窒化物系LEDの製造方法
【課題】窒化物半導体の無極性面または半極性面を機械的に加工する工程を含みながらも、該加工に起因する発光効率の低下が防止される、無極性または半極性の窒化物系LEDの製造方法を提供する。
【解決手段】無極性または半極性の窒化物半導体基板を含む窒化物半導体積層体を準備する第1工程と、該窒化物半導体積層体の底面を機械的に削ることによって該窒化物半導体積層体の厚さを減じる第2工程と、該第2工程で生じる着色部が除去されるように該窒化物半導体積層体の底面をドライエッチする第3工程と、を有し、該第3工程では、エッチバック法を用いることによって該窒化物半導体積層体の底面の平坦性を改善する、窒化物系LEDの製造方法が提供される。
【解決手段】無極性または半極性の窒化物半導体基板を含む窒化物半導体積層体を準備する第1工程と、該窒化物半導体積層体の底面を機械的に削ることによって該窒化物半導体積層体の厚さを減じる第2工程と、該第2工程で生じる着色部が除去されるように該窒化物半導体積層体の底面をドライエッチする第3工程と、を有し、該第3工程では、エッチバック法を用いることによって該窒化物半導体積層体の底面の平坦性を改善する、窒化物系LEDの製造方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体で形成された発光構造を有する窒化物系発光ダイオード素子(以下、窒化物系LEDともいう)を製造する方法に関し、とりわけ、無極性または半極性の窒化物系LEDを製造する方法に関する。窒化物半導体は、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)、(Al,Ga,In)Nなどの一般式で表される化合物半導体であり、III族窒化物半導体、窒化物系半導体、窒化ガリウム
(GaN)系半導体などとも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
GaN、GaInN、AlGaN、AlGaInNのような窒化物半導体を用いた半導体デバイスが実用化されている。代表的なデバイスは、窒化物半導体でダブルヘテロpn接合型の発光構造を構成した、発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光素子である。特に、c面サファイア基板上にヘテロエピタキシャル成長された発光構造を有する窒化物系LEDは、バックライトや照明のための光源として大量に生産されている。
【0003】
発光デバイスに用いられる窒化物半導体の結晶は、六方晶のウルツ鉱型構造を有している。上述の、c面サファイア基板を用いた窒化物系LEDは、発光構造を構成するn型層、活性層およびp型層がc軸方向に積層された発光構造を有しているために、発光効率を低下させるピエゾ電界が活性層内部に形成されるといわれている。この問題を解決するために提案されているのが、無極性または半極性のGaN基板上に発光構造をホモエピタキシャル成長させることにより得られる、無極性または半極性の窒化物系LEDである(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0004】
ここで、無極性のGaN基板とは、c面(極性面と呼ばれる)から90度傾いた面(無極性面と呼ばれる。例えば、m面やa面。)を主面とするGaN基板のことである。また、半極性のGaN基板とは、c面からの傾斜が無極性面よりも小さい面(半極性面と呼ばれる。)を主面とするGaN基板のことである。ただし、主面のc面からの傾斜が僅かであるGaN基板は、通常、オフ角が付されたc面基板として取り扱われる。窒化物半導体基板に付与されるオフ角は、通常は10度以内である。
【0005】
c面GaN基板上に発光構造を有する窒化物系LEDにおいて、光取出し面として利用する基板の裏面を光電気化学(PEC)エッチングのようなウェットエッチング加工で粗化して、光取出し効率を改善する試みが行われている。一方、無極性または半極性のGaN基板上に発光構造を有する無極性または半極性の窒化物系LEDにおいては、ウェットエッチング加工により基板の裏面を粗くすることができないという問題が指摘されている(非特許文献5)。そこで、かかる窒化物系LEDについては、基板の裏面をドライエッチして粗化する試みが行われている(特許文献1、非特許文献5、非特許文献6)。
【0006】
半導体の分野において、多層配線基板を作製するに際し、配線層間に設ける絶縁膜を平坦化する方法としてエッチバック法が知られている。エッチバック法を応用して、粗い窒化物半導体層の表面を平坦化できることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/070809号公報
【特許文献2】特開2006−196692号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A. Chakraborty, B. A. Haskell, S. Keller, J. S. Speck, S. P. DenBaars, S. Nakamura and U. K. Mishra: Japanese Journal of Applied Physics 44 (2005) L173
【非特許文献2】K. Okamoto, H. Ohta, D. Nakagawa, M. Sonobe, J.Ichiharaand H. Takasu: Japanese Journal of Applied Physics 45 (2006) L1197
【非特許文献3】R. B. Chung, Y-D. Lin, I.Koslow, N. Pfaff, H. Ohta, J. Ha, S. P. DenBaarsand S. Nakamura: Japanese Journal of Applied Physics 49 (2010) 070203
【非特許文献4】I. L. Koslow, J. Sonoda, R. B. Chung, C-C. Pan, S. Brinkley, H. Ohta, S. Nakamura and S. P. DenBaars: Japanese Journal of Applied Physics 49 (2010) 080203
【非特許文献5】H. Zhong, A. Tyagi, N. Pfaff, M. Saito, K. Fujito, J. S. Speck, S. P. DenBaars and S. Nakamura: Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 03020
