説明

窒化ガリウム反応容器の撹拌方法及び装置

【課題】 収容液体を効率よく撹拌する。
【解決手段】 耐圧容器2内にて、反応容器3に収容したフラックスとなる液体Na5と液体Ga6の混合液体4を、窒素ガス8の存在下で加圧及び加熱して窒化ガリウム結晶を製造する窒化ガリウム結晶製造装置1における反応容器3の下部外周に、ヒータ12a,12b,12c,12dを設ける。反応容器3の中央部の上方に、ガリウム供給管10の吐出口13を配置する。ヒータ12a,12b,12c,12dによる反応容器3の下部外周に位置する混合液体4の局部加熱により、混合液体4に、反応容器3の内底部の中央部に配置した種結晶基板11の真上となる反応容器3中央部でダウンフローとなる熱対流を発生させると共に、そのダウンフローを、ガリウム供給管10より滴下供給する液体Ga6による反応容器3中央部に位置する混合液体4の局部冷却により促進して、混合液体4を撹拌させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムのフラックスを用いてガリウムと窒素を反応させて窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム反応容器内を撹拌するために用いる窒化ガリウム反応容器の撹拌方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光デバイスや半導体デバイスとして用いられる窒化ガリウム系材料の製造方法の1つとして、ナトリウム(Na)のフラックスと、窒素源として窒素ガス(N)を用いた窒化ガリウム(GaN)の結晶の製造手法が従来提案されている。
【0003】
この種の窒化ガリウムの結晶の製造に用いる窒化ガリウム結晶製造装置は、耐圧容器内に、ガリウム(Ga)の融液(融解した液体)と上記フラックスとなるナトリウム(Na)の融液(以下、ガリウムの融液を液体Ga、ナトリウムの融液を液体Naと云う)を収容(貯留)するための窒化ガリウム反応容器(以下、単に反応容器と云う)を設け、且つ上記耐圧容器に、上記反応容器を加熱するためのヒータが装備してある。
【0004】
更に、上記耐圧容器内へ窒素ガスを供給するための窒素ガス供給管を備えた構成としてある。
【0005】
上記窒化ガリウム結晶製造装置を用いて窒化ガリウムの結晶を製造する場合は、上記耐圧容器内へ窒素ガス供給管より窒素ガスを供給した状態で、該耐圧容器の内部を2〜10MPaとし、且つ上記液体Gaと液体Naを収容した反応容器をヒータで加熱して、600〜1000℃の反応条件に保持することにより、上記液体Gaと窒素ガスを反応させて、上記反応容器の内底部に予め設けてある種結晶を核として、窒化ガリウムの結晶を成長させるようにしてある。
【0006】
ところで、上記窒化ガリウムの結晶を成長させるプロセスでは、上記窒素ガスの液体Naへの溶解が反応を支配しており、そのため、窒素ガスを液体Naへ速やかに溶解させることが重要となる。しかし、上記窒素ガスの液体Naへの溶解は、上記反応容器内の液面の部分でしか行われない。
【0007】
そのため、上記反応容器内の液体Gaと液体Naからなる混合液体を撹拌することが望まれるが、上記反応容器は、耐圧容器という密閉された環境に配置する必要があると共に、高温が必要とされる環境に配置されるものであるため、液体の撹拌手法として広く一般的に用いられている撹拌翼を用いた機械的な撹拌は、機構的(構造的)に難しい。
【0008】
よって、現状では、上記液体Gaと液体Naの混合液体を収容した反応容器自体を揺動させることにより、上記耐圧容器内の混合液体を撹拌する手法が採られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0009】
又、上記窒化ガリウム結晶製造装置における反応容器内の混合液体を撹拌するための別の手法としては、たとえば、電気炉内に反応室となるステンレス容器を配置し、該反応室内に反応容器となる坩堝を配置し、更に、上記反応室の円筒形に形成された側壁の外側下方位置にリング状のヒータを設けて、上記反応室内の坩堝(反応容器)を、上記反応室の底部を介し加熱して、該坩堝内の混合液体(混合フラックス)に熱対流を発生させて、該混合液体を撹拌させるようにすることが従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0010】
更に、窒化ガリウム結晶製造装置における反応容器内の混合液体に熱対流を生じさせる別の手法としては、たとえば、反応容器(育成容器)における互いに対向する一組の側壁部のうち、一方の側壁部を高温部とし、他方の側壁部を低温部とすることにより該反応容器内に水平方向の温度勾配を形成して、反応容器内の全体に、高温部で上昇し、低温部で下降する混合液体の流れを生じさせる考え(たとえば、特許文献3参照)や、反応容器(結晶成長容器)の底部を局部的に冷却することで、該冷却部分でダウンフローとなる熱対流を反応容器内に生じさせ、このダウンフローが生じる部分に沿わせて種結晶の結晶成長面を配置するようにする考え(たとえば、特許文献4参照)が従来提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4030125号公報
【特許文献2】特許第4433317号公報
