説明

空気入りタイヤ、タイヤモールド及び空気入りタイヤの製造方法

【課題】サイドウォール部におけるゴムの流動性を確保しながら、そのタイヤ外表面でのクラックを防止できる空気入りタイヤ、タイヤモールド及び空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】空気入りタイヤTのサイドウォール部3の外表面に、最大高さRzが4μm以上であり且つスキューネスRskがRsk>0となる粗面部2を形成した。これにより、粗面部2が相応に粗く形成され、加硫成形時に未加硫ゴムの粘着を抑えてゴムの流動性を確保できるとともに、粗面部2に含まれる微小凹部の尖り具合が抑えられ、その箇所での歪みの集中を抑制してクラックの発生を有効に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤと、そのタイヤを加硫成型するためのタイヤモールドと、空気入りタイヤの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫成型では、未加硫タイヤの外表面がタイヤモールドのタイヤ成型面に粘着しやすく、それに起因したゴム流れ不足により、図8に示すような接着不良を生じることがある。この接着不良は、タイヤ外表面にて周方向に連続的に剥離又は陥没した領域として認められ、特にサイドウォール部での発生が顕著である。また、そのようなゴム流れ不足は、タイヤ成型面とタイヤ外表面との間での空気の残留を助長し、加硫成型したタイヤの外表面にライトネス又はベアと呼ばれる凹み傷を生じる原因にもなる。
【0003】
下記特許文献1には、カーカスプライのジョイント部による筋状の凹凸痕を目立ちにくくするために、サイドウォール部の外表面を円周方向に隣り合う複数の扇状領域に区画し、その隣り合う扇状領域の間で表面粗さの差を50μm以上とした空気入りタイヤが記載されている。また、同文献には、そのようなタイヤを成型するために、タイヤモールドのタイヤ成型面の表面粗さを変化させることの記載があり、扇状領域に対応した表面粗さの粗い領域であれば、加硫成型時に未加硫タイヤの粘着を抑えてゴムの流動性を向上できると考えられる。
【0004】
しかし、上記のタイヤモールドでは、表面粗さの粗い領域に含まれる微小凸部がタイヤ側に深く鋭い微小凹部を形成するため、その箇所に歪みが集中しやすくなり、タイヤ外表面でのクラックの起点になるという問題がある。そうかと言って、その領域の表面粗さを低減すると、クラックの防止には効果があるものの、タイヤ成型面に対する未加硫ゴムの流動抵抗が増すため、加硫成型時にゴム流れ不足を起こして接着不良などの外観不具合を生じてしまう。このように、タイヤ成型面の表面粗さに関し、ゴムの流動性の確保とタイヤ外表面でのクラックの防止とは両立が困難であった。
【0005】
下記特許文献2には、タイヤのトレッド部の外表面に、平均粗さRaが6〜50μmで、粗さ曲線のスキューネスRskがRsk<0となる凹凸部を形成してなる空気入りタイヤが記載されている。しかし、かかる構成では、タイヤ外表面に鋭い微小凹部が形成されるため、やはりクラックの起点になる恐れがある。もとより、このタイヤは、ウェットブレーキ性能の向上を企図するものであり、サイドウォール部に生じる接着不良などの外観不具合に関して、その解決手段を示唆するものではない。
【0006】
また、同文献には、平均粗さRaが6〜50μmで、粗さ曲線のスキューネスRskがRsk<0となる凹凸部を形成したタイヤモールドを使用することにより、上記の空気入りタイヤを製造できる旨の記載がある。しかし、タイヤ側の凹凸部がモールド側の凹凸部の転写により形成される実情からすると、このモールド側の凹凸部では、スキューネスRskがRsk>0となるのが正解であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−106921号公報
【特許文献2】特開2009−190526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイドウォール部におけるゴムの流動性を確保しながら、そのタイヤ外表面でのクラックを防止できる空気入りタイヤ、タイヤモールド及び空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、空気入りタイヤのサイドウォール部の外表面に、最大高さRzとスキューネスRskが特定範囲となる粗面部を備えることにより、ゴムの流動性を確保しながら、タイヤ外表面でのクラックを有効に防止できることを見出した。本発明は、かかる技術的知見に基づいてなされたものであり、下記の如き構成により上記目的を達成するものである。
