説明

端子付き金属−セラミックス回路基板およびその製造方法

【課題】半田を使用しないで金属−セラミックス回路基板に端子が取り付けられた安価且つ高信頼性の端子付き金属−セラミックス回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス基板収容凹部22c内にセラミックス基板を配置させ、このセラミックス基板の両面に接触するように鋳型22、24内に第1の金属の溶湯を注湯した後に冷却して固化させることにより、金属回路板形成凹部24c内に金属回路板を形成してその一方の面をセラミックス基板の一方の面に直接接合させるとともに、金属ベース板形成凹部22d内に金属ベース板を形成してセラミックス基板の他方の面に直接接合させ、その後、鋳型内の金属回路板の他方の面に接触するように第2の金属の溶湯を注湯した後に冷却して固化させることにより、端子形成凹部24d内に第2の金属からなる端子を形成して金属回路板の他方の面に直接接合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き金属−セラミックス回路基板およびその製造方法に関し、特に、セラミックス基板に接合した金属回路基板に端子が取り付けられた端子付き金属−セラミックス回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や工作機械などの大電流を制御する高信頼性パワーモジュール用の絶縁基板として、金属回路板がセラミックス基板に直接接合した金属−セラミックス回路基板が使用されている。このような金属−セラミックス回路基板は、例えば、所謂溶湯接合法では、鋳型内にセラミックス基板を設置した後、このセラミックス基板に接触するように金属溶湯を鋳型内に注湯し、冷却して溶湯を固化させることにより、セラミックス基板に金属回路板を直接接合することによって製造されている(例えば、特許文献1〜2参照)。このような金属−セラミックス回路基板を使用してパワーモジュールを製造する際には、金属−セラミックス回路基板の金属回路板上に、電極として銅などからなる端子が半田付けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−76551号公報(段落番号0015)
【特許文献2】特開2005−103560号公報(段落番号0008−0009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属−セラミックス回路基板の金属回路板上に端子を半田付けすると、端子が半田付けされた金属回路板の下の部分に大きな応力が生じて、セラミックス基板にクラックが生じるおそれがあり、金属−セラミックス回路基板の信頼性が低下するという問題がある。特に、金属−セラミックス回路基板の金属回路板がNiめっきを施したアルミニウム回路板の場合、このアルミニウム回路板に銅端子を半田付けすると、半田がNiめっきに浸食してNiめっきが剥がれて、金属−セラミックス回路基板の信頼性が低下するという問題がある。また、金属−セラミックス回路基板の金属回路板上に端子を半田付けするためには、半田材料や半田付けのコストが必要になり、製造コストが高くなる。
【0005】
また、近年、環境上の問題から半田のPbフリー化が望まれており、金属−セラミックス回路基板の金属回路板上に端子を半田付けする場合にも、Pbフリーの半田を使用するのが望ましい。しかし、高温半田を使用して半田付けしなければならない場合には、従来の高温半田と同等以上の特性を有するPbフリーの半田の代替材料が開発されていないため、Pbフリー化が困難である。
【0006】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、半田を使用しないで金属−セラミックス回路基板に端子が取り付けられた安価且つ高信頼性の端子付き金属−セラミックス回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鋳型内において金属回路板を形成してセラミックス基板に直接接合させた後に、その鋳型内において端子を形成して金属回路板に直接接合することにより、あるいは、鋳型内において金属回路板を形成してセラミックス基板に直接接合させる際に、端子を金属回路板に直接接合することにより、半田を使用しないで金属−セラミックス回路基板に端子が取り付けられた安価且つ高信頼性の端子付き金属−セラミックス回路基板を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法は、鋳型内にセラミックス基板を配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の一方の面に接触するように第1の金属の溶湯を注湯した後にその第1の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させ、その後、鋳型内の金属回路板の他方の面に接触するように第2の金属の溶湯を注湯した後にその第2の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、金属回路板の他方の面に第2の金属からなる端子を形成して直接接合させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法は、鋳型内にセラミックス基板を配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の両面に接触するように第1の金属の溶湯を注湯した後にその第1の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させるとともに、セラミックス基板の他方の面に金属部材を形成してその金属部材を直接接合させ、その後、鋳型内の金属回路板の他方の面に接触するように第2の金属の溶湯を注湯した後にその第2の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、金属回路板の他方の面に第2の金属からなる端子を形成して直接接合させることを特徴とする。
【0010】
