説明

積載量推定プログラムおよび車両状況解析装置

【課題】車両における積載量を推定し、これを活用して運転指導等を適切におこなうことを可能にする積載量推定プログラムおよび車両状況解析装置を提供すること。
【解決手段】車両状況解析装置100は、所定の時点における車両の操作状況データおよび走行状況データを取得する車両状況取得部141と、車両状況取得部141により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出し、操作状況と走行状況の関連を示す係数を予め積載量別に算出した情報と照合することにより、前記時点における車両の積載量を推定する積載量推定部143とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積載量推定プログラムおよび車両状況解析装置に関し、特に、車両における積載量を推定し、これを活用して運転指導等を適切におこなうことを可能にする積載量推定プログラムおよび車両状況解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の速度、加速度、エンジン回転数等の走行状況データと、アクセル開度、ブレーキ踏量等の操作状況データとを関連付けて時系列的に記録し、各種の分析等に利用する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、かかる分析の結果に基づいて、安全性や経済性の観点から走行状況ごとに適正な操作の基準を設定し、この基準から外れた操作が行われた場合に音声等を用いて運転者に対して運転指導を行う技術も知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−125534号公報
【特許文献2】特開平10−188067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の技術においては、積載量を各種分析や運転指導に反映することが難しいという問題があった。例えば、トラックの場合、空車の状態と荷物を満載した状態では、同じ速度を得るために必要なアクセル開度は大きく異なる。したがって、積載重量を考慮して分析や運転指導を行うことが必要であるが、従来は、積載量を把握するための有効な手段が存在しなかった。
【0006】
トラックが特定の製品を輸送する場合であれば、製品1個当たりの重量と数量が分かれば製品そのものの重量の総計を算出することができるが、梱包材を含めた重量までは算出することができない。また、荷物を含んだ車両全体の重量を測定することが可能な計測装置も存在するが、高価であるため、荷物の積み下ろしを行う全ての場所に設置することは現実的でない。このように、従来は、積載量を把握する有効な手段が存在しなかったため、走行状況や操作状況に基づく分析や運転指導を適切に行うことが難しかった。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、車両における積載量を推定し、これを活用して運転指導等を適切におこなうことを可能にする積載量推定プログラムおよび車両状況解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一つの態様では、車両における積載量を推定する積載量推定プログラムであって、所定の時点における車両の操作状況データおよび走行状況データを取得する車両状況取得手順と、前記車両状況取得手順により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出し、操作状況と走行状況の関連を示す係数を予め積載量別に算出した情報と照合することにより、前記時点における前記車両の積載量を推定する積載量推定手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の態様では、車両の状況を解析する車両状況解析装置であって、所定の時点における車両の操作状況データおよび走行状況データを取得する車両状況取得手段と、前記車両状況取得手段により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出し、操作状況と走行状況の関連を示す係数を予め積載量別に算出した情報と照合することにより、前記時点における前記車両の積載量を推定する積載量推定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の態様では、上記の発明の態様において、前記積載量推定手順は、エンジン回転数とアクセル開度の比率に基づいて前記係数を算出することを特徴とする。
【0011】
これらの発明の態様によれば、センサ等によって得られた操作状況データおよび走行状況データの関連を示す係数を算出し、予め積載量別に算出しておいた係数と照合することにより積載量を推定するように構成したので、容易に取得可能な情報に基づいて積載量を推定し、これを活用して運転指導等を適切におこなうことができる。
【0012】
