説明

管更生材及び該管更生材を用いた既設管更生工法

【課題】既設管の低温度の影響なく、硬化状態や設置状態の不良を的確に回避することのできる管更生材及び該管更生材を用いた既設管更生工法を得ること。
【解決手段】管更生材10の外側に最外層部材として、基本構成部18よりも熱伝導率の低い断熱層20を設けた。これにより、補修対象である既設管内に設置された状態において、基本構成部18と既設管100との間に熱伝導率の低い断熱層20が介在しているので、低温の既設管温度の影響を低減することが可能となり、従来の管更生材に比し、硬化不良や設置状態不良等の発生が減少し、完成した更生管の品質の信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未硬化状態で既設管内に導入され、既設管内で硬化される筒状の管更生材、更に、管更生材を用いた既設管更生工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国では高い普及率で下水道が設置されているが、下水管渠(かんきょ)の老朽化に対する維持管理が重要な事業となっている。一般に下水管渠などの地中に埋設される管については、経年変化、例えば、結合部のズレによる段差の発生や径の変化などが生じることは不可避である。また、特に変形が生じなくても老朽化に伴って交換が必要になり、更には、管路を大型化するために径の大きな管への移行が必要となる。この様な種々の事情から、既設管は所定の時期に何らかの補修が必要となるのが現状である。
【0003】
この既設管の補修技術として、地面を非開削のままで、既設管を更生させる方法、例えば、未硬化状態の管更生材を反転させながら、或いは引き込みによって既設管内に導入し、次いで圧縮空気等により拡径して管路内壁面に密着させ、その後、そのライニング管の内側で光照射や熱照射によって樹脂を硬化させる更生工法が知られている。
【0004】
上述のような管更生材による既設管の補修では、フェルトやガラス繊維マットなどの基材に樹脂を含浸させて、筒状の基本構成部が形成され、これを既設管に導入し、加圧空気等を用いて拡径し、既設管に密着させた状態で、硬化させて既設管中に新管(更生管)を形成するものである。
【0005】
例えば、特許文献1(特開平6−246830号)や、特許文献2(特開2004−188818号)には、その様な硬化性のライニング管を反転させて、加圧空気や温水によって進行させ、既設管に導入した後、熱や光により硬化させて管の補修を行うライニング工法が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3(特許第4076188号公報)には、ダクトのライニング方法として、熱可塑性物のフィラメントと補強繊維のフィラメントとを有する複合材料層、更に、この層の外側の熱可塑性材料層を含むライナーをダクト内に挿入する工程を含む方法が開示されている。そして、上記ライナーを加熱して熱可塑性物のフィラメントを溶融し、その後ライナーを内側から加圧してダクトに接触させる工程、更に、このライナーのダクトへの接触状態でライナーを硬化させることによってダクトの修復を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−246830号公報
【特許文献2】特開2004−188818号公報
【特許文献3】特許第4076188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来の加熱工程や光照射工程を伴う既設管の場合、既設管の内部において、管更生材の温度を所望の温度まで上昇させ、また、所望の温度状態を所定時間維持しなければならない。すなわち、熱硬化性の樹脂が含浸されている管更生材の場合には、硬化までの過程で管内への熱水や熱風、或いは蒸気の噴射や吹き込みなどによる加熱作業を伴い、光硬化性の樹脂の含浸されている管更生材の場合には紫外線ランプ等による光照射作業を伴うものである。
【0009】
そして、この様な硬化作業を適切に行うためには、管更生材に含浸されている樹脂を的確な温度、例えば、70から80℃に設定し、また、温度上昇させなければならない。すなわち、加熱による的確な硬化状態の確保においては、適切な温度上昇と温度維持が必要であるが、既設管は、地中に埋設されており、地中温度や地下水の影響により、一般に既設管の温度は15℃〜18℃程度である。また、寒冷時には更に低いという状況がある。
【0010】
したがって、この既設管の低い温度の影響を受けて、熱硬化性の管更生材では硬化不良が生じるおそれもある。また、光硬化性の管更生材の場合でも、管更生材は所定範囲の波長の光の照射を受けて硬化反応が始まるが、その迅速な反応を確保するためには、光の照射を受ける表面の温度が、約30〜50℃となることが望ましい。したがって、光硬化性の管更生材の場合であっても、硬化作業時には拡径されて、既設管に密着した状態となることから既設管の温度の影響を受け、状況によっては硬化不良となるおそれもあった。
