の範囲内のバイオポリマーは、典型的に合成ポリエステルまたはポリエステルアミドを含み、さらに、デンプン、セルロースその他の多糖類のポリマーおよびその誘導体並びに蛋白質等、種々の天然のポリマーおよびその誘導体を含んでもよい。無機充填剤を含有させることにより、固定折れ特性を改良し、コストを低減し、自己接着を減少させる。可塑化剤を添加することにより、所望の軟化性および伸び率を付与できる。シートおよびフィルムをエンボス加工、クリンプ、キルトその他でテクスチャ化して、嵩高い手触りおよび折れの固定性を改良できる。これらは従来のプラスチックまたはパラフィン紙よりずっと容易に印刷ができかつ保持する。その理由はこれらが典型的にインクを容易に接着できるエステルまたはアミド基等の酸素含有部分を有するからである。
【0026】
II.生分解性ポリマー
本発明の範囲のバイオポリマーは、生物の作用を通して分解されるポリマーを含む。このようなポリマーはポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート等、ある範囲の合成ポリマーを含む。生物分解反応は典型的に酵素触媒反応であり、かつ一般に水媒体中で生じる。蛋白質、セルロース、およびデンプン等の加水分解可能な結合を有する天然の巨大分子は一般に微生物の加水分解酵素により生物分解に感受性である。しかし、少しの人工的なポリマーも生分解性がある。ポリマーの親水性/疎水性の特性はこれらの生物分解能に非常に影響し、より極性のポリマーは一般により容易に生物分解可能である。生物分解能に影響する他の重要なポリマー特性は結晶化度および鎖自由度がある。
【0027】
生物分解可能であることに加えて、ポリマーまたはポリマーブレンドが、硬質、可撓性、耐水性、強度、伸び率、温度安定性、またはガス透過性等の物理的特性を示すことが重要であることが多い。特定のポリマーブレンドの意図される用途により、特定のポリマーブレンドまたはこれから製造される物品のために必要な特性について所望の性能基準を表すことを示す場合が多い。パッケージング材料としての使用のために適したシートおよびフィルムの場合、所望の性能基準としては伸び率、折れ固定性、強度、印刷可能性、液体不透過性、通気性、温度安定性等を含む。
【0028】
生分解性ポリマーの数が限定されているために、所定の用途に対する所望の性能基準の全てまたは殆どに適合した単一ポリマーまたはコポリマーを見つけることはしばしば困難であり、または不可能な場合でさえある。このことは、パッケージング材料の領域において特に当てはまる。高ガラス転移温度(Tg)を有するポリマーは大量生産でフィルムにブロー成形することが非常に困難であるかまたは、成形できたとしてもラップ等のパッケージング材料として使用するためには脆すぎる傾向があるかのいずれかである。一方、非常に低ガラス転移温度を有するポリマーは通常非常に低い軟化点および/または融点を有し、これにより、ブロッキングまたは自己接着の傾向なく、シートおよびフィルムに大量生産することが困難になる。さらに、このようなシートおよびフィルムはラップまたは積層コーティングの製造における等、ある用途に対する適切な強度、水蒸気バリヤ性および/またはモジュラスに欠ける。
【0029】
これらのおよび他の理由のために、生分解性ポリマーはパッケージング材料、特にラップの領域における使用は殆ど見いだされていなかった。しかし、本発明者はラップその他のパッケージング材料に適当なシートおよびフィルムを1種またはそれより多い種類の「硬質」すなわち高ガラス転移温度を有するポリマーを「軟質」すなわち低ガラス転移温度を有するポリマーにブレンドすることにより得ることができることを発見した。
【0030】
A.硬質ポリマー
「硬質」と「軟質」ポリマー間の区別はある程度曖昧ではあるが、デンプンまたは他の水分感受性材料から製造したモールド物品における等積層コーティングとしての使用、またはラップまたは他のパッケージング材料としての使用のために適したフィルムまたはシートを製造することが目的である場合には特に、所望の性能基準を有するポリマーブレンドを得るために一緒にブレンドするポリマーを決定する際に有益な分類である。
【0031】
一般に、「硬質」または低可撓性であるとして特徴付けられるこれらのバイオポリマーとしては、典型的に約10℃より高い温度のガラス転移温度を有するポリマーを含む。本発明の範囲に入る硬質バイオポリマーは好ましくは約20℃より高いガラス転移温度、より好ましくは約30℃より高い、最も好ましくは40℃より高いガラス転移温度を有する。前記範囲は、「ガラス転移温度」が、ガラス状でかつよりもろい材料であることからより軟らかくかつより可撓性である材料にポリマーが変化する、明確な温度ではなくしばしば温度範囲であることを考慮に入れる試みである。
【0032】
ガラス転移温度は、ポリマーの融点とは区別されるべきであり、その温度またはそれより高い温度で有意な破壊を生じることなく熱可塑性ポリマーが可塑的かつ変形可能になる。ポリマーのガラス転移温度(Tg)およびその融点(Tm)の間にはポジティブな関係があることが多いが、全てのポリマーについての場合に厳密ではない。TgとTmの差が大きい場合があり、比較的小さい場合もある。しかし、典型的により硬質ポリマーの融点がより軟質ポリマーの融点より高い場合が一般的である。
【0033】
本発明の範囲内の好ましい「硬質」バイオポリマーとしては、非制限的に、改質ポリエチレンテレフタレート(デュポン社により製造される等)、ポリエステルアミド(バイエル社により製造される等)、ポリ乳酸ベースポリマー(カーギルダウポリマーおよび大日本インキ社により製造される等)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリカプロラクトンベースのターポリマー(三井ケミカルズ社により製造される等)、ポリアルキレンカーボネート(PACポリマー社により製造されるポリエチレンカーボネート等)、およびポリヒドロキシブチラートを含む。
【0034】
本発明の範囲に入る好ましい硬質バイオポリマーとしては、デュポン社により製造されBIOMAXの商標で販売される、ある範囲の改質ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーを含む。デュポン社の改質PETポリマーはTietz氏の米国特許第5,053,482号明細書、 Gallagher氏等の米国特許第5,097,004号明細書、Tietz氏の米国特許第5,097,005号明細書、Gallagher氏等の米国特許第5,219,646号明細書、およびRomesser氏等の米国特許第5,295,985号明細書に開示されている。本発明にかかるポリマーブレンドの製造の際に使用される適切な「硬質」ポリマーを開示する目的のために、前記特許を具体的な参照により本発明に開示する。
【0035】
一般に、デュポン社の改質PETポリマーは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、分岐または非分岐低級アルカンジオール、およびこれらの誘導体等の、2種またはそれより多い異なったジオールから誘導される2種またはそれより多い異なった脂肪族単位の統計的分布を有する脂肪族成分を有する脂肪族成分およびテレフタレートの代替的単位から構成されるとして特徴付けられる。脂肪族単位の一部はアジピン酸等脂肪族二酸から誘導されることができる。さらに、繰り返しテレフタレート単位内のフェニレン基のうち低パーセントはスルホン化されかつアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基を用いて中和される。改質PETの脂肪族部分ならびに統計的に有意な量のスルフォン化テレフタレート単位は両方ともBIOMAXポリマーの生分解能に非常に寄与する。
【0036】
幾つかのBIOMAXグレードのポリマーは、200〜208℃の融点および40〜60℃のガラス転移温度を有する。BIOMAX6926はこのようなグレードの一つである。これは比較的強くかつ硬質なポリマーであり、より軟質ポリマーをブレンドする際、ラッピングその他のパッケージング材料に適した優れたシートおよびフィルムをもたらす。
【0037】
本発明にかかるポリマーブレンドを製造する際に使用する別の硬質ポリマーとしてはポリ乳酸(PLA)を含む。PLAは不織物品を製造するためにスパンまたは溶融繊維として使用可能であり、射出成形、押出、熱成形可能である。これらのポリマーは先ず1970年に医療縫合糸として市場に出された。乳酸の高分子ポリマー(Mn=50,000〜110,000)は、通常の土壌バクテリアにより破壊可能な有益な製品に加工可能な強い熱可塑性ポリマーである。PLAの潜在的な用途としては、パッケージング(食物および飲料のカートン)のためのペイパーコーティング、ファーストフードのためのプラスチック発泡体、マイクロ波に適用可能なコンテナ、その他の使い捨ておむつや庭ゴミバッグ等の消費者用製品を含む。PLAは、ホモポリマーにすることが可能であり、また、グリコライド、ラクトン、または他のモノマーと共重合可能である。PLAベースのポリマーの特に注目すべき特徴は再生可能な農業製品から誘導されることである。