また、本発明の他の態様では、上記の発明の態様において、前記車両状況取得手段により取得された操作状況データおよび走行状況データと、前記積載量推定手段により推定された積載量とを、走行状況別かつ積載量別に操作状況の適正範囲を定めた情報と照合し、操作状況が適正範囲にない場合に警告表示を行う運転指導手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
この発明の態様によれば、推定された積載量を含めて運転手の操作が適正であるか否かを判定して運転指導を行うように構成したので、積載量によって操作の適正量が変動する場合であっても、適切な運転指導を行うことができる。
【0014】
また、本発明の他の態様では、上記の発明の態様において、前記運転指導手段は、前記積載量推定手段により推定された積載量が前回推定された積載量から所定の差以上に変動している場合に、前回積載量が推定された時点から現時点までの間に所定の長さ以上の停車時間がないときは、荷物の落下があった旨の警告を行うことを特徴とする。
【0015】
この発明の態様によれば、推定された積載量の変動に基づいて荷物の落下を検出するように構成したので、荷物の紛失による経済的な損失等を回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様によれば、センサ等によって得られた操作状況データおよび走行状況データの関連を示す係数を算出し、予め積載量別に算出しておいた係数と照合することにより積載量を推定するように構成したので、容易に取得可能な情報に基づいて積載量を推定し、これを活用して運転指導等を適切におこなうことができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明の他の態様によれば、推定された積載量を含めて運転手の操作が適正であるか否かを判定して運転指導を行うように構成したので、積載量によって操作の適正量が変動する場合であっても、適切な運転指導を行うことができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明の他の態様によれば、推定された積載量の変動に基づいて荷物の落下を検出するように構成したので、荷物の紛失による経済的な損失等を回避することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る積載量推定プログラムおよび車両状況解析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
まず、本実施例にかかる車両状況解析方法の概要について説明する。図1は、本実施例に係る車両状況解析方法の概要について説明するための図である。
【0021】
本実施例にかかる車両状況解析方法では、準備段階として、車両10の積載量が明らかな状態において、車両10に搭載された車両状況解析装置100が、速度やエンジン回転数等の走行状況とアクセル開度等の操作状況を関連付けて時系列に記録する。積載量が明らかな状態とは、例えば、すべての荷物について重量の計測を行った状態や、梱包財を含めた重量が予め明らかになっている荷物を輸送する状態を意味する。
【0022】
車両状況解析装置100により記録された情報は、事務所20に設けられた車両状況データベース200に積載量別に格納される。そして、ある程度情報が収集された段階で、積載量別係数算出装置300が、車両状況データベース200の情報に基づいて走行状態と操作状態の関係を示す係数を積載量別に算出し、積載量別係数データ400を生成する。
【0023】
積載量別の係数の算出例を図2に示す。同図は、走行状態を示す指標としてエンジン回転数を用い、操作状況を示す指標としてアクセル開度を用いて係数の算出を行った場合の例を示している。
【0024】
この例では、車両状況データベース200は、積載量、エンジン回転数およびアクセル開度という3つの項目を有し、車両が巡航状態にあるときのエンジン回転数およびアクセル開度を、そのときの積載量とともに複数パターン記録している。巡航状態とは、特定のギアが使用され、アクセル開度が所定以上の間一定である状態を意味する。
【0025】
1行目のデータは、積載量が「1t」であったときに、エンジン回転数「1000rpm」を得るために必要なアクセル開度が「0.25」であったことを示している。2行目のデータは、積載量が同じく「1t」であったときに、エンジン回転数「2000rpm」を得るために必要なアクセル開度が「0.5」であったことを示している。また、3行目のデータは、積載量が「2t」であったときに、エンジン回転数「1000rpm」を得るために必要なアクセル開度が「0.5」であったことを示している。
【0026】
一般に、積載量が同じであれば、エンジン回転数は、アクセル開度に比例して高まると考えられる。そこで、この例では、エンジン回転数をアクセル開度で割って得られた値を積載量別の係数としている。
【0027】
図2における車両状況データベース200の1行目のデータに基づいて算出される積載量1tのときの係数は、1000÷0.25、すなわち、4000である。2行目のデータに基づいて算出される積載量1tのときの係数は、2000÷0.5、すなわち、4000である。そして、3行目のデータに基づいて算出される積載量2tのときの係数は、1000÷0.5、すなわち、2000である。