【非特許文献6】Y. Zhao, J. Sonoda, C-C. Pan, S. Brinkley, I. Koslow, K. Fujito, H. Ohta, S. P. DenBaars and S. Nakamura: Applied Physics Express 3 (2010) 102101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
窒化物半導体の無極性面や半極性面は、機械的な刺激を受けると容易に着色する。詳細は明らかでないが、その原因は、表面近傍の窒素原子が脱離し易いからであると推定される。窒素原子が脱離した跡には、可視光を吸収する性質を持った空孔が残されるものと考えられる。原因が何であれ、窒化物系LEDにとって構成物質の着色は、発光効率を著しく低下させるので好ましくない。本発明の主たる目的は、窒化物半導体の無極性面または半極性面を機械的に加工する工程を含みながらも、該加工に起因する発光効率の低下が防止される、無極性または半極性の窒化物系LEDの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
次に挙げる窒化物系LEDの製造方法を提供する。
(1)底面および上面を有し、底面側から上面側に向かって、無極性または半極性の窒化物半導体基板と、該窒化物半導体基板の上に成長したn型窒化物半導体層と、該n型窒化物半導体層の上に成長した窒化物半導体からなる活性層と、該活性層の上に成長したp型窒化物半導体層とを、この順に含む窒化物半導体積層体を準備する第1工程と、該窒化物半導体積層体の底面を機械的に削ることによって該窒化物半導体積層体の厚さを減じる第2工程と、該第2工程で生じる着色部が除去されるように該窒化物半導体積層体の底面をドライエッチする第3工程と、を有し、該第3工程では、エッチバック法を用いることによって該窒化物半導体積層体の底面の平坦性を改善する、窒化物系LEDの製造方法。
(2)上記第3工程の後に、上記活性層が発する光を反射するミラーを上記窒化物半導体積層体の底面に形成する第4工程を有する、上記(1)に記載の製造方法。
(3)上記第2工程または第3工程で上記窒化物半導体基板が消失する、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、上記(3)に記載の製造方法。
(5)上記第3工程の後に、開口部を有するマスクパターンを上記半導体積層体の底面に形成し、該マスクパターンの開口部に露出する上記窒化物半導体積層体をドライエッチすることによって、上記半導体積層体の底面の一部または全部を粗化する第5工程を有する、上記(1)に記載の製造方法。
(6)上記第5工程では上記半導体積層体の底面の一部を粗化し、上記半導体積層体の底
面のうち上記第5工程で粗化しない部分に電極を形成する、上記(5)に記載の製造方法。
(7)上記第2工程、第3工程、第5工程のいずれかの工程で、上記窒化物半導体基板が消失する、上記(5)または(6)に記載の製造方法。
(8)上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、上記(7)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
上記の製造方法によれば、窒化物半導体の無極性面または半極性面を機械的に加工しながらも、該加工に起因する発光効率の低下のない、無極性または半極性の窒化物系LEDを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】窒化物系LEDの構造を示しており、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のX−X線の位置における断面図である。
【図2】図1に示す窒化物系LEDの製造工程を説明するための断面図である。
【図3】図1に示す窒化物系LEDの製造工程を説明するための断面図である。
【図4】図1に示す窒化物系LEDの製造工程を説明するための断面図である。
【図5】窒化物半導体基板の裏面に割り溝を形成したウェハの断面図である。
【図6】窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図7】図7(a)および(b)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図8】図8(a)および(b)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図9】図9(a)、(b)および(c)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図10】図10(a)および(b)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図1に示す窒化物系LED10の製造手順に即して、本発明実施形態に係る製造方法を説明する。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のX−X線の位置における断面図である。
【0014】
窒化物系LED10は窒化物半導体積層体Lを有している。窒化物半導体積層体Lは、底面L1側から上面L2側に向かって、無極性または半極性の窒化物半導体基板11と、該基板の上に成長したn型窒化物半導体層12と、該n型窒化物半導体層の上に成長した窒化物半導体からなる活性層13と、該活性層の上に成長したp型窒化物半導体層14とを、この順に含んでいる。n型窒化物半導体層12、活性層13およびp型窒化物半導体層14は、ダブルヘテロpn接合型の発光構造を構成している。窒化物半導体積層体Lから、p型窒化物半導体層14および活性層13が部分的に除去されることにより露出したn型窒化物半導体層12の表面には、n電極E1が形成されている。p型窒化物半導体層14の上面には、透光性電極E2が、該上面の略全体を覆うように形成されている。透光性電極E2の一部上にp電極E3が形成されている。
【0015】
窒化物系LED10は、次の手順により製造することができる。
(i)エピタキシャル成長工程