【0038】
乳酸は商業規模で単一の段階で高分子ポリマーに直接重合することは困難であるため、殆どの会社は2段階の方法を使用している。乳酸は先ずオリゴマーに形成され、水を除去することにより3000より少ない分子量の直鎖になる。次に、このオリゴマーは解重合されラクチドになり、これは2つの縮合した乳酸分子からなる環状二量体である。この6員環は精製され、開環重合され、分子量50,000〜110,000のポリ乳酸を得る。
【0039】
乳酸は不斉炭素原子を有するので、幾つかの異性体が存在する。通常市販されている乳酸は、同量のL−(+)−乳酸およびD−(−)−乳酸を含み、したがって、旋光性のない光学的に不活性である。このラセミ混合物をDL−乳酸という。
ポリ乳酸は典型的には約59℃のガラス転移温度および約178℃の融点を有する。これは伸び率が低く、非常に硬い。
本発明にかかるポリマーブレンドの範囲内で使用される別の硬質ポリマーはCPLAとして知られている。これはPLAの誘導体であり、大日本インキ社から販売されている。2つのクラスのCPLAが販売されており、「CPLAハード」および「CPLAソフト」と呼ばれる。これらは両方共、本発明でいう「硬質」ポリマーである。CPLAハードは60℃のガラス転移温度を有するが、CPLAソフトは51℃のガラス転移温度を有する。
【0040】
バイエル社はBAKの名前で販売されるポリエステルアミドを製造する。BAKの一形態はアジピン酸、1,4−ブタンジオールおよび6−アミノカプロン酸から調製される。BAK1095はMn=22,700およびMw=69,700のポリエステルアミドであり、芳香族成分を含有しており、融点125℃である。BAK2195は175℃の融点を有する。BAK1095およびBAK2195のガラス転移温度は、改良特性がBAKを軟質ポリマーとブレンドすることにより得られるという意味で硬質ポリマーのように挙動するように見えるために、測定が困難であり、発明者はBAKポリマーのガラス転移温度は本質的に少なくとも約10℃であると考えている。
【0041】
三井ケミカル社は、縮合される、ポリ乳酸、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトンから誘導される単位を含むターポリマーを製造する。したがって、このポリマーは脂肪族ポリマーであり、PLA/PGA/PCLターポリマーと表される。このポリマーには3つのグレードがある、すなわち、H100J、S100およびT100である。H100JグレードのPLA/PGA/PCLターポリマーは解析の結果、ガラス転移温度74℃および融点173℃であった。
PACポリマー社は、ガラス転移温度が10〜28℃のポリエチレンカーボネート(PEC)を製造する。PECは本発明にかかるポリマーブレンドを製造するための硬質ポリマーである。
【0042】
B.軟質ポリマー
一般に、「軟質」すなわち低硬度であると特徴付けられるこれらのポリマーとしては典型的には約0℃より低いガラス転移温度を有するポリマーを含む。本発明の範囲内の軟質バイオポリマーは好ましくは約−10℃より低いガラス転移温度、より好ましくは約−20℃、最も好ましくは約−30℃を有する。前記範囲は、「軟質」ポリマーの「ガラス転移温度」が必ずしも明確な温度ではないがある範囲の温度にあることが多いという事実を光量に入れる試みである。
【0043】
本発明の範囲内の好ましい「軟質」バイオポリマーとしては非限定的に脂肪族−芳香族コポリエステル(BASFアンドイーストマンケミカル社により製造される等)、少なくとも5つの炭素原子を有する繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステル、例えばポリヒドロキシバレラート、ポリヒドロキシブチラート−ヒドロキシバレラートコポリマーおよびポリカプロラクトン(ダイセル化学、モンサント、ソルベイ、およびユニオンカーバイドにより製造される等)、およびスクシネートベース脂肪族ポリマー、例えばポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)およびポリエチレンスクシネート(PES)(昭和高分子により製造される等)を含む。
【0044】
BASFに譲渡されたWarzelhan氏等の米国特許第5,817,721号明細書は、本発明の範囲内の一範囲の脂肪族−芳香族コポリエステルを開示する。同様に、イーストマンケミカルに譲渡されたBuchanan氏等の米国特許第5,292,783号明細書、第5,446,079号明細書、第5,559,171号明細書、第5,580,911号明細書、第5,599,858号明細書、および第5,900,322号明細書は、それぞれ本発明の範囲内の脂肪族−芳香族コポリエステルを開示する。本発明の範囲内の「軟質」ポリマーを開示する目的でこれらの特許を特に参照して本発明に取り込む。
【0045】
本発明にかかるポリマーブレンドを製造する際に使用する好ましい「軟質」ポリマーとしてはECOFLEXの商標で販売され、BASF社により製造される脂肪族−芳香族コポリエステルを含む。BASF社により製造される脂肪族−芳香族コポリエステルは1,4−ブタンジオール、アジピン酸、およびジメチルテレフタレート(DMT)から誘導される統計的コポリエステルを含む。ジイソシアネートを連鎖延長剤として使用する場合がある。
【0046】
脂肪族モノマーとテレフタル酸(またはDMT等のジエステル誘導体)等の芳香族モノマーとの共重合は脂肪族ポリエステルの特性を改良する一方法である。しかし、PET等の芳香族コポリエステルは微生物の攻撃に対して抵抗性であるために脂肪族−芳香族コポリエステルの完全な生分解能に関して産業内で疑問が起こる。しかし、研究者は脂肪族−芳香族コポリエステルが生分解能があり、これらのコポリエステルの生分解能が芳香族配列の長さに関係することを発見した。比較的長い芳香族配列を有するブロックコポリエステルは微生物によって急速には分解されない。フィルムの厚さも要因であり、より厚いフィルムは体積比に対する表面が少ないために、よりゆっくり分解される。BASF社からECOFLEXの名前で現在販売されているポリマーは−33℃のガラス転移温度および105〜115℃の溶融範囲を有する。
【0047】
別の「軟質」脂肪族−芳香族コポリエステルはイーストマンケミカル社により製造され、EASTAR BIOの商標で販売されている。イーストマンにより製造される脂肪族−芳香族コポリエステルは1,4−ブタンジオール、アジピン酸、およびジメチルテレフタレート(DMT)から誘導されるランダムコポリマーである。EASTAR BIO14766として知られるEASTAR BIOのある特定のグレードは−33℃のガラス転移温度および112℃の融点を有する。これは、19MPaの流れ方向における破断時引張強度、600%の破断時伸び率、および97MPaの弾性の引張モジュラス(タンジェント)を有する。これは282gのエルメンドルフ引裂強さを有する。
【0048】
ポリカプロラクトン(PCL)は比較的低い融点および非常に低いガラス転移温度を有する生分解性脂肪族ポリエステルである。これはε−カプロラクトンを重合することにより形成されるのでそのように呼ばれる。PCLのガラス転移温度は−60℃であり融点はほんの60℃である。このため、低融点を有するPCLおよび他の類似の脂肪族ポリエステルはフィルムブローおよびブローモールド等の従来の方法により加工することは困難である。PCLから押出成形で製造されたフィルムは粘着性があり130℃を超える低溶融強度を有する。さらに、このポリマーの遅い結晶化により特性が経時的変化を起こす。PCLと他のポリマーとのブレンドによりPCLの加工性が改善される。通常のPCLはTONEであり、ユニオンカーバイドにより製造される。PCLの他の製造者としてはダイセル化学者およびソルベイを含む。
【0049】
ε−カプロラクトンは反応性に特徴がある7員環である。開裂は通常カルボニル基にて起こる。ε−カプロラクトンは典型的に過酸化法によりシクロヘキサノンから製造される。PCLはε−カプロラクトンを重合することにより製造されるポリエステルである。高分子量のPCLは広範な種々の、アルミニウムアルキル等の触媒、Ia、IIa、 IIbまたは IIIa族の金属アルキル等の有機金属、グリニャール試薬、II族の金属ジアルキル、カルシウムまたは他の金属アミドまたはアルキルアミド、アルカリ土類ヘキサアンモニアート、アルカリ酸化物およびアセトニトリルの反応生成物、アルミニウムトリアルコキシド、アルカリ土類アルミニウムまたはホウ素水酸化物、アルカリ金属またはアルカリ土類水酸化物、またはアルカリ金属単独等の影響下に調製される。PCLは典型的に脂肪族ジオール(HO−R−OH)を用いた開始により調製され、これは末端基を形成する。
