説明

端子金具の製造方法

【課題】電食の発生を防止できるとともに、曲げ加工を容易に施すことのできる端子金具の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の端子金具10の製造方法は、芯線41に含まれる金属材料と同じ金属を含む第1の金属材料と、第1の金属材料とは相違する金属からなる第2の金属材料とを、冷間圧接により一体化することにより、第1の金属材料からなる第1の領域4と第2の金属材料からなる第2の領域5とが並列して接合される金属板材1を作製する板材作製工程を実行した後、金属板材1を、電線接続部23のうち、少なくとも芯線接続部24に相当する部分が、金属板材1の第1の領域4に形成されるように、打ち抜く打抜き工程を実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内に配索される電線としては、車両の軽量化等の観点から、近年では、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の芯線を絶縁被膜で被覆してなるアルミ電線の需要が高まっている。アルミ電線に接続される端子金具としては、強度上の問題等で銅または銅合金製の金属板材を用いて作製したものを用いるのが一般的である。
また、アルミ電線の端末では、絶縁被膜の剥離除去により露出した芯線が、端子金具のバレル片により圧着され接続されている。
【0003】
したがって、端子金具の電線との接続部(電線接続部)では、電線の芯線を構成するアルミニウム(合金)と端子金具を構成する銅(合金)という異種の金属が接触することになるため、芯線と端子金具との接触部分に塩分などの電解質を含む水が浸入することによる電食の発生が懸念される。
そこで、従来、電食の発生を防止した端子金具が検討されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−111058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に提案されている端子金具は、アルミ電線が接続される部分をアルミまたはアルミ合金で形成し、相手方の端子と接続される部分を銅または銅合金で形成し、電線が接続される部分の端部と、端子が接続される部分の端部とを重ね合わせて、重ね合わせた部分を絶縁体で封止したものである。
したがって、特許文献1に記載のものでは、電線接続部の端部と端子接続部の端部とが重なりあっている部分は厚みが大きくなったり、段差が形成されたりするため、曲げ加工を施しにくいという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電食の発生を防止できるとともに、曲げ加工を容易に施すことのできる端子金具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものとして、本発明は、芯線を絶縁被膜で被覆してなる電線を載置して電気的に接続する電線接続部を備える端子金具の製造方法であって、前記芯線に含まれる金属材料と同じ金属を含む第1の金属材料と、前記第1の金属材料とは相違する金属からなる第2の金属材料とを、冷間圧接により一体化することにより、前記第1の金属材料からなる第1の領域と前記第2の金属材料からなる第2の領域とが並列して接合される金属板材を作製する板材作製工程を実行した後、前記金属板材を、前記電線接続部のうち、少なくとも前記電線の端末から露出する前記芯線が接続される芯線接続部に相当する部分が、前記金属板材の前記第1の領域に形成されるように打ち抜く打抜き工程を実行するところに特徴を有する。
【0008】
本発明においては、芯線に含まれる金属材料と同じ金属を含む第1の金属材料からなる第1の領域と、第2の金属材料からなる第2の領域とが並列して接合された金属板材を、少なくとも芯線接続部に相当する部分が第1の領域に形成されるように打抜いた後、曲げ加工などを施すことにより端子金具を作製する。したがって、本発明によって得られる端子金具では、電線の端末において露出する芯線が、芯線と同じ金属材料からなる第1の領域に接続される。つまり、本発明によれば、端子金具のうち少なくとも芯線が接続される部分(芯線接続部)と、電線の芯線とが同じ金属から構成されることとなるので、芯線と端子金具とが接触する部分に電解質を含む水分などが付着しても電食が生じない。
【0009】
また、本発明の製造方法において用いる金属板材は、第1の金属材料と第2の金属材料とを冷間圧接により一体化されており、第1の金属材料と第2の金属材料との接合部分は、他の部分と概ね同じ厚みであり段差もないから、曲げ加工等を容易に行うことができる。
以上より、本発明によれば、電食の発生を防止できるとともに、曲げ加工を容易に施すことのできる端子金具の製造方法を提供することができる。
