説明

空気入りタイヤ

【課題】通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア、カーカスプライ、トレッドゴム層、インナーライナー、サイド補強層及びビードフィラーを具備する空気入りタイヤであって、カーカスプライを構成する補強繊維コードが、RFL接着剤の塗布後、乾燥硬化処理されてなる、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードであり、かつ(1)前記乾燥工程と熱処理工程におけるコード張力が、1本当たり2.9〜49.0Nであること、(2)前記乾燥工程における乾燥処理温度が100〜200℃であること、(3)前記熱処理工程における硬化処理温度をTm(℃)、硬化処理時間をs(秒)とした場合、Tm/sが1.1〜8.7であること、を満たす空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、特定の乾燥・加硫条件下でRFL接着剤(レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂−ゴムラテックス接着剤)を付着・含浸させてなるポリケトン繊維を含む補強繊維コードをカーカスプライに適用し、かつ好ましくは、特定の性状を有するゴム組成物を、タイヤ部材の少なくとも一つ、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに用いることにより、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフット耐久性を向上させた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤ、特にランフラットタイヤにおいて、サイドウォール部の剛性向上のために、ゴム組成物単独又はゴム組成物と繊維等の複合体によるサイド補強層が配設されている。(例えば、特許文献1参照)
空気入りタイヤは、パンク等によりタイヤの内部圧力(以下、内圧という)が低下した場合での走行、いわゆるランフラット走行状態になると、タイヤのサイドウォール部やビードフィラーの変形が大きくなり、発熱が進み、場合によっては200℃以上に達する。このような状態では、サイド補強層を具えた空気入りタイヤであっても、サイド補強層やビードフィラーが破壊限界を超え、タイヤ故障に至る。
【0003】
このような故障に至るまでの時間を稼ぐ手段として、配設するサイド補強層及びビードフィラーの最大厚さを増大するなど、ゴムの体積を増大させるものがあるが、このような方法をとると、通常走行時の乗り心地の悪化、重量の増加及び騒音レベルの増大などの好ましくない事態が発生する。
前述の事態、例えば乗り心地の悪化を回避するために、配設するサイド補強層及びビードフィラーの体積を減少させると、ランフラット時の荷重を支えきれず、ランフラット時にタイヤのサイドウォール部分の変形が非常に大きくなり、ゴム組成物の発熱増大を招き、結果としてタイヤはより早期に故障に至る問題があった。
また、配合する材料を変えることにより使用するゴムをより低弾性化させた場合も同様に、ランフラット時の荷重を支え切れず、タイヤのサイドウォール部分の変形が非常に大きくなり、ゴム組成物の発熱増大を招き、結果としてタイヤはより早期に故障に至ってしまうのが実状である。
【0004】
また、従来のサイド補強式ランフラットタイヤ用カーカスプライには、主として室温や高温時において、ポリエステル(PET)繊維に比べて高いヤング率を有するセルロース繊維(レーヨン繊維)が使用されている。
しかしながら、従来のレーヨン繊維の弾性率では、ランフラット時のタイヤの撓みが大きく、高温時にはカーカスプライの剛性低下によりタイヤの撓みが大きくなり、ランフラット走行末期の故障形態は、三日月状補強ゴム割れによるものでランフラット耐久距離が短いという問題があった。
また、補強ゴム層を厚くしたり、サイド部やショルダー部を補強すると、重量増加に伴い、内圧時のタイヤ縦バネ定数を上げてしまい通常走行時の乗り心地が損なわれる。
【0005】
一方、特許文献2では、各種変性共役ジエン−芳香族ビニル共重合体及び耐熱向上剤等を含有するゴム組成物をサイド補強層及びビードフィラーに用いることが提案されている。
さらに、特許文献3では、特定の共役ジエン系重合体とフェノール系樹脂を含有するゴム組成物をサイド補強層及びビードフィラーに用いることが提案されている。
これらは、いずれもサイド補強層及びビードフィラーに用いたゴム組成物の弾性率を高くすると共に、高温時の弾性率低下を抑えることを目的としたものであり、ランフラット耐久性の大幅な改良が得られるものの、通常走行時の転がり抵抗性が著しく悪化してしまう。
【0006】
【特許文献1】特開平11−310019号公報
【特許文献2】WO02/02356パンフレット
【特許文献3】特開2004−74960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下になされたもので、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の乾燥・加熱条件でレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂−ゴムラテックス接着剤を付着・含浸させてなる、ポリケトン繊維を50質量%以上含む補強繊維コードをカーカスプライに適用し、かつ好ましくは、特定の性状を有するゴム組成物を、タイヤ部材の少なくとも一つ、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに用いることにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]ビードコア、カーカスプライ、トレッドゴム層、インナーライナー、サイド補強層及びビードフィラーを具備する空気入りタイヤであって、前記カーカスプライを構成する補強繊維コードが、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂−ゴムラテックス接着剤塗布後に、乾燥工程と熱処理工程を経て乾燥硬化処理されてなる、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードであり、かつ下記の条件
(1)前記乾燥工程と熱処理工程におけるコード張力が、1本当たり2.9〜49.0Nであること、
(2)前記乾燥工程における乾燥処理温度が100〜200℃であること、
(3)前記熱処理工程における硬化処理温度をTm(℃)、硬化処理時間をs(秒)とした場合、Tm/sが1.1〜8.7であること、
を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ、
【0010】
[2]レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂−ゴムラテックス接着剤塗布後、乾燥硬化処理されてなる補強繊維コードの該接着剤の付着量が、処理前のコードの質量に対して、1.5〜9.0質量%である上記[1]に記載の空気入りタイヤ、
[3]カーカスプライを構成する補強繊維コードが、下記式(1)で表される撚り係数Nが、下記式(2)の関係を満たす上記[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤ、
N=n×(0.125D/ρ)1/2×10-3 ・・・(1)
0.34≦N ・・・(2)
[式中、nは上撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス、ρは少なくともポリケトン繊維を50質量%含む繊維の密度(g/cm3)を示す。]
[4]撚り係数Nが、下記式(2−a)
0.6≦N≦0.9 ・・・(2−a)
の関係を満たす上記[3]に記載の空気入りタイヤ、
[5]カーカスプライを構成する補強繊維コードの打ち込み本数が、30〜60本/50mmである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
[6]カーカスプライを構成する補強繊維コードが、繊度500〜2000dtexのフィラメント束を撚ったものからなる上記[1]〜[5]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
[7]ポリケトン繊維を構成するポリケトンが、下記一般式(3)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の残基を示し、繰り返し単位において同一でも異なっていても良い。]
で表される繰り返し単位を有する上記[1]〜[6]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
[8]一般式(3)におけるAが、エチレン基である上記[7]に記載の空気入りタイヤ、
[9](A)ゴム成分と、その100質量部に対し、(B)カーボンブラック55質量部以上を含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上、及び正接損失(tanδ)の28〜150℃におけるΣ値が6.0以下で
あるゴム組成物を、タイヤ部材の少なくとも一つに用いてなる上記[1]〜[8]のいずれかに記載の空気入りタイヤ
[10]ゴム組成物において、(B)カーボンブラックが、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード及びSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種である上記[9]に記載の空気入りタイヤ、
[11](B)カーボンブラックがFEF級グレードである上記[10]に記載の空気入りタイヤ、
[12]ゴム組成物において、(A)ゴム成分が、アミン変性共役ジエン系重合体を含むものである上記[9]〜[11]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
[13]アミン変性共役ジエン系重合体が、プロトン性アミン変性共役ジエン系重合体である上記[12]に記載の空気入りタイヤ、