無極性または半極性の窒化物半導体基板11を準備し、MOVPE法のような気相成長法を用いて、該基板上にn型窒化物半導体層12、活性層13およびp型窒化物半導体層14を順次エピタキシャル成長させる。窒化物半導体基板11は、例えば、m面GaN基
板、a面GaN基板、半極性(10−1−1)GaN基板、半極性(10−11)GaN基板、半極性(11−2−2)GaN基板、半極性(11−22)GaN基板、半極性(20−2−1)GaN基板、半極性(20−21)GaN基板、半極性(10−1−2)GaN基板、半極性(10−12)GaN基板、半極性(10−1−3)GaN基板、半極性(10−13)GaN基板、半極性(30−3−1)GaN基板、半極性(30−31)GaN基板、などである。窒化物半導体基板11の厚さは、例えば、300〜500μmである。
【0016】
(ii)電極形成工程
エピタキシャル成長工程の完了後、定法に従って、n電極E1、透光性電極E2およびp電極E3の形成を行う。n電極E1はAl、Ti、W、Crなどの上に、Auを積層した構造とすることができる。透光性電極E2は、ITO(インジウム錫酸化物)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、酸化ガリウムのような透明導電性酸化物を用いて形成することができる。p電極E3は、n電極E1と同様の構造とすることができる。図1には示していないが、通常は、これらの電極を形成した後、n電極とp電極の表面を除き、ウェハ表面をSiO2のような透光性の無機絶縁材料からなる絶縁保護膜で被覆する。
【0017】
(iii)基板薄肉化工程
電極形成工程の後、窒化物半導体積層体Lの底面、すなわち、無極性または半極性の窒化物半導体基板11の裏面を機械的に削って、該基板の厚さを200μm以下、好ましくは150μm以下まで減じる。80μm未満とする場合には、ハンドリング中にウェハが割れ易くなり、歩留まりが低下する可能性があるので注意を要する。加工方法としては、グラインディング、ラッピング、ポリッシングなどが例示される。グラインディングやラッピングによれば、窒化物半導体基板の厚さを数時間で100μm以上も減じることができる。
【0018】
この基板薄肉化工程では、好ましくは、ラッピングとポリッシングを併用して、窒化物半導体基板11の裏面に残る加工痕(溝など)の深さを10μm以下とする。ポリッシングによる平坦化は、長時間を要するので、この工程では行わない。短時間のポリッシングで加工痕を取り除こうとすると、窒化物半導体基板の着色を避けることができない。
【0019】
(iv)着色部分除去工程(エッチバック工程)
この工程では、前述の基板薄肉化工程で窒化物半導体基板11の裏面に形成された着色部分を、ドライエッチングにより除去する。その際、エッチバック法を用いることによって、基板裏面の平坦性改善を同時に行う。
図2(a)は、基板薄肉化工程から上がってきたばかりのウェハの断面図であり、窒化物半導体基板11の裏面には加工痕が残っている。この裏面上にフォトレジストPをスピンコートすると、図2(b)に示すように、加工痕はフォトレジストによって埋め込まれるが、フォトレジストの表面は表面張力によって平坦となる。
【0020】
スピンコート後、フォトレジストPと窒化物半導体基板11のエッチング速度が同じとなる条件でドライエッチすることにより、最初はフォトレジストの表面を削り取っていく。やがて、図3(c)に示すように基板11が露出するが、フォトレジストと基板のエッチング速度が同じであるため、その後も、ウェハの裏面は平坦に保たれたままエッチングが進行する。その様子を示したのが図3(d)である。
フォトレジストが消失するまでエッチングを続けると、図4(e)に示すように、窒化物半導体基板11の裏面が平坦化した状態となる。平坦化後のエッチング量は、除去すべき着色部分の厚さに応じて調節する。
【0021】
(v)ダイシング工程
着色部分除去工程の完了後、定法に従ってウェハを分割し、窒化物系LEDをチップ状にする(図4(f))。
上記工程( i)〜(v)を順次行うことによって、薄い窒化物半導体積層体Lを有する
、薄い窒化物系LEDを効率よく製造することができる。薄型のLEDは、コンパクトなパッケージに実装できるという利点がある。また、発光効率を改善するうえでも薄型化は有用と考えられる。
【0022】
上記製造方法によれば、着色部分除去工程(iv)で窒化物半導体基板11の裏面が平坦となるので、ダイシング工程(v)では、図5に示すように割り溝Gを基板11の裏面に形成し、この割り溝Gを起点にしてウェハをブレーキングする方法を好ましく用いることができる。基板の裏面の平坦性が高いと、割り溝G以外の部分を起点としてウェハが割れることがないので、ブレーキング工程における不良の発生が防止される。
【0023】
窒化物系LED10は、図6に示すように、窒化物半導体積層体Lの底面側にn電極E1を配置した構成とすることもできる。この構成では、該底面(窒化物半導体基板11の裏面)の平坦性が高いほど、該底面と接するn電極の表面E1aの平坦性が高くなり、それに伴って、この表面E1aの反射率も高くなる。従って、窒化物半導体積層体Lの底面の平坦性が高いほど、n電極E1の表面E1aによる光吸収に起因する損失が小さくなることになる。
【0024】
図7に示すように、窒化物系LED10では、窒化物半導体積層体Lの底面上に、活性層13から発せられる光を反射させるミラーMを設けることができる。図7(a)の例では、n電極E1とp電極E2が両方とも窒化物半導体積層体Lの上面L2側に配置されており、ミラーMは窒化物半導体積層体Lの底面(窒化物半導体基板11の裏面)全体を覆うように設けられている。図7(b)の例では、窒化物半導体積層体の底面側に設けられたn電極E1が、ミラーMに形成された貫通孔を通して、窒化物半導体基板11の裏面に接している。
【0025】
ミラーMはAl膜、Ag膜のようなメタル膜を含んでもよいし、DBRのような多層膜型の反射膜を含んでもよい。ミラーMは、また、単層または多層の透明薄膜上にメタル膜を積層した構造であってもよい。窒化物半導体積層体Lの底面の平坦性が高いほど、ミラーMの反射面の平坦性も高くなり、ひいては、その反射率も高くなる。また、ミラーMが多層膜型の反射膜を含む場合には、窒化物半導体積層体Lの底面の平坦性が高いほど、多層膜を構成する単位膜の膜厚を高精度で制御でき、また、多層膜構造の乱れも小さくなる。
【0026】
