説明

端末装置監視システム

【課題】電池の浪費を防止しつつ、決済端末装置の盗難監視を確実に行う。
【解決手段】決済端末装置10と、決済端末装置10と無線通信網を介して接続された決済センター20(GPS管理サーバ26)とから成る決済端末装置の盗難監視システムである。決済端末装置10は、GPS電波を受信して取得した位置情報をGPS管理サーバ26に送信し、GPS管理サーバ26で決済端末装置10の位置を監視して、盗難の危険性に応じて決済端末装置10の決済端末装置10のタンパ処理を行う。決済端末装置10は、盗難の危険度に応じてGPS管理サーバ26への位置情報の送信周期を短縮することで、位置情報送信に要する無駄な電力消費を防止する。なお、管理者携帯電話機30は決済端末装置10の盗難の危険性の有無確認などに用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は決済機能を備えた端末装置監視システムに関し、とくにGPS(Global Positioning System)を利用して端末装置の位置情報を取得することで、端末装置の位置を監視して端末装置の盗難を防止することができる端末装置監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のクレジットカード、プリペイドカードやキャッシュカード、或いは携帯電話機に埋め込まれた(ICチップ)を使った決済サービスの普及により、端末装置による決済が広く行われるようになってきている。また、これに伴って、カードの読み取り及び書き込み機能を備えた携帯型の決済端末装置が広く使用されている。
この決済端末装置は決済用のセンター(決済センター)と例えば商用無線通信網を介して接続され、決済端末装置では、代金とカードなどの識別情報を読み取りこれを決済センターに送り、決済センターではカードの残高情報或いはポストペイ情報に基づき代金を決済するのが一般的である。
【0003】
ところで、携帯型の端末装置は、持ち運びが自由に行えるように小型軽量に形成されているため、不正持ち出しが行われる恐れがある。端末装置が第三者の手に渡り、例えば内部のプログラムなどのデータが悪用されると、決済システム全体の信用が失墜し、甚大な損害に結び付く恐れがある。
そこで、GPS電波が自由にかつ容易に利用できるようになったことに伴い、GPS電波を利用して、決済用の端末装置の位置情報を把握して悪用を防ぐ端末装置の管理システムが提案されている。
【0004】
例えば、GPS機能を利用して、POS(販売時点情報管理 point of sale)端末装置の盗難及び不正に位置移動した店舗を把握できるようにしたPOSシステムが知られている(特許文献1参照)。
このシステムでは、POS端末装置に備えられているGPS受信装置でPOS端末装置の位置情報を取得して、現在の位置情報とPOS端末装置の設置時の登録位置情報とが一致するかどうかを判断し、その判断に基づきPOS端末装置の運用又は機能の停止を行うものである。
【0005】
GPS機能を利用して端末装置の位置を管理するシステムの他の例としては、携帯電話機にクレジットカード機能を持たせて、端末装置で決済を行う決済システムが知られている(特許文献2参照)。
このシステムでは、端末装置にGPS受信部と地点情報照会部とを設けておき、携帯電話機から決済処理開始要求を受けた場合に、記憶装置(GPSサーバ)に対して、予め登録した携帯電話機で選択された決済方式による決済処理が実行可能な地点情報を照会し、地点情報と実際に決済が行われる位置情報が一致する場合に、決済サーバとの決済処理を開始し、一致しない場合は、決済処理を中断するものである。
【0006】
さらに、他のシステムとして、クレジットカードや銀行のキャッシュカードあるいはネットワークを介して情報通信する際に、本人を認証するための認証システムとして、特にクレジットカードやキャッシュカードの正規の使用者が所持する携帯電話機などの端末装置から所定の時間間隔で位置情報を取得し、認証要求時点で異なる位置情報が得られている場合に、前記所定の時間間隔内で前記異なる位置の間を移動可能な経路が存在するか否かを判断して、移動可能な経路が存在する場合には、本人認証をし、経路が存在しない場合は認証を行わないようにした認証システムも知られている(特許文献3参照)。
【0007】
上記従来の各システムは、GPS電波による位置情報を用いてクレジットカードやキャッシュカード機能が不正に使用されるのを防止することを目的とするものであるが、端末装置(決済端末装置)自体の不正持ち出しの防止を目的としたものではないため、端末装置を不正に持ち出しても決済を不能にするだけで、持ち出した端末装置が不正使用されない限り、その持ち出しは早期には気づき難い。
ところが、端末装置の不正持ち出しは、必ずしも当該端末装置の不正使用を目的とせず、端末装置内部の情報(データやプログラム)を盗み出すことを目的に、或いは内部データやプログラムの不正改竄のためになされる場合がある。そのような端末装置の不正持ち出しを早期に検出して、盗まれたことをいち早く察知して必要な防御処理(タンパ処理)を行うことが喫緊の課題となっている。
【0008】
そこで、従来のGPS搭載の端末装置を用いて、その位置情報を決済センターへ短い周期で通報し、決済センターで端末装置を遠隔監視するシステムを構築することが考えられるが、その場合、頻繁にGPSの電波検出処理を行い、それによって端末装置の監視を行うと電池が消耗するため短周期での監視は困難であるという問題がある。
また、端末装置がそもそもビル内や地下街などGPS電波が届かない場所に移動すると、位置確認ができず決済センターにおける監視制御を停止せざるを得ないという問題もある。
さらに、不正持ち出しを行った人が、端末装置の電源スイッチをOFFした場合は、そもそも決済センターへの自動送信もできない。
このような理由から、従来のシステムでは決済センターで端末装置の状態を充分に把握することができず、端末装置が盗難に遭ったか否かの判断を早期に行うのが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−310826号公報
【特許文献2】特開2006−350450号公報
