説明

積層配線導体の接続構造及びこれを使用した電力変換装置

【課題】配線インダクタンスを十分に低減することができ、大型化やコストが嵩むといったことを防止することができる積層配線導体の接続構造及びこれを使用した電力変換装置を提供する。
【解決手段】それぞれ絶縁層7を介して複数の帯状導体5,6,9,10を積層した第1及び第2の積層配線導体3,4を備え、前記積層配線導体3,4を互いに同層の帯状導体5,6と、帯状導体9,10とを電気的に接続して導電路を形成する。前記第1及び第2の積層配線導体3,4のそれぞれは、両者の連結位置で、同層の帯状導体5,6,9,10同士の露出部5b,6bを重ねて接合部CON1,CON2を形成し、各層の帯状導体5,6,9,10の前記接合部CON1,CON2を、最下段の前記帯状導体5,9から上方の前記帯状導体6,10に行くに従い基準位置から長手方向に順次所定距離ずらした位置に形成し、各接合部CON1,CON2を接続部材8で固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ絶縁層を介して複数の帯状導体を積層した第1及び第2の積層配線導体を備え、前記第1及び第2の積層配線導体を互いに同層の帯状導体同士を電気的に接続することにより連結して導電路を形成する積層配線導体の接続構造及びこれを使用した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の積層配線導体の接続構造は、例えば図13に示すような商用交流電源等から得られた入力電力を半導体スイッチング素子によって所定周波数の電力に変換して出力するインバータ等の電力変換装置に用いられている。
ここで、各半導体スイッチング素子にIGBT(Insulated Gete Bipolar Transistor)が適用された従来の1相あたりの出力電圧として二つの電位(レベル)を出力可能な2レベル電力変換装置、及び1相あたりの出力電圧として三つの電位(レベル)を出力可能な3レベル電力変換装置の1相分について説明する。
【0003】
2レベル電力変換装置の1相分100は、図13に示すように、半導体スイッチング素子Q30及びこれに逆並列に接続されたダイオードD30と、半導体スイッチング素子Q31及びこれに逆並列に接続されたダイオードD31とが帯状導体101を介して接続されてスイッチングアームSA30が形成されている。そして、充放電用コンデンサC30とスイッチングアームSA30との正極側には、個別に帯状導体103及び帯状導体104が接続され、これら帯状導体103及び帯状導体104が接合部CON30で接続されている。また、充放電用コンデンサC30とスイッチングアームSA30との負極側には、個別に帯状導体105及び帯状導体106が接続され、これら帯状導体105及び帯状導体106が接合部CON31で接続されている。さらに、帯状導体103及び帯状導体105から個別に正極ラインP及び負極ラインNが導出され、スイッチングアームSA30の帯状導体101から交流端子ACが導出されている。
【0004】
そして、この2レベル電力変換装置の1相分の動作は、次の通りである。
充放電用コンデンサC30に充電されている正の電荷による電流は、半導体スイッチング素子Q30がオン状態であると、充放電用コンデンサC30の正極側→帯状導体103→接合部CON30→帯状導体104→半導体スイッチング素子Q30→帯状導体101→交流端子ACに至る電流経路L30に流れる。
この状態から半導体スイッチング素子Q30をターンオフさせると、電流経路L30を流れる電流が減少する。帯状導体103、接合部CON30及び帯状導体104は、インダクタンスを有しているので、この電流変化に伴って充放電用コンデンサC30に対して半導体スイッチング素子Q30の方が高い極性の電圧が発生する。
【0005】
一方、半導体スイッチング素子Q30がターンオフすると、充放電用コンデンサC30の負極側→帯状導体105→接合部CON31→帯状導体106→半導体スイッチング素子Q31→帯状導体101→交流端子ACに至る電流経路L31が形成される。帯状導体105、接合部CON31及び帯状導体106は、インダクタンスを有しているので、この電流変化に伴って半導体スイッチング素子Q31に対して充放電用コンデンサC30の方が高い極性の電圧が発生する。
【0006】
そして、スイッチング時の電流の変化に伴って電圧の跳ね上がりが発生すると、その電圧は直流電圧に加え合わされて半導体スイッチング素子Q30,Q31に印加される。この電圧値が半導体スイッチング素子Q30,Q31の電圧規格値を超えると半導体スイッチング素子Q30,Q31の破壊を引き起こしてしまう。
このようなスイッチング時の電流変化に伴う電圧の跳ね上がりを抑制する方法には、半導体スイッチング素子Q30,Q31に流れる電流を低減する方法と、配線インダクタンスを低減する方法とが考えられる。
【0007】
半導体スイッチング素子Q30,Q31に流れる電流を低減する方法では、電力変換装置の容量を下げることになるので、コストが嵩むといった問題が発生してしまう。このため、通常は、配線インダクタンスを低減することで、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを抑制する方法が採用されている。
一方、配線インダクタンスを低減する方法には、スナバ回路を用いる方法があるが、半導体素子、抵抗及びコンデンサ等が別途必要になるので、電力変換装置の大型化及びコストが嵩むといった問題が発生してしまう。
【0008】
この問題を解決するために、配線インダクタンスを低減する方法としては、充放電用コンデンサC30→帯状導体103→接合部CON30→帯状導体104→半導体スイッチング素子Q30→帯状導体101→半導体スイッチング素子Q31→帯状導体106→接合部CON31→帯状導体105→充放電用コンデンサC30の電流経路上において、半導体スイッチング素子のターンオフ時に電流が増加する部分の帯状導体と半導体スイッチング素子のターンオフ時に電流が減少する部分の帯状導体とを一対として配置することでインダクタンス成分を相殺する方法もある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この方法では、帯状導体103、接合部CON30及び帯状導体104と、帯状導体105、接合部CON31及び帯状導体106とを一対に配置することで、半導体スイッチング素子Q30のターンオフ時に発生する磁束を互いに打ち消し合うことができ、インダクタンス成分を相殺することが可能となり、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを抑制することができる。
【0010】
しかしながら、上記方法は、ターンオフ時に電流が増加する部分及び電流が減少する部分である帯状導体103、接合部CON30及び帯状導体104と、帯状導体105、接合部CON31及び帯状導体106とを所定間隔を保って並設した積層配線導体を必要とする。さらに、電力変換装置が大型化した場合には、積層配線導体を例えば第1及び第2の積層配線導体に分割して、その分割した第1及び第2の積層配線導体を接続する必要がある。
【0011】
このように分割した第1及び第2の積層配線導体を接合する接合構造としては図14〜図16に示す接合構造とするのが一般的である。
第1の積層配線導体110は、図14及び図15に示すように、同一幅の帯状導体103,105が上下方向に所定間隔を保った状態で絶縁部材112に埋設された構成とされている。ここで、帯状導体103は、図14及び図15に示すように、絶縁部材112に覆われたインダクタンス相殺部となる比較的幅広の本体部103aを有し、この本体部103aの先端に、その幅の1/3程度の幅で左端側から所定長さだけ絶縁部材112に対して突出された露出部103bを有する。
【0012】
また、帯状導体105も、図14及び図15に示すように、絶縁部材112に覆われてインダクタンス相殺部となる比較的幅広の本体部105aを有し、この本体部105aの先端に、絶縁部材112から所定長さだけ絶縁部材112に対して突出された露出部105bを有する。したがって、露出部105bは、露出部103bと上下方向で重なることがなく、幅方向でも接触しないように形成されている。
【0013】
そして、露出部103b,105bの先端には、図16に示すように、固定ねじ113の雄ねじ部113bを螺合する雌ねじ部103c,105cが形成されている。
第2の積層配線導体111は、図14及び図15に示すように、第1の積層配線導体110とその幅方向に延長する線を挟んで対称に構成され、帯状導体103,105と同層の帯状導体104,106が絶縁部材112内に所定間隔を保って埋設された構成とされている。ここで、帯状導体104は、図14及び図15に示すように、絶縁部材112に覆われたインダクタンス相殺部となる本体部104aと、この本体部104aに連接して絶縁部材112から本体部104aの幅の1/3程度の幅で突出された露出部104bを有する。
【0014】
また、帯状導体106も、同様に図14及び図15に示すように、絶縁部材112に覆われてインダクタンス相殺部となる本体部106aと、この本体部106aに連接して絶縁部材112から本体部106aの幅の1/3程度の幅で突出された露出部106bを有する。したがって、露出部106bは、露出部104bと上下方向で重ならないとともに、幅方向でも接触しないように形成されている。