【0011】
更に、熱可塑性の管更生材では、一般に、熱可塑性材料で形成した繊維と芯材としてのガラス繊維等を編み合わせたり、熱可塑性樹脂でコーティングしたガラス繊維を編むなどして筒状体を形成し、管更生材の基本構成部分が形成される。そして、これを既設管に導入し、拡径すると共に加熱して(150℃〜200℃程度)、熱可塑性材料部分を溶融させ、ガラス繊維などの芯材と一体化させ、最終的に温度の降下により降下して更生管が完成する。したがって、熱可塑性の管更生材の場合、上述の熱硬化性の管更生材の場合よりも高温の状態が必要であり、同様に低温の既設管の温度の影響を抑制しなければならない。したがって、十分な温度上昇が得られない場合には、的確な溶融状態が得られず、設置状態の不良を生じるおそれがあった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、既設管の温度の影響による管更生材の硬化や設置状態の不良を的確に回避することのできる管更生材及び該管更生材を用いた既設管更生工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に係る管更生材は、
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成することによって既設管の補修を行う筒状の管更生材において、
最外層部材として、前記管更生材の他の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱層を設けたことを特徴とする。
【0014】
かかる構成の管更生材によれば、補修対象である既設管内に設置された状態において、熱伝導率の低い断熱層が既設管側の最外層に存在するので、低温の既設管温度の管更生材側への影響を低減することが可能となる。すなわち、管更生材が既設管内周面に密着された状態となったときも断熱層を介して既設管に接することとなり、既設管の温度の影響を極力抑制することができる。したがって、従来の管更生材に比し、硬化不良や設置状態不良等の発生が減少し、完成した更生管の品質の信頼性が向上する。
【0015】
請求項2に係る管更生材は請求項1に記載の管更生材において、
前記断熱層は、ポリエチレンにて形成した層と、ナイロンにて形成した層とを含むことを特徴とする。この構成は、請求項1の構成を達成するための具体的構成例であり、断熱性を有する2種類の層を用い、且つ比較的、耐熱性に優れるナイロン層を合わせることで、良好な断熱作用を確保することができる。
【0016】
請求項3に係る管更生材は請求項2に記載の管更生材において、
前記断熱層は、ナイロンにて形成した層を中間層とし、その内・外の層をポリエチレンにて形成したとしたことを特徴とする。この構成により、耐熱性に優れるナイロン層が内・外表面に存在することにより、断熱層の作用を安定して発揮させることが可能となっている。
【0017】
請求項4に係る管更生材は請求項1に記載の管更生材において、
前記断熱層は、ポリエステルにて形成され、一部の層又は全体をフェルト状の層として構成したことを特徴とする。この様な少なくとも1部の層をフェルト形態とすることにより、簡単な構成によって適度に空気層を形成することができ、断熱作用をより適切に確保することが可能となる。
【0018】
請求項5に係る管更生材は請求項2から4の何れか1項に記載の管更生材において、
前記断熱層は、内側面、外側面の双方又は何れか一方に安定な無機微粒子を貼着させて形成されたことを特徴とする。これにより、管更生材の本体との間及び/又は既設管との間に、更に、空気を確保することが可能となり、断熱作用を得ることができる。
【0019】
請求項6に係る管更生材を用いた既設管更生工法は、
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成することによって既設管の補修を行う管更生材であって、最外層部材として、前記管更生材の他の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱層を設けて成る管更生材を既設管内に一方の端部側から引き込み導入する管更生材導入工程と、前記導入した断熱層付き管更生材を前記既設管内で拡径する拡径工程と、前記拡径した断熱層付き管更生材を硬化させる管更生材硬化工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、既に、最外層に断熱層を形成した管更生材を既設管に引き込み導入し、既知の拡径、硬化の工程を行うことで、既設管と管更生材との間で断熱層を介在させ既設管の低温状態の影響を低減することができる。したがって、硬化不良や溶融不良による劣化のない高品質の更生管を完成させることができ、信頼性の高い既設管更生工法を得ることができる。
【0021】
請求項7に係る管更生材を用いた既設管更生工法は、