【特許文献3】特開2008−134849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、GPS電波で位置監視を行いつつ電池の消耗を極力抑制し、端末装置がビル内や地下街などGPS電波の届かない場所に移動したことを通報できるようにして、盗難に遭ったか否かを早期に判断できるようにする、また、仮に、不正持ち出しした人が電源スイッチをOFFした場合、或いは不正使用しようとする場合にも、端末装置から決済センターへ所在位置を自動通報ができるようにして、端末装置の不正持ち出しを確実に判断して、早期にその防御措置を講じることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、端末装置と、端末装置と無線通信網を介して接続された決済センターとからなる端末装置監視システムであって、端末装置は、GPS電波を受信する手段と、受信したGPS電波に基づき自身の位置情報を取得する手段と、前記位置情報の送信周期を予め定めた周期に設定する送信周期設定部と、自身の管理モードを設定する管理モード設定部と、を備え、決済センターは、端末装置から送信される位置情報に基づき当該端末装置の位置を監視する位置監視部と、端末装置の決済情報に基づき決済を行う決済部を備え、前記管理モード設定部は、前記位置監視部の当該端末装置についての位置監視情報に基づき予め定めた管理モードを設定し、前記送信周期設定部は前記管理モードに応じた前記位置情報の送信周期を設定することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された端末装置監視システムにおいて、前記決済センターは、前記管理モードが所定の管理モードであるとき、決済部による当該端末装置についての決済機能を停止することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された端末装置監視システムにおいて、前記端末装置はタンパ処理を行うタンパ処理部を備え、前記タンパ処理部は、前記管理モードに応じて定められたタンパ処理を行うことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、前記位置監視部は、取得した端末装置の位置情報に基づき当該端末装置が予め定めた運用エリア内か外かを判断し、位置監視部が運用エリア外と判断したとき、前記決済部における当該端末装置についての決済機能を停止し、かつ、前記運用エリア外信号を端末装置に送信し、端末装置は受信した運用エリア外信号に基づき、前記タンパ処理部によりタンパ処理を行うと共に、送信周期設定部により前記位置情報の送信周期を予め定めた正常時におけるよりも短い周期に設定することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載された端末装置監視システムにおいて、前記位置監視部が当該端末装置を運用エリア外と判断したとき、決済センターは、端末装置に対して予め定めた特定操作を要求する信号を送信し、当該端末装置から所定時間内に特定操作信号を受信したとき、前記決済部における当該端末装置の決済機能を停止しないことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項4に記載された端末装置監視システムにおいて、前記端末装置に対応付けて決済センターに登録されたGPS電波受信機能付き携帯電話機を備え、前記携帯電話機は受信したGPS電波に基づき自身の位置情報を取得する手段を備え、前記位置監視部が当該端末装置を運用エリア外と判断したとき、前記携帯電話機から送信される前記位置情報と前記端末装置の位置情報が一致したときは、前記決済部における当該端末装置についての決済機能を停止しないことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、端末装置はGPS電波を受信できないときGPS電波中断信号を決済センターに発信し、決済センターは前記端末装置に対して特定操作を促す信号を送信し、所定時間内に特定操作に基づく信号を受信したときは、当該端末装置についての決済機能を維持し、前記信号を受信しないときは、前記GPS電波中断信号を受信したとき当該端末装置についての決済機能を停止することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、端末装置は、予め定めた入力以外の異常入力操作を監視する入力操作監視部を備え、入力操作監視部が異常入力操作を検知したとき、異常入力操作信号を決済センターに送信するものであって、前記管理モード設定部は、異常入力操作が検知されたとき異常入力操作に応じた管理モードを設定し、前記送信周期設定部は前記管理モードに応じた前記位置情報の送信周期を設定し、前記タンパ処理部は、入力操作監視部が異常入力操作を検知したとき、タンパ処理を行い、送信周期設定部は、前記位置情報の送信周期を予め定めた正常時におけるよりも短い周期に設定し、決済センターは、端末装置から異常入力操作信号を受信したとき当該端末装置についての決済機能を停止することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、端末装置は電源設定部を備え、前記電源設定部は、端末装置の盗難危険度が予め設定されたレベルに達したとき又は決済センターからの設定信号に基づき、電源スイッチのOFF時にGPS電波の受信及び決済センターとの無線通信を可能にするにために電源を部分的にON状態に維持する設定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、GPS電波を受信しつつも極力電池の消耗を抑制でき、端末装置がGPS電波の届かない場所に移動したときにはそのことを決済センターに通報でき、更に、盗難の危険度が一定のレベルに達した段階では、電源スイッチをOFFしても当該端末装置の位置情報を決済センターに通報できるようにして、決済センター側で端末装置が盗難に遭ったか否かを容易に判断することができる。それによって決済センターでは盗難に対する安全対策を容易に講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る端末装置監視システムを概略的に示すブロック図である。
【図2】決済センターのブロック図である。
【図3】本実施形態に係る決済端末装置の正面図である。
【図4】図1に示した決済端末装置の機能を説明するブロック図である。
【図5】決済端末装置の設定された運用エリアと決済端末装置との関係を説明する図である。
【図6】決済端末装置が、GPS電波を受信できないエリアに入ったときの処理の手順を説明するフロー図である。
【図7】決済端末装置が運用エリアから出たときの処理の手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る端末装置監視システムを概略的に示すブロック図である。
本端末装置監視システムは、端末装置の一例として決済端末装置10と、電子マネー等の決済を行う決済センター20と運用者が所持する携帯電話機、即ち運用者携帯電話機30からなり、この運用者携帯電話機30が決済端末装置10と対になって用いられる。
