説明

窒化物半導体基板の製造方法

【課題】平坦化された表面を有する窒化物半導体基板を単純な方法で得るための技術を提供する。
【解決手段】窒化物半導体基板の製造方法は、互いに反対側の面である第1面112および第2面114を有し、前記第1面112の側が凸面をなし前記第2面114の側が凹面をなすように反っている板状窒化物半導体結晶110を準備する準備工程と、前記板状窒化物半導体結晶110の前記第2面114の側をプレート200に向け、前記第1面112の側が凸面をなし前記第2面114の側が凹面をなす状態で前記板状窒化物半導体結晶110を前記プレート200で支持する支持工程と、前記プレート200で支持された前記板状窒化物半導体結晶110の前記第1面112を平坦化する平坦化工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体基板の製造方法に係り、特に、平坦化された表面を有する窒化物半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体基板の表面を研削して加工変質層を形成すると、研削表面が周縁方向に広がるために基板に反りが生じる。すなわち、平坦な面を研削して加工変質層を形成すると、研削面が凸形状となるように基板に反りが生じる。この原理を利用して、窒化物半導体基板の凹形状に反った面を研削して加工変質層を与えることにより、凹形状を緩和して平坦な形状に近づけることが提案されている。また、窒化物半導体基板の凹形状に反った面を研削していったん凸形状にし、エッチングによって加工変質層の一部を除去することにより平坦な形状に近づけることも提案されている。さらに、このような研削とエッチングを両面で行うことにより、一段と平坦な形状に近づけやすくすることも提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、これとは異なり、基板に荷重をかけて研削した後に荷重を解放することにより、復元しようとする内部応力を利用して反りを調整する技術も提案されている。具体的には、GaN単結晶基板のGa面に予め加工歪を与えて凸形状にした後、平坦なプレートにGa面が接触するように無荷重で貼付けた状態で基板のN面を加工歪フリーの平坦に加工し、次いでプレートから基板を取り外し、取り外した基板をプレートにN面が接触するように荷重をかけて貼付けた状態でGa面を加工歪フリーの平坦に加工し、その後に荷重を解放してプレートから基板を取り外して仕上げる加工方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に開示された方法は、窒化物半導体基板に加工変質層を形成することによって窒化物半導体基板の反りを制御することを必須の工程とするものである。特許文献2に開示された方法は、GaN単結晶基板のGa面に予め加工歪を与えて凸形状にすることを必須の工程とするものである。つまり、いずれの特許文献に開示された技術も、反りを有する窒化物半導体基板の当該反りを制御するための加工変質層ないし加工歪みを形成することなく平坦化する技術とは対立するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−136167号公報
【特許文献2】特開2007−284283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、窒化物半導体結晶をスライスすることによって窒化物半導体基板を得た場合に、得られた窒化物半導体基板に反りが生じることを発見した。このような反りは、特に、{0001}面(C面)と非平行な切断面が形成されるように該窒化物半導体結晶をスライスした場合に顕著に現れる。その他、窒化物半導体基板の反りは、特許文献1、2に開示されているように、下地基板の上に窒化物半導体を成長させて、下地基板を除去した際にも生じうる。
【0007】
反りを有する窒化物半導体基板の当該反りを制御するための加工変質層ないし加工歪みを形成する方法では、加工変質層ないし加工歪みを形成する工程だけでは十分な平坦性が得られず、その後に該基板の表面を平坦化する必要があり、工程が複雑化しうる。
【0008】