【0010】
本発明は、以下の構成であってもよい。
前記金属板材の表面の、前記第1の領域と前記第2の領域との境界部分を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程を実行してもよい。
第1の領域と第2の領域との境界部分においては異種金属が存在するため、この部分に電解質を含む水分が浸入すると電食の発生が懸念される。そこで、上記のような構成とすると、異種金属が存在する第1の領域と第2の領域との境界部分に絶縁層が形成されるから、前記境界部分における電食が生じ難くなる。
【0011】
上記構成において、前記絶縁層を、前記第1の領域よりも前記第2の領域を多く覆うように形成すると、電線の芯線と相違する材料からなる第2の領域の露出面積が減るので電食が生じにくくなるとともに、電食が発生したとしても、そのスピードが遅くなる。
【0012】
上記構成において、前記絶縁層を、絶縁性材料からなる絶縁フィルムを前記金属板材の表面の前記境界部分を覆うように貼付することにより形成すると、絶縁層を簡易な方法により形成することができる。
【0013】
上記構成において、前記絶縁層形成工程を、前記打抜き工程の前に実行すると、複数の端子金具の絶縁層を一括して形成することができ、個々の端子金具に合わせて各絶縁層を形成する必要がなく、簡素な方法により端子金具を作製することが可能となる。
【0014】
イオン化傾向が、前記第2の金属材料よりも前記第1の金属材料に近い第3の金属を前記金属板材にめっきするめっき工程を実行してもよい。
第1の金属材料と第2の金属材料の接合部分が露出状態に配される端面に、電解質を含む水分が付着すると、電食の発生が懸念される。また、第2の金属材料が露出している端面に電解質を含む水分が付着して、当該水分が第2の金属材料が露出する端面から芯線にかけて流れると、電食が発生する可能性がある。
そこで、例えば、打抜き工程の後に、上記のめっき工程(イオン化傾向が第2の金属材料よりも第1の金属材料に近い第3の金属をめっきを施す工程)を実行すると、打抜き工程により形成される端面と、第2の領域に、第3の金属によるめっきが施される。
したがって、上述の構成によれば、打抜き工程を実行した後の金属板材の端面および第2の領域には、イオン化傾向が、第2の領域を構成する第2の金属材料よりも第1の金属材料に近い第3の金属からなる層が形成され、端面あるいは第2の領域と、第1の領域とのイオン化傾向の差(標準電位の差)を、めっき加工を施す前よりも小さくすることが可能である。その結果、上述の構成によれば、電食が起こりにくくなるとともに、電食のスピードが抑制され、電食防止効果が高まる。
【0015】
前記芯線はアルミニウム製またはアルミニウム合金製であり、前記第2の金属材料が銅または銅合金であってもよい。
このような構成とすると、電線を軽量化することができ、端子金具を強度に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電食の発生を防止できるとともに、曲げ加工を容易に施すことのできる端子金具の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1の端子金具の側面図
【図2】端子金具の電線接続部を示す一部平面図
【図3】打ち抜き加工を施した金属板材の一部平面図
【図4】金属板材の一部平面図
【図5】絶縁層形成前の金属板材の図4のX−X線における一部断面図
【図6】絶縁層形成後の金属板材の図4のX−X線における一部断面図
【図7】絶縁層形成後の金属板材の一部平面図
【図8】図7の要部拡大図
【図9】電線を載置した状態の端子金具の一部を示す平面図
【図10】他の実施形態(2)で説明する金属板材の一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明を具体化した実施形態1を、図1ないし図9によって説明する。以下の説明においては、図1、図2および図4における左側を前とし、図3、図5〜図9における上側を前とする。
本実施形態の端子金具10は、図1および図2に示す雌型の端子金具10であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む第1の領域4と銅または銅合金を含む第2の領域5が並列して接合された金属板材1(詳細は後述する)から構成されている。本実施形態の端子金具10は、図3に示すような展開形状の端子金具片10Aに曲げ加工などを施すことで図1に示すような形状に成形されている。
【0019】
端子金具10は、前後に開口する略箱型をなす本体部11を備え、この本体部11内には、前方から相手の雄型の端子金具のタブ(図示せず)が挿入可能とされている。端子金具10の本体部11の後側には、電線40を載置して接続する電線接続部23が設けられている。