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成することによって既設管の補修を行う管更生材であって、最内層部材として、前記管更生材の他の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱層を設けて成る管更生材を既設管内に反転導入する管更生材導入工程と、前記反転導入した断熱層付き管更生材を前記既設管内で拡径する拡径工程と、前記拡径した断熱層付き管更生材を硬化させる管更生材硬化工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、管更生材は、予め、最内層として断熱層を有するように構成されているので、これを反転させつつ既設管に導入するいわゆる反転導入作業を行うことが可能となる。そして、設置後の管更生材の作用については、請求項6による更生工法と同様であり、品質の高い更生管を迅速に設置することが可能となっている。
【0023】
請求項8に係る管更生材を用いた既設管更生工法は、
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成する管更生材を既設管内に導入するより前の工程として、拡径時に前記既設管の内側面に密着可能な外径を有し、前記管更生材の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱性筒状体を既設管内に導入する断熱性筒状体導入工程を行い、該断熱性筒状体導入工程の後に、前記管更生材を前記断熱性筒状体内に引き込み又は反転導入し、前記管更生材及びその外側に存する断熱性筒状体を拡径し、その後、前記管更生材を硬化させることを特徴とする。
この更生工法は、断熱層、管更生材の本体部分を別々にかつ順番に既設管に導入するものであり、この様な工程によっても断熱層付き管更生材の設置が可能であり、その作用効果は請求項5,6と同様である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る管更生材及び該管更生材を用いた既設管更生工法によれば、管更生材と既設管との間に断熱層が介在することから、既設管の低い温度の影響を低減することができ、管更生材の硬化状態や設置状態の不良を的確に回避することができる。これにより、更生管の完成過程において、樹脂層を温度調整によって的確に硬化させ或いは溶融させる必要のある既設管更生作業の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る管更生材の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る管更生材の構成を示す概略斜視図である。
【図3】図1,図2に示した実施の形態に係る管更生材を下水道本管へ設置する際の引き込み動作説明図である。
【図4】管更生材の引き込み動作後、拡径工程が行われた状態を示す概略部分断面図である。
【図5】管更生材の既設管への反転導入を示す説明図である。
【図6】管更生材の既設管への更に他の導入動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて実施の形態について詳細に説明する。図1及び図2は、本発明に係る管更生材の実施の形態を示しており、図1は管軸方向の断面図、図2は部分省略斜視図である。なお、本実施の形態では、管更生材は、基材に熱硬化性の樹脂を含浸させて、含浸樹脂層を形成し、その内・外周に被覆フィルムを設置した管更生材を例に取っている。また、図において、各層の厚さの比率は、図の明瞭化のため実際の縮尺とは異なっている。
【0027】
図示のように、管更生材10は、フェルトやガラス繊維にて形成された筒状の基材に熱硬化性樹脂を含浸させた含浸樹脂層12と、その内・外周面に密着して装着された内・外周被覆フィルム14,16を有する基本構成部18を備えている。なお、基本構成部18に含浸させる硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂やビニエステル樹脂などが上げられる。
【0028】
そして、特徴的なことは、この基本構成部18の外周側に最外層として断熱層20が設けられていることである。この断熱層20は、例えば、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステルなどの材料で形成することが可能であり、少なくともその熱伝導率は、基本構成部18よりも低く形成される。なお、断熱層20の厚さは、通常0.5mm〜1mm程度に設定される。この断熱層20は、基本構成部18の外周被覆フィルム16と接着性の確保できる材料構成とすることで、管更生材10全体の設置状態の安定性も確保される。
【0029】
また、図示していないが、断熱層20を2多層の積層構造とし、より耐熱性の高いナイロンを内側に設置し、外側にポリエチレン層を形成する構成とすることなども可能である。更に、ナイロンにて形成した層を中間層とし、その内・外の層をポリエチレンにて形成することで、断熱層の作用を安定して発揮させることも可能となる。また、全体をポリエステル材料にて形成し、一部の層又は全体をフェルト状の層として構成することも可能である。この様に、少なくとも1部の層をフェルト形態とすることにより、簡単な構成によって適度に空気層を形成することができ、断熱作用をより適切に確保することが可能となる。