【0010】
即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、サイドウォール部の外表面に、最大高さRzが4μm以上であり且つスキューネスRskがRsk>0となる粗面部を備えたものである。この空気入りタイヤでは、サイドウォール部の外表面の粗面部にて最大高さRzが4μm以上であるため、その粗面部が相応に粗く形成され、加硫成形時に未加硫ゴムの粘着を抑えてゴムの流動性を確保できる。それでいて、粗さ曲線のスキューネスRskがRsk>0となることから、粗面部に含まれる微小凹部の尖り具合が抑えられ、その箇所での歪みの集中を抑制してクラックの発生を有効に防止できる。サイドウォール部ではゴム流れ不足に起因する外観不具合が顕著であるものの、上記の如き粗面部により外観不具合を効果的に防止できる。
【0011】
本発明における最大高さRz、スキューネスRskは、それぞれJISB0601:2001に規定される最大高さ粗さRz、粗さ曲線のスキューネスRskに該当し、当該規定に準拠する。また、評価の方式及び手順並びに測定機の特性は、JISB0633:2001及びJISB0651:2001の規定に準拠する。基準長さと評価長さは、粗面部の表面性状に応じて定められ、最大高さRzが10μm以下の場合は基準長さが0.8mm、評価長さが4mmであり、最大高さRzが10μmを超え且つ50μm以下の場合は基準長さが2.5mm、評価長さが12.5mmであり、最大高さRzが50μmを超える場合は基準長さが8mm、評価長さが40mmである。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記粗面部は、突出谷部深さRvkがRvk<3μmであるものが好ましい。かかる構成によれば、粗面部に含まれる微小凹部がより浅く緩やかになるため、タイヤ外表面でのクラックを一層確実に防止することができる。
【0013】
本発明における突出谷部深さRvk、後述する突出山部高さRpkは、それぞれJISB0671−2:2002に規定される突出谷部深さRvk、突出山部高さRpkに該当し、当該規定に準拠する。また、測定機の特性や測定条件等は、JISB0651:2001及びJISB0671−1:2002の規定に準拠し、カットオフ値λcは0.8mm、評価長さは4mmである。
【0014】
また、本発明に係るタイヤモールドは、タイヤ成型面のサイドウォール部を成型する領域に、最大高さRzが4μm以上であり且つスキューネスRskがRsk<0となる粗面成型部を備えたものである。このタイヤモールドでは、サイドウォール部を成型する領域に形成された粗面成型部にて最大高さRzが4μm以上であるため、その粗面成型部が相応に粗く形成され、加硫成形時に未加硫ゴムの粘着を抑えてゴムの流動性を確保できる。それでいて、スキューネスRskがRsk<0となることから、その粗面成型部に含まれる微小凸部の尖り具合が抑えられ、タイヤ外表面に形成される微小凹部を緩やかにして、クラックの発生を有効に防止できる。
【0015】
本発明のタイヤモールドにおいて、前記粗面成型部は、突出山部高さRpkがRpk<3μmであるものが好ましい。かかる構成によれば、粗面成型部に含まれる微小凸部がより低く緩やかになるため、タイヤ外表面に形成される微小凹部をより浅く緩やかにして、タイヤ外表面でのクラックを一層確実に防止できる。
【0016】
また、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、上記した何れかのタイヤモールドを用いてタイヤを加硫成型する工程を備えるものである。この方法では、上記の如き粗面成型部を備えたタイヤ成型面によって、ゴム流れ不足による接着不良などの外観不具合の発生を抑えることができる。しかも、その粗面成型部に含まれる微小凸部の尖り具合を抑えて、タイヤ側に形成される微小凹部を緩やかにし、タイヤ外表面でのクラックを有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示す斜視図
【図2】最大高さRzを説明するための粗さ曲線を示す線図
【図3】スキューネスRskを説明するための粗さ曲線を示す線図
