説明

管体の内面処理器

【課題】縦型の中空管においても高所作業の手間や危険性を伴うことなく作業することができ、また管内の洗浄或いは接着剤塗布において、比較的安定した均一な洗浄又は塗布を行うことができ、さらに接着工程の前に内面の下地処理を比較的均一に或いは安定して行うことのできる管内の内面処理器を提供する。
【解決手段】管体内に導入し得る長尺の誘導線材の端部又は中間部に取り付けられ、管体内部の断面形状を含む大きさの板形状で側方周囲に張り出した張り出し板2を具備する。前記張り出し板2は、少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成され、この周縁部に沿って複数のスリット2Cが形成される。管体内に挿入された張り出し板2の周縁部が管体内面に押されて弾性変形し、張り出し板全体が管体内で集束した集束状態のまま管体内を移動することで、周縁部が弾性反力によって管内面を擦動して管内面処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体(パイプ又は電柱などのコンクリート管を含む)の補強、修理を目的とした管体の内面のケレン処理(研磨及び表面粗均一化処理)、洗浄液や洗浄空気の噴出による洗浄処理、ないし接着剤やプライマーあるいは顔料等を含む有機物の塗布による接着又は塗装前の下地処理をはじめとする、管体の内面処理を行う内面処理器に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱などの中空コンクリートポールを内部から補強する技術に関し、従来、中空コンクリートポールの上面の蓋を取り去り、上方から鉄筋などを挿入してモルタルにより硬化する工法が開示される(特許文献1参照)。
【0003】
また他に、従来の中空コンクリートポールにおける固定装置の固定工法として、中空コンクリートポールの側面に内部に連通する孔であるステップ孔を設けるステップ孔形成工程と、前記ワイヤー保持部にワイヤーの中間部を保持させた状態で前記ステップ孔から差し入れ、ワイヤーの両端が前記ステップ孔から出た状態を維持しながら前記線材を押し入れることで中空コンクリートポールの内壁上部に位置づける頭部固定装置配置工程と、頭部固定装置を前記線材を通じて操作することで前記係合手段を広げて前記頭部固定装置を中空コンクリートポールの内壁に固定し、その後、当該線材を取り去る頭部固定装置固定工程と、底部固定装置を、前記ワイヤー保持部に前記ワイヤーと同一又は異なるワイヤーの中間部を保持させた状態で前記ステップ孔から差し入れ、ワイヤーの両端が前記ステップ孔から出た状態を維持しながら前記線材を押し入れることで中空コンクリートポールの内壁下部に位置づける底部固定装置配置工程とを有するものが開示される(例えば特許文献2参照)。この固定工法によれば、中空コンクリートポールの側面に設けた穴から中空コンクリートポール内部の上部及び下部にワイヤーを支持する固定装置を固定することができる、とされる。
【0004】
そして管内を洗浄する工程として、塗布ノズルに接続された管体から洗浄液を供給して前記塗布ノズル(逆噴射ノズル)から噴射させるとともに、前記ワイヤー又は前記管体を引くことで前記塗布ノズルを上下に沿って移動させることで洗浄液を中空コンクリートポール内壁に吹き付けるものとしている。これはホースに接続された逆噴射ノズルの先端をステップ孔から表出する底部固定装置を通った底部親線と結束し、親線を移動させることで逆噴射ノズルを中空コンクリートポール内で上下動させ、噴射液を中空コンクリートポール内壁に渡って噴きつけて洗浄を行うものとされる(特許文献2公報段落0027、図8等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−307479号公報
【特許文献2】特開2007−231732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の工法のように、中空コンクリートポールの上面の開口部を通じて行う作業は、縦型コンクリートポールの上部から高所作業を行う必要があり、高所作業用の重機または足場が必要となるなどの手間や危険性を伴うものであった。
【0007】
また後者の工法の洗浄工程においては、高所作業を行う必要がない一方、洗浄工程乃至はその後の接着剤塗布工程が十分ではなかった。すなわち従来の前記後者の洗浄工程においては、小型の逆噴射ノズルを塗布ノズルとして使用しているが、この逆噴射ノズルは、ポール内を上下しながら噴射液の供給方向を前方として後斜め方向の全周に渡って円錐側面を形成するように噴射液を噴射するため、噴射方向が定まらず、逆噴射ノズル自体の噴射圧による不安定/不均一な塗布しか行うことができなかった。
