説明

空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構

【課題】シリンダチューブの減速開始位置に取り付けた位置検出センサーの出力で電磁弁を切り換えるようにし、周知の空気圧シリンダの外部に付設する装置によって、ピストンの移動速度をストロークエンドで減速停止させるようにした減速機構を提供する。
【解決手段】空気圧シリンダ10におけるピストン12の両側の圧力室の給排気用のポートのうち、排気側となるポート17を、速度制御弁34a,34bを有する管路20を介して低速域制御用電磁弁31及び全閉位置を有する3位置の高速域制御用電磁弁32に接続し、シリンダチューブ11における減速開始位置に位置検出センサー35を設置し、コントローラ40により給気側のポート16に両電磁弁を通して給気してピストンを駆動し、上記センサーによるピストン12の検出信号に基づいて、高速域制御用電磁弁を全閉位置に切り換え、ピストンを低速域制御用電磁弁のみにより減速移動させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチューブに取り付けた位置検出センサーの出力で電磁弁を切り換えることにより、ピストンの移動速度をストロークエンド近傍で減速させて停止させるようにした空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダチューブ内にピストンを嵌挿してそれを圧縮空気により駆動する空気圧シリンダの上記ピストンの駆動を、該ピストンにより圧縮されて排気側圧力室内に残留する圧縮空気により緩衝的に停止させるクッション装置であって、シリンダチューブの端部の排気側圧力室を形成するカバーに設けたシリンダチューブ側に開く開口に、口部にクッションパッキンを取り付けかつ内部に圧縮空気の排出用の流路を有する凹部を設け、ピストンに連設したクッションリングがその凹部に嵌入して、ピストンの排気側圧力室と上記凹部に通じる排出用の流路との直接的な連通が遮断されたときの該圧力室内の圧縮空気によって、ピストンにクッション作用を付与するようにしたクッション装置において、上記排気側圧力室から直接的に外部に圧縮空気を排出するクッション流路にリリーフ弁を設けると共に、上記クッションリングに、クッションパッキンとの間に絞り流路を形成する溝あるいは該クッションリング内を通して凹部内に通じる絞り流路を形成する孔を設けたものが開示されている。
【0003】
上記既知のクッション装置では、シリンダチューブの端部のカバーにクッションパッキン、凹部、各種の流路、リリーフ弁等を設け、ピストンにクッションリングを連設することにより、空気圧シリンダ内に当該クッション装置を組み付けるようにしているので、構造が比較的複雑でコストの低減に困難性があり、しかも、故障時等におけるメンテナンスも、通常は熟練者がその空気圧シリンダを解体して行う必要があり、ユーザーにおいて簡易に行うことができないものである。また、上述したように空気圧シリンダ内にクッション装置を組み付けているので、既存の空気圧シリンダにクッション装置を組み付けたい場合でもそれを行うことができず、クッション装置を備えた空気圧シリンダと交換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−130213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、シリンダチューブに取り付けた位置検出センサーの出力で電磁弁を切り換えることにより、ピストンの移動速度をストロークエンドで減速させて停止させるようにした空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構を提供することにあり、更に具体的には、空気圧シリンダの外部に付設する装置によって、当該空気圧シリンダのピストンを減速停止でき、したがって、メンテナンスも容易で、既存の空気圧シリンダに対しても簡易に付設できるようにしたピストンの減速機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、シリンダチューブ内にピストンを摺動自在に嵌挿した複動の空気圧シリンダにおける上記ピストンの両側の第1及び第2の圧力室に、それぞれ圧縮空気を給排する給排気用のポートを設け、上記給排気用の両ポートは、少なくともピストンの往動時に排気側となるポートには速度制御弁を有する管路を介して、給排流路を切り換えるための2位置5ポートの低