上記の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法において、第1の金属湯がアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯であるのが好ましい。また、第2の金属が、第1の金属より融点が低い金属であるのが好ましく、第1の金属より融点が低いアルミニウムまたはアルミニウム合金であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法は、鋳型内にセラミックス基板と端子を(好ましくは離間して)配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の一方の面と端子に接触するように金属溶湯を注湯した後にその金属溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させるとともに、その金属回路板(好ましくはその他方の面)に端子を直接接合させることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法は、鋳型内にセラミックス基板と端子を(好ましくは離間して)配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の両面と端子に接触するように金属溶湯を注湯した後にその金属溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させ、セラミックス基板の他方の面に金属部材を形成してその金属部材を直接接合させるとともに、その金属回路板(好ましくはその他方の面)に端子を直接接合させることを特徴とする。
【0013】
上記の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法において、金属溶湯がアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯であるのが好ましく、端子が金属溶湯の融点より高い融点の金属からなるのが好ましい。
【0014】
また、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板は、セラミックス基板の一方の面に金属回路板の一方の面が直接接合し、この金属回路板(好ましくはその他方の面)に端子が直接接合していることを特徴とする。
【0015】
この端子付き金属−セラミックス回路基板において、金属回路板がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるのが好ましい。また、端子は、半田を使用することなく金属回路板(好ましくはその他方の面)に接合することができ、金属回路板より高い強度の金属からなるのが好ましい。また、金属回路板を形成してセラミックス基板に直接接合させた後に端子を形成して金属回路板に直接接合する場合には、端子が金属回路板より低い融点の金属からなるのが好ましく、金属回路板を形成してセラミックス基板に直接接合させる際に端子を金属回路板に直接接合させる場合には、端子が金属回路板より高い融点の金属からなるのが好ましい。
【0016】
上記の端子付き金属−セラミックス回路基板において、セラミックス基板の他方の面に、金属回路板と同一のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属部材が直接接合しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半田を使用しないで金属−セラミックス回路基板に端子が取り付けられた安価且つ高信頼性の端子付き金属−セラミックス回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の第1の実施の形態の斜視図である。
【図1B】図1Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の平面図である。
【図1C】図1BのIC−IC線断面図である。
【図1D】図1Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の製造に使用する鋳型の斜視図である。
【図1E】図1Dの鋳型の平面図である。
【図1F】図1EのIF−IF線断面図である。
【図1G】図1Dの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
【図2A】図1Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の第1の変形例の斜視図である。
【図2B】図2Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の平面図である。
【図2C】図2BのIIC−IIC線断面図である。
【図2D】図2Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の製造に使用する鋳型の斜視図である。
【図2E】図2Dの鋳型の平面図である。
【図2F】図2EのIIF−IIF線断面図である。
【図2G】図2Dの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
【図3A】図1Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の第2の変形例の斜視図である。
【図3B】図3Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の平面図である。
【図3C】図3BのIIIC−IIIC線断面図である。
【図3D】図3Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の製造に使用する鋳型の斜視図である。
【図3E】図3Dの鋳型の平面図である。
【図3F】図3EのIIIF−IIIF線断面図である。
【図3G】図3Dの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
