説明

窒化物半導体レーザ素子及び窒化物半導体素子

【課題】広範囲の波長帯において、窒化物半導体層の組成分布、例えば、活性層の結晶性やIn含有量を均一にして、寿命特性及び素子特性が一層優れた素子を提供することを目的とする。
【解決手段】窒化物半導体基板の主面上に第1導電型の窒化物半導体層と、活性層と、第1導電型とは異なる導電型をした第2導電型の窒化物半導体層と、前記第2導電型の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部とを備えてなる窒化物半導体レーザ素子であって、前記窒化物半導体基板1の主面には、基準結晶面に対して、少なくとも前記ストライプ状のリッジ部と略平行方向に、オフ角a(θa)を有しているか、あるいは、このオフ角a(θa)と略垂直方向にオフ角b(θb)とを有している窒化物半導体レーザ素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Inを含有する活性層を備えた窒化物半導体レーザ素子及びレーザダイオード、発光ダイオード(LED)、受光素子、高周波トランジスタ、高耐圧トランジスタ等の窒化物半導体素子に関する。特に、特定のオフ角を有する窒化物半導体基板を用いることで素子特性が改善された窒化物半導体レーザ素子及び窒化物半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN等の窒化物半導体からなるレーザ素子は、発振波長を、370nm以下の紫外域から500nm以上の波長域までの広範囲で利用可能である。このようなレーザ素子を形成する基板は、ELOG(Epitaxially Lateral Overgrowth)法と呼ばれるラテラル成長を利用して形成しているものがある。
【0003】
この技術は、周期的なストライプ状の開口部をもつSiO2マスクパターンを形成した下地基板の上に、GaNをラテラル成長させて、GaN層を形成する。次に、下地基板を除去することで、GaN層のみからなる基板を製造する。ラテラル成長した領域のGaNは、転位が低い領域となる。低転位化したGaNの結晶性は良好であるため、このGaNを基板として使用すれば、窒化物半導体レーザ素子の寿命特性を向上させることができる。
【0004】
また、窒化物半導体レーザ素子は、素子特性の向上も要求されている。そのため、基板は、基板自体の低転位化のみならず、良好な結晶性を有する窒化物半導体層をその上に成長させることができるものである必要がある。さらに、窒化物半導体素子を実用化するには、基板自体の大口径化も必要となる。
そのため、六方晶系の窒化物系半導体からなる基板において、(0001)面から所定の方向に1°以上20°以下でオフ角を形成する基板が提案されている(参考文献1)。
【特許文献1】特開2002−16000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この窒化物半導体基板は、オフ角の傾斜範囲とオフ角の傾斜方向とが広範囲であるため、レーザ素子内でのIn、Al等の組成、不純物等の分布がばらつく。特に、Inを含有する活性層を備えているレーザ素子の場合には、発振波長によっては、閾値電流の上昇を招く。窒化物半導体レーザ素子は、理論上、広範囲の波長帯でレーザ発振が可能となるが、実際には組成分布、例えば、活性層内でのIn分布を均一にしなければ、これを実現することができない等の課題がある。
また、1インチ以上に大口径化した基板を製造する場合、この基板の主面上に、ピット及び溝が残るため、基板上に形成する窒化物半導体層によってその表面を平坦化することが必要になるという課題もある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたもので、広範囲の波長帯において、窒化物半導体層の組成分布、例えば、活性層の結晶性やIn含有量を均一にして、寿命特性及び素子特性が一層優れた素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の窒化物半導体レーザ素子は、窒化物半導体基板の主面上に第1導電型の窒化物半導体層と、Inを含有する活性層と、第1導電型とは異なる導電型をした第2導電型の窒化物半導体層と、前記第2導電型の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部とを備えてなり、前記窒化物半導体基板の主面は、基準結晶面に対して、少なくとも前記ストライプ状のリッジ部と略平行方向にオフ角a(θa)を有していることを特徴とする。
【0008】
また、第2の窒化物半導体レーザ素子は、窒化物半導体基板の主面上に第1導電型の窒化物半導体層と、活性層と、第1導電型とは異なる導電型をした第2導電型の窒化物半導体層と、前記第2導電型の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部とを備えてなり、前記窒化物半導体基板の主面は、基準結晶面に対して、前記ストライプ状のリッジ部に略平行方向にオフ角a(θa)と、略垂直方向にオフ角b(θb)とを有していることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の窒化物半導体素子は、窒化物半導体基板の主面上に第1導電型の窒化物半導体層と、活性層と、第1導電型とは異なる導電型をした第2導電型の窒化物半導体層とを順に備えてなり、前記窒化物半導体基板の主面は、M面(1−100)に対して略垂直方向にオフ角a(θa)、略平行方向にオフ角b(θb)を有しており、|θa|>|θb|の関係を満たすことを特徴とする。
【0010】
これらの素子においては、(1)前記基準結晶面は、(0001)面、(11−20)面又は(1−100)面であるか、(2)前記窒化物半導体基板の主面は、(0001)面からなる第1の領域と、少なくとも第1の領域と異なる結晶成長面を有する第2の領域とを備えているか、(3)前記第2の領域は、(000−1)面であるか、(4)前記窒化物半導体基板の主面は、前記第1の領域と前記第2の領域とを略平行に有するか、(5)第1の領域が、リッジの直下に配置されてなるか、(6)0.1°≦|θa|≦0.7°を満たすか、(7)|θa|>|θb|を満たすか(8)第1導電型の窒化物半導体層には、ラテラル成長させたAlを含有するか、(9)第1の領域と第2の領域とは、ストライプ状に極性が分断されているか、の1種以上を備えることが好ましい。
【0011】
さらに、これら素子は、第1導電型の窒化物半導体層と第2導電型の窒化物半導体層との間に、活性層を含んでコア領域が形成され、
前記第1導電型及び第2導電型窒化物半導体層の少なくとも一方に、前記コア領域の最外層から順に第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層とを有しており、
前記コア領域の最外層と前記第1の窒化物半導体層との間及び前記第1の窒化物半導体層と前記第2の窒化物半導体層との間に屈折率差を有することが好ましい。
【0012】
この場合、(a)第1の窒化物半導体層は前記コア領域の最外層よりも屈折率が低いか、(b)第2の窒化物半導体層は第1の窒化物半導体層よりも屈折率が低いか、(c)コア領域の最外層と第1の窒化物半導体層との屈折率差(Δn1)及び/又は第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との屈折率差(Δn2)は、0.004〜0.03であるか、(d)n型窒化物半導体層は、コア領域の最外層に接した第1のn型窒化物半導体層から順に第m(m≧2)のn型窒化物半導体層を有しており、
p型窒化物半導体層は、前記コア領域の最外層に接した第1のp型窒化物半導体層を有しており、
第m(m≧2)のn型窒化物半導体層の屈折率は、第1のp型窒化物半導体層の屈折率より高いか(e)第m(m≧2)のn型窒化物半導体層と第1のp型窒化物半導体層との屈折率差(Δn)は、0.004〜0.03であるか、(f)第m(m≧2)のn型窒化物半導体層と前記コア領域の最外層との屈折率差(Δnm)は、0.007〜0.05であるか、の1種以上を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の素子によれば、窒化物半導体基板の主面が、所定の方向にオフ角を有しているために、窒化物半導体層の組成分布や膜厚分布、例えば、活性層の結晶性やIn含有量を均一にすることができる。原子面の段差を起点とした平坦な結晶成長を行うことができるからである。これによって、基板の主面上に成長する半導体層の界面は、高低差を有する凹凸段差が抑制され、発振波長が365nm以下の紫外領域から、500nm以上の長波長領域に至る範囲を実現し得る活性層において、組成分布を均一化することができる。しかも、このような広範囲の波長帯において、寿命特性及び素子特性に優れた素子を得ることができる。
【0014】