【特許文献3】再表2008−117564号公報
【特許文献4】特開2010−52967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1に示されたように、液体Gaと液体Naの混合液体を収容した反応容器を揺動させる手法は、耐圧容器内に、上記反応容器を揺動させるための機械的な可動部が必要になるため、装置構成が複雑化すると共に大型化してしまうという問題がある。
【0013】
又、特許文献2に示された手法では、反応容器内の混合液体に熱対流を生じさせることはできるが、この熱対流を生じさせるのは、反応容器となる坩堝が配置してある反応室の側壁の外側下方位置に設けたリング状のヒータによる加熱のみであるため、熱対流を生じさせる効率をあまり高めることができない。しかも、特許文献2には、反応容器内に発生させる熱対流と、窒化ガリウムの結晶成長面との関連については何ら示されていない。
【0014】
特許文献3に示された手法、及び、特許文献4に示された手法では、反応容器内に生じさせる熱対流の流れの方向に対し、結晶成長面がほぼ平行となるように配置してあるため、上記結晶成長面において、該結晶成長面に沿って流れる熱対流の流れの上流側に位置する部分と、下流側に位置する部分では、結晶の成長速度に差が生じて結晶成長面全体に均等に単結晶を成長させることが困難になる。
【0015】
すなわち、上記反応容器内の液体Gaと液体Naの混合液体では、液面で窒素ガスが溶解するため、液面付近に位置する部分の混合液体が、窒素の濃度がリッチになる。そのため、この窒素濃度がリッチな混合液体が、上記反応容器内で生じさせた熱対流によって結晶成長面に沿って移動すると、該結晶成長面における上記窒素濃度がリッチな混合液体が最初に当たる個所では、窒化ガリウムの結晶成長が促進される。一方、上記結晶成長面における上記熱対流の流れ方向の下流側に位置する部分には、より上流側での窒化ガリウムの結晶成長によって窒素が消費されて窒素濃度が低下した混合液体しか当たらないため、該部分では窒化ガリウムの結晶成長が遅くなり、よって、結晶成長面全体では、窒化ガリウム結晶の成長が不均一になってしまう。その対策のため、特許文献4に示されたものでは、水平方向に加えて、上記混合液体中で上下方向にも温度制御を行うことが求められている。
【0016】
ところで、反応容器内で窒化ガリウムの結晶を成長させると、該反応容器内の液体Gaは上記窒素ガスとの反応によって消費される。このため、該反応容器内の液体Gaが枯渇すると、上記窒化ガリウムの結晶の成長が止まってしまう。
【0017】
大きな窒化ガリウムの結晶を得るためには、窒化ガリウムの結晶成長を長時間に亘って行わせる必要があり、そのため液体Gaの必要量が多くなる。この場合、多量の液体Gaを反応容器に最初から貯留してバッチ処理しようとすると、該反応容器のサイズが大きくなるため、装置構成が大型化すると共に、反応容器の加熱に多くのエネルギーが必要になってしまう。
【0018】
そのため、本発明者等は、窒化ガリウム結晶製造装置に、反応容器内へ耐圧容器の外部より液体ガリウムを供給するためのガリウム供給管を備えて、上記反応容器内に、窒化ガリウムの結晶成長によって消費される分に応じた量の液体Gaを連続的に供給することにより、反応容器内の液体Gaを枯渇させることなく長時間に亘り窒化ガリウムの結晶成長を行わせる方式を採用するようにしている。
【0019】
これに対し、上記特許文献2、3、4に示されたものは、いずれもバッチ式で窒化ガリウムの結晶を成長させる形式のものであって、上記のようにガリウム供給管を備えて反応容器内へ液体Gaを供給する構成とはなっていない。よって、該ガリウム供給管より供給する液体Gaを利用して反応容器内の混合液体を効率よく撹拌する考えは、上記特許文献2、3、4に示されたものから何ら示唆されるものではない。
【0020】
そこで、本発明は、窒化ガリウム結晶製造装置における液体Gaと液体Naの混合液体を収納した反応容器内を、機械的な可動部を要することなく効率よく撹拌することができるようにするための窒化ガリウム反応容器の撹拌方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液からなる混合液体を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内の混合液体を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記反応容器に上記混合溶液を収容すると共に、該反応容器の内底部に種結晶基板を配置した状態で、該反応容器の下部外周部をヒータにより加熱して、上記反応容器内の混合液体に該反応容器内における上記種結晶基板の真上でダウンフローとなる熱対流を発生させるようにし、更に、上記反応容器の上方で且つ上記種結晶基板の真上となる位置より該反応容器内へガリウムの融液を滴下供給して、反応容器内における上記種結晶基板の上方に位置する混合溶液を冷却するようにする窒化ガリウム反応容器の撹拌方法とする。
【0022】
又、上記構成において、反応容器の下部外周に周方向に3分割以上に複数分割されたヒータを備え、該各ヒータの出力を制御することで、上記反応容器内で発生させる熱対流におけるダウンフローの位置を、種結晶基板の結晶成長面の面内で変化させるようにする。