決済端末装置10は、概略的には、決済端末装置10の動作全体を制御するCPUとRAM、ROMを含む制御部11と、外部メモリ12と、GPS衛星40からの経度・緯度情報であるGPS電波を受信するGPS受信部14と、クレジットカード、キャッシュカードなどのカード情報(識別情報、電子マネー情報を含む)を読み取り、或いは例えば必要に応じて残高等の読み取り及び書き込み部(R/W)16と、電子マネー決済を行う決済センター20と商用無線通信網を介して無線通信を行う商用無線通信部18、決済センター20と通信を行うためのアンテナ19等から成っている。
【0015】
電子マネー決済を行う決済センター20は、GPS管理サーバ26を備え、GPS管理サーバ26は、運用者の携帯電話機(運用者電話機)30との通信機能を有している。
図2は、決済センター20のブロック図である。
決済センター20は、決済センター20全体を制御するCPU、作業用メモリ領域を備えたRAM、必要なプログラムを格納したROMとからなる制御部21と、決済部211と、決済端末装置10と商用通信システムを利用して通信するための通信部22と、入力された決済情報や各カードなどの識別情報、運用者の識別情報などを記憶するメモリ23と、液晶(LCD)などによる表示部24と、キー入力を行う入力部25と、GPS管理サーバ26と、決済端末装置10との通信を行うためのアンテナ27等から成っている。
【0016】
GPS管理サーバ26は、GPS管理サーバ26全体を制御するCPU及びROM、RAMを備えた制御部260と、制御部260の機能部として位置監視部261と、メモリ262と、表示部263と、入力部264とから成っており、決済端末装置10とは決済センター20の通信部22を介して接続され、かつ運用者携帯電話機30とは商用の携帯電話網を介して接続され、運用者携帯電話機30からの信号或いは運用者携帯電話機30の位置情報を、決済センター20の制御部21に対して入力すると共に決済センター20からの信号などを携帯電話機30に送信する。
【0017】
位置監視部261は決済端末装置10のGPS情報を監視しその位置情報の管理を行う。例えば、決済端末装置10から送信されてくる決済端末装置10の位置情報に基づき、当該決済端末装置10の位置情報と、設定された運用エリア情報とを比較して決済端末装置10が運用エリア内にあるか否か判断し、決済端末装置10が運用エリア外であると判断したときは、決済端末装置10に対して運用エリア外信号を決済センター20の通信部22から送信する。
メモリ262は、決済端末装置10及び運用者携帯電話機30の基本エリア及び運用エリア情報、決済端末装置10の移動履歴情報、決済端末装置10のその他の管理情報(管理モード、盗難危険度レベル情報)などを記憶する。
表示部263は入力結果や、入力用画面などを表示する。
入力部264は、例えば決済端末装置10や運用者携帯電話機30の識別情報などと共にその基本エリア情報などを入力するキーボードや、表示部の入力画面などで構成する。
GPS管理サーバ26の制御部260は決済センターの制御部21と連携して決済端末装置10の決済及び位置情報の管理、危機管理を行う。
【0018】
図3は、本実施形態に係る決済端末装置の正面図である。
決済端末装置10は、キー入力部15と、例えばLCD(液晶)による表示部17と、携帯電話機におけるデータ通信機能を備えた商用無線通信部18と、非接触で提供サービス又は商品情報やカード情報や、後述する異常を検知した時に、異常信号等を決済センター20に送信し、逆に決済センター20からタンパ処理開始信号等の指令信号等を受信する受信するアンテナ19と、を備えている。
【0019】
図4は、図1に示した決済端末装置10の機能をより詳しく説明するブロック図である。
図示のように、CPUを備えた制御部11に対して、例えばサービスや商品価格の入力情報15a、電源ON/OFFスイッチ情報15b、例えば、タンパ入力情報15cが入力され、かつ、メモリ12がタンパ情報15cを記憶するメモリタンパ部12aと、その他のメモリ部12bとから成ることが示されている。
なお、電源ON/OFFスイッチはソフトウエアで構成し、操作は表示部17に表示されたアイコンを操作するようにして、電源ON/OFFスイッチの機能をソフトウエアで自由に設定できるようにしている。
【0020】
制御部11は、決済端末装置10の操作状況を監視して予め設定された操作状況から操作の異常を判断する異常操作監視部111と、GPS管理サーバ26の位置監視部261及び自身の異常操作監視部111の判断結果に従って、管理モード及び盗難危険度レベルを設定する管理モード設定部112と、管理モード設定部112の設定に対応してGPS電波の受信及び決済センター20(GPS管理サーバ26)への送信周期を変更するGPS電波送信周期設定部113と、同様に上記位置監視部261及び自身の異常操作監視部111の判断結果に従って、タンパ処理を選択して実行するタンパ処理部114、表示部17の表示制御を実行する表示制御部115、後述するように、盗難危険度が予め設定されたレベルに達したとき、電源用のON/OFFスイッチ15bをOFF操作する時に電源OFF時の設定を行う電源設定部116とから成っている。
【0021】
管理モード設定部112は、GPS管理サーバ26の位置監視部261の位置情報、異常操作監視部111の操作状況情報に基づき予め定めた決済端末装置の盗難危険性を表す盗難危険度レベル及び盗難危険度レベルに対応した管理モードを設定し、GPS電波送信周期設定部113は設定された盗難危険度レベルに従って、GPS電波の受信及び送信周期を設定し、かつタンパ処理部114は、上記設定された管理モードに従って、対応処理テーブルからタンパ処理の内容を読み出して実行する。
つまり、盗難危険度レベルが上がるに従い、正常モードから段階的に盗難監視モード、異常操作モード、擬盗難モード、盗難確定モード、捜索モード、と管理モードの切換が行われ同時に異なる管理モードが設定され、それと共に盗難危険度レベルが上がっていく。また、この盗難危険度レベルが上がるに従ってGPS電波の受信及び決済センター20(GPS管理サーバ26)への通報周期が短縮され、かつタンパ処理もより重い処理に移行するように設定されている。
なお、その管理モードの内容、つまり特定の管理モード時にどのような処理を行うかは予め自由に定めておくことができる。
【0022】
図5は、後述する決済端末装置10について設定される運用エリアと決済端末装置10との位置関係を説明する図である。
