説明

空調システム

【課題】低コストで集熱効率が良く、熱媒体の加熱時に安定して昇温を行える空調システムを提供する。
【解決手段】内部に流通する低温の液状媒体を太陽熱で略沸点温度の液体に昇温する第1集熱器と、第1集熱器の液状媒体を太陽熱で略沸点温度の気体に昇温する第2集熱器と、第2集熱器で昇温された蒸気を太陽熱で所定飽和蒸気圧の過熱蒸気に昇温する第3集熱器と、上記第3集熱器からの過熱蒸気を作動源とする冷凍機と、上記冷凍手段により得られる冷熱を作動源とする空調設備と、上記集熱器間および上記冷凍機との間で液状媒体を循環させるポンプと、上記ポンプの流量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を利用した空調システムに係り、効率の良い、安定した加熱を行ない得る空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱を利用した集熱システムとして特許文献1と特許文献2に示す技術がある。特許文献1の技術では、太陽熱エネルギーを集熱し、この集熱した太陽エネルギーを熱媒体に与える太陽熱集熱装置と、太陽熱集熱装置での集熱により高温となった熱媒体と、給水タンクから移送される給水との熱交換を行なう第1の熱交換器と、この熱交換器での熱交換で高温となった給水と高温の作動媒体との熱交換を行い、当該作動媒体により給水を加熱してプロセス用の蒸気を発生させる第2の熱交換器とを備えている。
【0003】
また、特許文献2の技術では、太陽熱を吸収液の加熱、濃縮に直接利用することによって、バーナ等の再生器を加熱する熱源を必要とせずに運転することができるとともに、天候の状況等により変化する太陽熱による吸収液の加熱状況を検知し、自動的に補助再生器を作動させることにより安定した空調効果と、小型化を図るため、希釈された吸収液を直接導入し加熱する太陽熱集熱管、該太陽熱集熱管で加熱された吸収液をフラッシングさせることにより濃縮するフラッシング再生器を有する吸収式冷暖房装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−183346号公報
【特許文献2】特開2001−82823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、熱媒体を介して集熱して熱交換器により伝熱しているために、加熱効率が悪いとともに、熱交換器が必要でコスト高となる。また、プロセス用の蒸気として過熱蒸気を作ってないため、二重効用吸収式冷凍機に適用できない。
【0006】
特許文献2では、臭化リチウム等の吸収液を熱媒体として配管内を流して加熱するため、吸収液を多量に必要として取扱及び管理が面倒であり、コストが高くなる。また、加熱時に吸収液に沸騰が起こると圧力が異常に高まって逆流を起こすおそれがあり、温度管理が難しくなる。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、低コストで集熱効率が良く、熱媒体の加熱時に安定して昇温を行える空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、内部に流通する低温の液状媒体を太陽熱で略沸点温度の液体に昇温する第1集熱器と、
第1集熱器の液状媒体を太陽熱で略沸点温度の気体に昇温する第2集熱器と、
第2集熱器で昇温された蒸気を太陽熱で所定飽和蒸気圧の過熱蒸気に昇温する第3集熱器と、
上記第3集熱器からの過熱蒸気を作動源とする冷凍機と、
上記冷凍手段により得られる冷熱を作動源とする空調設備と、
上記集熱器間および上記冷凍機との間で液状媒体を循環させるポンプと、
上記ポンプの流量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、上記制御手段は、日射量に応じて液状媒体の循環量を変えるように上記ポンプを制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、上記液状媒体として水を用いたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、上記冷凍機として吸収式冷凍機またはターボ冷凍機を用いたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、上記冷凍機として吸収式冷凍機とターボ冷凍機の併用で用いたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、さらに、上記冷凍機により得られる冷熱を、蓄積する蓄熱器を備えたことを特徴とするム。