【0020】
端子金具10の本体部11は、図3に示す展開形状の端子金具片10Aを折曲線L1に沿って折り曲げることで角筒状に成形されている。本体部11は、前後に延出する底壁13と、底壁13の両側縁から立ち上げられる一対の側壁14,15と、側壁14から連なり底壁13と対向する天井壁16と、側壁15から連なり天井壁16の外側に重ね合わせられる外壁17とから構成されている。天井壁16の側縁には、側壁15側へ突出する支持片18が設けられ、この支持片18が外壁17に切り欠き形成された差込溝19内に差し込まれるとともに差込溝19の側縁(側壁15の上端面)に当接されることで、天井壁16を底壁13とほぼ平行な姿勢に支持可能とされている。
【0021】
底壁13の前端からはタブに対して弾性接触可能な弾性接触片20が設けられている。弾性接触片20の構造の詳細は図示しないが、図3に示す展開状態において底壁13から前方へ真っ直ぐに延出する舌片20Aを、本体部11における前端位置にて後方へ折り返した後、本体部11における長さ方向略中央位置にて前方へ折り返して形成されている。弾性接触片20のうち前後の折返部の間の部分が、天井壁16と対向するとともにタブに対して直接に接触可能なタブ接触部20aとされるのに対し、後側の折返部から前方へ突出する部分が、底壁13に当接可能とされる支持部20bとされ、その先端部20cは図1における上方へ向けて屈曲形成されている。弾性接触片20は、本体部11内に挿入されたタブを天井壁16とタブ接触部20aとの間で挟圧状態に保持可能とされ、タブにより押圧されることで弾性変形されるようになっており、このとき支持部20bが底壁13に当接されるとともに支持部20bの先端部20cがタブ接触部20aの裏側に当接されることで、弾性接触片20が過度撓みするのを規制可能とされる。また弾性接触片20は、底壁13よりも幅狭に形成されている。底壁13には、端子金具10をハウジング(図示せず)のキャビティ内に収容したときにキャビティ内に設けられたランスが進入して係止可能な係止孔21が開口して形成されている。また係止孔21の両側縁(両側壁14,15の下端)からは、キャビティ内への挿入動作の案内などに機能するスタビライザ22が一対突設されている。
【0022】
端子金具10の電線接続部23は、図2および図3に示すように、本体部11の底壁13の後端から後方へ延出されて設けられている。電線接続部23の図1における上側の面23Aには電線40が載置されており、この電線40は2組のバレル片25A,25Bにより圧着され接続されている。以下、端子金具10の電線40が載置される面を電線載置面23Aという
【0023】
電線40は、金属細線(例えば、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の金属細線)を撚り合わせてなる芯線41を絶縁製の材料からなる絶縁被膜42で被覆したものである。本実施形態において電線40の材料として用いるアルミニウム合金としては、例えばJIS規格A5052のアルミニウム合金や、JIS規格A5083のアルミニウム合金などがあげられる。
【0024】
電線40の端末40Aは、図2および図9に示すように、絶縁被膜42が剥離されて芯線41が露出した状態になっており、電線40は、露出した芯線41の前端41A(端末41A)を本体部11側に向けて端子金具10に接続される。電線接続部23のうち、電線40の端末40Aにおいて露出した芯線41が接続される部分が芯線接続部24である。
【0025】
電線40を接続する2組のバレル片25A,25Bは、間隔をあけて、本体部11の底壁13から連なって底壁13の幅方向に張り出し形成されている(図3を参照)。2組のバレル片25A,25Bのうち、前側(本体部11側)のバレル片25Bは露出した芯線41を圧着して端子金具10と電気的に接続される芯線バレル片25Bとされ、後側(後端側)のバレル片25Aは電線40の絶縁被膜42で被覆している部分を圧着して端子金具10と接続される絶縁被膜バレル片25Aとされる。
【0026】
芯線バレル片25Bの電線載置面23Aには、電線40を圧着する際に芯線41の周囲に形成された金属酸化膜を破るための複数の凹部28が複数凹設されている(図3および図8を参照)。
凹部28の孔縁は電線40を圧着する前の状態において、図3の紙面を貫通する方向から見て平行四辺形状をなしている。複数の凹部28は、芯線バレル片25Bが芯線41に圧着された状態で芯線41が延びる方向について間隔を空けて配されるとともに、芯線41が延びる方向に交差する方向について間隔を空けて配されている(図8を参照)。
【0027】