本決済端末装置監視システムでは、初期登録として決済端末装置10について、その運用者に割り当てられた個人識別情報、決済端末装置10の識別情報、例えば(MAC情報)、運用者携帯電話機30の電話番号等の識別情報と共に、その決済端末装置10の設置場所の基本エリア情報(緯度・経度情報)、及び設置場所を中心として例えば半径500mのエリアを運用エリアとして、その経度・緯度情報をGPS管理サーバ26のメモリ262に設定しておく。つまり、決済端末装置10は、GPS電波を受信して自己の位置を検出し、これを決済センター20(GPS管理サーバ26)に送信し、GPS管理サーバ26の位置監視部261では受信した決済端末装置10の位置情報に基づき、決済端末装置10が設定された運用エリア内にあるか否か、つまり、決済端末装置10の現在位置の緯度および緯度が設置場所(基本位置)の経度又は緯度から運用エリアの経度・緯度までの間にあるか否かを判断し、決済端末装置10がこの運用エリア内にあるときは常に正常とし、このエリアから出たときは異常と判断することで、異常時の措置を迅速に行えるようにしている。
【0023】
次に、以上で説明した決済端末装置10の盗難監視システムの動作について説明する。
まず、本実施形態に係る決済端末装置10の盗難監視システムでは、電池消耗を抑制するために、盗難に係る特殊な管理モードを設定し、適切なGPS電波受信タイミングでGPS管理サーバ26への送信を行う。
具体的には、移動決済端末装置10の管理モード及び盗難危険度レベルを定め、決済端末装置10における各盗難危険度レベルに従ったGPS電波の検出及び通報間隔を以下のように定めている。
【0024】
管理モード 盗難危険度レベル GPS検出間隔
(管理レベル)
(1)正常モード
(i)基本エリア内モード 0 1時間及び決済センター通信時
(ii)エリア内移動モード 1 10分
(2)盗難監視モード
(i)GPS電波無しモード 2 5分
(ii)エリア外の移動モード 3 1分
(iii)異常操作モード 4 30秒
(3)擬盗難モード 5 15秒
(4)盗難確定モード 6 10秒又は決済センター指示時間
(5)捜索モード 7 5秒又は決済センター指示時間
【0025】
「正常モード」
決済端末装置10が登録されて基本エリア内にあるとき、及び運用エリア内を移動(運搬)しているときは、管理モード設定部112は、これらの情報を管理センター20(GPS管理サーバ26の位置監視部261)から受信して決済端末装置10をそれぞれ正常モードに設定し、それぞれ(基本エリア内モード)、(エリア内移動モード)に設定し上記の盗難危険度レベル(管理レベル)を0,1及びGPS電波受信及び通報間隔をそれぞれ1時間、10分に設定する。
【0026】
「盗難監視モード(2)(i)、(ii)、(iii)」
次に、(2)(i)決済端末装置10がGPS電波の届かない場所に移動したとき、(2)(ii)運用エリア外に移動したとき、(2)(iii)決済端末装置10に異常操作が行われたときには、管理モード設定部112は、これらの情報を決済センター20(GPS管理サーバ26の位置監視部261)から受けて或いは異常操作については自身で判断して、それぞれ盗難監視モード(2)(i)、(ii)、(iii)に切り換えて、盗難監視モードにおいて予め定めたタンパ処理及び決済センター20での当該決済端末装置10の決済保留のために必要な処理を行う。
【0027】
後述する予め定めた擬盗難モード(3)の状況になったときは、管理モード設定部112は、擬盗難モードに切り換えると共に、擬盗難モードにおいて予め定めたタンパ処理、例えば、メモリ12の内容を消去する。
さらに、例えば、運用者からGPS管理サーバ26経由で決済センター20に運用者携帯電話機30により盗難の通報があり盗難が確定した段階では、決済センター20は決済端末装置10に信号(盗難信号)を送る。決済端末装置10は盗難信号を受信すると、管理モード設定部112は管理モードを盗難確定モード(4)に設定すると共に盗難危険度レベルを6に上げて、GPS電波の受信と通報間隔を10秒又は決済センターから指示がある場合はその時間間隔に短縮する。また、管理モードが盗難確定モードに設定されたことに伴い、タンパ処理部114は、その信号に従ってメモリタンパ12aの盗難確定時のタンパ処理情報を読み出して、当該タンパ処理を行う(この場合は、例えば、アプリケーションプログラムの削除やOSの削除を行う)。
【0028】
さらに、決済センター20から捜索モード(5)の設定指示が出されたときは、管理モード設定部112は決済端末装置10を捜索モードに設定し、その設定にしたがって、GPS電波送信周期設定部113は、GPS電波の受信及び決済センター20のGPS管理サーバ26への送信周期をさらに5秒に短縮するか、別途決済センター20から指定された周期でGPS管理サーバ26へのGPS電波の送信を行う。
【0029】
本実施形態では、上記各盗難危険度レベルに従い、例えば、運用エリア外で移動中であると判断されたときは第1段階の比較的軽いタンパ処理が作動する。その後、盗難危険度レベルが上がるに従って、タンパ処理による他のデータやソフトウエアの消去処理の段階を上げていく。即ち、決済端末装置10が運用エリアを出た段階では、運用者識別情報を除去するなどの比較的軽いタンパ処理(この場合は、運用者の識別情報を決済端末装置10で読み取らせるだけで元に戻すことができる)を行うが、盗難確定モードになったときは、OSの消去処理を行う等の重い処理を行う。これにより、盗難により記憶情報が盗まれたり、或いは内部ソフトウエアが解析されたりコピーされたりするのを確実に防止することができる。
【0030】
次に、上記の管理モードについてより具体的に説明する。
(1)(i)決済端末装置10が予め登録した基本エリア内にあるとき
GPS管理サーバ26の位置監視部261の監視結果により決済端末装置10で上記基本エリア内にあると判断された場合は、正常状態であるので、決済端末装置10の管理モード設定部112は盗難危険度レベルを0に設定する。同時にGPS電波送信周期設定部113はGPS電波受信及び送信周期を1時間に設定し、決済端末装置10内のタイマにより、1時間毎にGPS電波の受信とGPS管理サーバ26への位置情報の送信を行う。
(1)(ii)決済端末装置10が運用エリア内を移動しているとき、或いは移動したとき
上記位置監視部261により、決済端末装置10は基本エリアから離れているものの運用エリア内にあると判断された場合は、管理モード設定部112は正常モードであるがエリア内移動モードに切り換える。この場合は、監視を要するとの観点から盗難危険度レベルを1に上げて、GPS電波受信及び送信周期を10分間隔に短縮して、その行方を見守る。
【0031】
