説明

空港内で航空機の地上運航を補助するための装置

本発明は、航空機の現在位置を決定するための手段(2)と、地図製作データベース(3)と、運航システム(4)と、航空機の現在の方向を決定するための手段(9)と、監視スクリーン(8)上に少なくとも空港の一部の地図と、その地図上に、前記現在位置に対応する個所に位置し、現在の進行方向を指し示す航空機のシンボルとを表示する表示システム(6)とからなる装置(1)に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港内で航空機の地上運航を補助するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(航空機の操縦室内のスクリーンに、特に航空機の現在の位置を示す、空港の地図を表示することを可能にする)航空機の運航機能の面では、航空機が地上にいるときに、その航空機の正確な位置を知ることが必要である。操縦士が見る外部基準に関して、この位置の正確さと更新速度は、安全を確保し、表示された情報の信頼性を裏付けるための決定パラメータである。
【0003】
飛行中に、その位置を決定するために、一般的に、航空機は、GPSやGALILEOや同様のタイプの衛星位置決めシステムに連携している位置決め装置を備える。そのような位置決めシステムは、一般的に、航空機の上に取り付けられたアンテナと、前記アンテナに連結していてそのアンテナが検知した信号を受け取り処理するレシーバとを備える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPSシステムの場合、例えば、機内に搭載されている、飛行運航を目的とした位置決め装置は、一般的に、1秒毎の位置を発信するが、それは、表示上の航空機が動いているという印象を創り上げるほど十分ではない。更に、この位置決め装置が従っている、現在の飛行性能基準は、(一般的に、10メートル未満である)地上での更なる精度への要求に応えないし、(特に、建物の存在や多重反射などの)地上で直面する環境に伴う現象も対象としない。
【0005】
従って、航空機に備えられ、飛行運航に完全に適合するこの位置決め装置は、前記のタイプの空港内運航の面での使用には不十分である。
【0006】
通常の空港内運航機能のもう一つの大きな短所は、特に、操縦士に提示される表示に関する。一般的に、この表示が関係しているのは、航空機の方向を指示することなく、空港地図上の航空機の推定位置、又は、測定された位置で提示される、航空機のシンボルである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、これらの短所を克服することである。本発明は、特に効果的で正確である、空港での航空機の地上運航を補助するための装置に関する。
【0008】
この目的のために、本発明によると、前記装置は、
− 地上に位置する前記航空機の現在位置を決定するための第1の手段と、
− 空港に関する地図製作データからなるデータベースと、
− 少なくとも前記現在位置と前記地図製作データを受け取り、これらのデータを一致させる運航システムと、
− 前記運航システムから情報を受け取り、少なくとも1つの表示スクリーン上に、空港の少なくとも部分的な地図と、その地図上に、前記現在位置に位置する航空機のしるしを提示する表示システムと、
からなり、その装置が更に、航空機の現在の方向を決定するための第2の手段を備えることと、前記運航システムが前記現在の方向を受け取り、それを前記表示システムに送ることと、前記表示システムが、前記現在の方向に従って、前記部分的な地図上に前記航空機のシンボルを方向づけるように作製されていること、
とを特徴とする。
【0009】
よって、本発明により、操縦士には、表示された空港地図上の航空機の現在位置だけでなく、その方向も提示される。これにより、操縦士には、空港での航空機の実際の状況のとても信頼できる表示が提供されることが可能になる。
【0010】
好ましい実施例では、前記第1の手段は、
− 例えばGPS型の、衛星位置決めシステムに連携していて、航空機に取り付けられた少なくとも1つのアンテナと、このアンテナに連結した第1のレシーバとを備える、通常の既存の位置決め装置と、
− 同様に前記アンテナに連結していて、前記アンテナを介して受け取った信号から航空機の現在位置を決定することができる(追加されたものであり、最初から備えられてはいない)第2のレシーバと、
− (最初から備えられてはいない、追加された)アンテナ・カプラーであって、
・ 前記アンテナに接続した1つのインプットと、前記第1及び第2のレシーバに各々接続した2つのアウトプットとが備えられていて、
・ アンテナから受け取った信号を二倍にして、このように二倍にして得られた信号の一方を前記第1のレシーバへ、他方を前記第2のレシーバへ伝達するように作製されているもの、
とからなる。
【0011】
よって、本発明により、航空機の現在位置を決定することを目的とした前記(第2の)レシーバは、航空機上にある位置決め装置を使用し、その位置決め装置は、すでにアンテナを備えていて、前記航空機に新しいアンテナを加える必要を避けるが、そのようにアンテナを追加することは一般的に達成が困難であり、何よりも大変費用がかかる。
【0012】
更に、前記アンテナ・カプラーを使用することによって、通常の方法では飛行航行(そのような飛行航行は、特に高い精度や更新速度を必要としない)のために航空機に備えられている前記第1のレシーバよりずっと良い性能である第2のレシーバを設けることが可能である。これらの特徴により、空港運航に関する表示のためには、特に適切な、航空機の現在位置を把握することが可能である。
【0013】
好ましい実施例では、前記第2のレシーバは、
− 前記運航システムに統合されて、そして/又は、
