説明

管路構造及び施工方法並びにスリーブ及び製造方法

【課題】管路の内部を流れる水の熱を活用することができる管路構造と、この管路構造を施工する方法、及びスリーブと、このスリーブの製造方法を提供する。
【解決手段】管路構造は、既設管Bの内部に、水が流れる内周面を有する筒体Cが形成され、該筒体の内周面よりも既設管側で且つ長手方向に熱交換媒体を流通させる通路Dが形成されている。代表的なスリーブAは、水が流れる管路を構成する既設管Bの内部に該既設管の長手方向に配置される合成樹脂からなるスリーブAであって、既設管Bの内形に対応した外形を有する外周面1aと、水が流れる内周面1bと、を有し、外周面1aと内周面1bとの間で且つ長手方向に流通路となる孔4を形成する。スリーブAを構成する合成樹脂が熱可塑性樹脂である。孔4が水が流れる部分に対応した部位に形成されている。孔4が複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の内部を流れる水の熱を活用することができる管路構造と、この管路構造を施工するための施工方法と、水の熱を活用するためのスリーブと、このスリーブを製造するための方法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に水が流れる管路として、下水道用の管路や工業用水用の管路或いは農業用水用の管路、等が敷設されている。これらの管路の内部を流れる水の温度は四季を通して大きく変動することがなく、略一定の値を保持している。例えば、下水道用の管路を流れる水の温度は、夏季にあっては外気温度よりも低く、冬季にあっては外気温度よりも高い。このため、管路の内部を流れる水との温度差を利用した熱交換を行うことで新たなエネルギー源とすることが考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された発明は、下水熱採熱設備と下水熱利用システムに関するものである。この発明では、採熱設備は下水道管の外周のうち少なくとも上方を被覆するジャケット状に配設されており、この採熱設備は、熱原水が通流し高熱伝導率材料で形成された採熱管と、採熱管の間隙及び周囲に充填された保護材とを有している。また採熱管は、下水道管の長手方向に平行に複数配設された直管と、直管同士を接続するベント管によって構成されている。
【0004】
上記の如く構成された採熱設備では、採熱管が下水道管の外周に配設される。このため、採熱管が下水に直接接触することがないため、メンテナンスが不要となり維持コストが低減できるという効果を有する。また、既設の下水道管に設置する場合には、周囲の地盤を掘削して開放した下水道管の外周に採熱管を配設すると共に、所定の部位に保護材を充填することで良く、工事が容易であるという効果も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−241226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された発明は上記の如き特徴を有する。しかし、下水道管を介して下水の熱を取得するため、下水の熱を充分に利用し得ない虞がある。
【0007】
本発明の目的は、管路の内部を流れる水の熱を活用することができるスリーブを提供すると共に該スリーブの製造方法と、このスリーブを管路の内部に配置する工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る管路構造は、水が流れる管路の構造であって、既設管の内部に、水が流れる内周面を有する筒状の流水層が形成され、前記流水層の内周面よりも既設管側で且つ長手方向に熱交換媒体を流通させる通路が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
上記管路構造に於いて、前記水が流れる管路が、下水道管路であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る第1の施工方法は、上記何れかの管路構造を施工する施工方法であって、既設管の長手方向に、下方側内周面に沿って熱交換媒体を流通させる通路が形成された流通部材を配置し、前記流通部材が配置された既設管の内部に、可撓性を有し且つ前記流水層を構成する筒体を、外周面が既設管の内周面に干渉することがないように縮径して挿入し、その後、挿入された筒体を復元させて該筒体の外周面と既設管の内周面とによって前記流通部材を挟み込むことを特徴とするものである。
【0011】
また、第2の施工方法は、上記何れかの管路構造を施工する施工方法であって、水が流れる内周面と、該内周面よりも外周面側に長手方向に形成された熱交換媒体を流通させる通路と、を有し且つ可撓性を有する前記流水層を構成する筒体を用意し、前記筒体を、既設管の内部に外周面が既設管の内周面に干渉することがないように縮径して挿入し、その後、挿入された筒体を復元させて該筒体を既設管の内面に配置することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る第1のスリーブは、水が流れる管路を構成する既設管の内部に該既設管の長手方向に配置される合成樹脂からなるスリーブであって、水が流れる内周面と既設管の内周面と対向する外周面とを有するスリーブ本体を有し、前記スリーブ本体の外周面の長手方向に熱交換媒体を流通させる通路を一体的に形成したものである。
【0013】
また、第2のスリーブは、水が流れる管路を構成する既設管の内部に該既設管の長手方向に配置される合成樹脂からなるスリーブであって、配置すべき既設管の内形に対応した外形を有する外周面と水が流れる内周面とを有するスリーブ本体を有し、前記スリーブ本体の外周面と前記内周面との間で且つ長手方向に熱交換媒体を流通させる通路を形成したものである。