図8に示すように、窒化物系LED10では、光取出し効率を高めるために、窒化物半導体積層体Lの底面(窒化物半導体基板11の裏面)を粗化することができる。図8(a)は、n電極E1とp電極E3を両方とも窒化物半導体積層体Lの上面側に設けた例、図8(b)はn電極E1を窒化物半導体積層体Lの底面側に設けた例を示している。図8(b)の例では、窒化物半導体積層体Lの下面の一部を平坦なままとし、その部分にn電極E1を形成している。
【0027】
窒化物半導体積層体の底面を粗化するための好ましい方法は、該底面を部分的に露出させるマスクパターンを用いたドライエッチング加工である。粗化加工の前に該底面の平坦性を高くしておくことは、このマスクパターンを再現性よく形成するうえで重要である。中でも、メタル薄膜を加熱することにより自発的に生じるボールアップ現象を利用してメタル製のナノマスクパターンを形成する場合や、レーザ干渉露光によりサブミクロンスケールの微細な周期的マスクパターンを形成する場合には、特に重要である。サブミクロンスケールの微細なマスクパターンを用いて窒化物半導体積層体の底面をドライエッチ加工
することによって、全反射が発生しない、光透過性に極めて優れた粗化面を形成することができる。
【0028】
上記製造方法では、基板薄肉化工程(iii)において、無極性または半極性の窒化物半
導体基板11の全部または実質的に全部を、窒化物半導体積層体Lから取り除いてしまうこともできる。この方法を用いて製造する場合、窒化物系LED10は、図9に示すように、窒化物半導体積層体Lの下面側に支持基板Sを取り付けた構造とするか、あるいは、図10に示すように、窒化物半導体積層体Lの上面側に支持基板を取り付けた構造とすることができる。このような、窒化物半導体基板の全部または実質的に全部を、窒化物系LEDの最終構造から取り除く方法は、Naフラックス法やアモノサーマル法のような液相法で製造される窒化物半導体基板を用いる場合に有用である。液相法で得られる窒化物半導体基板は、全体が不純物のために着色している場合があるからである。
【0029】
図9(a)に示す例では、ミラーMを挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。この場合、支持基板は適当な接着剤を用いてミラー層に接合することができる。
図9(b)およびに示す例では、n電極E1を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。図9(c)に示す例では、ミラーMとn電極E1を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。これらの場合、電極として使用可能な導電性を有する支持基板Sを、導電性接着剤を用いてn電極E1に接合する。あるいは、支持基板Sは、n電極E1上にメッキ法で堆積させた厚膜金属層であってもよい。
【0030】
図10(a)に示す例では、透光性電極E2およびp電極E3を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。図10(b)に示す例では、透光性電極E2、ミラーMおよびp電極E3を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。これらの場合、電極として使用可能な導電性を有する支持基板Sを、導電性接着剤を用いてp電極E3に接合する。あるいは、支持基板Sは、p電極E3上にメッキ法で堆積させた厚膜金属層であってもよい。また、透光性電極E2は、Ag、Ni、Pdなどを用いたメタル製のオーミック電極に置き換えることができる。
【0031】
エッチバック法は、バルク結晶からスライスした無極性または半極性の窒化物半導体基板の表面を平坦化させるときに用いることもできる。エッチバック法で予備的に平坦化した表面を、低レートでポリッシング仕上げすることにより、窒化物半導体のエピタキシャル成長に使用可能な、着色のない無極性または半極性の窒化物半導体基板を得ることができる。この基板上に窒化物半導体からなるn型層、活性層およびp型層をエピタキシャル成長させて窒化物系LEDを製造することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 窒化物系LED
11 無極性または半極性の窒化物半導体基板
12 n型窒化物半導体層
13 活性層
14 p型窒化物半導体層
L 窒化物半導体積層体
L1 底面
L2 上面
E1 n電極
E2 透光性電極
E3 p電極
P フォトレジスト
G 割り溝
M ミラー
S 支持基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体で形成された発光構造を有する窒化物系発光ダイオード素子(以下、窒化物系LEDともいう)を製造する方法に関し、とりわけ、無極性または半極性の窒化物系LEDを製造する方法に関する。窒化物半導体は、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)、(Al,Ga,In)Nなどの一般式で表される化合物半導体であり、III族窒化物半導体、窒化物系半導体、窒化ガリウム
(GaN)系半導体などとも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
GaN、GaInN、AlGaN、AlGaInNのような窒化物半導体を用いた半導体デバイスが実用化されている。代表的なデバイスは、窒化物半導体でダブルヘテロpn接合型の発光構造を構成した、発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光素子である。特に、c面サファイア基板上にヘテロエピタキシャル成長された発光構造を有する窒化物系LEDは、バックライトや照明のための光源として大量に生産されている。
【0003】
発光デバイスに用いられる窒化物半導体の結晶は、六方晶のウルツ鉱型構造を有している。上述の、c面サファイア基板を用いた窒化物系LEDは、発光構造を構成するn型層、活性層およびp型層がc軸方向に積層された発光構造を有しているために、発光効率を低下させるピエゾ電界が活性層内部に形成されるといわれている。この問題を解決するために提案されているのが、無極性または半極性のGaN基板上に発光構造をホモエピタキシャル成長させることにより得られる、無極性または半極性の窒化物系LEDである(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0004】