【0050】
本発明のポリマーブレンドを製造する際に使用される別の「軟質」脂肪族ポリエステルはポリヒドロキシブチラート−ヒドロキシバレラートコポリマー(PHBV)であり、微生物誘導発酵を使用して製造される。このようなPHBVコポリエステルはモンサント社により製造され、約0℃のガラス転移温度および約170℃の融点を有する。
【0051】
PHBVを製造する発酵法において、1種のバクテリアがコーンおよびポテト供給原料をポリヒドロキシブチラート成分およびヒドロキシバレラート成分のコポリマーに転化する。供給原料を操作することにより、2種のポリマーセグメントの割合を変えてこの異なるグレードの材料を製造することができる。全グレードは完全に生分解性である間、耐水性である。PHBVの世界的生産者はモンサント社であり、製品はBIOPOLおよび種々のグレードのポリヒドロキシ−アルカノアート(PHA)を有するMETABOLIXである。
【0052】
「軟質」脂肪族ポリエステルの別のクラスはポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジペート(PBSA)、およびポリエチレンスクシナート(PES)等の繰り返しスクシナート単位に基づく。これらのスクシナートベースの脂肪族ポリエステルの各々は昭和高分子社により製造され、BIONELLEの商標で販売される。PBS(Bionolle1001)は−30℃のガラス転移温度および114℃の融点を有する。PBSA(Bionolle3001)は−35℃のガラス転移温度および95℃の融点を有する。PES(Bionolle6000)は−4℃のガラス転移温度および102℃の融点を有する。
【0053】
BIONOLLEに対する用途としてはフィルム、シート、フィラメント、発泡成形品および発泡エキスパンド品を含む。BIONOLLEは、コンポスト中、水分を含む土中、活性化スラッジを有する水中、および海水中で生分解性を有する。PBSAはコンポスト環境中で急速に分解し、それはセルロースに類似している。PBSはゆっくり分解し、生分解性の点においては新聞紙に類似している。
【0054】
BIONOLLEは高分子量を有しかつ有益な物理特性を有するスクシネート脂肪族ポリエステルを調製する特許化した2段階プロセスにしたがって製造される。第1段階では、低分子量ヒドロキシ末端脂肪族ポリエステルプレポリマーをグリコールおよび脂肪族ジカルボン酸から製造する。この重合を、テトライソプロピルチタネート、テトライソプロポキシチタン、ジブトキシジアセトアセトキシチタンまたはテトラブチルチタネート等のチタン触媒により触媒する。第2段階では、高分子量ポリエステルをヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のジイソシアネートをポリエステルプレポリマーと反応させることにより製造する。昭和高分子社はPBSを、プレポリマーを形成するための縮合反応において1,4−ブタンジオールをコハク酸と先ず反応させ、次にプレポリマーを連鎖延長剤としてのHMDIと反応させることにより製造している。
【0055】
PBSAコポリマーは1,4−ブタンジオール、コハク酸およびアジピン酸を先ず縮合してポレポリマーを形成し、次にこのプレポリマーを連鎖延長剤としてのHMDIと反応させることにより製造する。
PESホモポリマーをエチレングリコールおよびコハク酸を反応させることによりかつ連鎖延長剤としてHMDIまたはジフェニルメタンジイソシアネートを使用することにより調製する。
スクシネートベース脂肪族ポリエステルを三井等圧、日本触媒、Cheil Synthetics、イーストマン化学、およびSunkyon Industruesも製造している。
【0056】
改質デンプン等のデンプンは高ガラス転移温度(すなわち70〜85℃)を有し室温で非常に結晶性であることで知られているが、その結晶性が大幅に低下または破壊されるデンプンのある形態は、非常に低いガラス転移温度を有し本発明の範囲内の「軟質」生分解性ポリマーを構成する。例えば、Tomkaの米国特許第5,362,777号明細書は画期的な特許であり、熱可塑性的に加工可能なデンプン(TPS)として知られるものを製造する最初の試みであった。TPSは天然のまたは改質デンプンを適当な高沸点可塑化剤(グリセリンおよびソルビトール等)の存在下でデンプンが殆どまたは全く結晶性がなく、低ガラス転移温度、および非常に低い含水(ベント後コンディショニング前に溶融状態下で5重量%より少ない、好ましくは約1重量%より少ない、)を有する方法で混合および加熱することにより形成される熱可塑性デンプンポリマーとして特徴付けられる。例えばBAK等のポリエステルアミド等、本発明に記載の合成ポリマー等の適当な疎水性ポリマーとブレンドする場合、TPSは−60℃、典型的に約−20℃以下のガラス転移温度をもつことが可能である。
【0057】
III. 任意成分
所望の特性を付与するために、本発明の生分解性ポリマーブレンド内に数多くの任意成分が含まれる。
【0058】
A.可塑化剤
押出および/またはフィルムブロー、または、特に比較的硬質のポリマーブレンドの最終加工特性等のプロセスを改良するために、可塑化剤を添加することができる。硬質ポリマーブレンドは、製造中および製造後の、高温安定性、強度、低伸び率、高固定折れ性、「ブロッキング」抵抗性等の特性基準により決定される。このような場合、可塑化剤は、ポリマーブレンドが製造および/または特性基準を満たすことができるために必要である。
【0059】
本発明の範囲内の適当な可塑化剤は、特に食物に接触するラップその他のパッケージング材料の製造において使用されることを意図するポリマーブレンドに入れる場合、少なくとも少量であれば食べても安全であると好ましい。
本発明で使用される任意の可塑化剤は、非制限的に大豆油、ヒマシ油、TWEEN20、TWEEN40、TWEEN60、TWEEN80、TWEEN85,ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノステアラート、PEG、PEG誘導体、N,N−エチレンビスステアルアミド、N,N−エチレンビスオレアミド、ポリ(1,6−ヘキサメチレンアジペート)その他の適合性低分子量ポリマー等の重合性可塑化剤等を含む。
【0060】
B.固体充填剤
充填剤は任意の理由で添加され、非制限的に、ヤング率、折れの固定性、硬さの増加、コストおよび製造中の「ブロック」または自己接触に対するポリマーブレンドの傾向性の減少を含む。高アスペクト比を有する繊維のような充填剤は本発明のシートおよびフィルムの強度、破損エネルギー、折れ固定性を高める。本発明の範囲内の充填剤は一般にこれらの3つの分類に入る:(1)無機粒子充填剤、(2)繊維、(3)有機充填剤。
【0061】
1.無機粒子充填剤
「粒子」または「微粒子充填剤」の用語は、種々の異なる形やアスペクト比の充填剤粒を包含するために広く解釈されるべきである。一般に、「粒子」は約10:1より小さいアスペクト比(すなわち長さ対厚さの比)を有する固体についていう。約10:1より大きいアスペクト比を有する固体は以下の議論により「繊維」として理解されるかもしれない。
【0062】
不活性または反応性の実際に知られた充填剤を、生分解性ポリマーブレンドに入れることが可能である。一般に、無機充填剤の添加は得られるポリマーブレンドのコストを大幅に減少させる傾向にある。比較的少量の無機充填剤を使用する場合、最終組成物の強度に対する効果は最小化させるが、比較的多量の無機充填剤を添加する場合、前記効果は最大化される傾向にある。無機充填剤の添加により引張強度または可撓性等の重要な物理的パラメータが低下する傾向にある場合、意図する使用に要求される適当な機械特性を維持しつつ得られる組成物のコストを下げるためのみにそのように多量の充填剤を添加するべきである。しかし、無機充填剤の添加により、硬質、圧縮強度、および折れ固定性等の所定の用途の1つまたはそれより多い所望の物理的特性を改良する場合、大いにコストを低減しつつ所望の特性をもたらすために充填剤の添加量を最大化することが望ましい。
【0063】
当業者は微細構造光学的方法を使用して、無機充填剤を添加することによるコスト低減効果を得つつ、所望の強度特性を有する最終材料を設計するために本ポリマーブレンドに含まれる種々の無機充填剤のタイプと量を選択可能であることが理解されるであろう。
【0064】
一般に、可能な限り多量の充填剤を添加することの有害な機械的影響を最小化しつつ無機充填剤の量を最大化するために、粒子の比表面積を減少させる方法で充填剤粒子を選択することが一般に好ましい。比表面積は全粒子表面積対全粒子体積として規定される。比表面積を減少させる一方法は、より均一な表面幾何特性を有する粒子を選択することである。よりジグザグかつ不規則な粒子表面幾何特性は、表面積対粒子体積の比がより大きくなる。比表面積を減少するための別の方法は粒子サイズを大きくすることである。無機充填剤の比表面積を減少させる利点の観点から、好ましくは約0.1m/g〜約400m/gの範囲、より好ましくは約0.15m/g〜約50m/gの範囲、最も好ましくは約0.2m/g〜約2m/gの範囲の比表面積を有する無機充填剤粒子を含有する。