そして、露出部104b,106bの先端には、図16に示すように、固定ねじ113の雄ねじ部113bを挿通する挿通孔104c,106cが形成されている。
【0015】
また、第1の積層配線導体110と第2の積層配線導体111の同層の露出部103b,104bと露出部105b,106bとが互いに上下方向に重ねられて接合部CON30,CON31が形成される。この状態で、露出部104bの挿通孔104cと露出部103bの雌ねじ部103cとを略一致させて、固定ねじ113の雄ねじ部113bを挿通孔104cに挿通して、雄ねじ部113bを雌ねじ部103cに螺合させる。そして、固定ねじ113の頭部113aを露出部104bの上面に当接させて締付けることにより、帯状導体103と帯状導体104とを接続する。
【0016】
同様に、露出部106bの挿通孔106cと露出部105bの雌ねじ部105cとを略一致させて、固定ねじ113の雄ねじ部113bを挿通孔106cに挿通して、雄ねじ部113bを雌ねじ部105cに螺合させる。そして、固定ねじ113の頭部113aを露出部106bの上面に当接させて締付けることにより、帯状導体105と帯状導体106とを接続する。
【0017】
この状態から半導体スイッチング素子Q30をターンオフさせると、本体部103a,104aと本体部105a,106aとは、電流変化の向きが互いに異なるようになり、磁束の向きが互いに異なるようになる。このため、半導体スイッチング素子Q30のターンオフ時に発生する磁束を打ち消し合わせることができ、インダクタンス成分を相殺することが可能となることから、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを抑制することができる。
【0018】
しかしながら、このような構成では、第1の積層配線導体110と第2の積層配線導体111とを接続するために、露出部103b,104b,105b,106bの幅H31が本体部103a,104a,105a,106aの幅H30の1/3程度の幅狭に形成されていると共に、露出部103b,104bと露出部105b,106bとが上下方向に重ならないように配置されているので、接合部CON30,CON31においてインダクタンス成分を十分に低減することができない。
【0019】
これを解決するために、第2の積層配線導体111に、図17及び図18に示すように、露出部104b,106bの互いに対向する側面から上方に所定長さ突出するインダクタンス相殺部としての一対の対向側板部104d,106dを形成することが考えられる。
このようにすることで、半導体スイッチング素子Q30のターンオフ時に発生する磁束を一対の対向側板部104d,106dによって打ち消し合わせることができ、インダクタンス成分を相殺することが可能となることから、接合部CON30,CON31においても、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを抑制することができる。
【0020】
次に、従来の3レベル電力変換装置の1相分について説明する。
この3レベル電力変換装置の1相分150は、図19に示すように、直列に接続された充放電用コンデンサC31,C32と、直列に接続された半導体スイッチング素子Q32〜Q35で構成されるスイッチングアームSA31とが、正極ラインPと負極ラインNとの間に並列に接続されている。そして、各半導体スイッチング素子Q32〜Q35には、逆並列にダイオードD32〜D35が接続されている。また、半導体スイッチング素子Q33,Q34間の中点には、交流電圧を出力する交流端子ACが設けられている。さらに、半導体スイッチング素子Q33,Q34には、ダイオードD36,D37が逆並列に接続され、そのダイオードD36,D37間の中点が充放電用コンデンサC31,C32間の中点に設けられた中性点ラインMに接続されている。
【0021】
ここで、半導体スイッチング素子Q32〜Q35間は、夫々帯状導体151〜153によって電気的に接続されている。さらに、充放電用コンデンサC31の正極側と半導体スイッチング素子Q32とは、帯状導体154と帯状導体155とを接合部CON32を介して接続することで電気的に接続されている。そして、充放電用コンデンサC32の負極側と半導体スイッチング素子Q35とは、帯状導体156と帯状導体157とを接合部CON33を介して接続することで電気的に接続されている。また、充放電用コンデンサC31の負極側と充放電用コンデンサC32の正極側とは、帯状導体158によって電気的に接続されている。
【0022】
さらに、ダイオードD36のアノード側とダイオードD37のカソード側とは、帯状導体159によって電気的に接続されている。また、ダイオードD36のカソード側と半導体スイッチング素子Q32,Q33間の中点とは、帯状導体160によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD37のアノード側と半導体スイッチング素子Q34,Q35間の中点とは、帯状導体161によって電気的に接続されている。
【0023】
さらにまた、充放電用コンデンサC31,C32間の中点とダイオードD36,D37間の中点とは、帯状導体162と帯状導体163とを接合部CON34を介して接続することで電気的に接続されている。
そして、3レベル電力変換装置の1相分150の動作を説明すると、図19に示すように、充放電用コンデンサC31に充電されている正の電荷の放電によって半導体スイッチング素子Q32がオン状態であると、充放電用コンデンサC31の正極側(高電位側)→帯状導体154→接合部CON32→帯状導体155→半導体スイッチング素子Q32→帯状導体151→半導体スイッチング素子Q33→帯状導体152→交流端子ACに至る電流経路L33が形成される。
【0024】
この状態から半導体スイッチング素子Q32をターンオフさせると、電流経路L33を流れる電流が減少する。このとき、電流変化に伴って発生する帯状導体154、接合部CON32及び帯状導体155のインダクタンスによる電圧は、充放電用コンデンサC31に対して半導体スイッチング素子Q32の方が高くなる向きに発生する。
一方、半導体スイッチング素子Q32がターンオフすると、充放電用コンデンサC31の負極側→帯状導体162→接合部CON34→帯状導体163→帯状導体159→ダイオードD36→帯状導体160→帯状導体151→半導体スイッチング素子Q33→帯状導体152→交流端子ACに至る電流経路L34が形成される。このため、電流変化に伴って発生する帯状導体162、接合部CON24及び帯状導体163のインダクタンスによる電圧は、半導体スイッチング素子Q33に対して充放電用コンデンサC31の方が高くなる向きに発生する。
【0025】
そして、充放電用コンデンサC32に充電されている正の電荷の放電によって図19に示すように、半導体スイッチング素子Q33がオン状態であると、充放電用コンデンサC32の正極側(高電位側)→帯状導体158→帯状導体162→接合部CON34→帯状導体163→帯状導体159→ダイオードD36→帯状導体160→帯状導体151→半導体スイッチング素子Q33→帯状導体152→交流端子ACに至る電流経路L35が形成される。
【0026】
この状態から半導体スイッチング素子Q33をターンオフさせると、電流経路L35を流れる電流が減少する。このとき、電流変化に伴って発生する帯状導体162、接合部CON34及び帯状導体163のインダクタンスによる電圧は、充放電用コンデンサC32に対して半導体スイッチング素子Q33の方が高くなる向きに発生する。
一方、半導体スイッチング素子Q33がターンオフすると、充放電用コンデンサC32の負極側→帯状導体156→接合部CON33→帯状導体157→半導体スイッチング素子Q35→帯状導体153→半導体スイッチング素子Q34→帯状導体152→交流端子ACに至る電流経路L36が形成される。このため、電流変化に伴って発生する帯状導体156、接合部CON33及び帯状導体157のインダクタンスによる電圧は、半導体スイッチング素子Q35に対して充放電用コンデンサC32の方が高くなる向きに発生する。
【0027】
このような3レベル電力変換装置の1相分150における分割した第1及び第2の積層配線導体の接合構造は図20〜図22に示すように、上述した2レベル電力変換装置の1相分100と同様に、第1の積層配線導体170と第2の積層配線導体171とを接合部CON32,CON33,CON34を介して接続することによって構成されている。
【0028】
第1の積層配線導体170は、図20及び図21に示すように、同一幅の帯状導体154,162,156が下方から所定間隔を保った状態でその順に配置し、その帯状導体154,162,156が絶縁部材112に埋設された構成とされている。ここで、帯状導体154は、図21に示すように、絶縁部材112に覆われたインダクタンス相殺部となる本体部154aを有し、この本体部154aの先端に、その幅の1/6程度の幅で左端側から所定長さだけ絶縁部材112から突出された露出部154bを有する。また、帯状導体162は、図21に示すように、絶縁部材112に覆われてインダクタンス相殺部となる本体部162aを有し、この本体部162aの先端の略中央位置に所定長さだけ絶縁部材112から突出された露出部162bを有する。さらに、帯状導体156は、図21に示すように、絶縁部材112に覆われてインダクタンス相殺部となる本体部156aを有し、この本体部156aの先端の右端側から所定長さだけ絶縁部材112から突出された露出部156bを有する。ここで、露出部154b,162b,156bは、上下方向に互いが重ならないように形成されている。