【図4A】本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の第2の実施の形態の斜視図である。
【図4B】図4Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の平面図である。
【図4C】図4BのIVC−IVC線断面図である。
【図4D】図4Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の製造に使用する鋳型の斜視図である。
【図4E】図4Dの鋳型の平面図である。
【図4F】図4EのIVF−IVF線断面図である。
【図4G】図4Dの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
【図5A】図4Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の第1の変形例の斜視図である。
【図5B】図5Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の平面図である。
【図5C】図5BのVC−VC線断面図である。
【図5D】図5Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の製造に使用する鋳型の斜視図である。
【図5E】図5Dの鋳型の平面図である。
【図5F】図5EのVF−VF線断面図である。
【図5G】図5Dの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
【図6A】図4Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の第2の変形例の斜視図である。
【図6B】図6Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の平面図である。
【図6C】図6BのVIC−VIC線断面図である。
【図6D】図6Aの端子付き金属−セラミックス回路基板の製造に使用する鋳型の斜視図である。
【図6E】図6Dの鋳型の平面図である。
【図6F】図6EのVIF−VIF線断面図である。
【図6G】図6Dの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板およびその製造方法の実施の形態について説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1A〜図1Cは、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の第1の実施の形態を示し、図1D〜図1Gは、その端子付き金属−セラミックス回路基板を製造するための鋳型を示している。
【0021】
図1A〜図1Cに示すように、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板は、セラミックス基板10と、このセラミックス基板10の一方の面に直接接合した放熱用金属ベース板12と、セラミックス基板10の他方の面に直接接合した金属回路板14と、この金属回路板14に直接接合した端子16とから構成されている。本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の端子16は、金属回路板14より高い強度の金属からなり、金属回路板14の上面の長手方向一端部から垂直方向上方に延びる略四角柱の形状を有する。
【0022】
セラミックス基板10と放熱用金属ベース板12との間、セラミックス基板10と金属回路板14との間、金属回路板14と端子16との間の直接接合は、所謂溶湯接合法によって行うことができ、例えば、図1D〜図1Gに示すような下側鋳型部材22と上側鋳型部材24とからなる鋳型20に金属溶湯を流し込んで冷却することによって行われる。
【0023】
下側鋳型部材22は、平面形状が略矩形の底面部22aと、この底面部22aの周縁部から垂直方向上方に延びる側壁部22bとからなる。この下側鋳型部材22の底面部22aの上面には、セラミックス基板10と略等しい形状および大きさのセラミックス基板収容凹部22cが形成され、このセラミックス基板収容凹部22cの底面には、放熱用金属ベース板12と略等しい形状および大きさの金属ベース板形成凹部22dが形成されている。
【0024】
上側鋳型部材24は、平面形状が略矩形の上面部24aと、この上面部24aの周縁部から垂直方向下方に延びる側壁部24bとからなる。この上側鋳型部材24の上面部24aの底面には、金属回路板14と略等しい形状および大きさの金属回路板形成凹部24cが形成されている。この金属回路板形成凹部24cの底面の長手方向一端部には、端子16と略等しい形状および大きさの端子形成凹部24dが形成されている。
【0025】
また、上側鋳型部材24の上面部24aには、金属溶湯を鋳型20内に注湯するための注湯口24eと、鋳型20内のガスを抜くためのガス抜き穴24fが形成されている。注湯口24eは、端子形成凹部24dを介して金属回路板形成凹部24cの底面の長手方向一端部と連通し、ガス抜き穴24fは、金属回路板形成凹部24cの底面の長手方向他端部と連通している。
【0026】
また、上側鋳型部材24および下側鋳型部材22には、セラミックス基板収容凹部22c内にセラミックス基板10を収容した後に上側鋳型部材24を下側鋳型部材22上に配置させたときに、金属回路板形成凹部24cと金属ベース板形成凹部22dとの間を連通させて、上側鋳型部材24の金属回路板形成凹部24cから下側鋳型部材22の金属ベース板形成凹部22dまで溶湯を注入するための(図示しない)溶湯流路が形成されている。
【0027】