【0014】
上記スリーブに於いて、前記合成樹脂が、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0015】
また、上記何れかのスリーブに於いて、前記熱交換媒体を流通させる通路が、管路に於ける水が流れる部分に対応した部位に形成されていることが好ましい。
【0016】
また、上記何れかのスリーブに於いて、前記熱交換媒体を流通させる通路が、1又は複数形成された孔によって構成されていることが好ましい。
【0017】
また本発明に係る第1のスリーブの製造方法は、上記何れかのスリーブを製造するための方法であって、合成樹脂を押出成形する際に熱交換媒体を流通させる通路を一体的に成形することを特徴とするものである。
【0018】
また本発明に係る第2のスリーブの製造方法は、上記何れかのスリーブを製造するための方法であって、スリーブに於ける熱交換媒体を流通させる通路の形成部位に予め設定された長さを持ったパイプを配置しておき、合成樹脂により前記パイプを一体化することを特徴とするものである。
【0019】
また本発明に係る第3のスリーブの製造方法は、上記何れかのスリーブを製造するための方法であって、配置すべき管路の内形に対応した外形と予め設定された肉厚を持った長尺状の筒体を成型しておき、前記筒体の内面を長手方向に切削して熱交換媒体を流通させる通路を形成した後、少なくとも前記通路の開放部分を合成樹脂シートによって覆うと共に前記筒体と一体化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
上記課題を解決するために本発明に係る管路構造は、既設管の内部に、水が流れる内周面を有する筒状の流水層が形成されており、この流水層の内周面よりも既設管側で且つ長手方向に熱交換媒体を流通させる通路(以下「流通路」という)が形成されているため、流水層を通して水と熱交換媒体との熱交換を行うことができる。
【0021】
また、水が流れる管路を下水道管路とすることによって、下水の持つ熱を有効に活用することができる。
【0022】
また本発明に係る第1の施工方法では、既設管の長手方向で下方側内周面に沿って流通路が形成された流通部材を配置し、この既設管の内部に、可撓性を有し且つ前記流水層を構成する筒体を、外周面が既設管の内周面に干渉することがないように縮径して挿入した後、挿入された筒体を復元させて該筒体の外周面と既設管の内周面とによって前記流通部材を挟み込むことができる。
【0023】
また、第2の施工方法では、水が流れる内周面と、該内周面よりも外周面側に長手方向に形成され流通路と、を有し且つ可撓性を有する前記流水層を構成する筒体を用意し、この筒体を縮径して既設管の内部に挿入した後、挿入された筒体を復元させることで配置することができる。
【0024】
本発明に係る第1のスリーブでは、水が流れる内周面と既設管の内周面と対向する外周面とを有するスリーブ本体を有し、該スリーブ本体の外周面の長手方向に流通路を一体的に形成したので、通路を直接既設管の内周面に接触させた状態で配置することによって、内周面に沿って流れる水の熱をスリーブを介して熱交換媒体に伝えることができる。
【0025】
また、第2のスリーブでは、スリーブ本体に於ける外形が既設管の内形に対応した外周面と内周面との間で且つ長手方向に形成された流通路を有する。このため、スリーブを目的の管路の内部に配置して水を流すと共に流通路の内部に熱交換媒体を流通させることで、水と熱交換媒体との間で熱交換を行うことができる。従って、熱交換媒体を介して管路の内部を流れる水の熱を活用することができる。
【0026】
特に、スリーブを熱可塑性樹脂によって成形することで、該スリーブを加熱することによって容易に変形させることができる。このため、周長が小さくなるように、断面を凹状に折り畳んでの搬送が可能となり、効率良く目的の現場まで搬送することができ、且つ現場で設置することができる。
【0027】
また、スリーブに於ける流通路の形成部位を管路に於ける水が流れる部分に対応させることによって、水との熱交換を効率良く行うことができる。
【0028】
また、スリーブに形成する流通路を複数の孔によって形成することで、個々の孔の断面積を小さくすることが可能となり、スリーブに於ける外周面と内周面との間の寸法(スリーブの厚さ)を小さくすることができる。特に、流通路を構成する際に、径の小さい複数の孔を利用することによって流通路全体の表面積(熱交換面積)を大きくすることが可能となり、効率の良い熱交換を実現できる。
【0029】
本発明に係る第1のスリーブの製造方法では、スリーブを押出成形する際に流通路を同時に成形することができるため有利である。
【0030】
また、本発明に係る第2のスリーブの製造方法では、スリーブに於ける流通路の形成部位にパイプを配置して成形することによって、該パイプを外周面と内周面との間に一体化させてスリーブを製造することができる。
【0031】
また、本発明に係る第3のスリーブの製造方法では、予め成形された筒体の内面を切削して長手方向に連続した流通路を構成する溝を形成するので、溝を所望の断面形状に形成することができるため、該溝の開放部分の寸法を大きくとることができる。このため、溝の開放部分を合成樹脂シートを覆って流通路を形成したとき、該流通路は内周面に対し、大きな寸法で対向すると共に、一定の厚さの隔壁を介して対向することとなる。このため、高い熱交換効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施例に係るスリーブの構成を説明する図である。
【図2】スリーブの他の例を説明する図である。