また、本発明の素子が、所定の半導体層において、所定の屈折率差の関係を有している場合には、活性層で発生する光の滞在領域を適切に調整して、安定した光の閉じ込めを行うことにより、CODレベルを向上させることができる。さらに、光強度分布の垂直方向への広がり角を低減させ、アスペクト比を最適化又は2以下に低減することができる。その結果、光の漏れによる閾値電圧の増大を防止し、光出力効率を向上させて集光率が良好で、高信頼性を有する素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の窒化物半導体レーザ素子及び窒化物半導体素子(両者を含めて単に「素子」と記す場合がある)は、窒化物半導体基板(単に「基板」と記す場合がある)の第1の主面上に第1導電型の窒化物半導体層(単に「半導体層」と記す場合がある)と、活性層と、第2導電型(第1導電型とは異なる導電型)の窒化物半導体層とをこの順に備える。なお、窒化物半導体素子は、レーザ素子であってもよいし、LEDであってもよい。特に、レーザ素子の場合には、第2導電型の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部を有していることが好ましい。
【0016】
この素子は、第2導電型の窒化物半導体層上に第2の電極を備え、基板の第2の主面(第1の主面と対向する主面)に第1の電極を備えた対向電極構造とすることができる。この構造により、製造工程を安定化し、大電流を投入することが可能となり、高出力発振をすることができる高品質な素子を歩留まり良く実現することができる。また、第1の主面側に、第1及び第2電極の双方が配置されていてもよい。
【0017】
以下に、本発明の窒化物半導体レーザ素子を、その製造方法とともに説明する。
この素子は、図1(b)及び図2(a)に示したように、窒化物半導体基板101上に、第1導電型窒化物半導体層、活性層、第2導電型窒化物半導体がこの順に形成されており、第2導電型窒化物半導体層の表面にはストライプ状のリッジ部が形成されている。
基板101の主面は、図1(a)、図3(a)及び(b)に示すように、リッジ部と略平行方向A、例えば、[0001]方向及び[1−100]方向からオフ角a(θa°)傾いている。つまり、基板の主面とは、基板の所定の基準結晶面(オフ角の傾斜のない面、例えば、C面)に対して、オフ角aを有する面を指す。
【0018】
また、基板の主面は、図4(a)及び(b)に示すように、所定の基準結晶面に対して、リッジ部と略平行方向Aにオフ角a傾くのに加えて、さらに、オリフラ(OF)面に対して略垂直方向、例えば、[11−20]方向に、オフ角b(θb°)傾いていてもよい。
ここで、基準結晶面とは、例えば、C面、M面、A面、R面等の結晶面を示す。なかでも、C面(0001)、M面(1−100)、A面(11−20)面等が好ましい。
【0019】
「オフ角」とは、基板表面に形成された、所定の基準結晶面に対する傾斜角である。オフ角は、少なくともストライプ状のリッジ部と略平行方向に形成される(オフ角a)ことが好ましく、さらに、オフ角aが形成される方向に対して直交する方向に形成される(オフ角b)ことが好ましい。「略平行方向に形成される」とは、例えば、共振面の光出射面方向に下降するように形成される、共振面の光反射面方向に下降するように形成されている、あるいは、M面(1−100)に対して略垂直方向に形成されることを含む。これによって、リッジ部の直下に位置する活性層の表面モフォロジー及び組成(例えば、In混晶比)を均一にすることができる。
【0020】
オフ角aは、絶対値|θa|が0.02°〜5°程度、0.1°〜0.7°程度、さらに0.15°〜0.6°程度、0.1°〜0.5°程度、0.15°〜0.4°程度、0.2°〜0.3°程度であることが好ましい。オフ角bは、絶対値|θb|が、0°より大、0°〜0.7°程度、0°〜0.5°程度、0°〜0.5°未満、0°〜0.3°程度であることが好ましい。基板がオフ角a及びbを有する場合には、|θa|>|θb|であることが好ましい。これにより、基板の主面上に成長する半導体層の表面モフォロジーが面内で平坦化される。また、半導体層内のAlやIn等の組成分布をより均一化することができる。特に、従来基板では困難であった、活性層におけるIn組成が5%を越える半導体層においても組成分布を均一化することができる。
【0021】
つまり、上述したようなオフ角が形成されていれば、波長が365nm以下の紫外領域から500nm以上の長波長領域に至る範囲で素子特性を向上させることができる。マイクロPLでリッジ又はチップ内を観察したときに、オフ角を有さない基板上に成長させた半導体層内の活性層のInの組成ゆらぎは大きい(図5)のに対して、上述のオフ角を有する基板を用いた場合には、活性層のIn組成のゆらぎを抑制することができる(図6)。
【0022】
半導体層は、第1導電型(例えば、n型)半導体層と第2導電型(例えば、p型)半導体層とで、活性層を挟んだ分離光閉じ込め型構造(Separate Confinement Heterostructure)である。
活性層は、Inを含有することが好ましい。これにより、広範囲の波長帯の素子を実現することができる。また、多重又は単一量子井戸構造のいずれでもよい。量子井戸構造とすることにより、発光効率を向上させることができる。活性層よりバンドギャップの大きい半導体層を、活性層の上下に備えることで、光の導波路が構成される。さらに、活性層の両側にクラッド層(屈折率の低い層)を形成することにより、光及びキャリアの双方を閉じ込めることができる。
【0023】
(第1の工程)
オフ角を有する窒化物半導体基板は、以下のように形成することができる。
まず、図7(a)に示すように、窒化物半導体と異なる材料からなる異種基板10を準備する。異種基板は、サファイア、GaAs、SiC、Si、スピネル、SiO2、SiN、ZnO等が挙げられる。異種基板10の表面は、後に成長させる窒化物半導体の成長面を(0001)面、(11−20)面又は(1−100)面とするものが好ましい。
【0024】
異種基板10の表面上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなるバッファ層(図示せず)を成長させる。バッファ層は、900℃以下の成長温度で、例えば、MOCVD法により、減圧〜大気圧で成長させる。本発明では、半導体層は、例えば、有機金属化学気相成長(MOCVD)法、ハライド気相エピタキシャル成長(HVPE)法、分子線エピタキシー(MBE)法等の気相成長法、窒化物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を用いて形成することができる。
【0025】
その後、図7(b)に示すように、例えば、バッファ層を介して異種基板10表面に凸部10aを形成する。
続いて、転位を低減させた窒化物半導体層100を成長させる。この半導体層100の膜厚は50μm〜10mm程度、好ましくは100μm〜1000μm程度である。この範囲であれば、後工程でのオフ角の形成及びハンドリングを容易にすることができる。
【0026】
次いで、図7(c)に示すように、異種基板を研磨、研削、電磁波照射(エキシマレーザー照射等)又はCMP等により除去して、単体の窒化物半導体層100を取り出すことにより、窒化物半導体基板を得る。この基板は、半導体層100の成長面を第1主面、異種基板10を除去することによる露出面を第2主面とする。
なお、異種基板は、必ずしもここで除去することは必要ではない。後述するn電極の形成までに除去してもよいし、除去しなくてもよい。
【0027】
得られた窒化物半導体基板の第1表面は、例えば、(0001)面、(11−20)面、(1−100)面(M面)等を含むことが好ましい。これにより、基板と窒化物半導体層との界面から発生する転位を低減させることができる。また、ウェハから分割する工程での劈開等を再現性よく行うことができる。
【0028】
基板の第1表面には、転位が面内で周期的に分布しているものであってもよい。例えば、ELO法を用いて低転位密度領域(例えば、第1の領域)と高転位密度領域(例えば、第2の領域)とを交互にストライプ状に形成したものが挙げられる。これにより、基板内の応力を緩和させることができ、基板上に応力緩和層を形成することなく、その上に窒化物半導体層を成長させることができる。
また、第1の領域と第2の領域とはストライプ状に極性が分断されていることが好ましい。これにより、基板に発生する応力や歪みを抑制することができる。また、ウェハの分割工程での劈開等を再現性よく行うことができる。
【0029】
ここで、低転位密度領域とは、単位面積当たりの転位数が1×107/cm2以下、好ましくは1×106/cm2以下、さらに好ましくは5×105/cm2以下の領域である。高転位密度領域とは、低転位密度領域よりも転位密度が高い領域であればよい。
第1の領域と第2の領域とが交互にストライプを形成する場合、第1の領域の幅は10μm〜500μm、さらに100μm〜500μmが好ましい。第2の領域の幅は2μm〜100μm、10μm〜50μmが好ましい。
これらの転位測定はCL観察やTEM観察等で行うことができる。
【0030】
例えば、第1の表面上に形成される低転位密度領域を(0001)面とすれば、高転位密度領域は(0001)面と異なる(000−1)面、(11−20)面、(10−14)面、(10−15)面、(11−24)面等の結晶成長面が挙げられる。特に、(000−1)面が好ましい。このように部分的に結晶成長面が異なる面を有する基板を用いることにより、基板内部に発生する応力や歪みを緩和させることができ、基板上に応力緩和層を形成することなく、半導体層を膜厚5μm以上で積層することが可能となる。つまり、ウェハの反り及びクラックの発生を低減することができる。上述のストライプ形状は、破線状に形成されているものを含む。
【0031】