この鋳型20の下側鋳型部材22のセラミックス基板収容凹部22c内にセラミックス基板10を収容して炉内に入れ、この炉内を不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気にして酸素濃度を(例えば10ppm以下まで)低下させ、注湯口24eから金属回路板形成凹部24c内に第1の金属の溶湯(例えば、アルミニウム溶湯またはアルミニウム合金溶湯)を酸化皮膜を取り除きながら注湯し、(図示しない)溶湯流路を介して金属ベース板形成凹部22dまで第1の金属の溶湯を充填し、その後、冷却して第1の金属の溶湯を固化させることにより、セラミックス基板10、放熱用金属ベース板12および金属回路板14が一体に接合した金属−セラミックス回路基板を製造し、次いで、注湯口24eから第1の金属より融点が低い第2の金属の溶湯(例えば、第1の金属と異なる組成のアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯)を注湯して端子形成凹部24dに充填し、その後、冷却して第2の金属の溶湯を固化させることにより、金属回路板14に端子16を直接接合させて端子付き金属−セラミックス回路基板を製造することができる。
【0028】
なお、鋳型20内に第1の金属の溶湯を注湯する前に、鋳型20と第1の金属の溶湯の温度差を小さくするために、鋳型20を予め加熱して注湯時の熱衝撃を小さくするのが好ましい。また、注湯口24eから第2の金属の溶湯を注湯する際には、注湯口24eの一部をガス抜き穴をして利用することができる。
【0029】
(第1の変形例)
図2A〜図2Cは、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の第1の変形例を示し、図2D〜図2Gは、その端子付き金属−セラミックス回路基板を製造するための鋳型を示している。本変形例の端子付き金属−セラミックス回路基板は、端子の形状が異なる以外は、図1Aの端子付き金属−セラミックス回路基板と略同一の構成を有するので、同一の部分の参照符号に100を加えて、その説明を省略する。
【0030】
本変形例の端子付き金属−セラミックス回路基板の端子116は、金属回路板114の上面の長手方向一端部から垂直方向上方に延びる略四角柱状の第1の鉛直部と、この第1の鉛直部の先端から金属回路板114に略平行に延びる略四角柱状の水平部とから構成されている。
【0031】
(第2の変形例)
図3A〜図3Cは、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の第2の変形例を示し、図3D〜図3Gは、その端子付き金属−セラミックス回路基板を製造するための鋳型を示している。本変形例の端子付き金属−セラミックス回路基板は、端子16の代わりに高さの低い略円筒形の端子(電極)としてバンプ216を設けた以外は、図1Aの端子付き金属−セラミックス回路基板と略同一の構成を有するので、同一の部分の参照符号に200を加えて、その説明を省略する。
【0032】
このように、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法では、鋳型の端子形成凹部の形状を変更することにより、半田を使用しないで(且つ端子接続部にNiなどのめっきを不要として)様々な形状の端子を金属−セラミックス回路基板に取り付けて、安価且つ高信頼性の端子付き金属−セラミックス回路基板を製造することができる。
【0033】
なお、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板において、端子を十分な強度(硬度)の材質にするとともに、金属回路板を軟らかい材質にすることにより、セラミックス基板に生じる熱応力を低減するために、金属回路板がビッカース硬度HV25〜40のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、端子がビッカース硬度HV50以上のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるのが好ましい。
【0034】
[第2の実施の形態]
図4A〜図4Cは、本発明による端子付き金属−セラミックス回路基板の第2の実施の形態を示し、図4D〜図4Gは、その端子付き金属−セラミックス回路基板を製造するための鋳型を示している。
【0035】
図4A〜図4Cに示すように、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板は、セラミックス基板310と、このセラミックス基板310の一方の面に直接接合した放熱用金属ベース板312と、セラミックス基板310の他方の面に直接接合した金属回路板314と、この金属回路板314に直接接合した端子316とから構成されている。本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の端子316は、金属回路板314より高い融点の銅や銅合金などの金属からなり、金属回路板314の上面の長手方向一端部から垂直方向上方に延びる略四角柱の形状を有する。
【0036】
セラミックス基板310と放熱用金属ベース板312との間、セラミックス基板310と金属回路板314との間、金属回路板314と端子316との間の直接接合は、所謂溶湯接合法によって行うことができ、例えば、図4D〜図4Gに示すような下側鋳型部材322と上側鋳型部材324とからなる鋳型320に金属溶湯を流し込んで冷却することによって行われる。なお、図4D〜図4Fは、鋳型320に端子316を配置させた状態を示している。
【0037】
下側鋳型部材322は、平面形状が略矩形の底面部322aと、この底面部322aの周縁部から垂直方向上方に延びる側壁部322bとからなる。この下側鋳型部材322の底面部322aの上面には、セラミックス基板310と略等しい形状および大きさのセラミックス基板収容凹部322cが形成され、このセラミックス基板収容凹部322cの底面には、放熱用金属ベース板312と略等しい形状および大きさの金属ベース板形成凹部322dが形成されている。
【0038】
上側鋳型部材324は、平面形状が略矩形の上面部324aと、この上面部324aの周縁部から垂直方向下方に延びる側壁部324bとからなる。この上側鋳型部材324の上面部324aの底面には、金属回路板314と略等しい形状および大きさの金属回路板形成凹部324cが形成されている。
【0039】