− メートル精度や、20Hz以上の更新速度があり、その性能は、計算された位置の更新速度を改善するために、慣性源を利用せずに済むことが可能なことであって、そして/又は、
− パラメータ化することができる。よって、衛星位置決めシステムの取得可能な改良を利用するために、好ましくは既知のGPS COTS(『Commercial Off The Shelf』)タイプの前記(第2の)レシーバを配置することが可能である。
【0014】
更に、特定の実施例では、前記第2の手段は、航空機の慣性システムからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付図面の1つの図により、本発明が具体化される方法がよく理解されるだろう。
本図に図式的に示された本発明による装置1は、空港で航空機、例えば輸送機の地上運航中に、操縦士を補助することを目的とする。
【0016】
このために、本タイプのこの装置1は、したがって、
− 空港の地上に位置する(図示略の)前記航空機の現在位置を決定するための、下記に記された手段2と、
− 少なくとも前記空港に関する地図製作データからなる、通常のタイプのデータベース3と、
− 連結器5を介して前記データベース3に連結していて、前記手段2から少なくとも前記現在位置を、前記データベース3からは前記地図製作データを受け取り、これらのデータを一致させる、つまり、それらを同一の装置上に同時に表示することのできる運航システム4と、
− 連結器7によって前記運航システム4に連結していて、前記運航システム4から情報(特に前記の一致させた結果)を受け取り、航空機の操縦室に取り付けられた少なくとも1つの通常の表示スクリーン8上に、少なくとも部分的に上記空港と、前記空港地図に表示された空港の実際の特徴に関して、前記現在位置に位置する航空機のシンボルとを示す空港地図を提示する表示システム6と、
からなる。
【0017】
本発明によると、前記装置1は、更に、通常の方法で、航空機の現在の方向を決定するための手段9を備える。この手段9は、航空機の慣性システムと、特にADIRU(『Air Data Inertial Reference Unit』)タイプのユニット又はシステムとからなるのが好ましく、連結器10を介して、前記現在の方向を、この情報を表示に使用する前記表示システム6に提供する前記運航システム4に伝達する。より正確には、前記表示システム6は、(図には示されていない)前記空港地図上の前記航空機のシンボルを、前記受け取った現在の方向に方向づけるように作製されている。
【0018】
よって、表示システム6は、操縦士に、表示された空港地図上の航空機の現在位置だけではなく、その方向も提示する。これにより、操縦士は、空港の航空機の実際の位置の大変忠実な表示を得ることができる。
【0019】
更に、航空機の現在位置を決定するために、本発明による装置1は、既に航空機上にあって、大抵は特に飛行運航を目的とする通常の位置決め装置11を使用する。そのような通常の位置決めシステム11は、一般的に航空機の上に取り付けられている少なくとも1つのアンテナ12と、このアンテナ12に連結しているレシーバ13とからなる。この位置決め装置11は、例えばGPS(『Global Positioning System』)タイプ又は同様の、通常の衛星位置決めシステムと協同する。一般的に、前記位置決め装置11は、既知のGPSSU(『Global Positioning System Sensor Unit』)タイプである。特に、それは、三次元のGPSデータと、速度と、位置と、時間と、このデータの正確さと完全性についての情報を提供する。そのような位置決め装置11は、(地上運航ではなく)飛行運航のために最適化される。この目的のために、アンテナ12は、旋回中良好な視界を保つために、水平線上に低いところで衛星が見えるように上に取り付けられている。しかし、一旦着陸すると、そのようなアンテナ12は、「マルチパス(multipath)」として知られている、建物近くで出会う通常の現象に特に敏感である。
【0020】
その結果、そのような位置決め装置11は、そのままでは、空港運航の面で使用されるようには設計されていない。
【0021】
しかし、特にアンテナに関して、設置するには費用がかかり困難である、航空機の追加の位置決めシステムを取り付けなければならなくなることを避けるために、本発明によると、前記手段2は、前からある位置決め装置11からなる。更に、本発明によると、前記手段2はまた、
− 下記のように前記装置11のアンテナ12に連結していて、前記アンテナ12を介して受け取った信号から、(運航システム4に提供された)航空機の現在位置を決定することを目的とした追加のレシーバ14と、
− アンテナ・カプラー15であって、
・ 連結器16を介して前記アンテナ12に連結した1つのインプットと、連結器17及び連結器18を介して前記レシーバ13及びレシーバ14に各々連結した2つのアウトプットを備え、
・ アンテナ12から受け取った信号を二倍にして、この二倍化によって得られた信号の一方を、特に飛行運航のために、このように正常に機能し続けることができる前記レシーバ13に伝達し、他方の信号を、本発明を実施するために使用される前記レシーバ14に伝達するように形成されたもの、
からなる。
【0022】
前記アンテナ・カプラー15は、アウトプット間の遊離によって一方のアウトプットが拡がって妨害することがないことを保証するように選択される。また、信号のパワーが弱化するかもしれないことはレシーバ13及びレシーバ14両方にとって許容可能である。カプラー15のインプットとアウトプットは、適合するコネクタによって、前記連結器16、連結器17及び連結器18に連結している。
【0023】