なお、窒化物半導体の第2の表面は、少なくとも2以上の異なる結晶成長面を有することが好ましく、具体的には(000−1)面、(0001)面、(11−20)面、(10−15)面、(10−14)面、(11−24)面等が挙げられる。本明細書においては、面指数を表す括弧内のバー(−)は、後ろの数字の上に付すものとする。
また、基板の外周形状は特に限定されず、ウェハ状であっても、矩形状等であってもよい。ウェハ状である場合には、1インチ以上、さらに2インチ以上のサイズが好ましい。
【0032】
基板は、2軸結晶法による(0002)回折X線ロッキングカーブの半値幅(Full Width at Half Maximum)が2分以下であることが好ましく、1分以下がより好ましい。
なお、窒化物半導体基板としては、III族元素(B、Ga、Al、In等)と窒素との化合物又は混晶化合物(GaN、AlN、AlGaN、InAlGaN等)が挙げられる。また、この基板は、n型又はp型不純物を含有するものが好ましい。この不純物濃度は、1×1017cm-3〜1×1020cm-3が挙げられる。
この基板は、部分的にサファイア等の絶縁性基板を有するものであってもよい。
窒化物半導体基板は、上述した2段成長のELO法、選択成長法等を用いて形成してもよいし、超臨界流体中で結晶育成させる水熱合成法、高圧法、フラックス法、溶融法等で形成されるバルク単結晶を用いてもよい。また、市販品を用いてもよい。
【0033】
次に、図7(d)に示したように、得られた基板101の表面にオフ角を形成する。オフ角は、基板101の第1の表面に膜厚分布を有するマスク(図示せず)を形成し、その後、マスクをエッチングにより除去し、さらに露出した基板の第1の表面もエッチングし続ける。エッチングは、ウェットエッチング、ドライエッチング(反応性イオンエッチング:RIE、反応性イオンビームエッチング:RIBE、電子サイクロトロン共鳴:ECR、高周波誘導結合プラズマ:ICP、収束イオンビーム:FIB等)、CMP処理等により行うことができる。なかでも、ドライエッチング法を用いることが、オフ角を容易に制御することができるため好ましい。これにより、基板の第1の表面には、エッチング時間に面内分布が生じるため、所望のオフ角を、所望の方向に対して、所望の大きさで形成することができる。
【0034】
あるいは、基板の第1の表面を、研磨する、研削する、レーザー照射により表面処理する方法等を用いてもよいし、バルクの窒化物半導体基板をワイヤーソーでオフ角を有するように切り出してもよい。特に、ドライエッチングによってオフ角を形成する場合には、ドライエッチング装置に基板を傾けてセットするか、傾斜のついた基板ホルダに基板をセットして、エッチングに付す方法であってもよい。さらに、予め異種基板にオフ角を形成し、その上に窒化物半導体層を成長させることで異種基板から窒化物半導体層にオフ角を引き継がせ、この窒化物半導体層から基板を得てもよい。
得られた基板101の第1の主面は、窒化物半導体基板の本来の表面に対してオフ角aを有する。これを用いて素子を形成することで、基板上に成長させた半導体層内では、応力が抑制され、劈開時におけるダメージに耐えることが可能となる。
【0035】
(第2の工程)
次に、図8(a)に示すように、オフ角を有する基板101の第1の主面上に、下層(省略可能なクラック防止層等)を介して、窒化物半導体層200として、例えば、n側層、活性層、p側層をこの順で積層する。半導体層200は、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)等が挙げられる。
【0036】
まず、n側層として、n側クラッド層:n型不純物ドープAlxGa1-xN(0≦x≦0.5)、n側光ガイド層:AlxGa1-xN(0≦x≦0.3)を成長させる。なお、クラッド層及び光ガイド層等という名称は、からなずしもその機能のみを有することを意味するものではなく、その他の機能も果たすことを意味する(p側層も同じ)。n側クラッド層は単一層であれば、一般式はAlxGa1-xN(0≦x≦0.2)であって、膜厚は0.5〜5μmであることが好ましい。多層であれば、第1の層:AlxGa1-xN(0≦x≦0.5、0≦x≦0.1、さらに0<x≦0.3が好ましい)と第2の層:AlyGa1-yN(0.01≦y≦1)との積層構造としてもよい。n側層、特に、多層の場合の第1の層(Alを含有する半導体層)は、ラテラル成長させて形成することが好ましい。これにより、半導体層の表面のさらなる平坦化、半導体層内での組成揺らの抑制が実現できる。ラテラル成長は、炉内での成長温度を1000℃以上、圧力を600Torr以下とすることが好ましい。多層の場合の第1及び第2の層等は、例えば、0.5〜5μmの膜厚が適当である。
【0037】
次に、活性層として、一般式InxAlyGa1-x-yN(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)で表される多重量子井戸構造の半導体層を成長させることが好ましい。井戸層の組成はInの混晶が0<x≦0.5であることが好ましい。井戸層及び障壁層の膜厚は、例えば、10〜300Å、20〜300Åが挙げられ、総膜厚は、例えば、100〜3000Å程度が適当である。また、総膜厚を10〜300Å程度の範囲とすることで、Vf、閾値電流密度を低減させることができる。さらに、Al含有量を調整することで紫外域の発光から、長波長側の発光(例えば、300nm〜650nm、さらに360nm〜580nm)が可能となる。
【0038】
多重量子井戸構造は、障壁層から始まり井戸層で終わっても、障壁層から始まり障壁層で終わっても、井戸層から始まり障壁層で終わっても、井戸層から始まり井戸層で終わってもよい。好ましくは、障壁層から始まり、井戸層と障壁層とのペアを2〜8回繰り返してなるものであって、障壁層で終わる構成である。特にこのペアが2〜3回繰り返してなるものは、しきい値を低下させ、寿命特性を向上させるのに好ましい。
【0039】
続いて、p側層として、電子閉じ込め層(省略可能):p型不純物ドープAlxGa1-xN(0≦x≦0.5)、p側光ガイド層:AlxGa1-xN(0≦x≦0.3)、p側クラッド層:p型不純物ドープAlxGa1-xN(0≦x≦0.5)、p側コンタクト層:p型不純物ドープAlxGa1-xN(0≦x≦1)をこの順に成長させる。これらの半導体層には、Inを混晶させてもよい。各層の膜厚は、30Å〜5μm程度が挙げられる。
【0040】
半導体層200は、基板101の第1主面上に、低温成長バッファ層:AlxGa1-xN(0≦x≦0.3)、中間層202:AlxGa1-xN(0≦x≦0.3)及び/又はクラック防止層:InxAlyGa1-x-yN(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)を介してn側層を成長させた構成でもよい。また、各層の間に応力緩衝層を有する構造又はGRIN構造を用いてもよい。中間層等は、単一又は多層積層構造のいずれでもよい。この中間層等によって、半導体層の表面上に発生する転位(貫通転位等)、ピットを低減させることができる。
【0041】
n側クラッド層、p側クラッド層は、単一層構造、2層構造又は組成比が互いに異なる2層からなる超格子(SL)構造であってもよい。n側及びp側クラッド層の総膜厚は、0.4〜10μmであることが好ましい。これにより、順方向電圧(Vf)を低減することができる。また、クラッド層の全体のAlの平均組成は、0.02〜0.15であることが好ましい。これにより、クラックの発生を抑制することができ、レーザ導波路との屈折率差を得ることができる。
【0042】
n型不純物は、例えば、Si、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr、Cd等が挙げられ、p型不純物は、Mg、Be、Zn、Mn、Ca、Sr等が挙げられる。不純物濃度は5×1016/cm3〜1×1021/cm3程度が好ましい。特に、n型不純物のドープ量は、1×1017/cm3〜5×1019/cm3であることが好ましい。これにより、抵抗率を低くでき、かつ結晶性を損なわない。p型不純物のドープ量は、1×1019/cm3〜1×1021/cm3であることが好ましい。これにより、結晶性を損なわない。不純物ドープは、変調ドープであってもよい。
【0043】
(第3の工程)
基板101上に半導体層200を積層したウェハを、半導体成長装置の反応容器から取り出し、n側層をエッチングすることにより、例えば、n側クラッド層まで露出させる。これにより、応力を緩和することができる。なお、この工程は省略することができるし、エッチングによって露出させる面は、必ずしもn側クラッド層でなくてもよい。エッチングは、RIE法を用いCl2、CCl4、BCl3、SiCl4ガス等の塩素系ガスにより行うことができる。
【0044】
次いで、図8(b)に示すように、p側層表面にストライプ状のリッジ部を形成する。