ここで、無極性のGaN基板とは、c面(極性面と呼ばれる)から90度傾いた面(無極性面と呼ばれる。例えば、m面やa面。)を主面とするGaN基板のことである。また、半極性のGaN基板とは、c面からの傾斜が無極性面よりも小さい面(半極性面と呼ばれる。)を主面とするGaN基板のことである。ただし、主面のc面からの傾斜が僅かであるGaN基板は、通常、オフ角が付されたc面基板として取り扱われる。窒化物半導体基板に付与されるオフ角は、通常は10度以内である。
【0005】
c面GaN基板上に発光構造を有する窒化物系LEDにおいて、光取出し面として利用する基板の裏面を光電気化学(PEC)エッチングのようなウェットエッチング加工で粗化して、光取出し効率を改善する試みが行われている。一方、無極性または半極性のGaN基板上に発光構造を有する無極性または半極性の窒化物系LEDにおいては、ウェットエッチング加工により基板の裏面を粗くすることができないという問題が指摘されている(非特許文献5)。そこで、かかる窒化物系LEDについては、基板の裏面をドライエッチして粗化する試みが行われている(特許文献1、非特許文献5、非特許文献6)。
【0006】
半導体の分野において、多層配線基板を作製するに際し、配線層間に設ける絶縁膜を平坦化する方法としてエッチバック法が知られている。エッチバック法を応用して、粗い窒化物半導体層の表面を平坦化できることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/070809号公報
【特許文献2】特開2006−196692号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A. Chakraborty, B. A. Haskell, S. Keller, J. S. Speck, S. P. DenBaars, S. Nakamura and U. K. Mishra: Japanese Journal of Applied Physics 44 (2005) L173
【非特許文献2】K. Okamoto, H. Ohta, D. Nakagawa, M. Sonobe, J.Ichiharaand H. Takasu: Japanese Journal of Applied Physics 45 (2006) L1197
【非特許文献3】R. B. Chung, Y-D. Lin, I.Koslow, N. Pfaff, H. Ohta, J. Ha, S. P. DenBaarsand S. Nakamura: Japanese Journal of Applied Physics 49 (2010) 070203
【非特許文献4】I. L. Koslow, J. Sonoda, R. B. Chung, C-C. Pan, S. Brinkley, H. Ohta, S. Nakamura and S. P. DenBaars: Japanese Journal of Applied Physics 49 (2010) 080203
【非特許文献5】H. Zhong, A. Tyagi, N. Pfaff, M. Saito, K. Fujito, J. S. Speck, S. P. DenBaars and S. Nakamura: Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 03020
【非特許文献6】Y. Zhao, J. Sonoda, C-C. Pan, S. Brinkley, I. Koslow, K. Fujito, H. Ohta, S. P. DenBaars and S. Nakamura: Applied Physics Express 3 (2010) 102101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
窒化物半導体の無極性面や半極性面は、機械的な刺激を受けると容易に着色する。詳細は明らかでないが、その原因は、表面近傍の窒素原子が脱離し易いからであると推定される。窒素原子が脱離した跡には、可視光を吸収する性質を持った空孔が残されるものと考えられる。原因が何であれ、窒化物系LEDにとって構成物質の着色は、発光効率を著しく低下させるので好ましくない。本発明の主たる目的は、窒化物半導体の無極性面または半極性面を機械的に加工する工程を含みながらも、該加工に起因する発光効率の低下が防止される、無極性または半極性の窒化物系LEDの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
次に挙げる窒化物系LEDの製造方法を提供する。
(1)底面および上面を有し、底面側から上面側に向かって、無極性または半極性の窒化物半導体基板と、該窒化物半導体基板の上に成長したn型窒化物半導体層と、該n型窒化物半導体層の上に成長した窒化物半導体からなる活性層と、該活性層の上に成長したp型窒化物半導体層とを、この順に含む窒化物半導体積層体を準備する第1工程と、該窒化物半導体積層体の底面を機械的に削ることによって該窒化物半導体積層体の厚さを減じる第2工程と、該第2工程で生じる着色部が除去されるように該窒化物半導体積層体の底面をドライエッチする第3工程と、を有し、該第3工程では、エッチバック法を用いることによって該窒化物半導体積層体の底面の平坦性を改善する、窒化物系LEDの製造方法。
(2)上記第3工程の後に、上記活性層が発する光を反射するミラーを上記窒化物半導体積層体の底面に形成する第4工程を有する、上記(1)に記載の製造方法。
(3)上記第2工程または第3工程で上記窒化物半導体基板が消失する、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、上記(3)に記載の製造方法。
(5)上記第3工程の後に、開口部を有するマスクパターンを上記半導体積層体の底面に形成し、該マスクパターンの開口部に露出する上記窒化物半導体積層体をドライエッチすることによって、上記半導体積層体の底面の一部または全部を粗化する第5工程を有する、上記(1)に記載の製造方法。
(6)上記第5工程では上記半導体積層体の底面の一部を粗化し、上記半導体積層体の底
面のうち上記第5工程で粗化しない部分に電極を形成する、上記(5)に記載の製造方法。
(7)上記第2工程、第3工程、第5工程のいずれかの工程で、上記窒化物半導体基板が消失する、上記(5)または(6)に記載の製造方法。