【0065】
粒子パッキングの概念は、本発明のポリマーブレンドの最終強度特性およびレオロジーを改良する際の比表面積低減に関連する。溶融ポリマーブレンド内で適当な粒子潤滑およびこれによる混合レオロジーを最小化しつつ、かつ、本発明の最終硬化ポリマーブレンドにおけるバインダーとしての熱可塑性相をより有効に使用しつつ粒子パッキング法により粒子間の無駄な隙間空間を減少させる。簡単に表現すれば、粒子パッキングは、より大きい粒子グループ間の空間をより小さい選択された粒子グループにより実質的に占有させるために2種の範囲またはそれより多い種類の範囲の粒子サイズを選択する方法である。
【0066】
無機充填剤粒子のパッキング密度を最適化するために、約0.01ミクロンから約2mmの範囲のサイズを有する種々のサイズの粒子を使用する。無論、所定のポリマーブレンドから製造されるべき所望の物品の厚さその他の物理的パラメータにより、粒子サイズの上限はしばしば制限される。一般に、粒子パッキングは、所定セットの粒子を、このグループの粒子より少なくとも約2倍大きいかまたは小さい粒子サイズ(すなわち幅および/または長さ)を有する別のセットの粒子と混合する場合に高まる。2つの粒子システムに対する粒子パッキング密度は、所定セットの粒子のサイズ比が別のサイズのセットの粒子の約3〜10倍である場合に最大化される。同様に、3つまたはそれより多く異なるセットの粒子を使用して粒子パッキング密度をさらに高めることが可能である。
【0067】
「最適な」パッキング密度の程度は、非制限的に、所定のポリマーブレンドから製造される最終物品の所望の機械的その他の特性、熱可塑性相および固体充填剤相の両方内の種々の成分のタイプおよび濃度、および採用される形成法等多くのファクターに依存する。当業者は日常的な試験を介してパッキング密度を最適化する粒子パッキングの最適レベルを決定可能である。粒子パッキング法のより詳細な議論はAndersen 氏等の米国特許第5,527,387号明細書に開示されている。本発明を実施する際に有益な粒子パッキング法を開示するために、この特許を特に参照して本発明に取り込む。
【0068】
粒子パキイング法を利用するレオロジーおよび結合効率の改良特性を利用することが好ましい場合において、約0.5〜約0.95の範囲の粒子充填密度の無機充填粒子を含むと好ましく、より好ましくは約0.6〜約0.9、最も好ましくは約0.7〜約0.8の範囲である。
【0069】
生分解性ポリマーブレンドに含まれる有益な無機充填剤の例としては砂、グラベル、破砕岩、ボーキサイト、グラニット、ライムストーン、サンドストーン、ガラスビーズ、エーロゲル、キセロゲル、マイカ、クレー、アルミナ、シリカ、カオリン、微粒子球、中空ガラス球、多孔質セラミック球、ジプサムジハイドレート、不溶性塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク、セラミック材料、ポゾラン材料、塩、ジルコニウム化合物、ゾノトラ石(結晶性カルシウムシリケートゲル)、軽量膨張クレー、パールライト、バーミキュライト、水和または非水和水硬セメント粒子、パマス、ゼオライト、剥離岩、鉱石、ミネラル、その他の地質材料等の種々の材料を含む。金属および金属合金(例えばステンレススチール、鉄、および銅)、ボールまたは中空球体材料(ガラス、ポリマー、および金属等)、ヤスリ屑、ペレット、フレーク、および粉末(ミクロシリカ等)を含む、広範な他の無機充填剤をポリマーブレンドに添加することができる。
【0070】
無機充填剤の粒子サイズまたはその範囲はポリマーブレンドから製造されるべきフィルム、シートまたは他の物品の壁厚に依存する。一般に、壁厚が厚いほど、受け入れ可能な粒子サイズはより大きくなる。殆どの場合、コストおよび無機充填剤の比表面積を減少するために、所定の用途に対する粒子サイズの受け入れ可能な範囲内で粒子サイズを最大化することが好ましい。相当量の可撓性、引張強度、および曲げ耐久性(例えばプラスチックバッグ)を有することを意図されるフィルムについて、無機充填剤の粒子サイズはフィルムの壁厚の約10%より小さいことが好ましい。例えば、40ミクロンの厚さを有するブロー成形されたフィルムについて、無機充填剤粒子が約4ミクロン以下の粒子サイズであることが好ましい。
【0071】
ポリマーブレンドに添加される顆粒充填剤の量は、充填粒子それ自体の比表面積および/または充填密度のみならず他の添加される成分の量および特性を含む種々の要因に依存する。したがって、本発明のポリマーブレンドの範囲に含まれる粒子充填剤の濃度は、ポリマーブレンドの約5容量%〜約90容量%の広い範囲に含まれる。使用可能な種々の無機充填剤の密度が多様であるため、体積%よりむしろ重量%において無機充填剤の濃度を表現する方がある場合においてはより正しい。この観点から、無機充填剤成分はポリマーブレンドの5重量%〜95重量%の広い範囲に含まれる。
【0072】
製造されるべき物品の要求される特性基準のために、熱可塑性相の特性が優勢であることが望ましい場合、無機充填剤が、ポリマーブレンドの約5体積%から約50体積%の範囲の量で含まれると好ましい。一方、高度に無機的に充填された系を作ることが望ましい場合、無機充填剤は約50〜約90体積%の範囲の量で含まれると好ましい。
【0073】
これらの競合する目的の点から、無機充填剤の実際の好ましい量は広く変化する。しかし、一般的に、得られたポリマーブレンドのコストを充分に減少させるために、含有される無機充填剤成分は、ポリマーブレンドの約15重量%より多いと好ましく、より好ましくは約25重量%より多く、さらに好ましくは約35重量より多く、最も好ましくは約50重量%より多い。
【0074】
折れ固定性を単に改良するために含有される場合、無機充填剤は、ポリマーブレンドの約3重量%より多い、好ましくは約5重量%より多い、より好ましくは約10重量%より多い量で含有される。
【0075】
2.繊維
ポリマーブレンドの物理特性を改良するために、広範な繊維を任意に使用可能である。前記充填剤同様、繊維は典型的に熱可塑性相とは別にこれと区別された固相を構成する。しかし、繊維の形のために、即ち、少なくとも約10:1より大きいアスペクト比を有するために、粒子充填剤よりも強度および靱性を付与することがより可能である。本発明において使用される「繊維」および「繊維材料」は共に無機繊維および有機繊維を含む。繊維は成形可能な材料に、可撓性、延性、曲げ性、凝集力、伸性、撓み性、靱性、折れ固定性、および破壊エネルギーを増加するために、ならびに得られたシートおよび物品の曲げ強度および引張強度を高めるために添加される。
【0076】
ポリマーブレンドに含有される繊維としては、木、植物、葉、植物の幹から抽出されるセルロース繊維等の天然の有機繊維が含まれる。さらに、ガラス、グラファイト、シリカ、セラミック、ロックウール、または金属材料から作られる無機繊維も使用される。好ましい繊維としては、通常の条件下で容易に分解するので、コットン、木質繊維(例えば南方の硬材および南方の松を含む硬材または軟材繊維)、フラックス、アバカ、サイザル、ラミー、麻、バガスを含む。再生紙繊維でさせ、多くの場合に使用可能であり、非常に安価であり豊富である。繊維は1種以上のフィラメント、織物、メッシュ、またはマットを含み、本発明のポリマーブレンドと共押出可能、あるいはブレンドまたは含浸可能である。
【0077】
本発明のシートおよび他の物品を作る際に使用される繊維は好ましくは長さ対幅の比(または「アスペクト比」)が高いと好ましく、これは、より長く、より狭い繊維は、より太い繊維よりマトリックスにバルクおよび塊を殆ど加えることなく、ポリマーブレンドにより強度を付与するからである。繊維は少なくとも約10:1のアスペクト比、好ましくは約25:1より大きいアスペクト比、より好ましくは約100:1より大きいアスペクト比、および最も好ましくは約250:1より大きいアスペクト比を有する。
【0078】
ポリマーブレンドに添加された繊維量は、複合的な設計において添加されるべき繊維量を決定する基本的な基準である引張強度、靱性、可撓性、およびコストを有する最終成形物品の所望の特性に依存して変化する。したがって、本発明のポリマーブレンドの範囲内の繊維濃度はポリマーブレンドの0重量%〜約90重量%と広範であり得る。繊維はポリマーブレンドの好ましくは約3〜80重量%、より好ましくは約5〜約60重量%、最も好ましくは約10〜約30重量%において含有される。
【0079】
3.有機充填剤
本発明のポリマーブレンドは広範な有機充填剤を含むことができる。ポリマーブレンドおよび添加される有機充填剤の融点に依存して、有機充填剤は分離した粒子として残り、熱可塑性相と別の固相を構成してもよいし、あるいは部分的にまたは全体的に溶解して熱可塑性相と部分的にまたは完全に結合してもよい。