速域制御用電磁弁、及び全閉位置を有する3位置5ポートの高速域制御用電磁弁に接続し、上記各速度制御弁は、上記第1または第2の圧力室側への流れを制限しないが上記各電磁弁側への流れを阻止する逆止弁と、可変絞り弁とを並列に接続したものであり、上記シリンダチューブ外面における往動ストロークの減速開始位置にピストンの近接を検出する位置検出センサーを設置して、該位置検出センサーによるピストンの検出信号に基づいて上記両電磁弁を制御するコントローラを備え、該コントローラは、ピストンの往動時に、給気側となるポートに両電磁弁を通して給気するように該両電磁弁を駆動し、上記位置検出センサーからの出力に基づいて高速域制御用電磁弁を全閉位置に切り換えて、ピストンを低速域制御用電磁弁のみにより減速移動させる制御を行うものとしたことを特徴とする空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、シリンダチューブ内にピストンを摺動自在に嵌挿した複動の空気圧シリンダにおける上記ピストンの両側の第1及び第2の圧力室に、それぞれ圧縮空気を給排する給排気用のポートを設け、上記給排気用の両ポートは、それぞれ速度制御弁を有する管路を介して、給排流路を切り換えるための2位置5ポートの低速域制御用電磁弁、及び全閉位置を有する3位置5ポートの高速域制御用電磁弁に接続し、上記各速度制御弁は、上記第1または第2の圧力室側への流れを制限しないが上記各電磁弁側への流れを阻止する逆止弁と、可変絞り弁とを並列に接続したものであり、上記シリンダチューブ外面における往動及び復動ストロークの減速開始位置にピストンの近接を検出する位置検出センサーをそれぞれ設置して、該位置検出センサーによるピストンの検出信号に基づいて上記両電磁弁を制御するコントローラを備え、該コントローラは、ピストンの往復駆動時に、給気側となるポートに両電磁弁を通して給気するように該両電磁弁を駆動し、ピストンの往動時には往動ストロークの減速開始位置、同復動時には復動ストロークの減速開始位置の上記位置検出センサーからの出力に基づいて、高速域制御用電磁弁を全閉位置に切り換えて、ピストンを低速域制御用電磁弁のみにより減速移動させる制御を行うものとしたことを特徴とする空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上に詳述した本発明によれば、シリンダチューブに取り付けた位置検出センサーの出力で電磁弁を切り換えることにより、ピストンの移動速度をストロークエンドで減速させて停止させるようにした空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構を提供することができ、更に具体的には、空気圧シリンダの外部に付設する装置によって、当該空気圧シリンダのピストンを減速停止でき、したがって、メンテナンスも容易で、既存の空気圧シリンダに対しても簡易に付設できるようにしたピストンの減速機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構の実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係るピストンの減速機構を備えた空気圧シリンダ装置の実施例を示している。
同図に示す上記空気圧シリンダ装置は、概略的には、シリンダチューブ11内にピストンロッド13を固定したピストン12を摺動自在に嵌挿している複動の空気圧シリンダ10と、該空気圧シリンダ10における上記ピストン12のヘッド側の第1の圧力室14及びロッド側の第2の圧力室15にそれぞれ通じる給排気用のポート16,17に接続された管路20と、それらの管路20を介して上記ポート16,17に接続された2位置5ポートの低速域制御用電磁弁31及び3位置5ポートの高速域制御用電磁弁32とを備えている。
【0011】
更に具体的には、上記給排気用のポート16,17に接続された圧縮空気を給排するための管路20は、ヘッド側の第1管路21及びロッド側の第2管路22、並びに、それらの第1,第2管路21,22からそれぞれ分岐された第1分岐管路21a,21b及び第2分岐管路22a,22bからなり、上記ヘッド側の第1管路21及びロッド側の第2管路22から分岐された第1及び第2分岐管路21a,22aを介して、上記2位置5ポートの低速域制御用電磁弁31が前記ポート16,17に接続され、また、上記第1及び第2管路21,22から分岐された第1及び第2分岐管路21b,22bを介して、上記3位置5ポートの高速域制御用電磁弁32が前記ポート16,17に接続されている。