【0008】
また洗浄工程の後には、ジャケット状の補強材をポール内に固定するための接着剤塗布工程を行う必要があるところ、後者の工程の接着剤塗布工程においては洗浄工程と同じ逆噴射ノズルを用いているため、前記と同様、逆噴射ノズル自体の噴射圧による不安定/不均一な塗布しか行うことができなかった。
【0009】
さらにコンクリートポール成形時にはポール内面の仕上げ処理を行わないため、ポール内面には多数の大小凹凸部や必要以上の滑面がランダムに存在している。このような面上に直接接着剤を塗布しても、十分な接着力は得られないものであった。すなわち本来、十分な補強材の接着のためには時前に内面の下地処理を行うべきであるところ、人がはいることのできない管内面の下地処理自体は困難であり、均一な/安定した下地処理を行うことはできなかった。
【0010】
そこで本発明では、縦型の中空管においても高所作業の手間や危険性を伴うことなく作業することができ、また管内の洗浄或いは接着剤塗布において、比較的安定した均一な洗浄又は塗布を行うことができ、さらに接着工程の前に内面の下地処理を比較的均一に或いは安定して行うことのできる管内の内面処理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決すべく発明されたものであって、以下(1)〜(6)の手段を講じている。
【0012】
(1)本発明の管体の内面処理器は、管体P内に挿入して管体P内面の下地処理を行う内面処理器であって、
管体P内に導入し得る長尺の誘導体1(第一誘導線材11)と、
それ自体の板形状の中央部付近で前記誘導体1(第一誘導線材11)の端部又は中間部に取り付けられ、管体P内部の断面形状を含む大きさの板形状で側方周囲に張り出した張り出し板(第一張り出し板2)とを具備してなり、
前記張り出し板(第一張り出し板2)は、少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、
この周縁部に沿って複数のスリット2Cが形成されてなり、内面処理器が管体P内に挿入されたときに張り出し板2の周縁部が管体P内面に押されて弾性変形し、張り出し板全体が管体P内で集束した集束状態S1/S2となり、
この集束状態S1/S2において、誘導線材の操作によって張り出し板(2)が管体P内を移動することで、周縁部が弾性反力によって管内面を擦動して管内面処理を行うことを特徴とする。
【0013】
上記構成における張り出し板は、管体P内で収束状態となったまま誘導線材に中央付近で支持されて管内を誘導され、その周縁部の弾性反力をもって管内面を押圧接触しながら移動する。このため、誘導線材の遠隔操作によって管内面を確実に擦動処理することができる。なお後述の実施例では、第一誘導線材11が誘導体1に、第一張り出し板2又は第二張り出し板4が張り出し板に、スリット2C又は4Cがスリットに、それぞれ相当する。
【0014】
(2)また本発明の管体の内面処理器は、管体P内に挿入して管体P内面の下地処理を行う内面処理器であって、
管体P内に導入し得る長尺の誘導体1(第一誘導線材11)と、
それ自体の中央部付近で誘導体1(第一誘導線材11)の端部又は中間部に取り付けられ、管体P内部の最大断面形状を含む板形状で側方周囲に張り出した張り出し板2と、
張り出し板2よりもさらに先部に取り付けられて流体を側方周囲に噴出する噴出ノズル3と、
噴出ノズル3と連通しながら誘導体1(第一誘導線材11)に沿って伸長し、噴出ノズル3へ噴出流体を送通する連通管3Pとを具備してなり、
前記張り出し板2は、
少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、
この周縁部に沿って複数のスリット2Cが形成されてなり、管体P内に挿入された張り出し板2の周縁部が管体P内面に押されて変形し、張り出し板全体が管体P内で集束した集束状態S1/S2となり、
連通管3Pに噴出流体を圧入して噴出ノズル3から噴出流体L/L2を管体P内に噴出し、それと同時又はその後に誘導線材の操作によって張り出し板が管体P内を移動することで、集束状態S1/S2の張り出し板(第一張り出し板2)が噴出された噴出流体を管内面に流動塗布し得ることを特徴とする。
【0015】
このように噴出ノズル3を備えて流体の噴出と共に張り出し板を移動させることで、誘導線材の遠隔操作によっても内面の均一化、表面粗化と共に、下地処理の一部として洗浄液の分散塗布処理、接着剤の塗布処理をムラなく確実に行うことができるものとなる。
【0016】
