説明

立体映像投影装置および方法

【課題】簡素な構成でありながら品質の高い立体映像を表示することのできる立体映像投影装置を提供する。
【解決手段】画像信号付与手段20は、画像の左半分が左目用画像、右半分が右目用画像となった画像信号を投影手段22に与える。投影手段22は、左半分に左目用投影光24a、右半分に右目用投影光24bを有する投影光を照射し、屈折手段26は、左目用投影光24a、右目用投影光24bを、それぞれ左右方向に屈折させ、対象面4において左目用画像と右目用画像を重ねて表示する。偏光手段28の偏光フィルタ28aと偏光フィルタ28bにより、第1の偏光特性を持つ左目用画像と、第2の偏光特性を持つ右目用画像は重ねて表示される。ユーザは、左目に第1の偏光特性を持つ偏光フィルタ10a、右目に第2の偏光特性を持つ偏光フィルタ10bをもつメガネ10をかけることにより、擬似的な立体画像を見ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立体映像を表示するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターなどの投影機を用いて、立体視することのできる映像を投影する装置が知られている。その原理は、対象物を左目で見た場合の画像と、右目で見た画像とを記録しておき、その画像を再生する際に、ユーザに対して、その左目に左目用画像、右目に右目用画像を与え、擬似的に立体的な対象物が存在するかのような効果をもたらすところにある。
【0003】
例えば、特許文献1には、図1に示すような立体映像投影装置が示されている。左目用の画像を投影するプロジェクター2Lと、右目用の画像を投影するプロジェクター2Rが設けられている。
【0004】
左目用画像のためのプロジェクター2Lの前には、偏光フィルタ6Lが設けられ、垂直偏光成分のみの投影光にして投影がなされる。右目用画像のためのプロジェクター2Rの前には、偏光フィルタ6Rが設けられ、水平偏光成分のみの投影光にして投影がなされる。これら2つのプロジェクター2L、2Rの投影光は、対象面5において重なって表示されるよう、2つのプロジェクター2L、2Rの投影方向が決定される。
【0005】
ユーザ8は、立体視用の眼鏡10をかけて、対象面5に投影された画像を観察する。立体視用眼鏡10の左目には、垂直偏光成分のみを通過する偏光フィルタが設けられている。したがって、対象面5の画像を観察するユーザの左目には、垂直偏光成分のみで構成される左目用画像だけが与えられる。
【0006】
一方、立体視用眼鏡10の右目には、水平偏光成分のみを通過する偏光フィルタが設けられている。したがって、対象面5の画像を観察するユーザの右目には、水平偏光成分のみで構成される右目用画像だけが与えられる。
【0007】
したがって、ユーザに対して、その左目に左目用画像、右目に右目用画像を与え、擬似的に立体的な対象物が存在するかのような効果をもたらすことができる。
【0008】
また、画像の1フレーム毎に左目用画像と右目用画像を交互に切り換えて投影し、この切り換えに同期して液晶シャッターによって偏光方向を回転させる方式も知られている。図2に、特許文献2に開示された、かかる方式による立体映像表示装置の原理を示す。プロジェクター2からは、1フレームごとに交互に左目用画像と右目用画像が投影される。
【0009】
対象面5とプロジェクター2との間には、液晶パネル12aと偏光板12bによって構成される液晶シャッター12が配置されている。偏光板12bによって偏光方向が揃えられる。偏光方向の揃えられた投影光は、シャッター駆動回路14によって制御される液晶パネル12aによって、偏光方向が回転される。
【0010】
シャッター駆動回路14は、プロジェクター2と連動し、左目用画像が投影されているときには、液晶パネル12aによって投影光の偏光方向を左方向に回転させ、右目用画像が投影されているときには、液晶パネル12aによって投影光の偏光方向を右方向に回転させる。
【0011】
ユーザ8は、立体視用の眼鏡10をかけて、対象面5に投影された画像を観察する。立体視用眼鏡10の左目には、左方向回転偏光成分のみを通過する偏光フィルタが設けられている。したがって、対象面5の画像を観察するユーザの左目には、左方向回転成分のみで構成される左目用画像だけが与えられる。
【0012】
一方、立体視用眼鏡10の右目には、右方向回転偏光成分のみを通過する偏光フィルタが設けられている。したがって、対象面5の画像を観察するユーザの右目には、右方向回転偏光成分のみで構成される右目用画像だけが与えられる。
【0013】
したがって、ユーザに対して、その左目に左目用画像、右目に右目用画像を与え、擬似的に立体的な対象物が存在するかのような効果をもたらすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−182085
【特許文献2】特開2000−4454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記のような従来技術では、次のような問題点があった。特許文献1に記載の装置では、プロジェクターが2台必要であり装置の大型化を招いていた。さらに、2台のプロジェクターによって投影される画像を同期させるためのシステムが必要であり、その構成が複雑化していた。
【0016】
一方、特許文献2に記載の装置では、プロジェクターは1台で良く、上記のような問題は生じない。しかし、画像のフレーム毎に左目用画像と右目用画像を切り換えるようにしているので、画像にちらつきが生じやすかった。また、画像のフレームに正確に同期させて、液晶シャッター12による偏光回転方向を制御する必要があり、高い精度の同期処理が求められていた。さらに、左目用画像と右目用画像がフレーム毎に切り替わっている画像を用意しなければならず、特殊な撮像装置ないしは編集装置が必要であった。
【0017】
この発明は上記のような問題点を解決して、簡素な構成でありながら品質の高い立体映像を表示することのできる立体映像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)この発明に係る立体映像投影装置は、対象面に表示された画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視するため、前記画像を対象面に表示するための立体映像表示装置であって、与えられた画像信号に基づいて、第1領域に左目用投影光を、第2領域に右目用投影光を有する投影光を照射する投影手段と、投影手段から照射された左目用投影光によって対象面に表示される左目用画像と、投影手段から照射された右目用投影光によって対象面に表示される右目用画像とが、対象面において重なって表示されるように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方を屈折させる屈折手段と、投影手段から照射された左目用投影光が第1の偏光特性を持ち、右目用投影光が第2の偏光特性を持つように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方の偏光特性を変える偏光手段とを備えている。