【0012】
上記低速域制御用電磁弁31は、ヘッド側の第1分岐管路21a及び第1管路21と、ロッド側の第2分岐管路22a及び第2管路22とを介して、上記ヘッド側の給排気用のポート16とロッド側の給排気用のポート17のいずれか一方を空気圧源38に、他方を大気に開放できるように接続したものである。また、上記高速域制御用電磁弁32は、ヘッド側の第1分岐管路21b及び第1管路21と、ロッド側の第2分岐管路22b及び第2管路22とを介して、上記ヘッド側の給排気用のポート16とロッド側の給排気用のポート17のいずれか一方を空気圧源38に、他方を大気に開放するように切り換える切換位置を有し、それらの切換位置の他に、各ポートを全て遮断する全閉位置とを有するものである。
【0013】
更に、上記ヘッド側の第1管路21を分岐した第1分岐管路21a,21bには、それぞれ速度制御弁33a,33bを設け、ロッド側の第2管路22を分岐した第2分岐管路22a,22bには、それぞれ速度制御弁34a,34bを設けている。これらの速度制御弁は、上記第1または第2の圧力室14,15側への流れは制限しないが、各電磁弁31,32側への流れを阻止する逆止弁と、可変絞り弁とを並列に接続したものである。したがって、上記空気圧シリンダ10におけるピストン12の減速機構は、複動の空気圧シリンダ10の排気側の管路で流量を絞って作動速度を制御するメータアウト方式となっている。
【0014】
上記シリンダチューブ11の外面におけるピストン12の往動及び復動ストロークの減速開始位置には、該ピストン12の近接を検出する位置検出センサー35,36をそれぞれ設置し、該位置検出センサー35,36は、それらによるピストン12の検出信号に基づいて上記低速域制御用電磁弁31及び高速域制御用電磁弁32を制御するコントローラ40に接続している。上記2位置5ポートの低速域制御用電磁弁31は、単動ソレノイド、スプリング・リターン方式のものとして、そのソレノイドの駆動が上記コントローラ40で制御され、3位置5ポートの高速域制御用電磁弁32は、複動ソレノイド方式のものとして一対のソレノイドが上記コントローラ40で制御されるものである。
【0015】
上記コントローラ40による空気圧シリンダ10の制御について更に具体的に説明すると、該コントローラ40は、上記ピストン12の往復の各駆動に際し、給気側となるポート16または17に両電磁弁31,32を通して給気し、且つ排気側となるポート17または16を管路20中の速度制御弁を通して排気するように、上記両電磁弁31,32を駆動し、ピストン12の往動時には往動ストロークの減速開始位置、同復動時には復動ストロークの減速開始位置の上記位置検出センサー35,36からのピストン検出出力に基づいて、高速域制御用電磁弁32を全閉位置に切り換え、該ピストン12を低速域制御用電磁弁31のみにより減速移動させる制御を行うもので、上記高速域制御用電磁弁32の全閉により、該電磁弁32から給気側ポートを通して給気側の圧力室14または15への圧縮空気の供給が絶たれると同時に、排気側ポートを通じる排気側の圧力室15または14からの排気が、速度制御弁34aまたは33aと低速域制御用電磁弁31とを通じた排気のみに絞られるので、排気側の圧力室内の残留エアがピストン12により圧縮されて急速に昇圧し、それにより該ピストン12を減速させてストロークエンドに緩衝的に到達させることができる。
【0016】
上述したようにピストン12を緩衝的に減速停止させるためには、上記各速度制御弁において、空気圧シリンダ10の構成や、ピストンロッド13に取り付ける負荷を含む空気圧シリンダ10の稼働条件等に応じて、各可変絞り弁の流量を適切に調整することが必要であり、例えば、ピストンロッド13を突出させる方向にピストン12を駆動するに際しては、該ピストン12が位置検出センサー35に達するまでの駆動速度は速度制御弁34a及び34bにおける各可変絞り弁の流量の合計によって調整し、上記位置検出センサー35を越えた後のピストン12の減速は速度制御弁34aにおける可変絞り弁の開度によって調整することになる。この場合、速度制御弁34bの調整によって高速始動を行えることになる。
また、ピストンロッド13が戻る方向にピストン12を駆動するに際しては、該ピストン12が位置検出センサー36に達するまでの駆動速度は速度制御弁33a及び33bにおける可変絞り弁の流量の合計によって調整し、上記位置検出センサー36を越えた後のピストン12の減速は速度制御弁33aにおける開度によって調整することになる。
