積層造形方法及び積層造形装置
材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材を準備した後、最初の平板状材料部材における設計断面形状に応じた領域に照射光(レーザ光)Lを照射し、溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する。そして、当初断面要素の表面を平坦化する。次に、平坦化された一方側表面を有する既に造形された部分の表面上に次の平板状材料部材が配置される。引き続き、新たな平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた新たな平板状材料部材の領域に照明光を照射し、溶融させた後に凝固させることにより、積層断面要素が形成されるとともに、既に造形された部分と一体化させる。そして、積層断面要素の表面を平坦化する。以後、平板状材料部材の積層、積層断面要素形成及び積層表面平坦化を順次繰り返す。この結果、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形方法及び積層造形装置に係り、より詳しくは、粉末を材料として目的とする立体形状を造形する積層造形方法、及び、当該積層造形方法を使用する積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CAD(Computer Aided Design)で図面を作成した立体形状をラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping;以下、「RP」と略す)システムにより実体化することが、様々な分野で行われている。特に、積層造形方法を使用したRPシステムはマシニングセンタ等に比べて簡単な装置でありながら加工の自由度が高い。こうした長所を有する積層造形方法は、樹脂や紙を材料とするものに多く適用されてきたが、強度や経時・経年変化等の面で問題がある。このため、金属等を材料とする積層造形方法による立体造形の研究が盛んに進められている。
【0003】
こうした金属等を材料とする立体の積層造形のうち、高強度の造形品を目指すものとして、(a)金属等の材料粉末の表面に樹脂を塗布した後、レーザ照射により加熱して溶融させた樹脂部を接着剤として機能させて断面要素を順次積層し、立体を造形する方法や、(b)金属等の材料粉末を1種類のレーザ照射により直接加熱して溶融し、連続体を形成する方法が提案されている。こうした方法では、レーザ照射による所定領域の溶融及びその溶融部で凝固が起こる。しかし、こうした溶融及び凝固のみでは、造形された立体内部に空洞や樹脂が残留し、十分な強度が得られない。そこで、高温雰囲気中における残留樹脂成分の揮発や材料粒子の局所的な結合を促進させて焼結状態としたり、使用した金属等の材料よりも低融点材料を溶解して空洞部に浸透させたりする後処理が必要であり、こうした後処理により強度の向上を図っていた。
【0004】
これに対し、最近になって、焼結や低融点材料といった後処理を必要とせずに高強度を達成できる金属等の積層造形方法が提案されている(非特許文献1参照;以下、「従来例」と呼ぶ)。この従来例の積層造形方法では、図13A〜図14Bに示されるように、まず、材料粉末91を供給する(図13A参照)。なお、図13Aには、目的形状の一部が既に内部に積層造形された圧縮材料体98上に新たに積層造形される層のための材料粉末91が供給される例が示されている。
【0005】
引き続き、ブレード等を用いて材料粉末91を平坦化させて、材料粉末層92を形成する(図13B参照)。そして、材料粉体層92を高い圧力Pで圧縮し、圧縮材料層93を形成する(図13C参照)。
【0006】
次に、比較的低パワーのレーザ光L1により、目的とする立体形状の積層方向(+Z方向)における圧縮材料層93の位置の設計断面形状に応じた圧縮材料層93の領域を照射する。この結果、照射領域の材料が加熱されて溶融する。そして、その溶融部へのレーザ光L1の照射を止めて凝固させる。この結果、圧縮材料層93内に断面要素95が形成される(図14A参照)。なお、レーザ光L1を適当な速度で、設計断面形状に応じた圧縮材料層93の領域を走査することにより、材料を局所的に溶融して凝固させることが連続的に行われる。
【0007】
次いで、レーザ光L1よりもパワーの高いレーザ光L2を、断面要素95に照射して加熱し、既に積層造形されている部分と断面要素とを接合して一体化させる。この結果、断面要素95が新たに積層された積層造形体97が形成される(図14B参照)。以後、上記と同様にして、順次積層造形を進行させることにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0008】
【非特許文献1】徳永他 「2ステップレーザ照射法による純鉄粉体材料を用いた3次元造形」 精密工学会誌 第65巻 第8号 第1136〜1140頁、平成11年8月5日
【発明の開示】
【0009】
<発明が解決しようとする課題>
上記の従来例の積層造形方法は、高強度の立体を造形する観点からは、非常に優れたものである。しかしながら、従来例においては、各層の断面要素の作成のために、既に積層造形された部分上に材料粉末層を形成することが必要であるため、材料粉末層の形成場所である可動ステージ等として高い圧力に対する耐えられるものが必要であったり、レーザ照射用のステージから既に積層造形された部分を取り外した後に材料粉末層を形成して、再度レーザ照射用のステージに戻したりする必要があった。
【0010】
また、従来例では、パワーの異なる2種類のレーザ光L1,L2を単一のレーザ発振器で出力することは可能であるが、圧縮粉体の溶融凝固のためのレーザ光L1の照射、及び、既に形成された造形部分との接合のためのレーザ光L2の照射という2回のレーザ光の照射が必要であった。
【0011】
この結果、従来例の積層造形方法を採用した積層造形装置は、大規模なものにならざるを得ず、かつ、材料粉末の圧縮とレーザ照射という工程を混在させて実行することが必要であった。したがって、従来技術によっては、簡便に高強度の立体を造形することができるとはいい難かった。
【0012】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる積層造形方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる積層造形装置を提供することを目的とする。
【0014】
<課題を解決するための手段>
本発明の積層造形方法は、粉末を材料として、目的とする立体形状を造形する積層造形方法であって、材料粉末を押圧して形成した平板状材料部材を複数枚準備する平板状材料部材準備工程と;前記平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する当初断面要素形成工程と;前記当初断面要素の前記一方側の表面を平坦化する当初表面平坦化工程と;を実行した後に、前記平板状材料部材を既に造形された部分の前記一方側に配置する平板状材料部材積層工程と;前記目的とする立体形状における前記平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて積層断面要素を形成するとともに、前記一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化させる積層断面要素形成工程と;前記積層断面要素の前記一方側の表面を平坦化する積層表面平坦化工程と;を繰り返し、前記目的とする立体形状を造形することを特徴とする積層造形方法である。
【0015】
この積層造形方法では、まず、平板状材料部材準備工程において、材料粉末を押圧して形成した平板状材料部材を複数枚準備する。ここで、平板状材料は、自重やロボットアームなどによるステージ上へのロードによって崩れたりせず、かつ、後述する当初断面要素形成工程や積層断面形成工程におけるレーザ光照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されている。
【0016】
次に、当初断面要素形成工程において、平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する。こうして形成された当初断面要素の一方側は、表面張力等により平坦とはなっていない。このため、引き続き、当初表面平坦化工程において、当初断面要素の前記一方側の表面を平坦化する。こうして、最初の平板状材料部材の積層位置における部分の造形が行われる。
【0017】
次いで、平板状材料部材積層工程において、平坦化された一方側表面を有する既に造形された部分の一方側表面上に次の平板状材料部材が配置される。この結果、既に造形された部分の一方側表面上にほぼ密着した状態で、新たな平板状材料部材が載置される。
【0018】
引き続き、積層断面要素形成工程において、目的とする立体形状における新たな平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた当該新たな平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射する。この結果、レーザ光が照射された領域が、局所的に加熱されて溶融する。この後、レーザ光の照射を停止すると、溶融部分が凝固して積層断面要素が形成されるとともに、当該積層断面要素が、一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化する。
【0019】
こうして形成された積層断面要素の一方側は、上述した当初断面要素の場合と同様に表面張力等により平坦とはなっていない。このため、積層表面平坦化工程において、積層断面要素の前記一方側の表面を平坦化する。
【0020】
以後、上述した平板状材料部材積層工程、積層断面要素形成工程及び積層表面平坦化工程を順次繰り返すことにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0021】
すなわち、本発明の積層造形方法では、各層の断面要素の作成のために、既に積層造形された部分上に材料粉末層を形成することが必要ではなくなるため、レーザ照射用に使用するステージ装置が高い圧力に対する耐えられるものとする必要がなくなる。また、レーザ照射用のステージから既に積層造形された部分を取り外した後に材料粉末層を形成して、再度レーザ照射用のステージに戻したりする必要もなくなる。また、パワーの異なる2種類のレーザ光L1,L2による2段階の照射を行う必要もなくなる。さらに、材料粉末の圧縮とレーザ照射という工程を混在させて実行する必要もなくなる。
【0022】
したがって、本発明の積層造形方法によれば、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる。
【0023】
本発明の積層造形方法では、前記平板状材料部材における空隙率を50%未満とすることができる。この場合には、平板状材料部材を自重やロボットアームなどによるステージ上へのロードによって崩れたりせず、かつ、後述する当初断面要素形成工程や積層断面形成工程におけるレーザ光照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されたものとすることができる。なお、例えば、材料粉末が平均粒径が約100μmの純鉄粉である場合には、100MPa以上で押圧することにより、材料粉末が占める割合を50%以上とすることができる。
【0024】