【0023】
更に、上記各構成において、反応容器におけるガリウムの融液を滴下供給する位置を、種結晶基板の結晶成長面の面内と対応する個所で変位させて、上記反応容器内で発生させる熱対流におけるダウンフローの位置を、種結晶基板の結晶成長面の面内で変化させるようにする。
【0024】
又、請求項4に対応して、耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液からなる混合液体を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内の混合液体を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記反応容器の下部外周部に、該反応容器の各側壁の下部内側に位置する部分の混合液体を加熱するためのヒータを設け、上記反応容器の内底部に種結晶基板を配置し、更に、上記反応容器の上方で且つ上記種結晶基板の真上となる位置に、該反応容器へガリウムの融液を供給するためのガリウム供給管を設けてなる構成を有する窒化ガリウム反応容器の撹拌装置とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液からなる混合液体を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内の混合液体を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記反応容器に上記混合溶液を収容すると共に、該反応容器の内底部に種結晶基板を配置した状態で、該反応容器の下部外周部をヒータにより加熱して、上記反応容器内の混合液体に該反応容器内における上記種結晶基板の真上でダウンフローとなる熱対流を発生させるようにし、更に、上記反応容器の上方で且つ上記種結晶基板の真上となる位置より該反応容器内へガリウムの融液を滴下供給して、反応容器内における上記種結晶基板の上方に位置する混合溶液を冷却する窒化ガリウム反応容器の撹拌方法、及び、耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液からなる混合液体を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内の混合液体を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記反応容器の下部外周部に、該反応容器の各側壁の下部内側に位置する部分の混合液体を加熱するためのヒータを設け、上記反応容器の内底部に種結晶基板を配置し、更に、上記反応容器の上方で且つ上記種結晶基板の真上となる位置に、該反応容器へガリウムの融液を供給するためのガリウム供給管を設けてなる構成を有する窒化ガリウム反応容器の撹拌装置としてあるので、ヒータによる反応容器の下部外周部に存在する混合液体の加熱によって該反応容器内で熱対流を発生させることに加えて、ガリウム供給管より供給するガリウムの融液を利用して反応容器内における上記種結晶基板の真上の液面付近に存在する混合液体の冷却を行うことにより、上記熱対流により種結晶基板の真上で生じているダウンフローを促進させることができる。よって、耐圧容器内に機械的な可動部を何ら要することなく、上記反応容器内の混合液体を効率よく撹拌することができ、且つ撹拌効率を、反応容器内の混合液体を局部加熱することのみによって熱対流させる場合に比して向上させることができる。
(2)更に、液面付近で窒素ガスが溶解することにより窒素濃度がリッチとなり、更に、ガリウム供給管より供給されるガリウムの融液によってガリウム濃度がリッチとなる混合液体を、反応容器内における種結晶基板の真上で生じさせるダウンフローにより、該種結晶基板あるいはその上に成長する窒化ガリウム結晶の結晶成長面に速やかに導くことができるため、窒化ガリウム結晶の成長を効率よく行わせることができる。
(3)しかも、上記窒化ガリウム結晶の成長に伴って消費されるガリウムの融液は、その消費量に応じた量でガリウム供給管より連続的に供給することができるため、装置構成を大型化することなく窒化ガリウム結晶の成長を長時間に亘り行わせることができて、大きな窒化ガリウム結晶を効率よく製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の窒化ガリウム反応容器の撹拌方法及び装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は概略切断側面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示すもので、(イ)は概略切断側面図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図である。
【図3】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は反応容器の概略平面図、(ロ)は反応容器内の混合液体に熱対流を生じさせた状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図1(イ)(ロ)は本発明の窒化ガリウム反応容器の撹拌方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0029】
