説明

筋活動監視システム

【課題】筋活動監視システムにおいて、筋電位をパターン化する。
【解決手段】生体用電極2および生体用電極2から筋電位を計測する筋電位計測装置1を備える。筋電位計測装置1は、生体用電極2からの筋電位を検出する電位検出回路4と、筋電位を増幅、整流した信号を出力する増幅・整流回路5と、通常時の最大噛みしめ時の筋電位による信号を基準値信号として生成する基準値生成回路6と、夜間睡眠中の筋電位による信号を測定値信号とし、基準値信号と比較判別する比較判別手段7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋活動を監視するシステム(筋活動監視システム)に関し、特に、夜間睡眠中、あるいは緊張行動中(例えば車両運転中等)の咀嚼筋活動を監視する咀嚼筋活動監視システムに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ぎしりや噛みしめによる非生理的な咬合力は顎関節症、肩こり、偏頭痛等の要因となり得る。また、夜間睡眠中の歯ぎしりや噛みしめ、緊張行動中の噛みしめ等は精神的ストレスの指標にもなり得る。非生理的な咬合力を、咀嚼筋電位を指標に監視し、治療、予防、改善することを目的とした咀嚼筋活動監視システムの開発が望まれている。ここで、咀嚼筋とは咀嚼を覆う筋肉であって側頭筋、咬筋などである。
【0003】
夜間睡眠中の歯ぎしり、噛みしめ、あるいは、緊張行動中の噛みしめは、咀嚼筋電位(EMG)を測定することにより検出できることは周知されている。例えば、各種筋電位を測定する筋電計と可搬型記録計を使用して家庭で咀嚼筋電位を測定することにより歯ぎしり、噛みしめを調査する方法が周知されている。
【0004】
特表2003−524459号公報(特許文献1)では、リアルタイムでデータ収集及び分析可能な夜間における骨格筋活動障害選別システムを開示している。ここでは、筋肉群に定置できる小型プラスチックユニットに組み込まれたもので、使い捨て式のものが開示されている。具体的には、筋データはマイクロプロセッサに入力され、ソフトウェアモジュールにより筋活動症状が異常な筋活動の検出、医師に相談すべきか等を電気化学的表示ユニットで表示するものである。
【0005】
特表2006−521844号公報(特許文献2)では、バイオフィードバックを採用して望ましくない筋活動や、有害あるいは望ましくない運動を検出し、防止する手段を備えた筋活動を監視する方法および装置を開示している。具体的には、EMG信号を検出、信号処理して様々な信号、例えば振動、音声を用いて、個人個人に適合したフィードバック信号を発動するものである。
【0006】
【特許文献1】特表2003−524459号公報
【特許文献2】特表2006−521844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、筋電位を指標として筋活動の監視を行う筋活動監視システムの検討を行っている。例えば、歯ぎしり、噛みしめ等の非生理的な咬合力は、側頭筋、咬筋などの咀嚼筋の活動が関係することが知られている。このため、咀嚼筋の電位を基準値に対してパターン化することができれば、歯ぎしり等の治療、予防、あるいは改善に役立つことが考えられる。
【0008】
筋電位を測定する検査装置として筋電計は、反応の大きさ等を読み取ることができる。すなわち、筋電計を用いて筋に活動が起こったか否かの有無を確認することができる。よって、この筋電計を用いて咀嚼筋の活動の有無を確認することはできる。しかしながら、例えば、夜間睡眠中の歯ぎしり、噛みしめが起きたときに、咀嚼筋が活動していることは確認できるが、筋電位をパターン化するなど、治療するための基準、判断材料がない。
【0009】
なお、前記特許文献1の方法では、ある筋電位を基準値としてパターン化したものではなく、また、使い捨て式であり、複数日使用の際は、日毎に使い捨てとなり高価となってしまう。また、前記特許文献2の方法は、装置構成が複雑であり、例えば歯科医師が患者に装置の使用を処方したとしても、患者にとって取り扱いが煩雑であり、望ましいデータが取得できるまでには熟練を要してしまう。
【0010】