【0014】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、さらに、上記集熱器の間に介在して上記集熱器の液状媒体と蒸気を蓄えるタンクを備え、上記制御手段は上記第2集熱器と第3集熱器に残った蒸気を上記タンクに戻すように制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、さらに、太陽発電機(太陽光発電機又は太陽熱発電機)を備え、この発電電力を上記ポンプ、上記冷凍機または上記空調設備に供給することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記に記載の空調システムにおいて、さらに、過熱蒸気を作動源とする蒸気タービンを備え、上記蒸気タービンで発電された電力で上記冷凍機としてターボ冷凍機を駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集熱効率が良く、熱媒体の加熱時に安定して昇温を行え、空調システムを低コストで、安定して稼動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例の動作フロー図。
【図2】本発明の第1実施例の各部の制御状態を示す説明図。
【図3】本発明の第2実施例に太陽発電機要素を付加した動作フロー図
【図4】本発明の第3実施例の動作フロー図。
【図5】本発明の第4実施例の動作フロー図。
【図6】本発明の第5実施例の動作フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に、本発明の第1実施例の動作フローを示す。11は、内部に流通する液状媒体として低温の水を太陽熱でほぼ沸点温度(100℃)の湯(液体)に昇温する第1集熱器としての予熱器である。上記予熱器11で昇温された湯はバルブ1を通じてタンク1に一旦貯蔵される。12は、タンク1内のほぼ沸点温度の湯をポンプ2を通じて受け入れて、さらに太陽熱で加熱して、略沸点温度の蒸気(気体)に昇温する第2集熱器としての蒸気発生器である。蒸気発生器2の蒸気は上記タンク1の気層部分に戻される。13は、タンク1内の気層のほぼ沸点温度の蒸気を受け入れて、さらに太陽熱で加熱して、所定飽和蒸気圧の過熱蒸気に昇温する第3集熱器としての過熱蒸気発生器である。
【0021】
上記第1〜第3の集熱器は、太陽光を集める図示しない反射鏡と、集められた太陽光を受ける配管を備えており、配管を流れる媒体(液体、気体)を効率的に加熱する構成となっている。
【0022】
14は、上記過熱蒸気発生器13からの過熱蒸気を作動源とする冷凍機であり、例えば吸収式冷凍機からなる。冷凍機14からの冷熱は空調設備15に供給されて、設備15による空調が行なわれる。上記冷凍機14から戻される媒体は温度が低下した状態でタンク2に蓄えられ、ポンプ1によって前記予熱器11に戻される。
【0023】
17は、上記冷凍機14で生じた余剰の冷熱を蓄えると共に、不足した冷熱を冷凍機14に戻す蓄熱器であり、16は、上記各部の動作を制御する制御手段である。
【0024】
上記第1〜第3の集熱器は太陽光による加熱の際に、異なる集熱器で相を変化させ、同一の集熱器内では媒体を同一相の状態で加熱しているため、安定した加熱がなされる。すなわち、上記予熱器11では媒体を液状のまま加熱していて、相(液体、気体)が変化しないので、温度を管理すれば加熱量(顕熱)が把握される。同様に蒸気発生器12では、湯から蒸気になるまでを加熱していて、蒸気圧が飽和するか否かを管理していれば加熱量(潜熱)を把握でき、過熱蒸気発生器13では、蒸気の状態のまま加熱していて、温度を管理していれば加熱量(顕熱)が把握される。例えば、加熱中に媒体が液体から気体に変わると急激に膨張して逆流の恐れがあるが、上記ではその恐れは無い。
【0025】
次に、図2を用いて制御手段16による上記空調システムの動作を説明する。
【0026】
制御手段16は、予熱器11及び近傍の図示しないセンサによる各種測定値に基いて、バルブ及びポンプを制御する。配管内の安定した液状媒体の温度上昇率で日射量(集熱量)を求めることでその時点の収率を求め、システム全体の制御の精度を高めることができる。例えば、予熱器11の出入口温度、流量により計算される集熱量より制御するか、予熱器11の集熱量と相関を持つ日射計の出力にて制御することができる。
【0027】