本発明の積層造形方法では、前記材料粉末として、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等の金属の粉末、ニッケル−モリブデン(Ni−Mo)合金鋼等の合金の粉末を使用することができる。これらの中でも、後述するNi−Mo系の合金を使用すると、高強度で耐磨耗性に優れた造形品を得ることができる。なお、これら以外の金属又は合金であっても、溶融凝固過程を経る金属又は合金であれば材料として採用することができる。また、ナイロンその他のポリアミド系のプラスチック;ソーダガラスその他のガラス;ジルコニアその他のセラミックスであっても、レーザを吸収し溶融凝固過程を経るものであれば、材料として採用することができる。
【0025】
また、本発明の積層造形方法では、前記平板状材料部材それぞれの材料を、前記平板状材料部材それぞれの積層位置に応じて定めることができる。この場合には、積層造形体における積層方向に位置に応じて所望の強度等を有する材質として、積層造形体を製作することができる。
【0026】
また、本発明の積層造形方法では、前記当初断面要素形成工程と前記当初表面平坦化工程との間に行われ、前記平板状材料部材の最初の1枚における前記当初断面要素以外の部分を除去する当初余剰材料除去工程と;前記積層断面要素形成工程と前記積層表面平坦化工程との間に行われ、前記積層された平板状材料部材における前記積層断面要素以外の部分を除去する積層余剰材料除去工程と;を更に備えることとすることができる。この場合には、断面要素の平坦化に先立って、断面要素以外の材料部分、すなわち圧縮粉体部分を除去するので、平坦化後の表面に圧縮粉体の切りくずが残ってしまうことを防止することができる。この結果、平坦化表面上に次の平板状材料部材を隙間無く配置することができ、断面要素同士をむらなく一体化することができる。
【0027】
また、本発明の積層造形方法では、前記当初表面平坦化工程の直前又は直後、及び、前記積層表面平坦化工程の直前又は直後に、最新に形成された断面要素部分の側面を整形する側面整形工程を更に備えることとすることができる。この場合には、各断面要素が形成された後、次の断面要素が形成される前に形成された断面要素の形状を設計断面形状に精度良く一致させることができる。このため、滑らかな形状を有する立体形状であっても、精度良く造形することができる。
【0028】
本発明の積層造形装置は、材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材を出発材として、目的とする立体形状を造形する積層造形装置であって、前記平板状材料部材を搭載するステージを有し、前記ステージを3次元的に駆動可能なステージ装置と;前記平板状材料部材を前記ステージへ向けて搬送する搬送手段と;前記平板状材料部材の所定領域を局所的に加熱して溶融させるためのレーザ光を一方側から照射するレーザ光照射手段と;前記レーザ光の照射後に凝固して形成された断面要素の前記一方側表面を平坦化させる表面平坦化手段と;を備える積層造形装置である。
【0029】
この積層造形装置では、材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材を出発材として、まず、搬送手段が、最初の平板状材料部材をステージ装置のステージ上に載置する。引き続き、ステージを動かしながら、レーザ光照射手段からのレーザ光により、平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する。そして、表面平坦化手段が、当初断面要素の一方側の表面を平坦化する。こうして、最初の平板状材料部材の積層位置における部分の造形が行われる。
【0030】
次に、搬送手段が、平坦化された一方側表面を有する既に造形された部分の一方側表面上に次の平板状材料部材を配置する。引き続き、ステージを動かしながら、レーザ光照射手段からのレーザ光により、目的とする立体形状における新たな平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた当該新たな平板状材料部材の領域に一方側から照射する。この結果、レーザ光が照射された領域が、局所的に加熱されて溶融する。この後、溶融部分を凝固させることにより、積層断面要素が形成されるとともに、当該積層断面要素が、一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化させる。そして、表面平坦化手段が、積層断面要素の一方側の表面を平坦化する。
【0031】
以後、上述した平板状材料部材の積層、積層断面要素の形成及び積層断面要素を有する平板上材料部材の一方側表面の平坦化を順次繰り返すことにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0032】
すなわち、本発明の積層造形装置では、上述した本発明の積層造形方法を使用して、目的とする立体を造形することができる。したがって、本発明の積層造形装置によれば、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる。
【0033】
本発明の積層造形装置では、前記断面要素以外の余剰材料部分を除去する余剰材料除去手段を更に備える構成とすることができる。この場合には、表面平坦化手段による断面要素の一方側表面の平坦化に先立って、断面要素以外の材料部分を、余剰材料除去手段を用いて除去することにより、平坦化後の表面に圧縮粉体の切りくずが残ってしまうことを防止することができる。
【0034】
また、本発明の積層造形装置では、前記一方側表面が平坦化された断面要素の側面を整形する側面整形手段を更に備える構成とすることができる。この場合には、側面整形手段を用いることにより、各断面要素が形成された後、次の断面要素が形成される前に形成された断面要素の形状を設計断面形状に精度良く一致させることができる。このため、滑らかな形状を有する立体形状であっても、精度良く造形することができる。
【0035】
<発明の効果>
以上説明したように、本発明の積層造形方法によれば、簡易にかつ迅速に高強度の立体を造形することができるという顕著な効果がある。
【0036】
また、本発明の積層造形装置によれば、簡易にかつ迅速に高強度の立体を造形することができるという顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層造形方法を使用するための積層造形装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態において、造形目的とする立体の形状を説明するための図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その1)である。
【図3B】図3Aの平板状材料部材711の断面を示す図である。
【図4A】照射光の照射方法を説明するための図である。
【図4B】図4Aにおける照射スポットのオーバラップ率を説明するための図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その2)である。
【図5B】図5Aの平板状材料部材711及び断面要素751の断面を示す図である。
【図6A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その3)である。
【図6B】図6Aの断面要素761の断面を示す図である。
【図7A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その4)である。
【図7B】図7Aの断面要素771の断面を示す図である。
【図8A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その5)である。
【図8B】図8Aの断面要素771及び平板状材料部材712の断面を示す図である。
【図9A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その6)である。
【図9B】図9Aの断面要素771、平板状材料部材712及び断面要素752の断面を示す図である。
【図10A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その7)である。
【図10B】図10Aの断面要素771及び断面要素762の断面を示す図である。
【図11A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その8)である。
【図11B】図11Aの断面要素771及び断面要素772の断面を示す図である。
【図12A】第1の変形例を説明するための図である。
【図12B】第2の変形例を説明するための図である。
【図13A】従来例の積層造形方法を説明するための図(その1)である。
【図13B】従来例の積層造形方法を説明するための図(その2)である。
【図13C】従来例の積層造形方法を説明するための図(その3)である。
【図14A】従来例の積層造形方法を説明するための図(その4)である。
【図14B】従来例の積層造形方法を説明するための図(その5)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図11Bを参照して説明する。
【0039】
図1には、本発明の一実施形態に係る積層造形装置10の概略的な構成が示されている。図1に示されるように、この積層造形装置10は、(a)目的とする立体形状を設計するとともに、設計データを格納する計算機システム20と、(b)計算機システム20の制御のもとで、レーザ光を発生するレーザ装置31と、(c)レーザ装置31から射出され、光ファイバ32を介したレーザ光を、後述するステージ41上に載置された平板状材料部材71j(j=1〜N)に照射するための照射光学系33と、(d)計算機システム20の制御のもとで、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の3軸方向に移動可能なステージ41を有するステージ装置40とを備えている。
【0040】
ここで、計算機システム20は、(i)立体形状の設計プログラム等の様々なプログラムを実行するとともに、積層造形装置10全体を制御する処理装置21と、(ii)処理装置21の指令に応じて、図形や文字等を表示する表示装置22と、(iii)オペレータが処理装置21に対して指令や文字データを入力するキーボード等のストロークデバイス23と、(iv)オペレータが処理装置21に対して表示装置22の表示領域における位置を指定するマウス等のポインティングデバイス24と、(v)設計された立体形状のデータ等を格納する記憶装置25とを備えている。
【0041】
また、レーザ装置31としては、例えば、材料粉末が平均粒径100μmの純鉄の粉体である場合には、0.5mmの平板状材料部材に対し、ピークパワー2kW、パルス幅約10msのレーザの出力が可能なYAGレーザ発振機を、好適に採用することができる。
【0042】
また、照射光学系33は、計算機システム20の制御により、フォーカス位置のZ軸方向に沿って変化させることができるようになっている。
【0043】
また、ステージ装置40は、(i)上述したステージ41と、(ii)計算機システム20(より詳細には処理装置21)からの指令STCに応じて、ステージ41をXYZの3軸方向に駆動する駆動装置42とを備えている。また、ステージ41上には、十分な耐熱性を有するベース板43が載置されている。
【0044】
また、積層造形装置10は、(e)計算機システム20の制御のもとで、ステージ41に載置された部材の+Z方向側表面をXY面と平行となるように平坦化するための砥石等の平坦化加工器51と、(f)計算機システム20の制御のもとで、ステージ41に載置された部材の表面を磨砕し、積層段差よりも細かい精度で整形するためのボールエンドミル等の磨砕加工器52と、(g)計算機システム20の制御のもとで、ステージ41上の余剰物を除去するためのワイヤブラシ等の内部余剰物除去器53とを備えている。これらの平坦化加工器51、磨砕加工器52及び内部余剰物除去器53、並びに上述した照射光学系33は、基台部材54に取り付けられている。そして、計算機システム20の制御により、平坦化加工器51、磨砕加工器52及び内部余剰物除去器53は、それぞれが独立に、Z軸方向に移動可能となっている。なお、本明細書においては、「磨砕」の用語を、切削をも含む意味で用いるものとする。