【0017】
図示した実施例においては、ピストン12の往復駆動時に、それぞれの減速開始位置に設けた位置検出センサー35,36からの出力に基づいて高速域制御用電磁弁32を全閉位置に切り換え、低速域制御用電磁弁31のみによりピストン12を減速移動させる制御を行うように構成しているが、上記シリンダチューブ11の外面におけるピストン12の往動ストロークの減速開始位置にのみ位置検出センサー35を設置して、ピストンの往動ストロークの場合だけにそれを減速駆動するように構成することができ、例えば、ピストンロッド13を突出させる方向にピストン12を駆動する際にのみ該ピストン12を減速駆動する場合には、図示した実施例の位置検出センサー36が不要になるだけでなく、速度制御弁33a及び33bは必ずしも設ける必要がないものとなる。
【符号の説明】
【0018】
10 空気圧シリンダ
11 シリンダチューブ
12 ピストン
13 ピストンロッド
14,15 圧力室
16,17 ポート
20 管路
31 低速域制御用電磁弁
32 高速域制御用電磁弁
33a,33b,34a,34b 速度制御弁
35,36 位置検出センサー
40 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブ内にピストンを摺動自在に嵌挿した複動の空気圧シリンダにおける上記ピストンの両側の第1及び第2の圧力室に、それぞれ圧縮空気を給排する給排気用のポートを設け、
上記給排気用の両ポートは、少なくともピストンの往動時に排気側となるポートには速度制御弁を有する管路を介して、給排流路を切り換えるための2位置5ポートの低速域制御用電磁弁、及び全閉位置を有する3位置5ポートの高速域制御用電磁弁に接続し、
上記各速度制御弁は、上記第1または第2の圧力室側への流れを制限しないが上記各電磁弁側への流れを阻止する逆止弁と、可変絞り弁とを並列に接続したものであり、
上記シリンダチューブ外面における往動ストロークの減速開始位置にピストンの近接を検出する位置検出センサーを設置して、該位置検出センサーによるピストンの検出信号に基づいて上記両電磁弁を制御するコントローラを備え、
該コントローラは、ピストンの往動時に、給気側となるポートに両電磁弁を通して給気するように該両電磁弁を駆動し、上記位置検出センサーからの出力に基づいて高速域制御用電磁弁を全閉位置に切り換えて、ピストンを低速域制御用電磁弁のみにより減速移動させる制御を行うものとした、
ことを特徴とする空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構。
【請求項2】
シリンダチューブ内にピストンを摺動自在に嵌挿した複動の空気圧シリンダにおける上記ピストンの両側の第1及び第2の圧力室に、それぞれ圧縮空気を給排する給排気用のポートを設け、
上記給排気用の両ポートは、それぞれ速度制御弁を有する管路を介して、給排流路を切り換えるための2位置5ポートの低速域制御用電磁弁、及び全閉位置を有する3位置5ポートの高速域制御用電磁弁に接続し、
上記各速度制御弁は、上記第1または第2の圧力室側への流れを制限しないが上記各電磁弁側への流れを阻止する逆止弁と、可変絞り弁とを並列に接続したものであり、
上記シリンダチューブ外面における往動及び復動ストロークの減速開始位置にピストンの近接を検出する位置検出センサーをそれぞれ設置して、該位置検出センサーによるピストンの検出信号に基づいて上記両電磁弁を制御するコントローラを備え、
該コントローラは、ピストンの往復駆動時に、給気側となるポートに両電磁弁を通して給気するように該両電磁弁を駆動し、ピストンの往動時には往動ストロークの減速開始位置、同復動時には復動ストロークの減速開始位置の上記位置検出センサーからの出力に基づいて、高速域制御用電磁弁を全閉位置に切り換えて、ピストンを低速域制御用電磁弁のみにより減速移動させる制御を行うものとした、
ことを特徴とする空気圧シリンダ装置におけるピストンの減速機構。

【図1】
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【公開番号】特開2011−179616(P2011−179616A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45532(P2010−45532)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】