説明

筐体、両面接着テープ、及び電子機器

【課題】筐体の変形等によって結合面が目開いたとしても、筐体内部への浸水を防ぐことの可能な技術を提供する。
【解決手段】筐体は、互いに結合して収容空間を形成する第1ケース及び第2ケースと、不透水性及び伸縮性を有する基材の両面に接着剤層を有し、一方の面上の接着剤層が前記第1ケースに、他方の面上の接着剤層が前記第2ケースにそれぞれ接着する両面接着部材とを備える。そして、両面接着部材の一方の面側における第1ケースとの間の接着力は第1ケースの外側が内側より大きく、両面接着部材の他方の面における第2ケースとの間の接着力は、第2ケースの内側が外側より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体、両面接着テープ、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電子機器の筐体には、小型化及び薄型化の要求に加えて、高い防水性能が益々求められている。電子機器の筐体に防水構造を付与する方法として、以下の方法が挙げられる。
【0003】
(1)相互に対向するように組み付けられて筐体を形成する2つのケースの間にゴム製パッキンを挟み込み、ゴム製パッキンを押圧して圧縮することによりシールする構造。
(2)筐体を形成する2つのケース間に接着剤を塗布、又は両面接着(粘着)テープを貼り付けてシールする構造。
【0004】
(1)に関しては、筐体にはゴム製パッキンを圧縮するための高い剛性が必要であり、機器ケースの小型化及び薄型化の要求に応えることが難しい。また、筐体の変形等によってガスケットの圧縮量の減少が起こると、筐体内部への浸水が生じる場合がある。(2)に関しても、筐体の変形等によって2つのケースの接着面同士が目開くことで、筐体内部への浸水が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−537240号公報
【特許文献2】特開平8−151558号公報
【特許文献3】実開平6−34762号公報
【特許文献4】実開平6−69246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、筐体の変形等によって結合面が目開いたとしても筐体内部への浸水を防ぐことの可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件の一観点による筐体は、互いに結合して収容空間を形成する第1ケース及び第2ケースと、不透水性及び伸縮性を有する基材の両面に接着剤層を有し、一方の面上の接着剤層が前記第1ケースに、他方の面上の接着剤層が前記第2ケースにそれぞれ接着する両面接着部材と、を備え、前記一方の面側における前記両面接着部材と前記第1ケースとの間の接着力は、該第1ケースの外側が内側より大きく、前記他方の面における前記両面接着部材と前記第2ケースとの間の接着力は、該第2ケースの内側が外側より大きい。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、筐体の変形等によって結合面が目開いたとしても、筐体内部への浸水を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子機器の外観斜視図である。
【図2】表示ユニット部の外観斜視図である。
【図3】表示ユニット部の第1の分解斜視図である。
【図4】表示ユニット部の第2の分解斜視図である。
【図5】フロントケースをリア側から眺めた平面図である。
【図6】リアケースをフロント側から眺めた平面図である。
【図7】実施形態1に係る両面接着テープの概略構成を示す図である。
【図8】実施形態1に係る筐体の部分断面図である。
【図9A】実施形態1に係る筐体の防水構造を説明する第1の説明図である。
【図9B】実施形態1に係る筐体の防水構造を説明する第2の説明図である。
【図10】実施形態1の第1変形例に係る両面接着テープの概略構成図である。
【図11】実施形態1の第1変形例に係る筐体の防水構造を説明する説明図である。
【図12】実施形態2に係るリアケースをフロント側から眺めた外観斜視図である。
【図13】実施形態2に係るフロントケースをリア側から眺めた外観斜視図である。
【図14】実施形態2に係る両面接着テープの概略構成を示す図である。
【図15A】実施形態2に係る筐体の防水構造を説明する第1の説明図である。
【図15B】実施形態2に係る筐体の防水構造を説明する第2の説明図である。
【図16】実施形態2に係る筐体の防水構造を説明する第3の説明図である。
【図17】表示ユニット部の分解側面図である。
【図18】ループ長手方向において接着力相違構造を形成する区間を例示する図である。
【図19】初期状態における突起片と係止部との相対位置関係を示す図である。
【図20】従来の両面接着テープを使用してフロントケース及びリアケースの各接着面を接着した防水構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、発明を実施するための実施形態に係る筐体について例示的に詳しく説明する。
【0011】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る電子機器の一例である防水型携帯電話(以下、単に「携帯電話」という。)1の外観斜視図である。携帯電話1は、テンキーや操作キーが設けられた操作部11と、操作部11にヒンジ12を介して回動可能に取り付けられた表示ユニット部13とを有する。表示ユニット部13の筐体の内部には、画像表示用の液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)や電子部品が収容されている。操作部11や表示ユニット部13の筐体は、防水構造を有している。以下、表示ユニット部13の筐体を例にとって説明する。尚、ここでは、携帯電話1を折りたたみ式としているが、スライド式やストレート式であっても良い。
【0012】
図2は、表示ユニット部13の外観斜視図である。図2に示すように、表示ユニット部13の筐体130は、LCDパネル20が取り付けられるフロントケース30と、リアケース40とが結合(連結)することによって形成されている。実施形態1では、フロントケース30を第1ケースの一例とし、リアケース40を第2ケースの一例として挙げて説明する。
【0013】
図3は、表示ユニット部13の第1の分解斜視図である。図4は、表示ユニット部13の第2の分解斜視図である。図3は、表示ユニット部13のフロント側から表示ユニット部13の各構成部品を眺めた分解斜視図である。図4は、表示ユニット部13のリア側から表示ユニット部13の各構成部品を眺めた分解斜視図である。なお、図2乃至4において、ヒンジ12の図示を割愛している。本明細書において、表示ユニット部13におけるLCDパネル20が配置される方を「フロント側」として定義し、LCDパネル20が配置されていない方を「リア側」として定義する。
【0014】