リッジ部の形成は、まず、p側層の最上層であるp側コンタクト層209の表面に保護膜(図示せず)を形成する。この保護膜は、リッジ部の形状に対応するパターンである。この保護膜をマスクとして、p側層をエッチング除去する。リッジ部は、導波路領域を規定するものであり、幅は1.0μm〜100.0μm程度、高さ(エッチング深さ)は、少なくともp側クラッド層を露出する範囲であればよい。共振器長は300μm〜1000μm程度が好ましい。シングルモードのレーザ光とする場合は、幅は1.0μm〜3.0μmとするのが好ましい。リッジ部の幅を5μm以上とすれば、1W以上の高出力が可能となる。また、大電流を流すと、リッジ部直下では電流が急激に横方向に広がるため、リッジ部の高さはp側光ガイド層まであるのが好ましい。なお、リッジは、上述した低転位密度領域(第1の領域)の上方に配置されるように形成することが好ましい。
【0045】
(第4の工程)
その後、図8(c)に示すように、リッジ部の側面を埋込膜220で保護する。この埋込膜220は、半導体層よりも屈折率が小さく、絶縁性の材料から選択することが好ましい。具体的には、ZrO2、SiO2、V、Nb、Hf、Ta、Al等の酸化物の単層又は多層が挙げられる。
続いて、p側コンタクト層209のリッジ部の上面にp電極230を形成する。好ましくは、p側コンタクト層209及び埋込膜220の上にp電極230を形成する。p電極は多層構造、例えば、Ni(50〜200Å:下層)/Au(500〜3000Å:上層)、Ni/Au/Pt(500〜5000Å)又はNi/Au/Pd(500〜5000Å)が好ましい。
p電極230を形成した後、300℃以上、好ましくは500℃以上で、窒素及び/又は酸素雰囲気下にて、オーミックアニールを行うことが好ましい。
【0046】
次に、図8(d)に示すように、前工程で露出したn側層の側面等に保護膜240を形成する。なお、この保護膜は、図2(b)に示すように、少なくともn側層及びp側層の側面を被覆していればよく、p電極230の一部を被覆していなくてもよい。
さらに、p電極230の上にパッド電極250を形成する。パッド電極250は、Ni、Ti、Au、Pt、Pd、W等の金属からなる積層構造、例えば、W/Pd/Au(1000Å以上)又はNi/Ti/Au(1000Å以上)とすることができる。
【0047】
(第5の工程)
図8(e)に示すように、基板101の第2の主面にn電極210を形成する。
n電極は、Ti、Ni、Au、Pt、Al、Pd、W、Rh、Ag、Mo、V、Hfからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属により、第2の主面の一部又は全面に形成することが好ましい。これにより、基板とn電極とのオーミック特性が容易に得られ、密着性も良く、ウェハを分割するための劈開工程等での電極剥がれを防止することができる。
【0048】
n電極が多層構造の場合、最上層はPtまたはAuであることが好ましい。これにより、電極からの放熱性を向上させることができる。n電極の膜厚は、10000Å以下、さらに6000Å以下が好ましい。多層構造の場合、例えば、基板側がV、Ti、Mo、W、Hf等(500Å以下、Wの場合は300Å以下)であることが好ましい。Vの場合は、膜厚は50〜300Å以下、さらに、70〜200Åが好ましい。これにより、良好なオーミック特性を得ることができ、耐熱性を向上させることができる。具体的には、Ti(100Å:基板側)/Al(5000Å)、Ti/Pt/Au(60Å/1000Å/3000Å)、Ti(60Å)/Mo(500Å)/Pt(1000Å)/Au(2100Å)、Ti(60Å)/Hf(60Å)/Pt(1000Å)/Au(3000Å)、Ti(60Å)/Mo(500Å)/Ti(500Å)/Pt(1000Å)/Au(2100Å)、W/Pt/Au、W/Al/W/Au、Hf/Al、Ti/W/Pt/Au、Ti/Pd/Pt/Au、Pd/Pt/Au、Ti/W/Ti/Pt/Au、Mo/Pt/Au、Mo/Ti/Pt/Au、W/Pt/Au、V/Pt/Au、V/Mo/Pt/Au、V/W/Pt/Au、Cr/Pt/Au、Cr/Mo/Pt/Au、Cr/W/Pt/Au等が挙げられる。n電極を形成した後は、300℃以上でアニールしてもよい。
【0049】
n電極は、第2の主面側に、後工程である基板をバー化するためのスクライブ工程においてスクライブラインとなる領域を除く範囲に、矩形形状で形成することが好ましい。また、n電極上には、n電極と同様のパターン形状でメタライズ電極を形成してもよい。これにより、スクライブしやすくなり、劈開性が向上する。メタライズ電極としては、Ti−Pt−Au−(Au/Sn)、Ti−Pt−Au−(Au/Si)、Ti−Pt−Au−(Au/Ge)、Ti−Pt−Au−In、Au/Sn、In、Au/Si、Au/Ge等が挙げられる。
【0050】
また、この基板の第2の主面にも、オフ角や凹凸段差を形成してもよい。
凹凸段差を形成することで、第2の主面を(000−1)面とすれば、(000−1)面以外の傾斜面を露出させることができる。(000−1)面以外の傾斜面は、n極性を示す面における表面積の0.5%以上さらに1〜20%程度が好ましい。これにより、n電極のオーミック特性を向上させることができる。
ここで、段差とは、界面段差が0.1μm以上であって、段差形状はテーパー形状、逆テーパー形状のものが挙げられる。段差の平面形状は、ストライプ状、格子状、島状、円状や多角形状、矩形状、くし形状、メッシュ形状から選択することができる。例えば、円状の凸部を形成すれば、円状凸部の直径幅は5μm以上とすることができる。また、凹部溝部の幅は少なくとも3μm以上の領域を有すると、電極の剥がれ等がなくなり好ましい。
第2の主面において、(000−1)面以外の傾斜面を露出するには、オフ角を0.2〜90°の範囲で形成することが適当である。
【0051】
(第6の工程)
ストライプ状のp電極230に垂直な方向であって、半導体層の共振面を形成するためにウェハをバー状に分割する。共振面は、M面(1−100)、A面(11−20)とすることが好ましい。分割方法としては、ブレードブレイク、ローラーブレイク又はプレスブレイク等が挙げられる。
この分割は、まず劈開補助溝を形成し、次いで分割する2段階で行うことが好ましい。これにより、共振面を歩留まりよく形成することができる。
つまり、まず、基板の第1又は第2の主面側から、スクライブにより劈開補助溝を形成する。この溝はウェハの全面又はバーとなる領域のウェハの両端に形成する。溝をバーを形成する劈開方向に、破線状に間隔をあけて形成することが好ましい。これによって、劈開方向が屈曲することを抑制し、容易に劈開することができる。また、この溝を第2の主面に形成することにより、FFPのリップルを抑制することができるとともに、電極の剥がれを防止できる。
【0052】
次に、ブレイカーによりウェハをバー状に分割する。劈開方法としては、ブレードブレイク、ローラーブレイク又はプレスブレイク等が挙げられる。
劈開により形成された共振面の光反射側及び/又は光出射面には、反射ミラーを形成してもよい。反射ミラーは、SiO2、ZrO2、TiO2、Al23、Nb25等の誘電体多層膜により形成することができる。特に、出射端面側にはAl23又はNb25が好ましい。これにより、寿命特性が良好となる。劈開によって形成された共振面であれば、反射ミラーを再現性よく形成することができる。
さらに、バー状となった基板を電極のストライプ方向に平行に分割して、素子をチップ化する。チップ化した後の形状は矩形状であることが好ましく、共振面の幅は500μm以下、さらに、400μm以下であることが好ましい。
【0053】
このようにして得られたレーザ素子は、FFPのリップルを抑制した長寿命等の特性を有する。また、対向電極構造の素子であるため、接触抵抗率が1.0E-3Ωcm2以下と低減させることができる。
なお、この素子は、基板の上に複数の導波路領域を有するレーザ素子であってもよいし、ワイドリッジ部を有するレーザ素子であってもよい。
【0054】
また、本発明の素子は、主として、第1導電型(例えば、n型)層と第2導電型(例えば、p型)層との間に、活性層を含むコア領域を有することが好ましい。
ここで、コア領域とは、光導波路領域、つまり、活性層で発生した光を閉じ込め、光波を減衰させずに導波させることができる領域を意味する。通常、活性層とこれを挟む光ガイド層がコア領域を構成し、その膜厚は、例えば、100Å〜1.5μm程度であることが適当である。
n型及びp型層を構成する半導体層は、特に限定されるものではなく、例えば、上述した窒化物半導体層が挙げられる。
【0055】
この素子においては、n型及びp型層の少なくとも一方に、特に、n型層に、コア領域の最外層に隣接して、第1の窒化物半導体層(以下、「第1層」と記す)及び第2の窒化物半導体層(以下、「第2層」と記す)がこの順に配置していることが好ましい。
n型層において、第1層及び第2層は、それぞれ、光の出射角度を調整するための層、光ガイド層及びクラッド層として機能するものであるが、これらの層の積層により、これらの機能を調整することができる。
つまり、n層又はp層を多層化、特にn層を多層化することにより、F.F.P.が狭くなり、活性層での利得を減少させないで、N.F.Pを広げることができる。これによって、閾値電流を維持することができる。さらに、光の出射角度を上向き、下向き等に調整することができ、光出力効率を向上させて集光率の良好な素子を得ることができる。
【0056】
また、第1層とコア領域の最外層、第2層と第1層とは、屈折率が異なることが好ましく、特に、第1層がコア領域の最外層よりも低屈折率を有し及び/又は第2層が第1層よりも低屈折率を有することが好ましい。これらの層は、コア領域の最外層から順に屈折率が低くなるように設定されていることが好ましい。これにより、安定した光の閉じ込めにより、活性層から照射されるビームを安定化させることができる。その結果、レーザ光源として応用が広がる。