【0030】
また、より高い温度に耐え得るようにするために、断熱層の構成材として、耐熱性に優れた樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等を採用することも好適である。
【0031】
加えて、より断熱性能を向上させる態様として、安定な無機微粒子を積層断熱材の中間に設けることができる。無機微粒子は、ポーラスで中空の発泡性粒子を採用し、それにより、断熱層の中に断熱性の良い空気層を形成することも好適である。また、充填剤(フィラ)や無機顔料など吹き付け貼着することで、断熱層20の内表面に空気部分を確保することができ、断熱作用をより向上させることも可能である。
【0032】
本実施の形態は、上記の様な熱硬化性の管更生材の場合に限られず、光硬化性の管更生材や熱可塑性の管更生材の場合にも適用可能である。熱可塑性の管更生材の場合には、上述のように、より高熱の状態が求められることから上記無機微粒子を吹き付けて貼着させた断熱層が好適である。なお、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブタジエン等である。
【0033】
なお、上記基本構成部18の厚さは、設置される既設管の条件によって種々異なるが、通常は、3mmから30mm程度である。
【0034】
図3は、上記図1及び図2に示した管更生材10を補修対象である下水道本管100内に導入する一例を示している。本例は、補修対象の既設管として下水道本管100の例を示している。図示のように、所定間隔を置いて設置されたマンホール600と700との間には下水道本管100が配置されている。この下水道本管10を本発明工法を用いて補修する場合を例にして説明する。
【0035】
図示のように、例えば、熱硬化性樹脂を含浸している管更生材10は、収納ケース11内に巻回収納された状態から、順次引き出され、未硬化状態で、ワイヤー500に固定されて矢印800方向に引き込まれる。そして、この管更生材10の導入工程の後、管更生材10を既知の手法、例えば、加圧空気を内部に吹き込むことなどにより拡径し、管更生材10の外周面を下水道本管100の内周面100aに密着させるものである。
【0036】
図4は、管更生材10が拡径され下水道本管100に密着している状態の部分断面図であり、図示のように、この拡径状態で、例えば、管内にホースを導入して、そのホースの所定箇所から熱水を噴射したり、管内での蒸気の噴射更には、熱風の吹き込みなどにより、管の内部から加熱し(符号200)、硬化させる硬化工程が行われる。この様な管更生材10を用いた既設管の更生工法によれば、管更生材10が補修対象である下水道本管100内に設置された状態において、少なくとも樹脂の含浸された基本構成部18よりも熱伝導率の低い断熱層20が、下水道本管100との間に存在する。
【0037】
すなわち、図4からも理解されるように、管更生材10が下水道本管100内周面100aに密着したときも基本構成部18の含浸樹脂層12は、断熱層20及び外周被覆フィルム16を介して下水道本管100に接している。したがって、10数度という低温の下水道本管100の温度(符号300)の影響は、この断熱層20によって効果的に低減され、加熱による温度上昇が的確に確保され、温度上昇不十分による硬化不良や設置状態不良等の発生が回避される。
【0038】
次に、図5は、管更生材10の下水道本管100内への設置動作の他の例を示している。図示のように、断熱層付きの管更生材10を反転導入により、設置するものである。この反転導入を行う場合、管更生材10の形成は、図1,図2の場合とは異なり、断熱層20は予め、管更生材10の最内層として形成されている。すなわち、内周被覆フィルム14の外表面に付着されている。この状態で、下水道本管100内に反転させつつ導入するものである。
【0039】
この状態から、必要に応じて拡径動作が行われ、管更生材の設置が終了し、最終的な加熱等による硬化工程が行われる。そして、この断熱層20付きの管更生材10の作用については、上記図3に示した動作によって得られるものと同様であり、その作用も上述のものと同様である。
【0040】
次に、図6は、管更生材10の下水道本管100内への設置動作の他の例を示している。図示のように、断熱層付きの管更生材10を一体として導入するのではなく、まず、最外層となる断熱層20を先に導入している。この断熱層20の導入は、通常の引き込み、或いは反転導入など一般的な手法を用いることで足りる。そして、この断熱層20の導入工程後、この断熱層20を必要に応じて拡径した状態とし、その内部に基本構成部18を反転導入するものである。この設置動作によって得られる断熱層20を最外層として備える管更生材10の設置状態は、上記図3に示した動作によって得られるものと同様であり、その作用も上述のものと同様である。