図3及び図4を参照すると、表示ユニット部13は、LCDパネル20、フロントケース30、リアケース40、両面接着テープ50等を備える。また、その他、表示ユニット部13の筐体130の内部には、無線アンテナ基板やLCDユニット(図示省略)等が収容されている。フロントケース30及びリアケース40は、矩形の平面形状を有する筐体であり、且つ、例えば、角の部分に丸みが形成されている(R形状とされている)。また、フロントケース30及びリアケース40は、ループ形状(環状)の両面接着テープ50によって相互の接着面が貼り合されるようになっている。両面接着テープ50の詳細構造については後述する。また、両面接着テープ50は両面接着部材の一例として挙げられる。
【0015】
フロントケース30は、枠部31、及びLCDパネル20を支持するLCDパネル支持部32等を有する。図3に示すように、枠部31の内側には、開口部33が形成されており、且つ、枠部31における短辺部分の内壁面に沿って一組のLCDパネル支持部32が形成されている。LCDパネル支持部32のフロント側の表面には、LCDパネル20が、例えば、両面接着テープや接着剤等を用いて貼り付けられる。フロントケース30の開口部33は、表示ユニット部13における筐体130の内部に収容されるLCDユニット(図示省略)の表示画面と対応する位置(相対する位置)に設けられている。LCDパネル20は、透明であり、開口部33を閉塞するための保護スクリーンとして機能する。使用者(ユーザー)は、LCDパネル20を透してLCDユニットの表示画面を視認することができる。
【0016】
フロントケース30における各LCDパネル支持部32の端部寄りの位置には、固定ネジ60のネジ部(軸部)を挿通するための挿通孔34が設けられている。この固定ネジ60は、リアケース40側に設けられるネジ溝孔(図3に示す符号43)のネジ溝に螺合されるようになっている。図中の符号35は、リアケース40側に設けられる突起片(図3に示す符号44)を係止する係止部である。
【0017】
図5は、フロントケース30をリア側から眺めた平面図である。図5に示すように、LCDパネル支持部32を貫通する挿通孔34は、フロントケース30の四隅に配置されている。また、係止部35は、枠部31の各短辺中央部に1箇所、各長辺に均等間隔で3箇所、合わせて8箇所に配置されている。但し、挿通孔34及び係止部35の配置パターン(位置や個数)は、適宜の変更をなし得る。
【0018】
図3及び図4を参照して、リアケース40について説明する。リアケース40は、表示ユニット部13の背面としてのリア側底蓋部42、及び、リア側底蓋部42の外周部から立設する側壁部41等を有する。側壁部41における4箇所の入隅部分には、内壁面にネジ溝が形成されたネジ溝孔43が設けられている。両面接着テープ50によって、フロントケース30とリアケース40とが貼り合わせる際に、フロントケース30側の挿通孔34とリアケース40側のネジ溝孔43とが互いに相対するように、挿通孔34とネジ溝孔43の位置が対応付けられている。両面接着テープ50による接着力に加えて、挿通孔34を挿通させた固定ネジ60をネジ溝孔43のネジ溝に螺合することで、フロントケース30とリアケース40とが締結され、両ケースの固定度を高めることができる。
【0019】
また、図3に示すように、リアケース40における側壁部41の内壁面には、複数の突起片44が設けられている。リアケース40における突起片44の平面的な配置位置を、図6に示す。図6は、リアケース40をフロント側から眺めた平面図である。図6に示すように、ネジ溝孔43は、リアケース40の四隅に配置されている。また、突起片44は、側壁部41の各短辺中央部に1箇所、各長辺に均等間隔で3箇所、合わせて8箇所に配置されている。但し、ネジ溝孔43及び突起片44の配置パターン(位置や個数)は、適宜の変更をなし得る。
【0020】
両面接着テープ50によって、フロントケース30とリアケース40とが貼り合わせる際に、リアケース40側に設けられた突起片44が、フロントケース30側に設けられた係止部35に係止される。このように、両面接着テープ50による接着に加えて、突起片44を係止部35に係止することにより、フロントケース30及びリアケース40の固定度を高めることができる。
【0021】
〈両面接着テープの構造〉
次に、両面接着テープ50の詳細構成について説明する。図3及び図4に示すように、両面接着テープ50は、全体として閉ループ状の平面形状を有している。また、図5及び図6に示すように、フロントケース30における枠部31の上面と、リアケース40における側壁部41の上面には、両面接着テープ50を介して相互に貼り合される接着面311、411が、全体として閉ループ形状として形成されている。また、フロントケース30側の接着面311と、リアケース40側の接着面411の夫々は、共に平滑面として形成されている。以下、フロントケース30側の接着面311を「第1接着面」と称し、リアケース40側の接着面411を「第2接着面」と称する。
【0022】
図7は、実施形態1に係る両面接着テープ50の概略構成を示す図であり、例えば、図3に示すA−A矢視方向の断面図である。両面接着テープ50は、不透水性(防水性)及び伸縮性を有する防水型両面接着テープである。より詳しくは、両面接着テープ50は、不透水性を有する基材51と、基材51の両面に接着剤521が塗布されることで形成される接着剤層52と、を有する。また、基材51は、平面方向(面広がり方向)への伸縮性を有する。ここで、基材の平面方向とは、基材51の厚さ方向と直交する方向であり、閉ループ形状でいうところの長手(長さ)方向(以下、「ループ長手方向」という。)や幅方向(以下、「ループ幅方向」という。)が包含される。尚、ここでいう「接着剤」とは、いわゆる粘着剤を含んで接着剤と称するものである。
【0023】
不透水性及び伸縮性を有する基材51として、例えば、独立気泡構造を有する発泡体基材を採用している。基材(以下、「発泡体基材」という。)51を、独立発泡(気泡)構造とすることにより、閉ループ形状に成形する際に、基材の切断面からの浸水を効果的に防ぐことができる。また、独立発泡構造とすることにより、発泡体基材51に引張り力が作用した際には独立気泡が変形し、且つ、引張り力が作用しなくなった際には独立気泡が元の形状に復元する。このようにして、発泡体基材51は、ループ長手方向やループ幅方向等の基材平面方向への伸縮性が充分に確保される。
【0024】
但し、例えば、発泡体基材51の厚さをなるべく薄くしたいという要請等から、発泡体基材51の平面方向に比べて、厚さ方向に並ぶ独立気泡の数を充分に確保することが難しい。そのため、発泡体基材51の厚さ方向に対する伸縮性能は、基材平面方向への伸縮性能に比べて相対的に低くなる。なお、発泡体基材51において、独立発泡構造を形成する気泡形状や平均気泡径は、特に限定されない。
【0025】
発泡体基材51としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合ポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合ポリマー等からなるポリオレフィン系発泡体や、アクリルフォーム系発泡体などを一例として使用することができる。このような発泡体基材51は、例えば、ポリオレフィン系やアクリル系等の樹脂と熱分解型発泡剤とを押出し機に供給して溶融混練し、押出し機からシート状に押し出すことによって形成された樹脂シートを、延伸、薄肉化することにより得ることができる。