本発明は、平坦化された表面を有する窒化物半導体基板を単純な方法で得るための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、窒化物半導体基板の製造方法に係り、前記製造方法は、互いに反対側の面である第1面および第2面を有し、前記第1面の側が凸面をなし前記第2面の側が凹面をなすように反っている板状窒化物半導体結晶を準備する準備工程と、前記板状窒化物半導体結晶の前記第2面の側をプレートに向け、前記第1面の側が凸面をなし前記第2面の側が凹面をなす状態で前記板状窒化物半導体結晶を前記プレートで支持する支持工程と、前記プレートで支持された前記板状窒化物半導体結晶の前記第1面を平坦化する平坦化工程とを含む。
【0010】
前記第1面および/または前記第2面は、例えば、矩形形状でありうる。
【0011】
前記準備工程では、例えば、窒化物半導体結晶をスライスすることによって前記板状窒化物半導体結晶を得ることができる。ここで、前記準備工程では、C面と非平行な切断面が形成されるように前記窒化物半導体結晶をスライスしてもよい。
【0012】
前記支持工程は、前記板状窒化物半導体結晶をホットメルト接着剤によって前記プレートに固定する工程を含みうる。
【0013】
前記準備工程で準備される前記板状窒化物半導体結晶は、第1状態の反りを有しうる。この場合において、前記支持工程は、前記第1状態の反りを有する前記板状窒化物半導体結晶の全面を前記プレートに押し付けることによって前記板状窒化物半導体結晶の反りを前記第1状態の反りよりも小さい第2状態の反りにしながら前記板状窒化物半導体結晶をホットメルト接着剤によって前記プレートに接着する工程と、前記板状窒化物半導体結晶を前記プレートに押し付ける力をなくし又は該力を弱くするとともに、前記ホットメルト接着剤を加熱することにより流動状態とし、これにより、前記板状窒化物半導体結晶の反りを前記第2状態の反りよりも大きい第3状態の反りとし、その後、前記ホットメルト接着剤を硬化させる工程とを含みうる。
【0014】
本発明の第2の側面に係る窒化物半導体基板の製造方法は、窒化物半導体結晶をスライスすることによって、互いに反対側の面である第1面および第2面を有し、所定方向に沿った断面において前記第1面の側が凸面をなし前記第2面の側が凹面をなすように反っている板状窒化物半導体結晶を得る準備工程と、前記板状窒化物半導体結晶の前記第2面の側をプレートに向けた状態で前記板状窒化物半導体結晶をホットメルト接着剤によって前記プレートに固定する固定工程と、前記プレートに固定された前記板状窒化物半導体結晶の前記第1面を平坦化する平坦化工程とを含み、前記固定工程では、前記板状窒化物半導体結晶の前記所定方向における中央部と前記プレートとの間には前記ホットメルト接着剤が存在しない空隙が形成され、前記板状窒化物半導体結晶の前記所定方向における周辺部が前記ホットメルト接着剤によって前記プレートに接着されるように、前記板状窒化物半導体結晶を前記プレートに固定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平坦化された表面を有する窒化物半導体基板を単純な方法で得るための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】板状窒化物半導体結晶を準備する準備工程を説明するための図である。
【図2】板状窒化物半導体結晶を準備する準備工程を説明するための図である。
【図3】反りを有する板状窒化物半導体結晶を例示する図である。
【図4】板状窒化物半導体結晶をプレートに固定することによって板状窒化物半導体結晶を該プレートで支持する支持工程(あるいは固定工程)を説明するための図である。
【図5】板状窒化物半導体結晶をプレートに固定することによって板状窒化物半導体結晶を該プレートで支持する支持工程(あるいは固定工程)における第1工程を説明するための図である。
【図6】板状窒化物半導体結晶をプレートに固定することによって板状窒化物半導体結晶を該プレートで支持する支持工程(あるいは固定工程)における第2工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態の窒化物半導体基板の製造方法を説明する。
【0018】