【0028】
この算出結果に基づいて、積載量別係数データ400には、積載量1tのときの係数として4000が設定され、積載量2tのときの係数として2000が設定される。なお、上記の例では、積載量が1tのときの2件の係数がいずれも4000となっているが、実際には、積載量が同一であっても算出される係数にばらつきが生じる場合がある。この場合は、積載量ごとに係数の平均値を求めるといった統計的な手法を使用して係数を決定することができる。
【0029】
こうして、得られた積載量別係数データ400は、各種の分析に利用することができる。例えば、車両がある区間を輸送した荷物の重量が不明である場合であっても、その区間における巡航時のエンジン回転数とアクセル開度の組み合わせの記録があれば、その荷物の重量を推定することができる。
【0030】
例えば、車両が巡航状態にあるときに、エンジン回転数が「1600rpm」であり、アクセル開度が「0.4」であったという記録があったとすると、このときの係数は、1600÷0.4、すなわち、4000である。この値を、図2の積載量別係数データ400と照合すると、積載量が1tのときの係数と一致しており、上記の記録がなされた時点での積載量は1tであったと推定できる。
【0031】
このような、積載量の推定は、運送事業者等にとって重要な意味をもっている。近年、改正省エネ法が改正され、企業は、自社の業務に係るエネルギー消費量を把握しなければならなくなっている。そして、各種企業の荷物の輸送を代行する運送事業者等は、荷主である企業に対して輸送によるエネルギー消費量を報告する必要が生じているが、荷物の輸送におけるエネルギー消費量を算出するためには、荷物の重量を把握することが欠かせないためである。
【0032】
また、図1に示すように、積載量別係数データ400を車両10に搭載された車両状況解析装置100へ格納し、車両10が走行している最中に車両状況解析装置100が積載量を推定できるようにすれば、車両状況解析装置100は、推定した積載量に応じて適切な運転指導を行うことが可能になる。
【0033】
例えば、車両がある速度で走行しているときにおける0.5というアクセル開度の値は、積載量が2t以上のときには適切な大きさであるが、積載量がそれより少ないときには大きすぎる値であることがあり得る。速度とアクセル開度の適正な関係を示す基準値を積載量別に車両状況解析装置100に登録しておき、車両状況解析装置100が自身で推定した積載量に応じた基準に基づいて運転指導を行うことにより、このような場合でも適切な運転指導が可能になる。
【0034】
積載量別の係数の別の算出例を図3に示す。同図は、走行状態を示す指標として速度とエンジン回転数を用い、操作状況を示す指標としてアクセル開度を用いて係数の算出を行った場合の例を示している。
【0035】
この例では、車両状況データベース200は、積載量、速度、エンジン回転数およびアクセル開度という4つの項目を有し、車両が巡航状態にあるときの速度、エンジン回転数およびアクセル開度を、そのときの積載量とともに複数パターン記録している。
【0036】
1行目のデータは、積載量が「1t」であったときに、速度「30km/h」とエンジン回転数「1000rpm」を得るために必要なアクセル開度が「0.25」であったことを示している。2行目のデータは、積載量が同じく「1t」であったときに、速度「60km/h」とエンジン回転数「2000rpm」を得るために必要なアクセル開度が「0.4」であったことを示している。また、3行目のデータは、積載量が「2t」であったときに、速度「30km/h」とエンジン回転数「1000rpm」を得るために必要なアクセル開度が「0.5」であったことを示している。
【0037】
エンジン回転数とアクセル開度の関係は、速度によって変化することがある。そこで、この例では、エンジン回転数をアクセル開度で割って得られた値を積載量別かつ速度別の係数としている。
【0038】
図3における車両状況データベース200の1行目のデータに基づいて算出される積載量1t、速度30km/hのときの係数は、1000÷0.25、すなわち、4000である。2行目のデータに基づいて算出される積載量1t、速度60km/hのときの係数は、2000÷0.4、すなわち、5000である。そして、3行目のデータに基づいて算出される積載量2t、速度30km/hのときの係数は、1000÷0.5、すなわち、2000である。
【0039】
この算出結果に基づいて、積載量別係数データ400には、積載量1t、速度30km/hのときの係数として4000が設定され、積載量1t、速度60km/hのときの係数として5000が設定され、積載量2t、速度30km/hのときの係数として2000が設定される。
【0040】