そして、露出部154b,156b,162bの先端には、図22に示すように、固定ねじ113の雄ねじ部113bを挿通する挿通孔154c,156c,162cが形成されている。
【0029】
第2の積層配線導体171は、図20及び図21に示すように、第1の積層配線導体170とその幅方向に延長する線を挟んで対称に構成され、帯状導体154,162,156と同層の帯状導体155,163,157が絶縁部材112内に下方からその順に配置された構成とされている。ここで、帯状導体155は、図21に示すように、絶縁部材112に覆われたてインダクタンス相殺部となる本体部155aを有し、この本体部155aの先端の右端側から所定長さ突出された露出部155bを有する。そして、帯状導体163は、図21に示すように、絶縁部材112に覆われてインダクタンス相殺部となる本体部163aを有し、この本体部163aの先端の略中央位置から所定長さ突出された露出部163bを有する。そして、帯状導体157は、図21に示すように、絶縁部材112に覆われてインダクタンス相殺部となる本体部157aを有し、この本体部157aの先端の左端側から所定長さ突出された露出部157bを有する。ここで、露出部155b,163b,157bは、上下方向に重ならないようにされている。そして、露出部155b,157b,163bの先端には、固定ねじ113の雄ねじ部113bを螺合する雌ねじ部155c,157c,163cが形成されている。
【0030】
そして、第1の積層配線導体170と第2の積層配線導体171の同層の露出部154b,155b、露出部162b,163b、露出部156b,157bが互いに上下方向に重ねられて接合部CON32、接合部CON33及び接合部CON34が形成されている。そして、露出部155bの雌ねじ部155cと露出部154bの挿通孔154cとを略一致させた状態で、固定ねじ113の雄ねじ部113bを挿通孔154cに挿通して、雄ねじ部113bを雌ねじ部155cに螺合させる。そして、固定ねじ113の頭部113aを露出部154bの上面に当接させて締付けることにより、帯状導体154と帯状導体155とを接続する。
【0031】
同様に、露出部157bの雌ねじ部157cと露出部156bの挿通孔156cとを略一致させた状態で、固定ねじ113の雄ねじ部113bを挿通孔156cに挿通して、雄ねじ部113bを雌ねじ部157cに螺合させる。そして、固定ねじ113の頭部113aを露出部156bの上面に当接させて締付けることにより、帯状導体156と帯状導体157とを接続する。
【0032】
同様に、露出部163bの雌ねじ部163cと露出部162bの挿通孔162cとを略一致させた状態で、固定ねじ113の雄ねじ部113bを挿通孔162cに挿通して、雄ねじ部113bを雌ねじ部163cに螺合させる。そして、固定ねじ113の頭部113aを露出部162bの上面に当接させて締付けることにより、帯状導体162と帯状導体163とを接続する。
【0033】
しかしながら、このような構成では、上述した2レベル電力変換装置の一相分100と同様に、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを抑制することができるが、第1の積層配線導体170と第2の積層配線導体171とを接続するために、露出部154b,155b,156b,157b,162b,163bの幅H33が本体部154a,155a,156a,157a,162a,163aの幅H32の1/6程度の幅狭に形成されていると共に、露出部154b,155b、露出部156b,157b、露出部162b,163bが上下方向に重ならないように配置されているので、接合部CON32、接合部CON33及び接合部CON34においてインダクタンス成分を十分に低減することができない。
【0034】
これを解決するために、露出部154b,156b,162bには、図示しないが図17及び図18と同様に、露出部154b,162bの互いに対向する側面から上方に所定長さ突出するインダクタンス相殺部としての一対の対向側板部が形成されていると共に、露出部156b,162bの互いに対向する側面から上方に所定長さ突出するインダクタンス相殺部としての一対の対向側板部を形成することが考えられる。
【0035】
このようにすることで、半導体スイッチング素子Q32,Q33のターンオフ時に発生する磁束を露出部154b,156b,162bに形成された一対の対向側板部によって打ち消し合わせることができ、インダクタンス成分を相殺することが可能となることから、接合部CON32、接合部CON33及び接合部CON34においても、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2001−119925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
しかしながら、上記従来例にあっては、各接合部で電位の異なる少なくとも2つの帯状導体の露出部を上下方向に重ならないように接続するために、インダクタンス成分を十分に相殺することができないと共に、露出部の幅が本体部の幅より幅狭とされることで、露出部の抵抗が増大することになり、この部分の抵抗損失による発熱のために電力変換装置の温度が上昇してしまうという未解決の課題がある。
【0038】
また、帯状導体の本体部の幅を半導体スイッチング素子に流れる電流に基づいて選定しているので、露出部の幅を半導体スイッチング素子に流れる電流に基づいて選定すると、露出部同士が上下方向に重ならないように配置するために本体部の幅を必要以上に広くする必要があり、電力変換装置の大型化やコストが嵩むといった未解決の課題がある。
さらに、本体部と図17及び図18の一対の対向側板部とにおいては、インダクタンス成分を相殺することは可能であるが、わざわざ一対の対向側板部を形成する必要があり、製造コストが嵩むといった未解決の課題がある。
【0039】
さらにまた、上記従来例にあっては、所定間隔を保って対向する少なくとも2つの帯状導体間の絶縁性を確保するために、接合部における沿面距離(帯状導体間の絶縁層の表面に沿った最短距離)を増加させると、帯状導体間の間隔が大きくなり、電力変換装置の大型化やコストが嵩むといった未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、接合部において配線インダクタンスを十分に低減することができると共に、露出部の抵抗を減少させ、さらに大型化やコストが嵩むといったことを防止することができる積層配線導体の接続構造及びこれを使用した電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上記目的を達成するために、請求項1に係る積層配線導体の接続構造は、それぞれ絶縁層を介して複数の帯状導体を積層した第1及び第2の積層配線導体を備え、前記第1及び第2の積層配線導体を互いに同層の帯状導体同士を電気的に接続することにより連結して導電路を形成する積層配線導体の接続構造であって、前記第1及び第2の積層配線導体のそれぞれは、両者の連結位置で、同層の帯状導体同士の露出部を重ねて接合部を形成し、各層の帯状導体の前記接合部を、最下段の前記帯状導体から上方の前記帯状導体に行くに従い基準位置から長手方向に順次所定距離ずらした位置に形成し、各接合部を接続部材で固定することを特徴としている。
【0041】
また、請求項2に係る接続帯状導体の接続構造は、請求項1に係る発明において、前記第1及び第2の積層配線導体を2層、3層及び5層のいずれかの帯状導体で構成したことを特徴としている。
さらに、請求項3に係る積層配線導体の接続構造は、請求項1又は2に係る発明において、前記第1及び第2の積層配線導体の帯状導体を上下に隣接する帯状導体のうち前記接合部が基準位置より遠い一方の帯状導体に、他方の帯状導体を固定する前記接続部材を望ませる透孔が形成したことを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る電力変換装置は、前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層配線導体の接続構造を導電路に適用したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、第1及び第2の積層配線導体の同層の帯状導体同士の露出部を重ねた接合部を基準位置から順次所定距離ずらした位置に形成することで、接合部における露出部の幅を広いままとすることができ、電位が異なる帯状導体との間で配線インダクタンスを十分に低減することができると共に、抵抗の増加を抑制し、大型化やコストが嵩むといったことを防止することができるという効果が得られる。