【0045】
また、積層造形装置10は、(h)ロボットアーム56を有する搬送装置55を備えている。このロボットアーム56は、計算機システム20の制御により、XYZの3軸方向及びZ軸回りの回転が可能となっている。そして、計算機システム20の制御により、ロボットアーム56が、材料部材収納器59に収納された平板状材料部材711,712,…,71Nを順次ステージ41にロードするようになっている。
【0046】
また、積層造形装置10では、上述した照射光学系33、ステージ装置40、平坦化加工器51、磨砕加工器52、基台部材54及び搬送装置55は、収容壁61が形成する内部空間に収容されている。そして、収容壁61の外側に置かれたガスボンベ65から配管66を介して、収容壁61が形成する内部空間おける照射光Lの照射位置付近にアルゴンガス等の不活性ガスが供給されるようになっている。ここで、ガスボンベ65からの収容壁61が形成する内部空間への不活性ガスの供給量は、計算機システム20がガス供給弁67の開閉の度合いを制御することにより調整が可能となっている。
【0047】
また、積層造形装置10は、吸引器68を備えており、配管69を介してステージ41の余剰物を吸引できるようになっている。ここで、吸引器68による吸引動作は、計算機システム20により制御可能となっている。
【0048】
なお、平板状材料部材711,712,…,71Nは、材料の粉末を高圧で圧縮されて形成される。ここで、平板状材料部材711,712,…,71Nそれぞれは、自重やロボットアーム56によるステージ41上へのロードによって崩れたりせず、かつ、レーザ光Lの照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されている。例えば、材料粉末が平均粒径が約100μmの純鉄粉である場合には、100MPa以上で押圧し、平板状材料部材711,712,…,71Nそれぞれにおいて材料粉末自体が占める割合を50%以上とすることにより、自重やロボットアーム56によるステージ41上へのロードによって崩れたりせず、かつ、レーザ光Lの照射によって材料粉末が飛散しないものとなる。
【0049】
平板状材料部材71j(j=1〜N)の厚さは材料粉末の種類、並びにレーザ光Lのパワーに応じて適切な値が定まるものである。レーザ光Lのパワーに応じた平板状材料部材71jの厚さの適切な値は、事前の実験等により定められる。
【0050】
次に、上記のように構成された積層造形システムによる積層造形の動作について説明する。
【0051】
前提として、平板状材料部材711,712,…,71Nは、既に作成され、材料部材収納器59に収納されているものとする。また、平板状材料部材711,712,…,71Nが収納された材料部材収納器59が、収容壁61が形成する内部空間の所定位置に置かれているものとする。
【0052】
まず、設計者が、計算機システム20を使用して、目的とする立体形状を設計する。かかる設計作業は、処理装置により3次元CADプログラムを実行させた状態で、設計者が、表示装置22における表示を参照しながら、ストロークデバイス23及びポインティングデバイス24を操作することにより行われる。こうして設計された立体形状のデータ、及び当該立体を水平面(XY平面と並行な面)で所定の垂直方向(Z方向)の厚さでスライスした場合における、各スライス部の断面形状のデータは、記憶装置25に格納される。なお、本実施形態では、設計された立体は、図2に示されるように、Z方向に沿って、XY断面形状である正方形枠の一辺の長さが変化している立体OBJであるものとする。
【0053】
以上のようにして、CAD設計が終了すると、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が搬送装置55のロボットアーム56の可動範囲内となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が搬送装置55を制御して、平板状材料部材711を材料部材収納器59から取り出して、ステージ41の表面のベース板43上にロードする(図3A参照)。この状態における平板状材料部材711は、図3Bに示されるXZ断面で代表的に示されるように、全体として平坦となっている。
【0054】
次に、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が照射光学系33の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が駆動装置42を制御して平板状材料部材711の+Z方向側表面のZ軸位置が照射光学系33から射出される照射光Lの焦点面近傍となるように、ステージ41をZ軸方向に移動させる。なお、ステージ41のZ軸方向の移動に際しては、平板状材料部材711の+Z方向側表面が照射光Lに対して所定のデフォーカス量を有するように移動させる。この所定のデフォーカス量は、事前の実験等により定められる。
【0055】
次いで、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41をXY平面と平行に移動させながら、レーザ装置31を制御して、平板状材料部材711における設計断面形状に応じた領域に照射光Lを照射して局所的な加熱を行う。この加熱に際し、計算機システム20は、ガス供給弁67の開閉を制御することにより、加熱部分付近に例えばアルゴン(Ar)ガスや窒素(N2)ガス等の不活性ガスを適宜供給し、材料の酸化等による変質を防止する。なお、本実施形態においては、不活性ガスとして、コストが廉価な窒素(N2)ガスを使用している。
【0056】
照射光Lの照射による局所的な加熱は、図4Aに示されるように、平板状材料部材711の+Z方向側表面における照射光(パルス光)Lによるスポット状の照射領域SPT1,SPT2,…それぞれが、次の照射領域SPT2,SPT3,…とオーバラップするように、パルス間隔とステージの移動速度との調整を図りつつ行われる。なお、図4Bに示される照射領域SPTjと次の照射領域SPT(j+1)とのオーバラップ面積Sj,j+1を、照射領域SPTjの面積(=Sj+Sj,j+1)の50%以上とすることが、強度の高い造形物を形成する上で好ましい。このようにすることにより、従来の2ステップレーザ光照射と同様の強度で、強度の高い造形物を形成することができる。なお、照射光の照射による平板状材料部材711の局所的な加熱は、ガスボンベ65から供給された不活性ガスの雰囲気内で行われる。
【0057】
こうした照射光Lの照射の結果、第1層目の断面要素751が形成される(図5A参照)。なお、第1層目の断面要素751の形成に際しては、ベース板43に第1層目の断面要素751が仮止め固定される。こうした仮止め固定は、後述する第2層目以降の断面要素の形成時と比べて照射光Lのパワーを少々弱めることにより達成される。
【0058】
こうして形成された断面要素751のY軸方向に沿って延びる部分における平板状材料部材711のXZ断面を図5Bに示す。この図5Bで代表的に示されるように、断面要素751は、照射光Lが照射された領域と照射されなかった領域との境界部が三日月の端部のような形状となる。また、断面要素751の中央部の+Z方向側表面のZ軸方向位置が、照射前の平板状材料部材711の+Z方向側表面のZ軸方向位置よりも−Z方向にずれる。
【0059】
引き続き、平板状材料部材711における断面要素751以外の余剰材料部分を除去する。かかる余剰材料部分の除去に際しては、計算機システム20が、ステージ41を適宜移動させつつ、平坦化加工器51や内部余剰物除去器53を用いて当該余剰材料部分を機械的に除去したり、吸引器68により吸引除去したりする。なお、機械的な除去を行う場合には、断面要素751が形成する閉領域内については内部余剰物除去器53を用いて余剰材料の部分を掻き出す。
【0060】
次に、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が平坦化加工器51の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素751の+Z方向側表面が、平坦化加工器51の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。この後、計算機システム20が駆動装置42及び平坦化加工器51を制御して、断面要素751の+Z方向側表面を平坦化する。この結果、断面要素751が、+Z方向側表面が平坦化された断面要素761に加工される(図6A参照)。こうして形成された断面要素761がY軸方向に沿って延びる部分のXZ断面を図6Bに示す。
【0061】
次いで、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が磨砕加工器52の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素761の+Z方向側表面が、磨砕加工器52の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。この後、計算機システム20が駆動装置42及び磨砕加工器52を制御して、断面要素761の側面を磨砕して設計形状と精度良く一致するように整形する。この結果、断面要素761を整形した整形断面要素771が形成される(図7A参照)。形成された整形断面要素771がY軸方向に沿って延びる部分におけるXZ断面を図7Bに示す。こうして形成された整形断面要素771が、この段階における造形体となる。
【0062】
次に、計算機システム20が、駆動装置42を制御して、ステージ41が搬送装置55のロボットアーム56の可動範囲内となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が搬送装置55を制御して、平板状材料部材712を材料部材収納器59から取り出して、ベース板43に載置され、整形断面要素771上にロードする(図8A参照)。この状態における整形断面要素771がY軸方向に延びる部分のXZ断面を図8Bに示す。この図8Bに示されるように、全体的に密着するように、平板状材料部材712が、整形断面要素771の+Z方向側表面上に載置される。
【0063】
次いで、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が照射光学系33の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させた後、平板状材料部材712の+Z方向側表面のZ軸位置が照射光学系33から射出される照射光Lの焦点面近傍となるように、ステージ41をZ軸方向に移動させる。そして、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41をXY平面と平行に移動させながら、レーザ装置31を制御して、平板状材料部材711の場合と同様にして、平板状材料部材712における設計断面形状に応じた領域に十分なパワーの照射光Lを照射して局所的な加熱を行う。この結果、整形断面要素771と一体化した第2層目の断面要素752が形成され、断面要素751と一体化される(図9A参照)。こうして形成された断面要素752のY軸方向に沿って延びる部分における平板状材料部材711及び平板状材料部材712のXZ断面を図9Bに示す。この図9Bで代表的に示されるように、断面要素752は、上述した断面要素751と同様に、照射光Lが照射された領域と照射されなかった領域との境界部が三日月の端部のような形状となる。また、断面要素752の中央部の+Z方向側表面のZ軸方向位置が、照射前の平板状材料部材712の+Z方向側表面のZ軸方向位置よりも−Z方向にずれる。