特に、後述の実施例のように、張り出し板2の中央位置から板上面よりもさらに先部へ突出する誘導体先部(連結棒12)と、この誘導体先部(連結棒12)周りに所定の回転軸周りに自由回転する回転機構を備え、前記回転軸に対して垂直よりも小さい角度で斜めに交わる広角噴射機能を有した逆噴射ノズル30(図6)とを備えたものとすれば、噴出口3Hが自噴射圧によって回転移動し、回転軸周りに広角噴射の方向を変えながら全周方向に噴射するものとなるため、効率的に均一な噴射を行うことができる。
【0017】
(3)前記いずれかの管体の内面処理器において、
張り出し板は円形外形の弾性板からなり、前記複数のスリット2Cが、張り出し板内の同心円上に離間配置されたスリット端からそれぞれ板周端へ放射状に拡がってなることが好ましい。
【0018】
上記構成の張り出し板は、同心円位置から放射状に拡がる複数のスリット2Cによって、全周方向に亘って略均一な櫛状の周縁部を有することとなり、各櫛状部がそれぞれ略均一な接触外力を管内面から受けながら弾性変形することとなり、効率的に管内面を擦動するとともに、均一なスリット端によって周方向の内応力の偏りの発生を防ぎ、耐久性にも優れたものとなる。
【0019】
(4)前記いずれかの管体の内面処理器において、
張り出し板2は円形外形の弾性板からなり、
前記複数のスリット2Cが、
張り出し板内の同心円上に離間配置された第一スリット端からそれぞれ板周端まで放射状に拡がる第一スリット21C群と、
張り出し板内の前記同心円よりも小径の同心円上に離間配置された(第一スリット端よりも円形中心寄りの)他のスリット端からそれぞれ板周端まで連なる、第一スリットよりも長い他のスリット(第二スリット22C,第三スリット23C,第四スリット24C・・・)群と、を含み、
隣り合う前記他のスリットによって、張り出し板2の周囲外方を向くフィン2Fが形成されることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、第一スリット21Cよりも長い他のスリット(例えば第二スリット22C、)が、張り出し板の周方向へ、複数本の第一スリットを挟んだ所定位相を開けて第一スリット2Cよりも少ない本数だけ形成される。このとき、隣接する「他のスリット」間には、張り出し板2の周縁の一部分を片先とし、この片先から片幅方向に複数本の第一スリットを有した箆状のフィン2Fが形成される(図3、図5、図11参照)。各フィン2Fは、多数の第一スリット21Cによるブラシ群を有した形態となり、フィン2F単位の所定の弾性反力でまとまって管体P内面を擦動することで、各フィン2Fが箆状の接触片としてそれぞれ管体P内面を摺動し、管体P内面への処理剤の塗布等を確実に行うものとしている。
【0021】
(5)前記いずれかの管体の内面処理器において、
前記噴出ノズル3は、前記張り出し板2がノズル本体の側部から張り出す形態で、前記張り出し板2の略中央部を挟持固定すると共に、この挟持固定した張り出し板2よりも先側において側部を向いた一または複数の噴出口3Hを有してなり、
さらに噴出ノズル3よりも先側へさらに誘導体1(接続棒12)が延伸され、
それ自体の中央部付近で誘導体1(連結棒12)の前記延伸された端部又は中間部に取り付けられ、管体Pの内部最小断面形状を含む板形状で側方周囲に張り出して配置された第二張り出し板4を具備してなり、
第二張り出し板4は、少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、
管体P内で外方に張り出して前記張り出し板(第一張り出し板2)の上方を覆って噴出ノズルからの噴出液体を遮蔽することが好ましい。
【0022】
上記構成のように、前記張り出し板(第一張り出し板2)より先側で張り出す第二張り出し板4を備えたものであれば、下方から上向挿入した場合の前記張り出し板(第一張り出し板2)よりも上部の管体内、或いは上方から下向挿入した場合の前記張り出し板(第一張り出し板2)よりも下部の管体内を、第二張り出し板4が遮蔽することとなる。これにより、噴出ノズルからの噴出流体が張り出し板(第一張り出し板2)よりも先側で飛散或いは霧散するのを防ぐことができる。また、噴出流体の散布範囲を管体内の2枚の張り出し板4間内に区切って所定範囲の管体P内面へ確実に噴出流体を塗布することができる。
【0023】
(6)上記(5)記載の管体の内面処理器において、
第二張り出し板4は、前記張り出し板(第一張り出し板2)よりも小さい板形状であって少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共にその周縁部に沿って複数のスリット4Cが形成されてなり、管体P内に挿入された第二張り出し板2の周縁部が管体P内面に押されて弾性変形し、張り出し板全体が管体P内で集束した集束状態S1/S2となり、