【図3】スリーブを管路の内部に配置する際に畳んだ状態を説明する図である。
【図4】本実施例に係る施工方法を説明する図であり、スリーブをマンホール間に配置した状態を説明する模式図である。
【図5】スリーブの端部に開放した孔の接続状態を説明する正面図であり、図4のV−V矢視図である。
【図6】スリーブの端部に開放した孔の接続状態を説明する側面図である。
【図7】管路構造の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る管路構造、施工方法及びスリーブ並びにスリーブの製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
先ず、本発明に係る管路構造の一例について図7により簡単に説明する。本発明に係る管路構造は、水が流れる面と管路を構成する既設管との間に流通路を構成したものであり、この流通路に熱交換媒体を流通させることによって、管路を流れる水との間で熱交換を実現するものである。
【0035】
本発明に於いて、水が流れる管路としては、下水道用の管路、上水道用の管路、農業用水用の管路、工業用水用の管路を含む種々の水流用の管路があり、何れも好ましく適用することが可能である。特に、管路として下水道管路を利用した場合、家庭からの廃水が保有する熱を活用することが可能となり、好ましい。また、管路を構成する既設管の形状は円筒形、角筒形等の形状があり、何れの形状であっても適用することが可能である。
【0036】
図7に於いて、水が流れる管路は、該管路を構成する既設管Bの内部に水が流れる内周面を有する流水層を構成する筒体Cが配置され、該筒体Cの内周面よりも既設管B側で且つ長手方向に流通路Dが形成されている。本実施例に於いて、既設管Bは鉄筋コンクリート管によって構成されている。
【0037】
また、流水層を構成する筒体Cとしては、既設管の内周面を補修する際に用いられる各種のライニング材や後述するスリーブを含む種々の筒体を用いることが可能である。
【0038】
また、流通路Dとしては、複数のチューブを一列に並べて一体化させると共に、一体化させた複数のチューブを袋に収容して扁平な帯状に形成したものを利用している。このような流通路Dは、合成樹脂の押出成型や、合成樹脂製のチューブを並べて融着或いは接着、又は結束することで構成することが可能である。また、流通路Dは前記した構造に限定するものではなく、複数のパイプを既設管Bの内周面に沿って配置して構成することも可能である。
【0039】
しかし、本発明に係る管路構造は、図7に示す構造に限定されるものではなく、筒体Cが所定の厚さを有しており、この内部に流通路Dが形成されたものを利用することもある。即ち、後述するようなスリーブAを用いて構成したものであっても、本発明の管路構造を実現することが可能である。
【0040】
図7に示す管路構造を施工する方法としては、流通路Dを構成する複数のチューブを袋に収容して扁平な帯状に形成した部材、或いは複数のパイプを既設管Bの内周面に沿って長手方向に配置しておき、その後、可撓性を有する筒体を縮径して既設管Bの内部に挿入して形状を回復させると共に硬化させることで行われる。そして、既設管Bと、形状を回復した筒体Cとによって流通路Dを挟み込むことで管路構造を構成することが可能である。
【0041】
上記の如く、既設管Bの内部に流通路Dを配置した後、筒体Cを挿入する場合、筒体Cは可撓性を有する含浸基材に熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含浸させて構成したものを用いることが好ましい。このように構成された筒体Cでは、該筒体Cの形状を復元する際に、内部に加圧空気を供給したとき、流通路Dと既設管Bの内周面との間に形成された隙間を充填することが可能となる。そして、筒体Cの形状を回復させた後、該筒体Cを加熱し或いは光を照射して硬化させることで、硬化した筒体Cと既設管Bとの間に流通路Dを保持することが可能となる。
【0042】
図7に示す管路構造を施工する際に、筒体Cの外周面に流通路Dを一体的に形成したものを利用することも可能である。この場合、筒体Cを既設管Bの内部に挿入して形状を復元させると共に硬化させることで施工することが可能である。特に、この施工方法を実施する際の筒体Cは、熱可塑性樹脂によって構成したものでも良いが、前述した含浸基材に熱硬化性樹脂を含浸させて構成したものであることが好ましい。
【0043】
次に、本発明に係るスリーブについて説明する。本発明に係る第1のスリーブは、合成樹脂からなり、水が流れる内周面と既設管の内周面と対向する外周面とを有するスリーブ本体を有し、該スリーブ本体の外周面の長手方向に流通路を一体的に形成したものである。
【0044】
スリーブ本体の外周面に一体的に形成された流通路は、該流通路がスリーブ本体の外周面から突出した状態であって良く、或いは流通路の外面がスリーブ本体の外周面と同一面内にあっても良い。流通路がスリーブ本体の外周面から突出して形成されたスリーブでは、図7に示す管路構造を実現することが可能である。
【0045】
本発明に係る第2のスリーブは、合成樹脂製のスリーブからなり、スリーブ本体の外周面と内周面との間であって該スリーブの長手方向に流通路が形成されている。そして、このスリーブを管路を構成する既設管の内部に配置し、流通路に熱交換媒体を流通させることで管路の内部を流れる水との熱交換を行えるようにしたものである。従って、熱交換媒体を介して管路の内部を流れる水の熱を活用することが可能である。
【0046】
本発明に係るスリーブは、下水道用の管路、上水道用の管路、農業用水用の管路、工業用水用の管路を含む種々の水流用の管路の何れにも好ましく適用することが可能である。そして、スリーブを管路に配置して該スリーブに形成した流通路に熱交換媒体を流通させることで、スリーブを介して管路を流れる水とスリーブを流通する熱交換媒体との熱交換を行うことが可能である。