窒化物半導体は、好ましくは第13族金属窒化物半導体であり、より好ましくはGaAlIn1−x−yN(式中0<x≦1)で表され、例えば、GaNである。窒化物半導体は、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線エピタキシ法(MBE法)またはハイドライド気相成長法(HVPE法)といったエピタキシャル成長法により、下地基板の上に形成されうる。窒化物半導体の結晶は、ウルツ鉱型構造を有し、例えば、{0001}面(C面)、{11−20}面(A面)、{1−102}面(R面)、{1−100}面(M面)および{1−101}面(S面)を有する。なお、以下では、窒化物半導体の例としてGaNを挙げて説明するが、本発明は、例えば、板状窒化物半導体結晶の平坦化時における該板状窒化物半導体結晶の支持の方法、または、該板状窒化物半導体結晶の形状や結晶表面を研磨する順番などに特徴を有するものであり、該板状窒化物半導体結晶の組成によって限定されるものではないので、GaN以外の窒化物半導体にも適用されうる。
【0019】
本発明の好適な実施形態の窒化物半導体基板の製造方法は、板状窒化物半導体結晶を準備する準備工程と、板状窒化物半導体結晶をプレートに固定することによって板状窒化物半導体結晶を該プレートで支持する支持工程(あるいは固定工程)と、プレートで支持された板状窒化物半導体結晶を平坦化する平坦化工程とを含みうる。
【0020】
図1は、板状窒化物半導体結晶を準備する準備工程を説明するための図である。まず、窒化物半導体結晶としてのGaN結晶からなる窒化物半導体結晶100を形成する。窒化物半導体結晶100としてのGaN結晶は、例えば、Ga面(+C面)、N面(−C面)を有する。準備工程では、C面と非平行なスライス面(ここでは、(20−21)面)が形成されるように、窒化物半導体結晶100をスライスして板状窒化物半導体結晶110を得る。スライスには、ワイヤーソーが使用されうる。
【0021】
板状窒化物半導体結晶110の形状は板状であれば特に限定されないが、後述する支持工程において第1面の側が凸面をなし第2面の側が凹面をなす状態でプレートで支持する際に安定しやすいことから、前記第1面および/又は第2面が矩形形状であることが好ましい。矩形形状であると図6の周辺部20が点ではなく線として板状窒化物半導体結晶110を支えることができるためである。第1面および/又は第2面が矩形形状とするためには、窒化物半導体結晶100をスライスする前に、立方体、直方体などの六面体の形状に加工しておくことが好ましいが、スライス後に矩形形状に加工しても良い。
【0022】
ここで、(20−21)面に平行なスライス面SLに沿って窒化物半導体結晶100が切断されることが理想的である。しかしながら、実際には、図2に例示されるような湾曲した切断面CSが形成され、この現象には高い再現性が認められる。したがって、スライスによって得られる板状窒化物半導体結晶110は、図3(a)に例示されるように、反りを有する形状になる。より詳しくは、スライスによって形成される板状窒化物半導体結晶110は、互いに反対側の面である第1面112および第2面114を有し、第1面112の側が凸面をなし第2面114の側が凹面をなすように反っている。一例として、CSに沿った長さが9mmの板状窒化物半導体結晶110における反りは、第1面112の高低差で評価したところ、7.2μmであり、第1面112の曲率で評価したところ、0.71m−1であった。ここで、本発明で用いられる板状窒化物半導体結晶は、結晶に対して外部から応力をかけない状態で反っているものである。つまり、板状窒化物半導体結晶が有する「反り」はスライスなどの工程において、切断面が直線的に切り出されなかった場合に生じるものであって、外部から応力をかけて変形させるような場合を含まない。
【0023】
図3(a)に例示される板状窒化物半導体結晶110は、3(b)に例示されるように、スライス面SLに垂直な側面を有するように成形されうる。この成形には、例えば、ダイヤモンド砥石が使用されうる。板状窒化物半導体結晶110の角部分は、結晶方位を示すノッチが形成されてもよいし、欠けを防ぐための面取りがなされてもよい。
【0024】
なお、本発明は、窒化物半導体結晶をスライスすることによって得られる板状窒化物半導体結晶の平坦化のほか、反りを有するあらゆる板状窒化物半導体結晶の平坦化に適用されうる。
【0025】