【0064】
次に、平板状材料部材712における断面要素752以外の余剰材料部分を除去する。かかる余剰材料部分の除去に際しては、計算機システム20が、ステージ41を適宜移動させつつ、平坦化加工器51や内部余剰物除去器53を用いて当該余剰材料部分を機械的に打ち落とす等する。そして、吸引器68により吸引除去する。引き続き、断面要素751の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が平坦化加工器51の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させた後、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素752の+Z方向側表面が、平坦化加工器51の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。
【0065】
そして、断面要素751の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42及び平坦化加工器51を制御して、断面要素752の+Z方向側表面を平坦化する。この結果、断面要素752が、+Z方向側表面が平坦化された断面要素762に加工される(図10A参照)。こうして形成された断面要素762がY軸方向に沿って延びる部分のXZ断面を図10Bに示す。
【0066】
次いで、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が磨砕加工器52の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させた後、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素762の+Z方向側表面が、磨砕加工器52の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。そして、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42及び磨砕加工器52を制御して、断面要素762の側面を磨砕して設計形状と精度良く一致するように整形する。この結果、断面要素762を整形した整形断面要素772に形成される(図11A参照)。形成された整形断面要素772がY軸方向に沿って延びる部分のXZ断面を図11Bに示す。こうして形成された整形断面要素771及び整形断面要素772が一体化したものが、この段階における造形体となる。
【0067】
以後、上記の第2層目における積層造形と同様にして、第3層目以降の積層造形が行われる。そして、最終的に、目的とする立体OBJが高強度かつ高精度で造形される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材711〜71Nを準備した後、最初の平板状材料部材711における設計断面形状に応じた領域に照射光(レーザ光)Lを照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素751を形成する。引き続き、当初断面要素751の表面を平坦化する。
【0069】
次に、平坦化された一方側表面を有する既に造形された部分の表面上に次の平板状材料部材71k(k=2〜N)が配置される。この結果、既に造形された部分の表面上にほぼ密着した状態で、新たな平板状材料部材が載置される。引き続き、新たな平板状材料部材71kの積層位置の設計断面形状に応じた新たな平板状材料部材71kの領域に照明光を照射し、局所的に加熱されて溶融させた後に凝固させることにより、積層断面要素75kが形成されるとともに、既に造形された部分と一体化する。引き続き、積層断面要素71kの表面を平坦化する。
【0070】
以後、平板状材料部材の積層、積層断面要素形成及び積層表面平坦化を順次繰り返すことにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0071】
したがって、本実施形態によれば、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる。
【0072】
また、本実施形態では、平板状材料部材711〜71Nにおいて、材料が占める体積が、空間が占める体積よりも大きい、すなわち、材料粉末が占める割合を50%以上としている。このため、平板状材料部材711〜71Nが自重やロボットアームなどによるステージ上へのロードによって崩れたりせず、かつ、照射光(レーザ光)の照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されたものとすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、断面要素75j(j=1〜N)の形成後、平板状材料部材71jにおける断面要素75j以外の部分を除去した後、断面要素75jの表面を平坦化する。このため、平坦化後の表面に圧縮粉体の切りくずが残ってしまうことを防止することができる。この結果、平坦化表面上に次の平板状材料部材を確実に隙間無く配置することができる。
【0074】
また、本実施形態では、最新に形成された断面要素751,752,…それぞれが形成される度に側面も整形するので、造形結果を設計形状に精度良く一致させることができる。
【0075】
なお、平板状材料部材の材料としては、上述した純鉄の粉末の他、チタン等の金属の粉末;Ni−Mo合金鋼(例えば、川崎製鉄(社)製 KIPシグマロイ415(商品名))その他の合金の粉末;ナイロンその他のポリアミド系のプラスチックの粉末;ジルコニアその他のセラミックスの粉末;又はソーダガラスその他のガラスの粉末等を材料として使用し、同様に積層造形を行うこともできる。
【0076】
ここで、使用する材料に応じて加熱用のレーザの種類を適宜選択することが必要となる。例えば、材料が純鉄の粉末以外であっても、金属又は合金の粉末であれば、YAGレーザを採用することができる。また、材料が純鉄等の金属又は合金の粉末であっても、レーザとして、炭酸ガスレーザ、半導体レーザ等を採用することもできる。また、上述した各種の樹脂又はガラスに対しては炭酸ガスレーザ、上述したセラミックスに対してはYAGレーザ又は炭酸ガスレーザ等を採用することができる。また、樹脂にカーボンなどの吸収剤を混入しておくことにより、半導体レーザやYAGレーザを使用することもできる。
【0077】
また、上記の実施形態では、ステージ41がXY軸方向で可動としたが、照射光学系33による照射光の走査範囲が十分に広ければ、ステージ41がXY軸方向で固定されていてもよい。また、上記の実施形態では、ステージ41のZ軸方向への移動を計算機システムの制御のもとで行ったが、ステージ41のZ軸方向への移動を手動で行ってもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、平板状材料部材と焦点面とのZ軸方向の位置関係の調整を、ステージ41をZ軸方向に移動させることにより行うこととした。これに対して、照射光学系33を移動したり、照射光学系33の焦点位置を調整したりしてもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、全ての平板状材料部材711〜71Nの材料を同一としたが、平板状材料部材それぞれの材料を、平板状材料部材それぞれの積層位置に応じて定めることができる。この場合には、積層造形体における積層方向に位置に応じて所望の強度等を有する材質として、積層造形体を製作することができる。
【0080】
また、上記の実施形態では、全ての平板状材料部材711〜71Nの形状を円形としたが、図12Aに示されるような矩形状の平板状材料部材71’を用いてもよい。さらに、図12Bに示されるように、平板状材料部材71’を複数個配列したものを一層分の材料部材とすることにより、大きなものを積層造形することができる。
【0081】
また、上記の実施形態では吸引器68を用いたが、エアブロアを用い余剰材料部分を吹き飛ばすようにしてもよい。
【0082】
また、断面要素の表面の平坦化に先立って、断面要素の側面の整形を行うようにすることもできる。
【0083】
また、積層造形の対象となる立体形状は、上記の実施形態における立体OBJの形状に限定されるものではなく、任意の立体形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明の積層造形方法及び積層造形装置は、粉末を材料として、目的とする立体形状を造形する積層造形に適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形方法及び積層造形装置に係り、より詳しくは、粉末を材料として目的とする立体形状を造形する積層造形方法、及び、当該積層造形方法を使用する積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CAD(Computer Aided Design)で図面を作成した立体形状をラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping;以下、「RP」と略す)システムにより実体化することが、様々な分野で行われている。特に、積層造形方法を使用したRPシステムはマシニングセンタ等に比べて簡単な装置でありながら加工の自由度が高い。こうした長所を有する積層造形方法は、樹脂や紙を材料とするものに多く適用されてきたが、強度や経時・経年変化等の面で問題がある。このため、金属等を材料とする積層造形方法による立体造形の研究が盛んに進められている。
【0003】
こうした金属等を材料とする立体の積層造形のうち、高強度の造形品を目指すものとして、(a)金属等の材料粉末の表面に樹脂を塗布した後、レーザ照射により加熱して溶融させた樹脂部を接着剤として機能させて断面要素を順次積層し、立体を造形する方法や、(b)金属等の材料粉末を1種類のレーザ照射により直接加熱して溶融し、連続体を形成する方法が提案されている。こうした方法では、レーザ照射による所定領域の溶融及びその溶融部で凝固が起こる。しかし、こうした溶融及び凝固のみでは、造形された立体内部に空洞や樹脂が残留し、十分な強度が得られない。そこで、高温雰囲気中における残留樹脂成分の揮発や材料粒子の局所的な結合を促進させて焼結状態としたり、使用した金属等の材料よりも低融点材料を溶解して空洞部に浸透させたりする後処理が必要であり、こうした後処理により強度の向上を図っていた。
【0004】
これに対し、最近になって、焼結や低融点材料といった後処理を必要とせずに高強度を達成できる金属等の積層造形方法が提案されている(非特許文献1参照;以下、「従来例」と呼ぶ)。この従来例の積層造形方法では、図13A〜図14Bに示されるように、まず、材料粉末91を供給する(図13A参照)。なお、図13Aには、目的形状の一部が既に内部に積層造形された圧縮材料体98上に新たに積層造形される層のための材料粉末91が供給される例が示されている。
【0005】
引き続き、ブレード等を用いて材料粉末91を平坦化させて、材料粉末層92を形成する(図13B参照)。そして、材料粉体層92を高い圧力Pで圧縮し、圧縮材料層93を形成する(図13C参照)。
【0006】
次に、比較的低パワーのレーザ光L1により、目的とする立体形状の積層方向(+Z方向)における圧縮材料層93の位置の設計断面形状に応じた圧縮材料層93の領域を照射する。この結果、照射領域の材料が加熱されて溶融する。そして、その溶融部へのレーザ光L1の照射を止めて凝固させる。この結果、圧縮材料層93内に断面要素95が形成される(図14A参照)。なお、レーザ光L1を適当な速度で、設計断面形状に応じた圧縮材料層93の領域を走査することにより、材料を局所的に溶融して凝固させることが連続的に行われる。