【0057】
さらに、コア領域の最外層と第1層との屈折率差(Δn1)及び/又は第1層と第2層との屈折率差(Δn2)が、0.004〜0.03であることが好ましい。これにより、活性層で発生する光の滞在領域をより一層適切に調整することができ、安定した光の閉じ込めを行うことが可能となる。その結果、F.F.Pの広がり角の制御が可能となる。
【0058】
なお、n型層においては、コア領域の最外層に隣接して形成される層は2層に限らず、3層以上、例えば、m層(m≧2)形成してもよい。その上限は特に限定されない。光の閉じ込め効果を考慮すると10層以下、8層以下、さらに6層以下が適当である。特に、コア領域の最外層と第m層との屈折率差(Δnm)は0.008〜0.05、0.07〜0.05の範囲内であることが好ましい。このような範囲に設定することにより、光の閉じ込めを緩和してF.F.Pの広がり角の制御しながら、光の漏れを防止することができる。
【0059】
n型層の屈折率は、通常、その組成によって調整することができ、例えば、Alの混晶比を大きくすることにより、屈折率を小さくすることができる。例えば、第1層と第2層との間で0.004〜0.03の屈折率差を得るために、両者においてAlの組成比に0.01〜0.07程度差異を設けることが適当である。
【0060】
また、第1層及び/又は第2層が、X層とY層との超格子構造からなる場合には、いずれかの層の膜厚のみを変化させる、例えば、第1層ではX層が厚く、第2層ではX層を薄くするなどにより、n型層の屈折率を調整することができる。
n型層において、第1層及び第2層は、例えば、膜厚1000〜10000Å程度が適当である。また、第1層〜第m層まで形成されている場合は、その合計が2000〜40000Å程度であることが適当である。
【0061】
特に、n型層が、AlxGa1-xN(0<x<1)を含んで形成されている場合には、少なくとも、コア領域の最外層から500〜5000Å程度の位置に0.004〜0.03程度の屈折率差を有する層、1500〜20000Å程度の位置に0.004〜0.03程度の屈折率差を有する層が配置することが好ましく、さらに、2500〜25000Å程度の位置に0.004〜0.03程度の屈折率を有する層が配置していることがより好ましい。これにより、その組成及び膜厚にかかわらず、層内部のクラックの発生を防止することができる。従って、より適切な光の閉じ込めを実現することができる。
【0062】
また、n型窒化物半導体層側にm層のn型窒化物半導体層を有し、かつp型窒化物半導体層に第1のp型半導体層を含み、第mのn型窒化物半導体層が、第1のp型窒化物半導体層の屈折率よりも高い屈折率を有する場合には、p側での光の閉じ込め効果を強くすることにより、より安定した光の閉じ込めを行うことができる。しかも、n側での閉じ込めをp側よりも弱くすることにより、n側でのキンクの発生を防止することが可能となる。
【0063】
n型層に、上述した第1層及び第2層が形成されているのであれば、p型層に、必ずしも、第1層及び第2層が形成されていなくてもよい。p型層に第1層が形成されている場合には、この第1層とコア領域の最外層との屈折率差は特に限定されないが、例えば、0.01〜0.2程度が適当である。なお、第1層は、コア領域の最外層よりも屈折率が小さいことが好ましい。これにより、光の閉じ込めを確実に行うことができる。また、第m層と第1層との屈折率差は、例えば、0.004〜0.03程度であることが好ましい。第1層は、第m層よりも屈折率が小さいことが好ましい。さらに、第1層の膜厚は、例えば、1000〜10000Å程度が適当である。第1層は、GaNとAlGaNとを積層した超格子構造とすることが好ましい。また、p側の屈折率をn側よりも小さくするために、Alの混晶比を高く設定したとしても、その膜厚を薄膜化することにより内部のクラックの発生を防止することができ、デバイスの安定性を保つ、つまり、リーク電流を低減させることができる。
【0064】
光ガイド層は、窒化物半導体からなり、導波路形成に十分なエネルギーバンドギャップを有していれば、その組成、膜厚等は特に限定されるものではなく、単層、多層、超格子層のいずれの構造を有していてもよい。具体的には、波長370〜470nmでは、GaNを用い、それよりも長波長ではInGaN/GaNの多層又は超格子層を用いることが適当である。光ガイド層を構成する窒化物半導体の組成、膜厚、構造等は、n側及びp側において同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
本発明において、コア領域、n型層及びp型層の具体的な積層構造は、例えば、
第1のp型窒化物半導体層:AlGaN単層、AlGaN/GaNの多層又は超格子層、
p型光ガイド層:AlGaN単層、GaN単層、AlGaN/GaNの多層又は超格子層、
活性層:InGaN単層、InGaN/InGaNの多層又は超格子層、InGaN/GaNの多層又は超格子層、
n型光ガイド層:GaN単層、InGaN単層、AlGaN単層、GaN/AlGaNの多層又は超格子層、InGaN/AlGaNの多層又は超格子層、AlGaN/AlGaNの多層又は超格子層、
第1のn型窒化物半導体層:AlGaNの単層、GaN/AlGaNの多層又は超格子層、InGaN/AlGaNの多層又は超格子層、AlGaN/AlGaNの多層又は超格子層、
第2のn型窒化物半導体層:AlGaNの単層、GaN/AlGaNの多層又は超格子層、InGaN/AlGaNの多層又は超格子層、AlGaN/AlGaNの多層又は超格子層
等が挙げられる。これらの層は、任意に組み合わせることができる。特に、超格子層の場合には、一方の層又は両方の層において、その組成を変化させたり、膜厚を変化させたり、組成及び膜厚を変化させることにより、各層の屈折率及び屈折率差を上述したように設定することができる。
【0066】
以下に、本発明の素子の実施例を示す。
実施例1
この実施例の半導体レーザ素子の構造を図1(b)及び図2(a)に示す。
このレーザ素子は、主面として、転位密度が1×106/cm2以下で、(0001)面に対してオフ角aが0.3°のGaNからなる基板101上に、低温成長バッファ層(図示せず)と中間層(図示せず)とを介して、n側クラッド層203、n側光ガイド層204、活性層205、p側キャップ層206、p側光ガイド層207、p側クラッド層208、p側コンタクト層209がこの順に積層されて構成される。
【0067】
p側コンタクト層209の表面にはストライプ状のリッジ部が形成されており、リッジの両側には、p側クラッド層208表面が露出している。
p側クラッド層208の露出した面及びリッジ部の側面には埋込層220が形成されている。
リッジ部の上面に接触し、埋込膜220上にわたる領域にはp電極230が形成されている。p電極230上の一部から上述の半導体の積層体の側面を被覆する保護膜240が形成されている。
また、p電極230の上には、pパッド電極250が形成されており、GaN基板101の裏面にはn電極210が形成されている。
【0068】
このような半導体レーザ素子は、以下の製造方法により形成することができる。
(窒化物半導体基板101)
まず、MOCVD反応装置内において、サファイア又はGaAsからなる異種基板を配置して、温度を500℃にする。次に、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3)を用い、GaNよりなるバッファ層(200Å)を成長させる。その後、温度を1050℃にして、GaNよりなる第1の窒化物半導体層(4μm)を成長させる。
続いて、ウェハを反応容器から取り出し、この第1の窒化物半導体の表面に、ストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅10〜300μm、ストライプ間隔(窓部)5〜300μmのSiO2よりなる保護膜を形成する。
【0069】
その後、ウェハをHVPE装置に移送し、原料にGaメタル、HClガス及びアンモニアを用い、n型不純物としてシリコン(Si)又は酸素(O)をドーピングしながらGaNよりなる第2の窒化物半導体(400μm)を成長させる。このように、HVPE法で保護膜上に100μm以上のGaN厚膜を成長させることにより、結晶欠陥を、二桁以上、低減させることができる。
【0070】
異種基板等を除去することにより、第2の窒化物半導体層からなるGaNを窒化物半導体基板101を得る。基板101の膜厚は400μm程度であり、少なくとも導波路の形成を意図する領域において、転位密度が1×106/cm2以下である。
得られた基板101をドライエッチング装置に、所定角度傾けてセットし、ドライエッチングに付すことにより、基板101の主面((0001面))に、この主面に対して、リッジの形成を意図する方向に、0.3°のオフ角aを与える。
【0071】
(n側クラッド層203)
続いて、1000℃〜1080℃でTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、アンモニア、シランガスを用い、Siを1×1018/cm3〜1×1019/cm3ドープしたAl0.03Ga0.97Nよりなるn側クラッド層(膜厚2μm)を成長させる。
【0072】