【0047】
スリーブ(以下、「スリーブ」とは「スリーブ本体」を含む)は断面形状を限定するものではなく、配置すべき管路を構成する既設管の内形と対応した外形を有する外周面を有する。スリーブの外周面の外形が既設管の内形と対応するとは、スリーブの外形は既設管の内形と相似形を有することを意味している。即ち、既設管の内形が円形である場合、スリーブの外形は円形となり、断面形状は円筒形となる。また、既設管の内形が角型である場合、スリーブの外径も角型となり、断面形状は角筒形となる。このように、スリーブの断面形状は、既設管の内形に対応した形状を有する。
【0048】
スリーブの外形寸法は特に限定するものではなく、既設管の内部に容易に且つ確実に挿入し得るような寸法であれば良い。また、スリーブの長さも限定するものではなく、配置される管路の長さの自由度を高めるために長尺状であることが好ましい。そして、長尺状のスリーブを縮径して例えばドラムやリールに巻き付けて、或いは長手方向に折り畳んで籠状のケースに収容して、保管、又は搬送し得るように構成することが好ましい。
【0049】
スリーブを縮径する場合、スリーブの断面が小さくなるように畳む場合と、スリーブの温度を降下させて縮ませる場合と、がある。更に、後述するようにスリーブが含浸基材に熱可塑性樹脂を含浸させて構成されたものでは、硬化させる際の膨張を見込んで、予め含浸基材の径を既設管の内径よりも小さく形成することで縮径したものもある。
【0050】
スリーブを断面内で畳んで縮径する場合、単にスリーブの断面が扁平になるように畳む方法と、周の一部を対向する周に接触するようにΩ状に凹ませて畳む方法と、があり、何れの畳み方であっても、ドラムやリールに巻き付けることが可能であり好ましい。
【0051】
スリーブは合成樹脂によって成形されている。スリーブを成形する合成樹脂として、塩化ビニルやポリエチレン或いはポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性樹脂を利用することが可能である。熱可塑性樹脂によってスリーブを製造する場合、常温状態に於ける成形体が高い剛性を有するため、流通路を形成する際には多様な方法を採用することが可能である。
【0052】
また、スリーブを成型する合成樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂や不飽和ポリエステル樹脂に光開始剤を含有させた光硬化性樹脂(以下、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂を含んで「熱硬化性樹脂」という)を利用することが可能である。熱硬化性樹脂を利用する場合、含浸基材となる筒状の不織布や強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた可撓性を有するスリーブを用いることが必要となるため、流通路を形成する方法は予め成形されているパイプを用いて一体化させる方法に限定される。
【0053】
スリーブに形成される流通路の位置は特に限定するものではない。即ち、スリーブの全周にわたって一様に流通路を形成しても良い。この場合、管路の内部を流れる水の熱、及び管路内部の雰囲気の熱との熱交換を実現することが可能である。
【0054】
また、スリーブの周に於ける予め設定された位置に集中して1又は複数の流通路を形成しても良い。この場合、形成された流通路を管路内を流れるの底部に対応する位置に配置することによって、流れる水の熱と熱交換することが可能である。また、流通路を流れる水から離隔した水面よりも上方に配置することによって、管路内部の雰囲気の熱と熱交換することが可能である。
【0055】
管路の内部を流れる水の熱を活用するには、流通路が流れる水の底面に対応する位置に形成されることが好ましい。水が自然流下するような管路では、通常の水位が管路の太さの約1/3程度よりも低くなるように設定される。このため、スリーブに形成される流通路も、水が流れる部分に対応して管路の太さの約1/3よりも小さくなる位置であることが好ましい。従って、スリーブの太さが管路の太さよりも僅かに小さく形成されるような場合には、該スリーブに形成される流通路の位置もスリーブの太さの約1/3よりも小さいことが好ましい。
【0056】
上記の如く、流通路をスリーブの全周に形成することなく、限定的な部分とすることによって、スリーブに於ける流通路を形成することのない部分の肉厚を薄くすることが可能となる。このため、スリーブの内断面積を可及的に大きく保持することが可能となり、スリーブを配置することに伴う管路の流下能力の減少を小さくすることが可能である。
【0057】
スリーブに形成される流通路の数は限定するものではなく、1又は複数の流通路を形成することが可能である。効率の良い熱交換を実現するには、流通路の内部を流通する熱交換媒体を可及的にスリーブの内周面に接近させることが好ましい。このため、大きい径の流通路を1又は少数形成するよりも、小さい径の流通路を多数形成することが好ましい。このため、流通路の数はスリーブの太さや外周面と内周面との差(以下、「スリーブの厚さ」或いは単に「厚さ」という)に応じて適宜設定することが好ましい。
【0058】
スリーブに形成される流通路の形状は限定するものではなく、長手方向に又は周方向に蛇行して形成されたものであって良い。この場合、予め蛇行させた長尺状のパイプを利用することで、流通路を形成することが可能である。また、流通路を孔によって形成しても良い。
【0059】