【0007】
次いで、レーザ光L1よりもパワーの高いレーザ光L2を、断面要素95に照射して加熱し、既に積層造形されている部分と断面要素とを接合して一体化させる。この結果、断面要素95が新たに積層された積層造形体97が形成される(図14B参照)。以後、上記と同様にして、順次積層造形を進行させることにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0008】
【非特許文献1】徳永他 「2ステップレーザ照射法による純鉄粉体材料を用いた3次元造形」 精密工学会誌 第65巻 第8号 第1136〜1140頁、平成11年8月5日
【発明の開示】
【0009】
<発明が解決しようとする課題>
上記の従来例の積層造形方法は、高強度の立体を造形する観点からは、非常に優れたものである。しかしながら、従来例においては、各層の断面要素の作成のために、既に積層造形された部分上に材料粉末層を形成することが必要であるため、材料粉末層の形成場所である可動ステージ等として高い圧力に対する耐えられるものが必要であったり、レーザ照射用のステージから既に積層造形された部分を取り外した後に材料粉末層を形成して、再度レーザ照射用のステージに戻したりする必要があった。
【0010】
また、従来例では、パワーの異なる2種類のレーザ光L1,L2を単一のレーザ発振器で出力することは可能であるが、圧縮粉体の溶融凝固のためのレーザ光L1の照射、及び、既に形成された造形部分との接合のためのレーザ光L2の照射という2回のレーザ光の照射が必要であった。
【0011】
この結果、従来例の積層造形方法を採用した積層造形装置は、大規模なものにならざるを得ず、かつ、材料粉末の圧縮とレーザ照射という工程を混在させて実行することが必要であった。したがって、従来技術によっては、簡便に高強度の立体を造形することができるとはいい難かった。
【0012】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる積層造形方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる積層造形装置を提供することを目的とする。
【0014】
<課題を解決するための手段>
本発明の積層造形方法は、粉末を材料として、目的とする立体形状を造形する積層造形方法であって、材料粉末を押圧して形成した平板状材料部材を複数枚準備する平板状材料部材準備工程と;前記平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する当初断面要素形成工程と;前記当初断面要素の前記一方側の表面を平坦化する当初表面平坦化工程と;を実行した後に、前記平板状材料部材を既に造形された部分の前記一方側に配置する平板状材料部材積層工程と;前記目的とする立体形状における前記平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて積層断面要素を形成するとともに、前記一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化させる積層断面要素形成工程と;前記積層断面要素の前記一方側の表面を平坦化する積層表面平坦化工程と;を繰り返し、前記目的とする立体形状を造形することを特徴とする積層造形方法である。
【0015】
この積層造形方法では、まず、平板状材料部材準備工程において、材料粉末を押圧して形成した平板状材料部材を複数枚準備する。ここで、平板状材料は、自重やロボットアームなどによるステージ上へのロードによって崩れたりせず、かつ、後述する当初断面要素形成工程や積層断面形成工程におけるレーザ光照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されている。
【0016】
次に、当初断面要素形成工程において、平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する。こうして形成された当初断面要素の一方側は、表面張力等により平坦とはなっていない。このため、引き続き、当初表面平坦化工程において、当初断面要素の前記一方側の表面を平坦化する。こうして、最初の平板状材料部材の積層位置における部分の造形が行われる。
【0017】
次いで、平板状材料部材積層工程において、平坦化された一方側表面を有する既に造形された部分の一方側表面上に次の平板状材料部材が配置される。この結果、既に造形された部分の一方側表面上にほぼ密着した状態で、新たな平板状材料部材が載置される。
【0018】
引き続き、積層断面要素形成工程において、目的とする立体形状における新たな平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた当該新たな平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射する。この結果、レーザ光が照射された領域が、局所的に加熱されて溶融する。この後、レーザ光の照射を停止すると、溶融部分が凝固して積層断面要素が形成されるとともに、当該積層断面要素が、一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化する。
【0019】
こうして形成された積層断面要素の一方側は、上述した当初断面要素の場合と同様に表面張力等により平坦とはなっていない。このため、積層表面平坦化工程において、積層断面要素の前記一方側の表面を平坦化する。
【0020】
以後、上述した平板状材料部材積層工程、積層断面要素形成工程及び積層表面平坦化工程を順次繰り返すことにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0021】
すなわち、本発明の積層造形方法では、各層の断面要素の作成のために、既に積層造形された部分上に材料粉末層を形成することが必要ではなくなるため、レーザ照射用に使用するステージ装置が高い圧力に対する耐えられるものとする必要がなくなる。また、レーザ照射用のステージから既に積層造形された部分を取り外した後に材料粉末層を形成して、再度レーザ照射用のステージに戻したりする必要もなくなる。また、パワーの異なる2種類のレーザ光L1,L2による2段階の照射を行う必要もなくなる。さらに、材料粉末の圧縮とレーザ照射という工程を混在させて実行する必要もなくなる。
【0022】
したがって、本発明の積層造形方法によれば、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる。
【0023】
本発明の積層造形方法では、前記平板状材料部材における空隙率を50%未満とすることができる。この場合には、平板状材料部材を自重やロボットアームなどによるステージ上へのロードによって崩れたりせず、かつ、後述する当初断面要素形成工程や積層断面形成工程におけるレーザ光照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されたものとすることができる。なお、例えば、材料粉末が平均粒径が約100μmの純鉄粉である場合には、100MPa以上で押圧することにより、材料粉末が占める割合を50%以上とすることができる。
【0024】
本発明の積層造形方法では、前記材料粉末として、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等の金属の粉末、ニッケル−モリブデン(Ni−Mo)合金鋼等の合金の粉末を使用することができる。これらの中でも、後述するNi−Mo系の合金を使用すると、高強度で耐磨耗性に優れた造形品を得ることができる。なお、これら以外の金属又は合金であっても、溶融凝固過程を経る金属又は合金であれば材料として採用することができる。また、ナイロンその他のポリアミド系のプラスチック;ソーダガラスその他のガラス;ジルコニアその他のセラミックスであっても、レーザを吸収し溶融凝固過程を経るものであれば、材料として採用することができる。
【0025】
また、本発明の積層造形方法では、前記平板状材料部材それぞれの材料を、前記平板状材料部材それぞれの積層位置に応じて定めることができる。この場合には、積層造形体における積層方向に位置に応じて所望の強度等を有する材質として、積層造形体を製作することができる。
【0026】
また、本発明の積層造形方法では、前記当初断面要素形成工程と前記当初表面平坦化工程との間に行われ、前記平板状材料部材の最初の1枚における前記当初断面要素以外の部分を除去する当初余剰材料除去工程と;前記積層断面要素形成工程と前記積層表面平坦化工程との間に行われ、前記積層された平板状材料部材における前記積層断面要素以外の部分を除去する積層余剰材料除去工程と;を更に備えることとすることができる。この場合には、断面要素の平坦化に先立って、断面要素以外の材料部分、すなわち圧縮粉体部分を除去するので、平坦化後の表面に圧縮粉体の切りくずが残ってしまうことを防止することができる。この結果、平坦化表面上に次の平板状材料部材を隙間無く配置することができ、断面要素同士をむらなく一体化することができる。
【0027】
また、本発明の積層造形方法では、前記当初表面平坦化工程の直前又は直後、及び、前記積層表面平坦化工程の直前又は直後に、最新に形成された断面要素部分の側面を整形する側面整形工程を更に備えることとすることができる。この場合には、各断面要素が形成された後、次の断面要素が形成される前に形成された断面要素の形状を設計断面形状に精度良く一致させることができる。このため、滑らかな形状を有する立体形状であっても、精度良く造形することができる。
【0028】
本発明の積層造形装置は、材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材を出発材として、目的とする立体形状を造形する積層造形装置であって、前記平板状材料部材を搭載するステージを有し、前記ステージを3次元的に駆動可能なステージ装置と;前記平板状材料部材を前記ステージへ向けて搬送する搬送手段と;前記平板状材料部材の所定領域を局所的に加熱して溶融させるためのレーザ光を一方側から照射するレーザ光照射手段と;前記レーザ光の照射後に凝固して形成された断面要素の前記一方側表面を平坦化させる表面平坦化手段と;を備える積層造形装置である。
【0029】
この積層造形装置では、材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材を出発材として、まず、搬送手段が、最初の平板状材料部材をステージ装置のステージ上に載置する。引き続き、ステージを動かしながら、レーザ光照射手段からのレーザ光により、平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する。そして、表面平坦化手段が、当初断面要素の一方側の表面を平坦化する。こうして、最初の平板状材料部材の積層位置における部分の造形が行われる。
【0030】
次に、搬送手段が、平坦化された一方側表面を有する既に造形された部分の一方側表面上に次の平板状材料部材を配置する。引き続き、ステージを動かしながら、レーザ光照射手段からのレーザ光により、目的とする立体形状における新たな平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた当該新たな平板状材料部材の領域に一方側から照射する。この結果、レーザ光が照射された領域が、局所的に加熱されて溶融する。この後、溶融部分を凝固させることにより、積層断面要素が形成されるとともに、当該積層断面要素が、一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化させる。そして、表面平坦化手段が、積層断面要素の一方側の表面を平坦化する。
【0031】