例えば、車両が巡航状態にあるときに、速度が「30km/h」、エンジン回転数が「1000rpm」であり、アクセル開度が「0.5」であったという記録があったとすると、このときの係数は、1000÷0.5、すなわち、2000である。速度が「30km/h」であり、係数が「4000」であるデータを、図3の積載量別係数データ400から検索すると、積載量が2tのときのデータと一致し、上記の記録がなされた時点での積載量は1tであったと推定できる。
【0041】
なお、走行状態と操作状態の関係を示す係数を、上記以外の情報を指標として算出することもできる。例えば、同じアクセル開度であっても、積載量によって加速度が変化することから、加速時におけるアクセス開度と加速度を指標として係数を算出してもよい。また、同じ量のブレーキを踏んでも、積載量によって制動時間が変化するため、ブレーキの踏量と制動時間を指標として係数を算出してもよい。
【0042】
また、走行状態と操作状態の関係を示す係数は、同一の車種ごとに求めてもよいし、車両ごとに個別に求めてもよい。また、エンジン性能等の経年劣化を考慮して、経過年数、もしくは、走行距離ごとに係数を求めることとしてもよい。
【0043】
次に、本実施例に係る車両状況解析装置100の構成について説明する。車両状況解析装置100は、車両に搭載され、速度やエンジン回転数等の走行状況とアクセル開度等の操作状況を関連付けて時系列に記録するとともに、これらの情報と予め決められたルールに基づいて運転手に対して運転指導を行う装置である。
【0044】
図4は、本実施例に係る車両状況解析装置100の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、本実施例に係る車両状況解析装置100は、操作状況計測部110と、走行状況計測部120と、表示部130と、制御部140と、記憶部150とを有する。
【0045】
操作状況計測部110は、各種センサ等を用いてアクセル開度等の操作状況を計測する処理部である。走行状況計測部120は、各種センサ等を用いて速度やエンジン回転数等の走行状況を計測する処理部である。
【0046】
表示部130は、運転指導のための各種情報を表示するための表示部であり、例えば、液晶表示装置や警告ランプ等からなる。表示部130は、車両誘導装置等の他の装置の表示部と共用される構成であってもよい。また、表示部130に代えて、音声等の他の手段により運転指導のための各種情報を伝達する装置を備えることとしてもよい。
【0047】
制御部140は、車両状況解析装置100を全体制御するための制御部であり、車両状況取得部141と、車両状況記録部142と、積載量推定部143と、運転指導部144とを有する。
【0048】
車両状況取得部141は、操作状況計測部110において計測された各種の操作状況データと走行状況計測部120において計測された各種の走行状況データを取得する処置部である。車両状況記録部142は、車両状況取得部141により取得された各種データを記憶部150の車両状況データ151に記録する処理部である。
【0049】
積載量推定部143は、車両状況取得部141により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を求め、記憶部150の積載量別係数データ153に予め登録されている積載量別の係数と照合することにより、当該の車両の積載量を推定する処理部である。積載量推定部143による積載量の推定は、例えば、図2および図3において説明した手法を用いて実現される。
【0050】
運転指導部144は、車両状況取得部141により取得された各種データと、積載量推定部143により推定された積載量と、車両状況データ151に記録されている各種データを、記憶部150に予め記憶された運転指導ルール152と照合し、必要に応じて表示部130に警告メッセージを表示するといった運転指導を行う処理部である。
【0051】
記憶部150は、各種情報を記憶する記憶部であり、車両状況データ151と、運転指導ルール152と、積載量別係数データ153とを有する。
【0052】
車両状況データ151は、車両状況取得部141により取得された操作状況データと走行状況データが時系列に記録されるデータである。車両状況データ151に記録されたデータは、各種の分析等に利用されるほか、図1に示した積載量別係数算出装置300が操作状況と走行状況の関連を示す係数を積載量別に算出する際にも利用される。
【0053】
運転指導ルール152は、運転指導部144が運転指導を行うためのルールであり、走行状況ごとの適正な操作の基準と、基準から外れた操作が行われた場合に行う警告動作の内容が対応付けられて登録される。速度とアクセル開度の関係のように、適正な操作の基準が積載量によって変動する場合、適正な操作の基準は、積載量別に設定される。
【0054】
積載量別係数データ153は、図1に示した積載量別係数算出装置300によって操作状況と走行状況の関連が積載量別に算出された係数が登録されたデータであり、例えば、図2および3に示した積載量別係数データ400に相当するデータが登録される。
【0055】