(2)(i)決済端末装置10がGPS電波の届かない場所に移動したとき、(2)(ii)決済端末装置10が運用エリア外に移動したとき、又は(2)(iii)異常操作監視部111が決済端末装置10の予め定めた異常操作が行われたと判断したとき
管理モード設定部112は、GPS管理サーバ26の位置監視部261の監視結果情報に基づき、夫々に対応して管理モードを、設定モードGPS電波無しモード、運用エリア外モード、又は異常操作モードに切り換え、同時に決済センター20に通報して当該決済端末装置10についての決済機能を停止する処置を講じる。また、それと共に、GPS電波送信周期設定部113は、位置情報の送信周期を、(2)(i)決済端末装置10がGPS電波の届かない場所に移動したときは5分に、(2)(ii)決済端末装置10が運用エリア外に移動したときは1分に、かつ(2)(iii)異常操作が行われたときは30秒に短縮して設定する。
【0032】
ここで、決済端末装置10が、GPS電波を受信できないエリアに入ったときの処理手順について図6のフロー図に従って詳しく説明する。
決済端末装置10は、GPS衛星40からの電波を受信できないときは(S101、NO)、決済端末装置10の携帯電話機能を起動して商用無線通信部18から、商用無線通信網を介して決済センター20に対して、GPS衛星40からの電波を受信できない旨の信号、つまりGPS電波中断信号を送信する(S102)。決済センター20は、決済端末装置10から上記信号を受信すると(S103)、決済端末装置10に対して特定操作、即ち、予め定めたキー入力などのGPS電波が受信できないときの特定操作の実行を促す表示を指示する信号を送信する(S104)。決済端末装置10は、決済センター20から上記信号を受信すると(S105)、表示制御部115は、表示部17に予め定めた特定操作の実行を促すためメモリ12bから所定のメッセージを読み出して表示信号部17に表示させる(S106)。
【0033】
決済端末装置10は、表示部に表示されたメッセージに基づき特定操作を実行すると(S107)、決済センター20に対して、上記特定操作実行の応答信号を送信し、決済センター20は、S104の上記特定操作の実行を促す表示を指示する信号を送信してから予め定めた時間内に、前記決済端末装置10から特定操作実行の応答信号を受信したときは(S108、YES)、正常と判断してそのまま決済処理機能を維持する(S109)。他方、決済センター20が決済端末装置10からGPS電波中断信号を受信してから予め定めた時間内に、上記特定操作に基づく応答信号を受信できないときは(S108,NO)、異常と判断して盗難監視モードに入り(S110)、決済機能を停止する(S111)。
決済端末装置10側では、GPS電波中断信号の送信時(S102)にタイマーをスタートさせ、上記予め定めた時間内にGPS電波を受信しないときは(S112、NO)、第1段のタンパ処理を行う(S113)。上記予め定めた時間内にGPS電波を受信したときは(S112、YES)は、上記タンパ処理を行わずこの処理を終了する。この場合、管理モード設定部112は管理モードを正常モードに戻すとともに、その所在の場所に応じて、つまり決済端末装置10が基本エリア或いは運用エリア内にあれば、盗難危険度レベルを0又は1に戻す。同時に受信した位置情報を決済センター20のGPS管理サーバ26に送信し、決済端末装置10からの位置情報を受信したGPS管理サーバ26は、その位置情報を更新する。
【0034】
上記第1段のタンパ処理においては、タンパ処理部114は、メモリタンパ12aから実行すべきタンパ処理(この場合は第1段のタンパ処理内容)を読み出して、実行する。本実施形態では、メモリ12から運用者を特定するための例えば識別情報を消去する。
これにより、第三者が決済端末装置10を使用できなくすることができる。
なお、上記第1段のタンパ処理は簡易な操作で回復可能な処理とし、ここでは、運用者による特定操作、例えば、運用者の識別情報を入力或いは読み取らせてメモリを復活し、決済端末装置10を正常な状態に戻すことができる。
以上は、決済端末装置10が運用エリア内にある場合における処理である。
【0035】
「運用エリア外の移動」について
次に決済端末装置10が運用エリアから出たときの処理の手順について図7のフロー図を参照して説明する。
決済端末装置10のGPS受信部14は、GPS衛星40からの電波を所定の時間間隔で受信して(S201)制御部11に送る。制御部11はGPS電波から緯度経度情報を算出して位置情報を得、この位置情報を決済センター20のGPS管理サーバ26に送信する(S202)、GPS管理サーバ26の位置監視部261は、メモリ262に記憶された当該決済端末装置10の予め設定された運用エリアの経度・緯度情報を読み出して比較することにより、当該決済端末装置が運用エリア内か外かを判断する(S203)。ここで、位置監視部261がエリア外と判断したときは(S203、NO)、決済センター20は決済端末装置10に信号(エリア外信号)を送信し(S204)、決済端末装置10がこの信号を受信すると(S205)、その表示制御部115は、メモリ12bからその旨及び特定操作を促すメッセージ(この督促のメッセージは、例えば音と画像で表示し、決済端末装置10の運用者は理解できるが第三者には理解できないものとする)を読み出して表示部17に表示させる(S206)。所定時間内に特定操作がなされた場合は(S207、YES)、そのまま処理を終了し、特定操作がなされなかった場合は(S207,NO)、当該決済端末装置10の読み取り・書き込み動作を保留(一時停止)させ(S208)、決済端末装置10は、商用無線通信部18を介して決済センター20へ自動的に異常信号を送信する(S209)。
【0036】
決済センター20は、異常信号を受信すると(S210)当該決済端末装置10についての決済機能を停止し(決済中であればその処理を保留し)(S211)(なお所定のメールを固定アドレスに送信し決済処理を保留するようにしてもよい)、商用無線通信網を介して決済端末装置10に決済処理を保留した旨の信号を送る(S212)。決済端末装置10はこの信号を受信すると(S213)タンパ処理を実行し(S214)、その後、決済端末装置10はタンパ動作終了を決済センター20(GPS管理サーバ26)に送信し(S215)、GPS管理サーバ26がこの送信を受領する(S216)。これにより、決済端末装置10が設定された運用エリアを出たときの処理が完了する。
【0037】
次に、「決済端末装置の操作」の監視について説明する。
異常操作監視部111は、決済端末装置10の異常操作を監視して、操作に異常があると判断すると「電源スイッチOFF時」の設定を行う。