以後、上述した平板状材料部材の積層、積層断面要素の形成及び積層断面要素を有する平板上材料部材の一方側表面の平坦化を順次繰り返すことにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0032】
すなわち、本発明の積層造形装置では、上述した本発明の積層造形方法を使用して、目的とする立体を造形することができる。したがって、本発明の積層造形装置によれば、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる。
【0033】
本発明の積層造形装置では、前記断面要素以外の余剰材料部分を除去する余剰材料除去手段を更に備える構成とすることができる。この場合には、表面平坦化手段による断面要素の一方側表面の平坦化に先立って、断面要素以外の材料部分を、余剰材料除去手段を用いて除去することにより、平坦化後の表面に圧縮粉体の切りくずが残ってしまうことを防止することができる。
【0034】
また、本発明の積層造形装置では、前記一方側表面が平坦化された断面要素の側面を整形する側面整形手段を更に備える構成とすることができる。この場合には、側面整形手段を用いることにより、各断面要素が形成された後、次の断面要素が形成される前に形成された断面要素の形状を設計断面形状に精度良く一致させることができる。このため、滑らかな形状を有する立体形状であっても、精度良く造形することができる。
【0035】
<発明の効果>
以上説明したように、本発明の積層造形方法によれば、簡易にかつ迅速に高強度の立体を造形することができるという顕著な効果がある。
【0036】
また、本発明の積層造形装置によれば、簡易にかつ迅速に高強度の立体を造形することができるという顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層造形方法を使用するための積層造形装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態において、造形目的とする立体の形状を説明するための図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その1)である。
【図3B】図3Aの平板状材料部材711の断面を示す図である。
【図4A】照射光の照射方法を説明するための図である。
【図4B】図4Aにおける照射スポットのオーバラップ率を説明するための図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その2)である。
【図5B】図5Aの平板状材料部材711及び断面要素751の断面を示す図である。
【図6A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その3)である。
【図6B】図6Aの断面要素761の断面を示す図である。
【図7A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その4)である。
【図7B】図7Aの断面要素771の断面を示す図である。
【図8A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その5)である。
【図8B】図8Aの断面要素771及び平板状材料部材712の断面を示す図である。
【図9A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その6)である。
【図9B】図9Aの断面要素771、平板状材料部材712及び断面要素752の断面を示す図である。
【図10A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その7)である。
【図10B】図10Aの断面要素771及び断面要素762の断面を示す図である。
【図11A】本発明の一実施形態に係る積層造形方法における工程を説明するための図(その8)である。
【図11B】図11Aの断面要素771及び断面要素772の断面を示す図である。
【図12A】第1の変形例を説明するための図である。
【図12B】第2の変形例を説明するための図である。
【図13A】従来例の積層造形方法を説明するための図(その1)である。
【図13B】従来例の積層造形方法を説明するための図(その2)である。
【図13C】従来例の積層造形方法を説明するための図(その3)である。
【図14A】従来例の積層造形方法を説明するための図(その4)である。
【図14B】従来例の積層造形方法を説明するための図(その5)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図11Bを参照して説明する。
【0039】
図1には、本発明の一実施形態に係る積層造形装置10の概略的な構成が示されている。図1に示されるように、この積層造形装置10は、(a)目的とする立体形状を設計するとともに、設計データを格納する計算機システム20と、(b)計算機システム20の制御のもとで、レーザ光を発生するレーザ装置31と、(c)レーザ装置31から射出され、光ファイバ32を介したレーザ光を、後述するステージ41上に載置された平板状材料部材71j(j=1〜N)に照射するための照射光学系33と、(d)計算機システム20の制御のもとで、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の3軸方向に移動可能なステージ41を有するステージ装置40とを備えている。
【0040】
ここで、計算機システム20は、(i)立体形状の設計プログラム等の様々なプログラムを実行するとともに、積層造形装置10全体を制御する処理装置21と、(ii)処理装置21の指令に応じて、図形や文字等を表示する表示装置22と、(iii)オペレータが処理装置21に対して指令や文字データを入力するキーボード等のストロークデバイス23と、(iv)オペレータが処理装置21に対して表示装置22の表示領域における位置を指定するマウス等のポインティングデバイス24と、(v)設計された立体形状のデータ等を格納する記憶装置25とを備えている。
【0041】
また、レーザ装置31としては、例えば、材料粉末が平均粒径100μmの純鉄の粉体である場合には、0.5mmの平板状材料部材に対し、ピークパワー2kW、パルス幅約10msのレーザの出力が可能なYAGレーザ発振機を、好適に採用することができる。
【0042】
また、照射光学系33は、計算機システム20の制御により、フォーカス位置のZ軸方向に沿って変化させることができるようになっている。
【0043】
また、ステージ装置40は、(i)上述したステージ41と、(ii)計算機システム20(より詳細には処理装置21)からの指令STCに応じて、ステージ41をXYZの3軸方向に駆動する駆動装置42とを備えている。また、ステージ41上には、十分な耐熱性を有するベース板43が載置されている。
【0044】
また、積層造形装置10は、(e)計算機システム20の制御のもとで、ステージ41に載置された部材の+Z方向側表面をXY面と平行となるように平坦化するための砥石等の平坦化加工器51と、(f)計算機システム20の制御のもとで、ステージ41に載置された部材の表面を磨砕し、積層段差よりも細かい精度で整形するためのボールエンドミル等の磨砕加工器52と、(g)計算機システム20の制御のもとで、ステージ41上の余剰物を除去するためのワイヤブラシ等の内部余剰物除去器53とを備えている。これらの平坦化加工器51、磨砕加工器52及び内部余剰物除去器53、並びに上述した照射光学系33は、基台部材54に取り付けられている。そして、計算機システム20の制御により、平坦化加工器51、磨砕加工器52及び内部余剰物除去器53は、それぞれが独立に、Z軸方向に移動可能となっている。なお、本明細書においては、「磨砕」の用語を、切削をも含む意味で用いるものとする。
【0045】
また、積層造形装置10は、(h)ロボットアーム56を有する搬送装置55を備えている。このロボットアーム56は、計算機システム20の制御により、XYZの3軸方向及びZ軸回りの回転が可能となっている。そして、計算機システム20の制御により、ロボットアーム56が、材料部材収納器59に収納された平板状材料部材711,712,…,71Nを順次ステージ41にロードするようになっている。
【0046】
また、積層造形装置10では、上述した照射光学系33、ステージ装置40、平坦化加工器51、磨砕加工器52、基台部材54及び搬送装置55は、収容壁61が形成する内部空間に収容されている。そして、収容壁61の外側に置かれたガスボンベ65から配管66を介して、収容壁61が形成する内部空間おける照射光Lの照射位置付近にアルゴンガス等の不活性ガスが供給されるようになっている。ここで、ガスボンベ65からの収容壁61が形成する内部空間への不活性ガスの供給量は、計算機システム20がガス供給弁67の開閉の度合いを制御することにより調整が可能となっている。
【0047】
また、積層造形装置10は、吸引器68を備えており、配管69を介してステージ41の余剰物を吸引できるようになっている。ここで、吸引器68による吸引動作は、計算機システム20により制御可能となっている。
【0048】
なお、平板状材料部材711,712,…,71Nは、材料の粉末を高圧で圧縮されて形成される。ここで、平板状材料部材711,712,…,71Nそれぞれは、自重やロボットアーム56によるステージ41上へのロードによって崩れたりせず、かつ、レーザ光Lの照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されている。例えば、材料粉末が平均粒径が約100μmの純鉄粉である場合には、100MPa以上で押圧し、平板状材料部材711,712,…,71Nそれぞれにおいて材料粉末自体が占める割合を50%以上とすることにより、自重やロボットアーム56によるステージ41上へのロードによって崩れたりせず、かつ、レーザ光Lの照射によって材料粉末が飛散しないものとなる。
【0049】
平板状材料部材71j(j=1〜N)の厚さは材料粉末の種類、並びにレーザ光Lのパワーに応じて適切な値が定まるものである。レーザ光Lのパワーに応じた平板状材料部材71jの厚さの適切な値は、事前の実験等により定められる。
【0050】
次に、上記のように構成された積層造形システムによる積層造形の動作について説明する。
【0051】
前提として、平板状材料部材711,712,…,71Nは、既に作成され、材料部材収納器59に収納されているものとする。また、平板状材料部材711,712,…,71Nが収納された材料部材収納器59が、収容壁61が形成する内部空間の所定位置に置かれているものとする。
【0052】
まず、設計者が、計算機システム20を使用して、目的とする立体形状を設計する。かかる設計作業は、処理装置により3次元CADプログラムを実行させた状態で、設計者が、表示装置22における表示を参照しながら、ストロークデバイス23及びポインティングデバイス24を操作することにより行われる。こうして設計された立体形状のデータ、及び当該立体を水平面(XY平面と並行な面)で所定の垂直方向(Z方向)の厚さでスライスした場合における、各スライス部の断面形状のデータは、記憶装置25に格納される。なお、本実施形態では、設計された立体は、図2に示されるように、Z方向に沿って、XY断面形状である正方形枠の一辺の長さが変化している立体OBJであるものとする。
【0053】
以上のようにして、CAD設計が終了すると、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が搬送装置55のロボットアーム56の可動範囲内となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が搬送装置55を制御して、平板状材料部材711を材料部材収納器59から取り出して、ステージ41の表面のベース板43上にロードする(図3A参照)。この状態における平板状材料部材711は、図3Bに示されるXZ断面で代表的に示されるように、全体として平坦となっている。