図4〜図6は、図3(a)又は図3(b)に例示される板状窒化物半導体結晶110をプレートに固定することによって板状窒化物半導体結晶110を該プレートで支持する支持工程(あるいは固定工程)を説明するための図である。支持工程では、板状窒化物半導体結晶110の第2面114の側を研磨装置のプレート200に向け、第1面112の側が凸面をなし第2面14の側が凹面をなす状態(即ち、板状窒化物半導体結晶110が反りを有する状態)で、板状窒化物半導体結晶110をプレート200で支持する。支持工程は、例えば、板状窒化物半導体結晶110をホットメルト接着剤150によってプレート200に固定する工程を含みうる。
【0026】
なお、ホットメルト接着剤は、ワックスと呼ばれることもある。ホットメルト接着剤は、加熱すると軟化し、外力を加えて変形あるいは流動させることができるといった熱可塑性を有する。そして、温度を下げると硬くなり、再び加熱すると軟化する。
【0027】
支持工程は、ホットメルト接着剤による方法に代えて、板状窒化物半導体結晶110を機械的クランプ機構、真空吸着機構または静電吸着機構などの他の方法によってプレート200に固定する工程を含んでもよい。
【0028】
以下、支持工程(あるいは固定工程)のより具体的な実施形態として、ホットメルト接着剤によって板状窒化物半導体結晶110をプレート200に固定する手順を例示的に説明する。ここで、準備工程で準備される板状窒化物半導体結晶110は、第1状態の反りを有するものとして説明する。
【0029】
以下で例示的に説明する支持工程(あるいは固定工程)は、第1工程および第2工程を含みうる。
【0030】
まず、第1工程では、図4に例示されるように、プレート200の上にホットメルト接着剤150を塗布し、第1面112の側が凸面をなし第2面114の側が凹面をなす状態(即ち、板状窒化物半導体結晶110が反りを有する状態)で、板状窒化物半導体結晶110の第2面114の側を研磨装置のプレート200に向けて、1又は複数の板状窒化物半導体結晶110をプレート200の上に置く。このときの板状窒化物半導体結晶110は、第1状態の反りを有する。
【0031】
支持工程において複数の板状窒化物半導体結晶110をプレート200で支持する際には、プレート200の支持面(板状窒化物半導体結晶110を支持する面)を基準として板状窒化物半導体結晶110の姿勢(向き)を一定に統一することが好ましい。ここで、姿勢は、板状窒化物半導体結晶110の向きを示す基準(例えば、板状窒化物半導体結晶110の第1面112の中心位置における第1面112の法線、または、(20−21)軸などの結晶軸)の向きによって表現されうる。複数の板状窒化物半導体結晶110の姿勢(向き)を統一することにより、1度の平坦化工程で複数の窒化物半導体基板を製造した際に各々の基板間で基板表面の結晶軸方位を揃えることが可能となるため、生産性向上につながり好ましい。
【0032】
次に、図5に模式的に示すように、第1状態の反りを有する板状窒化物半導体結晶110の全面を押し付け部材220によってプレート200に押し付けることによって板状窒化物半導体結晶110の反りを第1状態の反りよりも小さい第2状態の反りにしながら板状窒化物半導体結晶110をホットメルト接着剤150によってプレート200に接着する。ここで、第2状態の反りは、反りが全くない状態を含みうる。接着の際には、ホットメルト接着剤150に流動性(粘着性)を与えるためにホットメルト接着剤150を加熱し、その後、押し付け部材220によって板状窒化物半導体結晶110をプレート200に押し付けた状態でホットメルト接着剤150を硬化させる。ホットメルト接着剤150の硬化は、よく知られているように、ホットメルト接着剤150を冷却(例えば、自然冷却)することによって起こる。押し付け部材220は、例えば、バルーンを含みうる。
【0033】
第1工程において、押し付け部材220によって板状窒化物半導体結晶110をプレート200に押し付けた状態でホットメルト接着剤150を硬化させることによって、プレート200の支持面(板状窒化物半導体結晶110を支持する面)を基準として板状窒化物半導体結晶110の姿勢(向き)を一定に統一することができる。つまり、第1工程では、板状窒化物半導体結晶110の下に存在していたホットメルト接着剤150に板状窒化物半導体結晶110が押し付けられることによって、ホットメルト接着剤150は、板状窒化物半導体結晶110の外側に押し出される。そのため、板状窒化物半導体結晶110の下のホットメルト接着剤が均一な薄い層となる。これにより、複数の板状窒化物半導体結晶110における処理のばらつきを低減することができる。第1工程の後、第2工程の前に、板状窒化物半導体結晶110の外側のホットメルト接着剤150を拭き取る工程が実施されうる。