本発明の目的は、筋活動監視システムにおいて、筋電位をパターン化することのできる技術を提供することにある。また、筋電位を力学単位に変換する技術を提供するものである。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明は、生体用電極から筋電位を計測する筋電位計測装置を備えた筋活動監視システムであって、前記筋電位計測装置は、前記生体用電極からの筋電位を検出する筋電位検出機能と、前記筋電位を増幅、整流した信号を出力する増幅・整流機能と、第1筋電位による信号を基準値信号として生成する基準値信号生成機能と、第2筋電位による信号を測定値信号とし、前記基準値信号と比較判別する比較判別機能と、を有するものである。
【0014】
ここで、前記筋電位は咀嚼筋の電位であって、通常時の最大噛みしめ筋電位を前記第1筋電位とし、夜間睡眠中あるいは緊張行動中の噛みしめ筋電位を前記第2筋電位とし、前記基準値信号と前記測定値信号との一定割合以上の筋電位波形を記憶・保存する機能を前記筋電位計測装置が有し、前記筋電位計測装置が、被験者の頭部で固定され、あるいは被験者の胸ポケットに収納される。これにより、歯ぎしりや噛みしめによる非生理的な咬合力を頭部に装着あるいは胸ポケットに収納可能な咀嚼筋電位計測装置により測定できるため、睡眠あるいは作業時の行動を妨げない。
【0015】
また、噛みしめ筋電位の最大値、噛みしめ回数、噛みしめ筋活動パターン、噛みしめ持続時間の推移を図表表示する解析機能を有する。これにより、咀嚼筋電位データから噛みしめ筋電位の最大値、噛みしめ回数、噛みしめ筋活動パターン、噛みしめ持続時間の推移を図表表示できるため、歯科医師、患者、作業者等が咀嚼筋活動の状態を容易に理解でき、歯ぎしり、噛みしめの予防、改善が可能となる。
【0016】
また、本発明は、生体用電極から筋電位を計測する筋電位計測装置を備えた筋活動監視システムであって、前記筋電位計測装置は、前記生体用電極からの筋電位を検出する筋電位検出機能と、前記筋電位を増幅、整流した信号を出力する増幅・整流機能と、咬合力センサを駆動し、咬合力を検出する駆動・検出機能と、筋電位を咬合力単位信号に変換する変換機能と、咬合力による信号を基準値信号として生成する基準値信号生成機能と、筋電位による信号を測定値信号とし、前記基準値信号と比較判別する比較判別機能とを有し、力学単位で筋活動を監視できる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、筋活動監視システムにおいて、筋電位をパターン化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態では、筋活動監視システムとして、咀嚼筋活動の監視に適用して説明する。図1は、本実施の形態における咀嚼筋活動監視システムの構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態では、咀嚼筋として側頭筋(図中、生体用電極2の位置)の活動を監視する場合について説明するが、咬筋(図中、領域Aの位置)の活動を監視しても良い。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態における咀嚼筋活動監視システムは、生体用電極2、筋電位を計測する筋電位計測装置1、およびパーソナルコンピュータ12を備えている。なお、パーソナルコンピュータ12内には解析ソフトウエアなどが搭載されている。
【0021】
筋電位計測装置1は、電位検出回路4、増幅・整流回路5、基準値生成回路6、比較判別手段7、データ保存メモリ8、データ読み出し手段9、外部インタフェース10、および時計回路11を有している。筋電位計測装置1は、可搬型であり、例えば被験者の頭部で固定され、あるいは被験者の胸ポケットに収納されるため、小型化・軽量化されたブロック状のものである(図2参照)。このため、筋電位計測装置1は、電池(バッテリ)を用いている。また、図示しないが、電源スイッチ、計測開始スイッチも筋電位計測装置1は有している。
【0022】
本実施の形態では、生体用電極2は、関電極、不関電極、基準電位(アース)用電極の3つで構成されている。これに限らず、関電極、基準電位用電極の2つで構成しても良い。
【0023】