【0080】
有機充填剤は、例えばシーゲル、コルク、種、ゼラチン、木粉、鋸ダスト、粉砕ポリマー材料、寒天ベース材料等の広範な天然の有機充填剤から構成される。また有機充填剤は1種以上の合成ポリマーも含み、これは実際に際限なく種々のものが存在する。有機充填剤の種々の性質のために、任意の有機充填剤成分について好ましい濃度範囲は一般的にはない。
【0081】
C.天然ポリマー
TPSに加えて、本発明のポリマーブレンドの範囲内で使用される他の天然ポリマーとしては、デンプンおよびセルロースの誘導体、蛋白質およびこの誘導体、多糖類ガムおよびその誘導体等その他の多糖類を含む。
デンプン誘導体の例としては、非制限的に改質デンプン、カチオン性デンプンおよびアニオン性デンプン、およびスターチアセタート、スターチヒドロキシエチルエーテル、アルキルスターチ、デキストリン、アミンスターチ、ホスフェートスターチおよびジアルデヒドスターチ等のデンプンエステルを含む。
【0082】
セルロース誘導体の例としは、非制限的に、セルロースエステル(例えば、ギ酸セルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、吉相酸セルロース、これらの混合エステルおよびこれらの混合物)およびセルロースエーテル(例えば、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、およびこれらの混合物)と含む。
【0083】
本発明のポリマーブレンドに含有され得る他の多糖類ベースポリマーとしては、アルギン酸、アルギネート、フィココロイド、寒天、アラビアゴム、グアールガム、アカシアガム、カラゲナンガム、ファーセララン(furcellaran)ガム、ガッチガム、プシリウム(psyllium)ガム、クインスガム、タマリンドガム、イナゴマメガム、カラヤガム、キサンタンガム、およびトラガカントガム、およびこれらの混合物または誘導体を含む。
適切な蛋白質ベースポリマーとしては例えばザイン(Zein:登録商標)(コーン由来プロルアミン)、コラーゲン(動物関連組織および骨から抽出される)およびこれらの誘導体(例えばゼラチンおよびグルー)、カゼイン(牛乳中の基本的な蛋白質)、ひまわり蛋白質、卵蛋白質、大豆蛋白質、野菜ゼラチン、グルテン、およびこれらの混合物または誘導体等を含む。
【0084】
D.非生分解性ポリマー
ポリマーブレンドの重要な特徴は一般的に生分解性であると考えられることであるが、生分解性ではない1種以上のポリマーが確実に本発明の範囲内にある。非生分解性ポリマーが一般的に優勢な連続相よりむしろ分散相を構成する場合、非生分解性ポリマー含有ポリマーブレンドは、少なくとも部分的には生分解性である。分解した場合、ポリマーブレンドは、後に非生分解性残渣が残り、これは非生分解性ポリマーの完全なフィルムおよびシートより優れている。
【0085】
シートおよびフィルムを形成するのに適した普通の非生分解性ポリマーの例としては、非制限的にポリエチレン、ポリプロプレン、ポリブチレン、PET、PETG、ポリビニルクロライド、PVDC、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリカーボネート、ポリスルフィド、ポリスルフォン、前記のものの1種以上を含むコポリマー等を含む。
【0086】
IV.ポリマーブレンド
A.濃度範囲
ポリマーブレンド内の種々の成分濃度は、最終ブレンドの所望の物理的および機械的特性、特定のブレンドから製造されるべき物品の特性基準、所望の物品に製造するための製造やブレンドに使用されるプロセス装置、およびブレンド内の特別な成分を含む多くの要因に依存する。当業者は本発明に開示の特定の実施例等の開示から日常的な試験を通して種々の成分の濃度を選択し、最適化可能である。
【0087】
本発明の範囲内の広範な種々のポリマーブレンドおよびブレンド内で設計される種々の特性の観点から、ハードおよびソフトポリマーは広範な濃度範囲で含有される。本発明のブレンドの範囲内の1種以上の硬いポリマーは、生分解性ポリマーブレンドの約20から約99重量%の範囲の濃度を有すると好ましく、より好ましくは約50〜約98重量%であり、最も好ましくは約80〜約95重量%の範囲である。
【0088】
同様に、軟質ポリマーは、生分解性ポリマーブレンドの約1〜約80重量%の範囲の濃度を有すると好ましく、より好ましくは約2〜約50重量%、最も好ましくは約5〜約20重量%である。
前記範囲は、上記のような任意の添加成分を除いた硬質および軟質ポリマーのブレンドの観点において測定される。
【0089】
B.ポリマーブレンドの特性
ポリマーブレンドは所望の特性を有するように設計される。食事、他の消耗食物、特にファーストフード(例えばサンドイッチ、バーガー、デザート)を閉じ込めるために使用されるラップ等の「ラップ」として使用されることを意図したシートおよびフィルムの場合、折ったり、ラップしたり、他の操作により所望の方向にするために良好な「折れ固定」性を有するシートおよびフィルムを提供することが一般に望ましい。このようなラップは、自然に折りがもどったり、ラップが外れたりしないようにその方向を維持しようとし、数多くのプラスチックシートおよびフィルムについて生じる(例えばポリエチレン)。
【0090】
製造されたシートまたはフィルムの折れ固定性を改良するために、比較的高いヤング率、好ましくは約100MPaより高く、より好ましくは約150MPaより高く、最も好ましくは約200MPaより高いヤング率のバイオポリマーを選択する。一般に、硬いバイオポリマーの濃度を上げることは、ヤング率を上げる傾向にある。また、ヤング率は、上記の粒子または繊維充填剤等の1種以上の充填剤をポリマーブレンドに充填することにより高められる。
【0091】
折れ固定性を改良するためにヤング率を高めることに加えて、あるいはこれに代えて、本発明のシートおよびフィルムはシートの「嵩高い手触り」を高めるために任意に処理され、これは、単純な平面のシートよりむしろ一連の山谷ができるように例えばシートをエンボス加工、クリンピング、キルティング、またはその他テクスチャ化することによりなされる。また、これは例えば刻み付きまたは他のエンボス型の一対のローラにシートまたはフィルムを通すことによりなされる。このようなテクスチャ化により折られてそれを維持するシートの能力を高め、したがって、シートの固定された折れ特性が改良される。
【0092】
本発明の生分解性ブレンドの別の重要な特性は、このようなブレンドをブロー成形、押出成形、または他の成形によりシートおよびフィルムにする場合、このようなシートおよびフィルムをさらに処理することなく、容易に印刷可能であることである。したがって、ラップの製造において本発明のポリマーブレンドを使用することの別の重要な利点は、このようなブレンドが一般に、従来のプラスチックまたはパラフィン紙よりずっと容易に印刷ができそれを保持可能であることである。多くのプラスチックおよびワックスは、インクが接着可能な化学的感受性面を提供するために、酸化表面である必要があり高度に疎水性である。一方、バイオポリマーは典型的に、インクが容易に接着可能なエステルまたはアミド基等の酸素含有部分を含む。
【0093】
C.ポリマーブレンド、シートおよびフィルムの製造法
本発明のポリマーブレンドを製造するために、熱可塑性組成物を製造する業界で知られている混合装置を使用することは本発明の範囲内である。本発明のブレンドを形成するために使用できる適当な混合装置の例としてはバス社(Buss Company)から販売される混練ブロックを有するメッシュスクリューを具えた二軸混練機、ブラベンダーミキサー、ゼイショーン(Theysohn)TSK 045コンパウンダ(これは同じ方向のシャフト回転を有する二軸エクストルーダであり、複数の加熱および処理領域を有する)、加熱可能なオーガースクリューを有するバスコニーダ(Buss Ko-Kneader)、ベーカーパーキンス MPC/V−30ダブルおよびシングルエクストルーダ、シングルまたはツインオーガーOMCエクストルーダ、モデルEPV/36Dエクストルーダ、BATTAGGIONME100直流スローミキサおよびHAAKEレオメックスエクストルーダを含む。
【0094】
前記のミキサの多くは押出機であり、本発明のブレンドからフィルムまたはシートを押し出すのに適している。あるいは、これらのブレンドを、樹脂製造者が製造中に主なポリ成分にブレンドの種々の少ない成分をインジェクト可能なトランスファラインインジェクション法を使用して作ることができる。当業者は製造される所望の物品に応じた適切な製造装置を選択し最適化可能である。
【0095】
シートおよびフィルムを製造する好ましい態様において、シートおよびフィルムはブレンドを調製するためにコンパウンドツインスクリューエクストルーダーを使用して、およびフィルムを作るためにブローフィルムまたはキャストフィルムラインを使用して、製造できる。