【0026】
次に、両面接着テープ50の接着剤層52について説明する。接着剤層52は、発泡体基材51のおもて面511、裏面512の双方、つまり両面に形成されている。両面接着
テープ50は、発泡体基材51のループ幅方向において内周側寄りに位置する接着剤層内周部513と、接着剤層内周部513よりも外周側に位置する接着剤層外周部514とにおいて、接着剤層52の接着力が相違している。両面接着テープ50は、接着剤層内周部513と接着剤層外周部514とにおいて相違させた接着力の大小関係を、発泡体基材51のおもて面511側と裏面512側とにおいて逆になるように形成される。
【0027】
例えば、発泡体基材51のおもて面511側において、接着剤層内周部513の接着力を接着剤層外周部514よりも大きく(強く)する場合、裏面512側においては接着剤層外周部514の接着力を接着剤層内周部513よりも大きく(強く)する。逆に、発泡体基材51のおもて面511側において、接着剤層外周部514の接着力を接着剤層内周部513よりも大きく(強く)する場合、裏面512側においては接着剤層内周部513の接着力を接着剤層外周部514よりも大きく(強く)する。
【0028】
図7に示す構成例では、後者のケースを採用したものである。この場合、発泡体基材51のおもて面511が一方の面の一例であり、裏面512が他方の面の一例になる。図7に示す構成例では、発泡体基材51のおもて面511側において、接着剤層外周部514の接着力を接着剤層内周部513よりも大きく(強く)する。また、裏面512側において、接着剤層内周部513の接着力を接着剤層外周部514よりも大きく(強く)する。具体的には、例えば、発泡体基材51への接着剤の部分塗工を採用しても良い。本実施形態では、発泡体基材51のおもて面511側においては、接着剤層外周部514に接着剤521を塗布し、接着剤層内周部513に接着剤521を塗布しないようにしている。一方、裏面512側においては、接着剤層内周部513に接着剤521を塗布し、接着剤層外周部514に接着剤521を塗布しないようにしている。これにより、発泡体基材51のおもて面511側においては、接着剤層52が、発泡体基材51の外周縁側に偏位して形成され、裏面512側に形成される接着剤層52は、発泡体基材51の内周縁側に偏位して形成される。
【0029】
更に、両面接着テープ50は、発泡体基材51のおもて面511側と裏面512側とにおいて、接着剤層内周部513及び接着剤層外周部514のうちの、相対的に接着力が弱い部位同士を、互いにオーバーラップさせている。図7の例では、接着剤層内周部513及び接着剤層外周部514のうち、発泡体基材51に接着剤521が塗布されている方を「接着部PB」と称し、接着剤521が塗布されていない方を「非接着部PNB」と称する。
【0030】
図示の例では、発泡体基材51のおもて面511側では、接着剤層外周部514が接着部PBに該当し、接着剤層内周部513が非接着部PNBに該当する。また、発泡体基材51の裏面512側では、接着剤層内周部513が接着部PBに該当し、接着剤層外周部514が非接着部PNBに該当する。両面接着テープ50は、おもて面511側に形成される非接着部PNBと、裏面512側に形成される非接着部PNBとが、部分的に、互いにオーバーラップする(上下に重なる)ように形成される。
【0031】
尚、本実施形態では、両面接着テープ50のループ長手方向における全区間に亘って、図7に示す断面構造が採用されている。但し、この限りではなく、両面接着テープ50のループ長手方向における少なくとも一部の区間に図7に示す断面構造を採用すれば良い。また、両面接着テープ50の発泡体基材51に塗布する接着剤521としては、アクリル系接着剤(粘着剤)やシリコーン系接着剤(粘着剤)等を挙げることができるが、これには限定されない。
【0032】
〈防水構造〉
図8は、実施形態1に係る筐体の部分断面図である。具体的には、図2のX部周
辺の断面構造を示す。上述までに説明した部材については、同一の参照符号を付すことで詳しい説明を割愛する。図中の符号61はLCDユニットを表し、符号62は無線アンテナ基板を表す。その他の部材は、既述の通りである。図8の例では、両面接着テープ50のおもて面511をフロントケース30の第1接着面311に接着し、裏面512をリアケース40の第2接着面411に接着する場合を例に説明するが、おもて面511と裏面512を入れ替えても良い。
【0033】
ここで、表示ユニット部13には、携帯電話1の小型化・薄型化を実現するための要請等から、筐体130の肉厚をできるだけ薄くすることが要求される。したがって、携帯電話1に、落下等による衝撃やその他の外力、或いは、熱膨張等による筐体寸法の変化などに起因して、筐体130(フロントケース30、リアケース40)が変形する場合がある。そのような場合、筐体130を形成するフロントケース30とリアケース40を互いに離反させる方向に力が作用し、第1接着面311と第2接着面411の間が目開くことが想定される。
【0034】
図20は、従来の両面接着テープを使用してフロントケース30及びリアケース40の各接着面311,411を接着した防水構造を示す図である。ここでいう従来の両面接着テープとは、例えば、基材の幅方向の全範囲に亘って接着剤を塗布して接着剤層を形成するタイプの両面接着テープである。
【0035】
この種の両面接着テープでは、図示のように、フロントケース300側の第1接着面301とリアケース400側の第2接着面401が目開くと、何れかの接着面から両面接着テープが剥離し易い。また、両面接着テープの基材は厚さ方向への伸び変形能が低いため、基材自体が破断することも想定される。このように、各接着面301,401から両面接着テープが剥離し、或いは両面接着テープの基材破壊が起こると、筐体130の防水機能を維持することが困難になる。
【0036】
これに対して、本実施形態に係る両面接着テープ50は、各接着面311,411同士が目開いたとしても、以下に示す原理によって、筐体内部への浸水を防止することができる。図9A,9Bは、実施形態1に係る筐体130の防水構造を説明する説明図である。図9Aは、フロントケース30側の第1接着面311とリアケース40側の第2接着面411が目開く前の初期状態を表す。図9Bは、フロントケース30側の第1接着面311とリアケース40側の第2接着面411が目開いた目開き状態を表す。
【0037】
ここで、両面接着テープ50のおもて面511側と第1接着面311との接着境界面を、「第1接着境界面70」と定義する。また、両面接着テープ50の裏面512側と第2接着面411との接着境界面を「第2接着境界面80」と定義する。また、第1接着境界面70において、両面接着テープ50のおもて面511における接着剤層内周部513に対応(対向)する領域を「ループ内周部71」と称し、接着剤層外周部514に対応(対向)する領域を「ループ外周部72」と称する。また、第2接着境界面80において、両面接着テープ50の裏面512における接着剤層内周部513に対応(対向)する領域を「ループ内周部81」と称し、接着剤層外周部514に対応する領域を「ループ外周部82」と称する。