(n側光ガイド層204)
次いで、シランガスを止め、1000℃〜1080℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層(0.175μm)を成長させる。この層には、n型不純物をドープしてもよいし、INを含有させてもよい。
【0073】
(活性層205)
次に、温度を900℃以下にして、SiドープIn0.02Ga0.98Nよりなる障壁層(140Å)を成長させ、続いて同一温度で、アンドープIn0.07Ga0.93Nよりなる井戸層(70Å)を成長させる。障壁層と井戸層とを2回交互に積層し、最後に障壁層を形成し、総膜厚560Åの多重量子井戸構造(MQW)の活性層を形成する。
【0074】
(p側キャップ層206)
次に、900℃で又は昇温し、TMG、TMA、アンモニア、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、p側光ガイド層よりもバンドギャップエネルギーが大きい、Mgを1×1019/cm3〜1×1020/cm3ドープしたp型Al0.25Ga0.75Nよりなるp側キャップ層(100Å)を成長させる。この層は省略可能である。
【0075】
(p側光ガイド層207)
続いて、Cp2Mg、TMAを止め、1000℃〜1050℃で、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層10よりも小さい、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層(約0.14μm)を成長させる。なお、この層にはp型不純物をドープしてもよいし、Inを含有させてもよい。
【0076】
(p側クラッド層208)
その後、1000℃〜1050℃でアンドープAl0.10Ga0.90Nよりなる層(25Å)を成長させ、続いてTMAを止め、MgドープGaNよりなる層(25Å)を成長させ、総膜厚0.4μmの超格子層よりなるp側クラッド層を成長させる。
【0077】
(p側コンタクト層209)
1050℃で、p側クラッド層の上に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層(150Å)を成長させる。
次いで、ウェハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面にSiO2よりなる保護膜をマスクとして形成し、RIEによって、SiCl4ガスを用いてエッチングする。これにより、n側クラッド層203を露出させる。
【0078】
p側コンタクト層209の表面に、ストライプ状のSiO2よりなる保護膜をマスクとして形成し、RIEを用いてSiCl4ガスによりエッチングする。これにより、ストライプ状の導波路領域であるリッジ部を形成する。
続いて、リッジ部の側面をZrO2からなる埋込層220で保護する。
【0079】
また、導波路領域であるリッジ部の端面近傍で、リッジから離間した位置にフォトリソグラフィー技術を用いて複数の開口部を有するレジストパターンを形成し、RIEを用いてSiCl4ガスにより、n側クラッド層に達するまでエッチングする。これにより、p側コンタクト層の表面に、例えば、六角形状の凹部を形成する。凹部の頂点間の最長距離は1〜10μm、好ましくは2〜5μmとする。この凹部の形成によって、リップルを抑制することができる。この工程は省略してもよい。
次に、p側コンタクト層209及び埋込層220の上の表面にNi(100Å)/Au(1500Å)よりなるp電極230を形成する。
その後、Si酸化膜(SiO2)からなる保護膜240(0.5μm)をp電極230上及び埋込膜220上及び半導体層の側面に、スパッタリングにより成膜する。
【0080】
次いで、600℃でオーミックアニールを行う。
続いて、保護膜で覆われていない露出しているp電極230上に連続して、Ni(1000Å)/Ti(1000Å)/Au(8000Å)をこの順で形成し、pパッド電極250を形成する。
その後、基板の第2の主面に、V(100Å)/Pt(2000Å)/Au(3000Å)よりなるn電極210を形成する。
【0081】
次いで、基板の第1の主面側に凹部溝(深さ:10μm、共振面と平行方向の幅:50μm、垂直方向の幅:15μm)を形成する。この溝を劈開補助線として、基板のn電極の形成面側から劈開し、劈開面(1−100面、六角柱状の結晶の側面に相当する面=M面)を共振面とするバーを得る。
共振器面に誘電体多層膜を形成する。
最後に、p電極230に平行な方向に、バーを分割し、チップ化して半導体レーザ素子を得る。
【0082】
得られたレーザ素子を、複数個それぞれヒートシンクに設置し、p電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みた。その結果、いずれのレーザ素子も、発振波長400〜420nm、閾値電流密度2.9kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示した。また、共振面に劈開傷がなく、図9に示すように、投入電流が140〜170mA、光出力がCW80mW、動作温度が70℃の状態で、寿命が1万時間と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができた。
【0083】
さらに、このレーザ素子の活性領域のIn組成の揺らぎを、リッジ部の下、かつ活性層表面から100μm〜400μmの深さ方向の断面について、マイクロ・フォトルミネッセンス(μ−PL)により測定した。
その結果、図6に示すように、活性層のIn組成のゆらぎは抑制されていた。
【0084】
なお、比較のために、基板がオフ角を有さない以外は実施例1と同様に作製した素子について、同様の測定をした。その結果、図5に示すように、活性層のInの組成ゆらぎは大きかった。
【0085】
実施例2
以下の表に示す構成を変更する以外は、実質的に実施例1と同様のレーザ素子を作製した。
【0086】
【表1】

【0087】
得られた素子を実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長460〜480nm、閾値電流密度2.0kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。
さらに、共振面に劈開傷がなく、光出力がCW80mW、動作温度が60℃の状態で寿命が3000時間と、特に寿命特性の良い長波長レーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0088】
実施例3
この実施例で用いたGaN基板は、主面をC面(0001)とし、M面(1−100)に対して垂直方向にオフ角aが0.23°、平行方向にオフ角bが0.06°傾斜している。
また、このGaN基板の第1及び第2の主面には、C面(0001)からなる第1の領域(1st)と、(000−1)面からなる第2の領域(2nd)が、それぞれ400μmと、20μmの間隔で形成されていた。さらに、この実施例のレーザ素子は、以下の表に示す構成を有している。その他は、実質的に実施例1と同様のレーザ素子である。
【0089】
【表2】

【0090】
得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長400〜420nm、閾値電流密度2.9kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。また、共振面には劈開傷がなく、光出力がCW80mW、動作温度が70℃の状態で寿命が1万時間と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0091】
さらに、このレーザ素子の活性領域の混晶揺らぎをマイクロ・フォトルミネッセンス(μ−PL)により測定した。
その結果、図10(a)に示すように、第1の領域内において波長が均一となっている。
また、窒化物半導体層の表面状態を観察した。
その結果、図10(b)に示すように、第1の領域内において半導体層の表面段差は0.1μm以下に平坦化されている。
【0092】
実施例4〜8
オフ角a(θa)及びオフ角b(θb)を以下の表に示された値にする以外、実施例3と実質的に同様の素子を作製する。
【0093】
【表3】

得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させると、いずれも、実施例3と同様に、長寿命で、優れた表面平坦性が得られる。
【0094】
実施例9
GaN基板は、オフ角aが0.3°、オフ角bが0.05°であり、その上に、以下の表に示す構成を有している以外、実質的に実施例1と同様のレーザ素子である。
【0095】
【表4】

【0096】
得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長403〜407nm、閾値電流密度1.8〜2.0kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。また、光出力がCW200mW、動作温度が25℃の状態で寿命が10000時間以上と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0097】
実施例10