【0013】
[14]アミン変性共役ジエン系重合体が、一級アミン変性共役ジエン系重合体である上記[12]又は[13]に記載の空気入りタイヤ、
[15]一級アミン変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られたものである上記[14]に記載の空気入りタイヤ、
[16]共役ジエン系重合体が、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られたものである上記[15]に記載の空気入りタイヤ、
[17]共役ジエン系重合体が、ポリブタジエンである上記[16]に記載の空気入りタイヤ、
[18]保護化一級アミン化合物が、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランである上記[15]〜[17]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
[19]サイド補強層に、前記ゴム組成物を用いてなる上記[9]〜[18]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
[20]ビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる上記[9]〜[18]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、及び
[21]サイド補強層及びビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる上記[9]〜[18]のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気入りタイヤは、下記の効果を奏する。
(1)ポリケトン繊維50質量%以上を含むコードに、特定の乾燥・加熱条件下でレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂−ゴムラテックス接着剤(以下、RFL接着剤と称することがある。)を付着・含浸させてなるものをカーカスプライに適用することで、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させた空気入りタイヤが得られる。
(2)さらに、特定の加硫ゴム物性を有するゴム組成物を、補強ゴムとしてタイヤ部材の少なくとも一つ、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに使用することにより、上記(1)の効果がより向上した空気入りタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の空気入りタイヤは、ビードコア、カーカスプライ、トレッドゴム層、インナーライナー、サイド補強層及びビードフィラーを具備し、かつ前記カーカスプライを構成する補強繊維コードとして、RFL接着剤塗布後に、乾燥工程と熱処理工程を経て乾燥硬化処理されてなる、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードを用いる。
【0016】
[補強繊維コード]
本発明の空気入りタイヤにおいては、カーカスプライを構成する補強繊維コードとして、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードに、RFL接着剤を塗布後、乾燥工程と熱処理工程を経て乾燥硬化処理してなるものを用いる。
(ポリケトン繊維)
本発明においては、ポリケトン繊維を構成するポリケトンとして、下記一般式(3)
【0017】
【化2】

【0018】
[式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の残基を示し、繰り返し単位において同一でも異なっていても良い。]で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
このポリケトンの中でも繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンがさらに好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。繰り返し単位中の1−オキソトリメチレンの割合が高いほど分子鎖の規則性が向上し、高結晶性で高配向度の繊維が得られる。
【0019】
上記ポリケトンは、部分的にケトン同士、不飽和化合物由来の部分同士が結合しても良いが、不飽和化合物由来の残基とケトン基が交互に配列している部分の割合が90質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0020】
また、上記式(3)において、Aを構成する不飽和化合物としては、エチレンが最も好ましいが、プロピレン、ブテン、ペンテン、シクロペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、スチレン、アセチレン、アレン等のエチレン以外の不飽和炭化水素や、メチルアクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ウンデセン酸、ウンデセノール、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン、スチリルホスホン酸のジエステル、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム及び塩化ビニル等の不飽和結合を含む化合物であっても良い。
【0021】
このポリケトンの繊維化方法としては、(1)未延伸糸の紡糸を行なった後、多段熱延伸を行い、該多段熱延伸の最終延伸工程で特定の温度及び倍率で延伸する方法や、(2)未延伸糸の紡糸を行なった後、熱延伸を行い、該熱延伸終了後繊維に高い張力をかけたまま急冷却する方法が好ましい。上記(1)又は(2)の方法でポリケトンの繊維化を行なうことで、上記ポリケトン繊維コードの作製に好適な所望のフィラメントを得ることができる。
【0022】
ここで、上記ポリケトンの未延伸糸の紡糸方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、特開平2−112413号、特開平4−228613号、特表平−505344号に記載のようなヘキサフルオロオイソプロパノールやm−クレゾール等の有機溶剤を用いる湿式紡糸法、国際公開99/18143号、国際公開00/09611号、特開2001−164422号、特開2004−218189号、特開2004−285221号に記載のような亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液を用いる湿式紡糸法が好ましい。
【0023】
また、得られた未延伸糸の延伸方法としては、未延伸糸を該未延伸糸のガラス転移温度よりも高い温度に加熱して引き伸ばす熱延伸法が好ましく、更に、該未延伸糸の延伸は、上記(2)の方法では一段で行なっても良いが、多段で行なうことが好ましい。
該熱延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、加熱ロールや加熱プレート上に糸を走行させる方法等を採用することができる。ここで、熱延伸温度は110℃〜(ポリケトンの融点)の範囲が好ましく、総延伸倍率は、10倍以上であることが好ましい。
【0024】
また、ポリケトン繊維は結晶化度が50〜90%、結晶配向度が95%以上の結晶構造を有することが好ましい。 結晶化度が50%未満の場合、繊維の構造形成が不十分であり十分な強度が得られないばかりか熱時の収縮特性、寸法安定性も不安定となるおそれがある。このため、結晶化度としては50〜90%が好ましく、より好ましくは60〜85%である。
コードは、フィラメント束を撚り合わせて作ることができる。撚り合わせるフィラメント束の数については特に制限はなく、通常、フィラメント束を2本又は3本撚り合わせたコードが使用される。
【0025】
本発明において、カーカスプライを構成する補強繊維コードの作製に用いるコードとしては、例えば、(イ)ポリケトン繊維のみからなるコード、(ロ)ポリケトン繊維とポリケトン繊維以外の繊維とを混撚又は交撚したコード等が挙げられる。これらの1本のコード中にポリケトン繊維が少なくとも50質量%含まれていることを要する。ポリケトン繊維は、該コード中に少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも75質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは100質量%用いられる。
コード中のポリケトン繊維の割合を上記範囲内にすることによって、優れた、コードの熱収縮性、強度、寸法安定性、耐熱性、及びゴムとの接着性などを得ることができる。
【0026】
ポリケトン繊維以外の繊維としては、その割合が50質量%以下であれば特に制限はなく、用途及び目的に応じて、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維等、公知の繊維が用いられる。ポリケトン繊維以外の繊維が50質量%を越えると、例えば、ポリエステル繊維やポリアミド繊維よりなるコードの場合には強度や寸法安定性が損なわれ、レーヨン繊維よりなる経糸の場合には強度が大きく損なわれ、アラミド繊維よりなる経糸の場合にはゴムとの接着性が大きく損なわれる。
【0027】
(補強繊維コードの作製)
本発明の空気入りタイヤにおいては、カーカスプライを構成する補強繊維コードは、前述のようにして得られたポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードに、RFL接着剤を塗布後、乾燥工程と熱処理工程を経て乾燥硬化処理することにより、作製されるが、この際、下記の条件
(1)前記乾燥工程と熱処理工程におけるコード張力が、1本当たり2.9〜49.0Nであること、
(2)前記乾燥工程における乾燥処理温度が100〜200℃であること、