この集束状態S1/S2において、誘導体1の操作によって第二張り出し板4が管体P内を移動することで、第二張り出し板4の周縁部が弾性反力によって管内面を擦動して管内面処理を行うことが好ましい。
上記構成であれば、張り出し板(第一張り出し板2)及び第二張り出し板4が、それぞれ弾性反力の異なる収束状態で僅かな時間差を有して連続的に擦動することとなり、擦動に強弱をつけた連続的な内面処理が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記手段を講じており、縦型の中空管においても高所作業の手間や危険性を伴うことなく作業することができ、また管内の洗浄或いは接着剤塗布において、比較的安定した均一な洗浄又は塗布を行うことができ、さらに接着工程の前に内面の下地処理を比較的均一に或いは安定して行うことのできる管内の内面処理器を提供するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1の管体の内面処理器の全体斜視図。
【図2】図1に示す実施例1の管体の内面処理器の全体正面図。
【図3】図1に示す実施例1の管体の内面処理器の全体平面図。
【図4】図3のA部拡大図。
【図5】図3のB部拡大図。
【図6】実施例1の管体の内面処理器における噴射ノズル3及びその周辺構造の部分拡大斜視図。
【図7】実施例1の管体の内面処理器の使用状態例(導入状態)を示す断面説明図。
【図8】実施例1の管体の内面処理器の使用状態例(上昇中の処理状態)を示す断面説明図。
【図9】実施例1の管体の内面処理器の使用状態例(下降中の処理状態)を示す断面説明図。
【図10】本発明の実施例2の管体の内面処理器における噴射ノズル3及びその周辺構造の側面視部分拡大図。
【図11】図10に示す実施例2の噴射ノズル3及びその周辺構造の底面視部分拡大図。
【図12】第一張り出し板及び第二張り出し板の他の形態例1の平面図。
【図13】第一張り出し板及び第二張り出し板の他の形態例2の平面図。
【図14】実施例2或いは実施例3の管体の内面処理器の使用状態例(上昇中の処理状態)を示す断面説明図。
【図15】実施例2或いは実施例3の管体の内面処理器の使用状態例(下降中の処理状態)を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本管体の内面処理器の実施形態を、実施例として示す各図と共に説明する。本発明の管体の内面処理器は、管体P内に挿入して管体P内面の面処理を行う内面処理器であって、いずれの実施例においても下記基本構成を具備してなる。
【0027】
ここで内面処理とは、補強、修理を目的とした管体の内面のケレン処理、洗浄液や洗浄空気の噴出による洗浄処理、ないし接着剤やプライマーあるいは顔料等を含む有機物の塗布による接着又は塗装前の下地処理をはじめとする、面処理全般を含む概念である。また管体Pは、縦型の立設管のほか、横引き管、ベンド管或いはフレキシブル継ぎ手を含む管状の設置物全般を意味しており、管内部に中空部或いは中空部に相当する構成を有するものであれば、その外形状、材質、使用目的は問わない。
【0028】
(基本構成)
本発明の基本構成として、少なくとも、管体P内に導入し得る長尺の誘導体1たる第一誘導線材11と、
それ自体の板形状の中央部付近で前記誘導体1たる第一誘導線材11の端部又は中間部に取り付けられ、管体P内部の断面形状を含む大きさの板形状で側方周囲に張り出した第一張り出し板2と、を具備する。
【0029】
(第一張り出し板2)
ここで第一張り出し板2は、少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、この周縁部に沿って複数のスリット2Cが形成されてなり、内面処理器が管体P内に挿入されたときに張り出し板2の周縁部が管体P内面に押されて弾性変形し、第一張り出し板2全体が管体P内で集束した集束状態S1/S2となり、
この集束状態S1/S2において、誘導線材の操作によって張り出し板(2)が管体P内を移動することで、周縁部が弾性反力によって管内面を擦動して管内面処理を行うことが可能となっている。
【0030】
(複数の張り出し板を備えた形態例)
また本発明の管体の内面処理器の他の形態例として、上記基本構成おいて、
誘導体1の端部又は中間部の異なる長尺方向位置に、誘導体1を貫通する複数枚の張り出し板(第一張り出し板2、第二張り出し板4、第三張り出し板、・・・)を、所定間隔をあけて並設したものが挙げられる。
【0031】
(噴出ノズルを備えた構成)
また本発明の管体の内面処理器の他の構成として、上記基本構成に加えてさらに、
