説明

空間安定装置

【課題】従来の空間安定装置は、空間安定動作のドリフトによって移動局アンテナの視軸線がずれてしまうことを防止するために、前記ドリフトが極めて小さい高価なジャイロを使用する必要があった。
【解決手段】本発明による空間安定装置は、画像処理手段8が、カメラ4の撮影画像4aから画像処理によりターゲット10を抽出し、前記撮影画像4a内における前記ターゲット10の移動量を検出することで空間安定動作のドリフト量を検出し、前記ドリフト量をキャンセルするための補正指令信号8aを回転駆動台2の駆動部5に入力するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局アンテナの空間に対する姿勢を安定させる空間安定動作を行う空間安定装置に関し、特に、カメラが撮影した撮影画像内におけるターゲットの移動量を検出することで空間安定動作のドリフト量を検出し、前記ドリフト量を補正するための補正指令信号を回転駆動台の駆動部に入力するように構成することで、より確実に移動体の振動に追従できるようにしつつ、空間安定動作のドリフトによる視軸線の移動を安価な構成で防止できるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の空間安定装置としては、例えば特許文献1等に示されている空間安定装置が用いられており、図3に示すように構成されている。図3は、従来の空間安定装置を示す構成図である。図において、航空機や車両等の移動体(図示せず)に設けられた回転駆動台2には、例えば可視カメラ、赤外線カメラ、及びレーダアンテナ等のペイロード30が取り付けられており、ペイロード30の視軸線30aは回転駆動台2の駆動部5の動作により、回転駆動台2の回転軸周りに移動可能とされている。この例では、視軸線30aはアジマス及びエレベーションの2軸周りに移動可能にされている。
【0003】
駆動部5の動作としては、空間安定動作及び目標追尾動作が挙げられる。空間安定動作とは、慣性センサであるジャイロからのジャイロ信号が常にゼロとなるように動作することで、ペイロード30の空間に対する姿勢を安定させるものである。これに対して、目標追尾動作とは、例えばペイロード30等からの情報に基づいてターゲットの位置を検出し、前記視軸線30aが常にターゲットを向くように動作するものである。
【0004】
このような空間安定装置の具体的な適用例として、例えば放送用の中継車等の移動体に前記回転駆動台2を設けるとともに、この回転駆動台2に移動局アンテナ(ペイロード30)を取り付け、前記移動体での人の乗降による振動を打ち消すために、前記移動局アンテナの空間安定動作を行う例が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−248870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の空間安定装置では、移動局アンテナの空間安定動作を行うので、例えばジャイロ信号に含まれる誤差等によって、前記移動局アンテナの視軸線30aがずれてしまうことがある。このドリフトによる視軸線30aを防止するためには、一般的に、ドリフトが極めて小さいジャイロを使用するか、又は電波強度を監視して人手により視軸線30aの向きを調整している。しかしながら、ドリフトの小さいジャイロは高価であり、人手による調整は煩雑である。
また、空間安定動作に代えて目標追尾動作を行うことも考えられるが、目標追尾動作では、空間安定動作に比べて処理に時間を要するので、速い外乱である前記振動に追従できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より確実に移動体の振動に追従できるようにしつつ、空間安定動作のドリフトによる視軸線の移動を安価な構成で防止できる空間安定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空間安定装置は、移動体に設けられた回転駆動台に移動局アンテナを取り付け、ジャイロからのジャイロ信号を用いて、前記移動局アンテナの空間に対する姿勢を安定させる空間安定動作を行う空間安定装置において、前記回転駆動台に設けられたカメラと、前記カメラに接続された画像処理手段とを備え、前記画像処理手段は、前記カメラの撮影画像から画像処理によりターゲットを抽出し、前記撮影画像内における前記ターゲットの移動量を検出することで前記空間安定動作のドリフト量を検出し、前記ドリフト量をキャンセルするための補正指令信号を前記回転駆動台の駆動部に入力する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空間安定装置によれば、カメラが撮影した撮影画像内におけるターゲットの移動量を検出することで空間安定動作のドリフト量を検出し、前記ドリフト量を補正するための補正指令信号を回転駆動台の駆動部に入力するので、より確実に移動体の振動に追従できるようにしつつ、空間安定動作のドリフトによる視軸線の移動を安価な構成で防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による空間安定装置を示す構成図である。