また、上記構成を有する積層配線導体の接続構造を導電路に適用して電力変換装置を構成することにより、良好な電力変換効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態における積層配線導体の接続構造の説明に供する一例の回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における積層配線導体の接続構造を示す斜視図である。
【図3】図2の積層配線導体の帯状導体を示す斜視図である。
【図4】図2のA−A線上の積層配線導体の接続構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における積層配線導体の接続構造の説明に供する一例の回路図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における積層配線導体の接続構造を示す斜視図である。
【図7】図6の積層配線導体の帯状導体を示す斜視図である。
【図8】図6のB−B線上の積層配線導体の接続構造を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における積層配線導体の接続構造の説明に供する一例の回路図である。
【図10】本発明の第3の実施形態における積層配線導体の接続構造を示す斜視図である。
【図11】図10の積層配線導体の帯状導体を示す斜視図である。
【図12】図10のC−C線上の積層配線導体の接続構造を示す断面図である。
【図13】従来の積層配線導体の接続構造の説明に供する一例の回路図である。
【図14】図13の積層配線導体の接続構造を示す斜視図である。
【図15】図14の積層配線導体の帯状導体を示す斜視図である。
【図16】図14のD−D線上の積層配線導体の接続構造を示す断面図である。
【図17】従来の積層配線導体の接続構造の他の一例を示す斜視図である。
【図18】図17の2層積層配線導体の帯状導体を示す斜視図である。
【図19】従来の積層配線導体の接続構造の説明に供する他の一例の回路図である。
【図20】図19の積層配線導体の接続構造を示す斜視図である。
【図21】図19の積層配線導体の帯状導体を示す斜視図である。
【図22】図20のE−E線上の積層配線導体の接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を電力変換装置に適用した場合の一実施形態を説明する回路図であり、図中1は、2レベル電力変換装置の1相分であって、充放電用コンデンサC1と並列に接続された2レベル電力変換装置を構成する直列回路としての1相分のスイッチングアームSA1が正極ラインPと負極ラインNとの間に接続されている。このスイッチングアームSA1は、半導体スイッチング素子Q1,Q2を、帯状導体2を介して直列に接続し、半導体スイッチング素子Q1,Q2間の中点に交流電圧を出力する交流端子ACが設けられている。そして、各半導体スイッチング素子Q1,Q2には、逆並列にダイオードD1,D2が接続されている。
【0045】
ここで、各半導体スイッチング素子Q1,Q2は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等を用いることができる。
そして、充放電用コンデンサC1とスイッチングアームSA1とは、図1〜図4に示すように、第1の積層配線導体3と第2の積層配線導体4とを接合部CON1及び接合部CON2を介して接続することで電気的に並列に接続されている。
【0046】
第1の積層配線導体3は、図2〜図4に示すように、充放電用コンデンサC1の正極側に接続された第1の帯状導体5と、充放電用コンデンサC1の負極側に接続された第2の帯状導体6とが所定間隔を保って上方からその順に配置され、その第1の帯状導体5と第2の帯状導体6とが絶縁層7によって絶縁された構成とされている。
第1の帯状導体5は、図2〜図4に示すように、絶縁層7に覆われたインダクタンス相殺部となる比較的幅広の本体部5aと、この本体部5aの先端に絶縁層7から本体部5aの幅と略等しい幅で基準位置S1となる絶縁層7の端部から所定長さ露出するように突出された露出部5bとを備えている。ここで、露出部5bには、図4に示すように、本体部5aとは反対側の端部寄りの位置に幅方向に所定間隔を保って固定ねじ8の雄ねじ部8bを挿通する例えば2つの挿通孔5cが形成されている。
【0047】
また、第2の帯状導体6は、図2〜図4に示すように、絶縁層7に覆われ、長手方向の先端が露出部5bの先端より所定長さ突き出したインダクタンス相殺部となる比較的幅広の本体部6aと、この本体部6aの先端に、露出部5bの先端より突出した絶縁層7の端部から本体部5aの幅と略等しい幅で所定長さ露出するように突出された露出部6bとを備えている。したがって、露出部6bは、露出部5bより右方に突出し、両者が上下方向で重なることがなく長手方向にずれた状態に配置されている。そして、本体部6aの挿通孔5cと対向する位置には、固定ねじ8の頭部8aを挿通する2つの透孔6cが形成されている。さらに、露出部6bには、本体部6aとは反対側の端部寄りの位置の幅方向に所定間隔を保って固定ねじ11の雄ねじ部11bを螺合する例えば2つの雌ねじ部6dが形成されている。
【0048】
ここで、第1の積層配線導体3を形成するには、先ず、図3に示すように、第1の帯状導体5に挿通孔5cを形成し、第2の帯状導体6に透孔6c及び雌ねじ部6dを形成した状態で、成形型に第1の帯状導体5及び第2の帯状導体6を所定間隔を保って平行に配置し、且つ挿通孔5cと透孔6cとを同軸上に対向させた状態で、例えば合成樹脂材をモールド成形することによって絶縁層7を形成する。この絶縁層7は、図2及び図4に示すように、本体部5a,6aを所定厚さで覆うと共に、透孔6cの内周面を所定厚さで覆うように形成され、透孔6cに対応する位置に透孔6cより小径の挿通孔7aが形成されている。
【0049】
第2の積層配線導体4は、図2〜図4に示すように、半導体スイッチング素子Q1及びダイオードD1に接続された帯状の第1の帯状導体9と、半導体スイッチング素子Q2及びダイオードD2に接続された帯状の第2の帯状導体10とが所定間隔を保って上方からその順に配置され、その第1の帯状導体9と第2の帯状導体10とが絶縁層15によって絶縁された構成とされている。
【0050】
第2の帯状導体10は、図2〜図4に示すように、絶縁層15に覆われたインダクタンス相殺部となる比較的幅広の本体部10aと、この本体部10aの先端に絶縁層15から本体部10aの幅と略等しい幅で基準位置S2となる絶縁層15の端部から所定長さ露出するように突出された露出部10bとを備えている。ここで、露出部10bには、図4に示すように、本体部10aとは反対側の端部寄りの位置に幅方向に所定間隔を保って固定ねじ11の雄ねじ部11bを挿通する例えば2つの挿通孔10cが形成されている。
【0051】
また、第1の帯状導体9は、図2〜図4に示すように、絶縁層15に覆われ、長手方向の先端が露出部10bの先端より所定長さ突き出したインダクタンス相殺部となる比較的幅広の本体部9aと、この本体部9aの先端に、露出部10bの先端より左方に突出した絶縁層15の端部から本体部9aの幅と略等しい幅で所定長さ露出するように突出された露出部9bとを備えている。したがって、露出部9bは、露出部10bより左方に突出し、両者が上下方向で重なることがなく長手方向にずれた状態に配置されている。そして、本体部9aの挿通孔10cと対向する位置には、固定ねじ11の頭部11aを挿通する2つの透孔9cが形成されている。さらに、露出部9bには、本体部9aとは反対側の端部寄りの位置の幅方向に所定間隔を保って固定ねじ8の雄ねじ部8bを螺合する例えば2つの雌ねじ部9dが形成されている。
【0052】
この第2の積層配線導体4は、第1の積層配線導体の表裏を反転させたものであり、第1の積層配線導体と同一形状を有するので、前述した第1の積層配線導体3と同様の方法でモールド成形によって形成される。そして、絶縁層15には、絶縁層7と同様に第1の帯状導体9の透孔9cに対応する位置に、この透孔9cより小径の挿通孔15aが形成されている。
【0053】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
第1の積層配線導体3と第2の積層配線導体4とを接合するには、先ず、第1の積層配線導体3の第1の帯状導体5を上側とし、第2の積層配線導体4の第1の帯状導体9を上側として、第1の積層配線導体3の露出部5b,6b上に、第2の積層配線導体4の露出部9b,10bが重なるように互いに突き合わせて配置する。このように配置することにより、露出部5b,9bで第1の接合部CON1が形成され、露出部6b,10bで第2の接合部CON2が形成され、両接合部CON1,CON2が基準位置S1又は基準位置S2から順に長手方向にずれて上下方向に重なることがなく互い違いに配置される。
【0054】
そして、固定ねじ8を第2の帯状導体6の下方から絶縁層7の挿通孔7aを通じて第1の帯状導体9の雌ねじ部9dに螺合させることにより、第1の帯状導体5を第1の帯状導体9に電気的に接続する。
また、固定ねじ11を第1の帯状導体9の上方から絶縁層15の挿通孔15aを通じて第2の帯状導体6の雌ねじ部6dに螺合させることにより、第2の帯状導体10を第2の帯状導体6に電気的に接続することができる。