制御手段16には、システムの立上げ時間は日の出の時間T1に設定されている。図2に示すように、時間T1の日の出と共に日射量が次第に増加し、時間T2で計画値の日射量まで立ち上がった場合を想定する。時間T1〜T2では、予熱器11が太陽光を集熱して媒体は徐々に加熱され、同時にバルブ1を次第に開いてバルブ2を全開から次第に閉じていく。従って、時間T1付近で全量がタンク2にバイパスされ、高温度に上昇するにつれてタンク2からタンク1に供給が切換っていく。これは、時間T1付近での低温の媒体がタンク1に供給されるのを防止している。
【0028】
同時に、時間T1〜T2では、日射量の増加と共にポンプ1、2の水量を計画水量まで次第に増加させ、システムでの熱媒体の循環量が増加する。日射量の増加により液状媒体は、予熱器11内で太陽熱により略沸点温度まで加熱されてタンク1内に供給され、ポンプ2の運転によりこの略沸点温度の液状媒体が蒸気発生器12に供給される。蒸気発生器12では、この略沸点温度の液状媒体を太陽熱により略沸点温度の蒸気に昇温し、再度タンク1の気層に戻される。
【0029】
タンク1の気層部分からは、気層部分の飽和蒸気圧により略沸点温度の蒸気が過熱蒸気発生器13に供給され、過熱蒸気発生器13ではこの蒸気を太陽熱により過熱蒸気に昇温する。冷凍機14としてたとえば吸収式冷凍機は、この過熱蒸気を駆動源として駆動されて冷熱を発生する。ここで、時間T1〜T2では、計画値の日射量が得られるまで冷凍機14から出力される冷熱量が計画値にならないので、不足分を蓄熱器17から補填する。
【0030】
時間T2〜T3では、計画値の日射量が得られており制御手段16により、各部が図2に示されるように制御される。この区間では冷凍機14から冷熱量の計画値が出力されるので、蓄熱器17からの冷熱の補填はない。
【0031】
時間T3〜T4では、計画値以上の日射量が得られており制御手段16により、各部が図2に示すように制御される。すなわち、ポンプ1,2の流量を計画流量以上に増加させて過熱蒸気を冷凍機14に供給し、冷凍機14から計画冷熱量以上の冷熱量を出力させ、過剰の冷熱量を蓄熱器17に蓄熱する。図2では、冷凍機14の冷熱量が計画値となっているが、これは蓄熱分を差し引いているためである。
【0032】
時間T4〜T5では、計画値以下の日射量が得られており、制御手段16により各部が図2に示すように制御される。すなわち、ポンプ1,2の流量を計画流量以下に減少させて過熱蒸気を冷凍機14に供給し、冷凍機14から冷熱量を出力させる。この区間では、計画値の日射量が得られないので冷凍機14から出力される冷熱量が計画値にならない。従って時間T1〜T2の区間と同様に、不足分を蓄熱器17から補填された状態で、冷熱量が空調設備15に供給される。
【0033】
T4〜T5区間は日没に近い時間帯であるが、日没後は集熱系統のラインの稼動が停止される。ライン停止直後は、蒸気発生器12、13の系統に略沸点の蒸気や過熱蒸気が残っているが、そのまま捨てるのは収率向上に反する。そこで、本実施例では蒸気発生器12、13の系統に残った蒸気を制御手段16の制御により、バルブ4を開いてタンク1に戻すように制御される。また、バブル3は過熱蒸気発生器13で蒸気が異常上昇の際に、外気に放出するためのものであるが、効率向上のため、バルブ4を開いてタンク1に戻すようにしても良い。
【実施例2】
【0034】
図3に、本発明の第2実施例の動作フローを示し、図1と同一部分を同一符号で示す。本実施例では太陽発電機(太陽光発電機又は太陽熱発電機)20をさらに設け、この電力で冷凍機や空調設備の電力を賄い、余剰の電力は蓄電池21に蓄えるものである。また、冷凍機として吸収式冷凍機14aを用いている。
【実施例3】
【0035】
図4に、本発明の第3実施例の動作フローを示し、図1と同一部分を同一符号で示す。本実施例では太陽発電機20を設けると共に、過熱蒸気発生器13から過熱蒸気を作動源とする復水蒸気タービン18と、冷凍機としてこのタービンの電力で駆動されるターボ冷凍機14bを設けたものである。太陽発電機20からの電力をターボ冷凍機14bに供給するようにしても良い。
【実施例4】
【0036】