(3)前記熱処理工程における硬化処理温度をTm(℃)、硬化処理時間をs(秒)とした場合、Tm/sが1.1〜8.7であること、
を満たすことを要する。
【0028】
前記乾燥工程と熱処理工程におけるコード張力が、1本当たり2.9N未満では、特に、熱処理工程での糸の改質が不十分となり、一方、49.0Nを超えると糸が切れる場合が多くなり、タイヤの成形が難しくなる。このコード張力は、熱処理を充分に行い、かつ糸の切断を防止する観点から、1本当たり、好ましくは9.8〜39.2Nである。
また、前記乾燥工程における乾燥処理温度が100℃未満では、RFL接着剤中の水分が蒸発しにくく、乾燥が不十分となり、一方200℃を超えるとRFL接着剤中の水分の蒸発が一気に起ってしまい、コードに接着剤が均質に付着含浸されないという不具合が生じる。この乾燥処理温度は、乾燥性及び接着剤の均質な付着含浸の観点から、好ましくは120〜190℃、より好ましくは140〜180℃である。
さらに、前記熱処理工程において、Tm/sが1.1未満では処理時間が長いために、コードにやけが生じてしまい、コード強力が低下し、一方Tm/sが8.7を超えると処理時間が短く、接着剤層がコードに十分に被覆されないため、接着性が低下する。このTm/sは、コード強力及び接着性の観点から、好ましくは1.5〜6.5、より好ましくは1.9〜4.5である。なお、熱処理工程における硬化処理温度Tmは、通常150〜260℃程度、好ましくは160〜250℃であり、硬化処理時間は、通常40〜240s程度、好ましくは60〜180sである。
【0029】
本発明で用いるRFL接着剤としては、従来公知の一浴型及び二浴型のいずれも用いることができる。
具体的には、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードを、エポキシ化合物あるいはブロックドイソシアネート化合物を含む第一液で処理した後、レゾルシンとホルムアルデヒドと各種ラテックスと水酸化ナトリウム及び/又はアンモニア水を含む第二液(RFL液)で処理する二浴型の接着方法;トリアリルシアヌレートとレゾルシンとホルムアルデヒドとアンモニア水とから生成する通称N3と呼称される液と、RFL液との混合液で処理する一浴型の接着方法;p−クロルフェノールとホルムアルデヒドとから生成する2,6−ビス(2' ,4' −ジヒドロキシフェニルメチル) −4−クロルフェノールを主成分とする反応生成物と、レゾルシンとホルムアルデヒドとアンモニア水とからなる通称PEXULと呼称される液を、RFL液と混合した液で処理する一浴型の接着方法;特開昭60−72972号等に開示されている、多価フェノールポリサルファイドと、レゾルシン及びホルムアルデヒドの縮合物とをアルカリ下で熟成した液と、RFL液とを混合した液で処理する一浴型の接着方法;などを用いることができる。
なお、前記乾燥処理工程と熱処理工程における加熱緊張処理には、ヒートセット・ゾーン及びノルマライジング・ゾーンを設けるのが良い。
【0030】
当該RFL接着剤としては、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂とゴムラテックスとを含むディップ液が用いられる。
前記ディップ液は、例えばゴムラテックスの存在下で、レゾルシンとホルムアルデヒドとを、又はレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とホルムアルデヒドとを、レゾール化反応によって縮合させることにより、得ることができる。このレゾール化反応は、通常pH8.0以上、好ましくは8.5〜10.0の範囲で実施される。ここで、前記レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とは、ホルムアルデヒド由来の構成単位とレゾルシン由来の構成単位とを含有し、ホルムアルデヒド由来の構成単位が化学量論的に不足する状態を指す。即ちこれにより樹脂は低分子量でかつ可溶性となる。
【0031】
また、前記ゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス及び/又はビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体ラテックスなどを用いることができるが、特にビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体ラテックスが好ましく、ビニルピリジン由来の構成単位、スチレン由来の構成単位及びブタジエン由来の構成単位の質量比が、10:10:80〜20:50:30であることが望ましい。
このビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体ラテックスは市販品として入手することが可能であり、例えば、日本A&L社製、商品名「PYRATEX」、固形分41質量%のものが挙げられる。
【0032】
本発明においては、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体ラテックスを単独で用いても良いし、本発明の効果が損なわれない範囲で、他のゴムラテックス一種以上を適宜併用することができる。
他のゴムラテックスとしては、例えばビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体をカルボキシ基等で変性した変性ラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス及びその変性ラテックス、天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス、ブチルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスの他、被着ゴムに配合されるゴム成分と同種のゴム成分を水又は有機溶媒に分散させて調製したラテックス等を用いることができる。
【0033】
上記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体は、ビニルピリジン系化合物と、スチレン系化合物と、ブタジエン化合物とを三元共重合させたものである。ここで、ビニルピリジン系化合物は、ビニルピリジンと、該ビニルピリジン中の水素原子が置換基で置換された置換ビニルピリジンとを包含する。該ビニルピリジン系化合物としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられ、これらの中でも、2−ビニルピリジンが好ましい。これらビニルピリジン系化合物は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0034】
上記スチレン系化合物は、スチレンと、該スチレン中の水素原子が置換基で置換された置換スチレンとを包含する。該スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。これらスチレン系化合物は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
上記ブタジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらブタジエン化合物は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0035】
前記二浴型の接着方法において、第一液に用いられるエポキシ化合物としては、ジエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、グリセロール・ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン・ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール・ポリグリシジルエーテル、ジグリセロール・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
また、前記二浴型の接着方法において、第一液に用いられるブロックドイソシアネート化合物は、イソシアネート化合物の遊離イソシアネート基を、熱解離ブロック剤で封鎖したものであり、常温では水と反応しないが、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生される。
ブロックドイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトリレンジイソシアネート(TDI)などの有機ポリイソシアネート化合物を、ブロック剤でブロックしたものが、好ましく用いられる。上記ブロック剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、クロルフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等のフェノール類;イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の第2級又は第3級のアルコール;ジフェニルアミン等の芳香族第2級アミン類;フタル酸イミド類;δ−バレロラクタム等のラクタム類;ε−カプロラクタム等のカプロラクタム類;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステル等の活性メチレン化合物;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のケトオキシム類;3−ヒドロキシピリジン等の塩基性窒素化合物及び酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ブロック剤としてはフェノール、ε−カプロラクタム及びケトオキシムが好適である。
【0037】
本発明において、前記のようにしてRFL接着剤を塗布後、乾燥硬化処理されてなる補強繊維コードの該接着剤の付着量は、処理前のコードの質量に対して、1.5〜9.0質量%であることが好ましい。この付着量が1.5質量%以上であれば良好な接着性を発揮することができ、9.0質量%以下であればコード硬さが高くなることに起因するコード強力低下の発生を抑制することができる。より好ましい付着量は2.5〜7.0質量%である。