【0054】
次に、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が照射光学系33の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が駆動装置42を制御して平板状材料部材711の+Z方向側表面のZ軸位置が照射光学系33から射出される照射光Lの焦点面近傍となるように、ステージ41をZ軸方向に移動させる。なお、ステージ41のZ軸方向の移動に際しては、平板状材料部材711の+Z方向側表面が照射光Lに対して所定のデフォーカス量を有するように移動させる。この所定のデフォーカス量は、事前の実験等により定められる。
【0055】
次いで、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41をXY平面と平行に移動させながら、レーザ装置31を制御して、平板状材料部材711における設計断面形状に応じた領域に照射光Lを照射して局所的な加熱を行う。この加熱に際し、計算機システム20は、ガス供給弁67の開閉を制御することにより、加熱部分付近に例えばアルゴン(Ar)ガスや窒素(N2)ガス等の不活性ガスを適宜供給し、材料の酸化等による変質を防止する。なお、本実施形態においては、不活性ガスとして、コストが廉価な窒素(N2)ガスを使用している。
【0056】
照射光Lの照射による局所的な加熱は、図4Aに示されるように、平板状材料部材711の+Z方向側表面における照射光(パルス光)Lによるスポット状の照射領域SPT1,SPT2,…それぞれが、次の照射領域SPT2,SPT3,…とオーバラップするように、パルス間隔とステージの移動速度との調整を図りつつ行われる。なお、図4Bに示される照射領域SPTjと次の照射領域SPT(j+1)とのオーバラップ面積Sj,j+1を、照射領域SPTjの面積(=Sj+Sj,j+1)の50%以上とすることが、強度の高い造形物を形成する上で好ましい。このようにすることにより、従来の2ステップレーザ光照射と同様の強度で、強度の高い造形物を形成することができる。なお、照射光の照射による平板状材料部材711の局所的な加熱は、ガスボンベ65から供給された不活性ガスの雰囲気内で行われる。
【0057】
こうした照射光Lの照射の結果、第1層目の断面要素751が形成される(図5A参照)。なお、第1層目の断面要素751の形成に際しては、ベース板43に第1層目の断面要素751が仮止め固定される。こうした仮止め固定は、後述する第2層目以降の断面要素の形成時と比べて照射光Lのパワーを少々弱めることにより達成される。
【0058】
こうして形成された断面要素751のY軸方向に沿って延びる部分における平板状材料部材711のXZ断面を図5Bに示す。この図5Bで代表的に示されるように、断面要素751は、照射光Lが照射された領域と照射されなかった領域との境界部が三日月の端部のような形状となる。また、断面要素751の中央部の+Z方向側表面のZ軸方向位置が、照射前の平板状材料部材711の+Z方向側表面のZ軸方向位置よりも−Z方向にずれる。
【0059】
引き続き、平板状材料部材711における断面要素751以外の余剰材料部分を除去する。かかる余剰材料部分の除去に際しては、計算機システム20が、ステージ41を適宜移動させつつ、平坦化加工器51や内部余剰物除去器53を用いて当該余剰材料部分を機械的に除去したり、吸引器68により吸引除去したりする。なお、機械的な除去を行う場合には、断面要素751が形成する閉領域内については内部余剰物除去器53を用いて余剰材料の部分を掻き出す。
【0060】
次に、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が平坦化加工器51の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素751の+Z方向側表面が、平坦化加工器51の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。この後、計算機システム20が駆動装置42及び平坦化加工器51を制御して、断面要素751の+Z方向側表面を平坦化する。この結果、断面要素751が、+Z方向側表面が平坦化された断面要素761に加工される(図6A参照)。こうして形成された断面要素761がY軸方向に沿って延びる部分のXZ断面を図6Bに示す。
【0061】
次いで、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が磨砕加工器52の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素761の+Z方向側表面が、磨砕加工器52の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。この後、計算機システム20が駆動装置42及び磨砕加工器52を制御して、断面要素761の側面を磨砕して設計形状と精度良く一致するように整形する。この結果、断面要素761を整形した整形断面要素771が形成される(図7A参照)。形成された整形断面要素771がY軸方向に沿って延びる部分におけるXZ断面を図7Bに示す。こうして形成された整形断面要素771が、この段階における造形体となる。
【0062】
次に、計算機システム20が、駆動装置42を制御して、ステージ41が搬送装置55のロボットアーム56の可動範囲内となるように、ステージ41を移動させる。引き続き、計算機システム20が搬送装置55を制御して、平板状材料部材712を材料部材収納器59から取り出して、ベース板43に載置され、整形断面要素771上にロードする(図8A参照)。この状態における整形断面要素771がY軸方向に延びる部分のXZ断面を図8Bに示す。この図8Bに示されるように、全体的に密着するように、平板状材料部材712が、整形断面要素771の+Z方向側表面上に載置される。
【0063】
次いで、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が照射光学系33の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させた後、平板状材料部材712の+Z方向側表面のZ軸位置が照射光学系33から射出される照射光Lの焦点面近傍となるように、ステージ41をZ軸方向に移動させる。そして、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41をXY平面と平行に移動させながら、レーザ装置31を制御して、平板状材料部材711の場合と同様にして、平板状材料部材712における設計断面形状に応じた領域に十分なパワーの照射光Lを照射して局所的な加熱を行う。この結果、整形断面要素771と一体化した第2層目の断面要素752が形成され、断面要素751と一体化される(図9A参照)。こうして形成された断面要素752のY軸方向に沿って延びる部分における平板状材料部材711及び平板状材料部材712のXZ断面を図9Bに示す。この図9Bで代表的に示されるように、断面要素752は、上述した断面要素751と同様に、照射光Lが照射された領域と照射されなかった領域との境界部が三日月の端部のような形状となる。また、断面要素752の中央部の+Z方向側表面のZ軸方向位置が、照射前の平板状材料部材712の+Z方向側表面のZ軸方向位置よりも−Z方向にずれる。
【0064】
次に、平板状材料部材712における断面要素752以外の余剰材料部分を除去する。かかる余剰材料部分の除去に際しては、計算機システム20が、ステージ41を適宜移動させつつ、平坦化加工器51や内部余剰物除去器53を用いて当該余剰材料部分を機械的に打ち落とす等する。そして、吸引器68により吸引除去する。引き続き、断面要素751の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が平坦化加工器51の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させた後、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素752の+Z方向側表面が、平坦化加工器51の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。
【0065】
そして、断面要素751の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42及び平坦化加工器51を制御して、断面要素752の+Z方向側表面を平坦化する。この結果、断面要素752が、+Z方向側表面が平坦化された断面要素762に加工される(図10A参照)。こうして形成された断面要素762がY軸方向に沿って延びる部分のXZ断面を図10Bに示す。
【0066】
次いで、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42を制御して、ステージ41が磨砕加工器52の−Z方向側となるように、ステージ41を移動させた後、計算機システム20が駆動装置42又は平坦化加工器51を制御して、断面要素762の+Z方向側表面が、磨砕加工器52の磨砕用部材の近傍に位置するようにする。そして、平板状材料部材711の場合と同様にして、計算機システム20が駆動装置42及び磨砕加工器52を制御して、断面要素762の側面を磨砕して設計形状と精度良く一致するように整形する。この結果、断面要素762を整形した整形断面要素772に形成される(図11A参照)。形成された整形断面要素772がY軸方向に沿って延びる部分のXZ断面を図11Bに示す。こうして形成された整形断面要素771及び整形断面要素772が一体化したものが、この段階における造形体となる。
【0067】
以後、上記の第2層目における積層造形と同様にして、第3層目以降の積層造形が行われる。そして、最終的に、目的とする立体OBJが高強度かつ高精度で造形される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材711〜71Nを準備した後、最初の平板状材料部材711における設計断面形状に応じた領域に照射光(レーザ光)Lを照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素751を形成する。引き続き、当初断面要素751の表面を平坦化する。
【0069】
次に、平坦化された一方側表面を有する既に造形された部分の表面上に次の平板状材料部材71k(k=2〜N)が配置される。この結果、既に造形された部分の表面上にほぼ密着した状態で、新たな平板状材料部材が載置される。引き続き、新たな平板状材料部材71kの積層位置の設計断面形状に応じた新たな平板状材料部材71kの領域に照明光を照射し、局所的に加熱されて溶融させた後に凝固させることにより、積層断面要素75kが形成されるとともに、既に造形された部分と一体化する。引き続き、積層断面要素71kの表面を平坦化する。
【0070】
以後、平板状材料部材の積層、積層断面要素形成及び積層表面平坦化を順次繰り返すことにより、目的とする立体形状が高強度に造形される。
【0071】
したがって、本実施形態によれば、簡易かつ迅速に高強度の立体を造形することができる。
【0072】
また、本実施形態では、平板状材料部材711〜71Nにおいて、材料が占める体積が、空間が占める体積よりも大きい、すなわち、材料粉末が占める割合を50%以上としている。このため、平板状材料部材711〜71Nが自重やロボットアームなどによるステージ上へのロードによって崩れたりせず、かつ、照射光(レーザ光)の照射によって材料粉末が飛散しない程度に材料粉末が圧縮されたものとすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、断面要素75j(j=1〜N)の形成後、平板状材料部材71jにおける断面要素75j以外の部分を除去した後、断面要素75jの表面を平坦化する。このため、平坦化後の表面に圧縮粉体の切りくずが残ってしまうことを防止することができる。この結果、平坦化表面上に次の平板状材料部材を確実に隙間無く配置することができる。