張り出し板2よりもさらに先部に取り付けられて流体を側方周囲に噴出する噴出ノズル3と、
噴出ノズル3と連通しながら誘導体1に沿って伸長し、噴出ノズルへ噴出流体を送通する連通管3Pとを具備したものが挙げられる。
ここで張り出し板2が上記と同様の集束状態S1/S2となった状態で、連通管3Pを通じて噴出ノズル3から噴出流体を管体P内に噴出し、それと同時又はその後に誘導体1の操作によって各張り出し板2が管体P内を移動することで、集束状態S1/S2の各張り出し板が、噴出された噴出流体L/L2を管内面に流動塗布し得る。
【0032】
各張り出し板は上記と同様の集束状態S1/S2となり、それぞれが管内面を連続的に擦動して面処理(表面研磨及び均一な粗面化、或いは塵芥や油膜といった付着物の除去)を行う。複数枚間で異なる大きさの張り出し板を使用するか、異なる弾性係数の板材を使用するか、或いは複数枚間でスリットの形状(本数又はライン)や端部の形状(片傾斜面/対向する両傾斜面を付ける、或いはアール状にする)のパターンを変えて弾性反力を可変させることで、複数枚の張り出し板2による作用強度や機能を少しずつ変えることが好ましい。
【0033】
特に前記複数の張り出し板を備えた構成において、複数の張り出し板間に挟み込まれる位置に噴出ノズル3を備えることでノズルからの噴出剤(噴出液又は噴出気体)を張り出し板で挟み込んだ領域内に絞って噴出することができる。また噴出後又は噴出と共に張り出し板を誘導線材によって移動させることで、噴出した噴出剤を張り出し板の周面の接触部で管内面に刷りこむことができ、面上への塗布の機能を果たすことができる。
【0034】
すなわち連通管3Pを通じて噴出ノズル3から噴出流体を管体P内に噴出し、それと同時又はその後に誘導線材の操作によって張り出し板が管体P内を移動することで、集束状態S1/S2の張り出し板が噴出された噴出流体を管内面に流動塗布する。以下、各図に示す実施例の形態につき詳述する。
【実施例1】
【0035】
図1〜図9に示す実施例1の管体の内面処理器では、第一張り出し板2の中央位置から板上面よりもさらに先部へ突出する誘導体1延伸部(連結棒12)と、この誘導体1延伸部(連結棒)周りに所定の回転軸周りに自由回転する回転機構31を備え、前記回転軸に対して垂直よりも小さい角度で斜めに交わる広角噴射機能を有した逆噴射ノズル30とを備えたものとしている。
【0036】
(第一張り出し板2)
実施例1の第一張り出し板2は円形外形の弾性板からなり、前記複数のスリット2Cが、張り出し板内の同心円上に離間配置されたスリット端からそれぞれ板周端へ放射状に拡がってなる。
さらに、前記複数のスリット2Cは、
張り出し板内の同心円上に離間配置された第一スリット端からそれぞれ板周端まで放射状に拡がる第一スリット21C群と、
張り出し板内の前記同心円よりも小径の同心円上に離間配置された(第一スリット端よりも円形中心寄りの)他のスリット端からそれぞれ板周端まで連なる、第一スリットよりも長い他のスリット(22C,23C,24C・・・)群と、を含み、
隣り合う他のスリットの間に、張り出し板2の周囲外方を向くフィン2Fが形成される。
【0037】
(噴出ノズル3)
実施例1の噴出ノズル3は、回転機構を有した円錐状の先部31と、ナット状の基部32とが、張り出し板2の略中央部を挟んで誘導体1の軸方向に連結可能となっており、ワッシャ3W及び張り出し板2を挟んだ先部31と基部32とが互いに連結固定されることで、第一張り出し板2を板両面から挟持固定する構造となっている(図2)。これにより、第一張り出し板2の上面近傍に噴出ノズル3が形成され、先側の板面付近へ噴出流体が噴出されることで、余分な噴出流体の飛散や管体P内面への拡散ムラ、塗布ムラを抑制することができる。
【0038】
(回転機構)
また、噴出ノズル3の先部31は拡径した円錐体からなり、円錐体の拡径した上部に短筒状の短枠材が外枠形成され、この短枠材内にベアリングを内在した円柱状の回転子30が自由回転可能に嵌入保持され、さらに回転子30の上部にも短筒状の短枠材が外枠形成されて、回転子30を自由回転可能に嵌入保持している。これら上下の短枠材とその間に上下嵌入された回転子30とによって、自由回転可能な回転機構が形成される。回転子30の周面のうち片側面寄りの位置、及び前記片側面と反対側の片側面寄りの位置には、それぞれ、高さ方向及び周方向に位置をずらして近接配置された複数の噴出口3Hからなる噴出口3H群が形成される。各噴出口3Hは、円柱状の回転子30の径方向に対して一周方向に傾いた傾斜孔によって形成され、回転子30の内部に形成された噴出流体の最終貯留空間と連通してなる。この噴出ノズル3は図6に示す形態からなり、自噴射圧によって自動回転し、回転軸周りに広角噴射の方向を変えながら全周方向に広角渦状に噴射する。