【0019】
第1領域に左目用画像、第2領域に右目用画像を含む画像を、屈折手段によって対象面において重ねて表示させるとともに、左目用画像と右目用画像で異なる偏光特性となるように偏光手段を設けている。したがって、左目用画像と右目用画像を一つの投影手段によって投影することができ、簡素な構成でありながら品質の高い立体映像を表示することができる。
【0020】
(2)この発明に係る立体映像投影装置は、第1領域と第2領域は、投影光を左右に分けて形成され、屈折手段は、前記左目用投影光に対応する第1部分と、前記右目用投影光に対応する第2部分とを有しており、前記第1部分と前記第2部分の境界面近傍においての厚さよりも、前記境界面から離れるにしたがって薄くなるよう構成された透光体によって構成されていることを特徴としている。
【0021】
したがって、屈折手段は、左側の画像を右寄りに屈折させ、右側の画像を左寄りに屈折させるので、左目用画像と右目用画像を対象面において重ねて表示することができる。
【0022】
(3)この発明に係る立体映像投影装置は、偏光手段は、前記透光体の第1部分の表面もしくは内面に第1の偏光特性をもたらす第1の偏光フィルタが設けられ、前記透光体の第2部分の表面もしくは内面に第2の偏光特性をもたらす第2の偏光フィルタが設けられていることを特徴としている。
【0023】
したがって、偏光手段が屈折手段と一体として設けられているので、両者の配置位置の調節などを行う必要がない。
【0024】
(4)この発明に係る立体映像投影装置は、透光体が、前記屈折の度合いが調整可能に構成されていることを特徴としている。
【0025】
したがって、対象面との距離に応じて屈折の度合いを変えることにより、対象面において、左目用画像と右目用画像を適切に重ね合わせて表示することができる。
【0026】
(5)この発明に係る立体映像投影装置は、透光体が、前記境界面の一端を中心として回転させ、前記第1部分と第2部分の表面がなす角度を調整可能に構成されていることを特徴としている。
【0027】
したがって、物理的な角度を変化させることで屈折の度合いを変えることができる。
【0028】
(6)この発明に係る立体映像投影装置は、立体映像表示装置から前記対象面までの距離を計測する距離測定手段と、前記距離測定手段によって測定した距離に応じて、前記透光体の屈折度合いを変更し、前記左目用画像と前記右目用画像が対象面において重なって表示されるように制御する制御手段とをさらに備えている。
【0029】
したがって、対象面との距離に応じて、左目用画像と右目用画像を適切に重ね合わせて表示するように、自動的に屈折度合いを調整することができる。
【0030】
(7)この発明に係る立体映像投影装置は、第1領域の画像に含まれる特定画像の位置と、第2領域の画像に含まれる特定画像の位置のずれを検出する特定画像ずれ検出手段と、前記検出した特定画像のずれに基づいて、前記透光体の屈折度合いを変更し、前記左目用画像と前記右目用画像が対象面において重なって表示されるように制御する制御手段とをさらに備えている。
【0031】
したがって、対象面との距離に応じて、左目用画像と右目用画像を適切に重ね合わせて表示するように、自動的に屈折度合いを調整することができる。
【0032】
(8)この発明に係る立体映像投影装置は、投影手段と前記対象面との間に、前記投影手段から照射された投影光を左右方向に拡大する拡大手段を備えることを特徴としている。
【0033】
したがって、通常サイズの画面を左右に分割して左目用画像と右目用画像にし、これを表示する投影手段を用いた場合であっても、対象面に表示された画像を横方向に拡大して、表示画面の縦横比を通常サイズに近づけることができる。
【0034】
(9)この発明に係る立体映像投影装置は、屈折手段が、拡大手段としての機能も有することを特徴としている。
【0035】
したがって、別途、拡大手段を設ける必要がなく装置をコンパクト化することができる。
【0036】
(18)この発明に係る立体映像記録装置は、対象面に重ねて表示された左目用画像と右目用画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視するため、対象物を撮像して、前記左目用画像と右目用画像を記録する立体映像記録装置であって、第1領域に対象物の左目用画像が、第1領域に隣接する第2領域に対象物の右目用画像が得られるように、対象物からの光を屈折させる屈折手段と、屈折手段によって得られた第1領域における左目用画像と第2領域における右目用画像を立体映像として記録する記録手段とを備えている。
【0037】
したがって、左目用画像と右目用画像を含む立体映像投影のための画像を、記録することができる。
【0038】
(19)この発明に係る立体映像記録装置は、対象物からの光を、左右方向に縮小する縮小手段を備えることを特徴としている。
【0039】
したがって、立体映像投影の際に、左右方向に拡大して表示したときに適切な縦横比となるような画像を記録することができる。
【0040】
この発明において、「投影手段」とは、少なくとも対象面に対して画像信号に基づく投影光を照射する手段をいい、実施形態においては、図5の光源70、液晶パネル51B、51R、51G、投射レンズ86がこれに対応する。
【0041】
「屈折手段」とは、左目用投影光、右目用投影光の少なくともいずれか一方を屈折させる手段をいい、実施形態においては、図5の屈折レンズ46がこれに対応する。
【0042】
「偏光手段」とは、左目用投影光、右目用投影光の少なくともいずれか一方の偏光特性を変える手段をいい、実施形態においては、図6の偏光フィルタ48がこれに対応する。
【0043】
「距離測定手段」は、実施形態においては、図9の距離測定器116がこれに対応する。
【0044】
「制御手段」は、実施形態においては、たとえば図11のステップS2、S3がこれに対応する。
【0045】