また、上側鋳型部材324の上面部324aには、金属溶湯を鋳型320内に注湯するための注湯口324eと、鋳型320内のガスを抜くためのガス抜き穴324fが形成されている。注湯口324eは、金属回路板形成凹部324cの底面の長手方向一端部と連通し、ガス抜き穴324fは、金属回路板形成凹部324cの底面の長手方向他端部と連通している。なお、注湯口324eの一部は、端子316が金属回路板形成凹部324cの底面の長手方向一端部から注湯口324eに沿って延びるように、端子316の一部を収容する端子収容部としての役割も有する。
【0040】
また、上側鋳型部材324および下側鋳型部材322には、セラミックス基板収容凹部322c内にセラミックス基板310を収容した後に上側鋳型部材324を下側鋳型部材322上に配置させたときに、金属回路板形成凹部324cと金属ベース板形成凹部322dとの間を連通させて、上側鋳型部材324の金属回路板形成凹部324cから下側鋳型部材322の金属ベース板形成凹部322dまで溶湯を注入するための(図示しない)溶湯流路が形成されている。
【0041】
この鋳型320の下側鋳型部材322のセラミックス基板収容凹部322c内にセラミックス基板310を収容し、注湯口324eの一部の端子収容部に端子316を配置させて炉内に入れ、この炉内を不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気にして酸素濃度を(例えば10ppm以下まで)低下させ、注湯口324eから金属回路板形成凹部324c内に金属溶湯(例えば、アルミニウム溶湯またはアルミニウム合金溶湯)を酸化皮膜を取り除きながら注湯し、(図示しない)溶湯流路を介して金属ベース板形成凹部322dまで金属溶湯を充填し、その後、冷却して金属溶湯を固化させることにより、セラミックス基板10、放熱用金属ベース板12、金属回路板14および端子16が一体に接合した端子付き金属−セラミックス回路基板を製造することができる。
【0042】
なお、鋳型320内に金属溶湯を注湯する前に、鋳型20と金属溶湯の温度差を小さくするために、鋳型20を予め加熱して注湯時の熱衝撃を小さくするのが好ましい。また、注湯口24eから金属溶湯を注湯する際には、注湯口24eの一部もガス抜き穴をして利用することができる。
【0043】
(第1の変形例)
図5A〜図5Cは、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の第1の変形例を示し、図5D〜図5Gは、その端子付き金属−セラミックス回路基板を製造するための鋳型を示している。本変形例の端子付き金属−セラミックス回路基板は、端子の形状が異なる以外は、図4Aの端子付き金属−セラミックス回路基板と略同一の構成を有するので、同一の部分の参照符号に100を加えて、その説明を省略する。
【0044】
本変形例の端子付き金属−セラミックス回路基板の端子416は、金属回路板414の上面の長手方向一端部から垂直方向上方に延びる略四角柱状の第1の鉛直部と、この第1の鉛直部の先端から金属回路板414に略平行に延びる略四角柱状の水平部と、この水平部の先端から第1の鉛直部に略平行に延びる略四角柱状の第2の鉛直部とから構成されている。
【0045】
(第2の変形例)
図6A〜図6Cは、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の第2の変形例を示し、図6D〜図6Gは、その端子付き金属−セラミックス回路基板を製造するための鋳型を示している。本変形例の端子付き金属−セラミックス回路基板は、端子316の代わりに高さの低い略円筒形の端子(電極)としてバンプ516を設けた以外は、図4Aの端子付き金属−セラミックス回路基板と略同一の構成を有するので、同一の部分の参照符号に200を加えて、その説明を省略する。
【0046】
このように、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法では、注湯口の一部の端子収容部に配置させる端子の形状(および必要に応じて端子収容部の形状)を変更することにより、半田を使用しないで(且つ端子接続部にNiなどのめっきを不要として)様々な形状の端子を金属−セラミックス回路基板に取り付けて、安価且つ高信頼性の端子付き金属−セラミックス回路基板を製造することができる。
【0047】
なお、本実施の形態の端子付き金属−セラミックス回路基板において、端子を十分な強度(硬度)の材質にするとともに、金属回路板を軟らかい材質にすることにより、セラミックス基板に生じる熱応力を低減するために、金属回路板がビッカース硬度HV25〜40のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、端子がビッカース硬度HV50以上の金属からなるのが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
10、110、210、310、410、510 セラミックス基板
12、112、212、312、412、512 放熱用金属ベース板
14、114、214、314、414、514 金属回路板
16、116、216、316、416、516 端子
20、120、220、320、420、520 鋳型
22、122、222、322、422、522 下側鋳型部材
24、124、224、324、424、524 上側鋳型部材
22a、122a、222a、322a、422a、522a 底面部
22b、122b、222b、322b、422b、522b 側壁部
22c、122c、222c、322c、422c、522c セラミックス基板収容凹部
22d、122d、222d、322d、422d、522d 金属ベース板形成凹部
24a、124a、224a、324a、424a、524a 上面部
24b、124b、224b、324b、424b、524b 側壁部
24c、124c、224c、324c、424c、524c 金属回路板形成凹部
24d、124d、224d 端子形成凹部
24e、124e、224e、324e、424e、524e 注湯口