【実施例】
【0096】
V.実施例
本発明の生分解性ブレンドおよびそれから得られる物品を形成するための、より具体的な組成物および処理条件を開示するために以下の実施例を示す。これらの実施例は本発明の生分解性ポリマーブレンドの種々の混合設計、およびブレンドを製造するための種々の方法およびこれから得られるシートおよびフィルムを製造するための種々の方法を含んでいる。
例1〜3
フィルムは以下の混合設計を有する生分解性ポリマーブレンドから製造され、前ポリマーブレンドの重量%で濃度を表す。
【0097】
【表1】

【0098】
前記ポリマーブレンドは、デュポン社からのBIOMAX6926(新旧両ロット)、デュポン社からのBIOMAX6926ベース樹脂中のシリカマスタバッチ、およびBASFからのECOFLEX―F樹脂を使用して、カリフォルニア、メイウッドにあるジェミニプラスチクスにて、ブレンドされ、フィルムにブロー成形された。このフィルムを、Maddock剪断混合チップおよび0.032〜0.035”のダイギャップを有する直径4インチ環状ダイを有するジェミニフィルムブローエクストルーダ(L/D24/1)を使用してブロー成形した。
【0099】
シリカアンチブロックの典型的な量(すなわち0.16%)を使用したが、例3の混合設計(すなわちECOFLEX20%)を使用して作ったフィルムについてフィルムの有意なブロックが観察された。しかし、例1および2のECOFLEX5%および10%のブレンドについてブロッキングは観察されなかった。比較のために、ブレンドしないECOFLEXおよびBIOMAXのフィルムを製造した。この非ブレンドのECOFLEXフィルムはBASF ECOFLEX−F樹脂、および同じ樹脂中30%のタルクマスターバッチを使用して製造した。この非ブレンドのBIOMAXフィルム(新品および古い品)は0.16%のSiOを含み、一方、非ブレンドのECOFLEXフィルムは4.5%のタルクを含んだ。BIOMAX/ECOFLEXブレンドフィルムおよびコントロールBIOMAXフィルムおよび非ブレンドのECOFLEX―Fフィルムの機械特性を周囲雰囲気条件下で測定した。生成したデータを図1〜8に示すチャート1〜8に図式的にそれぞれ示す。
【0100】
図1に示したチャート1は、試験した種々のフィルムについて歪み速度対破断時の延び率(%)のプロットである。500mm/分にて、新しいおよび古いBIOMAXフィルムの両方について歪み速度は乏しい伸び率を示した。非ブレンドのECOFLEXフィルムおよび、BIOMAX−ECOFLEXブレンドから作るフィルムの全ては実験した歪み速度の全てにおいて非ブレンドのBIOMAXフィルムよりかなり良好な伸び率を有した。一方、例3の20%のECOFLEXブレンド(これらのフィルムは略80%のBIOMAX(非常に低伸び率を示す)を含むが、)は低歪み速度では非ブレンドのECOFLEXフィルムに比較して等しいかあるいはより良好な伸び率を示した。
【0101】
図2のチャート2は、500mm/分の一定の歪み速度にて測定したBIOMAX/ECOFLEXブレンドにおける伸び率(%)対ECOFLEXの割合(%)のプロットを示す。チャート2に示すように、COFLEX濃度が増加するのにつれて伸び率が略直線的に改良した。さらに、例3の20%のECOFLEXブレンドは非ブレンドのECOFLEXフィルムと同じく良好な伸び率を示した。
【0102】
図3に示したチャート3は、1000mm/分の一定の歪み速度にて測定したBIOMAX/ECOFLEXブレンドにおける伸び率(%)対ECOFLEXの割合(%)のプロットを同様に示す。同様に、ECOFLEXの濃度が10および20%にそれぞれ達するにつれて、BIOMAX/ECOFLEXブレンドの伸び率において劇的な改良が見られた。この傾向は500mm/分の一定の歪み速度で測定したチャート2におけるデータ程明確ではない。
【0103】
図4に示したチャート4は、種々のフィルムについて歪み速度対破壊応力のプロットを示す。同様に、非ブレンドのECOFLEXおよびBIOMAX/ECOFLEXブレンドの全てが実験した歪み速度の全てにおいて非ブレンドのBIOMAXフィルムよりかなり良好な破壊応力を示した。さらに、BIOMAX/ECOFLEXブレンドは全ての歪み速度にて非ブレンドのECOFLEXフィルムより良好な破壊応力を示し、これにより非ブレンドのBIOMAXまたはECOFLEXのいずれかよりBIOMAX/ECOFLEXブレンドの全てが引張強度においてより強いことを示す。
【0104】
図5に示すチャート5は、500mm/分の一定の歪み速度にて測定した例1〜3のBIOMAX/ECOFLEXブレンドにおける破壊応力対ECOFLEX割合のプロットを示す。ECOFLEXの濃度が増加するにつれて破壊応力の略直線的増加が観察された。さらに、例3の20%のブレンドは、非ブレンドのECOFLEXフィルムの略2倍の破壊応力、および非ブレンドのBIOMAXフィルムの略3倍の破壊応力を有するという驚くべき予期しない結果を示した。
【0105】
図6に示したチャート6は、1000mm/分の一定の歪み速度にて測定した例1〜3のBIOMAX/ECOFLEXブレンドにおける破壊応力対ECOFLEXの割合のプロットを示す。この歪み速度では、例2の10%のECOFLEXブレンドは最も高い破棄応力を示し、最大のピーク応力は72MPaであった。
【0106】
図7および8に示すチャート7および8は、フィルム中のECOFLEX濃度の関数として種々のフィルムの水蒸気透過係数(WVPC)をそれぞれプロットした。チャート7では、推定トレンドラインは7.79×10−3g・cm/m/d/mmHgに基づき、それは非ブレンドのECOFLEXフィルムについて測定した最も低いWVPCである。チャート8では、推定トレンドラインは42×10−3g・cm/m/d/mmHgに基づき、それは非ブレンドのECOFLEXフィルムについて測定した最も高いWVPCである。チャート7および8のデータは、例1および2の5%および10%のECOFLEXブレンドの水蒸気バリヤ特性が本質的に非ブレンドのBIOMAXフィルムと同じであったことを示す。全サンプルについてのWVPCデータをテストメソッドASTM F1249−90に記載の標準法により測定した。
【0107】
図9に記載のチャート9は、フィルムのECOFLEX濃度の関数として種々のフィルムのモジュラスをプロットする。驚くべきことに、BIOMAXおよびECOFLEXを含有するブレンドのモジュラスは非ブレンドのBIOMAXおよびECOFLEXより有意に高い。本発明にしたがって製造されたフィルムの使用法の一つは良好な折れ固定性を有するラップとしてであるため、および折れ固定性の程度がフィルムのモジュラスに関係すると考えられているため、BIOMAXおよびECOFLEXのブレンドは非ブレンドのBIOMAXおよびECOFLEXフィルムのそれぞれを超えて優れた折れ固定性を有すると思われる。5%および10%のブレンドが最も高いモジュラスを示す。
【0108】
例4−5
フィルムを以下の混合設計を有する生分解性ポリマーブレンドから製造した。その濃度は全ポリマーブレンドの重量%で表す。
【0109】
【表2】

【0110】
このフィルムを、Maddock剪断混合チップを有する2インチバリヤ混合スクリューおよび0.032〜0.035”のダイギャップを有する直径4インチ環状ダイを有するジェミニフィルムブローエクストルーダ(L/D24/1)を使用してブロー成形した。例5のフィルムは例4のフィルムより折れ固定性が良好であった。これは例5において使用したタルク濃度がより高いことに起因していると考えられる。
例6
フィルムを以下の混合設計の生分解性ポリマーブレンドから製造した。その濃度は全ポリマーブレンドの重量%で表す。
【0111】
【表3】

【0112】
熱可塑性的処理可能デンプン(Thermoplastically Processable Starch)をドイツエンメリッヒのBiotec Biologische Natuverpackungen GmbH & Co.,KG (バイオテック“Biotec”)から入手した。ポリ乳酸を米国ミシガン州ミッドランドのCargill-Dow Polymer, LLC から入手した。無機充填剤はスイスオフトリンゲンのOMYA、支社Pluess-Staufer AGから入手した炭酸カルシウムであった。
【0113】
前記ブレンドを製造し、バイオテックのために特別に製造し組み立てた独自の押出ライン熱可塑性デンプン押出/フィルムブロー成形装置を使用してシートにブロー成形した。特に、押出/フィルムブロー成形装置はドイツエベルスベルグのDr. Collin GmbHにより製造された。バイオテックにより使用された装置に類似の押出/フィルムブロー成形装置の仕様は米国特許第5,525,281号明細書に記載する。開示の目的のために、前記特許を特に参照することにより本発明に取り込む。
【0114】