このようにして、第1の積層配線導体3と第2の積層配線導体4との接合が完了する。この接合が完了した時点で、側面から見ると、図4に示すように、固定ねじ8,11の頭部8a,11aが絶縁層7,15の挿通孔7a,15a内に収まり、外方に突出することがない。
【0055】
次に、上記第1の実施形態の第1の積層配線導体3と第2の積層配線導体4とに流れる電流の経路について説明する。
今、スイッチングアームSA1の半導体スイッチング素子Q1をオン状態としたときの図1の電流経路L1には、充放電用コンデンサC1の正極側(高電位側)→第1の帯状導体5の本体部5a→第1の帯状導体5の露出部5b→第1の帯状導体9の露出部9b→第1の帯状導体9の本体部9a→半導体スイッチング素子Q1→帯状導体2→交流端子ACの順に電流が流れる。
【0056】
そして、半導体スイッチング素子Q1がターンオフしたときの図1の電流経路L2には、充放電用コンデンサC1の正極側(低電位側)→第2の帯状導体6の本体部6a→第2の帯状導体6の露出部6b→第2の帯状導体10の露出部10b→第2の帯状導体10の本体部10a→半導体スイッチング素子Q2→帯状導体2→交流端子ACの順に電流が流れる。
ここで、半導体スイッチング素子Q1がオン状態で、図1に示すように、電流経路L1に電流が流れていたとする。そして、この状態で、半導体スイッチング素子Q1がターンオフすると、電流経路L1に流れる電流が減少すると共に、電流経路L2に流れる電流が増加する。
【0057】
このため、半導体スイッチング素子Q1のターンオフ時には、半導体スイッチング素子Q1と充放電用コンデンサC1の正極側とを接続する第1の帯状導体5,9と、半導体スイッチング素子Q2と充放電用コンデンサC1の負極側とを接続する第2の帯状導体6,10との間で逆方向の電流が流れる。
このため、互いに所定間隔を保って対向する帯状導体の板部間で逆方向の電流が流れることにより、発生する磁束の向きが逆方向となる。この結果、逆方向の磁束が互いに打ち消し合うことになり、インダクタンス成分を十分に低減することができ、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを確実に抑制することができる。
【0058】
さらに、接合部CON1及び接合部CON2において、露出部5b,6b,9b,10bの幅を本体部5a,6a,9a,10aの幅と略等しく設定し、同層すなわち同電位の帯状導体を重ね合わせて接続することにより、この接合部CON1及び接合部CON2がそれぞれ異なる電位の第2の帯状導体6及び第1の帯状導体9に全面で対向することになり、インダクタンス成分を十分に低減することができ、抵抗の増大を防止することもできるので、発熱も抑制することができる。しかも、第1及び第2の積層配線導体3,4は同一形状を有することから同一成形型を利用して成形することができ、個別の成形型を必要としないので、この分製造コストを低減することができる。
さらに、帯状導体6に形成した透孔6c及び帯状導体9に形成した透孔9cの内周面が夫々絶縁層7及び絶縁層15によって覆われて露出していないので、帯状導体5,9及び帯状導体10,6を接合する固定ねじ8,11との間で短絡を生じることを確実に防止することができる。
【0059】
次に、本発明における第2の実施形態を図5〜図7について説明する。
この第2の実施形態では、前述した2レベル電力変換装置に代えて3レベル電力変換装置を第1及び第2の積層配線導体で電気的に接続するようにしたものである。
すなわち、3レベル電力変換装置の1相分は、図5に示すように、直列に接続された充放電用コンデンサC2,C3と、直列に接続された4個の半導体スイッチング素子Q3〜Q6で構成されるスイッチングアームSA2とが、正極ラインPと負極ラインNとの間に並列に接続されている。そして、各半導体スイッチング素子Q3〜Q6には、逆並列にダイオードD3〜D6が接続されている。そして、半導体スイッチング素子Q4,Q5間の中点に交流電圧を出力する交流端子ACが設けられている。さらに、半導体スイッチング素子Q4,Q5には、直列に接続されたダイオードD7,D8が逆並列に接続され、そのダイオードD7,D8間の中点が充放電用コンデンサC2,C3間の中点に設けられた中性点ラインMに接続されている。
【0060】
ここで、半導体スイッチング素子Q3〜Q6間は、夫々帯状導体30〜32によって電気的に接続されている。
そして、充放電用コンデンサC2の負極側と充放電用コンデンサC3の正極側とは、帯状導体34によって電気的に接続されている。
さらに、ダイオードD7のアノード側とダイオードD8のカソード側とは、帯状導体35によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD7のカソード側と半導体スイッチング素子Q3,Q4間の中点とは、帯状導体36によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD8のアノード側と半導体スイッチング素子Q5,Q6間の中点とは、帯状導体37によって電気的に接続されている。
【0061】
そして、充放電用コンデンサC2の正極側と半導体スイッチング素子Q3との間と、充放電用コンデンサC2,C3間の中点とダイオードD7,D8間の中点と、充放電用コンデンサC3の負極側と半導体スイッチング素子Q6との間とは、第1の積層配線導体40と第2の積層配線導体41とを接合部CON3、接合部CON4及び接合部CON5を介して接続することで電気的に接続されている。
【0062】
第1の積層配線導体40は、図6〜図8に示すように、充放電用コンデンサC2の正極側に接続された第1の帯状導体43と、充放電用コンデンサC2,C3間の中点に接続された第2の帯状導体44と、充放電用コンデンサC3の負極側に接続された第3の帯状導体45とが所定間隔を保って上方からその順に配置され、その夫々の帯状導体43〜45が絶縁層7によって絶縁された構成とされている。
【0063】
ここで、第1の帯状導体43は、図6〜図8に示すように、前述した第1の実施形態における第1の帯状導体5と同様の構成を有し、本体部43a、露出部43b及び挿通孔43cを有する。
また、第2の帯状導体44は、図6〜図8に示すように、前述した第1の実施形態における第2の帯状導体6と同様の構成を有し、本体部44a、露出部44b、透孔44c及び挿通孔44dを有する。
【0064】
さらに、第3の帯状導体45は、図6〜図8に示すように、絶縁層7に覆われ長手方向の先端が第2の帯状導体44の露出部44bの先端より所定長さ突き出したインダクタンス相殺部となる本体部45aと、この本体部45aの先端に絶縁層7から本体部45aの幅と略等しい幅で所定長さ露出するように突出された露出部45bとを備えている。ここで、本体部45aの第2の帯状導体44の透孔44cと対向する位置には、固定ねじ8の頭部8aを挿通する2つの透孔45cが形成されている。さらに、本体部45aの第2の帯状導体44の挿通孔44dと対向する位置には、固定ねじ11の頭部11aを挿通する2つの透孔45dが形成されている。また、露出部45bには、本体部45aとは反対側の端部寄りの位置の幅方向に所定間隔を保って固定ねじ12の雄ねじ部12bを螺合する例えば2つの雌ねじ部45eが形成されている。
【0065】
さらに、絶縁層7には、帯状導体44の透孔44c及び帯状導体45の透孔45cに対応する挿通孔7aと、帯状導体45の透孔45dに対応する挿通孔7bとが形成されている。
第2の積層配線導体41は、図6〜図8に示すように、半導体スイッチング素子Q3及びダイオードD3に接続された第1の帯状導体46と、ダイオードD7,D8間の中点に接続された第2の帯状導体47と、半導体スイッチング素子Q6及びダイオードD6に接続された帯状の第3の帯状導体48とが所定間隔を保って上方からその順に配置され、その夫々の帯状導体46〜48が絶縁層15によって絶縁された構成とされている。
【0066】
ここで、第1の帯状導体46は、図6〜図8に示すように、前述した第3の帯状導体45を幅方向の線で線対称とした構成を有し、本体部46a、露出部46b、透孔46c,46d及び雌ねじ部46eを有する。
また、第2の帯状導体47は、図6〜図8に示すように、前述した第1の実施形態における第1の帯状導体9と同様の構成を有し、本体部47a、露出部47b、透孔47c及び雌ねじ部47dを有する。
【0067】
さらに、第3の帯状導体48は、図6〜図8に示すように、前述した第1の実施形態における第2の帯状導体10と同様の構成を有し、本体部48a、露出部48b及び挿通孔48cを有する。
さらにまた、絶縁層15には透孔46c,47cに対応する位置に挿通孔15aが形成され、透孔46dに対応する位置に挿通孔15bが形成されている。
【0068】
次に、上記第2の実施形態の動作を説明する。
第1の積層配線導体40と第2の積層配線導体41とを接合するには、先ず、第1の積層配線導体40の第1の帯状導体43を上方とし、第2の積層配線導体41の第1の帯状導体46を上方とした状態で、第1の帯状導体43の露出部43b上に第1の帯状導体46の露出部46bを重ね、同様に第2の帯状導体44の露出部44b上に第2の帯状導体47の露出部47bを重ね、さらに第3の帯状導体45の露出部45b上に第3の帯状導体48の露出部48bを重ねた状態として配置する。