流通路を孔によって形成する場合、スリーブに形成される孔の形状は限定するものではなく、円形、楕円形、多角形、円弧と直線が複合した形状、等の形状から選択して採用することが可能である。特に、水がスリーブの内周面を流れるため、孔は該内周面に対し可及的に接近すると共に、内周面に対向する面の面積が大きいことが好ましい。
【0060】
このため、孔の形状は単純な円形よりも扁平な円や多角形であると好ましい。例えば、スリーブに扁平な円からなる孔を1個形成しておき、この孔に熱交換媒体を流通させるように構成することが可能である。この場合、扁平な円のスリーブの内周面側の面積が大きくなり、高い熱交換効率を実現することが可能となる。
【0061】
しかし、スリーブに孔を形成する際には単純な円形であることが好ましい場合があるため、製造の際の容易さを考慮した上で、可及的に広い面が内周面に対向し得る形状に設定することが好ましい。
【0062】
本発明に係るスリーブを製造する方法としては、採用する合成樹脂が熱可塑性樹脂であるか、熱硬化性樹脂であるか、に応じて幾つかの方法がある。
【0063】
熱可塑性樹脂によってスリーブを製造する場合、一般的に熱可塑性樹脂の成形に採用される押出成形法を採用することが可能である。この製造方法では、スリーブの筒状体と流通路又は流通路を構成する孔とを同時に成形することが可能であり、押出成形されたスリーブを例えばドラムに巻き付けることで長尺状のスリーブを製造することが可能である。
【0064】
熱可塑性樹脂によって製造されたスリーブは、加熱することによって容易に変形することが可能であり、常温では充分に高い剛性を有する。このため、目的の管路に配置する際の施工性が良い。特に、既設管の内部に配置した後、経年による劣化や他の原因により補修する必要が生じたとき、内部に加熱蒸気や温水を供給して加温することでスリーブを軟化させて容易に抜き出すことが可能である。
【0065】
また、予め押出成形法によって、スリーブの外周面に対応する外側スリーブと、内周面に対応する内側スリーブとを成形して外側スリーブの中に内側スリーブを挿入して重ねておき、両スリーブの間に所定数のパイプを挿入した後、外側スリーブと内側スリーブを接着又は融着して一体化させることでスリーブを製造することが可能である。
【0066】
また、予め押出成形法によって外側スリーブを形成しておき、この内側に蛇行させたパイプ、或いは直線状の複数のパイプを挿入し、この状態で内側スリーブを押出成形することで一体化させてスリーブを製造することが可能である。
【0067】
また、押出成形法によって、スリーブの筒状部と内部に開放する角型或いはU字状の溝を形成した肉厚部とを一体的に成形した素材を形成しておき、前記溝の開放部を熱可塑性樹脂からなるシート或いはフィルムによって閉塞すると共に、素材とシート或いはフィルムとを接着或いは融着等の手段で一体化させることでスリーブを製造することが可能である。
【0068】
特に、上記素材の厚肉部以外の周部分の厚さを予め調整しておくことで、製造されたスリーブを管路を補修する際の補強材として利用することも可能である。
【0069】
上記溝は、押出成形によって形成することに限定されず、予め押出成形法によって、スリーブの筒状部と肉厚部とを一体的に成形した素材を形成しておき、この素材の肉厚部に角型、U字型を含む所望の溝を切削等の手段で形成した後、前記溝の開放部を熱可塑性樹脂からなるシート或いはフィルムによって閉塞すると共に、素材とシート或いはフィルムとを接着或いは融着等の手段で一体化させることでスリーブを製造することも可能である。
【0070】
熱硬化性樹脂によってスリーブを製造する場合、含浸基材に含浸させた熱硬化性樹脂を光或いは熱によって硬化させることでスリーブとしての形状となる。即ち、熱硬化性樹脂によってスリーブを製造する場合、流通路を同時成形する押出成形法や、切削によって流通路を形成する方法は採用することができない。従って、パイプを一体化させて流通路を形成する方法に限定される。
【0071】
この製造方法は、予め含浸基材となる不織布或いは強化繊維によって、スリーブを配置すべき管路の内形に対応した外形となり得る周長を有する外側筒体と、スリーブの内周面を構成し得る周長を有する内側筒体と、を構成しておく。外側筒体の内部に流通路を構成するパイプを挿入すると共に内側筒体を挿入して重ね合わせ、内側筒体の内部にインナーフィルムを、外側筒体の外側にアウターフィルムを配置した後、両筒体に熱硬化性樹脂を含浸することでスリーブを製造することが可能である。
【0072】
また、外側筒体の内部にロープ等の牽引部材を配置した状態で熱硬化性樹脂を含浸させた後、前記牽引部材によって流通路を構成するパイプを引き込み、更に、この内部に予め熱硬化性樹脂を含浸させた内側筒体を反転法により又は引込法により引き込んで重ねることでスリーブを製造することが可能である。
【0073】
上記の如く構成されたスリーブでは、熱硬化性樹脂を含浸させた外側筒体と内側筒体を重ねた筒体は高い可撓性を有する。このため、このスリーブを目的の管路まで搬送して該管路に反転法或いは引込法で挿入し、その後、内側筒体の内側に圧縮空気を供給して拡径させることで外側筒体を管路の内周面に密着させ、この状態を保持して、光を照射し、或いは温水、熱風により加熱することで、熱硬化性樹脂を硬化させることが可能である。
【0074】
上記製造方法に於いて、内側筒体は必ずしも筒である必要はなく、外側筒体の一部にパイプが配置されるような場合には、配置されたパイプを覆うことが可能な寸法を持つシートであっても良い。
【0075】
上記の如くして、熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂からなるスリーブを製造することが可能である。
【0076】