【0041】
なお、本発明は、上述の実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の用紙の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、断熱層20を構成するための材料は、例示したものに限られず、基本構成部18よりも熱伝導率の低いものを種々選択することが可能である。
【0042】
また、断熱層20をある程度弾力性のある構成とすることも可能であり、その場合、断熱作用による管更生材の品質の向上に加え、耐振動性の向上を図ることができる。すなわち、既設管側から伝達される振動を断熱層20の弾力性により緩和することが可能である。
【0043】
また、上記実施の形態では、基本構成部18には、内・外周に被覆フィルムを設けた例を示したが、このフィルムは常に必要とされるものではなく、本発明は、被覆フィルムの設けられない管更生材においても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 管更生材
12 含浸樹脂層
14 内周被覆フィルム
16 外周被覆フィルム
18 基本構成部
20 断熱層
100 下水道本管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成することによって既設管の補修を行う筒状の管更生材において、
最外層部材として、前記管更生材の他の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱層を設けたことを特徴とする管更生材。
【請求項2】
前記断熱層は、ポリエチレンにて形成した層と、ナイロンにて形成した層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の管更生材。
【請求項3】
前記断熱層は、ナイロンにて形成した層を中間層とし、その内・外の層をポリエチレンにて形成したとしたことを特徴とする請求項2に記載の管更生材。
【請求項4】
前記断熱層は、ポリエステルにて形成され、一部の層又は全体をフェルト状の層として構成したことを特徴とする請求項1に記載の管更生材。
【請求項5】
前記断熱層は、内側面、外側面の双方又は何れか一方に安定な無機微粒子を貼着させて形成されたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の管更生材。
【請求項6】
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成することによって既設管の補修を行う筒状の管更生材であって、最外層部材として、前記管更生材の他の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱層を設けて成る管更生材を既設管内に一方の端部側から引き込み導入する管更生材導入工程と、
前記導入した断熱層付き管更生材を前記既設管内で拡径する拡径工程と、
前記拡径した断熱層付き管更生材を硬化させる管更生材硬化工程と、
を含むことを特徴とする既設管更生工法。
【請求項7】
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成することによって既設管の補修を行う筒状の管更生材であって、最内層部材として、前記管更生材の他の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱層を設けて成る管更生材を既設管内に反転導入する管更生材導入工程と、
前記反転導入した断熱層付き管更生材を前記既設管内で拡径する拡径工程と、
前記拡径した断熱層付き管更生材を硬化させる管更生材硬化工程と、
を含むことを特徴とする既設管更生工法。
【請求項8】
補修対象の既設管内に導入された後、硬化されて前記既設管内に更生管を形成する筒状の管更生材を既設管内に導入するより前の工程として、
拡径時に前記既設管の内側面に密着可能な外径を有し、前記管更生材の構成部材よりも熱伝導率の低い断熱性筒状体を既設管内に導入する断熱性筒状体導入工程を行い、
該断熱性筒状体導入工程の後に、前記管更生材を前記断熱性筒状体内に引き込み又は反転導入し、
前記管更生材及びその外側に存する断熱性筒状体を拡径し、
その後、前記管更生材を硬化させることを特徴とする既設管更生工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−179525(P2010−179525A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24029(P2009−24029)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(595053777)吉佳株式会社 (49)
【Fターム(参考)】