【0069】
このとき、第1の帯状導体46の雌ねじ部46eを、第1の帯状導体43の挿通孔43cと対向させ、第2の帯状導体47の雌ねじ部47dを、第2の帯状導体44の挿通孔44dと対向させ、第3の帯状導体45の雌ねじ部45eを、第3の帯状導体48の挿通孔48cと対向させる。
この状態で、固定ねじ8を第3の帯状導体45の下方から絶縁層7の挿通孔7aを通じて第1の帯状導体46の雌ねじ部46eに螺合させて、第1の帯状導体43を第1の帯状導体46に電気的に接続して接合部CON3を形成する。
【0070】
また、固定ねじ11を第3の帯状導体45の下方から絶縁層7の挿通孔7bを通じて第2の帯状導体47の雌ねじ部47dに螺合させて、第2の帯状導体44を第2の帯状導体47に電気的に接続して接合部CON4を形成する。
さらに、固定ねじ12を第1の帯状導体46の上方から絶縁層15の挿通孔15aを通じて第3の帯状導体45の雌ねじ部45eに螺合させて、第3の帯状導体45を第3の帯状導体48に電気的に接続して接合部CON5を形成する。
【0071】
このとき、接合部CON3、接合部CON4及び接合部CON5は、図8で見て、第1の帯状導体43の本体部43aを覆う絶縁層7の端面を基準位置S3としてこの基準位置から接合部CON3〜CON5が順次右方側に所定距離ずらした位置に設定され、接合部同士が上下に重ならないように設定されている。
このようにして、第1の積層配線導体40と第2の積層配線導体41との接合が完了する。この組付けが完了した時点で、側面から見ると、図8に示すように、各固定ねじ8,11,12の頭部8a,11a,12aが絶縁層7,15の挿通孔7a,7b,15a,15b内に収容されて外方に突出しない。
【0072】
以下、第2の実施形態の第1の積層配線導体40と第2の積層配線導体41とに流れる電流の経路について説明する。
ここで、半導体スイッチング素子Q3をオン状態としたときの図5の電流経路L3には、充放電用コンデンサC1の正極側(高電位側)→第1の帯状導体43の本体部43a→第1の帯状導体43の露出部43b→第1の帯状導体46の露出部46b→第1の帯状導体46の本体部46a→半導体スイッチング素子Q3→帯状導体30→半導体スイッチング素子Q4→帯状導体31→交流端子ACの順に電流が流れる。
【0073】
そして、半導体スイッチング素子Q3がターンオフしたときの図5の電流経路L4には、充放電用コンデンサC2の負極側→帯状導体34→第2の帯状導体44の本体部44a→第2の帯状導体44の露出部44b→第2の帯状導体47の露出部47b→第2の帯状導体47の本体部47a→帯状導体35→ダイオードD7→帯状導体36→帯状導体30→半導体スイッチング素子Q4→帯状導体31→交流端子ACの順に電流が流れる。
【0074】
そして、充放電用コンデンサC3に充電されている正の電荷の図5の電流経路L5には、半導体スイッチング素子Q4がオン状態であると、充放電用コンデンサC3の正極側(高電位側)→帯状導体34→第2の帯状導体44の本体部44a→第2の帯状導体44の露出部44b→第2の帯状導体47の露出部47b→第2の帯状導体47の本体部47a→帯状導体35→ダイオードD7→帯状導体36→帯状導体30→半導体スイッチング素子Q4→帯状導体31→交流端子ACの順に電流が流れる。
【0075】
そして、半導体スイッチング素子Q4がターンオフしたときの図5の電流経路L6には、充放電用コンデンサC3の負極側→第3の帯状導体45の本体部45a→第3の帯状導体45の露出部45b→第3の帯状導体48の露出部48b→第3の帯状導体48の本体部48a→半導体スイッチング素子Q6→帯状導体32→半導体スイッチング素子Q5→帯状導体31→交流端子ACの順に電流が流れる。
【0076】
今、半導体スイッチング素子Q3がオン状態で、図5に示すように、電流経路L3に電流が流れていたとする。そして、この状態で、半導体スイッチング素子Q3がターンオフすると、電流経路L3に流れる電流が減少する一方、電流経路L4に流れる電流が増加する。
このため、半導体スイッチング素子Q3のターンオフ時には、半導体スイッチング素子Q3と充放電用コンデンサC2の正極側とを接続する第1の帯状導体43,46と、ダイオードD7,D8間の中点と充放電用コンデンサC2,C3間の中点とを接続する第2の帯状導体44,47との間で逆方向の電流が流れる。
【0077】
さらに、半導体スイッチング素子Q4がオン状態で、図5に示すように、電流経路L5に電流が流れていたとする。そして、この状態で、半導体スイッチング素子Q4がターンオフすると、電流経路L5に流れる電流が減少すると共に、電流経路L6に流れる電流が増加する。
このため、半導体スイッチング素子Q4のターンオフ時には、ダイオードD7,D8間の中点と充放電用コンデンサC2,C3間の中点とを接続する第2の帯状導体44,47と、半導体スイッチング素子Q6と充放電用コンデンサC3の負極側とを接続する第3の帯状導体45,48との間で逆方向の電流が流れる。
【0078】
したがって、互いに所定間隔を保って対向する帯状導体の板部間で逆方向の電流が流れることにより、通電によって発生する磁束の向きが逆方向となる。この結果逆方向の磁束が互いに打ち消し合うことになり、インダクタンス成分を十分に低減することができ、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを確実に抑制することができる。
【0079】
さらに、接合部CON3〜CON5において、露出部43b〜48bの幅を本体部43a〜48aの幅と略等しく形成し、同層すなわち同電位の帯状導体を互い違いに接続することにより、各接合部CON3、接合部CON4及び接合部CON5が対向する帯状導体44,46,45,47にその全面が対向することになり、接合部CON3〜CON5でのインダクタンス成分を十分に低減することができ、抵抗の増大も防止することができるので、発熱も抑制することができる。しかも、第1及び第2の積層配線導体40,41は同一形状を有することから同一成形型を利用して成形することができ、個別の成形型を必要としないので、この分製造コストを低減することができる。
【0080】
さらに、各帯状導体44,45の透孔44c,45c,45dと各帯状導体46,47の透孔47c,46d,47cとが絶縁層7,15で覆われて露出していないので、接合部CON3〜CON5の接合用の固定ねじ8,11,12との間で短絡を生じることを確実に防止することができる。
なお、上記第2の実施形態においては、第2の帯状導体47に雌ねじ部47dを形成する場合について説明したが、雌ねじ部47dを省略して挿通孔とし、第2の帯状導体44に雌ねじ部を形成して、これに固定ねじ11を螺合させるようにしてもよい。
【0081】
次に、本発明における第3の実施形態を図9〜図12について説明する。
この第3の実施形態では、前述した3レベル電力変換装置に代えて5レベル電力変換装置を第1及び第2の積層配線導体で電気的に接続するようにしたものである。
すなわち、5レベル電力変換装置の1相分は、図9に示すように、直列に接続された4個の充放電用コンデンサC4〜C7と、直列に接続された8個の半導体スイッチング素子Q11〜Q18で構成されるスイッチングアームSA3とが、正極ラインP1と負極ラインN1との間に並列に接続されている。各半導体スイッチング素子Q11〜Q18には、夫々逆並列にダイオードD11〜D18が接続されている。そして、半導体スイッチング素子Q14,Q15間の中点に交流電圧を出力する交流端子ACが設けられている。
【0082】
また、充放電用コンデンサC4,C5間の中点に正極ラインP2が接続され、充放電用コンデンサC5,C6間の中点に中性点ラインMが接続され、充放電用コンデンサC6,C7間の中点に負極ラインN2が接続されている。
さらに、半導体スイッチング素子Q12〜Q15には、直列に接続されたダイオードD19,D20が逆並列に接続され、そのダイオードD19,D20間の中点が充放電用コンデンサC4,C5間の中点を介して正極ラインP2に接続されている。
【0083】
また、半導体スイッチング素子Q13〜Q16には、直列に接続されたダイオードD21,D22が逆並列に接続され、そのダイオードD21,D22間の中点が充放電用コンデンサC5,C6間の中点を介して中性点ラインMに接続されている。
また、半導体スイッチング素子Q14〜Q17には、直列に接続されたダイオードD23,D24が逆並列に接続され、そのダイオードD23,D24間の中点が充放電用コンデンサC6,C7間の中点を介して負極ラインN2に接続されている。
【0084】
ここで、半導体スイッチング素子Q11〜Q18間は、夫々帯状導体50〜56によって電気的に接続されている。
また、充放電用コンデンサC4〜C7間は、夫々帯状導体57〜59によって電気的に接続されている。
さらに、ダイオードD19のアノード側とダイオードD20のカソード側とは、帯状導体60によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD19のカソード側と半導体スイッチング素子Q11,Q12間の中点とは、帯状導体61によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD20のアノード側と半導体スイッチング素子Q15,Q16間の中点とは、帯状導体62によって電気的に接続されている。