【図4】突出谷部深さRvkと突出山部高さRpkを説明するための粗さ曲線を示す線図
【図5】本発明に係るタイヤモールドの一例を概略的に示す縦断面図
【図6】図5のA−A矢視断面図
【図7】タイヤモールドへの未加硫タイヤのセットを説明する断面図
【図8】接着不良を説明するための空気入りタイヤの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1には、本発明に係る空気入りタイヤの一例を示す。空気入りタイヤTは、リムに着座するビード部からタイヤ径方向外側に延びたサイドウォール部3と、そのサイドウォール部3の外端に連なって踏面を構成するトレッド部4とを備える。本発明の空気入りタイヤは、以下に述べる粗面部2を備えること以外は、通常の空気入りタイヤと同等に構成でき、内部には不図示のカーカスやベルトが設けられる。
【0019】
このタイヤTは、サイドウォール部3の外表面に、最大高さRzとスキューネスRskを特定範囲に設定した粗面部2を備える。粗面部2は、サイドウォール部3の外表面の少なくとも一部に備えられ、好ましくはタイヤ周方向に沿った環状の領域に形成される。本実施形態では、後述するタイヤ成型面10の領域6(図6参照)に対応した領域に粗面部2が形成されている。当該領域には、ロゴ等の模様やサイドプロテクターが形成される場合があるが、それらにも任意に粗面部2を形成できる。
【0020】
粗面部2は、最大高さRzが4μm以上であり、スキューネスRskがRsk>0となる。図2に示すように、最大高さRzは、粗さ曲線Rの山高さの最大値と谷深さの最大値との和であり、五つの連続した基準長さlrごとに得られる測定データの平均値として求められる。また、図3に示すように、スキューネスRskは偏り度(高さ方向の確率密度関数の非対称性の尺度)を表し、スキューネスRskが正値(Rsk>0)となる粗面部2では、粗さ曲線の谷が比較的緩やかに形成される。尚、図3は概略的に表現してあり、実際の粗さ曲線は図2のように高さが不揃いで不均一な形状になる。
【0021】
粗面部2では、最大高さRzが4μm以上であるため、表面性状が相応に粗くなる。その結果、加硫成型時には、未加硫ゴムのタイヤ成型面に対する流動抵抗が小さくなり、ゴムの流動性を確保することができる。これに対し、最大高さRzが4μm未満である場合には、加硫成型時にサイドウォール部3の外表面がタイヤ成型面に粘着してゴム流れ不足を引き起こしやすくなり、成型後のタイヤ外表面に外観不具合を生じる恐れがある。
【0022】
それでいて、この粗面部2では、スキューネスRskがRsk>0であるため、図3(a)に示すように粗面部2に含まれる微小凹部の尖り具合が抑えられ、クラックの発生を有効に防止することができる。これに対し、粗面部のスキューネスRskがRsk<0であると、図3(b)に示すように粗さ曲線の谷が先細りし、歪みが集中しがちな鋭い微小凹部が形成される。それ故、例えばオゾン雰囲気中で歪みが繰り返し作用すると、その箇所を起点にクラックが発生してタイヤ外表面に顕在化することが懸念される。
【0023】
粗面部2の最大高さRzは、表面性状を適度に粗くするうえで4〜30μm、更には4〜15μmが好ましく、粗面部2を成型するためのモールド加工性を考慮すると7〜30μmがより好ましく、10〜25μmが特に好ましい。また、粗面部2のスキューネスRskは、タイヤ外表面でのクラックを確実に防止するとともに、粗面部2を成型するためのモールド加工性を考慮すると0.3〜1.2が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。
【0024】
加硫成型時のゴム流れ不足はサイドウォール部3において顕著であるため、そのサイドウォール部3の外表面に粗面部2を形成することで、ゴムの流動性を的確に確保し、接着不良の発生をより確実に防止できる。かかるゴム流れ不足は、タイヤの最大幅位置8からリムライン9に至る領域7で特に顕著であり、少なくとも当該領域7には粗面部2を形成することが望ましい。無論、トレッド部4など他部位の外表面に粗面部2を形成することは任意であり、タイヤ外表面の全体に粗面部2を形成しても構わない。
【0025】
粗面部2は、突出谷部深さRvkがRvk<3μmであることが好ましい。図4に示した粗さ曲線R´において、L1はコア部21の上側レベル、L2はコア部21の下側レベル、lnは評価長さであり、突出谷部深さRvkはコア部21の下にある突出谷部22の平均深さとなる。したがって、突出谷部深さRvkがRvk<3μmであることにより、粗さ曲線R´の突出谷部22は浅く規制され、粗面部2に含まれる微小凹部がより浅く緩やかとなり、歪みの集中を抑えてクラックを確実に防止することができる。