【0038】
図示のように、第1接着境界面70のループ幅方向において、ループ内周部71は内周側寄りに形成され、ループ内周部71よりも外周側にループ外周部72が形成される。また、第2接着境界面80のループ幅方向において、ループ内周部81は内周側寄りに形成され、ループ内周部81よりも外周側にループ外周部82が形成される。
【0039】
第1接着境界面70では、両面接着テープ50における接着剤層外周部514に接着部
PBが形成され、接着剤層内周部513に非接着部PNBが形成される。これにより、第1接着境界面70において、両面接着テープ50と第1接着面311との間の接着力は、ループ外周部72がループ内周部71よりも大きくなる。また、第2接着境界面80では、接着剤層外周部514に非接着部PNBが形成され、接着剤層内周部513に接着部PBが形成される。これによって、第2接着境界面80において、両面接着テープ50と第2接着面411との間の接着力は、ループ内周部81がループ外周部82よりも大きくなる。筐体130の防水構造によれば、第1接着境界面70及び第2接着境界面80の何れにおいても、ループ内周部71,81とループ外周部72,82の何れかに接着部PBが形成されるので、筐体130の内部空間の密閉性を確保できる。
【0040】
一方、筐体130の変形によって、第1接着面311及び第2接着面411の間が目開くと、図9Bに示す状態となる。両面接着テープ50は、おもて面511側に形成される非接着部PNBと、裏面512側に形成される非接着部PNBとが、互いにオーバーラップするように形成されている。ここで、両面接着テープ50のおもて面511と裏面512とで上下にオーバーラップする非接着部PNBを、「オーバーラップ部515」と称する。
【0041】
両面接着テープ50は、オーバーラップ部515を除いて、おもて面511側の接着部PBと相対するように裏面512側に非接着部PNBが形成される。また、おもて面511側の非接着部PNBと相対するように裏面512側に接着部PBが形成される。そのため、フロントケース30及びリアケース40における各接着面311,411が互いに離反したとしても、おもて面511及び裏面512における接着部PBに過大な力が作用することを回避できる。
【0042】
更に、両面接着テープ50は、ループ幅方向の中間部にオーバーラップ部515が形成されているため、以下の作用効果を奏する。すなわち、各接着面311,411が離反していくと、オーバーラップ部515の姿勢が、各接着面311,411に沿った姿勢から、各接着面311,411が離反する方向(以下、「目開き方向」という。)に沿った姿勢へと次第に変化する。つまり、オーバーラップ部515の平面方向が、各接着面311,411の目開き方向に近づくようになる。これにより、両面接着テープ50が、各接着面311,411の目開き方向に伸び易くなる。両面接着テープ50は、厚さ方向に比べて平面方向における伸縮性が優れているからである。
【0043】
したがって、筐体130の変形に伴って、第1接着面311及び第2接着面411の間の目開き量が増大しても、各接着面311,411の目開き方向への両面接着テープ50の伸び変形量を充分に確保することが可能となる。その結果、両面接着テープ50の接着部PBが剥離したり、基材破壊が起こることを抑制できるので、筐体130の防水機能を維持することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る筐体130では、フロントケース30及びリアケース40の何れか一方と両面接着テープ50との間の接着力を、ケース内周側に比べてケース外周側を大きくした。そして、フロントケース30及びリアケース40の何れか他方のケースと両面接着テープ50との接着力を、ケース外周側に比べてケース内周側を大きくした。これにより、両面接着テープ50における接着部PBの剥離や基材破壊等を好適に防止できる。したがって、筐体130の内部空間への浸水を抑制し、以って当該内部空間の密閉性を維持することが可能となる。よって、筐体130への水分や塵埃等の侵入を抑制し、防水性及び防塵性を向上させることができる。
【0045】
また、両面接着テープ50の中間部にオーバーラップ部515を形成することにより、各接着面311,411の離反に伴い、オーバーラップ部515の姿勢を各接着面311
,411の目開き方向へと方向転換することができる。これによれば、少なくとも、オーバーラップ部515の長さに相当する分と、オーバーラップ部515が各接着面311,411の目開き方向に伸長する分を合算した量だけ、各接着面311,411の目開き変形に追従することができる。したがって、各接着面311,411の目開き方向への両面接着テープ50の伸び変形能を一層高めることができる。
【0046】
<変形例>
図10は、実施形態1の第1変形例に係る両面接着テープ50Aの概略構成図である。図10は、両面接着テープ50Aの断面構造を示している。図示の両面接着テープ50Aは、図7に示した両面接着テープ50に対して、接着部PBと非接着部PNBを形成させる位置が相違する。以下、両面接着テープ50との相違点を中心に説明する。両面接着テープ50Aのおもて面511では、接着剤層内周部513に接着剤521を塗布することで接着剤層52が形成されており、接着剤層外周部514には接着剤521が塗布されていない。また、裏面512では、接着剤層外周部514に接着剤521を塗布することで接着剤層52が形成されており、接着剤層内周部513には接着剤521が塗布されていない。つまり、両面接着テープ50Aにおいて、発泡体基材51のおもて面511側では、接着剤層52が発泡体基材51の内周縁側に偏位して形成され、裏面512側では、接着剤層52が発泡体基材51の外周縁側に偏位して形成されている。
【0047】
その結果、両面接着テープ50Aのおもて面511には、接着剤層内周部513に接着部PBが形成され、接着剤層外周部514に非接着部PNBが形成される。逆に、裏面512には、接着剤層外周部514に接着部PBが形成され、接着剤層内周部513に非接着部PNBが形成される。また、図示のように、ループ幅方向において、接着部PBと非接着部PNBとの境界位置が、おもて面511側と裏面512側において互いに一致している。
【0048】
図11は、実施形態1の第1変形例に係る筐体130の防水構造を説明する説明図である。図示の例においても、両面接着テープ50Aにおける接着剤層内周部513と接着剤層外周部514の何れかに接着部PBが形成されている。したがって、両面接着テープ50Aと各接着面311,411との何れの接着境界面、すなわち第1接着境界面70及び第2接着境界面80の何れにおいても、ループ内周部71,81とループ外周部72,82の何れかに接着部PBが形成される。そのため、筐体130の内部に形成される電子部品の収容空間の密閉性を好適に確保することができる。
【0049】