次に、図4に示した車両状況解析装置100の処理手順について説明する。図5は、車両状況解析装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、車両状況解析装置100が起動すると、車両状況取得部141が操作状況データと走行状況データを取得し(ステップS101)、取得されたデータを車両状況記録部142が車両状況データ151に記録する(ステップS102)。
【0056】
また、車両状況取得部141により取得されたデータは、積載量推定部143に引き渡され、後述する積載量推定処理が行われる(ステップS103)。そして、この処理の結果と車両状況取得部141により取得されたデータが運転指導部144に引き渡され、後述する運転指導処理が実行される(ステップS104)。以降、ステップS101〜104が繰り返し実行される。
【0057】
図6は、積載量推定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。この例は、巡航状態における操作状況と走行状況の関連を示す積載量別の係数と、加速状態における操作状況と走行状況の関連を示す積載量別の係数という2種類の係数を用いて積載量を推定する場合の処理手順を示している。
【0058】
同図に示すように、積載量推定部143は、車両状況取得部141により取得されたデータ等に基づいて車両が巡航状態にあるか否かを判定する。ここで、車両が巡航状態にあると判定した場合は(ステップS201肯定)、車両状況取得部141により取得されたデータから所定の数値を抽出し、巡航状態における操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出する(ステップS202)。
【0059】
そして、算出された係数を積載量別係数データ153と照合し、巡航状態における操作状況と走行状況の関連を示す積載量別の係数から最も値が近いものを選択し(ステップS203)、その係数に対応する積載量を現在の積載量と推定する(ステップS204)。
【0060】
一方、車両が巡航状態にないと判定した場合は(ステップS201否定)、車両が加速状態にあるか否かを判定する。ここで、車両が加速状態にあると判定した場合は(ステップS205肯定)、車両状況取得部141により取得されたデータから所定の数値を抽出し、加速状態における操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出する(ステップS206)。
【0061】
そして、算出された係数を積載量別係数データ153と照合し、加速状態における操作状況と走行状況の関連を示す積載量別の係数から最も値が近いものを選択し(ステップS207)、その係数に対応する積載量を現在の積載量と推定する(ステップS208)。
【0062】
そして、車両が加速状態にないと判定した場合は(ステップS205否定)、現在の積載量を推定することはできないと判定する(ステップS209)。
【0063】
図7は、運転指導処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、積載量推定部143によって推定された積載量が、前回推定された積載量と比較して所定の差以上に変動していた場合(ステップS301)、運転指導部144は、車両状況データ151を参照し、積載量が前回推定された時点以降の最も長い停車時間を取得する(ステップS302)。
【0064】
そして、取得された停車時間が所定の閾値より小さい場合は(ステップS303肯定)、運転手に対して荷物の落下を警告する(ステップS304)。荷物の積み下ろし作業を行うだけの停車時間がなかったにもかかわらず、積載量が変動しているということは、荷物が落下している可能性が高いと考えられるためである。
【0065】
続いて、運転指導部144は、積載量推定部143によって推定された積載量と、車両状況取得部141により取得されたデータとを運転指導ルール152と照合し、操作状況が基準から外れているか否かを確認する(ステップS305)。
【0066】
そして、操作状況が基準から外れている場合は(ステップS306肯定)、その基準から外れた場合に行うことになっている警告動作を実行する(ステップS307)。
【0067】
なお、上記の実施例では、積載量の推定を車両状況解析装置100にて行う場合について説明したが、本実施例に係る積載量の推定方法は、様々な態様で実現することができる。例えば、本実施例に係る積載量の推定方法を汎用的なコンピュータにて実行可能な単独のプログラムとして実装することも可能である。そこで、以下では、かかるプログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。
【0068】
図8は、積載量推定プログラム1071を実行するコンピュータ1000を示す機能ブロック図である。積載量推定プログラム1071は、ある時点における操作状況データと走行状況データとを入力とし、これに基づいてその時点の積載量を推定し、出力するものである。
【0069】