【0026】
次に、空気入りタイヤTを製造する方法について説明する。本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、タイヤを加硫成型する工程以外は、従来のタイヤ製造工程と同様にして行うことができるため、加硫成型工程を中心に説明する。この空気入りタイヤの製造方法は、図5に示したタイヤ用加硫金型であるタイヤモールドM(以下、モールドM)を用いて、タイヤを加硫成型する工程を有する。
【0027】
加硫成型時には、未加硫タイヤがモールドMにタイヤ軸方向を上下にしてセットされ、タイヤ成型面10にタイヤ外表面が押し当てられる。モールドMは、トレッド部を成型するトレッド型部M1と、サイドウォール部を成型するサイド型部M2,M3とを備え、各型部の内周面11〜13がタイヤ成型面10を構成する。図示を省略しているが、トレッド型部M1の内周面11には、トレッドパターンに対応した凹凸形状が形成されている。
【0028】
このモールドMは、タイヤ成型面10に、最大高さRzとスキューネスRskを特定範囲に設定した粗面成型部を備える。本実施形態では、図6に示すように、タイヤ成型面10の下側のサイドウォール部(図1のサイドウォール部3に相当)を成型する領域6に粗面成型部1が形成されており、この領域6はトレッド型部M1の内周面11の一部とサイド型部M3の内周面13に亘る。粗面成型部1は、最大高さRzが4μm以上であり且つスキューネスRskがRsk<0となる。このようにスキューネスRskが負値(Rsk<0)となる粗面成型部1では、図3にように粗さ曲線の山が比較的緩やかとなる。
【0029】
加硫成型工程では、図7に示すように加硫成形前の未加硫タイヤTをセットした後、モールドMを図5のように型締めしてタイヤ成型面10をタイヤ外表面に押し当て、タイヤTへの加熱及び加圧を施す。このとき、粗面成型部1では、最大高さRzが4μm以上であるためにゴムの流動性が確保され、ゴム流れ不足による接着不良などの外観不具合の発生を抑えられる。また、タイヤTの外表面には、スキューネスRskがRsk<0である粗面成型部1が転写して、微小凹部が比較的緩やかとなる粗面部2が形成され、クラックの発生を有効に防止できる。
【0030】
このような加硫成型工程を経て製造された空気入りタイヤTは、図1に示すようにサイドウォール部3の外表面に粗面部2が成型される。粗面部2は粗面成型部1の転写により成型されるため、その表面性状は最大高さRzが4μm以上、スキューネスRskがRsk>0となる。
【0031】
本実施形態では、図6のようにタイヤ成型面10のサイドウォール部を成型する領域に粗面成型部1が形成されているため、ゴム流れ不足を起こしやすいサイドウォール部3において、接着不良などの外観不具合を的確に防止できる。既述の理由から、粗面成型部1は、タイヤ成型面10の少なくともタイヤの最大幅位置からリムラインに至る領域(図1の領域7に相当)に形成することが望ましい。
【0032】
粗面成型部1は、突出山部高さRpkがRpk<3μmであることが好ましい。図4に示すように、突出山部高さRpkは粗さ曲線R´のコア部21の上にある突出山部23の平均高さを表し、これがRpk<3μmであることにより、粗さ曲線R´の突出山部23が低く規制される。これによって、成型したタイヤTの粗面部2に含まれる微小凹部がより浅く緩やかになり、歪みの集中を抑えてタイヤ外表面でのクラックを確実に防止することができる。
【0033】
粗面成型部1は、上述した表面性状が得られるものであれば、その加工方法や加工条件は特に限られない。粗面成型部1の加工方法としては、砂や研磨材を吹き付けるサンドブラスト加工や、FeCl3溶液を主成分とするエッチング液などを吹きかけるエッチング加工が例示され、それらの加工後にサンドペーパーなどで軽く研磨することも有用である。
【0034】
図6では、粗面成型部1をタイヤ周方向に均一に形成した例を示すが、これを不均一に形成しても構わない。但し、上記特許文献1に記載のモールドのように粗面成型部を不均一に形成すると、最大高さRzなどの表面性状に係るパラメータを制御し難くなり、また、タイヤ外表面に光沢の差異を生じて外観に違和感を与え得ることから、均一に形成する方が好ましい。