【0074】
また、本実施形態では、最新に形成された断面要素751,752,…それぞれが形成される度に側面も整形するので、造形結果を設計形状に精度良く一致させることができる。
【0075】
なお、平板状材料部材の材料としては、上述した純鉄の粉末の他、チタン等の金属の粉末;Ni−Mo合金鋼(例えば、川崎製鉄(社)製 KIPシグマロイ415(商品名))その他の合金の粉末;ナイロンその他のポリアミド系のプラスチックの粉末;ジルコニアその他のセラミックスの粉末;又はソーダガラスその他のガラスの粉末等を材料として使用し、同様に積層造形を行うこともできる。
【0076】
ここで、使用する材料に応じて加熱用のレーザの種類を適宜選択することが必要となる。例えば、材料が純鉄の粉末以外であっても、金属又は合金の粉末であれば、YAGレーザを採用することができる。また、材料が純鉄等の金属又は合金の粉末であっても、レーザとして、炭酸ガスレーザ、半導体レーザ等を採用することもできる。また、上述した各種の樹脂又はガラスに対しては炭酸ガスレーザ、上述したセラミックスに対してはYAGレーザ又は炭酸ガスレーザ等を採用することができる。また、樹脂にカーボンなどの吸収剤を混入しておくことにより、半導体レーザやYAGレーザを使用することもできる。
【0077】
また、上記の実施形態では、ステージ41がXY軸方向で可動としたが、照射光学系33による照射光の走査範囲が十分に広ければ、ステージ41がXY軸方向で固定されていてもよい。また、上記の実施形態では、ステージ41のZ軸方向への移動を計算機システムの制御のもとで行ったが、ステージ41のZ軸方向への移動を手動で行ってもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、平板状材料部材と焦点面とのZ軸方向の位置関係の調整を、ステージ41をZ軸方向に移動させることにより行うこととした。これに対して、照射光学系33を移動したり、照射光学系33の焦点位置を調整したりしてもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、全ての平板状材料部材711〜71Nの材料を同一としたが、平板状材料部材それぞれの材料を、平板状材料部材それぞれの積層位置に応じて定めることができる。この場合には、積層造形体における積層方向に位置に応じて所望の強度等を有する材質として、積層造形体を製作することができる。
【0080】
また、上記の実施形態では、全ての平板状材料部材711〜71Nの形状を円形としたが、図12Aに示されるような矩形状の平板状材料部材71’を用いてもよい。さらに、図12Bに示されるように、平板状材料部材71’を複数個配列したものを一層分の材料部材とすることにより、大きなものを積層造形することができる。
【0081】
また、上記の実施形態では吸引器68を用いたが、エアブロアを用い余剰材料部分を吹き飛ばすようにしてもよい。
【0082】
また、断面要素の表面の平坦化に先立って、断面要素の側面の整形を行うようにすることもできる。
【0083】
また、積層造形の対象となる立体形状は、上記の実施形態における立体OBJの形状に限定されるものではなく、任意の立体形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明の積層造形方法及び積層造形装置は、粉末を材料として、目的とする立体形状を造形する積層造形に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を材料として、目的とする立体形状を造形する積層造形方法であって、
材料粉末を押圧して形成した平板状材料部材を複数枚準備する平板状材料部材準備工程と;
前記平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する当初断面要素形成工程と;
前記当初断面要素の前記一方側の表面を平坦化する当初表面平坦化工程と;を実行した後に、
前記平板状材料部材を既に造形された部分の前記一方側に配置する平板状材料部材積層工程と;
前記目的とする立体形状における前記平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて積層断面要素を形成するとともに、前記一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化させる積層断面要素形成工程と;
前記積層断面要素の前記一方側の表面を平坦化する積層表面平坦化工程と;を繰り返し、前記目的とする立体形状を造形することを特徴とする積層造形方法。
【請求項2】
前記平板状材料部材における空隙率が50%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項3】
前記材料粉末は金属又は合金の粉末である、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項4】
前記平板状材料部材それぞれの材料は、前記平板状材料部材それぞれの積層位置に応じて定められる、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項5】
前記当初断面要素形成工程と前記当初表面平坦化工程との間に行われ、前記平板状材料部材の最初の1枚における前記当初断面要素以外の部分を除去する当初余剰材料除去工程と;
前記積層断面要素形成工程と前記積層表面平坦化工程との間に行われ、前記積層された平板状材料部材における前記積層断面要素以外の部分を除去する積層余剰材料除去工程と;を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項6】
前記当初表面平坦化工程の直前又は直後、及び前記積層表面平坦化工程の直前又は直後に、最新に形成された断面要素部分の側面を整形する側面整形工程を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項7】
材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材を出発材として、目的とする立体形状を造形する積層造形装置であって、
前記平板状材料部材を搭載するステージを有し、前記ステージを3次元的に駆動可能なステージ装置と;
前記平板状材料部材を前記ステージへ向けて搬送する搬送手段と;
前記平板状材料部材の所定領域を局所的に加熱して溶融させるためのレーザ光を一方側から照射するレーザ光照射手段と;
前記レーザ光の照射後に凝固して形成された断面要素の前記一方側表面を平坦化させる表面平坦化手段と;を備える積層造形装置。
【請求項8】
前記断面要素以外の余剰材料部分を除去する余剰材料除去手段を更に備える、ことを特徴とする請求項7に記載の積層造形装置。
【請求項9】
前記一方側表面が平坦化された断面要素の側面を整形する側面整形手段を更に備える、ことを特徴とする請求項7に記載の積層造形装置。
【請求項1】
粉末を材料として、目的とする立体形状を造形する積層造形方法であって、
材料粉末を押圧して形成した平板状材料部材を複数枚準備する平板状材料部材準備工程と;
前記平板状材料部材の最初の1枚における設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて当初断面要素を形成する当初断面要素形成工程と;
前記当初断面要素の前記一方側の表面を平坦化する当初表面平坦化工程と;を実行した後に、
前記平板状材料部材を既に造形された部分の前記一方側に配置する平板状材料部材積層工程と;
前記目的とする立体形状における前記平板状材料部材の積層位置の設計断面形状に応じた前記平板状材料部材の領域に一方側からレーザ光を照射し、局所的に加熱して溶融させた後に凝固させて積層断面要素を形成するとともに、前記一方側とは反対側において既に造形された部分と一体化させる積層断面要素形成工程と;
前記積層断面要素の前記一方側の表面を平坦化する積層表面平坦化工程と;を繰り返し、前記目的とする立体形状を造形することを特徴とする積層造形方法。
【請求項2】
前記平板状材料部材における空隙率が50%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項3】
前記材料粉末は金属又は合金の粉末である、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項4】
前記平板状材料部材それぞれの材料は、前記平板状材料部材それぞれの積層位置に応じて定められる、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項5】
前記当初断面要素形成工程と前記当初表面平坦化工程との間に行われ、前記平板状材料部材の最初の1枚における前記当初断面要素以外の部分を除去する当初余剰材料除去工程と;
前記積層断面要素形成工程と前記積層表面平坦化工程との間に行われ、前記積層された平板状材料部材における前記積層断面要素以外の部分を除去する積層余剰材料除去工程と;を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項6】
前記当初表面平坦化工程の直前又は直後、及び前記積層表面平坦化工程の直前又は直後に、最新に形成された断面要素部分の側面を整形する側面整形工程を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項7】
材料粉末を押圧して形成した複数枚の平板状材料部材を出発材として、目的とする立体形状を造形する積層造形装置であって、
前記平板状材料部材を搭載するステージを有し、前記ステージを3次元的に駆動可能なステージ装置と;
前記平板状材料部材を前記ステージへ向けて搬送する搬送手段と;
前記平板状材料部材の所定領域を局所的に加熱して溶融させるためのレーザ光を一方側から照射するレーザ光照射手段と;
前記レーザ光の照射後に凝固して形成された断面要素の前記一方側表面を平坦化させる表面平坦化手段と;を備える積層造形装置。
【請求項8】
前記断面要素以外の余剰材料部分を除去する余剰材料除去手段を更に備える、ことを特徴とする請求項7に記載の積層造形装置。
【請求項9】
前記一方側表面が平坦化された断面要素の側面を整形する側面整形手段を更に備える、ことを特徴とする請求項7に記載の積層造形装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【国際公開番号】WO2005/056221
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516127(P2005−516127)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018212
【国際出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(502265286)
【出願人】(503043469)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/018212
【国際出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(502265286)
【出願人】(503043469)
【Fターム(参考)】
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