(8)上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、上記(7)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
上記の製造方法によれば、窒化物半導体の無極性面または半極性面を機械的に加工しながらも、該加工に起因する発光効率の低下のない、無極性または半極性の窒化物系LEDを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】窒化物系LEDの構造を示しており、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のX−X線の位置における断面図である。
【図2】図1に示す窒化物系LEDの製造工程を説明するための断面図である。
【図3】図1に示す窒化物系LEDの製造工程を説明するための断面図である。
【図4】図1に示す窒化物系LEDの製造工程を説明するための断面図である。
【図5】窒化物半導体基板の裏面に割り溝を形成したウェハの断面図である。
【図6】窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図7】図7(a)および(b)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図8】図8(a)および(b)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図9】図9(a)、(b)および(c)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【図10】図10(a)および(b)は、それぞれ窒化物系LEDの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図1に示す窒化物系LED10の製造手順に即して、本発明実施形態に係る製造方法を説明する。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のX−X線の位置における断面図である。
【0014】
窒化物系LED10は窒化物半導体積層体Lを有している。窒化物半導体積層体Lは、底面L1側から上面L2側に向かって、無極性または半極性の窒化物半導体基板11と、該基板の上に成長したn型窒化物半導体層12と、該n型窒化物半導体層の上に成長した窒化物半導体からなる活性層13と、該活性層の上に成長したp型窒化物半導体層14とを、この順に含んでいる。n型窒化物半導体層12、活性層13およびp型窒化物半導体層14は、ダブルヘテロpn接合型の発光構造を構成している。窒化物半導体積層体Lから、p型窒化物半導体層14および活性層13が部分的に除去されることにより露出したn型窒化物半導体層12の表面には、n電極E1が形成されている。p型窒化物半導体層14の上面には、透光性電極E2が、該上面の略全体を覆うように形成されている。透光性電極E2の一部上にp電極E3が形成されている。
【0015】
窒化物系LED10は、次の手順により製造することができる。
(i)エピタキシャル成長工程
無極性または半極性の窒化物半導体基板11を準備し、MOVPE法のような気相成長法を用いて、該基板上にn型窒化物半導体層12、活性層13およびp型窒化物半導体層14を順次エピタキシャル成長させる。窒化物半導体基板11は、例えば、m面GaN基
板、a面GaN基板、半極性(10−1−1)GaN基板、半極性(10−11)GaN基板、半極性(11−2−2)GaN基板、半極性(11−22)GaN基板、半極性(20−2−1)GaN基板、半極性(20−21)GaN基板、半極性(10−1−2)GaN基板、半極性(10−12)GaN基板、半極性(10−1−3)GaN基板、半極性(10−13)GaN基板、半極性(30−3−1)GaN基板、半極性(30−31)GaN基板、などである。窒化物半導体基板11の厚さは、例えば、300〜500μmである。
【0016】
(ii)電極形成工程
エピタキシャル成長工程の完了後、定法に従って、n電極E1、透光性電極E2およびp電極E3の形成を行う。n電極E1はAl、Ti、W、Crなどの上に、Auを積層した構造とすることができる。透光性電極E2は、ITO(インジウム錫酸化物)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、酸化ガリウムのような透明導電性酸化物を用いて形成することができる。p電極E3は、n電極E1と同様の構造とすることができる。図1には示していないが、通常は、これらの電極を形成した後、n電極とp電極の表面を除き、ウェハ表面をSiO2のような透光性の無機絶縁材料からなる絶縁保護膜で被覆する。
【0017】
(iii)基板薄肉化工程
電極形成工程の後、窒化物半導体積層体Lの底面、すなわち、無極性または半極性の窒化物半導体基板11の裏面を機械的に削って、該基板の厚さを200μm以下、好ましくは150μm以下まで減じる。80μm未満とする場合には、ハンドリング中にウェハが割れ易くなり、歩留まりが低下する可能性があるので注意を要する。加工方法としては、グラインディング、ラッピング、ポリッシングなどが例示される。グラインディングやラッピングによれば、窒化物半導体基板の厚さを数時間で100μm以上も減じることができる。
【0018】
この基板薄肉化工程では、好ましくは、ラッピングとポリッシングを併用して、窒化物半導体基板11の裏面に残る加工痕(溝など)の深さを10μm以下とする。ポリッシングによる平坦化は、長時間を要するので、この工程では行わない。短時間のポリッシングで加工痕を取り除こうとすると、窒化物半導体基板の着色を避けることができない。
【0019】
(iv)着色部分除去工程(エッチバック工程)
この工程では、前述の基板薄肉化工程で窒化物半導体基板11の裏面に形成された着色部分を、ドライエッチングにより除去する。その際、エッチバック法を用いることによって、基板裏面の平坦性改善を同時に行う。
図2(a)は、基板薄肉化工程から上がってきたばかりのウェハの断面図であり、窒化物半導体基板11の裏面には加工痕が残っている。この裏面上にフォトレジストPをスピンコートすると、図2(b)に示すように、加工痕はフォトレジストによって埋め込まれるが、フォトレジストの表面は表面張力によって平坦となる。
【0020】