電位検出回路4は、生体用電極2からの筋電位を検出する筋電位検出機能を有している。生体用電極2と電位検出回路4とは電極リード線3を介して電気的に接続されている。また、増幅・整流回路5は、電位検出回路4で検出した筋電位を増幅、整流した信号を出力する増幅・整流機能を有している。
【0024】
基準値生成回路6は、電位検出回路4および増幅・整流回路5を介して所定の筋活動に伴う筋電位による信号を基準値信号として生成する基準値信号生成機能を有している。本実施の形態では、夜間睡眠中あるいは緊張行動中の噛みしめ筋電位を測定する前に、通常時(リラックス時)の最大噛みしめ筋電位による信号を基準値信号として生成する(基準値信号入力手段という)。
【0025】
比較判別手段7(例えばマイコン)は、電位検出回路4および増幅・整流回路5を介して夜間睡眠中あるいは緊張行動中の噛みしめ筋電位による信号を測定値信号とし、基準値信号と比較判別する比較判別機能を有している。これにより、基準値信号を用いて、夜間睡眠中あるいは緊張行動中の噛みしめ筋電位を測定することによって、一定割合以上の筋電位をパターン化することができる。
【0026】
データ保存メモリ8は、例えば、基準値信号と測定値信号との一定割合以上の必要な筋電位波形を記憶・保存する機能を有している。このように、測定値信号に対して基準値信号を測定しているので、例えば歯ぎしりなどの治療の判断に必要となるデータのみを保存することができる。
【0027】
データ読み出し手段9は、データ保存メモリ8に保存されたデータを読み出す機能を有している。また、外部インタフェース10は、筋電位計測装置1と外部のパーソナルコンピュータ12とでデータの送受信を行う機能を有している。また、時計回路11は、年月日、時刻を管理する機能を有している。
【0028】
本実施の形態における咀嚼筋活動監視システムの動作を概略すると、まず、被験者が、側頭筋あるいは咬筋部位に生体用電極2を貼付する。筋電位計測装置1に内設の電位検出回路4により筋電位が検出される。被験者の最大噛みしめ動作から得た筋電位を基準値生成回路6にて基準値を生成する。基準値と被測定筋電位は比較判別手段7に供給される。基準値と被測定値との割合から噛みしめの強度を評価する。また、一定割合以上の筋電位波形を表示するためのデータ保存メモリ8に保存する。データ保存メモリ8に保存されたデータはデータ読み出し手段9を操作することにより外部インタフェース10を介してパーソナルコンピュータ12等に供給され、データ解析が行われる。
【0029】
図2(a)〜(c)は可搬型の筋電位計測装置1を被験者の頭部(額部)に固定するために用いる頭部固定装置50の説明図である。本実施の形態では、頭部固定装置50はヘッドバンドのような形状となっている。
【0030】
頭部固定装置50は、額部の位置で頭部を締めるベルト部51と、筋電位計測装置1を収容する袋部52と、生体用電極2を覆う電極カバー部54と、電極カバー部54を固定するため顎部で締めつけるベルト部55とを有している。
【0031】
ベルト部51は例えば面ファスナーであり、調整、着脱が容易である。ベルト部55も例えば面ファスナーやゴム紐を適用することができる。また、図2(c)に示すように、袋部52の開閉は面ファスナーのオス52aとメス52bの貼り合わせで行うことができる。図示しないが、生体用電極2に接続するコネクタを有する電極ホルダ部53のコネクタには電極リード線3の一端が接続されており、該電極リード線3の他端は図1で示した筋電位計測装置1の電位検出回路4に接続されている。
【0032】
電極カバー部54は、通気性を確保するため、例えばメッシュ地でダブルラッセル構造を用いている。ヘッドバンド装着後、破線で示す位置から電極カバー部54を折り返すことによって用いる。なお、咬筋測定を行う場合は、領域A(図2(b))に生体用電極2を貼り付けることになるので、その場合、領域Aを覆うように電極カバー部54の形状を変形すれば良い。
【0033】
ここで、頭部固定装置50を用いて、筋電位計測装置1を被験者の頭部(額部)に固定する手順について説明する。まず、鏡を見ながら生体用電極2の粘着部側を額部に貼り付ける。側頭筋測定を行う場合、例えば、前額部(おでこ)に1つ、側頭部(こめかみ近傍)に2つ生体用電極2を貼り付ける。なお、咬筋測定を行う場合は、例えば、前額部に1つ、咬筋部に2つ生体用電極2を貼り付ける。