一方、各接着面311,411が目開くと、両面接着テープ50Aにおける非接着部PNBが各接着面311,411から離反すると共に、接着部PBと非接着部PNBとの境界部分が各接着面311,411の目開き方向に伸びる。このようにして、接着部PBと非接着部PNBとの境界部分が、各接着面311,411の移動に追従して目開き方向に伸びることによって、接着部PBの剥離が回避される。その結果、筐体130の防水機能を維持することができる。なお、本変形例は、リアケース40を第1ケースの一例とし、フロントケース30を第2ケースの一例として説明したものである。
【0050】
また、上記の実施形態では、発泡体基材51への接着剤の部分塗工によって接着部PBと非接着部PNBを形成したが、他の方法を用いても良い。例えば、いわゆる糊殺し加工を施しても良い。この場合、例えば、発泡体基材51のおもて面511、裏面512の全面に接着剤を塗布した後、非接着部PNBを形成する領域に塗布された接着剤に対して、糊殺し印刷を施して接着力を喪失又は低減させても良い。糊殺し印刷は、例えばニスやインキ等が用いられ、凸版印刷或いはフレキソ印刷にて塗布されても良い。
【0051】
また、両面接着テープ50のおもて面511、裏面512に形成する接着部PB及び非
接着部PNBが夫々ループ幅方向に占める比率は、適宜変更することができる。接着部PBに比べて非接着部PNBの方が幅を広く確保しても良いし、逆にしても良い。勿論、接着部PBの幅と非接着部PNBの幅を同一にしても良い。また、接着部PB及び非接着部PNBが夫々ループ幅方向に占める比率は、両面接着テープ50のおもて面511と裏面512とで同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0052】
また、両面接着テープ50は、おもて面511と裏面512の各々において、接着剤層内周部513と接着剤層外周部514の接着力を相対的に相違させれば良い。したがって、接着剤層内周部513と接着剤層外周部514のうち、相対的に接着力が低い方の接着力を上記態様のように零にしなくても良い。接着剤層内周部513と接着剤層外周部514の接着力を相対的に相違させれば、各接着面311,411が互いに離反する際に、相対的に接着力の弱い接着領域が先行して剥離することで、両面接着テープ50の変形追従能を高めることができる。その結果、接着剤層内周部513と接着剤層外周部514のうち、相対的に接着力が強い接着領域の剥離が防止され、また、基材破壊が起こることもない。よって、筐体130の防水機能を好適に維持することができる。
【0053】
<実施形態2>
次に、実施形態2について説明する。本実施形態に係る筐体130の防水構造では、フロントケース30及びリアケース40の各接着面の表面構造(面粗さ)、及び、両面接着テープにおける接着剤層の態様が実施形態1と相違する。以下では、当該相違点を中心に説明する。また、本実施形態において、実施形態1と同一の構成については同一符号を付すことで、その詳しい説明を割愛する。尚、実施形態2における携帯電話1の基本構成は、実施形態1と同様である。
【0054】
図12は、実施形態2に係るリアケース40をフロント側から眺めた外観斜視図である。また、図13は、実施形態2に係るフロントケース30をリア側から眺めた外観斜視図である。図14は、実施形態2に係る両面接着テープ50Bの概略構成を示す図である。尚、図12には、両面接着テープ50Bの外観斜視図も併せて示している。
【0055】
まず、両面接着テープ50Bについて説明する。図12に示すように、両面接着テープ50Bは、実施形態1に係る両面接着テープ50と同様、全体として閉ループ状の平面形状を有する。図14は、図12に示すB−B矢視方向の断面図である。両面接着テープ50Bは、実施形態1に係る両面接着テープ50のような特別な断面構造を採用していない点で両面接着テープ50と相違する。すなわち、ループ幅方向の全範囲に亘り接着剤521が塗布されることで、発泡体基材51の両面に接着剤層52が形成されている。つまり、両面接着テープ50Bでは、おもて面511と裏面512の何れにおいても、接着剤層52が全面に形成されている。両面接着テープ50Bは、両面接着部材の一例として挙げられる。また、両面接着テープ50Bは、そのループ長手方向の全区間に亘り、図14に示す断面構造を採用している。
【0056】
次に、図12及び図13を参照すると、フロントケース30とリアケース40は、両面接着テープ50Bによって互いに貼り合わされる第1接着面311A及び第2接着面411Aを有する。両図に示すように、各接着面311A,411Aは、両面接着テープ50Bを介して接着できるように、両面接着テープ50Bと同じく閉ループ形状を有している。本実施形態に係るフロントケース30及びリアケース40は、接着面311A,411Aに関する表面構造を除いて、実施形態1と同様である。
【0057】
フロントケース30側に形成される第1接着面311A、及びリアケース40側に形成される第2接着面411Aの詳細について説明する。第1接着面311Aのうち、ループ幅方向において相対的に内周側に位置する領域を接着面内周部313と称し、接着面内周
313よりも外周側に位置する領域を接着面外周部314と称する。また、第2接着面411Aのうち、ループ幅方向において相対的に内周側に位置する領域を接着面内周部413と称し、接着面内周部413よりも外周側に位置する領域を接着面外周部414と称する。
【0058】
実施形態1では、両面接着テープ50における接着剤層内周部513と接着剤層外周部514とにおける接着力を相違させることにより、ループ内周部71,81及びループ外周部72,82の接着力を互いに相違させた。これに対して、実施形態2では、第1接着面311Aにおける接着面内周部313と接着面外周部314の面粗さ(平滑度)を互いに相違させるようにした。また、第2接着面411Aにおける接着面内周部413と接着面外周部414の面粗さを互いに相違させるようにした。
【0059】
〈防水構造〉
図15A及び図15Bは、実施形態2に係る筐体130の防水構造を説明する説明図である。図15Aは、フロントケース30側の第1接着面311Aとリアケース40側の第2接着面411Aが目開く前の初期状態を表す。図15Bは、フロントケース30側の第1接着面311Aとリアケース40側の第2接着面411Aが目開いた目開き状態を表す。
【0060】
まず、図15Aを参照して、両面接着テープ50Bと各接着面311A,411Aとの間の接着境界面に係る防水構造の基本構成について説明する。本実施形態において両面接着テープ50Bのおもて面511と第1接着面311Aとの接着境界面を「第1接着境界面70A」と定義する。また、両面接着テープ50Bの裏面512と第2接着面411Aとの接着境界面を「第2接着境界面80A」と定義する。また、第1接着境界面70Aにおいて、接着面内周部313に対応(対向)する領域を「ループ内周部71A」と定義し、接着面外周部314に対応(対向)する領域を「ループ外周部72A」と定義する。また、第2接着境界面80Aにおいて、両面接着テープ50Bの裏面512における接着面内周部413に対応(対向)する領域を「ループ内周部81A」と定義し、接着面外周部414に対応(対向)する領域を「ループ外周部82A」と称する。また、両面接着テープ50Bのうち、接着面内周部313に接着される領域を「接着剤層内周部513A」と定義し、接着面外周部314に接着される領域を「接着剤層外周部514A」と定義する。