「特定画像ずれ検出手段」は、実施形態においては、たとえば第2の実施形態、変形例において、CPU126が「取り込んだ画像の中央部のマークが重なっているかどうかを判断する」処理がこれに対応する。
【0046】
「拡大手段」は、実施形態においては、図12の凸レンズ47、凹レンズ49がこれに対応する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の立体映像投影装置の構成を示す図である。
【図2】従来の立体映像投影装置の構成を示す図である。
【図3】第一の実施形態による立体映像投影装置の原理を示す図である。
【図4】第一の実施形態による立体映像投影装置30の外観を示す図である。
【図5】第一の実施形態による立体映像投影装置30の構成を示す図である。
【図6】屈折偏光器34の構成を示す図である。
【図7】立体画像投影のための画像60を示す図である。
【図7a】屈折レンズ46の変形例である。
【図8】第二の実施形態による立体映像投影装置30における屈折偏光器34の構造を示す図である。
【図9】第二の実施形態による立体映像投影装置30の外観を示す図である。
【図10】第二の実施形態による立体映像投影装置30の制御部のハードウエア構成を示す図である。
【図11】調整プログラム130のフローチャートを示す図である。
【図12】第三の実施形態による立体映像投影装置30の原理を示す図である。
【図13】第三の実施形態における屈折レンズ46の他の例を示す図である。
【図14】第四の実施形態による立体映像記録装置160の原理を示す図である。
【図15】第四の実施形態による立体映像記録装置160の外観を示す図である。
【図16】第四の実施形態による立体映像記録装置160の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
1.原理
図3にこの発明の一実施形態による立体映像投影装置の原理を示す。投影手段22は、与えられた画像信号を投影光24として照射する。画像信号付与手段20は、画像の左半分が左目用画像、右半分が右目用画像となった画像信号を投影手段22に与える。したがって、投影手段22は、第1領域(左半分)に左目用投影光24a、第2領域(右半分)に右目用投影光24bを有する投影光を照射する。照射された左目用投影光24aは、対象面5において左目用画像として表示され、右目用投影光24bは、対象面5において右目用画像として表示されることになる。
【0049】
投影手段22と対象面5との間には、屈折手段26、偏光手段28が設けられている。屈折手段26は、左目用投影光24a、右目用投影光24bを、それぞれ左右方向に屈折させて、対象面5における左目用画像と右目用画像が重なって表示されるようにする。
【0050】
偏光手段28は、左目用投影光24aが第1の偏光特性を持つように調整する偏光フィルタ28aと、右目用投影光24bが第2の偏光特性を持つように調整する偏光フィルタ28bを有している。
【0051】
したがって、対象面5においては、第1の偏光特性を持つ左目用画像と、第2の偏光特性を持つ右目用画像が重ねて表示されることになる。
【0052】
ユーザは、左目に第1の偏光特性を持つ偏光フィルタ10a、右目に第2の偏光特性を持つ偏光フィルタ10bを介在させて(たとえばメガネ10をかけて)、対象面5の画像を見る。これにより、ユーザに対して、その左目に左目用画像、右目に右目用画像を与え、擬似的に立体的な対象物が存在するかのような効果をもたらすことができる。

2.第一の実施形態
(1)構成と動作
図4に、この発明の一実施形態による立体映像投影装置30の外観を示す。プロジェクター本体32(たとえばカシオ社製XJ−57)の投射レンズ(図示せず)の前に、屈折偏光器34を設けている。屈折偏光器34は、屈折レンズ46の前面に、偏光フィルタ48を貼り付けて構成されている。なお、この実施形態では、屈折偏光器34は、プロジェクター本体32のポケット3に挿入されるようになっており、着脱可能に構成されている。したがって、屈折偏光器34を取り外すことにより、立体映像を投影せず通常の映像を投影する場合にも用いることができる。
【0053】
図5を用いて、立体映像投影装置30の構成を説明する。水銀ランプなどによる光源70は、白色光を照射する。この白色光は、光学系72によって均一化される。均一化された白色光は、ダイクロックミラー74により、青色光成分のみが反射され、赤色成分・緑色成分は透過される。ダイクロックミラー74によって反射された青色光は、反射ミラー78によって反射され、液晶パネル51Bに導かれる。液晶パネル51Bは、青色の画像信号によって制御されるので、画像を表示するための青色成分光が生成されることになる。この青色成分の画像光は、クロスダイクロイックプリズム84に与えられる。
【0054】
一方、ダイクロックミラー74を透過した赤色成分・緑色成分の光は、次のダイクロイックミラー76により、赤色成分のみが反射され、緑色成分は透過される。反射された赤色光は、液晶パネル51Rに導かれる。液晶パネル51Rは、赤色の画像信号によって制御されるので、画像を表示するための赤色成分光が生成されることになる。この赤色成分の画像光は、クロスダイクロイックプリズム84に与えられる。
【0055】
また、ダイクロイックミラー76を透過した緑色光は、反射ミラー80、82によって反射され、液晶パネル51Gに導かれる。液晶パネル51Gは、緑色の画像信号によって制御されるので、画像を表示するための緑色成分光が生成されることになる。この緑色成分の画像光は、クロスダイクロイックプリズム84に与えられる。
【0056】
クロスダイクロイックプリズム84は、青色成分、赤色成分、緑色成分の画像光を光学的に合成し、画像表示のための投影光を生成する。生成された投影光は、投射レンズ86を介して、屈折偏光器34に導かれる。
【0057】
図6Aに、屈折偏光器34の断面図を示す。図6Bは、図6Aの矢印αから見た図である。図6A、図6Bから明らかなように、屈折偏光器34は、概ね5角柱に形成されている。
【0058】
前述のように、屈折偏光器34は、屈折レンズ46と偏光フィルタ48を備えている。屈折レンズ46は、ガラスやプラスチックなどの透明材料から構成されている。また、図6Aの断面図に示すように、左前面50a、右前面50bは、後面52に対して角度θの傾斜が設けられ、中央部が最も厚く端部に向かうほど薄くなった形状に構成されている。つまり、図6Bに示す左前面50aと右前面50bの境界線149が厚く、両端部151a、151bが薄くなるように形成されている。
【0059】