【0034】
次いで、ベルト部51によって頭に頭部固定装置50を装着する。次いで、生体用電極2に電極ホルダ部53を接続する。次いで、筋電位計測装置1の電源をオン状態とする。次いで、前述したように電極カバー部54を折り返してベルト部55で、顎部を締め付ける。ここで、電極ホルダ53は電極カバー部54によって覆われるので、図2では電極ホルダ53を破線で示している。
【0035】
次いで、ケース状の筋電位計測装置1を袋部52に装着する。また、筋電位計測装置1は、袋部52ではなく、例えば被験者の胸ポケットに装着することもできる。このように、歯ぎしりや噛みしめによる非生理的な咬合力を頭部に装着あるいは胸ポケットに収納可能な筋電位計測装置1により測定できるため、睡眠あるいは作業時の行動を妨げない。
【0036】
図3は咀嚼筋活動監視システムの動作フロー図である。図中、実線で囲まれた動作は筋電位計測装置1が行い、破線で囲まれた動作は人間が行うものである。まず、前述したように、生体用電極2を額部に貼り付けた後(S10)、筋電位計測装置1の電源スイッチをオンする(S20)。次いで、筋電位計測装置1の計測開始スイッチをオンする(S30)と、ブザーが鳴動する(S40)。
【0037】
次いで、ブザーが鳴動中に最大噛みしめ動作を行い(S50)、筋電位計測を開始し(S60)、その時の筋電位を電位検出回路4、増幅・整流回路5を介して筋電位信号として、基準値生成回路6で最大噛みしめ動作による基準値信号を生成する(S70)。
【0038】
次いで、例えば夜間睡眠中の筋電位計測を開始し(S60)、その時の筋電位を電位検出回路4、増幅・整流回路5を介して筋電位信号として、測定筋電位信号を生成する。次いで、比較判別手段7で測定筋電位信号と基準値信号を比較判別する(S80)。比較判別手段7では、例えばピーク値を比較して比率を算出し、また、比率データを生成する。
【0039】
次いで、生成した比率データを時計回路11の時間データと共に、データ保存メモリ8で保存する(S90)。例えば夜間睡眠中などの筋電位計測が終了した後、保存されたデータをデータ読み出し手段9で読み出し(S100)、外部インタフェース10を介してパーソナルコンピュータ12等に出力し、解析する(S110)。
【0040】
データ解析ソフトウエアを使用して、パーソナルコンピュータ12等のコンピュータにより、被測定期間の最大値、噛みしめ回数、噛みしめ総時間の推移をグラフ化する。また、例えば夜間睡眠中の筋電位パターン、噛みしめ回数、噛みしめ総時間等を画面に表示する。図4(a)〜(c)は解析ソフトウエアを用いてパーソナルコンピュータ12の画面上の出力を示す図である。
【0041】
図4(a)は筋電位計測装置1のデータ保存メモリ8に保存されたデータに基づいて、連続日データのグラフ表示の一例を示すコンピュータ解析画面である。パーソナルコンピュータ12においてデータ解析が行われる。すなわち、連続日データ表示図において、日毎の噛みしめ回数、噛みしめ時間、筋電位最大値が棒グラフ表示される。
【0042】
図4(b)は図4(a)に示す日データの日付クリックにより選択した一日の歯ぎしり、噛みしめの咀嚼筋電位の推移の一例を示すコンピュータ解析画面である。連続日データ表示図に提示された日付をクリックすると、日にちデータ表示図が表示され、噛みしめ筋電位波形(筋電位パターン)の時系列が表示される。また、その日の筋電位最大値(例えば2300mV)、噛みしめ回数(例えば230回)、総時間(例えば600s)が表示される。
【0043】
図4(c)は図4(b)の選択日上で指定した咀嚼筋電位の拡大波形の一例を示すコンピュータ解析画面である。日にちデータ表示図に表示された噛みしめパターンの始点、終点をクリックすると筋電位波形が表示され、噛みしめ筋電位の拡大波形とともに拡大範囲の時間(例えば20s)が表示される。
【0044】
このように、本実施の形態における筋活動監視システムは、咀嚼筋の活動を監視するものであって、リアルタイムで咀嚼筋電位データを収集及び保存する筋電位計測装置と、データ収集後に容易に理解できる形式でデータ解析可能な手段(パーソナルコンピュータ等)とを備えている。
【0045】