本発明においては、カーカスプライを構成する補強繊維コードとしては、下記式(1)で表される撚り係数Nが、下記式(2)の関係を満たすものが好ましい。
N=n×(0.125D/ρ)1/2×10-3 ・・・(1)
0.34≦N ・・・(2)
[式中、nは上撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス、ρは少なくともポリケトン繊維を50質量%含む繊維の密度(g/cm3)を示す。]
撚り係数Nが0.34以上であれば、カーカスプライとして必要な耐疲労性を確保することができる。撚り係数Nとしては、式(2−a)
0.6≦N≦0.9 ・・・(2−a)
を満たすことがより好ましい。撚り係数Nが0.9以下であれば撚糸の撚り戻りによる作業性の悪化を抑制することができる。さらに好ましい撚り係数Nは、0.7≦N≦0.8の範囲である。
【0038】
本発明においては、カーカスプライを構成する補強繊維コードの打ち込み本数が、30本〜60本/50mmであることが好ましい。カーカスプライを構成する補強繊維コードの打ち込み本数を上記範囲にすることによってカーカスの強力及び耐久性を得ることができる。 なお、打ち込み本数が60本/50mmを超えても、打ち込みが可能であれば特に制限はされない。
さらに、少なくともポリケトン繊維を50質量%含むカーカスプライを構成する補強繊維コードは、繊度が500〜2000dtexのフィラメント束を2〜3本撚り合わせることが好ましい。
補強繊維コードに用いるコードの繊度を上記範囲にすることによって弾性率及び熱収縮応力を確保できるとともに打ち込みを密にすることができる。また、フィラメントの束は2〜3本撚り合わせることが好ましい。
【0039】
(補強繊維コードの作用)
本発明の空気入りタイヤにおいては、カーカスプライを構成する補強繊維コードとして、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードにRFL接着剤を塗布し、乾燥硬化処理したものを用いることにより、一般のレーヨン繊維を用いた補強コードを使用したカーカスプライに比べて、通常内圧走行時のタイヤの縦バネ定数を維持しつつ、ランフラット走行時の縦バネ定数を向上させることができる。その結果、本発明に係る補強繊維コードを適用したカーカスプライを空気入りタイヤに用いることで、通常走行時のタイヤ乗り心地を維持しつつ、ランフラット耐久性を向上させることができる。これは、タイヤに空気が充填された状態でコードに発生する引張り歪よりも、ランフラット走行時にコードに発生する引張り歪の方が大幅に大きいことを利用した作用である。
また、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含む補強繊維コードは、レーヨン繊維を用いた補強繊維コードに比べて高強度であるため、カーカスプライにおける補強繊維コードの配列本数を減少させても、ランフラット走行時のタイヤの縦バネ定数を維持して、ランフラット耐久性能を維持することができる。一方、補強繊維コードの配列本数を減らすことで、通常走行時のタイヤの縦バネ定数を低下させて、乗り心地を改善することも可能である。
【0040】
[ゴム組成物]
本発明の空気入りタイヤにおいては、前述したように、カーカスプライを構成する補強繊維コードとして、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードにRFL接着剤を塗布し、乾燥硬化処理したものを用いることにより、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させることが可能であるが、さらに、以下に示す特定の加硫ゴム物性を有するゴム組成物を、補強ゴムとして、タイヤ部材の少なくとも一つ、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに使用することにより、相乗効果によって、ランフラット耐久性を著しく向上させることが可能となる。
【0041】
図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面図を示す模式図である。
図1において、本発明の空気入りタイヤの好適な実施態様は、一対のビードコア1、1'(1’は図示せず)間にわたってトロイド状に連なり、両端部が該ビードコア1をタイヤ内側から外側へ巻き上げられる少なくとも1枚のラジアルカーカスプライからなるカーカス層2と、該カーカス層2のサイド領域のタイヤ軸方向外側に配置されて外側部を形成するサイドゴム層3と、該カーカス層2のクラウン領域のタイヤ径方向外側に配置されて接地部を形成するトレッドゴム層4と、該トレッドゴム層4と該カーカス層2のクラウン領域の間に配置されて補強ベルトを形成するベルト層5と、該カーカス層2のタイヤ内方全面に配置されて気密膜を形成するインナーライナー6と、一方の該ビードコア1から他方の該ビードコア1'へ延びる該カーカス層2本体部分と該ビードコア1に巻き上げられる巻上部分との間に配置されるビードフィラー7と、該カーカス層のサイド領域の該ビードフィラー7側部からショルダー区域10にかけて、該カーカス層2と該インナーライナー6との間に、タイヤ回転軸に沿った断面形状が略三日月形である、少なくとも1枚のサイド補強層8とを具える空気入りタイヤである。この空気入りタイヤのサイド補強層8及び/又はビードフィラー7に本発明に係るゴム組成物を用いることにより、本発明の空気入りタイヤは、上述の作用効果を奏することができる。
【0042】
前述した本発明の空気入りタイヤにおいては、サイド補強層8及び/又はビードフィラー7に、(A)ゴム成分と、その100質量部に対し、(B)カーボンブラック55質量部以上を含み、かつ加硫ゴム物性において100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上及び正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を用いることができる。
((A)ゴム成分)
本発明に係るゴム組成物における(A)ゴム成分としては、共役ジエン系重合体をアミン変性したアミン変性共役ジエン系重合体を含むものを好ましく用いることができ、このようなアミン変性共役ジエン系重合体を30質量%以上、好ましくは50質量%以上の割合で含むものを用いることができる。ゴム成分が上記変性共役ジエン系重合体を30質量%以上含むことにより、得られるゴム組成物は低発熱化し、ランフラット走行耐久性が向上した空気入りタイヤ与えることができる。
【0043】
このアミン変性共役ジエン系重合体としては、分子内に、変性用官能基として、アミン系官能基であるプロトン性アミノ基及び/又は脱離可能基で保護されたアミノ基を導入したものが好ましく、さらにケイ素原子を含む官能基を導入したものが好ましく挙げられる。
前記ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合してなるシラン基を挙げることができる。
このような変性用官能基は、共役ジエン系重合体の重合開始末端、側鎖及び重合活性末端のいずれかに存在すれば良いが、本発明においては、好ましくは重合末端、より好ましくは同一重合活性末端に、プロトン性アミノ基及び/又は脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合したケイ素原子、特に好ましくは、1又は2個のヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合したケイ素原子とを有するものである。
【0044】
前記プロトン性アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基及びそれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
一方、脱離可能基で保護されたアミノ基としては、例えばN,N−ビス(トリヒドロカルビルシリル)アミノ基及びN−(トリヒドロカルビルシリル)イミノ基を挙げることができ、好ましくはヒドロカルビル基が炭素数1〜10のアルキル基であるトリアルキルシリル基を挙げることができ、特に好ましくはトリメチルシリル基を挙げることができる。
脱離可能基で保護された1級アミノ基(保護化一級アミノ基ともいう。)の例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された2級アミノ基の例としてはN−(トリメチルシリル)イミノ基を挙げることができる。このN−(トリメチルシリル)イミノ基含有基としては、非環状イミン残基、及び環状イミン残基のいずれであっても良い。
【0045】
上記したアミン変性共役ジエン系重合体のうち、充填材の分散性を向上させる観点より、1級アミノ基で変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られた、保護化一級アミノ基で変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体が好適である。
【0046】
<共役ジエン系重合体>
変性に用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物単独重合体であっても良く、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であっても良い。
前記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上組み合わせて用いても良いが、これらの中で、1,3−ブタジエンが特に好ましい。
また、共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良いが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