次に、本実施例に係るスリーブの構成について図を用いて説明する。図1に示すスリーブAは、円筒管を直列に接続して構成した既設管B(図4参照)の内部に配置し得るように構成されたものである。特に、スリーブAは、熱可塑性樹脂を押出成形法によって長尺状に形成されており、流通路は既設管Bに於ける水が流れる部分に対応する位置に複数形成された孔として構成されている。
【0077】
本実施例に係るスリーブAは、水が自然流下する管路(例えば下水道管路)の内部に配置される。前述したように、このような管路では、水位は既設管Bの太さの約1/3程度に設定されている。本実施例でも、孔4はスリーブAの太さの約1/3よりも下方となる位置に複数形成されている。
【0078】
このため、スリーブAは、既設管Bの内形に対応した外形(円形)を有する外周面1aと、スリーブAの太さの約2/3よりも大きい部分に対応して円弧状に形成された円弧部2と、スリーブAの太さの約1/3よりも小さい部分に対応して形成された孔形成部3と、孔形成部3に形成された複数の孔(本実施例では4個)4と、円弧部2の内周面と孔形成部3の内周面が連続して構成された内周面1bと、を有している。
【0079】
複数の孔4は円形に形成され、スリーブAの押し出しと同時に該スリーブAの全長にわたって成形されて該スリーブAの両端面で開口している。各孔4の内面とスリーブAの内周面1bとの間隔(熱可塑性樹脂の厚さ)は、小さいほど熱交換効率が良いが、強度や耐摩耗性も低下することとなる。このため、スリーブAは熱伝導率の良い材料を用い、孔4は可及的に内周面1bに接近するように形成されている。
【0080】
複数の孔4は、孔形成部3に円弧上に配列されており、このように配列することによって、スリーブAの内周面1bによって構成される断面積を可及的に大きくすることが可能となる。しかし、複数の孔4を円弧上に配列することの限定するものではなく、孔形成部3に略直線上に配列しても良いことは当然である。
【0081】
本実施例のスリーブAは、配置すべき管路を構成する既設管Bの内径寸法よりも僅かに小さい外径寸法を有して構成されている。
【0082】
ここで、孔形成部3に形成する孔4の形状と製造方法とについて、図2を用いて簡単に説明する。
【0083】
図2(a)は本実施例に係る孔4であり、スリーブAの押出成形と同時に円形の孔として成形されたものである。この場合、金型の構成が複雑化するものの、スリーブAとの一体成形によるため、スリーブAの長さの如何に関わらず孔4を形成することが可能であり、長尺状のスリーブAを容易に製造することが可能である。
【0084】
図2(b)はパイプ5を利用して形成した孔4を示している。スリーブAを熱可塑性樹脂によって製造する場合、孔成形部3に対応する位置に所定数のパイプ5を配置しておき、熱可塑性樹脂を押出成形してパイプ5と円弧部2及び孔形成部3を一体成形することで製造することが可能である。
【0085】
図2(b)に示すスリーブAを熱硬化性樹脂によって製造する場合、含浸基材となる不織布或いは強化繊維によって、既設管Bの内面の周長よりも小さい周長を有する外側筒体を構成すると共に複数のパイプ5を配列したときの周方向の長さよりも大きい寸法を持った内側筒体を構成する。外側筒体の内部に所定数のパイプを挿入すると共に内側筒体を挿入して重ね合わせ、内側筒体の内部にインナーフィルムを、外側筒体の外側にアウターフィルムを配置した後、両筒体に熱硬化性樹脂を含浸することでスリーブAを製造することが可能である。
【0086】
或いは、外側筒体の内部にロープ等の牽引部材を配置した状態で熱硬化性樹脂を含浸させた後、前記牽引部材によって流通路を構成するパイプを引き込み、更に、この内部に予め熱硬化性樹脂を含浸させた内側筒体を反転法により又は引込法により引き込んで重ねることでスリーブAを製造することが可能である。
【0087】
上記の如く、スリーブAの成形時に孔成形部3にパイプ5を配置して孔4を形成する場合、パイプ5が有限長であるため、該パイプ5の長さを超える長尺状のスリーブAを製造する際には複数本のパイプ5をソケットにより直線状に接続することが必要となる。このため、スリーブAの製造が煩雑となる虞がある。
【0088】
図2(c)は孔形成部3にU字状の溝を形成しておき、この溝を合成樹脂フィルム6によって閉塞して形成された孔4を示している。U字状の溝は、スリーブAの押出成形と同時に成形することが可能である。また、スリーブAの成形時に孔形成部3を単に肉厚部分として成形しておき、この部分を切削して溝を形成することも可能である。このような孔4では、内周面1b側の開口面積が大きくなり、内周面1bに流れる水との熱交換効率を向上させることが可能となる。
【0089】
熱可塑性樹脂によって製造されたスリーブAでは、外周面1aが円形のため容積が大きくなり、保管時や搬送時の効率が悪いため、図3に示すように、断面を凹字状に畳んだ状態に形成される。即ち、スリーブAは、円弧部2が加熱されて柔軟な状態で頂部が孔形成部3側に接近するように凹まされて孔形成部3を含めて縮径して凹字状に畳まれ、図示しないドラムに巻き取られている。このように、凹字状に畳まれて縮径されることで、保管時や搬送時の効率が向し、且つ既設管Bの内部に挿入する際の作業も容易に行うことが可能である。
【0090】
次に、上記スリーブAを管路を構成する既設管Bに配置する際の施工方法について図3〜図6を用いて詳細に説明する。
【0091】
本実施例に於いて、スリーブAを配置すべき管路は下水道用の管路として構成されており、図4に示すように、隣接するマンホール11、12の間に構成されている。下水道用の管路は、隣接するマンホール11、12の間を既設管Bとなる複数の鉄筋コンクリート管を直列に接続することで構成されいる。マンホール11、12には、直壁管と斜壁管を縦方向に接続して構成されており、底部には既設管Bと同じレベルの溝を形成した底盤13が設けられている。