屈折レンズ46の左前面50aには左目用偏光フィルタ48aが貼り付けられ、右前面50bには右目用偏光フィルタ48bが貼り付けられている。左目用偏光フィルタ48aは、偏光板と1/4波長板を重ねた構造となっている。偏光板に対する1/4波長板の遅相軸の角度を適切に選択することにより、後面52から入射した投影光を左円偏光にするようにされている。右目用偏光フィルタ48bも、偏光板と1/4波長板を重ねた構造となっており、偏光板に対する1/4波長板の遅相軸の角度を適切に選択することにより、後面52から入射した投影光を右円偏光にするようにされている。
【0060】
図5に戻って、立体映像投影の詳細を説明する。プロジェクター32本体の画像入力端子(図示せず)には、PC(図示せず)などから、立体映像投影装置30のために生成された立体映像投影用の画像信号が与えられる。
【0061】
図7に、立体映像投影用の画像60(青色成分のみ)を一例として示す。画像60は、全体として、縦横比が3:4(あるいは9:16)の標準的なサイズである。ただし、左半分の左目用画像60aと、右半分の右目用画像60bによって、一つの画像60が形成されている。このような立体映像投影用の画像を生成する方法については、後述する。
【0062】
図7は、立体映像投影用の画像60のうちの青色成分のみを示したものである。図示しないが、赤色成分、緑色成分も、図7と同じように、左半分の左目用画像60aと、右半分の右目用画像60bによって、一つの画像60が形成される。
【0063】
図7のような画像60が、図5の立体映像投影装置30に与えられると、投射レンズ86からは、画像60を表示するための投影光24が照射される。この投影光24の左半分は、図7の左目用画像60aに対応する左目用投影光24aとなり、右半分は図7の右目用画像60bに対応する右目用投影光24bとなる。
【0064】
この投影光24は、屈折偏光器34に導かれる。左目用投影光24aと右目用投影光24bの境界線(図7の境界線61に対応)と、屈折偏光器34(屈折レンズ46)の境界線149とが、一致するように、屈折偏光器34(屈折レンズ46)が配置されている。
【0065】
左目用投影光24aは、屈折レンズ46の左半分に入射する。屈折レンズ46は、中央部(境界線149)が厚くなるように形成されているので、左目用投影光24aは、右寄りに屈折されて対象面であるスクリーン4に投影される。図5において、線90、91は、屈折レンズ46によって屈折された左目用投影光の端部を示している。
【0066】
また、屈折レンズ46の前面の左半分には、左回転偏光を行う左目用偏光フィルタ48aが設けられている。したがって、左目用投影光24aによってスクリーン4に表示される左目用画像92aは、左回転偏光がなされたものとなる。なお、スクリーン4は、アルミなどの金属材料などで構成されており、その反射光においても偏光状態が維持されるようになっている。
【0067】
一方、投影光24のうちの右目用投影光24bは、屈折レンズ46の右半分に入射する。屈折レンズ46は、中央部(境界線149)が厚くなるように形成されているので、右目用投影光24aは、左寄りに屈折されてスクリーン4に投影される。図5において、線94、95は、屈折レンズ46によって屈折された右目用投影光の端部を示している。
【0068】
また、屈折レンズ46の前面の右半分には、右回転偏光を行う右目用偏光フィルタ48bが設けられている。したがって、右目用投影光24bによってスクリーン4に表示される右目用画像92bは、右回転偏光がなされたものとなる。
【0069】
上記のように、左側の左目用投影光24aは右寄りに、右側の右目用投影光24bは左寄りに屈折されるので、スクリーン4と立体映像投影装置30との距離を調節することにより、右目用画像92bと、左目用画像92aを、スクリーン4上の同じ位置に重ねて表示することができる。
【0070】
ユーザは、左目に左回転偏光を透過するフィルタ、右目に右回転偏光を透過するフィルタを有するメガネをかけて、スクリーン4の画像を見ることで、擬似的な立体画像を見ることができる。
【0071】
(2)変形例
上記実施形態では、屈折レンズ46の前面50a、50bに、それぞれ、左目用偏光フィルタ48a、右目用偏光フィルタ48bを設けている。しかし、後面52の左半分に左目用偏光フィルタ48aを設け、後面52の右半分に右目用偏光フィルタ48bを設けるようにしてもよい。また、屈折レンズ46の内部に、左目用偏光フィルタ48a、右目用偏光フィルタ48bを設けるようにしてもよい。
【0072】
さらに、上記実施形態では、屈折レンズ46に偏光フィルタ48を貼り付けている。しかし、両者を分離して設けてもよい。たとえば、図5の投射レンズ86の左半分に左目用偏光フィルタ48aを設け、右半分に右目用偏光フィルタ48bを設けるようにしてもよい。また、図3に模式的に示すように、両者を分離できるようにして設けてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、左目用偏光フィルタ48aにより左目用投影光を左回転偏光とし、右目用偏光フィルタ48bにより右目用投影光を右回転偏光としている。しかし、左目用と右目用の投影光の偏光が区別可能な程度に異なっていれば、どのような偏光でもよい。たとえば、左目用投影光を垂直偏光とし、右目用投影光を水平偏光としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、左半分に左目用投影光、右半分に右目用投影光となるような画像信号を与えている。しかし、左半分に右目用投影光、右半分に左目用投影光となるようにしてもよい。スクリーン4の上では、重なって表示されるからである。さらに、上半分(下半分)に右目用投影光、下半分(上半分)に左目用投影光となるようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態では、屈折偏光器34を着脱可能に設けている。しかし、立体映像のみを投影する専用機器として、屈折偏光器34を内蔵するようにしてもよい。なお、屈折偏光器34を内蔵した上、光学的に光路を切り換えることにより、立体映像と通常の映像を投影するようにしてもよい。
【0076】
なお、屈折レンズ46を、図7aの上段に示すような形状としてもよい。左目用屈折レンズ46aの前面は、図7a下段に示すように、角度θをもった斜辺を有する直角三角形を並べた形状となっている。右目用屈折レンズ46bの前面は、左目用屈折レンズ46aとは逆の形状の直角三角形を並べた形状となっている。
【0077】