図5に、本発明の第4実施例の動作フローを示し、図4と同一部分を同一符号で示す。本実施例では太陽発電機20の他に、過熱蒸気発生器13からの過熱蒸気を作動源とする背圧蒸気タービン19と、冷凍機としてこのタービンの電力で駆動されるターボ冷凍機14bを設け、更に、過熱蒸気を作動源とする吸収式冷凍機14aを設けた、ハイブリッド型のものである。本実施例はターボ冷凍機14bと吸収式冷凍機14aの両者より同時に冷熱を得て、太陽エネルギーを最大限に利用することを基本とするが、過熱蒸気発生器13からの過熱蒸気の圧力の大小に応じて、ターボ冷凍機14bと吸収式冷凍機14aを運転効率の良い条件で切換えて運転することも可能である。また、吸収式冷凍機14aの作動源は、図中、過熱蒸気発生器13に接続された一点鎖線で示すように、過熱蒸気発生器13の過熱蒸気を直接利用することも可能である。
【実施例5】
【0037】
図6に、本発明の第5実施例の動作フローを示し、図5と同一部分を同一符号で示す。本実施例では太陽発電機20の他に、この発電機20の電力で駆動されるターボ冷凍機14bと過熱蒸気発生器13からの過熱蒸気を作動源とする吸収式冷凍機14aを設けた、ハイブリッド型のものである。本実施例はターボ冷凍機14bと吸収式冷凍機14aの両者より同時に冷熱を得て、太陽エネルギーを最大限に利用することを基本とするが、日射量のある時間帯では吸収式冷凍機14aを稼動させると共に、太陽発電機20で蓄電器21を充電し、日没後は蓄電器21によってターボ冷凍機14bを稼動することにより、長い時間空調設備を運転することもできる。また、本実施例では、日射量が計画値まで達しない場合に、蓄電器21によってターボ冷凍機14bを稼動することにより、空調設備を運転するようにしても良い。
【0038】
なお、実施例2〜6に記述した太陽発電機20は太陽熱発電機を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
11…第1集熱器(予熱器)、12…第2集熱器(蒸気発生器)、13…第3集熱器(過熱蒸気発生器)、14…冷凍機、15…空調設備、16…制御手段、17…蓄熱器、18…復水蒸気タービン、19…背圧蒸気タービン、20…太陽発電機、21…蓄電器、タンク1…タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流通する低温の液状媒体を太陽熱で略沸点温度の液体に昇温する第1集熱器と、
第1集熱器の液状媒体を太陽熱で略沸点温度の気体に昇温する第2集熱器と、
第2集熱器で昇温された蒸気を太陽熱で所定飽和蒸気圧の過熱蒸気に昇温する第3集熱器と、
上記第3集熱器からの過熱蒸気を作動源とする冷凍機と、
上記冷凍手段により得られる冷熱を作動源とする空調設備と、
上記集熱器間および上記冷凍機との間で液状媒体を循環させるポンプと、
上記ポンプの流量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
請求項1記載の空調システムにおいて、上記制御手段は、日射量に応じて液状媒体の循環量を変えるように上記ポンプを制御することを特徴とする空調システム。
【請求項3】
請求項1記載の空調システムにおいて、上記液状媒体として水を用いたことを特徴とする空調システム。
【請求項4】
請求項1記載の空調システムにおいて、上記冷凍機として吸収式冷凍機またはターボ冷凍機を用いたことを特徴とする空調システム。
【請求項5】
請求項1記載の空調システムにおいて、上記冷凍機として吸収式冷凍機とターボ冷凍機を併用したことを特徴とする空調システム。
【請求項6】
請求項1記載の空調システムにおいて、さらに、上記冷凍機により得られる冷熱を、蓄積する蓄熱器を備えたことを特徴とする空調システム。
【請求項7】
請求項1記載の空調システムにおいて、さらに、上記集熱器の間に介在して上記集熱器の液状媒体と蒸気を蓄えるタンクを備え、上記制御手段は上記第2集熱器と第3集熱器に残った蒸気を上記タンクに戻すように制御することを特徴とする空調システム。
【請求項8】
請求項1記載の空調システムにおいて、さらに、太陽発電機(太陽光発電機又は太陽熱発電機)を備え、この発電電力を上記ポンプ、上記冷凍機または上記空調設備に供給することを特徴とする空調システム。
【請求項9】
請求項1記載の空調システムにおいて、さらに、過熱蒸気を作動源とする蒸気タービンを備え、上記蒸気タービンで発電された電力で上記冷凍機としてターボ冷凍機を駆動することを特徴とする空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190460(P2010−190460A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33579(P2009−33579)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】