芯線バレル片25Bと本体部11の後端との間の領域26は、電線40の端末40Aが配される端部配置領域26であり、この端部配置領域26は、電線40を接続した状態において一部(図1では上側)が開放状態となっており、芯線41が露出状態(外側から目視可能な状態)で配されている(図1および図2を参照)。端部配置領域26の図1における上側に配される板厚方向の面26A(金属板材1の端面3に相当)には、めっきが施されている。
【0028】
芯線バレル片25Bと絶縁被膜バレル片25Aとの間の領域27は絶縁被膜42の端末42Aと、絶縁被膜42の端末42Aから露出した芯線41とが配される芯線配置領域27であり、端部配置領域26と同様に、電線40を接続した状態において一部(図1では上側)が開放状態となっており、芯線41が露出状態(外側から目視可能な状態)で配されている(図1および図2を参照)。芯線配置領域27の図1における上側に配される板厚方向の面27A(金属板材1の端面3に相当)には、めっきが施されている。
【0029】
本実施形態の端子金具10においては、電線接続部23の前端23Eに絶縁性材料29Aからなる絶縁層29が形成されている。絶縁層29は、電線40が載置される電線載置面23A(図1における上側に配される面)および、その反対側の面23Bの双方に形成されている(図1および図2を参照)。絶縁層29により覆われている部分については、図中、網掛けで示した。絶縁層29は電線接続部23に接続される電線40の前端(芯線41の前端41A)よりも本体部11寄りに形成されているので、端子金具10と電線40との電気的な接続に悪影響を与えることはない。
絶縁層29を構成する絶縁性材料29Aとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いることができる。PETはピンホールも生じにくい樹脂であり、電食防止効果が高いので好ましい。
【0030】
次に、本実施形態の端子金具10を構成する金属板材1について説明する。本実施形態で用いる金属板材1は、図4に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金(「アルミニウム(合金)」ともいう)からなる第1の領域4と、銅または銅合金(「銅(合金)」ともいう)からなる第2の領域5とが並列して接合されたクラッド材である。第1の領域4を構成するアルミニウム(合金)は第1の金属材料に相当し、第2の領域5を構成する銅(合金)は第2の金属材料に相当する。
【0031】
金属板材1は、図4および図5に示すように、第1の金属材料と第2の金属材料との接合部7を含めて概ね厚みが一定の平板状をなしている。第1の金属材料と第2の金属材料との接合部7においては、第1の金属材料からなる層および第2の金属材料からなる層は、それぞれ厚みが他の部分の厚みの約2分の1に形成され、互いに重なりあっている。金属板材1の両面1A,1Bには、それぞれ、第1の領域4と第2の領域5との境界部分6を覆うように絶縁層29が形成されている。
本実施形態では、金属板材1の図4に示す上側面1A(電線載置面)と下側面1Bのそれぞれにおいて、絶縁層29は、アルミニウム(合金)からなる第1の領域4よりも、銅(合金)からなる第2の領域5を多く覆うように形成されている。
【0032】
次に、本実施形態の端子金具10の製造方法について説明する。
まず、端子金具10の材料となる金属板材1を作製する(板材作製工程)。具体的には、アルミニウム(合金)からなる第1の金属材料と銅(合金)からなる第2の金属材料とを、冷間圧接により一体化することにより、第1の金属材料からなる第1の領域4と第2の金属材料からなる第2の領域5とが並列して接合された平板状のクラッド材を作製する。
【0033】
次に、板材作製工程の実行により得られた金属板材1の表面1A,1Bに絶縁層29を形成する絶縁層形成工程を実行する(絶縁層形成工程)。具体的には、絶縁性フィルム29A(絶縁性材料29A)を、図4および図6に示すように、金属板材1の上下面1A,1Bにおける、第1の領域4と第2の領域5との境界部分6を覆うように貼り付けることにより絶縁層29を形成する。なお、本実施形態では、絶縁性フィルム29Aを、アルミニウム(合金)からなる第1の領域4よりも、銅(合金)からなる第2の領域5を多く覆うように貼り付けて絶縁層29を形成する。
【0034】
次に、金属板材11を図7に示す点線に沿って打抜く(打抜き工程)と、図3に示す形状の連鎖端子30が得られる。図7に示す点線は、端子金具片10Aが複数連結された連鎖端子30の形状(所定形状)を示している。なお、本実施形態では、本体部11のほぼ全域が第2の領域5に形成されるようにするとともに、電線接続部23のほぼ全域が金属板材1の第1の領域4に形成されるように、打抜き工程が実行される。
【0035】
次に、芯線バレル片25Bの電線載置面23Aに、図示しない複数の凸部が突出形成された金型を用いてプレス加工を施すことにより、複数の凹部28を形成すると、図3に示す連鎖端子30が得られる。