前記共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン共重合体が好ましく、ポリブタジエンが特に好ましい。
【0047】
共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミンを反応させて変性させるには、該共役ジエン系重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性又は擬似リビング性を有するものが好ましい。このようなリビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させる反応を挙げることができる。
【0048】
上述のアニオン重合の開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物としては、リチウム化合物が好ましい。リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0049】
前記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応性生物等が挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0050】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0051】
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる。
また、リチウム化合物を重合開始剤として用いた場合には、活性末端を有する共役ジエン系重合体のみならず、活性末端を有する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体も効率良く得ることができる。
【0052】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。
また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は55質量%以下の範囲が好ましい。
【0053】
また、所望により用いられるランダマイザーとは共役ジエン系重合体のミクロ構造の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレン重合体における3,4結合の増加等、あるいは共役ジエン化合物一芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエンースチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等の作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、オキソラニルプロパンオリゴマー類[特に2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパンを含む物等]、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタン等のエーテル類及び三級アミン類等を挙げることができる。また、カリウムtert−アミレート、カリウムtert−ブトキシド等のカリウム塩類、ナトリウムtert−アミレート等のナトリウム塩類も用いることができる。
【0054】
これらのランダマイザーは、一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0055】
<変性剤>
本発明においては、上記のようにして得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、変性剤として、保護化一級アミン化合物を反応させることにより、一級アミン変性共役ジエン系重合体を製造することができる。上記保護化一級アミン化合物としては、保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適である。
当該変性剤として用いられる保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン又は1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0056】
また、変性剤としては、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシランなどの保護化二級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのイミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物なども挙げられる。
これらの変性剤は、一種単独で用いても良く、二種以上組み合わせて用いても良い。またこの変性剤は部分縮合物であっても良い。
ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
【0057】
前記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・共役ジエン系重合体である。同使用量は、さらに好ましくは1〜100mmol/kg・共役ジエン系重合体であり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・共役ジエン系重合体である。ここで、共役ジエン系重合体とは、製造時又は製造後、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を前記範囲にすることによって、充填材、特にカーボンブラックの分散性に優れ、加硫後の耐破壊特性、低発熱性が改良される。
なお、前記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
また、変性剤は、重合開始末端や重合終了末端以外に重合体主鎖や側鎖のいずれに結合させることもできるが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0058】
<縮合促進剤>
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。
このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかの属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
【0059】
縮合促進剤としては、具体的には、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ペンタンジオラト)チタン、テトラキス(1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−メチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−プロピル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−ブチル−1,3−ヘプタンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンオリゴマー、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、ビス(オレート)ビス(2−エチルヘキサノエート)チタン、チタンジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタントリブトキシステアレート、チタントリプロポキシステアレート、チタントリプロポキシアセチルアセトネート、チタンジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリプロポキシ(エチルアセトアセテート)、チタンプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタントリブトキシアセチルアセトネート、チタンジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタントリブトキシエチルアセトアセテート、チタンブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタンジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタンオキサイド、ビス(ラウレート)チタンオキサイド、ビス(ナフテネート)チタンオキサイド、ビス(ステアレート)チタンオキサイド、ビス(オレエート)チタンオキサイド、ビス(リノレート)チタンオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタン、テトラキス(ラウレート)チタン、テトラキス(ナフテネート)チタン、テトラキス(ステアレート)チタン、テトラキス(オレエート)チタン、テトラキス(リノレート)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタンテトラ(ラクテート)等のチタンを含む化合物を挙げることができる。中でも、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)が好ましい。
【0060】
また、縮合促進剤としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテネート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキソキシ)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテネート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
【0061】