24f、124f、224f、324f、424f、524f ガス抜き穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型内にセラミックス基板を配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の一方の面に接触するように第1の金属の溶湯を注湯した後にその第1の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させ、その後、鋳型内の金属回路板の他方の面に接触するように第2の金属の溶湯を注湯した後にその第2の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、金属回路板の他方の面に第2の金属からなる端子を形成して直接接合させることを特徴とする、端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項2】
鋳型内にセラミックス基板を配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の両面に接触するように第1の金属の溶湯を注湯した後にその第1の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させるとともに、セラミックス基板の他方の面に金属部材を形成してその金属部材を直接接合させ、その後、鋳型内の金属回路板の他方の面に接触するように第2の金属の溶湯を注湯した後にその第2の金属の溶湯を冷却して固化させることにより、金属回路板の他方の面に第2の金属からなる端子を形成して直接接合させることを特徴とする、端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1の金属が、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする、請求項1または2に記載の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記第2の金属が、前記第1の金属より融点が低い金属であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記第2の金属が、前記第1の金属より融点が低いアルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項6】
鋳型内にセラミックス基板と端子を配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の一方の面と端子に接触するように金属溶湯を注湯した後にその金属溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させるとともに、その金属回路板に端子を直接接合させることを特徴とする、端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項7】
鋳型内にセラミックス基板と端子を配置させ、この鋳型内のセラミックス基板の両面と端子に接触するように金属溶湯を注湯した後にその金属溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板の一方の面に金属回路板を形成してその金属回路板の一方の面を直接接合させ、セラミックス基板の他方の面に金属部材を形成してその金属部材を直接接合させるとともに、その金属回路板に端子を直接接合させることを特徴とする、端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記金属溶湯がアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯であることを特徴とする、請求項6または7に記載の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記端子が前記金属溶湯の融点より高い融点の金属からなることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載の端子付き金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項10】
セラミックス基板の一方の面に金属回路板の一方の面が直接接合し、この金属回路板に端子が直接接合していることを特徴とする、端子付き金属−セラミックス回路基板。
【請求項11】
前記金属回路板がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする、請求項10に記載の端子付き金属−セラミックス回路基板。
【請求項12】
前記端子が、半田を使用することなく前記金属回路板に接合していることを特徴とする、請求項10または11に記載の端子付き金属−セラミックス回路基板。
【請求項13】
前記端子が、前記金属回路板より高い強度の金属からなることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれかに記載の端子付き金属−セラミックス回路基板。
【請求項14】
前記端子が、前記金属回路板より低い融点の金属からなることを特徴とする、請求項10乃至13のいずれかに記載の端子付き金属−セラミックス回路基板。
【請求項15】
前記端子が、前記金属回路板より高い融点の金属からなることを特徴とする、請求項10乃至13のいずれかに記載の端子付き金属−セラミックス回路基板。
【請求項16】
前記セラミックス基板の他方の面に、前記金属回路板と同一のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属部材が直接接合していることを特徴とする、請求項10乃至15のいずれかに記載の端子付き金属−セラミックス回路基板。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【公開番号】特開2011−14671(P2011−14671A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156684(P2009−156684)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】