【0039】
実施例1では前記噴出ノズル3よりも先側に誘導体の延伸先部たる接続棒12が延伸され、それ自体の中央部付近で前記誘導線材たる接続棒12の端部又は中間部に取り付けられ、管体P内部最小断面形状を含む板形状で側方周囲に張り出して配置された第二張り出し板4を具備してなる。具体的には、噴出ノズル3の上部の蓋状の短枠材の上面に、延設ナット33Nが同軸固定され、延設ナット33Nの上面側に延設ナット33Nよりも小径の細長六角柱外形からなる延長枠柱33が個設される。延長枠柱33は柱軸に沿って円形断面の軸孔が上端に開口して穿設されるとともに、固定用側孔が六角柱外形の一側面を側方貫通して前記軸孔と挿通する。そして延長枠柱33の軸孔内に、誘導体の先部を構成する接続棒12が挿入され、この接続棒12は、延長枠柱33を延長する形態で、前記固定用側孔に螺入した固定螺子33Bによって固定される(図6)。
【0040】
(第二張り出し板4)
第二張り出し板4は少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、管体P内で外方に張り出して第一張り出し板2の上方を覆って噴出ノズルからの噴出液体を遮蔽する。また第二張り出し板4は前記張り出し板4よりも小さい板形状であって少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に周縁部に沿って複数のスリット4Cが形成されてなり、管体P内に挿入された第二張り出し板2の周縁部が管体P内面に押されて弾性変形し、円形の板全体がたわんで管体P内で集束した集束状態S1/S2となり、
この集束状態S1/S2において、誘導線材の操作によって第二張り出し板が管体P内を移動することで、周縁部が弾性反力によって管内面を擦動して管内面処理を行う。
【0041】
(引き環5)
第二張り出し板4の中央上面には引導用の丸環からなる引き環5が固定される。具体的には、引き環5の台座形状の下部が接続棒12の先端に挿入固定され、この先端の固定部分にて第二張り出し板4を引き環5と第二固定具52とによって固定ワッシャ5Wを介して挟みこんでいる。
【0042】
(使用方法例)
上記実施例1の内面処理器は、図7〜9に示す各状態にして使用することができる。先ず図7に示すように、予め管内に設置した滑車BF付きのバルーンBに誘導線Rを滑車連結しておき、管体P側面の作業孔から引出したこの誘導線Rの一端を、第二張り出し板4の上面中央の引き環5と結び、同じく管体P側面の作業孔から抜出した誘導線Rの他端を作業孔内から引き出すことで、内面処理器を管内に導入することができる。ここで管体Pには予め、管内の中空部POに連なる作業孔を形成しており、この作業孔から内面処理器等の処理機械を挿入して管内面処理を遠隔操作する。
【0043】
そして図8,9に示すように、内面処理器を上下に管内移動させながら噴出ノズルから洗浄液として高圧水を内壁部に吹き付けることで、管内面の液体の噴霧・塗布を行う。その後、接続する洗浄液ホースをプライマー液ホースに交換した上で、図7に示す導入作業、及び図8,9に示す上昇、下降と共に噴出ノズルからプライマー液を内壁部に塗布する作業を行い、さらに接続するプライマー液ホースを接着剤ホースに交換した上で、図7に示す導入作業、及び図8,9に示す上昇、下降と共に噴出ノズルから洗浄液として高圧水を内壁部に塗布する作業を行う。すなわち図7〜9に示す作業を、噴出剤を交換しながら繰り返すことで、管内面の下地処理が完了する。
【0044】
この工法によれば、管頭部のキャップを必ずしも外したり管頭部から操作することなく、管の下半部の作業孔から管内面処理を連続して行うこととなるため、高所作業を伴わない省スペースでの安全且つ簡易な施工が可能となり、変電器や配線といった外部の障害物をよけたり取り外したりする必要がなく、簡易に管内面の処理を行うことができる。
【実施例2】
【0045】
図10〜図11、図14〜図15に示す実施例2の内面処理器は、噴霧ノズルが2流体の混合ノズルである点で実施例1と相違する。他の基本形態は同様である。
【0046】
(噴出ノズル3)
実施例2の噴出ノズル3は、噴出口フレーム3Fを上部に有したナット状の先部31Nと、先部31Nよりも一回り大きいナット状の基部30Bとが、第一張り出し板2の略中央部を挟んで誘導体1の軸方向に連結可能となっており、ワッシャ30W及び第一張り出し板2を挟んだ状態で先部31Nと基部30Bとが互いに連結固定されることで、第一張り出し板2を板両面から挟持固定する構造となっている(図10)。これにより、第一張り出し板2の上面近傍に噴出ノズル3が形成され、先側の板面付近へ噴出流体が噴出されることで、余分な噴出流体の飛散や管体P内面への拡散ムラ、塗布ムラを抑制することができる。