コンピュータ1000は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)1010と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置1020と、各種情報を表示するモニタ1030と、各種プログラム等を記録した記録媒体からプログラム等を読み取る媒体読取り装置1040と、ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータの授受を行うネットワークインターフェース装置1050と、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)1060と、ハードディスク装置1070とをバス1080で接続して構成される。
【0070】
そして、ハードディスク装置1070には、図4に示した積載量推定部143と同様の機能を有する積載量推定プログラム1071と、図4に示した積載量別係数データ153に対応する積載量別係数データ1072とが記憶される。なお、積載量別係数データ1072を、適宜分散させ、ネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶させておくこともできる。
【0071】
そして、CPU1010が積載量推定プログラム1071をハードディスク装置1070から読み出してRAM1060に展開することにより、積載量推定プログラム1071は、積載量推定プロセス1061として機能するようになる。そして、積載量推定プロセス1061は、積載量別係数データ1072から読み出した情報等を適宜RAM1060上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータ等に基づいて各種データ処理を実行する。
【0072】
なお、上記の積載量推定プログラム1071は、必ずしもハードディスク装置1070に格納されている必要はなく、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されたこのプログラムを、コンピュータ1000が読み出して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータ(またはサーバ)等にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ1000がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0073】
上述してきたように、本実施例では、センサ等によって得られた操作状況データおよび走行状況データの関連を示す係数を算出し、予め積載量別に算出しておいた係数と照合することにより積載量を推定するように構成したので、容易に取得可能な情報に基づいて積載量を推定し、これを活用して運転指導等を適切におこなうことができる。
【0074】
(付記1)車両における積載量を推定する積載量推定プログラムであって、
所定の時点における車両の操作状況データおよび走行状況データを取得する車両状況取得手順と、
前記車両状況取得手順により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出し、操作状況と走行状況の関連を示す係数を予め積載量別に算出した情報と照合することにより、前記時点における前記車両の積載量を推定する積載量推定手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする積載量推定プログラム。
【0075】
(付記2)前記積載量推定手順は、エンジン回転数とアクセル開度の比率に基づいて前記係数を算出することを特徴とする付記1に記載の積載量推定プログラム。
【0076】
(付記3)前記積載量推定手順は、加速度とアクセル開度の比率に基づいて前記係数を算出することを特徴とする付記1に記載の積載量推定プログラム。
【0077】
(付記4)前記積載量推定手順は、制動時間とブレーキの踏量の比率に基づいて前記係数を算出することを特徴とする付記1に記載の積載量推定プログラム。
【0078】
(付記5)車両の状況を解析する車両状況解析装置であって、
所定の時点における車両の操作状況データおよび走行状況データを取得する車両状況取得手段と、
前記車両状況取得手段により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出し、操作状況と走行状況の関連を示す係数を予め積載量別に算出した情報と照合することにより、前記時点における前記車両の積載量を推定する積載量推定手段と
を備えたことを特徴とする車両状況解析装置。
【0079】
(付記6)前記車両状況取得手段により取得された操作状況データおよび走行状況データと、前記積載量推定手段により推定された積載量とを、走行状況別かつ積載量別に操作状況の適正範囲を定めた情報と照合し、操作状況が適正範囲にない場合に警告表示を行う運転指導手段をさらに備えたことを特徴とする付記5に記載の車両状況解析装置。
【0080】