【0085】
また、ダイオードD21のアノード側とダイオードD22のカソード側とは、帯状導体63によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD21のカソード側と半導体スイッチング素子Q12,Q13間の中点とは、帯状導体64によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD22のアノード側と半導体スイッチング素子Q16,Q17間の中点とは、帯状導体65によって電気的に接続されている。
【0086】
また、ダイオードD23のアノード側とダイオードD24のカソード側とは、帯状導体66によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD23のカソード側と半導体スイッチング素子Q13,Q14間の中点とは、帯状導体67によって電気的に接続されている。そして、ダイオードD24のアノード側と半導体スイッチング素子Q17,Q18間の中点とは、帯状導体68によって電気的に接続されている。
【0087】
一方、充放電用コンデンサC4の正極側と半導体スイッチング素子Q11との間と、充放電用コンデンサC4,C5間の中点とダイオードD19,20間の中点との間と、充放電用コンデンサC5,C6間の中点とダイオードD21,D22間の中点との間と、充放電用コンデンサC6,C7間の中点とダイオードD23,D24間の中点との間と、充放電用コンデンサC7の負極側と半導体スイッチング素子Q18との間とが、第1の積層配線導体70と第2の積層配線導体71とを接合部CON11〜CON15を介して接続することで電気的に接続されている。
【0088】
第1の積層配線導体70は、図10〜図12に示すように、充放電用コンデンサC4の正極側に接続された第1の帯状導体75と、充放電用コンデンサC4,C5間の中点に接続された第2の帯状導体76と、充放電用コンデンサC5,C6間の中点に接続された第3の帯状導体77と、充放電用コンデンサC6,C7間の中点に接続された第4の帯状導体78と、充放電用コンデンサC7の負極側に接続された第5の帯状導体79とが所定間隔を保って上方からその順に配置され、その夫々の帯状導体75〜79が絶縁層7によって絶縁された構成とされている。
【0089】
ここで、第1の帯状導体75は、図11及び図12に示すように、前述した第1の実施形態における第1の帯状導体5と同様の構成を有し、本体部75a、露出部75b及び挿通孔75cを有する。
また、第2の帯状導体76は、図11及び図12に示すように、前述した第1の実施形態における第2の帯状導体6と同様の構成を有し、本体部76a、露出部76b、透孔76c及び挿通孔76dを有する。
【0090】
また、第3の帯状導体77は、図11及び図12に示すように、前述した第2の実施形態における第3の帯状導体45と同様の構成を有し、本体部77a、露出部77b、透孔77c,77d及び雌ねじ部77eを有する。
また、第4の帯状導体78は、図11及び図12に示すように、絶縁層7に覆われ長手方向の先端が第3の帯状導体77の露出部77bの先端より所定長さ突き出したインダクタンス相殺部となる本体部78aと、この本体部78aの先端に絶縁層7から本体部78aの幅と略等しい幅で所定長さ露出するように突出された露出部78bとを備えている。
【0091】
ここで、本体部78aの第3の帯状導体77の透孔77c,77dと対向する位置には、固定ねじ8,11の頭部8a,11aを挿通する2つずつの透孔78c,78dが形成されている。また、本体部78aの第3の帯状導体77の雌ねじ部77eと対向する位置には、固定ねじ12の頭部12aを挿通する2つの透孔78eが形成されている。さらに、露出部78bには、本体部78aとは反対側の端部寄りの位置の幅方向に所定間隔を保って固定ねじ13の雄ねじ部13bを螺合する例えば2つの雌ねじ部78fが形成されている。
【0092】
また、第5の帯状導体79は、図11及び図12に示すように、絶縁層7に覆われ長手方向の先端が第4の帯状導体78の露出部78bの先端より所定長さ突き出したインダクタンス相殺部となる本体部79aと、この本体部79aの先端に絶縁層7から本体部79aの幅と略等しい幅で所定長さ露出するように突出された露出部79bとを備えている。
ここで、本体部79aの第4の帯状導体78の透孔78c,78d,78eと対向する位置には、固定ねじ8,11,12の頭部8a,11a,12aを挿通する2つずつの透孔79c,79d,79eが形成されている。また、本体部79aの第4の帯状導体78の雌ねじ部78fと対向する位置には、固定ねじ13の頭部13aを挿通する2つの透孔79fが形成されている。さらに、露出部79bには、本体部79aとは反対側の端部寄りの位置の幅方向に所定間隔を保って固定ねじ14の雄ねじ部14bを螺合する例えば2つの雌ねじ部79gが形成されている。
【0093】
さらに、絶縁層7には、帯状導体76〜79の透孔76c〜79cに対応する位置に挿通孔7aが形成され、帯状導体77〜79の透孔77d〜79dに対応する位置に挿通孔7bが形成され、帯状導体78,79の透孔78e,79eに対応する位置に挿通孔7cが形成され、帯状導体79の透孔79fに対応する位置に挿通孔7dが形成されている。
第2の積層配線導体71は、図10〜図12に示すように、半導体スイッチング素子Q11及びダイオードD11に接続された第1の帯状導体80と、ダイオードD19,D20間の中点に接続された第2の帯状導体81と、ダイオードD21,D22間の中点に接続された第3の帯状導体82と、ダイオードD23,D24間の中点に接続された第4の帯状導体83と、半導体スイッチング素子Q18及びダイオードD18に接続された第5の帯状導体84とが所定間隔を保って上方からその順に配置され、その夫々の帯状導体80〜84が絶縁層15によって絶縁された構成とされている。
【0094】
ここで、第1の帯状導体80は、図11及び図12に示すように、前述した第5の帯状導体79を幅方向の線で線対称とした構成を有し、本体部80a、露出部80b、透孔80c,80d,80e,80f及び雌ねじ部80gを有する。
また、第2の帯状導体81は、図11及び図12に示すように、前述した第4の帯状導体78を幅方向の線で線対称とした構成を有し、本体部81a、露出部81b、透孔81c,81d,81e及び雌ねじ部81fを有する。
【0095】
また、第3の帯状導体82は、図11及び図12に示すように、前述した第3の帯状導体77を幅方向の線で線対称とした構成を有し、本体部82a、露出部82b、透孔82c,82dを有し、雌ねじ部77eに代えて挿通孔82eを有する。
また、第4の帯状導体83は、図11及び図12に示すように、前述した第1の実施形態における第2の帯状導体6と同様の構成を有し、本体部83a、露出部83b、透孔83c及び挿通孔83dを有する。
【0096】
また、第5の帯状導体84は、図11及び図12に示すように、前述した第1の実施形態における第2の帯状導体10と同様の構成を有し、本体部84a、露出部84b及び挿通孔84cを有する。
さらに、絶縁層15には、帯状導体80〜83の透孔80c〜83cに対応する位置に挿通孔15aが形成され、帯状導体80〜82の透孔80d〜82dに対応する位置に挿通孔15bが形成され、帯状導体80,81の透孔80e,81eに対応する位置に挿通孔15cが形成され、帯状導体80の透孔80fに対応する位置に挿通孔15dが形成されている。
【0097】
次に、上記第3の実施形態の動作を説明する。
第1の積層配線導体70と第2の積層配線導体71とを接合するには、先ず、第1の積層配線導体70の第1の帯状導体75を上方とし、第2の積層配線導体71の第1の帯状導体80を上方とした状態で、第1の帯状導体75の露出部75b上に第1の帯状導体80の露出部80bを重ね、同様に第2の帯状導体76の露出部76b上に第2の帯状導体81の露出部81bを重ねた状態として配置する。さらに、この状態で第3の帯状導体77の露出部77b上に第3の帯状導体82の露出部82bを重ね、さらに第4の帯状導体78の露出部78b上に第4の帯状導体83の露出部83bを重ね、さらに第5の帯状導体79の露出部79b上に第5の帯状導体84の露出部84bを重ねた状態として配置する。
【0098】
このとき、図12に示すように、第1の帯状導体80の雌ねじ部80gを、第1の帯状導体75の挿通孔75cと対向させ、第2の帯状導体81の雌ねじ部81fを第2の帯状導体76の挿通孔76dと対向させ、第3の帯状導体82の挿通孔82eを第3の帯状導体77の雌ねじ部77eと対向させ、第4の帯状導体83の挿通孔83dを第4の帯状導体78の雌ねじ部78fに対向させ、さらに第5の帯状導体84の挿通孔84cを第5の帯状導体79の雌ねじ部79gに対向させる。
【0099】
これにより、図12に示すように、第1の帯状導体75の挿通孔75cが絶縁層7の挿通孔7aを通じて下端に臨まされ、第2の帯状導体76の挿通孔76dが絶縁層7の挿通孔7bを通じて下端に臨まされ、第3の帯状導体82の挿通孔82eが絶縁層15の挿通孔15cを通じて上端に臨まされ、第4の帯状導体83の挿通孔83dが絶縁層15の挿通孔15bを通じて上端に臨まされ、さらに第5の帯状導体84の挿通孔84cが絶縁層15の挿通孔15aを通じて上端に臨まされる。