【0047】
また噴出ノズル3の先部31の上部には、上面周縁を面取りされた筒状の噴出口フレーム3Fが螺入され、噴出口フレーム3Fの上面には噴出穴が形成されるとともに、噴出穴内に筒状の芯材33が挿入固定されることで、芯材33と噴出穴外縁との間に円環状の噴出口3Hが形成される。噴出口3Hは前周方向に噴出流体を斜め上方へ噴出するものであり、噴出口フレーム3F内で第二流体L2とエアーAとが混合されることで、霧状の微粒子をもって第二流体L2をより広角に拡散させるものとしている(図10)。
芯材33は噴出穴に挿入固定される下部が凹状の湾曲面による縮径部で構成され、上部が断月の筒状体で構成される。筒状体の上面には接続棒12を挿入して接続する接続穴が設けられ、筒状体の側面には、接続穴内に挿入された接続棒12の下端を固定する固定螺子33Bが、側方貫通して螺入固定される(図10)。
【0048】
(使用方法例)
上記実施例2の内面処理器は、図14〜15に示す各状態にして使用することができる。図14に示すように、引き環による滑車構造を有さずに誘導線材を押し込むだけで上昇させ、引き環を有さずに誘導線材を引くだけで下降させる。またエアーと流体とによる2流体の混合圧入によって混合流体を噴出させながら移動するものとしている。
図7〜9のように予め管内に設置した滑車BF付きのバルーンBに誘導線Rを滑車連結しておく必要がないため、より簡易に導入できる。具体的には、ポールP側面の作業孔から内面処理器を上向きに投入し、誘導線材を作業孔から押しこむことで、内面処理器を管内に導入する。その他の基本構成および使用方法は実施例1と同様である。
【0049】
(他の実施形態)
図12、図13は、他の実施例の内面処理器として、スリットのラインを変えた他の張り出し板の形態例を示したものである。図12では各スリットとも同方向に湾曲した渦巻き状のラインに形成されており、各板における湾曲曲率を一定のものとしていると共に、第一張り出し板と第二張り出し板で湾曲方向を変えた反転形状となっている。
【0050】
図13で第五スリット25C、45Cのみを外周付近の一箇所である曲折点CPで曲折させ、かつ隣り合う第五スリット25C、45C間で、曲折方向を一方向ないし他方向に交互に変えている。これにより、曲折先部が扇状に拡がる第一形状のスリットと、曲折先部の側部が並行形成されて略方形状に伸びる第二形状のスリットとが、円形の張り出し板の周方向に交互に形成されることとなる。曲折点CPは中心から同一距離に設けられ、短位相、長位相からなる2種類の所定の位相をあけて、第五スリット25C、45Cの途中に設けられる。この曲折点CPは第三スリット23C、43Cのスリット端と同じ中心距離である。
【0051】
上記いずれの形態においても、その他の基本構成および使用方法は実施例1或いは実施例2と同様である。
【0052】
本発明の構成は以上であるが、本内面処理器は上述の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成要素の抽出、一部構成要素の削除、代替構成への置換、実施例間の各張り出し板の交換或いは/及び噴出ノズルの交換・置換のほか、対象物の変更、使用方法の手順の省略或いは順番の入れ替えといった各種変更を行うことができる。本発明はこれらの変更後の内面処理器及びその付属品、ないしこれらの少なくともいずれかを用いた内面処理方法を含む。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述の実施例では、本発明の管体の内面処理器を、縦型の中空コンクリートポールの中空管内面(ポール内面)にジャケット状の補強材を接着固定するための下地(洗浄、プライマー塗布及び接着剤塗布)処理に用いており、老朽化したコンクリートポールの建て替えを行うことなく簡易な作業で確実に補強することができる。前記と同様の中空縦型ポールにおいては、さらに補強材或いは修復材の貼付け処理、あるいは事前のケレン処理(研磨及び表面粗均一化処理)に用いてもよい。また対象物である管体Pについても、中空のものである限り、電柱などの縦型管のほか、横型管、屈曲管が含まれ、また上下水道管、ガス管や特殊配管等の各種パイプ或いはダクトが含まれる。
【符号の説明】
【0054】
11 第一誘導線材
2 第一張り出し板(張り出し板)
2C、C スリット
21C 第一スリット
22C 第二スリット
23C 第三スリット
24C 第四スリット
2F フィン
3 噴出ノズル
3P 連通管