ここで、本発明を適用する窒化ガリウム結晶製造装置1について概説すると、該窒化ガリウム結晶製造装置1は、耐圧容器2と、該耐圧容器2内に設けて液体Na5と液体Ga6の混合液体4を収容(貯留)するための反応容器3と、該反応容器3全体を前述した液体Ga6と窒素ガス8より窒化ガリウムを生成させる反応条件である600〜1000℃まで加熱するために上記耐圧容器2に取り付けたヒータ等の加熱手段7を備える。更に、上記耐圧容器2内へ外部の図示しない窒素ガス供給部より窒化ガリウム(GaN)の結晶製造用の窒素源とする窒素ガス8を供給するための窒素ガス供給管9と、上記耐圧容器2の外部に設けた図示しないガリウム供給部より上記反応容器3へ液体Ga6を供給するためのガリウム供給管10を備えた構成とする。
【0030】
上記窒化ガリウム結晶製造装置1に適用する本発明の窒化ガリウム反応容器の撹拌装置(以下、単に本発明の撹拌装置と云う)は、上記反応容器3を、平面形状方形とすると共に、該反応容器3の内底面の中央部に、平板状として上面を結晶成長面とした種結晶基板11を水平に配置するものとし、且つ該反応容器3における各側壁3a,3b,3c,3dの下部外周位置に、ヒータ12a,12b,12c,12dを設ける。これにより、上記耐圧容器2に設けた加熱手段7により上記反応容器3を上記所定温度まで加熱して、該反応容器3内に液体Na5と液体Ga6の混合液体4を貯留した状態のときに、上記各ヒータ12a,12b,12c,12dを運転して、上記反応容器3の各側壁3a,3b,3c,3dの下部の加熱を介してその内側に存在している混合液体4を更に局部加熱することにより、この加熱された領域の混合液体4の密度が低下することに起因して、上記反応容器3に収容してある上記混合液体4に、図1(イ)(ロ)に矢印fで示す如く、上記反応容器3の各側壁3a,3b,3c,3d付近、すなわち、反応容器3の外周部でアップフローとなり、液面付近で反応容器3の外周部より中央部へ向かう流れとなり、反応容器3の中央部、すなわち、上記反応容器3の内底面の中央部に配置した種結晶基板11の真上となる位置でダウンフローとなり、反応容器3の底部付近で中央部より外周部へ向かう流れとなる熱対流を生じさせることができるようにする。
【0031】
更に、上記反応容器3の上方であって且つ該反応容器の内底面に配置してある上記種結晶基板11の真上となる位置、すなわち、反応容器3内の混合液体4に上記のような熱対流を生じさせるときにダウンフローが生じる個所である反応容器3の中央部の真上となる位置に、上記ガリウム供給管10における液体Ga6の吐出口13を配置した構成とする。
【0032】
なお、上記耐圧容器2の外部にて上記ガリウム供給管10の上流側に設ける図示しないガリウム供給部は、ガリウム(Ga)をその融点である約30℃よりも高く且つ上記反応容器3内に貯留する液体Na5の温度未満となる温度域、より好ましくは、後述するように反応容器3内で生じる熱対流のダウンフローを促進する効果を高めると共に、液体Ga6の加熱に要するエネルギー消費を抑えるという点を考慮して、上記温度域のうちのなるべく低い温度域、通常は、上記ガリウム供給管10の吐出口13までの液体Ga6の供給経路におけるガリウム析出による詰りを防止するという観点から、ガリウムの融点+10℃程度の温度に保持可能な恒温槽に貯留した液体Ga6を、供給ポンプにより供給量を適宜調整しながら供給できるようにしてあるものとする。なお、上記ガリウム供給部より供給する液体Ga6の温度の上限を上記反応容器3内に貯留する液体Na5の温度未満となるように設定したのは、反応容器3への液体Ga6の滴下供給によって反応容器3内で生じている熱対流のダウンフローを促進するという効果を得るためである。
【0033】
これにより、上記ガリウム供給管10の吐出口13より、上記反応容器3の中央部に向けて、上記ガリウム供給部における通常の保持温度であるガリウムの融点+10℃程度の液体Ga6、すなわち、該反応容器3で液体Ga6と窒素ガス8の反応条件である600〜1000℃に保持される上記混合液体4の温度に比して大幅に低い温度の液体Ga6を滴下供給できるようにしてある。
【0034】
以上の構成としてある本発明の撹拌装置を装備した窒化ガリウム結晶製造装置1を使用する場合は、上記図示しない窒素ガス供給源より窒素ガス供給管9を通して耐圧容器2内に窒素ガス8を供給した状態で、該耐圧容器2の内部を2〜10MPaに加圧すると共に、上記耐圧容器2内に設けた反応容器3に収容したフラックスとなる液体Na5と液体Ga6からなる混合液体4を、上記耐圧容器2に装備してある加熱手段7により加熱して、600〜1000℃の反応条件に保持する。
【0035】
この状態で、上記ヒータ12a,12b,12c,12dを運転して、上記反応容器3内の混合液体4に、前述したように反応容器3の各側壁3a,3b,3c,3d付近でアップフロー、中央部でダウンフローとなる熱対流を生じさせるようにする。
【0036】