【0092】
前述したように、スリーブAは円弧部2が凹状(Ω状)に畳まれて縮径されて硬化しており、この状態でドラムに巻き付けられてトラック等の搬送手段により管路の端部となる一方のマンホール11まで搬送される。そして、マンホール11まで搬送されたドラムは地上に設置される。また、各マンホール11、12の底盤13は既設管Bに対向する部位には斫によって窪み13aが形成される。
【0093】
その後、スリーブAを加熱して軟化させつつ、ドラムを巻戻方向に回転させて軟化したスリーブAを繰り出し、この繰り出しによりスリーブAをマンホール11から既設管Bの内部に挿入する。このとき、孔4が既設管Bの底部側に位置するように、スリーブAの姿勢を設定して挿入する。スリーブAを既設管Bに挿入する際に、該スリーブAが円弧部2が凹んだ状態に畳まれた状態であることから、図3に示すように、スリーブAを既設管Bに干渉させることなく円滑に挿入することが可能である。
【0094】
スリーブAをマンホール11、12の間の既設管Bに挿入した後、該スリーブAを所定位置(例えばマンホール11、12に於ける略中央部位)で切断する。この状態では、スリーブAの孔形成部3に形成されている複数の孔4は、該スリーブAの端面に開口した状態となっている。
【0095】
次いで、凹状に畳まれた状態を保持しているスリーブAを温水や蒸気或いは加熱空気により加熱して更に柔軟性を発揮させる。即ち、スリーブAの内部、又はスリーブAの内部及び既設管Bの内部(スリーブAの外周面1a側)に温水や蒸気或いは加熱空気を供給して加熱して、スリーブA、特に円弧部2の柔軟性を発揮させる。スリーブAが充分に柔軟性を発揮したとき、作業員により、或いはスリーブAの内部に供給した蒸気により、円弧部2を凹状から円弧状に復帰させ、外周面1aを既設管Bの内面に密着させる。
【0096】
スリーブAが全長にわたって形状が復帰して外周面1aが既設管Bの内面に密着したことを確認した後、温水や蒸気或いは加熱空気の供給を停止し、常温の水或いは常温の空気等の気体を供給して冷却する。スリーブAは強制的に冷却されて硬化し、密着した形状を保持する。そして、充分にスリーブAが硬化した後、該スリーブAの各マンホール11、12に突出している部分を、マンホール11、12の壁面と同一面となるように切削する。
【0097】
その後、図5、図6に示すように、スリーブAの端面に開口している二つの孔4を選択して一方の孔4に熱交換媒体の供給部材となる供給管15を接続すると共に、他方の孔4に熱交換媒体の受給部材となる受給管16を接続する。また、残った開口4は夫々U字管17を接続して連通する。
【0098】
スリーブAの孔4から選択された孔4に供給管15、受給管16を接続する際に、これらの供給管15と受給管16を同じマンホール11に設けるか、マンホール11、12に夫々設けるかは限定するものではなく、地上に設置したヒートポンプ18の使い方や、既設管Bの長さ等の条件に応じて設定される。
【0099】
例えば、図4に示すように、一方のマンホール11に供給管15、受給管16を設けてヒートポンプ18に接続する場合、マンホール11に開口しているスリーブAに形成した4つの孔4から両端側の二つの孔4を選択して夫々供給管15、受給管16を接続すると共に、残った孔4にU字管17を接続して連通させ、マンホール12に開口している孔4の隣接する孔4を夫々U字管17を接続して連通させて、4つの孔4を連続させた熱交換媒体を流通させる一連の流通路として構成することが可能である。
【0100】
また、マンホール11に供給管15を設けると共に、マンホール12に受給管16を設ける場合、マンホール11に開口している4つの孔4の中から1つの孔4(例えば図5に於ける左側の端部にある孔4)を選択して供給管15を接続すると共に残る3つの孔4から2つの孔4(例えば図5に於ける左から2番目、3番目の孔4)を選択してU字管17を接続して連通し、マンホール12に開口している孔4のうち、マンホール11で供給管15が接続されている孔4と該孔4に隣接したる孔4にU字管17を接続して連通させ、更に、隣接した孔4に受給管16を接続することで、3つの孔4を連続させた熱交換媒体を流通させる一連の流通路として構成することが可能である。この場合、スリーブAに形成されている4つの孔4のうち1つの孔4は使用しない。
【0101】
上記の如くしてマンホール11、12に開口している孔4に夫々供給管15、受給管16、U字管17を接続したとき、これらの管15〜17と孔4の接続部分は底盤13に形成された窪み13a内に存在する。また、スリーブAの孔形成部3に対応する内周面1個のレベルは初期の底盤13の流水レベルよりも上位となる。このため、モルタル20によって窪み13aを埋めると共に底盤13の流水レベルを上昇させる。
【0102】
供給管15、受給管16は地上に設置したヒートポンプ18に接続されている。また、ヒートポンプ18には図示しない冷暖房器具などが接続され、これにより、管路を流れる水の熱を活用することが可能である。
【0103】
尚、スリーブAが熱硬化性樹脂によって構成されている場合、このスリーブAは可撓性を有する状態で現場まで搬送され、目的の管路に反転法或いは引込法によって挿入される。その後、孔4に非圧縮性流体である例えば水を充填し、スリーブAの内部に圧縮空気を供給して膨張させることで、既設管Bの内面に密着させる。更に、スリーブAの内部から光を照射し或いは加熱することで熱硬化性樹脂を硬化させることによって、スリーブAを管路を構成する既設管Bの内部に配置することが可能である。このように、スリーブAに形成した孔4に水を充填した状態で、該スリーブAの内部に圧縮空気を供給することで、孔4がつぶれることがない。