このような形状の屈折レンズ46を用いれば、回折の影響により画像のぼけや色の分離などが生じる可能性があるが、屈折レンズ46を薄く形成することができ、装置のコンパクト化を図ることができる。なお、回折の影響を小さくするためには、スクリーン4との距離に応じて、図7a下段の寸法dを大きくとることが必要である。一般的には、数mm以上とすることが好ましい。
【0078】
なお、上記に示した変形例は、他の各実施形態においても適用することができる。

3.第二の実施形態
(1)構成と動作
上記第一の実施形態では、屈折偏光器34における屈折レンズ46の角度θ(図6A参照)は固定されていた。したがって、スクリーン4と立体映像投影装置30との適切な配置距離も固定されていた。
【0079】
第二の実施形態では、図8に示すように、屈折偏光器34の角度θを変えることができるようにしている。図8Aは、角度調整可能な屈折偏光器34を上から見た図である。この実施形態では、屈折レンズ46は、左半分の左目用屈折レンズ46aと、右半分の右目用屈折レンズ46bに分離されている。ベース部材98aの上に左目用屈折レンズ46aが固定され、ベース部材98bの上に右目用屈折レンズ46bが固定されている。ベース部材98aと98bは、始点100を中心として回動可能に固定されている。
【0080】
左目用屈折レンズ46aの前面には左目用偏光フィルタ48aが、右目用屈折レンズ46bの前面には右目用偏光フィルタ48bが、それぞれ、貼り付けられている。
【0081】
図8Bに、ベース部材98aを回動させる機構を示す。ベース部材98aは、バネなどの弾性部材102によって、矢印104の方向に付勢されている。ベース部材98aの後端面106に接するように、操作ネジ108が設けられている。操作ネジ108は、雌ねじの設けられたブラケット110に螺入されており、ブラケット110は、立体映像投影装置30の筐体に固定されている。操作ネジ108は、ギア部112を介して、モータ114の回転軸に接続されている。したがって、モータ114を回転させることにより、ベース部材98aの回動位置を制御することができる。なお、ベース部材98bにも同様の機構が設けられており、モータ114の回転軸に接続されている。したがって、モータ114を回転させることにより、ベース部材98a、98bの回動位置を同時に制御することができる。
【0082】
図9に、この実施形態による立体映像投影装置30の外観を示す。図8に示す角度調整可能な屈折偏光器34が設けられるとともに、たとえば赤外線レーザ距離計や超音波距離計などの距離測定器116が設けられている。立体映像投影装置30を、スクリーン4の前にセットすれば、距離測定器116によってスクリーン4までの距離を計測することができる。
【0083】
図10に、角度調整を自動的に行うための制御部の構成を示す。CPU126には、メモリ120、距離測定器116、モータ114、フラッシュメモリ128が接続されている。メモリ120は、CPU126のワークエリアとして用いられる。モータ114はベース部材98a、98bを回動させるためのものである(図8B参照)。フラッシュメモリ128には、角度調整のための調整プログラム130および距離・角度テーブル132が記録されている。
【0084】
図11に、調整プログラム130のフローチャートを示す。CPU126は、まず、距離測定器116から、計測された距離データを取得する(ステップS1)。次に、距離・角度テーブル132を読み出す。距離・角度テーブル132には、スクリーン4までの距離に応じて、左目用画像と右目用画像を同じ位置に重ねて表示するために適した角度θが、予め記録されている。CPU126は、計測された距離に対応する角度θを、距離・角度テーブル132から読み出す(ステップS2)。
【0085】
続いて、CPU126は、モータ114を制御し所定方向に回転させて、角度θとなるようにする(ステップS3)。なお、図示していないが、ベース部材98a、98bの位置(角度θに対応する)を検出するセンサが設けられており、CPU126はこのセンサの出力を見ながら、フィードバック制御によって、ベース部材98a、98bを所望の位置(角度θ)に制御する。
【0086】
したがって、この実施形態によれば、スクリーン4までの距離に応じて自動的に角度θを調整することができ、スクリーン4までの距離に拘わらず、左目用画像と右目用画像を同じ位置に重ねて表示することができる。
【0087】
(2)変形例
上記実施形態では、図8に示すような機構にて屈折レンズ46a、46bの実質的な屈折度合いを変えている。しかし、屈折レンズ46は図6のような構成とし、上面または下面からレーザ光を照射し、当該レーザ光の強度や波長を変えることによって、屈折レンズ46自体の屈折率を変えるようにしてもよい。
【0088】
また、屈折レンズ46の上面と下面、左側面と右側面あるいは前面と後面に電極を設け、当該電極間に印加する電圧を調整することにより屈折の度合いを変化させるようにしてもよい。なお、前面と後面に電極を設ける場合には、透明電極を用いることが好ましい。また、屈折レンズとしては、印加電圧により屈折率が変化する電気光学結晶の一種であるKTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)を用いることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、距離を測定して自動的に屈折度合いを変えるようにしている。しかし、距離測定器116を設けず、ユーザが手動で屈折度合いを変えるようにしてもよい。
【0090】
上記実施形態では、スクリーン4までの距離を測定し、距離に応じて予め定められた角度θとなるように制御を行っている。しかし、距離調節のためのテスト画像(左目用画像と右目用画像のそれぞれの対応する中央部にマークのある画像など)を表示することでこれを行うようにしてもよい。この場合、立体映像投影装置30には、スクリーン4を撮像するためのCCDカメラを設ける。CCDカメラによって撮像されたスクリーン4の画像を、CPU126が取り込む。CPU126は、取り込んだ画像の中央部のマークが重なっているかどうかを判断する。重なっていなければ、モータ114を駆動して屈折度合いを変える。その結果、マークのずれが大きくなれば、モータ114の回転方向を反対にする。マークのずれが小さくなれば、CPU126はその回転方向を維持する。マークが重なれば、CPU126は、モータ114の回転を停止させる。このようにして、自動的に、スクリーン4において左目用画像と右目用画像が同じ位置において重なって表示されるように制御することができる。
【0091】
また、上記のように特定画像としてマークを表示せず、スクリーン4上の左目用画像の左端(右端)と、右目用画像の左端(右端)を用いて、上記と同様の位置合わせを行ってもよい。