なお、「電源OFF時」の設定は、異常操作監視部111が、決済端末装置10の電源スイッチが盗難危険度がある所定のレベルに達したとき(そのレベルは任意に設定可能であり)、或いは盗難監視モードにおいて、エリア外移動のレベル(盗難危険度3のレベル)以上に達した状態で、電源がOFFしたときに設定され、電源設定部116が、外部操作により電源OFFにしてもGPS電波を特定タイミングで受信して決済センター20(GPS管理サーバ26)へ送信することができるように、電源の一部をON状態にしておく設定である。
本決済端末装置10の電源スイッチはソフトウエアで構成されており、電源スイッチをOFFにしても、GPS電波の受信や決済センター20(GPS管理サーバ26)への送信などのための電源はONのままに維持できるように、異常操作監視部111の監視結果に基づき電源設定部116により自動的に或いは決済センター20からの遠隔操作により設定(電源異常OFF時の設定)することができる。
【0038】
本実施形態では、電源OFF時の設定が行われるのは具体的には次の場合である。
(1)運用エリア外への警告表示にもかかわらず、一定時間内に特定操作がない場合(一定時間内に予め定めた特定操作を行えば、運用者が決済端末装置10を運用エリア外に持ち出したことが分かるので、盗難危険度は0になる。)、
(2)後述の決済端末装置10の操作が後述の「異常操作」と判定された後、
(3)運用者からの擬盗難報告があったとき(擬盗難とは、まだ盗難とは確定していないが、経過及び状況から盗難の疑い高いときをいう)。
上記(1)、(2)の場合は、決済端末装置10が自動的に「電源異常OFF時の設定」を行い、(3)の場合は、決済センター20からの遠隔制御で「電源異常OFF時の設定」がなされる。
【0039】
また、本実施形態の決済端末装置10は、決済端末装置10の操作の異常を自ら検出して、上述のタンパ処理を行うと共に、決済センター20に送信する機能を有している。決済センター20では、決済端末装置10から操作異常信号を受信したときは、当該決済端末装置10に対する決済機能を停止する。
ここで、異常操作は、例えば、
(1)連続する無意味なキー操作
具体的には、無意味なキー操作が予め定めた回数、例えば3回続けて行われたとき、
(2)不自然な決済処理(記憶されている通常決済からかけ離れた決済処理:どの程度かけ離れたときとするかは、事前に設定可能である。)
決済端末装置10は、例えば上限金額を設定しておき、この上限金額例えば3万円を超えた金額の入力がなされたとき、これをかけ離れた決済処理として設定することができる。
(3)用途に不相応な高額決済(記憶されている同種の用途に対して、かけ離れた高額処理、この場合もどの程度かけ離れているか、どの程度の高額かは事前に設定可能である)を挙げることができる。
本決済端末装置10の用途を特定のものに限定する。例えば、交通機関の乗車券決済用に限定しておく。その場合、当該決済端末装置が扱う路線における一人当たりの最高運賃を大幅に超える高額(予め設定しておく)決済要求がなされたときに、異常操作と判断する。
【0040】
異常操作が行われたときは、管理モード設定部112は、盗難監視モードを擬盗難モードに設定すると共に、盗難危険度レベルを5に設定する。
この擬盗難モードでは、決済端末装置10は決済センター20に対して、擬盗難モードに設定された旨の信号を送り、決済センター20は当該決済端末装置10についての決済機能を停止すると共に、GPS電波送信周期設定部113はGPS電波の受信及び決済センター20(GPS管理サーバ26)への通報の間隔を15秒間隔に短縮し、頻繁にGPS電波の受信と通報を行う。
【0041】
GPS管理サーバ26の制御部260は、決済端末装置10が擬盗難モードに入った後所定時間経過後に運用者の運用者携帯電話機30からの暗証番号の入力がなかったとき、盗難と判断し、決済センター20の通信部22を介して、決済端末装置10の管理モード設定部112及びタンパ処理部114を遠隔制御して、決済端末装置10の管理モードを盗難確定モードに設定するとともに盗難危険度レベルを6にして盗難確定モードに盗難時のタンパ処理を行う。
この場合のタンパ処理は最も重い処理で、例えば、プログラムの削除或いはOSの削除などを行う。なお、この削除は物理的な破壊を伴うものではなく、例えば乱数を用いたアルゴリズムに従ったデータ変換などを行う。
【0042】
他方、本実施形態では、一旦盗難監視モード等に入ってもそれを解除する手段を備えている。次にその解除手段について説明する。
「GPS電波が届かない場所にあるときの監視状態の解除」
既に述べたように、例えば、決済端末装置10がビル内や地下街などGPS電波が届かない場所にあり、一旦は盗難監視モードになったとしても、特定操作つまり、例えばある特定の番号をキー入力するなどにより、搭載している携帯電話機能により、商用無線基地局経由で決済センター20(GPS管理サーバ26)に送信(位置情報の更新)することで、決済端末装置10が無事である(不正に持ち出されていない)ことを知らせる。それによって、決済センター20側での決済端末装置10の管理モードを「盗難監視モード」から「正常モード」に変更する。同時に、決済端末装置10自身の管理モード設定部112により管理モードを盗難監視モードから正常モードに変更する。
この場合、特殊操作としては例えば4桁の暗証番号の入力を行う。これにより商用無線が同じ基地局であることを条件に、決済センター20(GPS管理サーバ26)における当該決済端末装置10の位置情報を更新する。或いは、運用者携帯電話機30のネットワーク通信により、GPS管理サーバ26のメモリ262に蓄積された当該決済端末装置10の位置情報を更新する。
【0043】
「決済端末装置10が運用エリア外に出たときの盗難監視モードの解除」
決済端末装置10が予め定めた運用エリア外に出たときの盗難監視モードの解除について説明する。
本実施形態では、上記の目的のために、決済センター20のGPS管理サーバ26に登録された運用エリア情報と運用者携帯電話機30のGPS受信部の位置情報と連係させて、決済端末装置10が通常の状態にあるか否かを判断する。
そのため、運用者携帯電話機30を予め決済センター20に登録する。具体的には運用者の識別情報、決済端末装置10の識別情報、その位置情報(基本エリア情報、運用エリア情報)と共に、運用携帯電話機30の識別情報をGPS管理サーバ26に登録しておく。具体的には、GPS管理サーバ26のメモリ262に、運用者と、決済端末装置10と、運用者携帯電話機30とその位置情報との一覧テーブルを作成しておく。
運用者携帯電話機30は、GPS管理サーバ26とのネットワーク通信モードを確立し、いつでも自由に通信できるようにしておく。
【0044】