(付記7)前記運転指導手段は、前記積載量推定手段により推定された積載量が前回推定された積載量から所定の差以上に変動している場合に、前回積載量が推定された時点から現時点までの間に所定の長さ以上の停車時間がないときは、荷物の落下があった旨の警告を行うことを特徴とする付記6に記載の車両状況解析装置。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明に係る積載量推定プログラムおよび車両状況解析装置は、車両の状態把握に有用であり、特に、車両における積載量を推定し、これを活用して運転指導等を適切におこなうことが必要な場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施例に係る車両状況解析方法の概要について説明するための図である。
【図2】積載量別の係数の算出例を示す図である。
【図3】積載量別の係数の算出例を示す図である。
【図4】本実施例に係る車両状況解析装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】車両状況解析装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】積載量推定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】運転指導処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】積載量推定プログラムを実行するコンピュータを示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
10 車両
20 事務所
100 車両状況解析装置
110 操作状況計測部
120 走行状況計測部
130 表示部
140 制御部
141 車両状況取得部
142 車両状況記録部
143 積載量推定部
144 運転指導部
150 記憶部
151 車両状況データ
152 運転指導ルール
153 積載量別係数データ
200 車両状況データベース
300 積載量別係数算出装置
400 積載量別係数データ
1000 コンピュータ
1010 CPU
1020 入力装置
1030 モニタ
1040 媒体読取り装置
1050 ネットワークインターフェース装置
1060 RAM
1061 積載量推定プロセス
1070 ハードディスク装置
1071 積載量推定プログラム
1072 積載量別係数データ
1080 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における積載量を推定する積載量推定プログラムであって、
所定の時点における車両の操作状況データおよび走行状況データを取得する車両状況取得手順と、
前記車両状況取得手順により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出し、操作状況と走行状況の関連を示す係数を予め積載量別に算出した情報と照合することにより、前記時点における前記車両の積載量を推定する積載量推定手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする積載量推定プログラム。
【請求項2】
前記積載量推定手順は、エンジン回転数とアクセル開度の比率に基づいて前記係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の積載量推定プログラム。
【請求項3】
車両の状況を解析する車両状況解析装置であって、
所定の時点における車両の操作状況データおよび走行状況データを取得する車両状況取得手段と、
前記車両状況取得手段により取得された操作状況データおよび走行状況データに基づいて操作状況と走行状況の関連を示す係数を算出し、操作状況と走行状況の関連を示す係数を予め積載量別に算出した情報と照合することにより、前記時点における前記車両の積載量を推定する積載量推定手段と
を備えたことを特徴とする車両状況解析装置。
【請求項4】
前記車両状況取得手段により取得された操作状況データおよび走行状況データと、前記積載量推定手段により推定された積載量とを、走行状況別かつ積載量別に操作状況の適正範囲を定めた情報と照合し、操作状況が適正範囲にない場合に警告表示を行う運転指導手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の車両状況解析装置。
【請求項5】
前記運転指導手段は、前記積載量推定手段により推定された積載量が前回推定された積載量から所定の差以上に変動している場合に、前回積載量が推定された時点から現時点までの間に所定の長さ以上の停車時間がないときは、荷物の落下があった旨の警告を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両状況解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−264818(P2007−264818A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86347(P2006−86347)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】