スピンコート後、フォトレジストPと窒化物半導体基板11のエッチング速度が同じとなる条件でドライエッチすることにより、最初はフォトレジストの表面を削り取っていく。やがて、図3(c)に示すように基板11が露出するが、フォトレジストと基板のエッチング速度が同じであるため、その後も、ウェハの裏面は平坦に保たれたままエッチングが進行する。その様子を示したのが図3(d)である。
フォトレジストが消失するまでエッチングを続けると、図4(e)に示すように、窒化物半導体基板11の裏面が平坦化した状態となる。平坦化後のエッチング量は、除去すべき着色部分の厚さに応じて調節する。
【0021】
(v)ダイシング工程
着色部分除去工程の完了後、定法に従ってウェハを分割し、窒化物系LEDをチップ状にする(図4(f))。
上記工程( i)〜(v)を順次行うことによって、薄い窒化物半導体積層体Lを有する
、薄い窒化物系LEDを効率よく製造することができる。薄型のLEDは、コンパクトなパッケージに実装できるという利点がある。また、発光効率を改善するうえでも薄型化は有用と考えられる。
【0022】
上記製造方法によれば、着色部分除去工程(iv)で窒化物半導体基板11の裏面が平坦となるので、ダイシング工程(v)では、図5に示すように割り溝Gを基板11の裏面に形成し、この割り溝Gを起点にしてウェハをブレーキングする方法を好ましく用いることができる。基板の裏面の平坦性が高いと、割り溝G以外の部分を起点としてウェハが割れることがないので、ブレーキング工程における不良の発生が防止される。
【0023】
窒化物系LED10は、図6に示すように、窒化物半導体積層体Lの底面側にn電極E1を配置した構成とすることもできる。この構成では、該底面(窒化物半導体基板11の裏面)の平坦性が高いほど、該底面と接するn電極の表面E1aの平坦性が高くなり、それに伴って、この表面E1aの反射率も高くなる。従って、窒化物半導体積層体Lの底面の平坦性が高いほど、n電極E1の表面E1aによる光吸収に起因する損失が小さくなることになる。
【0024】
図7に示すように、窒化物系LED10では、窒化物半導体積層体Lの底面上に、活性層13から発せられる光を反射させるミラーMを設けることができる。図7(a)の例では、n電極E1とp電極E2が両方とも窒化物半導体積層体Lの上面L2側に配置されており、ミラーMは窒化物半導体積層体Lの底面(窒化物半導体基板11の裏面)全体を覆うように設けられている。図7(b)の例では、窒化物半導体積層体の底面側に設けられたn電極E1が、ミラーMに形成された貫通孔を通して、窒化物半導体基板11の裏面に接している。
【0025】
ミラーMはAl膜、Ag膜のようなメタル膜を含んでもよいし、DBRのような多層膜型の反射膜を含んでもよい。ミラーMは、また、単層または多層の透明薄膜上にメタル膜を積層した構造であってもよい。窒化物半導体積層体Lの底面の平坦性が高いほど、ミラーMの反射面の平坦性も高くなり、ひいては、その反射率も高くなる。また、ミラーMが多層膜型の反射膜を含む場合には、窒化物半導体積層体Lの底面の平坦性が高いほど、多層膜を構成する単位膜の膜厚を高精度で制御でき、また、多層膜構造の乱れも小さくなる。
【0026】
図8に示すように、窒化物系LED10では、光取出し効率を高めるために、窒化物半導体積層体Lの底面(窒化物半導体基板11の裏面)を粗化することができる。図8(a)は、n電極E1とp電極E3を両方とも窒化物半導体積層体Lの上面側に設けた例、図8(b)はn電極E1を窒化物半導体積層体Lの底面側に設けた例を示している。図8(b)の例では、窒化物半導体積層体Lの下面の一部を平坦なままとし、その部分にn電極E1を形成している。
【0027】
窒化物半導体積層体の底面を粗化するための好ましい方法は、該底面を部分的に露出させるマスクパターンを用いたドライエッチング加工である。粗化加工の前に該底面の平坦性を高くしておくことは、このマスクパターンを再現性よく形成するうえで重要である。中でも、メタル薄膜を加熱することにより自発的に生じるボールアップ現象を利用してメタル製のナノマスクパターンを形成する場合や、レーザ干渉露光によりサブミクロンスケールの微細な周期的マスクパターンを形成する場合には、特に重要である。サブミクロンスケールの微細なマスクパターンを用いて窒化物半導体積層体の底面をドライエッチ加工
することによって、全反射が発生しない、光透過性に極めて優れた粗化面を形成することができる。
【0028】
上記製造方法では、基板薄肉化工程(iii)において、無極性または半極性の窒化物半
導体基板11の全部または実質的に全部を、窒化物半導体積層体Lから取り除いてしまうこともできる。この方法を用いて製造する場合、窒化物系LED10は、図9に示すように、窒化物半導体積層体Lの下面側に支持基板Sを取り付けた構造とするか、あるいは、図10に示すように、窒化物半導体積層体Lの上面側に支持基板を取り付けた構造とすることができる。このような、窒化物半導体基板の全部または実質的に全部を、窒化物系LEDの最終構造から取り除く方法は、Naフラックス法やアモノサーマル法のような液相法で製造される窒化物半導体基板を用いる場合に有用である。液相法で得られる窒化物半導体基板は、全体が不純物のために着色している場合があるからである。
【0029】
図9(a)に示す例では、ミラーMを挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。この場合、支持基板は適当な接着剤を用いてミラー層に接合することができる。
図9(b)およびに示す例では、n電極E1を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。図9(c)に示す例では、ミラーMとn電極E1を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。これらの場合、電極として使用可能な導電性を有する支持基板Sを、導電性接着剤を用いてn電極E1に接合する。あるいは、支持基板Sは、n電極E1上にメッキ法で堆積させた厚膜金属層であってもよい。
【0030】
図10(a)に示す例では、透光性電極E2およびp電極E3を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。図10(b)に示す例では、透光性電極E2、ミラーMおよびp電極E3を挟んで、窒化物半導体積層体Lに支持基板Sを取り付けている。これらの場合、電極として使用可能な導電性を有する支持基板Sを、導電性接着剤を用いてp電極E3に接合する。あるいは、支持基板Sは、p電極E3上にメッキ法で堆積させた厚膜金属層であってもよい。また、透光性電極E2は、Ag、Ni、Pdなどを用いたメタル製のオーミック電極に置き換えることができる。