よって、前記アンテナ・カプラー15の使用により、通常の方法で、飛行運航する航空機に備えられている(そして、これによって特に高い精度や更新速度を必要としない)前記レシーバ13よりもずっと良い性能を発揮する追加のレシーバ14を備えることが可能である。このように、空港運航に関する表示に特に適した航空機の現在位置が本発明によって得られる。
【0024】
好ましい実施例では、前記レシーバ14は、運航システム4に統合し、新時代の飛行に適したGPSレシーバと、COTS(『Commercial Off The Shelf』)プロダクトに対応し、COTSプログラムは、航空GPSレシーバよりも良い性能を獲得する。更に、そのようなCOTS GPSレシーバは、データ更新速度を増し、マルチパス現象を減らし、獲得と再獲得の時間を減らすことを可能にする通常の特定のアルゴリズムからなる。
【0025】
特に、そのようなCOTS GPSレシーバ(レシーバ14)は、メートル精度(95%)と20Hz以上の更新速度がある一方で、通常の航空GPSSUレシーバ(レシーバ13)は、一般的に、約15メートルから30メートルの精度(95%)と1Hzから5Hzの更新速度がある。そのようなレシーバ14の性能によってまた、計算された現在位置の更新速度を改良するために、慣性源を使用せずに済ませることが可能となる。
【0026】
更に、特定の実施例では、前記レシーバ14はパラメータ化され得る。よって、GPS、SBAS、GALILEOなどの衛星位置決めシステムの取得可能な改良を活用するために、前記レシーバ14を形成することが可能である。
【0027】
従って、本発明の場合には、前記装置1は、レシーバ13は使用せず、位置決めシステム11のアンテナ12のみを使用する。更に、前記の通り、特に飛行運航に関して、その通常の機能を実施するために使用され続けるこの装置11は、アンテナ12及びレシーバ13の間にカプラー15を統合することによって変形されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による地上運航補助のための装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1…空港内航空機地上運航補助装置、2…航空機現在位置決定手段、3…地図製作データベース、4…運航システム、6…表示システム、8…表示スクリーン、9…航空機現在進行方向決定手段、11…衛星位置決め装置、12…アンテナ、13…第1のレシーバ、14…第2のレシーバ、15…アンテナ・カプラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空港での航空機の地上運航を補助するための装置であって、前記装置(1)が、
− 地上に位置する前記航空機の現在位置を決定するための第1の手段(2)であって、前記第1の手段(2)が、衛星位置決めシステムに連携する位置決め装置(11)を備えるものと、
− 航空機の現在の方向を決定するための第2の手段(9)と、
− 空港に関する地図製作データを備えるデータベース(3)と、
− 前記現在位置と、前記方向と、前記地図製作データを受け取り、これらのデータを一致させる運航システム(4)と、
− 前記運航システム(4)から情報を受け取り、少なくとも1つの表示スクリーン(8)上に、少なくとも部分的な空港の地図を提示し、その空港地図上に、前記現在位置に位置し前記現在の方向に従って方向づけられた航空機のシンボルを提示する表示システム(6)とからなり、
前記第1の手段(2)が、
− 航空機に取り付けられた少なくとも1つのアンテナ(12)と、前記アンテナ(12)に連結した第1のレシーバ(13)とを備える前記位置決め装置(11)と、
− 同様に前記アンテナ(12)に連結していて、前記アンテナ(12)を介して受け取った信号から航空機の現在位置を決定することのできる第2のレシーバ(14)と、
−アンテナ・カプラー(15)であって、
・ 前記アンテナ(12)に連結している1つのインプットと、前記第1及び第2のレシーバ(13、14)に各々連結している2つのアウトプットとを備えていて、
・ アンテナ(12)から受け取った信号を二倍にし、この二倍化によって得られた信号の一方を第1のレシーバ(13)に伝達し、他方の信号を前記第2のレシーバ(14)に伝達するように形成されるように構成したもの
からなることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第2のレシーバ(14)が前記運航システム(4)に統合されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2のレシーバ(14)がメートル精度と20Hz以上の更新速度を有することを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2のレシーバ(14)がパラメータ化され得ることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の手段(9)が航空機の慣性システムからなることを特徴とする前記請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の装置(1)を備えることを特徴とする航空機。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−502603(P2009−502603A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522008(P2008−522008)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001712
【国際公開番号】WO2007/010120
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506355257)エアバス フランス (117)
【Fターム(参考)】