GPS管理サーバ26は、決済端末装置10の位置情報を取得するときに、同時に運用者携帯電話機30を呼び出し、運用者携帯電話機30から自動で位置情報を吸い上げ、GPS管理サーバ26が運用者携帯電話機30から受信した位置情報と決済端末装置10から送信された位置情報を照合して、両者が一致しているときは、決済センター20から決済端末装置10に信号を送信し、決済端末装置10の管理コード設定部112を遠隔操作してその「管理モード」を「盗難監視モード」から「正常モード」に設定変更すると共に管理コードを2から0に戻す処理を行う。
つまり、決済端末装置10が運用エリア外であっても、運用者携帯電話機30も同時にエリア外であれば、運用者が決済端末装置10を運搬中とみなす処理を行い、その位置を記憶(学習)する。
その記憶したエリアについては盗難監視の除外エリアとして自動的にエリア設定することで、運用者が決済端末装置10を例えば自宅に持ち帰ることができるようにする。
【0045】
また、これとは別に、決済端末装置10に例えば予め定めたキー操作を行うことで、例えば自宅への持ち帰りモードを設定することで、運用エリア外における盗難監視の除外エリアの位置情報を記憶しておき、次回以降の同一エリアでのエリア外運搬は、盗難監視エリアから除外することができる。
具体的には、決済端末装置10の自宅への持ち帰りモードを設定すると、位置監視部261は決済端末装置10が運用エリア外に出たと判断しても、決済センター20(GPS管理サーバ26)には異常信号は発信されず、また、そのときの決済端末装置10の位置情報として、運用者は例えば最寄りの駅などの特定の位置の情報と共に自宅の位置情報をGPS電波から受信してこれをメモリ12bに記憶させる。また、その位置情報を決済センター20に送信し、GPS管理サーバ26のメモリ262にも記憶させておく。
【0046】
決済端末装置10が運用エリア外に出たときは、既に述べたように管理モード設定部112は、設定モードを正常モードから盗難監視モード(ii)に切り換え、盗難危険度レベルも1から3に切り換え監視をつづけるが、位置情報から得た経路情報が、過去の自宅持ち帰りモードを設定したときの上記メモリ12bに記憶させた経路情報と一致したときは、管理モード設定部112は、盗難監視モードを正常モードに切り換え、盗難危険度レベルを3から0に戻す処理を行う。
【0047】
また、GPS管理サーバ26は、運用者携帯電話機30から送信される位置情報に基づき、そのメモリ262を検索して当該決済端末装置10の過去の移動履歴を参酌し、同じ移動記録が存在するときは盗難でないと判断して、決済センター20を介して決済端末装置10に信号を送り、盗難監視モード(2)(ii)「エリア外の移動モード」から「正常モード」に戻す処理を行うことができる。
また、決済センター20のGPS管理サーバ26はメモリ262を検索して、過去に一旦は盗難監視モード(2)(i)、(ii)、(iii)に入った後正常モードに戻った事例があれば、それと同じ事由(異常操作、不自然な決済処理要求、高額決済など)で擬盗難モードに入った場合は、これを盗難と判断せずに正常モードに戻す処理を行うことができる。また、擬盗難モードに入った後正常モードに戻った他の事例があれば、これも同様にこれを盗難と判断せずに正常モードに戻す処理を行うことができる。
【0048】
「誤動作に基づく異常操作モードの解除」
本実施形態では、(1)連続する無意味なキー操作、(2)不自然な決済処理、(3)用途に不相応な高額決済を異常操作として監視するが、これらはいずれも例えば運用者が扱いに慣れていない場合など誤動作が原因で発生する可能性がある。
そこで、このような場合に、つまり、決済端末装置10が上記(1)〜(3)の理由により盗難監視モード(2)(iii)に入った場合は、その旨を表示して、例えば運用者が決済端末装置10と共に持ち歩く運用者携帯電話機30の予め定めた暗証番号(記号を含む;以下同じ)を入力することにより、決済センター20から決済端末装置10に信号を送信し、決済端末装置10の管理レベル設定部112を遠隔操作してその管理モードを「盗難監視モード」から「正常モード」に設定変更すると共に盗難危険度レベルを2から1又は0に戻す処理を行う。
【0049】
決済端末装置10の制御部11は、決済端末装置10が擬盗難モードに入ったときも同様にその旨の表示を行い、運用者に回避操作つまり正常モードへの切り換え操作を行うように促す。この段階では、正常モードへの切換は、例えば運用者携帯電話機30から予め定めた暗証番号を入力することにより行うことができるようにしている。
運用者が回避操作を行った場合は、管理モード設定部112は決済端末装置10を正常モードに戻す。
【0050】
次に、誤った盗難制御を実行してしまった後における処理について
「GPS管理サーバ26による決済機能の停止解除」
本実施形態においては、GPS管理サーバ26は、紐付けされた、つまり、決済端末装置10に対応させて予め決済センター20(GPS管理サーバ26)に登録された運用者携帯電話機30から決済機能の停止解除やリセット処理を行うことができる。
即ち、運用者は運用者携帯電話機30を特定操作することにより、決済センター20(GPS管理サーバ26)へリセット処理を要求することができる。
さらに、運用者携帯電話機30は、決済端末装置10のタンパ処理を復旧させることができる仕組みを持つようにしてもよい。
これにより、タンパ処理により一旦削除したデータを運用者携帯電話機30から特定の信号を決済端末装置10に送信することにより、盗難監視モードや擬盗難モードにおいて、機能を停止させられた決済端末装置10の機能を回復する処理を行えるように予め運用者携帯電話機30及び決済端末装置10にその処理手順を実行するプログラムを搭載しておくことができる。
【0051】
以上、端末装置10の監視システムについて説明したが、上記説明において、決済端末装置10で行われる処理を、決済センター20の制御部21で行い、その都度、決済端末装置10に信号を送信し、決済端末装置10側では、それぞれの信号に従って処理を行う遠隔管理システムにしてもよい。
また、逆に、GPS管理サーバ26の位置監視部261の代わりに或いは加えて、決済端末装置10の制御部11に位置監視部を設けてもよい。この場合は、基本エリア及び運用エリアの登録を決済端末装置10で行い、決済端末装置10は独立して盗難監視の機能を持つことができる。実際に、盗難が発生したとの通報が運用者からGPS管理サーバ26経由で決済センター20にもたらされたときは、決済センター20からの遠隔操作で、既に述べた手順で盗難発生時におけるタンパ処理を行う。
【0052】
また、決済端末装置の盗難監視システムについて説明したが、このシステムの対象となる決済端末装置は、例えば、バス料金の支払い用端末装置、駅売店などの物品販売用端末装置、その他の店舗での決済端末装置に適用できる。