【0061】
ここで、両面接着テープ50Bにおける接着剤521の種類、接着剤層52の厚さ、発泡体基材51の強度等の条件が同一であれば、両面接着テープ50Bの各接着面311A,411Aとの接触面積に比例して接着力が大きくなる。本実施形態では、第1接着面311Aにおける接着面内周部313と接着面外周部314とにおける面粗さを相違させることで、第1接着境界面70Aにおけるループ内周部71Aとループ外周部72Aの接着力を相違させるようにする。同様に、第2接着面411Aにおける接着面内周部413と接着面外周部414とにおける面粗さを相違させることで、第2接着境界面80Aにおけるループ内周部81Aとループ外周部82Aの接着力を相違させるようにする。
【0062】
図15Aに示すように、フロントケース30側に形成される第1接着面311Aは、接着面内周部313の面粗さが、接着面外周部314に比べて粗く(大きく)なっている。言い換えると、第1接着面311Aにおいては、接着面外周部314の面粗さが接着面内周部313の面粗さに比べて小さくなっている。これにより、第1接着面311Aと両面接着テープ50Bとの間の第1接着境界面70Aでは、接着剤層外周部514Aと接着面外周部314との間の接触面積に比べて、接着剤層内周部513Aと接着面内周部313との間の接触面積の方が小さくなる。その結果、第1接着境界面70Aでは、ループ内周部71Aにおける接着力が、ループ外周部72Aにおける接着力に比べて相対的に小さく
なる。
【0063】
一方、リアケース40側に形成される第2接着面411Aは、接着面外周部414の面粗さが、内周側接着部413に比べて相対的に粗く(大きく)なっている。そのため、第2接着面411Aと両面接着テープ50Bとの間の第2接着境界面80Aでは、接着剤層内周部513Aと接着面内周部313との間の接触面積に比べて、接着剤層外周部514Aと接着面外周部314との間の接触面積の方が小さくなる。その結果、第2接着境界面80Aでは、ループ外周部82Aにおける接着力が、ループ内周部81Aにおける接着力に比べて相対的に小さくなる。
【0064】
ここで、各接着境界面70A,80Aにおけるループ内周部71A,81Aとループ外周部72A,82Aのうち、接着力が相対的に大きい(強い)方を「強力接着部PSB」と称し、接着力が相対的に小さい(弱い)方を「微力接着部PWB」と称する。図15Aに示すように、第1接着面311Aにおいて相対的に面粗さが大きい接着面内周部313と、第2接着面411Aにおいて相対的に面粗さが大きい接着面外周部414とが、両面接着テープ50Bを挟んで互いにオーバーラップしている。第1接着境界面70A及び第2接着境界面80Aの夫々における微力接着部PWBのうち、互いにオーバーラップしている領域を「オーバーラップ部515A」と称する。本実施形態では、オーバーラップ部515Aを除いて、第1接着境界面70A側の強力接着部PSBと第2接着境界面80A側の微力接着部PWBが相対する。また、オーバーラップ部515Aを除いて、第1接着境界面70A側の微力接着部PWBと第2接着境界面80A側の強力接着部PSBが相対する。
【0065】
図15Bに示すように、フロントケース30の第1接着面311Aと、リアケース40の第2接着面411Aの離反が開始されると、相対的に接着力の弱い微力接着部PWBが、強力接着部PSBに先行して剥離する。微力接着部PWBが剥離した後は、各接着面311A,411Aの離反に伴って、オーバーラップ部515Aの姿勢が、各接着面311A,411Aに沿った姿勢から、各接着面311A,411Aの目開き方向に沿った姿勢へと転換される。
【0066】
これにより、伸び変形能の優れたオーバーラップ部515Aの平面方向が、各接着面311A,411Aの目開き方向に近づくようになる。したがって、筐体130の変形に伴って、各接着面311A,411Aの目開き量が増大しても、各接着面311A,411Aの目開き方向への両面接着テープ50Bの伸び変形量が充分に確保される。その結果、両面接着テープ50Bの強力接着部PSBが剥離することを抑制でき、また、基材破壊が起こることもない。よって、筐体130の防水機能を好適に維持することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態の筐体130の防水構造によれば、各接着面311A,411Aの面粗さを調節するようにした。そのため、図7に示したような特別な両面接着テープを用いずに、ループ内周部71A,81Aとループ外周部72A,82Aとにおける接着力を互いに相違させることができる。また、各接着面311A,411Aの面粗さの調節は、以下のように簡易な方法で実現することができる。
【0068】
各接着面311A,411Aにおける面粗さの調整は、例えば、フロントケース30及びリアケース40の成形に用いる金型の面粗さ(平滑度)を調節することで実現できる。例えば、上記金型のうち、各接着面311A,411Aの強力接着部PSBに対応する部分の金型面を平滑面としても良い。そして、微力接着部PWBに対応する部分の金型面に梨地加工やシボ加工を施すことで、金型面に微細な凹凸パターンを形成しても良い。
【0069】
また、金型面に形成する微細な凹凸パターンの形状を変更することにより、各接着面3
11A,411Aの面粗さを自由に変更することができる。つまり、本実施形態の接着力相違構造90によれば、第1接着境界面70Aにおいて、ループ内周部71Aとループ外周部72Aとにおける接着力の差を自由に調節することができる。同様に、第2接着境界面80Aにおいて、ループ内周部81Aとループ外周部82Aとにおける接着力の差を自由に調節することができる。これによれば、第1接着面311Aと第2接着面411Aが離反した際に、微力接着部PWBが剥離するタイミングを細やかに調整できるという効果を奏する。
【0070】
また、本実施形態では、各接着面311A,411Aにおける面粗さを調整することで、各接着境界面70A,80Aにおけるループ内周部71A,81Aとループ外周部72A,82Aの接着力を相違させたが、これに限られず、他の方法を採用しても良い。例えば、図16に示すように、各接着面311A,411Aのうち、微力接着部PWBを形成する領域に、両面接着テープ50Bの接着力を低減し若しくは喪失させるコーティング剤100(図中、太破線)を塗布するコーティング処理を施しても良い。
【0071】
具体的には、第1接着面311Aについて、接着面内周部313と接着面外周部314との何れか一方に、両面接着テープ50Bの接着力を低減若しくは喪失させるコーティング剤100を塗布する。また、第2接着面411Aについて、接着面内周部413と接着面外周部414との何れか一方に、上記コーティング剤100を塗布する。その際、第1接着面311Aと第2接着面411Aにおいて、コーティング剤100を塗布する対象を、互いに逆にすると良い。
【0072】