更に、上記図示しないガリウム供給部より、反応容器3内で後述するように窒化ガリウムの結晶14を成長(生成)させることに伴って消費される液体Ga6の量に対応する供給量で液体Ga6を供給して、該液体Ga6を、ガリウム供給管10の吐出口13より上記反応容器3の中央部に向けて滴下供給する。これにより、上記反応容器3の中央部では、液面付近に存在している混合液体4に対して、前述の反応条件である600〜1000℃に比して大幅に低い温度の液体Ga6が供給されるようになるため、該反応容器3中央部の液面付近に存在している混合液体4が、上記ガリウム供給管10より滴下供給された液体Ga6に熱を奪われることで局部冷却されて温度低下するようになる。よって、この温度低下により上記反応容器3の中央部の液面付近に存在している混合液体4の密度が高まるため、上記反応容器3の中央部では、上記熱対流により生じている混合液体4のダウンフローが促進され、このダウンフローが促進されることによって、上記反応容器3に収容された混合液体4全体で生じさせている熱対流が強められて、該混合液体4の撹拌効率が更に高められるようになる。
【0037】
したがって、上記のように反応容器3内で熱対流によって効率よく撹拌される混合液体4では、液面での窒素ガスの溶解により窒素濃度リッチな状態となる液面付近に位置する部分の混合液体4が、上記熱対流により液面に沿って反応容器3の外周部より中央部へ集められた後、該反応容器3の中央部に形成されているダウンフローによって、該反応容器3の内底部の中央部に配置してある種結晶基板11の上面、すなわち、結晶成長面まで速やかに搬送される。この際、上記反応容器3の中央部に存在する混合液体4に対しては、その真上に配置してあるガリウム供給管10の吐出口13より液体Ga6が滴下供給されるため、上記ダウンフローによって上記種結晶基板11の結晶成長面まで導かれる混合液体4は、ガリウム濃度もリッチとなっている。よって、上記種結晶基板11の結晶成長面にて、図1(イ)に二点鎖線で示すように、窒化ガリウム結晶14が効率よく生成して、この窒化ガリウム結晶14が結晶成長面上に効率よく成長するようになる。
【0038】
この際、上記種結晶基板11の結晶成長面に対しては、その中央部に対して垂直な方向から上記窒素濃度とガリウム濃度が共にリッチな混合液体4のダウンフローが当たるようにしてあるため、この種結晶基板11の結晶成長面の中央部に垂直な方向より当たった上記混合液体4の流れは、その後、該種結晶基板11の結晶成長面の中央部から外周側へ周方向の全周に亘りほぼ均等な流量で流れるようになる。これにより、上記結晶成長面では、上記ダウンフローによる窒素濃度とガリウム濃度が共にリッチな混合液体4の流れが当り始める時点から、この流れが該結晶成長面の外周縁部に達するまでの時間を短くすることができるため、該種結晶基板11の結晶成長面に全面に亘りほぼ均等に窒化ガリウム結晶14を成長させることができるようになる。
【0039】
上記のようにして結晶成長面の外周端に達した混合液体4は、該結晶成長面での窒化ガリウム結晶14の成長(生成)に伴い窒素及びガリウムが消費されて窒素濃度及びガリウム濃度が共に低下した状態で上記反応容器3内で生じさせている熱対流による撹拌によって該反応容器3の底部付近で各側壁3a,3b,3c,3d付近まで導かれてから、該各側壁3a,3b,3c,3d付近でのアップフローにより再び液面付近へ送られる。
【0040】
上記のようにして反応容器3の外周部となる各側壁3a,3b,3c,3d付近で液面付近まで送られた混合液体4は、上記熱対流により液面付近で反応容器3の外周部より中央部へ導かれる間に、液面での窒素ガス8の溶解により再び窒素濃度がリッチな状態とされ、更に、該反応容器3の中央部で上記ガリウム供給管10より供給される液体Ga6によってガリウム濃度もリッチな状態とされてから、上記ダウンフローにより上記種結晶基板11上に成長した窒化ガリウム結晶14の上面の結晶成長面へ送られて、窒化ガリウム結晶14の成長に再度供されるようになり、その後、このプロセスが順次繰り返されることで、上記種結晶基板11の上側での窒化ガリウム結晶14の成長が連続して行われるようになる。
【0041】
このように、本発明の窒化ガリウム反応容器の撹拌方法及び装置によれば、ヒータ12a,12b,12c,12dによる反応容器3の下部外周部に存在する混合液体4の局部加熱に加えて、ガリウム供給管10より供給する液体Ga6による反応容器3の中央部液面付近に存在する混合液体4の局部冷却を行うことで、該反応容器3内の混合液体4に熱対流を生じさせるようにしてあるため、耐圧容器2内に機械的な可動部を何ら要することなく、上記反応容器3内の混合液体4を撹拌することができると共に、反応容器3内の混合液体4を局部加熱することのみによって熱対流させる場合に比して、上記反応容器3内の混合液体4の撹拌効率をより高めることができる。
【0042】
更に、窒素濃度及びガリウム濃度が共にリッチな混合液体4を、種結晶基板11あるいはその上に成長した窒化ガリウム結晶14の結晶成長面に速やかに導くことができるため、窒化ガリウム結晶14の成長を効率よく行わせることができる。
【0043】
しかも、上記窒化ガリウム結晶14の成長に伴って消費される液体Ga6は、その消費量に応じた量の液体Ga6をガリウム供給管10より連続的に供給することができるようにしてあると共に、窒素ガス8は窒素ガス供給管9より耐圧容器2内へ連続的に供給できるようにしてあるため、装置構成を大型化することなく上記窒化ガリウム結晶14の成長を長時間に亘り行わせることができて、大きな窒化ガリウム結晶14を効率よく製造することが可能になる。