また、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキソキシ)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテネート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
【0062】
上述の縮合促進剤の内、チタン化合物が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、又はチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。
この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率良く進行する。
【0063】
本発明における縮合反応は、上述の縮合促進剤と、水蒸気又は水の存在下で進行する。水蒸気の存在下の場合として、スチームストリッピングによる脱溶媒処理が挙げられ、スチームストリッピング中に縮合反応が進行する。
また、縮合反応を水溶液中で行っても良く、縮合反応温度は30〜180℃が好ましく、85〜180℃がより好ましく、さらに好ましくは100〜170℃、特に好ましくは110〜150℃である。
縮合反応時の温度を前記範囲にすることによって、縮合反応を効率良く進行完結することができ、得られる変性共役ジエン系重合体の経時変化によるポリマーの老化反応等による品質の低下等を抑えることができる。
【0064】
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。
なお、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
縮合反応を水溶液中で行う場合の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器等の装置を用いて連続式で行っても良い。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行っても良い。
本発明に係る変性共役ジエン系重合体の変性剤由来の一級アミノ基は、上述のように脱保護処理を行うことによって生成する。上述したスチームストリッピング等の水蒸気を用いる脱溶媒処理以外の脱保護処理の好適な具体例を以下に詳述する。
すなわち、一級アミノ基上の保護基を加水分解することによって遊離した一級アミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。なお、該縮合処理を含む段階から、脱溶媒して乾燥ポリマーまでのいずれかの段階において必要に応じて変性剤由来の保護された一級アミノ基の脱保護処理を行うことができる。
【0065】
<変性共役ジエン系重合体>
このようにして得られた変性共役ジエン系重合体はムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が10未満の場合は耐破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
また、前記変性共役ジエン系重合体を配合した本発明に係る未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,130℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは30〜100である。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であることが好ましく、1.1〜2.7であることがより好ましい。
変性共役ジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)を前記範囲内にすることで該変性共役ジエン系重量体をゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練りが容易で、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
【0066】
また、本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがさらに好ましい。変性共役ジエン系重合体の数平均分子量を前記範囲内にすることによって加硫物の弾性率の低下、ヒステリシスロスの上昇を抑えて優れた耐破壊特性を得るとともに、該変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の優れた混練作業性が得られる。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系重合体は一種用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0067】
<他のゴム成分>
(A)ゴム成分において、上記変性共役ジエン系重合体と併用されるゴム成分としては、天然ゴム及び他のジエン系合成ゴムが挙げられ、他のジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)及びこれらの混合物が挙げられる。また、他のジエン系合成ゴムの一部又は全てが多官能型変性剤、例えば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているジエン系変性ゴムであることがより好ましい。
【0068】
((B)カーボンブラック)
本発明に係るゴム組成物においては、(B)成分としてカーボンブラックを、前述の(A)ゴム成分100質量部に対して、55質量部以上の割合で用いることを要す。カーボンブラックの量が55質量部未満では充分な補強効果が発揮されず、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、後で説明する100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上にならない場合がある。また、カーボンブラックの量が多すぎると、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、後で説明する正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下にならない場合がある。したがって、当該カーボンブラックの好ましい量は55〜80質量部であり、より好ましくは55〜70質量部であり、特に好ましくは60〜70質量部である。
当該カーボンブラックとしては、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性が、上記の加硫ゴム物性を満たすためには、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード及びSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、特にFEF級グレードが低発熱を達成する上で好適である。
【0069】
さらに、本発明に係るゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。
上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部である。0.1質量部未満では加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性、低発熱性が低下するおそれがあり、10.0質量部を超えるとゴム弾性が失われる原因となる。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系、あるいはTOT(テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド)等のチウラム系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0070】
また、本発明に係るゴム組成物で使用できる軟化剤として用いるプロセス油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、100質量部以下であれば加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)が悪化するのを抑制することができる。
さらに、本発明に係るゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えば3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3〜3.0質量部である。
【0071】
(ゴム組成物の加硫ゴム物性)
本発明に係るゴム組成物は、加硫ゴム物性として、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上であることが肝要である。この弾性率(M100)が10MPa未満では、ランフラット走行時のタイヤの撓み保持が不充分となり、タイヤのランフラット走行耐久性が低下する。好ましいM100は10.5MPa以上であり、その上限は特に制限はないが、通常13MPa程度である。
なお、上記100%伸張時弾性率(M100)は、下記の方法で測定した値である。
<100%伸張時弾性率(M100)の測定方法>
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートについて、JIS K 6251に基づき、100%伸張時弾性率を測定する。
【0072】
また、上記加硫ゴム物性として、正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値[Σtanδ(28〜150℃)]が6.0以下であることが肝要である。このtanδのΣ値が6.0を超えると、ランフラット走行時のタイヤの発熱が大きく、タイヤのランフラット走行耐久性が低下する。Σtanδ(28〜150℃)の下限に特に制限はないが、通常5程度である。
なお、上記Σtanδ(28〜150℃)は、下記の方法で測定した値である。
<Σtanδ(28〜150℃)の測定方法>