本実施の形態における筋電位計測装置は、最大噛みしめ筋電位を基準値として検知し、該基準値と被測定筋電位の比較判別手段を備えている。前記基準値と被測定値との割合と一定割合以上の筋電位パターンを記憶・保存する筋電位計測装置は例えば小型乾電池により電源を供給する。また、筋電位計測装置は、被験者が咬筋あるいは側頭筋など咀嚼に由来する筋肉(咀嚼筋)部に生体用電極を貼付して筋電位を双極誘導するものである。
【0046】
誘導した筋電位を増幅し、整流筋電位に変換する。個人差、電極の貼付方法の相異による信号レベルの変動を除去し、定量的な評価をするために、最大噛みしめ動作から得た筋電位を基準値として検知し、基準値と被測定筋電位を比較判別し、基準値と被測定値との割合から噛みしめの強度を評価する。
【0047】
また、一定割合以上の筋電位パターンを表示可能なデータをメモリに保存する。保存データはパーソナルコンピュータによりデータ処理され、被測定期間の最大値、噛みしめ回数、噛みしめ総時間等の推移をグラフ化する。また、一日の噛みしめ状況を把握できる筋電位パターン、噛みしめ回数、噛みしめ総時間等を画面に表示する。
【0048】
このように、本実施の形態の筋活動監視システムによれば、筋電位をパターン化することができる。また、咀嚼筋電位データから噛みしめ筋電位の最大値、噛みしめ回数、噛みしめ筋活動パターン、噛みしめ持続時間の推移を図表表示することができる。さらに、パターン化された筋電位により、歯科医師、患者、作業者等が咀嚼筋活動の状態を容易に理解でき、歯ぎしり、噛みしめの予防、改善に役立つものとなる。
【0049】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、咀嚼筋活動を監視するにあたり、咀嚼筋の筋電位のみを検出して筋電位をパターン化する場合について説明した。本実施の形態では、筋電位の他に咬合力を検出して筋電位をパターン化する場合について説明する。なお、前記実施の形態1と同様の説明は省略する場合がある。
【0050】
図5は本実施の形態における咀嚼筋活動監視システムの構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施の形態における咀嚼筋活動監視システムは、生体用電極2、咬合力センサ22、筋電位を計測する筋電位計測装置21、およびパーソナルコンピュータ12を備えている。
【0051】
筋電位計測装置21は、前記実施の形態1の筋電位計測装置1と同様に、電位検出回路4、増幅・整流回路5、基準値生成回路6、比較判別手段7、データ保存メモリ8、データ読み出し手段9、外部インタフェース10、および時計回路11を有している。さらに、筋電位計測装置21は、咬合力センサ22を駆動し、センサリード23を介して咬合力を検出する駆動・検出機能を有する駆動・検出回路24、および、筋電位による信号を咬合力に変換する変換機能を有する変換手段25を有している。筋電位計測装置21は、可搬型であり、例えば被験者の頭部で固定され、あるいは被験者の胸ポケットに収納されるため、小型化・軽量化されたものである。
【0052】
本実施の形態における咀嚼筋活動監視システムの動作を概略すると、まず、被験者が、側頭筋あるいは咬筋部位に生体用電極2を貼付すると共に、口に咬合力センサ23を咥え、最大噛みしめ動作を行う。駆動・検出回路24により咬合力が検出され、変換手段25により咬合力を基準値信号に変換する。被験者の咬合力から得た信号を基準値生成回路6にて基準値として生成する。基準値を生成した後、咬合力センサ23を筋電位計測装置21から取り外す。また、被測定筋電位を電位検出回路4により検出され、増幅・整流回路5を介して変換手段25により筋電位は咬合力単位の内部用の測定値信号に変換する。
【0053】
基準値信号と測定値信号は比較判別手段7に供給される。基準値と被測定値との割合から噛みしめの強度を評価する。また、一定割合以上の筋電位波形を表示するためのデータ保存メモリ8に保存する。データ保存メモリ8に保存されたデータはデータ読み出し手段9を操作することにより外部インタフェース10を介してパーソナルコンピュータ12等に供給され、データ解析が行われる。
【0054】