なお、運用者携帯電話機30は、簡易な小電力無線を利用した端末装置であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10・・・決済端末装置、11・・・制御部、12・・・メモリ、14・・・GPS受信部、15・・・キー入力部、16・・・読み取り及び書き込み部、17・・・表示部、18・・・商用無線通信部、19・・・アンテナ、20・・・決済センター、21・・・制御部、22・・・通信部、23・・・メモリ、24・・・表示部、25・・・入力部、26・・・GPS管理サーバ、27・・・アンテナ、30・・・携帯電話機、40・・・GPS衛星、110・・・位置監視部、111・・・異常操作監視部、112・・・管理モード設定部、113・・・GPS電波送信周期設定部、114・・・タンパ処理部、115・・・表示制御部、116・・・電源設定部、211・・・決済部、260・・・制御部、261・・・位置監視部、262・・・メモリ、263・・・表示部、264・・・入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と、端末装置と無線通信網を介して接続された決済センターとからなる端末装置監視システムであって、
端末装置は、GPS電波を受信する手段と、受信したGPS電波に基づき自身の位置情報を取得する手段と、
前記位置情報の送信周期を予め定めた周期に設定する送信周期設定部と、
自身の管理モードを設定する管理モード設定部と、を備え、
決済センターは、端末装置から送信される位置情報に基づき当該端末装置の位置を監視する位置監視部と、端末装置の決済情報に基づき決済を行う決済部を備え、
前記管理モード設定部は、前記位置監視部の当該端末装置についての位置監視情報に基づき予め定めた管理モードを設定し、前記送信周期設定部は前記管理モードに応じた前記位置情報の送信周期を設定することを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載された端末装置監視システムにおいて、
前記決済センターは、前記管理モードが所定の管理モードであるとき、決済部による当該端末装置についての決済機能を停止することを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された端末装置監視システムにおいて、
前記端末装置はタンパ処理を行うタンパ処理部を備え、
前記タンパ処理部は、前記管理モードに応じて定められたタンパ処理を行うことを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、
前記位置監視部は、取得した端末装置の位置情報に基づき当該端末装置が予め定めた運用エリア内か外かを判断し、位置監視部が運用エリア外と判断したとき、前記決済部における当該端末装置についての決済機能を停止し、かつ、前記運用エリア外信号を端末装置に送信し、
端末装置は受信した運用エリア外信号に基づき、前記タンパ処理部によりタンパ処理を行うと共に、送信周期設定部により前記位置情報の送信周期を予め定めた正常時におけるよりも短い周期に設定することを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載された端末装置監視システムにおいて、
前記位置監視部が当該端末装置を運用エリア外と判断したとき、決済センターは、端末装置に対して予め定めた特定操作を要求する信号を送信し、当該端末装置から所定時間内に特定操作信号を受信したとき、前記決済部における当該端末装置の決済機能を停止しないことを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項6】
請求項4に記載された端末装置監視システムにおいて、
前記端末装置に対応付けて決済センターに登録されたGPS電波受信機能付き携帯電話機を備え、
前記携帯電話機は受信したGPS電波に基づき自身の位置情報を取得する手段を備え、
前記位置監視部が当該端末装置を運用エリア外と判断したとき、前記携帯電話機から送信される前記位置情報と前記端末装置の位置情報が一致したときは、前記決済部における当該端末装置についての決済機能を停止しないことを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、
端末装置はGPS電波を受信できないときGPS電波中断信号を決済センターに発信し、決済センターは前記端末装置に対して特定操作を促す信号を送信し、所定時間内に特定操作に基づく信号を受信したときは、当該端末装置についての決済機能を維持し、前記信号を受信しないときは、前記GPS電波中断信号を受信したとき当該端末装置についての決済機能を停止することを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、
端末装置は、予め定めた入力以外の異常入力操作を監視する入力操作監視部を備え、入力操作監視部が異常入力操作を検知したとき、異常入力操作信号を決済センターに送信するものであって、
前記管理モード設定部は、異常入力操作が検知されたとき異常入力操作に応じた管理モードを設定し、前記送信周期設定部は前記管理モードに応じた前記位置情報の送信周期を設定し、
前記タンパ処理部は、入力操作監視部が異常入力操作を検知したとき、タンパ処理を行い、送信周期設定部は、前記位置情報の送信周期を予め定めた正常時におけるよりも短い周期に設定し、
決済センターは、端末装置から異常入力操作信号を受信したとき当該端末装置についての決済機能を停止することを特徴とする端末装置監視システム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載された端末装置監視システムにおいて、
端末装置は電源設定部を備え、前記電源設定部は、端末装置の盗難危険度が予め設定されたレベルに達したとき又は決済センターからの設定信号に基づき、電源スイッチのOFF時にGPS電波の受信及び決済センターとの無線通信を可能にするにために電源を部分的にON状態に維持する設定を行うことを特徴とする端末装置監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−212906(P2010−212906A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55619(P2009−55619)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【Fターム(参考)】