【0036】
連鎖端子30(打抜き工程の実行後に得られる金属板材)においては、複数の端子金具片10Aがキャリア31,35に連結されている。連鎖端子30は、図3に示すように、図示横方向に沿って延出する帯状をなす一対のキャリア31,35に対し、複数の端子金具片10Aを図示横方向、すなわちキャリア31,35の長手方向(延出方向)に沿ってほぼ等間隔に並んだ状態で連結した構成とされている。各端子金具片10Aは、その長さ方向を図示縦方向、すなわち連鎖端子30における幅方向に沿わせた姿勢とした状態で、前後の各一端部がそれぞれキャリア31,35の幅方向の一方の縁部に連結されている。
【0037】
端子金具片10Aの前端部は、図3における上側のキャリア31に連結されている。端子金具片10Aの前端部に形成された弾性接触片20の先端部20cは、キャリア31の幅領域内に入り込んだところに形成されている。この端子金具片10Aの前端部を連結する連結部32とキャリア31とは、図示横方向に並んで配されている。
【0038】
端子金具片10Aの後端部は、図3における下側のキャリア35の側縁に突設された連結部36に連結されている。連結部36は、端子金具片10Aのうち絶縁被膜バレル片25Aの後端幅方向略中央に繋げられている。これら端子金具片10Aと連結部36とキャリア35とは、図示縦方向、すなわち連鎖端子30全体から見て幅方向に並んで配されている。このキャリア35には、連鎖端子30を送り出すために加工機に設けられた送り爪(図示せず)が係合可能な送り孔33,34が開口して形成されている。この送り孔33,34は、加工機の種類(例えばプレス機や圧着機)によって送り爪の形状が異なることから、その送り爪の形状に合わせて円形の送り孔33と方形の送り孔34の2種類が設けられている。
【0039】
次に、打抜き工程を経て得られた連鎖端子30(打抜き工程の実行後に得られる金属板材)にめっきを施す(めっき工程)。
めっき工程においては、連鎖端子30の両面をめっきするだけでなく、連鎖端子30(金属板材1)の板厚方向の面(端面3)についてもめっきを施す。
めっき工程では、イオン化傾向が、第2の領域5を構成する第2の金属材料[銅(合金)]よりも大きい第3の金属(例えば、スズやニッケル)をめっきする。本実施形態において、第3の金属としてはスズが好ましい。
めっき工程を経ると端子金具10を構成する金属板材1の両面1A,1Bならびに端面3にメッキ層が形成される。
【0040】
次に、キャリア31,35に形成した送り孔33,34に送り爪を係合させることで、端子金具片10Aを順次加工機に送り、その過程で端子金具片10Aに対して曲げ加工などを施す。本実施形態では、金属板材1は概ね厚みが一定であるので、第1の金属材料と第2の金属材料とが接合される接合部7においても容易に曲げ加工を施すことができる。
【0041】
次に、個々の端子金具片10Aの電線接続部23に設けられた絶縁被膜バレル片25Aおよび芯線バレル片25Bを電線40に圧着させて、端子金具10と電線40とを接続する。具体的には、図9に示すように、電線40を、その芯線41の前端41A(端末41A)が電線接続部23の端部配置領域26に配されるとともに、絶縁被膜42の端末42Aが芯線配置領域27に配されるように載置してから、芯線バレル片25Bと絶縁被膜バレル片25Aとをそれぞれ電線40に圧着させると、図1および図2に示す形状の端子金具10が得られる。
【0042】
次に本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、芯線41に含まれる金属材料と同じ金属を含む第1の金属材料からなる第1の領域4と、第2の金属材料からなる第2の領域5とが並列して接合された金属板材1を、電線接続部23に相当する部分が第1の領域4に形成されるように打抜いた後、曲げ加工などを施すことにより端子金具10を作製する。つまり、本実施形態によれば、芯線接続部24を含む電線接続部23が第1の領域4に形成されるので、電線40の端末40Aにおいて露出する芯線41は、芯線41と同じ金属材料からなる芯線接続部24に接続されるので、芯線41と端子金具10とが接触する部分に電解質を含む水分などが付着しても電食が生じない。
【0043】
また、本実施形態において端子金具10の製造に用いる金属板材1は、第1の金属材料と第2の金属材料とを冷間圧接により一体化されて得られ、第1の金属材料と第2の金属材料との接合部7は、他の部分と概ね同じ厚みであり段差もないから、曲げ加工等を容易に行うことができる。
その結果、本実施形態によれば、電食の発生を防止できるとともに、曲げ加工を容易に施すことのできる端子金具10の製造方法を提供することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、金属板材1の表面1A,1Bの、第1の領域4と第2の領域5との境界部分6を覆う絶縁層29を形成する絶縁層形成工程を実行することにより、異種金属が存在する第1の領域4と第2の領域5との境界部分6に絶縁層29が形成されるから、境界部分6における電食が生じ難くなる。