本実施の形態の筋活動監視システムによれば、咀嚼筋の筋電位を咬合力に変換して検出することができるので、筋電位を咬合力単位でパターン化することができる。パターン化された筋電位により、歯科医師、患者、作業者等が咀嚼筋活動の状態を力学単位で容易に理解でき、歯ぎしり、噛みしめの予防、改善に役立つものとなる。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0056】
例えば、前記実施の形態では、咀嚼筋に適用した場合について説明したが、本発明は他の筋活動を監視する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態における咀嚼筋活動監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】可搬型の筋電位計測装置を被験者の頭部に固定するために用いる頭部固定装置の説明図である。
【図3】咀嚼筋活動監視システムの動作フロー図である。
【図4】解析ソフトウエアを用いてパーソナルコンピュータの画面上の出力を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態における咀嚼筋活動監視システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1 筋電位計測装置
2 生体用電極
3 電極リード線
4 電位検出回路
5 増幅・整流回路
6 基準値生成回路
7 比較判別手段
8 データ保存メモリ
9 データ読み出し手段
10 外部インタフェース
11 時計回路
12 パーソナルコンピュータ
21 筋電位計測装置
22 咬合力センサ
23 センサリード
24 駆動・検出回路
25 変換手段
50 頭部固定装置
51 ベルト部
52 袋部
53 電極ホルダ部
54 電極カバー部
55 ベルト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体用電極から筋電位を計測する筋電位計測装置を備えた筋活動監視システムであって、
前記筋電位計測装置は、
前記生体用電極からの筋電位を検出する筋電位検出機能と、
前記筋電位を増幅、整流した信号を出力する増幅・整流機能と、
第1筋電位による信号を基準値信号として生成する基準値信号生成機能と、
第2筋電位による信号を測定値信号とし、前記基準値信号と比較判別する比較判別機能と、
を有することを特徴とする筋活動監視システム。
【請求項2】
前記筋電位は咀嚼筋の電位であって、
通常時の最大噛みしめ筋電位を前記第1筋電位とし、
夜間睡眠中あるいは緊張行動中の噛みしめ筋電位を前記第2筋電位とし、
前記基準値信号と前記測定値信号との一定割合以上の筋電位波形を記憶・保存する機能を前記筋電位計測装置が有し、
前記筋電位計測装置が、被験者の頭部で固定され、あるいは被験者の胸ポケットに収納されることを特徴とする請求項1記載の筋活動監視システム。
【請求項3】
噛みしめ筋電位の最大値、噛みしめ回数、噛みしめ筋活動パターン、噛みしめ持続時間の推移を図表表示する解析機能を有することを特徴とする請求項2記載の筋活動監視システム。
【請求項4】
生体用電極から筋電位を計測する筋電位計測装置を備えた筋活動監視システムであって、
前記筋電位計測装置は、
前記生体用電極からの筋電位を検出する筋電位検出機能と、
前記筋電位を増幅、整流した信号を出力する増幅・整流機能と、
咬合力センサを駆動し、咬合力を検出する駆動・検出機能と、
筋電位を咬合力単位信号に変換する変換機能と、
咬合力による信号を基準値信号として生成する基準値信号生成機能と、
筋電位による信号を測定値信号とし、前記基準値信号と比較判別する比較判別機能と、
を有し、力学単位で筋活動を監視できることを特徴とする筋活動監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137015(P2010−137015A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318838(P2008−318838)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(591137949)株式会社西澤電機計器製作所 (7)
【出願人】(592037066)
【Fターム(参考)】