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。この試料について、上島製作所社製スペクトロメーターを用い、チャック間距離10mm、初期歪200μm、動的歪1%、周波数52Hz、測定開始温度25〜200℃の測定条件にて正接損失tanδを測定し、図2に示すように、温度とtanδとの関係をグラフ化し、斜線部分の面積を求め、その値をΣtanδ(28〜150℃)とする。
【0073】
(ゴム組成物の調製、空気入りタイヤの作製)
本発明に係るゴム組成物は、前記配合処方により、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、図1における空気入りタイヤのサイド補強層8及び/又はビードフィラー7として用いられる。
本発明の空気入りタイヤは、カーカス層2に用いられるカーカスプライを構成する補強繊維コードとして、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードにRFL接着剤を塗布し、前述した特定の条件で乾燥硬化処理してなるものを用い、かつ好ましくは前述の本発明に係るゴム組成物をサイド補強層8及び/又はビードフィラー7に用いて、通常のランフラットタイヤの製造方法によって製造することができる。
このようにして得られた本発明の空気入りタイヤは、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させたものとなる。
【実施例】
【0074】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、諸特性は下記の方法に従って測定した。
《未変性又は変性共役ジエン系重合体の物性》
・ミクロ構造の分析法
赤外法(モレロ法)により、ビニル結合含有量(%)を測定した。
・数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定
GPC[東ソー製、HLC−8020]により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL[東ソー製]で、溶離液はテトラヒドロフランである。
【0075】
《ゴム組成物の加硫ゴム物性》
100%伸張時弾性率(M100)及び正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値[Σtanδ(28〜150℃)]は、明細書本文に記載した方法に従って測定した。
《空気入りタイヤの評価》
・ランフラット耐久性
各供試タイヤ(タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車ラジアルタイヤ)を常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから38℃の室内中に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧として、荷重4.17kN(425kg)、速度89km/h、室内温度38℃の条件でドラム走行テストを行なった。各供試タイヤの故障発生までの走行距離を測定し、比較例1の走行距離を100として、以下の式により、指数表示した。指数が大きい程、ランフラット耐久性が良好である。
ランフラット耐久性(指数)=(供試タイヤの走行距離/比較例1のタイヤの走行距離)×100
・乗り心地性
各供試タイヤを乗用車に装着し、専門のドライバー2名により乗り心地性のフィーリングテストを行い、1−10の評点をつけその平均値を求め、比較例1のタイヤの結果を100として指数表示した。指数が大きいほど、乗り心地性が良好である。
【0076】
製造例1 ポリケトン繊維の製造
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65質量%/塩化ナトリウム10質量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度8質量%のドープを得た。
このドープを80℃に加温し、20μm焼結フィルターでろ過した後に、80℃に保温した紡口径0.10mmφ、50ホールの紡口より10mmのエアーギャップを通した後に5質量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に吐出量2.5cm3/分の速度で押出し、速度3.2m/分で引きながら凝固糸条とした。
引き続き凝固糸条を濃度2質量%、温度25℃の硫酸水溶液で洗浄し、さらに30℃の水で洗浄した後に、速度3.2m/分で凝固糸を巻取った。
この凝固糸にIRGANOX1098(Ciba Specialty Chemicals社製)、IRGANOX1076(Ciba Specialty Chemicals社製)をそれぞれ0.05質量%ずつ(対ポリケトンポリマー)含浸せしめた後に、該凝固糸を240℃にて乾燥後、仕上剤を付与して未延伸糸を得た。
【0077】
なお、仕上剤としては、オレイン酸ラウリルエステル/ビスオキシエチルビスフェノールA/ポリエーテル(プロピレンオキシド/エチレンオキシド=35/65:分子量20000)/ポリエチレンオキシド10モル付加オレイルエーテル/ポリエチレンオキシド10モル付加ひまし油エーテル/ステアリルスルホン酸ナトリウム/ジオクチルリン酸ナトリウム=30/30/10/5/23/1/1(質量%比)の組成のものを用いた。
得られた未延伸糸を1段目を240℃で、引き続き258℃で2段目、268℃で3段目、272℃で4段目の延伸を行った後に、引き続き5段目に200℃で1.08倍(延伸張力1.8cN/dtex)の5段延伸を行い、巻取機にて巻取った。未延伸糸から5段延伸糸までの全延伸倍率は17.1倍であった。
【0078】
製造例2 一級アミン変性ポリブタジエン
(1)ポリブタジエンの製造
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(0.0285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行なった。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液を、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、ポリブタジエンを得た。得られたポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150,000、Mw/Mnは1.1であった。
(2)一級アミン変性ポリブタジエンの製造
上記(1)で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、一級アミノ基が保護されたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行った。最後に反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された一級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、一級アミン変性ポリブタジエンを得た。得られた変性ポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及び第一アミノ基含有量を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150,000、Mw/Mnは1.2、一級アミノ基含有量は4.0mmol/kgであった。
【0079】
製造例3 DMBTESPA変性ポリブタジエン
製造例2において、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)をN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン3.364mmolに変更した以外は、製造例2と同様にして、DMBTESPA変性ポリブタジエンを得た。
【0080】
実施例1〜5及び比較例1
(1)カーカスプライ用補強繊維コードの作製
製造例1で得たポリケトン繊維(実施例1〜5)及びレーヨン繊維(比較例1)からなる、第1表に示すコード構造を有する各コードに、下記の組成を有するRFL接着剤を含む一浴型ディップ液を塗布したのち、乾燥工程と熱処理工程を施し、乾燥硬化処理し、カーカスプライ用補強繊維コードを作製した。
なお、N=n×(0.125D/ρ)1/2×10-3で表されるコードの撚り係数Nは0.83であった。上撚り数nが47回/10cm、トータル表示デシテックスDが3340dtex、繊維密度ρが1.33g/cm3であった。
また、乾燥工程及び熱処理工程における、1本当たりのコード張力、乾燥工程における乾燥処理温度、熱処理工程におけるTm/s及び接着剤付着量は第1表に示すとおりである。
<一浴型ディップ液の組成>
ホルムアルデヒド(F)とレゾルシン(R)とのモル比(F/R)が約2.0(1.8〜2.2が好ましい。)で、全ラテックスの固形分質量(L)に対するレゾルシン及びホルムアルデヒド総質量(RF)の割合(RF/L)が約20質量%(15〜25質量%が好ましい。)で、全ラテックス固形分質量中の、ビニルピリジン(VP)ラテックスの固形分質量の割合が約41質量%、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックスの固形分質量の割合が約40質量%で、水酸化ナトリウムとレゾルシン(R)とのモル比(NaOH/R)が約0.3である一浴型ディップ液を用いた。
(2)空気入りタイヤの製作及び評価
上記(1)で得た補強繊維コードを用いたカーカスプライ1層のみからなるタイヤサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って製作し、ランフラット耐久性及び乗り心地性を評価した。結果を第1表に示す。
なお、上記実施例1〜5及び比較例1のタイヤは、いずれもサイド補強層8及びビードフィラー7に第2表のゴム組成物Aを用いた。サイド補強層8の補強ゴムゲージは、いずれも5.7mmとした。また、いずれのタイヤのカーカスプライを構成する補強繊維コードの打ち込み本数も45本/50mmであった。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