言い換えると、第1接着面311Aのうち、第1接着境界面70Aにおけるループ内周部に対向する部位と、ループ外周部に対向する部位の何れか一方に、両面接着テープ50Bの接着力を低減若しくは喪失させるコーティング剤100を塗布する。また、第2接着面411Aのうち、第2接着境界面80Aにおけるループ内周部に対向する部位と、ループ外周部に対応する部位の何れか他方に上記コーティング剤100を塗布すると良い。これによって、第1接着境界面70Aと第2接着境界面80Aの夫々について、ループ内周部71A,81Aとループ外周部72A,82Aとにおける接着力を相違させることが可能となる。なお、図16に示す例では、第1接着面311Aの接着面内周部313に上記コーティング処理を施し、第2接着面411Aの接着面外周部414にコーティング処理を施している。このようなコーティング処理(表面処理)に用いるコーティング剤としては、例えば、フッ素コーティング剤やUVコーティング剤等の塗料を挙げることができるが、これには限定されない。また、各接着面311A,411Aにコーティング剤を塗布する領域を、ループ幅方向に重ねることにより、上述したオーバーラップ部515Aを容易に形成することができる。
【0073】
〈接着力相違構造を形成させる区間〉
以上までの実施形態では、フロントケース30及びリアケース40の結合部の全区間において、両面接着テープとケース側の接着面との接着力を接着面の外周側と内周側とで相違させる構造(以下、「接着力相違構造90」という)を採用していたが、これには限定されない。例えば、図13の拡大部Cを参照すると、符号315は、フロントケース30の第1接着面311Aに形成された傾斜部(スロープ部)を表している。
【0074】
図17は、表示ユニット部13の分解側面図である。図13及び図17に示す傾斜部315には、いわゆるフィレットが施される場合が多いが、平面部316に比べて傾斜部315は、フィレット半径寸法の製造誤差が生じ易く、時間の経過とともに筐体130が変形する原因となり易い。また、傾斜部315に変形が生じた場合、両面接着テープ50Bは、ある程度までは傾斜部315の変形に追従することができるものの、平面部316と比較すれば両面接着テープ50Bが剥離し易い。その結果、両面接着テープ50Bを接着
する各接着面311A,411Aのうち、傾斜部315は、平面部316に比べて、筐体130の防水構造上の弱点となり易い。
【0075】
そこで、図18に示すように、両面接着テープ50Bのループ長手方向のうち、防水構造上の弱点となり易い傾斜部315に対応する領域に、接着力相違構造90を形成し、平面部316に対応する領域に通常接着構造91を形成しても良い。この通常接着構造91とは、第1接着境界面70A及び第2接着境界面80Aの夫々において、ループ内周部71A,81Aとループ外周部72A,82Aとの接着力が同一である構造をいう。通常接着構造91は、例えば、各接着面311A,411Aにおける接着面内周部313,413と、接着面外周部314,414の面粗さを同一にすることで形成しても良い。
【0076】
また、図3、図4を参照すると、表示ユニット部13の四隅において、フロントケース30及びリアケース40は固定ネジ60によって互いに締結される。したがって、固定ネジ60による締結部近傍は、表示ユニット部13に係る筐体130の剛性が高くなり、変形が起こり難くなる。また、図1に示したヒンジ12が設置される部分についても、同様に、筐体130の剛性が高くなるため、変形が起こり難いと考えられる。そこで、例えば、固定ネジ60による締結部やヒンジ12の設置部付近に通常接着構造91を形成し、その他の区間に接着力相違構造90を形成しても良い。
【0077】
以上のように、接着力相違構造90は、両面接着テープ50Bのループ長手方向において、少なくとも一部の区間に形成すれば良く、接着力相違構造90を形成する区間の長さ、位置、箇所数等は適宜変更することができる。両面接着テープ50Bのループ長手方向において、両面接着テープ50Bの剥離が起こり易い区間に関しては接着力相違構造90を採用し、剥離が起こり難い区間に関しては通常接着構造91を採用しても良い。そうすることで、筐体130が変形しても筐体130の防水機能を好適に確保することができる。また、両面接着テープ50Bの剥離が起こり難い区間では、通常接着構造91とすることで、全区間に亘り接着力相違構造90を形成する場合に比べて、筐体130の製造コストの低減を図ることができる。
【0078】
〈オーバーラップ量の設定〉
次に、本実施形態に係る筐体130の防水構造に関し、オーバーラップ部515Aの幅であるオーバーラップ幅の設定方法について説明する。上述したように、オーバーラップ部515Aに係るオーバーラップ幅が大きい程、各接着面311A,411Aの目開き方向への両面接着テープ50Bの伸び変形能を高めることができる。
【0079】
一方、フロントケース30及びリアケース40の組み付け時には、図19に示すように、リアケース40側に設けられた突起片44が、フロントケース30側に設けられた係止部35の係止片36を乗り越えることで、係止部35に係止される。図19は、フロントケース30及びリアケース40を組み付けた初期状態における、突起片44と係止部35との相対位置関係を示す図である。図示のように、初期状態においては、係止部35の係止片36と突起片44との間に所定幅のクリアランス(以下、「初期クリアランス」という。)が形成されている。
【0080】
筐体130の変形等に起因して、各接着面311A,411Aが離反する際には、各接着面311A,411Aの目開きに伴い、係止部35の係止片36と突起片44との間のクリアランス幅が減少する。そして、係止片36と突起片44との間のクリアランス幅が零になって双方が当接すると、各接着面311A,411Aのそれ以上の離反が規制される。したがって、各接着面311A,411Aの初期状態からの最大目開き幅は概ね初期クリアランスの幅に等しくなる。そのため、各接着面311A,411Aの目開き方向への両面接着テープ50Bの伸び変形能力は、少なくとも、初期クリアランスの幅以上確保
することが望ましい。
【0081】
初期クリアランスの幅が広い程、初期状態から各接着面311A,411Aに許容される目開き幅が増えるため、各接着面311A,411Aの目開き方向への両面接着テープ50Bの伸び変形能を高くする必要がある。そこで、本実施形態では、初期クリアランスの幅が広いほど、オーバーラップ部515Aに係るオーバーラップ幅を広く設定すると良い。このように、初期クリアランスの幅に応じてオーバーラップ部515Aの幅を設定することにより、係止片36と突起片44とが当接するまでは少なくとも各接着境界面70A,80Aにおける強力接着部PSBの剥離が起こらない。これにより、筐体130の防水機能を好適に維持することが可能となる。
【0082】
尚、以上の実施形態においては、電子機器の一例として携帯電話を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。上述した筐体の防水構造は、デジタルカメラ、カメラ、トランシーバ、PDA、ノートパソコン、電卓、電子辞書等、種々の電子機器に広く適用することができる。また、以上の各実施形態は、可能な限りこれらを組み合わせて実施することができる。