【0044】
次に、図2(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)と同様の構成において、反応容器3の各側壁3a,3b,3c,3dの外側に設けてある各ヒータ12a,12b,12c,12dの出力(発熱量)を独立して制御するためのコントローラ15を備えてなる構成としたものである。
【0045】
その他の構成は図1(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0046】
本実施の形態によれば、上記コントローラ15により上記各ヒータ12a,12b,12c,12dのうち、いずれか3つのヒータ、たとえば、ヒータ12a,12b,12cの出力(発熱量)に比して、残る1つのヒータ12dの出力(発熱量)を小さくすると、この出力の差に応じて、上記反応容器3における側壁3a,3b,3cの下部付近でその外側に配置されている上記ヒータ12a,12b,12cによって局部加熱される混合液体4の温度に比して、側壁3dの下部付近でその外側に配置された上記ヒータ12dによって局部加熱される混合液体4の温度の方が上がり難くなる。このため、上記反応容器3の側壁3aと3bと3cの内側に位置する部分の混合液体4に生じるアップフローよりも、上記側壁3dの内側に位置する部分の混合液体4に生じるアップフローの方が弱くなるため、反応容器3内の混合液体4に生じる熱対流は、図2(イ)(ロ)に矢印fで示すように、ダウンフローの生じる位置が、該反応容器3の中央部から、上記側壁3dに寄った位置にシフトするようになる。
【0047】
この際、上記反応容器3の中央部の真上に設けてある上記ガリウム供給管10より供給される液体Ga6により、図1(イ)(ロ)に示したものと同様に、上記反応容器3の中央部の液面付近に存在している混合液体4の局部冷却が行われて、この局部冷却による温度低下に伴って反応容器3の中央部液面付近の混合液体4の密度が高まるようになるが、この密度が高まった混合液体4は、上記ヒータ12a,12b,12cとヒータ12dの出力の差に基いて上記反応容器3内で生じている熱対流によって、上記側壁3d寄りにシフトされた位置で生じているダウンフロー側へ導かれると共に、該ダウンフローを促進しながら、反応容器3の内底部に配置してある種結晶基板11の結晶成長面における中心部より上記反応容器3の側壁3d寄りにシフトした位置に向けて流れるようになる。
【0048】
よって、上記種結晶基板11あるいはその上に形成される窒化ガリウム結晶14の結晶成長面では、上記ダウンフローによって導かれる窒素濃度及びガリウム濃度が共にリッチな混合液体4が、上記結晶成長面における中心部より上記反応容器3の側壁3d寄りにシフトした個所に当たるようになるため、該個所で窒化ガリウム結晶14の成長が効率よく行われるようになる。
【0049】
したがって、その後、上記コントローラ15により3つのヒータ12aと12bと12dの出力(発熱量)に比して残る1つのヒータ12cの出力(発熱量)を小さくする操作と、3つのヒータ12aと12cと12dの出力(発熱量)に比してヒータ12bの出力(発熱量)を小さくする操作と、3つのヒータ12bと12cと12dの出力(発熱量)に比してヒータ12aの出力(発熱量)を小さくする操作とを行うことにより、上記種結晶基板11あるいはその上に形成される窒化ガリウム結晶14の結晶成長面にて、反応容器3内の混合液体4に生じさせる熱対流におけるダウンフローの当たる位置、すなわち、窒素濃度とガリウム濃度が共にリッチな混合液体4の当たる位置が、該結晶成長面における中心部より上記反応容器3の側壁3c寄りと側壁3b寄りと側壁3a寄りにそれぞれシフトした個所に順次当てることができるようになるため、上記結晶成長面における窒化ガリウム結晶14の成長が効率よく行われる個所を、該結晶成長面の中心部よりシフトできるようになる。
【0050】
更に、上記のように結晶成長面における窒化ガリウム結晶14の成長が効率よく行われる個所をシフトさせるときのシフト量は、上記コントローラ15による上記4つのヒータ12a,12b,12c,12dのうちのいずれか3つのものの出力と、残る1つのものの出力との差によって調整することができるようになる。
【0051】
又、上記コントローラ15により上記4つのヒータ12a,12b,12c,12dのうち、隣接する2つのものの出力と、残る2つのものの出力に差をつけることで、種結晶基板11あるいはその上に形成される窒化ガリウム結晶14の結晶成長面にて、熱対流のダウンフローに導かれる窒素濃度及びガリウム濃度が共にリッチな混合液体の当たる個所を、該結晶成長面の中心部より対角線方向へシフトさせることもできる。
【0052】
更には、上記4つのヒータ12a,12b,12c,12dの出力を個別に調整することで、上記反応容器3内の混合液体4に生じさせる熱対流のダウンフローの位置を、上記結晶成長面の面内で自在に調整することが可能になる。
【0053】