【0092】
なお、第二の実施形態においては、図8Aに示すように、ベース部材98a、98bを開くと、中央部分において屈折レンズ46a、46bが機能しない部分が生じてしまう。そこで、屈折レンズとして図7aに示す形状の薄いものを用いれば、このような問題は少なくなる。
【0093】
なお、上記に示した変形例は、他の各実施形態においても適用することができる。

4.第三の実施形態
(1)構造と動作
上記の第一および第二の実施形態では、通常のサイズの画像を左半分と右半分に分け、これらを重ねて表示している。したがって、通常のサイズの画像に比べると、横方向のサイズが小さくなった縦長の画面となる。第三の実施形態では、この点を考慮して、横方向のサイズを拡大して表示し、所望の縦横サイズ比の画面(たとえば通常のサイズの画面)とするようにしている。
【0094】
図12に、第三の実施形態による立体映像投影装置30の構成を示す。投射レンズ86から、左目用投影光24a、右目用投影光24bが照射されるところまでは、第一の実施形態と同じである。この実施形態では、屈折偏光器34の後面に凸レンズ47を貼り合わせている。さらに、所定距離を置いて、凹レンズ49を設けている。
【0095】
凸レンズ47、凹レンズ49ともに、横断面はどの位置でも同じ形状である異形レンズとなっている。したがって、投射レンズ86から投射された、左目用投影光24a、右目用投影光24bは、縦方向には拡大されず横方向にのみ拡大されることになる。したがって、スクリーン4上には、通常のサイズの画面として表示することが可能である。なお、図12においては、説明のため、屈折偏光器34、凸レンズ47、凹レンズ49をことさら大きく描いている。
【0096】
なお、この実施形態においては、立体映像投影装置30に与える立体映像投影用の画像60として、横方向のサイズが1/2に縮められたものを用いることが好ましい。たとえば、スクリーン4に、縦横比が3:4のサイズで画像を表示するのであれば、立体映像投影用の画像60(図7参照)の左半分の左目用画像60aは、縦横比3:4にて撮像した画像を横方向に圧縮した(横方向の画像を1/2とする)画像とすればよい。右半分の右目用画像60bについても同様である。
【0097】
(2)変形例
上記実施形態では、凸レンズ47、凹レンズ49によって横方向への拡大を行っている。しかし、図13Aに示すように、屈折偏光器34の屈折レンズ46自体に拡大作用を持たせるようにしてもよい。この屈折レンズ46は、左側屈折レンズ46aと右側屈折レンズ46bの組合せによって構成されている。
【0098】
左側屈折レンズ46aの詳細を図13Bに示す。後面には凹部55aが設けられている。凹部55aの面53aは所定の曲率半径を有している。面53aの描く曲線の点57aにおける法線59aは、面63aに平行である。
【0099】
左側屈折レンズ46aの前面には凸部65aが設けられている。凸部65aの面67aの曲率半径は、面53aの曲率半径53aより大きくなるように形成されている。面67aの描く曲線の点69aにおける法線71aは、面63aに平行ではなく左側に傾いている。
【0100】
なお、右側屈折レンズ46bは、左側屈折レンズ46aと左右対称の形状である。
【0101】
図13Aに示すように、屈折レンズ46の凹部55の左目用屈折レンズ46aには、左目用投影光24aが入射し、右目用屈折レンズ46bには、右目用投影光24bが入射する。左目用投影光24a、右目用投影光24bは、それぞれ、凹部55によって、拡大する方向に屈折される。凸部65aの法線71aは、図13Bに示すように、左方向に傾いているので、拡大する方向に屈折された左目用投影光24aは、凸部65によって右寄りに屈折される。これと反対に、拡大する方向に屈折された右目用投影光24bは、凸部65によって左寄りに屈折される。
【0102】
したがって、屈折レンズ46とは別に拡大のためのレンズを設けることなく、スクリーン4において、左目用画像と右目用画像を同じ位置に重ねて表示することができる。
【0103】
なお、上記では左目用屈折レンズ46aと右目用屈折レンズ46bという2つの部材によって屈折レンズ46を構成したが、単一の部材によって屈折レンズ46を構成してもよい。
【0104】
なお、上記に示した変形例は、他の各実施形態においても適用することができる。

5.第四の実施形態
(1)構造と動作
上記実施形態では、立体映像投影装置30について説明を行った。このような立体映像投影装置30に与えるための、図7に示すような画像を生成する装置について以下説明する。
【0105】
図14に、立体映像記録装置160の構成図を示す。撮像対象物150の立体映像投影用の画像を記録するものとする。記録手段154は、与えられた画像を、電気的、光学的、磁気的などの方法によって記録するものである。撮像対象物150と記録手段154との間には、屈折装置152が設けられている。
【0106】
屈折装置152は、撮像対象物150を左目で見た場合の左目用画像光156aが左側に、撮像対象物150を右目で見た場合の右目用画像光156bが右側に得られるように、撮像対象物150からの光を屈折させる。屈折装置152は、図6の屈折レンズ46と同じ構造のものを用いることができる。
【0107】
記録手段154は、屈折装置152からの左目用画像光156a、右目用画像光156bを受けて、図7に示すように左目用画像60a、右目用画像60bを記録する。
【0108】
図15に、立体映像記録装置160の外観を示す。撮像のためのレンズ系162の前面に、屈折装置152としての屈折レンズ164が設けられている。この実施形態では、屈折レンズ164は、屈折偏光器34と同じようにビデオカメラ166本体に対して着脱可能に設けられている。したがって、屈折レンズ164を取り外し、通常の撮影を行うことができる。
【0109】
図16に、立体映像記録装置160の詳細な構造を示す。撮像対象物150からの光は、屈折レンズ164によって左目用画像光156a、右目用画像光156bに分離される。左目用画像光156a、右目用画像光156bは、レンズ系162を介して、撮像素子(たとえばCMOSイメージセンサ)168に与えられる。したがって、撮像素子168は、左目用画像光156a、右目用画像光156bを電気信号に変換し、図7に示すような左側に左目用画像60a、右目用に右目用画像60bを有する立体映像投影用の画像60を生成する。
【0110】