4 第二張り出し板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体内に挿入して管体の内面処理を行う内面処理器であって、
管体内に導入し得る長尺の誘導体と、
それ自体の中央部付近で前記誘導体の端部又は中間部に取り付けられ、管体内部の断面形状を含む大きさの板形状で側方周囲に張り出した張り出し板を具備してなり、
前記張り出し板は、少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、
この周縁部に沿って複数のスリットが形成されてなり、内面処理器が管体内に挿入されたときに張り出し板の周縁部が管体内面に押されて弾性変形して張り出し板が管体内で集束した集束状態となり、
この集束状態において、誘導体の操作によって張り出し板が管体内を移動することで張り出し板の周縁部が弾性反力によって管内面を擦動して管内面処理を行うことを特徴とする管体の内面処理器。
【請求項2】
管体内に挿入して管体の内面処理を行う内面処理器であって、
管体内に導入し得る長尺の誘導体と、
それ自体の中央部付近で誘導体の端部又は中間部に取り付けられ、管体内部の最大断面形状を含む板形状で側方周囲に張り出した張り出し板と、
張り出し板よりもさらに先部に取り付けられて流体を側方周囲に噴出する噴出ノズルと、
噴出ノズルと連通しながら誘導体に沿って伸長し、噴出ノズルへ噴出流体を送通する連通管とを具備してなり、
前記張り出し板は、
少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、
この周縁部に沿って複数のスリットが形成されてなり、管体内に挿入された張り出し板の周縁部が管体内面に押されて変形し、張り出し板全体が管体内で集束した集束状態となり、
この集束状態において、連通管に圧入した噴出流体を噴出ノズルから管体内に噴出し、それと同時又はその後に誘導体の操作によって張り出し板が管体内を移動することで、集束状態の張り出し板が噴出された噴出流体を管内面に流動塗布し得ることを特徴とする管体の内面処理器。
【請求項3】
張り出し板は円形外形の弾性板からなり、前記複数のスリットが、張り出し板内の同心円上に離間配置されたスリット端からそれぞれ板周端へ放射状に拡がってなる請求項1または2に記載の管体の内面処理器。
【請求項4】
張り出し板は略中央位置で誘導体に貫通固定された円形外形の弾性板からなり、
前記複数のスリットが、
張り出し板内の同心円上に離間配置された第一スリット端からそれぞれ板周端まで放射状に拡がる第一スリット群と、
張り出し板内の前記同心円よりも小径の同心円上に離間配置された他のスリット端からそれぞれ板周端まで連なる、第一スリットよりも長い他のスリット群と、を含み、
隣り合う前記他のスリットによって、張り出し板2の周囲外方を向くフィンが形成される請求項1、2または3のいずれか記載の管体の内面処理器。
【請求項5】
前記噴出ノズルは、張り出し板の略中央部を挟持固定すると共に張り出し板よりも先側において側部を向いた噴出口を有してなり、
さらに噴出ノズルよりも先側に誘導体が延伸され、
それ自体の中央部付近で前記誘導体の端部又は中間部に取り付けられ、管体内部最小断面形状を含む板形状で側方周囲に張り出して配置された第二張り出し板を具備してなり、
第二張り出し板は少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に、
管体内で外方に張り出して第一張り出し板の上方を覆って噴出ノズルからの噴出液体を遮蔽する請求項1,2,3,又は4のいずれかに記載の管体の内面処理器。
【請求項6】
前記第二張り出し板は前記張り出し板よりも小さい板形状であって少なくともそれ自体の周縁部が弾性材で構成されると共に周縁部に沿って複数のスリットが形成されてなり、管体内に挿入された第二張り出し板の周縁部が管体内面に押されて弾性変形し、張り出し板全体が管体内で集束した集束状態となり、
この集束状態において、誘導体の操作によって第二張り出し板が管体内を移動することで、周縁部が弾性反力によって管内面を擦動して管内面処理を行う請求項5記載の管体の内面処理器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−32617(P2013−32617A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167838(P2011−167838)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(511181050)有限会社丸甚製作所 (1)
【Fターム(参考)】