GaN基板は、オフ角aが0.3°、オフ角bが0.05°であり、その上に、以下の表に示す構成を有している以外、実質的に実施例1と同様のレーザ素子である。
【0098】
【表5】

【0099】
得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長373〜376nm、閾値電流密度3.4〜3.5kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。また、光出力がCW30mW、動作温度が25℃の状態で寿命が8000時間と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0100】
実施例11
GaN基板は、オフ角aが0.3°、オフ角bが0.05°であり、その上に、以下の表に示す構成を有している以外、実質的に実施例1と同様のレーザ素子である。
【0101】
【表6】

【0102】
得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長373〜376nm、閾値電流密度2.2〜2.3kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。また、光出力がCW100mW、動作温度が25℃の状態で寿命が1000時間以上と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0103】
実施例12
GaN基板は、オフ角aが0.3°、オフ角bが0.05°であり、その上に、以下の表に示す構成を有している以外、実質的に実施例1と同様のレーザ素子である。
【0104】
【表7】

【0105】
得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長442〜449nm、閾値電流密度2.5kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。また、光出力がCW30mW、動作温度が50℃の状態で寿命が10000時間と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0106】
実施例13
GaN基板は、オフ角aが0.3°、オフ角bが0.05°であり、その上に、以下の表に示す構成を有している以外、実質的に実施例1と同様のレーザ素子である。
【0107】
【表8】

【0108】
得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長442〜449nm、閾値電流密度1.7〜1.8kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。また、光出力がCW150mW、動作温度が25℃の状態で寿命が10000時間と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0109】
実施例14
GaN基板は、オフ角aが0.3°、オフ角bが0.05°であり、その上に、以下の表に示す構成を有している以外、実質的に実施例1と同様のレーザ素子である。
【0110】
【表9】

【0111】
得られた素子について、実施例1と同様にレーザ発振させた。
発振波長467〜475nm、閾値電流密度2.9kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示す。また、光出力がCW20mW、動作温度が50℃の状態で寿命が5000時間と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができる。
【0112】
比較例1〜3
以下の表に示すオフ角とする以外、実施例3と実質的に同様の素子を作製する。
【0113】
【表10】

これらの素子の活性領域の混晶揺らぎ及び窒化物半導体層の表面状態を、実施例3と同様に測定した。その結果、いずれの比較例においても、第1の領域内において波長が不均一となった。また、第1の領域内において半導体層に段差があり、平坦化されていない。
【0114】
実施例15
この実施例の素子は、半導体層の構成を以下に示すように変更する以外、実質的に実施例1と同様の素子を作製する。
−n側層における第2層として、Al0.08Ga0.92N(25Å)/GaN(25Å)を220回繰り返した総膜厚1.1μmの超格子構造(平均Al混晶は4%)、
−第1層として、Al0.05Ga0.95N(25Å)/GaN(25Å)を60回繰り返した総膜厚3000Åの超格子構造(平均Al混晶は2.5%)、
−コア領域におけるn型光ガイド層として、GaN層(1700Å)、
−活性層として、In0.05Ga0.95Nからなる障壁層(140Å)/In0.1Ga0.9Nからなる井戸層(70Å)を2回繰り返し、その上にIn0.05Ga0.95Nからなる障壁層(300Å)を形成した総膜厚約720Åの多重量子井戸構造(MQW)、
−p型ガイド層として、GaN(1500Å)、
−p側層における第1層として、Al0.1Ga0.9N(20Å)/GaN(20Å)を300回繰り返した総膜厚4500Åの超格子構造(平均Al混晶は4.9%)を有する。
【0115】
また、p電極は、Ni/Au、n電極はTi/Alとし、パッド電極としてNi−Ti−Au(1000Å−1000Å−8000Å)が形成されている。共振器長は、650μmである。
【0116】
この素子について、いずれのレーザ素子も、発振波長405nm、閾値電流密度2.8kA/cm2において、室温で良好な連続発振を示した。
また、共振面に劈開傷がなく、光出力がCW5mW、動作温度が60℃の状態で、寿命が2000時間以上と、特に寿命特性の良いレーザ素子を再現性良く製造することができた。
さらに、この素子の広がり角及びアスペクト比を、それぞれ測定し、以下に示す比較例の素子と比較した。その結果、広がり角では約8%、アスペクト比では約6%低減させることができた。
【0117】
比較例は、上述した素子において、第2のn型窒化物半導体層及び第1のn型窒化物半導体層を設ける代わりに、n型クラッド層として、Al0.08Ga0.92N(25Å)/GaN(25Å)を繰り返し、総膜厚1.4μmの超格子構造(平均Al混晶は4%)を1層のみ形成した。
【0118】
実施例16
この実施例は、n側層の第2層を、超格子構造の2層構造とする以外、実施例15の素子と同様である。つまり、温度を1050℃にして、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.12Ga0.88NよりなるA層を25Åの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25Åの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ160回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚8000Åの多層膜(超格子構造)よりなる第2のn型窒化物半導体層の下層を形成する。この第2層の下層の平均Al混晶は6%である。
【0119】
続いて、温度を1050℃にして、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.08Ga0.92NよりなるA層を25Åの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25Åの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ60回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚3000Åの多層膜(超格子構造)よりなる第2層の上層を成長させる。この第2層の上層の平均Al混晶は4%である。
その後、実施例15と同様に、第1のn型窒化物半導体層以降を形成し、窒化物半導体素子を得る。
【0120】
得られた素子について、実施例1と同様の評価を行うとともに、広がり角及びアスペクト比を測定した。
その結果、実施例1と同様の効果が得られた。
また、上記の比較例に対して、広がり角では約20%、アスペクト比では約13%低減させることができた。つまり、光の閉じ込め効果が緩和されていることに起因して、F.F.P.における光の広がり角度を抑えることができ、これによって、アスペクト比を低減させることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の素子は、光ディスク用途、光通信システム、印刷機、光通信システム、露光用途、測定等の種々のデバイスに利用することができる。また、特定波長(470〜490nm付近)に感度を有する物質に、本発明の素子から得た光を照射することで、その物質の有無又は位置を検出することができるバイオ関連の励起光原等にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の窒化物半導体レーザ素子の模式的斜視図である。
【図2】本発明の窒化物半導体基板の模式的断面図である。
【図3】本発明の窒化物半導体基板のオフ角を説明するための図である。
【図4】本発明の窒化物半導体基板の別のオフ角を説明するための図である。
【図5】従来の窒化物半導体レーザ素子のマイクロPL測定データである。
【図6】本発明の窒化物半導体レーザ素子のマイクロPL測定データである。