【0034】
次に、第2工程では、板状窒化物半導体結晶110をプレート200に押し付ける力をなくし又は該力を弱くするとともに、ホットメルト接着剤150を加熱することにより流動状態とし、これにより、図6に模式体に示すように、板状窒化物半導体結晶110の反りを第2状態の反りよりも大きい第3状態の反りとし、その後、ホットメルト接着剤150を硬化させる。ここで、板状窒化物半導体結晶110をプレート200に押し付ける力をなくすには、押し付け部材220を取り去ればよく、典型的には、第1工程の終了後に押し付け部材220を取り去ればよい。板状窒化物半導体結晶110をプレート200に押し付ける力を弱くするには、押し付け部材220が板状窒化物半導体結晶110に加える力を弱くすればよい。
【0035】
第2工程は、ホットメルト接着剤150を再加熱し、その後に冷却(例えば、自然冷却)することによって実現することができる。再加熱は、例えば120℃で3分間にわたってなされうる。第2工程の実施により、図6に模式的に示すように、板状窒化物半導体結晶110の所定方向(図6では、Y方向)における中央部とプレート200との間にはホットメルト接着剤150が存在しない空隙10が形成され、板状窒化物半導体結晶110の該所定方向における周辺部20がホットメルト接着剤150によってプレート200に接着されるように、板状窒化物半導体結晶110がプレート200に固定される。
【0036】
つまり、第1工程において板状窒化物半導体結晶110の全面をプレート200に押し付けた状態でホットメルト接着剤150を加熱し冷却することによって、板状窒化物半導体結晶110は、その反りが小さく矯正される(第1状態の反りから第2状態の反りになる)。そして、第2工程において、板状窒化物半導体結晶110をプレート200に押し付ける力をなくし又は該力を弱くした状態でホットメルト接着剤150を加熱し冷却することによって、板状窒化物半導体結晶110の反りは、元の状態(即ち、第1状態の反り)に近づく。ここで、ホットメルト接着剤150が流動状態になったときに、板状窒化物半導体結晶110の所定方向(図6では、Y方向)における中央部が復元力によってプレート200から離隔しようとするので、プレート200との間にはホットメルト接着剤150が存在しない空隙10が形成されうる。
【0037】
支持工程(あるいは固定工程)に次いで平坦化工程が実施される。平坦化工程では、例えば、図6に模式的に示される状態のプレート200を研磨パッド(不図示)に対向させて、プレート200と研磨パッドとを相対的に運動させることによって、板状窒化物半導体結晶110の第1面112が研磨され平坦化される。これによって、例えば、(20−21)面を表面に有する板状窒化物半導体結晶110が得られる。平坦化工程では、例えば、研磨剤として15μmダイヤスラリーが使用されうる。平坦化工程の後、板状窒化物半導体結晶110がプレート200から取り外される。
【0038】
次いで、板状窒化物半導体結晶110の第2面114を平坦化する第2平坦化工程が実施されうる。第2平坦化工程は、例えば、板状窒化物半導体結晶110の第1面112(より正確には、平坦化された第1面112)を研磨装置のプレート200にホットメルト接着剤などによって固定し、該研磨装置によって研磨する工程を含みうる。第2平坦化工程では、例えば、研磨剤として15μmダイヤスラリーが使用されうる。その後、板状窒化物半導体結晶110は、プレート200から取り外されて、エッチングされうる。エッチングは、例えば、120℃のKOH水溶液(例えば、47%)に10分間浸漬する工程を含みうる。
【0039】
次いで、板状窒化物半導体結晶110の第1面112を更に平坦化する第3平坦化工程が実施されうる。第3平坦化工程は、例えば、板状窒化物半導体結晶110の第2面114(より正確には、平坦化された第2面114)を研磨装置のプレート200にホットメルト接着剤などによって固定し、該研磨装置によって研磨する工程を含みうる。第3平坦化工程は、例えば、ダイヤスラリーを用いてなされる研磨と、その後のコロイダルシリカを用いてなされる研磨とを含みうる。以上の工程により、第1面112および第2面114が平坦化された窒化物半導体基板が得られる。
【実施例】
【0040】