【0045】
特に、本実施形態では、絶縁層29が第1の領域4よりも第2の領域5を多く覆うように形成されるから、電線40の芯線41(アルミニウムまたはアルミニウム合金)と相違する材料(銅または銅合金)からなる第2の領域5の露出面積が減るので、電食が生じにくくなるとともに、電食が発生したとしても、そのスピードが遅くなる。
【0046】
さらに、本実施形態では、絶縁層29を絶縁性材料からなる絶縁フィルム29Aを金属板材1の表面の境界部分6を覆うように貼付することにより形成するから、絶縁層29を簡易な方法により形成することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、絶縁層形成工程を打抜き工程の前に実行するので、複数の端子金具10の絶縁層29を一括して形成することができ、個々の端子金具10に合わせて各絶縁層29を形成する必要がなく、簡素な方法により端子金具10を作製することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態においては、打抜き工程を実行した後に、イオン化傾向が、第2の金属材料よりも第1の金属材料に近い第3の金属をめっきするめっき工程を実行するから、打抜き工程の実行により形成された金属板材1の端面3のみならず、第2の領域5にもめっきが施される。
つまり、本実施形態によれば、第1の金属材料と第2の金属材料の接合部7が露出状態で配される端面3や、第2の金属材料が露出状態で配される端面3に、イオン化傾向が第2の金属材料よりも第1の金属材料に近い第3の金属をめっきを施すことができ、第2の領域5にも、第3の金属によるめっきが施される。
したがって、本実施形態によれば、金属板材1の端面3および第2の領域5には、イオン化傾向が、第2の領域5を構成する第2の金属材料[銅(合金)]よりも大きい第3の金属(スズまたはニッケル)からなるめっき層が形成され、端面3あるいは第2の領域5と、第1の領域4とのイオン化傾向の差(標準電位の差)を、めっき加工を施す前よりも小さくすることが可能であるから、電食が起こりにくくなるとともに、電食のスピードが抑制され、電食防止効果が高まる。
【0049】
加えて本実施形態によれば、芯線41はアルミニウム製またはアルミニウム合金製であり、第2の金属材料が銅または銅合金であるから、電線40を軽量化することができ、端子金具10を強度に優れたものとすることができる。
【0050】
さらに、本実施形態においては、絶縁層形成工程を実行したのちにめっき工程を実行するから、めっき工程を実行してから絶縁層29を形成する場合よりも、金属板材1に絶縁層29を形成し易く、作業性に優れる。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、電線接続部のほぼ全域が金属板材の第1の領域に形成されるように、打抜き工程を実行したが、電線接続部のうち芯線接続部のみが第1の領域に形成されるように打抜き工程を実行してもよい。
(2)上記実施形態では、絶縁層を、第1の領域よりも第2の領域を多く覆うように形成したが、図10で示すように、絶縁層29を第1の領域4と第2の領域5とを均等に覆うように形成してもよい。また、絶縁層29の形成面積は金属板材の上下面において相違していてもよい。
(3)上記実施形態においては、絶縁層を金属板材の両面にPET製フィルムを貼り付けることにより形成したが、絶縁層を形成しないものであってもよいしポリブチレンテレフタレート(PBT)などの別の絶縁材料を用いたものであってもよい。また、金属板材の表側と裏側において、相違する絶縁性材料により絶縁層を形成してもよいし、液状の絶縁性材料を塗布して熱処理を施す方法などにより絶縁層を形成してもよい。
【0052】
(4)上記実施形態においては、アルミニウム(合金)製の芯線を備える電線を用いたので、第1の金属材料としてアルミニウム(合金)、第2の金属材料として銅(合金)を用いて作製した金属板材を示したが、本発明はこれに限定されない。第1の金属材料としては電線の芯線と同じ金属材料であればよく、第2の金属材料としては第1の金属材料とは相違する金属材料であればよい。
【0053】
(5)上記実施形態においては、めっきを施すための金属(第3の金属)として、イオン化傾向が、銅(第2の金属材料)よりも大きい金属(スズまたはニッケル)を用いた例を示したが、これに限定されない。めっきを施すための第3の金属は、イオン化傾向が第2の金属材料よりも第1の金属材料に近いものであれば電食防止効果が高まるので好ましい。
【0054】