【0083】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
互いに結合して収容空間を形成する第1ケース及び第2ケースと、
不透水性及び伸縮性を有する基材の両面に接着剤層を有し、一方の面上の接着剤層が前記第1ケースに、他方の面上の接着剤層が前記第2ケースにそれぞれ接着する両面接着部材と、を備え、
前記一方の面側における前記両面接着部材と前記第1ケースとの間の接着力は、該第1ケースの外側が内側より大きく、前記他方の面における前記両面接着部材と前記第2ケースとの間の接着力は、該第2ケースの内側が外側より大きいことを特徴とする筐体。
(付記2)
前記一方の面側における相対的に接着力が弱い部位と、前記他方の面側における相対的に接着力が弱い部位とが、互いにオーバーラップしていることを特徴とする付記1に記載の筐体。
(付記3)
前記第1ケースにおける前記両面接着部材と対向する面のうち、前記第1ケース外側に対応する部位の面粗さが、前記第1ケース内側に対応する部位の面粗さより小さく、且つ、
前記第2ケースにおける前記両面接着部材と対向する面のうち、前記第2ケース外側に対応する部位の面粗さが、前記第2ケース内側に対応する部位の面粗さより大きいことを特徴とする付記1又は2に記載の筐体。
(付記4)
前記両面接着部材の前記基材は、閉ループ形状に形成され、
前記基材の一方の面側に形成される接着剤層のうち、前記ループ外周部に対応する部位の接着力は、前記ループ内周部に対応する部位の接着力より大きく、且つ、
前記基材の他方の面側に形成される接着剤層のうち、前記ループ内周部に対応する部位の接着力は、前記ループ外周部に対応する部位の接着力より大きいことを特徴とする付記1又は2に記載の筐体。
(付記5)
前記第1ケースにおける前記両面接着部材と対向する面のうち、前記第1ケース内側に対応する部位に、前記両面接着部材の接着力を低減させるコーティング処理が施され、
前記第2ケースにおける前記両面接着部材に対向する面のうち、前記第2ケース外側に対応する部位に、前記両面接着部材の接着力を低減させるコーティング処理が施されていることを特徴とする付記1又は2に記載の筐体。
(付記6)
前記第1ケース及び前記第2ケースの何れか一方に設けられた突起片、及び、何れか他方に設けられて且つ前記突起片が係止する係止部、を更に備え、
所定の初期状態における前記突起片と前記係止部との間のクリアランス幅の設定値が広い程、前記接着力が低い部位同士のオーバーラップ幅が広くなるように設定されることを特徴とする付記2に記載の筐体。
(付記7)
不透水性及び伸縮性を有する基材と、
前記基材の両面に形成される接着剤層と、を備え、
前記基材の一方の面側に形成される前記接着剤層は、前記基材の幅方向の一方の縁側に偏位して形成され、前記基材の他方の面側に形成される接着剤層は、前記基材の幅方向の他方の縁側に偏位して形成されたことを特徴とする両面接着テープ。
(付記8)
前記基材の一方の面側における前記接着剤層が形成されていない部位と、前記基材の他方の面側における前記接着剤層が形成されていない部位とが、互いにオーバーラップしていることを特徴とする付記7に記載の両面接着テープ。
(付記9)
付記1から6の何れか一項に記載の筐体の収容空間内に電子部品が収容されたことを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0084】
1 防水型携帯電話
13 表示ユニット部
30 フロントケース
35 係止部
36 係止片
40 リアケース
44 突起片
50,50A,50B 両面接着テープ
51 基材
52 接着剤層
90 接着力相違構造
130 筐体
311,311A,411,411A 接着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに結合して収容空間を形成する第1ケース及び第2ケースと、
不透水性及び伸縮性を有する基材の両面に接着剤層を有し、一方の面上の接着剤層が前記第1ケースに、他方の面上の接着剤層が前記第2ケースにそれぞれ接着する両面接着部材と、を備え、
前記一方の面側における前記両面接着部材と前記第1ケースとの間の接着力は、該第1ケースの外側が内側より大きく、前記他方の面における前記両面接着部材と前記第2ケースとの間の接着力は、該第2ケースの内側が外側より大きいことを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記一方の面側における相対的に接着力が弱い部位と、前記他方の面側における相対的に接着力が弱い部位とが、互いにオーバーラップしていることを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記第1ケースにおける前記両面接着部材と対向する面のうち、前記第1ケース外側に対応する部位の面粗さが、前記第1ケース内側に対応する部位の面粗さより小さく、且つ、
前記第2ケースにおける前記両面接着部材と対向する面のうち、前記第2ケース外側に対応する部位の面粗さが、前記第2ケース内側に対応する部位の面粗さより大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体。
【請求項4】
前記両面接着部材の前記基材は、閉ループ形状に形成され、
前記基材の一方の面側に形成される接着剤層のうち、前記ループ外周部に対応する部位の接着力は、前記ループ内周部に対応する部位の接着力より大きく、且つ、
前記基材の他方の面側に形成される接着剤層のうち、前記ループ内周部に対応する部位の接着力は、前記ループ外周部に対応する部位の接着力より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体。
【請求項5】
前記第1ケースにおける前記両面接着部材と対向する面のうち、前記第1ケース内側に対応する部位に、前記両面接着部材の接着力を低減させるコーティング処理が施され、
前記第2ケースにおける前記両面接着部材に対向する面のうち、前記第2ケース外側に対応する部位に、前記両面接着部材の接着力を低減させるコーティング処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体。
【請求項6】
不透水性及び伸縮性を有する基材と、
前記基材の両面に形成される接着剤層と、を備え、
前記基材の一方の面側に形成される前記接着剤層は、前記基材の幅方向の一方の縁側に偏位して形成され、前記基材の他方の面側に形成される接着剤層は、前記基材の幅方向の他方の縁側に偏位して形成されたことを特徴とする両面接着テープ。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載の筐体の収容空間内に電子部品が収容されたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−82806(P2013−82806A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223437(P2011−223437)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】