このフィルムは215.65MPaのモジュラスを有する。したがって、このフィルムは無機充填剤およびポリ乳酸含有の結果として優れた折れ固定性を有する。これは室温では一般に硬く、結晶性ポリマーである。上記のように、PLAは50〜60℃のガラス転移温度を有する。ECOFLEXおよび熱可塑的処理可能デンプン(TPS)は共に軟質で低ガラス転移温度ポリマーとして作用する。TPSは付加的なポリマーと非常に低水位で混合した場合、−60℃に近いガラス転移温度を有する。ECOFLEXおよびTPSはブレンドのブロー成形性および可撓性を助ける。さらにTPSは天然のポリマー量を増加させ、フィルムをより生分解性にする。
例7
フィルムを以下の混合設計を有する生分解性ポリマーブレンドから製造した。その濃度は全ポリマーブレンドの重量%で表される。
【0115】
【表4】

【0116】
熱可塑的処理可能デンプンをバイオテックから入手した。BAK1095をドイツケルンのバイヤーAGから入手し、それは脂肪族−芳香族ポリエステルアミドであった。無機充填剤はスイスオフトリンゲンのOMYA、支社Pluess-Staufer AGから入手した炭酸カルシウムであった。
【0117】
前記ブレンドを製造し、例6に記載した独自の熱可塑性デンプン押出/フィルムブロー成形装置を使用してシートにブロー成形した。このフィルムは無機充填剤およびBAK1095含有の結果として優れた折れ固定性を有した。これは「フィルムグレード」に分類されるが、室温では一般に硬く、結晶性ポリマーである。上記のように、BAK1095は少なくとも10℃のガラス転移温度を有するように振る舞う。BAK1095のガラス転移温度はPLAに比べて比較的低く、フィルムのフィルムブロー成形性および可撓性を損なうことなく、より多くのBAKを含むことが可能である。TPSは軟らかく、低ガラス転移温度ポリマーとして作用し、ブレンドのブロー成形性および可撓性を助ける。また、天然のポリマー量を増加させ、フィルムをより生分解性にする。
【0118】
例8〜12
フィルムを、以下の混合設計を有する生分解性ポリマーブレンドから製造した。その濃度は全ポリマーブレンドの重量%で表す。
【0119】
【表5】

【0120】
タルクをコロラド州イングルウッドのLuzenacから入手した。その粒径は3.8ミクロンである。二酸化チタンをオクラホマのオクラホマ市にあるKerr-McGeeChemical LLCから入手した。そのグレードはTRONOX470で、粒径は0.17ミクロンである。カリフォルニア州ルーサンバレイにあるオムニア(Omnia)から入手した。その粒径は2ミクロンである。以下のブレンドをWerner Pfeiderer ZSK ツインスクリューエクストルーダで製造し、Maddock 剪断混合チップを有する2インチバリヤ混合スクリューおよび直径4インチダイを具えたGeminiフィルムブロー成形エクストルーダー(L/D24/1)を使用してシートにフロー成形した。フィルムは全て優れた折れ固定性を有した。例10〜12のポリマーブレンドをシングルスクリューエクストルーダーおよび14インチフラットキャストフィルムダイ、およびこのようなシステムに普通の通常のニップロールおよびフィルムテイクアップアセンブリを使用してシートに押し出した。また、これらのフィルムの全ては優れた折れ固定性を有した。
【0121】
VI.纏め
結論として、本発明はパッキング材料としての使用に適した強度および可撓性を有するシートおよびフィルムに容易に形成可能な生分解性ポリマーを提供する。
また、基材を容易に閉じ込め封止するために折れたり、シールしたり、その他の操作が可能なシートおよびフィルムに容易に形成可能な生分解性ポリマーを提供する。
【0122】
さらに、本発明は望ましくない自己接着等の問題を回避または最小化しつつ、充分な可撓性を有するシートおよびフィルムに容易に形成可能な生分解性ポリマーを提供する。
さらに、本発明は現存するバイオポリマーに比べて広い温度範囲にわたって高い熱安定性を有するシートおよびフィルムに容易に形成可能な生分解性ポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】種々の、非ブレンドおよびブレンドポリマーフィルムに対する破壊時伸び率(%)対加えた歪み速度のプロットを示す。
【図2】500mm/分の一定の歪み速度における、種々の非ブレンドポリマーおよびブレンドポリマーフィルムの伸び率(%)対フィルム中のECOFLEX濃度のプロットを示す。
【図3】1000mm/分の一定の歪み速度における、種々の非ブレンドポリマーおよびブレンドポリマーフィルムの伸び率(%)対フィルム中のECOFLEX濃度のプロットを示す。
【図4】種々の非ブレンドおよびブレンドポリマーフィルムに対する破断時応力対加えた歪み速度のプロットを示す。
【図5】500mm/分の一定の歪み速度における、種々の非ブレンドポリマーおよびブレンドポリマーフィルムの破断時応力対フィルム中のECOFLEX濃度のプロットを示す。
【図6】1000mm/分の一定の歪み速度における、種々の非ブレンドポリマーおよびブレンドポリマーフィルムの破断時応力対フィルム中のECOFLEX濃度のプロットを示す。
【図7】フィルム内のECOFLEX濃度の関数として、種々の非ブレンドポリマーおよびブレンドポリマーフィルムの水蒸気透過係数(WVPC:Water Vapor Permeability Coefficient)のプロットを示す。推定トレンドラインは非ブレンドのECOFLEXフィルムに対する測定された最も低いWVPC7.79×10−3g・cm/m/d/mmHgに基づく。
【図8】フィルム内のECOFLEX濃度の関数として、種々の非ブレンドポリマーおよびブレンドポリマーフィルムの水蒸気透過係数(WVPC)のプロットを示す。推定トレンドラインは非ブレンドのECOFLEXフィルムに対する測定された最も高いWVPC42×10−3g・cm/m/d/mmHgに基づく。
【図9】種々の非ブレンドポリマーおよびブレンドポリマーフィルムのモジュラス対フィルム中のECOFLEX濃度のプロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマーブレンドであって、
10℃より高いガラス転移温度を持ち、および硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の20〜99重量%の量で含まれる、少なくとも1種の硬質の合成生分解性ポリマー;および
0℃より低いガラス転移温度を持ち、硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の1〜80重量%の量で含まれ、脂肪族ジオール、脂肪族二酸および芳香族二酸から形成される単位を含む脂肪族−芳香族コポリエステルを含有する、少なくとも1種の軟質の合成生分解性ポリマー;
を備え:
ポリマーブレンドが、硬質または軟質の生分解性ポリマーのそれら自身によってのものよりも高い強度および/または伸びを持ち、およびシートまたはフィルムのうち少なくとも1種への形成に適する、生分解性ポリマーブレンド。
【請求項2】
硬質の合成生分解性ポリマーが、改質ポリエチレンテレフタレート;テレフタレート基の一部がスルホン化されエチレン基の一部がアルキレンオキシドまたはポリアルキレンオキシド基のうち少なくとも1種で置換された改質ポリエチレンテレフタレート;ポリエステルアミド;少なくとも1種の二酸、少なくとも1種のジオールおよび少なくとも1種のアミノ酸から形成されるポリエステルアミド;グリコリド、ラクチドおよびε−カプロラクトンから形成される単位を含むターポリマー;ポリアルキレンカーボネート;ポリ乳酸;ポリ乳酸誘導体;または4個までの炭素原子の繰り返し単位を持つ脂肪族ポリエステルのうち少なくとも1種を含む、請求項1記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項3】
軟質の合成生分解性ポリマーが、さらに、5個の炭素原子の繰り返し単位を持つ脂肪族ポリエステル;ポリヒドロキシブチラート−ヒドロキシバレアートコポリマー;ポリブチレンスクシネート;またはポリブチレンスクシネートアジペートのうち少なくとも1種を含み、脂肪族−芳香族コポリエステルが、アジピン酸、ジアルキルテレフタレートおよび少なくとも1種の脂肪族ジオールから形成される単位を含む、請求項1または2記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項4】
硬質の合成生分解性ポリマーが硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の80〜95重量%の量で含まれ、かつ軟質の生分解性ポリマーが硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の5〜20重量%の量で含まれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項5】