【0031】
エッチバック法は、バルク結晶からスライスした無極性または半極性の窒化物半導体基板の表面を平坦化させるときに用いることもできる。エッチバック法で予備的に平坦化した表面を、低レートでポリッシング仕上げすることにより、窒化物半導体のエピタキシャル成長に使用可能な、着色のない無極性または半極性の窒化物半導体基板を得ることができる。この基板上に窒化物半導体からなるn型層、活性層およびp型層をエピタキシャル成長させて窒化物系LEDを製造することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 窒化物系LED
11 無極性または半極性の窒化物半導体基板
12 n型窒化物半導体層
13 活性層
14 p型窒化物半導体層
L 窒化物半導体積層体
L1 底面
L2 上面
E1 n電極
E2 透光性電極
E3 p電極
P フォトレジスト
G 割り溝
M ミラー
S 支持基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面および上面を有し、底面側から上面側に向かって、無極性または半極性の窒化物半
導体基板と、該窒化物半導体基板の上に成長したn型窒化物半導体層と、該n型窒化物半導体層の上に成長した窒化物半導体からなる活性層と、該活性層の上に成長したp型窒化物半導体層とを、この順に含む窒化物半導体積層体を準備する第1工程と、
該窒化物半導体積層体の底面を機械的に削ることによって該窒化物半導体積層体の厚さ
を減じる第2工程と、
該第2工程で生じる着色部が除去されるように該窒化物半導体積層体の底面をドライエ
ッチする第3工程と、
を有し、
該第3工程では、エッチバック法を用いることによって該窒化物半導体積層体の底面の
平坦性を改善する、窒化物系LEDの製造方法。
【請求項2】
上記第3工程の後に、上記活性層が発する光を反射するミラーを上記窒化物半導体積層
体の底面に形成する第4工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記第2工程または第3工程で上記窒化物半導体基板が消失する、請求項1または2に
記載の製造方法。
【請求項4】
上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、請求項3に記載の製造方
法。
【請求項5】
上記第3工程の後に、開口部を有するマスクパターンを上記半導体積層体の底面に形成
し、該マスクパターンの開口部に露出する上記窒化物半導体積層体の底面をドライエッチすることによって、上記半導体積層体の底面の一部または全部を粗化する第5工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
上記第5工程では上記半導体積層体の底面の一部を粗化し、上記半導体積層体の底面の
うち上記第5工程で粗化しない部分に電極を形成する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記第2工程、第3工程、第5工程のいずれかの工程で、上記窒化物半導体基板が消失
する、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、請求項7に記載の製造方
法。
【請求項1】
底面および上面を有し、底面側から上面側に向かって、無極性または半極性の窒化物半
導体基板と、該窒化物半導体基板の上に成長したn型窒化物半導体層と、該n型窒化物半導体層の上に成長した窒化物半導体からなる活性層と、該活性層の上に成長したp型窒化物半導体層とを、この順に含む窒化物半導体積層体を準備する第1工程と、
該窒化物半導体積層体の底面を機械的に削ることによって該窒化物半導体積層体の厚さ
を減じる第2工程と、
該第2工程で生じる着色部が除去されるように該窒化物半導体積層体の底面をドライエ
ッチする第3工程と、
を有し、
該第3工程では、エッチバック法を用いることによって該窒化物半導体積層体の底面の
平坦性を改善する、窒化物系LEDの製造方法。
【請求項2】
上記第3工程の後に、上記活性層が発する光を反射するミラーを上記窒化物半導体積層
体の底面に形成する第4工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記第2工程または第3工程で上記窒化物半導体基板が消失する、請求項1または2に
記載の製造方法。
【請求項4】
上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、請求項3に記載の製造方
法。
【請求項5】
上記第3工程の後に、開口部を有するマスクパターンを上記半導体積層体の底面に形成
し、該マスクパターンの開口部に露出する上記窒化物半導体積層体の底面をドライエッチすることによって、上記半導体積層体の底面の一部または全部を粗化する第5工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
上記第5工程では上記半導体積層体の底面の一部を粗化し、上記半導体積層体の底面の
うち上記第5工程で粗化しない部分に電極を形成する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記第2工程、第3工程、第5工程のいずれかの工程で、上記窒化物半導体基板が消失
する、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
上記窒化物半導体基板が液相法により製造されたものである、請求項7に記載の製造方
法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−231087(P2012−231087A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99848(P2011−99848)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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