したがって、本実施の形態によれば、上記図1(イ)(ロ)の実施の形態と同様の効果に加えて、種結晶基板11あるいはその上に形成される窒化ガリウム結晶14の結晶成長面にて、上記熱対流のダウンフローによって導かれる窒素濃度及びガリウム濃度が共にリッチな混合液体4の当たる個所を、該結晶成長面の複数個所で順次移動させたり、連続的に移動させるようにすることにより、種結晶基板11の結晶成長面に対してより均一に窒化ガリウム結晶14を成長させることができる。よって、たとえば、種結晶基板11の結晶成長面の平面サイズが大きい場合に有利なものとすることができる。
【0054】
次いで、図3(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)に示したと同様の構成において、ガリウム供給管10の吐出口13(図1(イ)(ロ)参照)から滴下供給する液体Ga6の供給位置を、たとえば、反応容器の中心より図3(イ)に符号16a,16b,16c,16dに示す如き該反応容器の各側壁3a,3b,3c,3dに寄った位置に変位させることができるようにしたものである。
【0055】
なお、上記のようにガリウム供給位置16a,16b,16c,16dを変位させる手法としては、たとえば、該各ガリウム供給位置16a,16b,16c,16dの上方に個別のガリウム供給管10(図1(イ)(ロ)参照)を設けておき、そのうちの一つを選択して液体Ga6の供給を行うようにすればよい。この場合、使用しない別のガリウム供給管10は、雑結晶の生成を防ぐために窒素ガス等の不活性ガスを流通させておくようにすればよい。
【0056】
あるいは、上記ガリウム供給位置16a,16b,16c,16dを変位させる別の手法としては、耐圧容器2内でガリウム供給管10(図1(イ)(ロ)参照)の下端部を所要の移動機構により機械的に前後左右方向に移動させるようにしてもよい。このように、耐圧容器2内でガリウム供給管10(図1(イ)(ロ)参照)の移動を行わせるための移動機構を設ける構成とする場合であっても、反応容器3自体を揺動する機構を備える場合に比して装置構成を小型にすることが可能である。
【0057】
その他の構成は図1(イ)(ロ)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0058】
本実施の形態によれば、図1(イ)(ロ)に示したものと同様に各ヒータ12a,12b,12c,12dを運転して反応容器3内の混合液体4に該反応容器3の中央部にダウンフローが形成されるような熱対流を生じさせた状態で、たとえば、図3(ロ)に示すように、ガリウム供給位置16aに対してガリウム供給管10(図1(イ)(ロ)参照)より液体Ga6を供給すると、該ガリウム供給位置16aにおける液面付近に存在する混合液体4の局部冷却が行われて、この局部冷却による温度低下に伴って上記ガリウム供給位置16aの液面付近の混合液体4の密度が高まるようになるため、上記ダウンフローが、該ガリウム供給位置16a寄りにシフトされると共に、上記密度が高まった混合液体4の沈降によって促進された状態で、上記種結晶基板11の結晶成長面における中心部より上記ガリウム供給位置16a寄りにシフトした個所に当たるようになるため、該個所で窒化ガリウム結晶14の成長が効率よく行われるようになる。
【0059】
よって、その後、上記液体Ga6を滴下供給する個所を、図3(イ)における上記ガリウム供給位置16b,16c,16dに順次変化させると、上記種結晶基板11あるいはその上に形成される窒化ガリウム結晶14の結晶成長面にて、反応容器3内の混合液体4における窒素濃度とガリウム濃度が共にリッチな混合液体4のダウンフローを、該結晶成長面における中心部より上記各ガリウム供給位置16b,16c,16d寄りにそれぞれシフトした個所に順次当てることができるようになるため、上記結晶成長面における窒化ガリウム結晶14の成長が効率よく行われる個所を、該結晶成長面の中心部よりシフトできるようになる。
【0060】
したがって、本実施の形態によっても、種結晶基板11あるいはその上に形成される窒化ガリウム結晶14の結晶成長面にて、上記熱対流のダウンフローによって導かれる窒素濃度及びガリウム濃度が共にリッチな混合液体4の当たる個所を、該結晶成長面の複数個所で順次移動させるようにすることにより、種結晶基板11の結晶成長面に対してより均一に窒化ガリウム結晶14を成長させることができるため、種結晶基板11の結晶成長面の平面サイズが大きい場合に有利なものとすることができる。
【0061】
なお、本実施の形態におけるガリウム供給位置16a,16b,16c,16dの変化に加えて、図2(イ)(ロ)の実施の形態と同様の各ヒータ12a,12b,12c,12dの出力の制御による熱対流のダウンフローの位置調整を併せて行うようにしてもよい。このようにすれば、種結晶基板11の結晶成長面に対して更に均一に窒化ガリウム結晶14を成長させることが可能になる効果が期待できる。
【0062】
更に、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、耐圧容器2、反応容器3、ガリウム供給管10、種結晶基板11のサイズや形状は、図示するための便宜上の寸法、形状であり、実寸法を反映したものではなく、又、形状は図示したものに限定されるものではない。
【0063】