以上の方法で製造された窒化物半導体基板の反りは、第1面112の高低差で評価したところ、0.6μmであり、第1面112の曲率で評価したところ、0.06m−1であった。一方、支持工程における第2工程を実施しないこと以外は上記と同様の方法で製造された窒化物半導体基板の反りは、第1面112の曲率で評価したところ、1.6m−1であった。
【符号の説明】
【0041】
100 窒化物半導体結晶
SL スライス面
NL 法線
CS 湾曲した切断面
110 板状窒化物半導体結晶
112 第1面
114 第2面
150 ホットメルト接着剤
200 プレート
220 押し付け部材
10 空隙
20 周辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側の面である第1面および第2面を有し、前記第1面の側が凸面をなし前記第2面の側が凹面をなすように反っている板状窒化物半導体結晶を準備する準備工程と、
前記板状窒化物半導体結晶の前記第2面の側をプレートに向け、前記第1面の側が凸面をなし前記第2面の側が凹面をなす状態で前記板状窒化物半導体結晶を前記プレートで支持する支持工程と、
前記プレートで支持された前記板状窒化物半導体結晶の前記第1面を平坦化する平坦化工程と、
を含むことを特徴とする窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1面および/または前記第2面が矩形形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記準備工程では、窒化物半導体結晶をスライスすることによって前記板状窒化物半導体結晶を得る、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記準備工程では、C面と非平行な切断面が形成されるように前記窒化物半導体結晶をスライスする、
ことを特徴とする請求項3に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記支持工程は、前記板状窒化物半導体結晶をホットメルト接着剤によって前記プレートに固定する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記準備工程で準備される前記板状窒化物半導体結晶は、第1状態の反りを有し、
前記支持工程は、
前記第1状態の反りを有する前記板状窒化物半導体結晶の全面を前記プレートに押し付けることによって前記板状窒化物半導体結晶の反りを前記第1状態の反りよりも小さい第2状態の反りにしながら前記板状窒化物半導体結晶をホットメルト接着剤によって前記プレートに接着する工程と、
前記板状窒化物半導体結晶を前記プレートに押し付ける力をなくし又は該力を弱くするとともに、前記ホットメルト接着剤を加熱することにより流動状態とし、これにより、前記板状窒化物半導体結晶の反りを前記第2状態の反りよりも大きい第3状態の反りとし、その後、前記ホットメルト接着剤を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
【請求項7】
窒化物半導体結晶をスライスすることによって、互いに反対側の面である第1面および第2面を有し、所定方向に沿った断面において前記第1面の側が凸面をなし前記第2面の側が凹面をなすように反っている板状窒化物半導体結晶を得る準備工程と、
前記板状窒化物半導体結晶の前記第2面の側をプレートに向けた状態で前記板状窒化物半導体結晶をホットメルト接着剤によって前記プレートに固定する固定工程と、
前記プレートに固定された前記板状窒化物半導体結晶の前記第1面を平坦化する平坦化工程とを含み、
前記固定工程では、前記板状窒化物半導体結晶の前記所定方向における中央部と前記プレートとの間には前記ホットメルト接着剤が存在しない空隙が形成され、前記板状窒化物半導体結晶の前記所定方向における周辺部が前記ホットメルト接着剤によって前記プレートに接着されるように、前記板状窒化物半導体結晶を前記プレートに固定する、
ことを特徴とする窒化物半導体基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−49448(P2012−49448A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192307(P2010−192307)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】