【0104】
管路に熱硬化性樹脂からなるスリーブAを配置した場合、経時的な劣化や何等かの原因でスリーブAを補修する際に該スリーブAを加熱しても軟化することがない。このため、硬化したスリーブAを管路から排除する作業は容易ではない、という問題が生じることがある。しかし、熱硬化性樹脂からなるスリーブAは硬化した後の強度が高いため、充分に自立した管路を構成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る管路構造は管路を流れる水の熱を活用することが可能であり、冷暖房用の熱源や融雪用の熱源などに利用して有利である。また、施工方法は、前記管路構造を構成する際に利用して有利である。更に、本発明に係るスリーブは管路を流れる水の熱を熱交換媒体に対し伝える際に利用して有利である。
【符号の説明】
【0106】
A スリーブ
B 既設管
C 筒体
D 流通路
1a 外周面
1b 内周面
2 円弧部
3 孔形成部
4 孔
5 パイプ
6 合成樹脂フィルム
11、12 マンホール
13 底盤
13a 窪み
15 供給管
16 受給管
17 U字管
18 ヒートポンプ
20 モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる管路の構造であって、
既設管の内部に、水が流れる内周面を有する筒状の流水層が形成され、
前記流水層の内周面よりも既設管側で且つ長手方向に熱交換媒体を流通させる通路が形成されている
ことを特徴とする管路構造。
【請求項2】
前記水が流れる管路が、下水道管路であることを特徴とする請求項1に記載した管路構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した管路構造を施工する施工方法であって、
既設管の長手方向に、下方側内周面に沿って熱交換媒体を流通させる通路が形成された流通部材を配置し、
前記流通部材が配置された既設管の内部に、可撓性を有し且つ前記流水層を構成する筒体を、外周面が既設管の内周面に干渉することがないように縮径して挿入し、
その後、挿入された筒体を復元させて該筒体の外周面と既設管の内周面とによって前記流通部材を挟み込む
ことを特徴とする施工方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した管路構造を施工する施工方法であって、
水が流れる内周面と、該内周面よりも外周面側に長手方向に形成された熱交換媒体を流通させる通路と、を有し且つ可撓性を有する前記流水層を構成する筒体を用意し、
前記筒体を、既設管の内部に外周面が既設管の内周面に干渉することがないように縮径して挿入し、
その後、挿入された筒体を復元させて該筒体を既設管の内面に配置する
ことを特徴とする施工方法。
【請求項5】
水が流れる管路を構成する既設管の内部に該既設管の長手方向に配置される合成樹脂からなるスリーブであって、
水が流れる内周面と既設管の内周面と対向する外周面とを有するスリーブ本体を有し、
前記スリーブ本体の外周面の長手方向に熱交換媒体を流通させる通路を一体的に形成した
ことを特徴とするスリーブ。
【請求項6】
水が流れる管路を構成する既設管の内部に該既設管の長手方向に配置される合成樹脂からなるスリーブであって、
配置すべき既設管の内形に対応した外形を有する外周面と水が流れる内周面とを有するスリーブ本体を有し、
前記スリーブ本体の外周面と内周面との間で且つ長手方向に熱交換媒体を流通させる通路を形成した
ことを特徴とするスリーブ。
【請求項7】
前記合成樹脂が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項5又は6に記載したスリーブ。
【請求項8】
前記熱交換媒体を流通させる通路が、管路に於ける水が流れる部分に対応した部位に形成されていることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載したスリーブ。
【請求項9】
前記熱交換媒体を流通させる通路が、1又は複数形成された孔によって構成されていることを特徴とする請求項5乃至8の何れかに記載したスリーブ。
【請求項10】
請求項5乃至9の何れかに記載したスリーブを製造するための方法であって、合成樹脂を押出成形する際に熱交換媒体を流通させる通路を一体的に成形することを特徴とするスリーブの製造方法。
【請求項11】
請求項5乃至9の何れかに記載したスリーブを製造するための方法であって、スリーブに於ける熱交換媒体を流通させる通路の形成部位に予め設定された長さを持ったパイプを配置しておき、合成樹脂により前記パイプを一体化することを特徴とするスリーブの製造方法。
【請求項12】
請求項6乃至9の何れかに記載したスリーブを製造するための方法であって、配置すべき管路の内形に対応した外形と予め設定された肉厚を持った長尺状の筒体を成型しておき、前記筒体の内面を長手方向に切削して熱交換媒体を流通させる通路を形成した後、少なくとも前記通路の開放部分を合成樹脂シートによって覆うと共に前記筒体と一体化させることを特徴とするスリーブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−40469(P2013−40469A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176908(P2011−176908)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000219358)東亜グラウト工業株式会社 (47)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】