[注]
1)天然ゴム:TSR20
2)未変性ポリブタジエン:JSR社製、BR01
3)一級アミン変性ポリブタジエン:製造例2で得られたもの
4)DMBTESPA変性ポリブタジエン:製造例3で得られたもの
5)カーボンブラック:FEF(N550)、旭カーボン社製、商品名「旭#60」
6)プロセスオイル:アロマティックオイル、富士興産社製、商品名「アロマックス#3」
7)老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」
8)加硫促進剤DZ:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDZ」
9)加硫促進剤TOT:テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーTOT−N」
【0083】
実施例6〜8
実施例4の補強繊維コードを用いたカーカスプライ1層(カーカスプライを構成する補強繊維コードの打ち込み本数は45本/50mm)のみからなり、第2表のゴム組成物B〜Dをサイド補強層8及びビードフィラー7に用いた実施例6〜8のタイヤサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤを常法に従って製作し、ランフラット耐久性及び乗り心地性を評価した。結果を第3表に示す。
なお、ゴム組成物Aを用いたタイヤは、実施例4のタイヤであるが、実施例6〜8のタイヤとの比較のため第3表に再掲した。サイド補強層8の補強ゴムゲージは第3表に記載された値による。
【0084】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の空気入りタイヤは、ポリケトン繊維を含む補強繊維コードをカーカスプライに適用し、かつ好ましくは、特定の性状を有するゴム組成物を、タイヤ部材の少なくとも一つ、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに用いることにより、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面を示す模式図である。
【図2】ゴム組成物の加硫ゴム物性におけるΣtanδ(28〜150℃)を求めるための説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1、1' ビードコア
2 カーカス層
3 サイドゴム層
4 トレッドゴム層
5 ベルト層
6 インナーライナー
7 ビードフィラー
8 サイド補強層
10 ショルダー区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコア、カーカスプライ、トレッドゴム層、インナーライナー、サイド補強層及びビードフィラーを具備する空気入りタイヤであって、前記カーカスプライを構成する補強繊維コードが、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂−ゴムラテックス接着剤の塗布後に、乾燥工程と熱処理工程を経て乾燥硬化処理されてなる、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%含むコードであり、かつ下記の条件
(1)前記乾燥工程と熱処理工程におけるコード張力が、1本当たり2.9〜49.0Nであること、
(2)前記乾燥工程における乾燥処理温度が100〜200℃であること、
(3)前記熱処理工程における硬化処理温度をTm(℃)、硬化処理時間をs(秒)とした場合、Tm/sが1.1〜8.7であること、
を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂−ゴムラテックス接着剤塗布後、乾燥硬化処理されてなる補強繊維コードの該接着剤の付着量が、処理前のコードの質量に対して、1.5〜9.0質量%である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
カーカスプライを構成する補強繊維コードが、下記式(1)で表される撚り係数Nが、下記式(2)の関係を満たす請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
N=n×(0.125D/ρ)1/2×10-3 ・・・(1)
0.34≦N ・・・(2)
[式中、nは上撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス、ρは少なくともポリケトン繊維を50質量%含む繊維の密度(g/cm3)を示す。]
【請求項4】
撚り係数Nが、下記式(2−a)
0.6≦N≦0.9 ・・・(2−a)
の関係を満たす請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
カーカスプライを構成する補強繊維コードの打ち込み本数が、30〜60本/50mmである請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
カーカスプライを構成する補強繊維コードが、繊度500〜2000dtexのフィラメント束を撚ったものからなる請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
ポリケトン繊維を構成するポリケトンが、下記一般式(3)
【化1】

[式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の残基を示し、繰り返し単位において同一でも異なっていても良い。]
で表される繰り返し単位を有する請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
一般式(3)におけるAが、エチレン基である請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
(A)ゴム成分と、その100質量部に対し、(B)カーボンブラック55質量部以上を含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上、及び正接損失(tanδ)の28〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を、タイヤ部材の少なくとも一つに用いてなる請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
ゴム組成物において、(B)カーボンブラックが、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード及びSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種である請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
(B)カーボンブラックがFEF級グレードである請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
ゴム組成物において、(A)ゴム成分が、アミン変性共役ジエン系重合体を含むものである請求項9〜11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
アミン変性共役ジエン系重合体が、プロトン性アミン変性共役ジエン系重合体である請求項12に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
アミン変性共役ジエン系重合体が、一級アミン変性共役ジエン系重合体である請求項12又は13に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
一級アミン変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られたものである請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
共役ジエン系重合体が、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られたものである請求項15に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
共役ジエン系重合体が、ポリブタジエンである請求項16に記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
保護化一級アミン化合物が、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランである請求項15〜17のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項19】
サイド補強層に、前記ゴム組成物を用いてなる請求項9〜18のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項20】
ビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる請求項9〜18のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項21】
サイド補強層及びビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる請求項9〜18のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−116027(P2010−116027A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290130(P2008−290130)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】