(6)上記実施形態においては、金属板材の両面および端面に、めっきを施したものを示したが、これに限定されない。例えば、めっきを施していない金属板材を用いて作製した端子金具であってもよいし、金属板材の一方の面のみにめっきを施したものや打抜き加工後の金属板材の端面のみにめっきを施したものであってもよい。
【0055】
(7)上記実施形態では、打抜き工程の後にめっき工程を実行する製造方法について説明したが、打抜き工程の前にめっき工程を実行してもよい。この場合でも、打抜き工程の後に、打抜きにより形成された板材の端面にめっきを施すと電食防止効果を高めることができる。
【0056】
(8)上記実施形態では、芯線バレル片に平行四辺形状をなす複数の凹部を形成したものを示したが、凹部の形状は長方形状などであってもよい。
(9)上記実施形態では、複数の凹部を打抜き加工の後に形成する方法を示したが、複数の凹部を打抜き加工の前に形成してもよいし、打抜き加工と同時に形成してもよい。
【0057】
(10)上記実施形態では、端子金具として雌型のものを示したが、雄型のものでもよい。また、上記実施形態では相手方の端子金具を挿入可能な本体部を備える端子金具を示したが、2以上の電線を接続する電線接続部を有するもの(いわゆる「スプライス端子」)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…金属板材
1A,1B…(金属板材の)表面
3…(金属板材の)端面
4…第1の領域
5…第2の領域
6…境界部分
7…接合部
10…端子金具
23…電線接続部
23A…電線載置面
24…芯線接続部
25A…絶縁被膜バレル片
25B…芯線バレル片
29…絶縁層
29A…絶縁性材料
40…電線
40A…(電線の)端末
41…芯線
41A…(芯線の)端末
42…絶縁被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を絶縁被膜で被覆してなる電線を載置して電気的に接続する電線接続部を備える端子金具の製造方法であって、
前記芯線に含まれる金属材料と同じ金属を含む第1の金属材料と、前記第1の金属材料とは相違する金属からなる第2の金属材料とを、冷間圧接により一体化することにより、前記第1の金属材料からなる第1の領域と前記第2の金属材料からなる第2の領域とが並列して接合される金属板材を作製する板材作製工程を実行した後、
前記金属板材を、前記電線接続部のうち、少なくとも前記電線の端末から露出する前記芯線が接続される芯線接続部に相当する部分が、前記金属板材の前記第1の領域に形成されるように打ち抜く打抜き工程を実行することを特徴とする端子金具の製造方法。
【請求項2】
前記金属板材の表面の、前記第1の領域と前記第2の領域との境界部分を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の端子金具の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層を、前記第1の領域よりも前記第2の領域を多く覆うように形成することを特徴とする請求項2に記載の端子金具の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層を、絶縁性材料からなる絶縁フィルムを前記金属板材の表面の前記境界部分を覆うように貼付することにより形成することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の端子金具の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層形成工程を、前記打抜き工程の前に実行することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の端子金具の製造方法。
【請求項6】
イオン化傾向が、前記第2の金属材料よりも前記第1の金属材料に近い第3の金属を前記金属板材にめっきするめっき工程を実行することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の端子金具の製造方法。
【請求項7】
前記芯線はアルミニウム製またはアルミニウム合金製であり、前記第2の金属材料が銅または銅合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の端子金具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9335(P2012−9335A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145215(P2010−145215)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】