硬質の合成生分解性ポリマーが20℃より高い、または30℃より高い、または40℃より高いガラス転移温度を持つ、請求項1〜4のいずれか1項記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項6】
軟質の合成生分解性ポリマーが−10℃より低い、または−20℃より低い、または−30℃より低いガラス転移温度を持つ、請求項1〜5のいずれか1項記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項7】
生分解性ポリマーブレンドがさらに少なくとも1種の粒子充填剤を含み、粒子充填剤が少なくとも1種の型の無機充填剤粒子からなる、請求項1〜6のいずれか1項記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項8】
生分解性ポリマーブレンドがシートまたはフィルムの形態である、請求項1〜7のいずれか1項記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項9】
シートまたはフィルムがパッケージングラップとしての使用に適した永久折れ目性を持つ、請求項8記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項10】
シートまたはフィルムが少なくとも1種の付加的なシートまたはフィルムで積層されるか、または製造されたモールド物品に積層される、請求項8記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項11】
生分解性ポリマーブレンドであって、
10℃より高いガラス転移温度を持ち、硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の20〜99重量%の量で含まれ、および改質ポリエチレンレテフタレート;テレフタレート基の一部がスルホン化されエチレン基の一部がアルキレンオキシドまたはポリアルキレンオキシド基のうち少なくとも1種で置換された改質ポリエチレンテレフタレート;ポリエステルアミド;少なくとも1種の二酸、少なくとも1種のジオールおよび少なくとも1種のアミノ酸から形成されるポリエステルアミド;ポリアルキレンカーボネート;および4個の炭素原子の繰り返し単位を持つ脂肪族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の硬質の合成生分解性ポリマー;および
0℃より低いガラス転移温度を持ち、硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の1〜80重量%の量で含まれる、少なくとも1種の軟質の合成生分解性ポリマー;
を備え:
ポリマーブレンドがシートまたはフィルムのうち少なくとも1種への形成に適する、生分解性ポリマーブレンド。
【請求項12】
軟質の合成生分解性ポリマーが、5個の炭素原子の繰り返し単位を持つ脂肪族ポリエステル;ポリヒドロキシブチラート−ヒドロキシバレアートコポリマー;ポリブチレンスクシネート;ポリブチレンスクシネートアジペート;ポリエチレンスクシネート;脂肪族ジオール、脂肪族二酸および芳香族二酸から形成される単位を含むポリエステル;およびアジピン酸、ジアルキルテレフタレートおよび少なくとも1種の脂肪族ジオールから形成される単位を含む脂肪族−芳香族コポリエステルからなる群から選択され、前記ポリマーのいずれかが随意に1種以上のジイソシアネート連鎖延長剤を含む、請求項11記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項13】
少なくとも1種の天然のポリマーまたはその誘導体をさらに含む、請求項11または12記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項14】
硬質の合成生分解性ポリマーが硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の50〜98重量%の量で含まれ、かつ軟質の生分解性ポリマーが硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の2〜50重量%の量で含まれる、請求項11〜13のいずれか1項記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項15】
少なくとも1種の型の無機充填剤粒子をさらに含む、請求項11〜13のいずれか1項記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項16】
生分解性ポリマーブレンドであって、
10℃より高いガラス転移温度を持ち、硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の20〜99重量%の量で含まれ、および改質ポリエチレンレテフタレートおよびテレフタレート基の一部がスルホン化されエチレン基の一部がアルキレンオキシドまたはポリアルキレンオキシド基のうち少なくとも1種で置換された改質ポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1種の硬質の合成生分解性ポリマー;および
0℃より低いガラス転移温度を持ち、および硬質および軟質の生分解性ポリマーの総合重量の1〜80重量%の量で含まれる、少なくとも1種の軟質の生分解性ポリマー;
を備え:
ポリマーブレンドがシートまたはフィルムのうち少なくとも1種への形成に適する、生分解性ポリマーブレンド。
【請求項17】
軟質の生分解性ポリマーが、少なくとも5個の炭素原子の繰り返し単位を持つ脂肪族ポリエステル;ポリヒドロキシブチラート−ヒドロキシバレアートコポリマー;ポリブチレンスクシネート;ポリブチレンスクシネートアジペート;ポリエチレンスクシネート;脂肪族ジオール、脂肪族二酸および芳香族二酸から形成される単位を含むポリエステル;および熱可塑性的処理可能性デンプンからなる群から選択され、前記ポリマーのいずれかが随意に1種以上のジイソシアネート連鎖延長剤を含む、請求項16記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項18】
軟質の生分解性ポリマーがアジピン酸、ジアルキルテレフタレート、および少なくとも1種の脂肪族ジオールから形成される単位を含む少なくとも1種の脂肪族−芳香族コポリエステルからなる、請求項16記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項19】
少なくとも1種の型の無機充填剤粒子をさらに含む、請求項16または17記載の生分解性ポリマーブレンド。
【請求項20】
生分解性ポリマーブレンドから形成されるシートまたはフィルムであって、
10℃より高いガラス転移温度を持ち、および生分解性ポリマーブレンドの20〜99重量%の量で含まれる、少なくとも1種の合成生分解性ポリマー;および
0℃より低いガラス転移温度を持ち、および生分解性ポリマーブレンドの1〜80重量%の量で含まれる、少なくとも1種の生分解性ポリマー;
を備え:
ポリマーブレンドが、各生分解性ポリマーのそれ自身によってのものよりも高い強度および/または伸びを持ち、
生分解性シートまたはフィルムが、所望の方向に折ったり、ラップしたりその他の操作を加えた際、シートまたはフィルムが実質的にその方向を維持するようにシートまたはフィルムが永久折れ目性を持つように、テクスチャ化されるか、または一定量で少なくとも1種の粒子充填剤を含む、シートまたはフィルム。
【請求項21】
シートまたはフィルムがパッケージングラップとしての使用に適する、請求項20記載のシートまたはフィルム。
【請求項22】
シートまたはフィルムが少なくともその1部に印刷を含む、請求項20または21記載のシートまたはフィルム。
【請求項23】
シートまたはフィルムが少なくとも1種の付加的なシートまたはフィルムで積層されるかまたは製造した成形品に積層される、請求項20〜22のいずれか1項記載のシートまたはフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−255349(P2008−255349A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64441(P2008−64441)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【分割の表示】特願2002−521561(P2002−521561)の分割
【原出願日】平成13年3月28日(2001.3.28)
【出願人】(502250798)イー カショーギ インダストリーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】