ビデオ画像変換回路170は、画像60をビデオ画像形式に変換する。圧縮・伸張回路172は、ビデオ形式に変換された画像60を圧縮し、記録媒体174に記録する。以上のようにして、立体映像投影用の画像60を記録することができる。
【0111】
記録された画像を再生する際には、圧縮・伸張回路172は、記録媒体174に記録された画像データを読み出し、圧縮・伸張回路172にて伸張し、ビデオ画像信号として出力する。このビデオ画像信号を、第一から第三の実施形態に示す立体映像投影装置30にて投影することにより、立体映像の投影を実現することができる。
【0112】
なお、立体映像記録装置160に用いる屈折レンズ164と、立体映像投影装置30に用いる屈折偏光器34の屈折レンズ46は、画像を正確に再現し、立体視を適切に機能させるために、同じ特性を有するものであることが好ましい。さらには、立体映像記録装置160に用いる屈折レンズ164を撮像後取り外し、撮像した画像を再生する立体映像投影装置30の屈折レンズ46として用いることが好ましい。この場合、図4に示すように屈折レンズ46と偏光フィルタ48が一体となった構造ではなく、両者を分離可能な構造(たとえば図3において模式的に示すような構造)としておくことが好ましい。
【0113】
(2)変形例
上記実施形態では、第一の実施形態から第二の実施形態による立体映像投影装置30において用いるのに適した立体映像投影用の画像を記録するようにしている。第三の実施形態による立体映像投影装置30において用いるのに適した画像を記録する場合には、図12に示す屈折レンズ46を屈折レンズ164として、凸レンズ47、凹レンズ49を対象物からの光を左右方向に縮小する縮小手段として、レンズ系162の前面に設けるようにする。これにより、横方向のサイズが1/2に縮められた画像を得ることができ、立体映像投影装置30によって横方向に2倍に拡大された際に、適切な画像としてスクリーン4に表示される。
【0114】
なお、上記実施形態では、撮像した立体映像投影用の画像60を生成した後、これを記録媒体に記録し再生時に読み出して立体映像として投影するようにしている。しかし、生成した立体映像投影用の画像60を、そのまま立体映像投影装置30に与えて、あるいは送信して、立体映像を表示するようにしてもよい。
【0115】
なお、上記に示した変形例は、他の各実施形態においても適用することができる。

6.その他の実施形態
上記各実施形態では、動画画像を立体視する場合について説明した。しかし、上記の各構成は、静止画像を立体視する場合にも適用することができる。
【0116】
なお、上記各実施形態では、屈折手段によって左目用投影光(左目用画像光)、右目用投影光(右目用画像光)の双方を屈折させている。しかし、いずれか一方のみを屈折させるように、屈折手段を設けてもよい。
【0117】
上記各実施形態では、屈折手段として透明材料を用いている。しかし、完全な透明でなくとも、透光性を有する材料であればよい。
【0118】
なお、屈折レンズ46の材料としては、BK7や合成石英などの光学ガラスを用いることができる。ただし、屈折率の高い透明材料を用いることにより、屈折レンズ46を薄くすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面に表示された画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視するため、前記画像を対象面に表示するための立体映像表示装置であって、
与えられた画像信号に基づいて、第1領域に左目用投影光を、第2領域に右目用投影光を有する投影光を照射する投影手段と、
投影手段から照射された左目用投影光によって対象面に表示される左目用画像と、投影手段から照射された右目用投影光によって対象面に表示される右目用画像とが、対象面において重なって表示されるように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方を屈折させる屈折手段と、
投影手段から照射された左目用投影光が第1の偏光特性を持ち、右目用投影光が第2の偏光特性を持つように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方の偏光特性を変える偏光手段と、
を備えた立体映像投影装置。
【請求項2】
請求項1の立体映像投影装置において、
前記第1領域と第2領域は、投影光を左右に分けて形成され、
前記屈折手段は、前記左目用投影光に対応する第1部分と、前記右目用投影光に対応する第2部分とを有しており、前記第1部分と前記第2部分の境界面近傍においての厚さよりも、前記境界面から離れるにしたがって薄くなるよう構成された透光体によって構成されていることを特徴とする立体映像投影装置。
【請求項3】
請求項2の立体映像投影装置において、
前記偏光手段は、前記透光体の第1部分の表面もしくは内面に第1の偏光特性をもたらす第1の偏光フィルタが設けられ、前記透光体の第2部分の表面もしくは内面に第2の偏光特性をもたらす第2の偏光フィルタが設けられていることを特徴とする立体映像投影装置。
【請求項4】
請求項2または3の立体映像投影装置において、
前記透光体は、前記屈折の度合いが調整可能に構成されていることを特徴とする立体映像投影装置。
【請求項5】
請求項4の立体映像投影装置において、
前記透光体は、前記境界面の一端を中心として回転させ、前記第1部分と第2部分の表面がなす角度を調整可能に構成されていることを特徴とする立体映像投影装置。
【請求項6】
請求項4または5の立体映像投影装置において、
立体映像表示装置から前記対象面までの距離を計測する距離測定手段と、
前記距離測定手段によって測定した距離に応じて、前記透光体の屈折度合いを変更し、前記左目用画像と前記右目用画像が対象面において重なって表示されるように制御する制御手段とをさらに備えた立体映像投影装置。
【請求項7】
請求項4または5の立体映像投影装置において、
第1領域の画像に含まれる特定画像の位置と、第2領域の画像に含まれる特定画像の位置のずれを検出する特定画像ずれ検出手段と、
前記検出した特定画像のずれに基づいて、前記透光体の屈折度合いを変更し、前記左目用画像と前記右目用画像が対象面において重なって表示されるように制御する制御手段とをさらに備えた立体映像投影装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの立体映像投影装置において、
前記投影手段と前記対象面との間に、前記投影手段から照射された投影光を左右方向に拡大する拡大手段を備えることを特徴とする立体映像投影装置。
【請求項9】
請求項7の立体映像投影装置において、