【0035】
粗面成型部1をタイヤ周方向に均一に形成する際には、その粗面成型部1における加工の筋目をタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に延在させることが好ましい。これにより、粗面成型部1の微小凹凸がタイヤ周方向に沿ったスパイラル状に延在するため、加硫成型時に空気を効率的に排出して、タイヤ外表面でのライトネスの発生を防止しやすくできる。
【0036】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。前述の実施形態では、タイヤ成型面が三つの型部により構成された例を示したが、これに限られず、例えばトレッド部の中央で二分割された一対の型部で構成されるものでもよい。また、サイド型部のタイヤ径方向内側に、タイヤのビード部を嵌合するビードリングを別部材として具備しても構わない。
【実施例】
【0037】
本発明の構成と効果を具体的に示すため、サイドウォール部の外表面に種々の表面性状を持つ粗面部を備えた空気入りタイヤ(タイヤサイズ11R22.5)を加硫成型し、外観不具合とクラックの発生状況を評価した。
【0038】
外観不具合に対する評価として、加硫成型後のタイヤを10本ずつを観察し、ゴム流れ不足による接着不良(ゴム界面)又はライトネスの発生の有無を調査した。尚、評価においては、発生の程度と発生本数に着目し、接着不良による陥没傷の発生又は外観不良が認められた本数が3本(30%)以上である場合を×、比較的浅い筋状の傷が認められた発生本数が3本(30%)未満の場合を△、全く問題のない場合を○とした。
【0039】
また、加硫成型後のタイヤを3本ずつ用いてクラック試験を行った。クラック試験では、当該タイヤが適用される規格(JATMA、TRA等)に記載の標準内圧の70%を充填し、標準荷重の120%の負荷をかけたタイヤを、オゾン濃度40pphmの雰囲気中で速度40km/hにてドラム上で回転させ、400時間走行後にクラックの長さを測定した。評価例2の結果を100としたときの指数で示し、この数値が小さいほど優れていることを示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示すように、最大高さRzが4μm未満であると、ゴム流れ不足を引き起こして外観不具合を生じやすい(評価例1)。また、粗面部のスキューネスRskがRsk<0であると、クラックを十分に防止できていない(評価例4、7)。これに対し、最大高さRzとスキューネスRskを特定範囲に設定すると、ゴムの流動性を確保しながら、タイヤ外表面でのクラックを有効に防止できている(評価例5、6、8)。特に突出谷部深さRvkをも特定範囲に設定した場合には、クラックを効果的に防止できる(評価例6)。
【符号の説明】
【0042】
1 粗面成型部
2 粗面部
3 サイドウォール部
10 タイヤ成型面
M タイヤモールド
T タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部の外表面に、最大高さRzが4μm以上であり且つスキューネスRskがRsk>0となる粗面部を備えた空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記粗面部は、突出谷部深さRvkがRvk<3μmである請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ成型面のサイドウォール部を成型する領域に、最大高さRzが4μm以上であり且つスキューネスRskがRsk<0となる粗面成型部を備えたタイヤモールド。
【請求項4】
前記粗面成型部は、突出山部高さRpkがRpk<3μmである請求項3に記載のタイヤモールド。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のタイヤモールドを用いてタイヤを加硫成型する工程を備える空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−218950(P2011−218950A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89633(P2010−89633)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】