種結晶基板11は、反応容器3の内底部の中央部に配置することが望ましいが、反応容器3内で発生させる熱対流のダウンフローが種結晶基板11の結晶成長面の面内に当たるようにしてあれば、反応容器3の内底部における該種結晶基板11の配置は、必ずしも中央部に限定されない。
【0064】
耐圧容器2における窒素ガス供給管9の取付個所は図示した以外の個所に設定してもよい。
【0065】
反応容器3における前述した所定の個所に液体Gaを滴下供給できるようにしてあれば、耐圧容器2に対するガリウム供給管10の配管経路は、図示した以外の配置としてもよい。
【0066】
反応容器3は、平面形状を円形等、方形以外の形状としてもよい。
【0067】
図1(イ)(ロ)の実施の形態では、反応容器3の下部外周に設けるヒータの分割数は、周方向に4分割以外の分割数であってもよい。又、周方向に連続するヒータを設けるようにしてもよい。
【0068】
図2(イ)(ロ)の実施の形態では、平面形状方形の反応容器3であれば、各側壁3a,3b,3c,3dの下部外側に個別のヒータ12a,12b,12c,12dを設けることが望ましいが、各側壁3a,3b,3c,3dの下部外側に、水平方向に複数分割されて個別に温度制御できるようにしたヒータを並べて設けるようにしてもよい。このようにすれば、反応容器3内における混合液体4の熱対流のダウンフローを生じさせる個所をより細かく制御する効果が期待できる。
【0069】
又、図2(イ)(ロ)の実施の形態では、反応容器の平面形状が円形である場合は、周方向に3分割以上の分割数のヒータを設けるようにすればよい。
【0070】
耐圧容器2に設ける加熱手段7は、該耐圧容器2内に設けた反応容器内の混合液体を、窒化ガリウム結晶14生成用の反応温度である600〜1000℃に加熱することができるようにしてあれば、図示した以外の配置としてもよく、更には、上下2分割した加熱手段を備えるようにしてもよい。
【0071】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 窒化ガリウム結晶製造装置
2 耐圧容器
3 反応容器
3a,3b,3c,3d 側壁
4 混合液体
5 液体ナトリウム(ナトリウムのフラックス)
6 液体ガリウム(ガリウムの融液)
8 窒素ガス
10 ガリウム供給管
12a,12b,12c,12d ヒータ
14 窒化ガリウム結晶
16a,16b,16c,16d ガリウム供給位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液からなる混合液体を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内の混合液体を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記反応容器に上記混合溶液を収容すると共に、該反応容器の内底部に種結晶基板を配置した状態で、該反応容器の下部外周部をヒータにより加熱して、上記反応容器内の混合液体に該反応容器内における上記種結晶基板の真上でダウンフローとなる熱対流を発生させるようにし、更に、上記反応容器の上方で且つ上記種結晶基板の真上となる位置より該反応容器内へガリウムの融液を滴下供給して、反応容器内における上記種結晶基板の上方に位置する混合溶液を冷却することを特徴とする窒化ガリウム反応容器の撹拌方法。
【請求項2】
反応容器の下部外周部に周方向に3分割以上に複数分割されたヒータを備え、該各ヒータの出力を制御することで、上記反応容器内で発生させる熱対流におけるダウンフローの位置を、種結晶基板の結晶成長面の面内で変化させるようにする請求項1記載の窒化ガリウム反応容器の撹拌方法。
【請求項3】
反応容器におけるガリウムの融液を滴下供給する位置を、種結晶基板の結晶成長面の面内と対応する個所で変位させて、上記反応容器内で発生させる熱対流におけるダウンフローの位置を、種結晶基板の結晶成長面の面内で変化させるようにする請求項1又は2記載の窒化ガリウム反応容器の撹拌方法。
【請求項4】
耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液からなる混合液体を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内の混合液体を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記反応容器の下部外周部に、該反応容器の各側壁の下部内側に位置する部分の混合液体を加熱するためのヒータを設け、上記反応容器の内底部に種結晶基板を配置し、更に、上記反応容器の上方で且つ上記種結晶基板の真上となる位置に、該反応容器へガリウムの融液を供給するためのガリウム供給管を設けてなる構成を有することを特徴とする窒化ガリウム反応容器の撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−121766(P2012−121766A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274094(P2010−274094)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】