【0100】
この状態で、固定ねじ8を絶縁層7の挿通孔7a及び第1の帯状導体75の挿通孔75cを通じて第1の帯状導体80の雌ねじ部80gに螺合させて、第1の帯状導体75を第1の帯状導体80に電気的に接続して接合部CON11を形成する。
また、固定ねじ11を絶縁層7の挿通孔7b及び第2の帯状導体76の挿通孔76dを通じて第2の帯状導体81の雌ねじ部81fに螺合させて、第2の帯状導体76を第2の帯状導体81に電気的に接続して接合部CON12を形成する。
【0101】
さらに、固定ねじ12を絶縁層15の挿通孔15c及び第3の帯状導体82の挿通孔82eを通じて第3の帯状導体77の雌ねじ部77eに螺合させて、第3の帯状導体82を第3の帯状導体77に電気的に接続して接合部CON13を形成する。
また、固定ねじ13を絶縁層15の挿通孔15b及び第4の帯状導体83の挿通孔83dを通じて第4の帯状導体78の雌ねじ部78fに螺合させて、第4の帯状導体83を第4の帯状導体78に電気的に接続して接合部CON14を形成する。
【0102】
さらに、固定ねじ14を絶縁層15の挿通孔15a及び第5の帯状導体84の挿通孔84cを通じて第5の帯状導体79の雌ねじ部79gに螺合させて、第5の帯状導体84を第5の帯状導体79に電気的に接続して接合部CON15を形成する。
このとき、接合部CON11〜CON15は、図12で見て、第1の帯状導体75の本体部75aを覆う絶縁層7の端面を基準位置S4としてこの基準位置から接合部CON11〜CON15が順次右方側に所定距離ずらした位置に設定され、接合部同士が上下に重ならないように設定されている。
【0103】
このようにして、第1の積層配線導体70と第2の積層配線導体71との接合が完了する。この組付けが完了した時点で、側面から見ると、図12に示すように、各固定ねじ8,11,12,13,14の頭部8a,11a,12a,13a,14aが絶縁層7の挿通孔7a,7b,絶縁層15の挿通孔15b,15c,15d内に収容されて外方に突出することはない。
【0104】
この第3の実施形態によると、前述した第2の実施形態と同様に互いに所定間隔を保って対向する帯状導体の板部間で逆方向の電流が流れることにより、通電によって発生する磁束の向きが逆方向となる。この結果逆方向の磁束が互いに打ち消し合うことになり、インダクタンス成分を十分に低減することができ、スイッチング時の電流の変化に伴う電圧の跳ね上がりを確実に抑制することができる。
【0105】
さらに、接合部CON11〜CON15において、露出部75b〜84bの幅を本体部75a〜84aの幅と略等しく形成し、同層すなわち同電位の帯状導体を互い違いに接続することにより、各接合部CON11、接合部CON12、接合部CON13、接合部CON14及び接合部CON15が対向する帯状導体76,80,77,81,78,82,79,83にその全面が対向することになり、接合部CON11〜CON15でのインダクタンス成分を十分に低減することができ、抵抗の増大も防止することができるので、発熱も抑制することができる。しかも、第1及び第2の積層配線導体70,71は同一形状を有することから同一成形型を利用して成形することができ、個別の成形型を必要としないので、この分製造コストを低減することができる。
【0106】
さらに、各帯状導体76〜79の透孔76c〜79c,77d〜79d,78e,79e,79fと各導体80〜83の透孔80c〜83c,80d〜82d、80e,81e,80fとが絶縁層7,15で覆われて露出していないので、接合部CON11〜CON15の接合用の固定ねじ8,11,12,13,14との間で短絡を生じることを確実に防止することができる。
なお、上記第3の実施形態においては、第3の帯状導体77に雌ねじ部77eを形成する場合について説明したが、雌ねじ部77eを省略して挿通孔とし、第3の帯状導体82に雌ねじ部を形成して、これに固定ねじ12を螺合させるようにしてもよい。
【0107】
また、上記第1〜第3の実施形態においては、各帯状導体6,9,45,46,47,77,78,79,80,81の露出部6b,9b,45b,46b,47b,77b,78b,79b,80b,81bに雌ねじ部6d,9d,45e,46e,47d,77e,78f,79g,80g,81fを形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、各雌ねじ部6d,9d,45e,46e,47d,77e,78f,79g,80g,81fを挿通孔5c,10c,43c,44e,48c,75c,76d,82e,83d,84cの径と略等しい挿通孔とし、これら挿通孔に固定ねじ8,11,12,13,14を挿通してナット締めするようにしてもよく、第1及び第2の積層配線導体を着脱可能としない場合にはリベットを挿通して固定することもできる。さらに、帯状導体の厚さが薄く雄ねじ部が形成できない場合には、プレス圧入取付タイプの雌ねじ(例えばセルファスナ)を用いて雄ねじ部を螺合させるようにしてもよい。
【0108】
また、上記第1〜第3の実施形態においては、第1の積層配線導体3,40,70と第2の積層配線導体4,41,71とを同一形状に形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、固定ねじ8,11〜14の挿通に供さない挿通孔を省略して別形状とすることもできる。
また、上記第1〜第3の実施形態においては、第1の積層配線導体3,40,70と第2の積層配線導体4,41,71とをモールド成型によって形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、露出部を露出させて絶縁層で覆った単体の帯状導体を形成し、この単体の帯状導体を所要数積層して接着、溶着等の固着手段で固着するようにしてもよい。
【0109】
また、上記第1〜第3の実施形態においては、本発明を電力変換装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、比較的高電圧・高電流を取り扱う電力機器や、高周波の電流が流れる機器に本発明を適用することができる。
また、上記第1〜第3の実施形態においては、第1及び第2の積層配線導体が2層、3層又は5層の帯状導体を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2層、3層及び5層以外の積層帯状導体にも適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
Q1〜Q6,Q11〜Q18…半導体スイッチング素子、D1〜D6,D11〜D18…ダイオード、CON1〜CON5,CON11〜CON15…接合部、C1〜C7…充放電用コンデンサ、L1〜L6…電流経路、SA1,SA2,SA3…スイッチングアーム、2…帯状導体、3,40,70…第1の積層配線導体、4,41,71…第2の積層配線導体、5,9,43,46,75,80…第1の帯状導体、5a,6a,9a,10a…本体部、5b,6b,9b,10b…露出部、5c,10c…挿通孔、6,10…第2の帯状導体、6c,9c…透孔、6d,9d…雌ねじ部、7…絶縁層、8,11…固定ねじ、8a,11a…頭部、8b,11b…雄ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ絶縁層を介して複数の帯状導体を積層した第1及び第2の積層配線導体を備え、前記第1及び第2の積層配線導体を互いに同層の帯状導体同士を電気的に接続することにより連結して導電路を形成する積層配線導体の接続構造であって、
前記第1及び第2の積層配線導体のそれぞれは、両者の連結位置で、同層の帯状導体同士の露出部を重ねて接合部を形成し、各層の帯状導体の前記接合部を、最下段の前記帯状導体から上方の前記帯状導体に行くに従い基準位置から長手方向に順次所定距離ずらした位置に形成し、各接合部を接続部材で固定することを特徴とする積層配線導体の接続構造。
【請求項2】
前記第1及び第2の積層配線導体は、2層、3層及び5層のいずれかの帯状導体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層配線導体の接続構造。
【請求項3】
前記第1及び第2の積層配線導体の帯状導体は、上下に隣接する帯状導体のうち前記接合部が基準位置より遠い一方の帯状導体に、他方の帯状導体を固定する前記接続部材を望ませる透孔が形成されていることを特徴とする請求項1又2に記載の積層配線導体の接続構造。
【請求項4】
前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層配線導体の接続構造を導電路に適用したことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−219216(P2010−219216A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62936(P2009−62936)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】