なお、従来の空間安定装置と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。図において、例えば放送用の中継車である移動体1には、回転駆動台2が設けられており、この回転駆動台2には、移動局アンテナ3と、カメラ4と、駆動部5と、ジャイロ6とが設けられている。前記回転駆動台2は周知のジンバル構造を有しており(図3参照)、移動局アンテナ3及びカメラ4の視軸線は、前記駆動部5の動作によって前記回転駆動台2の回転軸周りに移動可能とされている。前記駆動部5は、前記ジャイロ6からのジャイロ信号6aに基づいて、前記移動局アンテナ3及び前記カメラ4の空間安定動作を行う。すなわち、前記駆動部5は、前記移動体1での人の乗降等による振動が発生した場合でも、前記ジャイロ信号6aが常にゼロとなるように動作することで、前記移動局アンテナ3及び前記カメラ4の空間に対する姿勢を安定させる。これにより、前記移動局アンテナ3が前記移動体1から数km先に位置する基地局の基地局アンテナ7との間で行う電波送受信への前記振動の影響を抑えている。なお、前記移動局アンテナ3と電波送受信を行うアンテナは、他の移動体に設けられた他の移動局アンテナでもよい。
【0011】
前記カメラ4には画像処理手段8が接続されており、前記画像処理手段8は前記カメラ4の撮影画像4aの画像処理を行うことで、撮影画像からターゲット10を抽出する。具体的には、前記画像処理手段8は、前記移動体1が停止されて前記移動局アンテナ3の向きが調整された後に、その時点で前記カメラ4によって撮影されている画像の中央付近に位置する物体の外形をコントラスト等から検出し、その物体をターゲット10として抽出する。前記画像処理手段8は、前記撮影画像4a内におけるターゲット10の移動量を検出することで、前記空間安定動作のドリフト量を検出し、前記ドリフト量をキャンセルするための補正指令信号8aを前記駆動部5に入力する。なお、前記空間安定動作のドリフトは、前記ジャイロ信号6aに含まれる誤差が蓄積された場合や、前記駆動部5の動作誤差が蓄積された場合に生じるものである。
【0012】
次に、図2は、図1の画像処理手段8によるドリフト量のキャンセル動作を示す説明図である。図において、(a)の状態は、ターゲット10を検出した状態を示しており、(b)の状態は、前記ジャイロ信号6のドリフトにより前記回転駆動台2がドリフトして、前記ターゲット10が前記撮影画像4aの中央位置からずれた状態を示している。前記画像処理手段8は、(b)の状態の場合に、前記撮影画像4a内におけるターゲット10の移動量(ドット数)を検出することで、前記空間安定動作のドリフト量を検出する。そして、前記画像処理手段8は、(c)のように、前記ターゲット10が前記撮影画像4aの中央位置に戻るように補正指令信号8aを生成して、前記空間安定動作のドリフトをキャンセルする。画像処理手段8によるキャンセル動作は、前記ドリフトが前記乗降による振動に比べて遅い外乱であるので、1sec毎程度で行われる。
【0013】
すなわち、速い外乱である前記乗降による振動を空間安定動作でキャンセルしつつ、前記空間安定動作のドリフトを目標追尾動作でキャンセルする。従って、ジャイロ6としてドリフト量が少ない高価なものを用いずに済ますことができ、より確実に移動体の振動に追従できるようにしつつ、空間安定動作のドリフトによる視軸線の移動を安価な構成で防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1による空間安定装置を示す構成図である。
【図2】図1の画像処理手段によるドリフト量のキャンセル動作を示す説明図である。
【図3】従来の空間安定装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0015】
1 移動体
2 回転駆動台
3 移動局アンテナ
4 カメラ
4a 撮影画像
5 駆動部
6 ジャイロ
6a ジャイロ信号
8 画像処理手段
8a 補正指令信号
10 ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(1)に設けられた回転駆動台(2)に移動局アンテナ(3)を取り付け、ジャイロ(6)からのジャイロ信号(6a)を用いて、前記移動局アンテナ(3)の空間に対する姿勢を安定させる空間安定動作を行う空間安定装置において、
前記回転駆動台(2)に設けられたカメラ(4)と、
前記カメラ(4)に接続された画像処理手段(8)と
を備え、
前記画像処理手段(8)は、前記カメラ(4)の撮影画像(4a)から画像処理によりターゲット(10)を抽出し、前記撮影画像(4a)内における前記ターゲット(10)の移動量を検出することで前記空間安定動作のドリフト量を検出し、前記ドリフト量をキャンセルするための補正指令信号(8a)を前記回転駆動台(2)の駆動部(5)に入力することを特徴とする空間安定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−281977(P2009−281977A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136819(P2008−136819)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】