【図7】本発明の窒化物半導体基板の一製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明の窒化物半導体レーザ素子の一製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の窒化物半導体レーザ素子のライフデータを示す図である。
【図10】本発明の窒化物半導体レーザ素子における活性領域の混晶揺らぎをマイクロ・フォトルミネッセンス(μ−PL)により測定した断面図(a)及び窒化物半導体層の表面状態を観察した断面図(b)である。
【図11】比較例1の窒化物半導体レーザ素子における活性領域の混晶揺らぎをマイクロ・フォトルミネッセンス(μ−PL)により測定した断面図(a)及び窒化物半導体層の表面状態を観察した断面図(b)である。
【図12】比較例2の窒化物半導体レーザ素子における活性領域の混晶揺らぎをマイクロ・フォトルミネッセンス(μ−PL)により測定した断面図(a)及び窒化物半導体層の表面状態を観察した断面図(b)である。
【図13】比較例3の窒化物半導体レーザ素子における活性領域の混晶揺らぎをマイクロ・フォトルミネッセンス(μ−PL)により測定した断面図(a)及び窒化物半導体層の表面状態を観察した断面図(b)である。
【符号の説明】
【0123】
101…窒化物半導体基板、200…窒化物半導体層、203…n側クラッド層、204…n側光ガイド層、205…活性層、206…p側キャップ層、207…p側光ガイド層、208…p側クラッド層、209…p側コンタクト層、220…埋込膜、230…p電極、240…保護膜、250…パッド電極



【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体基板の主面上に第1導電型の窒化物半導体層と、Inを含有する活性層と、第1導電型とは異なる導電型をした第2導電型の窒化物半導体層と、前記第2導電型の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部とを備えてなる窒化物半導体レーザ素子であって、
前記窒化物半導体基板の主面は、基準結晶面に対して、少なくとも前記ストライプ状のリッジ部と略平行方向に、オフ角a(θa)を有していることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
【請求項2】
窒化物半導体基板の主面上に第1導電型の窒化物半導体層と、活性層と、第1導電型とは異なる導電型をした第2導電型の窒化物半導体層と、前記第2導電型の窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部とを備えてなる窒化物半導体レーザ素子であって、
前記窒化物半導体基板の主面には、基準結晶面に対して、前記ストライプ状のリッジ部に略平行方向にオフ角a(θa)と、略垂直方向にオフ角b(θb)とを有していることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記基準結晶面は、(0001)面、(11−20)面又は(1−100)面である請求項1又は2に記載の素子。
【請求項4】
前記窒化物半導体基板の主面は、(0001)面からなる第1の領域と、少なくとも第1の領域と異なる結晶成長面を有する第2の領域とを備えている請求項3に記載の素子。
【請求項5】
前記第2の領域は、(000−1)面である請求項4に記載の素子。
【請求項6】
前記窒化物半導体基板の主面は、前記第1の領域と前記第2の領域とを略平行に有する請求項4又は5に記載の素子。
【請求項7】
第1の領域が、リッジの直下に配置されてなる請求項4〜6のいずれか1つに記載の素子。
【請求項8】
0.1°≦|θa|≦0.7°を満たす請求項1〜7のいずれか1つに記載の素子。
【請求項9】
|θa|>|θb|を満たす請求項2〜8のいずれか1つに記載の素子。
【請求項10】
第1導電型の窒化物半導体層は、ラテラル成長させたAlを含有する層を含む請求項1〜9のいずれか1つに記載の素子。
【請求項11】
第1導電型の窒化物半導体層と第2導電型の窒化物半導体層との間に、活性層を含んでコア領域が形成され、
前記第1導電型及び第2導電型窒化物半導体層の少なくとも一方に、前記コア領域の最外層から順に第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層とを有しており、
前記コア領域の最外層と前記第1の窒化物半導体層との間及び前記第1の窒化物半導体層と前記第2の窒化物半導体層との間に屈折率差を有する請求項1〜10のいずれか1つに記載の素子。
【請求項12】
第1の窒化物半導体層は前記コア領域の最外層よりも屈折率が低い請求項11に記載の素子。
【請求項13】
第2の窒化物半導体層は第1の窒化物半導体層よりも屈折率が低い請求項11又は12に記載の素子。
【請求項14】
コア領域の最外層と第1の窒化物半導体層との屈折率差(Δn1)及び/又は第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との屈折率差(Δn2)は、0.004〜0.03である請求項11〜13のいずれか1つに記載の素子。
【請求項15】
n型窒化物半導体層は、コア領域の最外層に接した第1のn型窒化物半導体層から順に第m(m≧2)のn型窒化物半導体層を有しており、
p型窒化物半導体層は、前記コア領域の最外層に接した第1のp型窒化物半導体層を有しており、
第m(m≧2)のn型窒化物半導体層の屈折率は、第1のp型窒化物半導体層の屈折率より高い請求項11〜14のいずれか1つに記載の素子。
【請求項16】
第m(m≧2)のn型窒化物半導体層と第1のp型窒化物半導体層との屈折率差(Δn)は、0.004〜0.03である請求項15に記載の素子。
【請求項17】
第m(m≧2)のn型窒化物半導体層と前記コア領域の最外層との屈折率差(Δnm)は、0.007〜0.05である請求項15又は16に記載の素子。
【請求項18】
窒化物半導体基板の主面上に第1導電型の窒化物半導体層と、活性層と、第1導電型とは異なる導電型をした第2導電型の窒化物半導体層とを順に備えてなる窒化物半導体素子であって、
前記窒化物半導体基板の主面は、M面(1−100)に対して略垂直方向にオフ角a(θa)、略平行方向にオフ角b(θb)を有しており、|θa|>|θb|の関係を満たすことを特徴とする窒化物半導体素子。
【請求項19】
0.1°≦|θa|≦0.7°を満たす請求項18に記載の素子。
【請求項20】
窒化物半導体基板の主面は、C面(0001)からなる第1の領域と、少なくとも第1の領域と異なる結晶成長面を有する第2の領域とを備えている請求項18又は19に記載の素子。
【請求項21】
第1の領域と第2の領域とは、ストライプ状に極性が分断されている請求項20に記載の素子。
【請求項22】
第1導電型の窒化物半導体層には、ラテラル成長させたAlを含有する窒化物半導体層を有する請求項18〜21のいずれか1つに記載の素子。
【請求項23】
第1導電型の窒化物半導体層と第2導電型の窒化物半導体層との間に、活性層を含んでコア領域が形成され、
前記第1導電型及び第2導電型窒化物半導体層の少なくとも一方に、前記コア領域の最外層から順に第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層とを有しており、
前記コア領域の最外層と前記第1の窒化物半導体層との間及び前記第1の窒化物半導体層と前記第2の窒化物半導体層との間に屈折率差を有する請求項18〜22のいずれか1つに記載の素子。
【請求項24】
第1の窒化物半導体層は前記コア領域の最外層よりも屈折率が低い請求項23に記載の素子。
【請求項25】
第2の窒化物半導体層は第1の窒化物半導体層よりも屈折率が低い請求項23又は24に記載の素子。
【請求項26】
コア領域の最外層と第1の窒化物半導体層との屈折率差(Δn1)及び/又は第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との屈折率差(Δn2)は、0.004〜0.03である請求項23〜25のいずれか1つに記載の素子。
【請求項27】
n型窒化物半導体層は、コア領域の最外層に接した第1のn型窒化物半導体層から順に第m(m≧2)のn型窒化物半導体層を有しており、
p型窒化物半導体層は、前記コア領域の最外層に接した第1のp型窒化物半導体層を有しており、
第m(m≧2)のn型窒化物半導体層の屈折率は、第1のp型窒化物半導体層の屈折率より高い請求項18〜26のいずれか1つに記載の素子。
【請求項28】
第m(m≧2)のn型窒化物半導体層と第1のp型窒化物半導体層との屈折率差(Δn)は、0.004〜0.03である請求項27に記載の素子。
【請求項29】
第m(m≧2)のn型窒化物半導体層と前記コア領域の最外層との屈折率差(Δnm)は、0.007〜0.05である請求項27又は28に記載の素子。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−66869(P2006−66869A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46577(P2005−46577)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】