前記屈折手段が、拡大手段としての機能も有することを特徴とする立体映像撮影装置。
【請求項10】
対象面に表示された画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視するため、前記画像を対象面に表示するための立体映像表示装置のための屈折偏光装置であって、
投影光を第1領域と第2領域に分け、第1領域に左目用投影光を、第2領域に右目用投影光を有する投影光を対象面に向けて投影する投影手段から照射された左目用投影光によって対象面に表示される左目用画像と、投影手段から照射された右目用投影光によって対象面に表示される右目用画像とが、対象面において重なって表示されるように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方を屈折させる屈折手段と、
投影部から照射された左目用投影光が第1の偏光特性を持ち、右目用投影光が第2の偏光特性を持つように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方の偏光特性を変える偏光手段と、
を備えた屈折偏光装置。
【請求項11】
請求項10の屈折偏光装置において、
前記第1領域と第2領域は、投影光を左右に分けて形成され、
前記屈折手段は、前記左目用投影光に対応する第1部分と、前記右目用投影光に対応する第2部分とを有しており、前記第1部分と前記第2部分の境界面近傍においての厚さよりも、前記境界面から離れるにしたがって薄くなるよう構成された透光体によって構成されていることを特徴とする屈折偏光装置。
【請求項12】
請求項11の屈折偏光装置において、
前記偏光手段は、前記透光体の第1部分の表面もしくは内面に第1の偏光特性をもたらす第1の偏光フィルタが設けられ、前記透光体の第2部分の表面もしくは内面に第2の偏光特性をもたらす第2の偏光フィルタが設けられていることを特徴とする屈折偏光装置。
【請求項13】
請求項11または12の屈折偏光装置において、
前記透光体は、前記屈折の度合いが調整可能に構成されていることを特徴とする屈折偏光装置。
【請求項14】
請求項13の屈折偏光装置において、
前記透光体は、前記境界面の一端を中心として回転させ、前記第1部分と第2部分の表面がなす角度を調整可能に構成されていることを特徴とする屈折偏光装置。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれかの屈折偏光装置において、
前記投影手段と前記対象面との間に、前記投影手段から照射された投影光を左右方向に拡大する拡大手段を備えることを特徴とする屈折偏光装置。
【請求項16】
対象面に表示された画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視する立体映像表示方法であって、
前記投影光を第1領域と第2領域に分け、第1領域に左目用投影光を、第2領域に右目用投影光を有する投影光を対象面に照射し、
照射された左目用投影光によって対象面に表示される左目用画像と、照射された右目用投影光によって対象面に表示される右目用画像とが、対象面において重なって表示されるように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方を屈折させ、
照射された左目用投影光が第1の偏光特性を持ち、右目用投影光が第2の偏光特性を持つように、左目用投影光または右目用投影光の少なくともいずれか一方の偏光特性を変えること
を特徴とする立体映像投影方法。
【請求項17】
対象面に重ねて表示された左目用画像と右目用画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視するため、対象物を撮像して、前記左目用画像と右目用画像を記録する立体映像記録装置であって、
第1領域に対象物の左目用画像が、第1領域に隣接する第2領域に対象物の右目用画像が得られるように、対象物からの光を屈折させる屈折手段と、
屈折手段によって得られた第1領域における左目用画像と第2領域における右目用画像を立体映像として記録する記録手段と、
を備えた立体映像記録装置。
【請求項18】
請求項17の立体映像記録装置において、
前記対象物からの光を、左右方向に縮小する縮小手段を備えることを特徴とする立体映像記録装置。
【請求項19】
対象面に重ねて表示された左目用画像と右目用画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視するため、対象物を撮像して、前記左目用画像と右目用画像を生成する立体映像生成装置のための屈折装置であって、
第1領域に対象物の左目用画像が、第1領域に隣接する第2領域に対象物の右目用画像が得られるように、対象物からの光を屈折させる屈折手段、
を備えた立体映像生成装置のための屈折装置。
【請求項20】
請求項19の立体映像生成装置のための屈折装置において、
前記対象物からの光を、左右方向に縮小する縮小手段を備えることを特徴とする立体映像生成装置のための屈折装置。
【請求項21】
対象面に重ねて表示された左目用画像と右目用画像を、第1の偏光特性を持つフィルタを通して左目で見て、第2の偏光特性を持つフィルタを通して右目で見ることにより立体視するため、対象物を撮像して、前記左目用画像と右目用画像を記録する立体映像記録方法であって、
第1領域に対象物の左目用画像が、第1領域に隣接する第2領域に対象物の右目用画像が得られるように、対象物からの光を屈折させ、
得られた第1領域における左目用画像と第2領域における右目用画像を立体映像として記録すること
を特徴とする立体映像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7a】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−276710(P2010−276710A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126777(P2009−126777)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年11月29日 北海道新聞社発行の「北海道新聞」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成20年12月3日〜5日 有限会社セミ・ジャパン主催の「セミコン・ジャパン2008」に出品
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】