説明

粉体回収装置

【課題】 分散粉体を一様な粒度分布で回収することができる粉体回収装置、および粉体回収方法を提供する。
【解決手段】 粉体回収装置1は、サイクロン3およびバグフィルタ4を用いることによって、送風手段によって与えられる分散粉体10を可及的に回収し、貯留部17に一時的に貯留される粗粉7および微粉8を搬送方向Xに撹拌しながら搬送して、貯留槽2に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散粉体、特に粉末状の触媒前駆体を回収する粉体回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術の粉体回収装置では、分散粉体を回収するために、サイクロンとバグフィルタとを備えている。先ず、サイクロンを用いて粗粉を回収し、残余の粉体からバグフィルタを用いて微粉を回収している。このような粉体回収装置によって、分散粉体であっても、効率よく回収することができる(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−117343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来の技術では、分散粉体を回収することができるが、回収した分散粉体を用いて部品を成形する場合、次のような問題が生じる。粉体を用いて部品を形成する場合、個体差をなくすために、粒度分布が一様になるようにする必要があるが、前述の従来の技術では、サイクロンで粗粉を回収し、バグフィルタで微粉を回収するので、微粉と粗粉と別々に回収される。このように別々に回収された粉体を単に管路などを介して自然落下させて貯留槽に供給しても、貯留槽内で粒度分布が一様にならない。これによって成形される部品の粒度分布が異なり、部品の個体差が生じる。また各部品毎でも部品内の粒度分布の違いによって、部品内の部分によって特性が異なるという問題がある。
【0005】
したがって本発明の目的は、分散粉体を一様な粒度分布で回収することができる粉体回収装置、および粉体回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、送風手段によって搬送される分散粉体を貯留槽にて回収する粉体回収装置であって、
送風手段によって搬送される分散粉体の粗粉を回収し、回収した粗粉を略鉛直下方に排出し、分散粉体の前記粗粉を除く残余の微粉を略鉛直上方から排出するサイクロンと、
前記サイクロンから排出された微粉を回収し、回収した微粉を略鉛直下方に排出するバグフィルタと、
サイクロンおよびバグフィルタの略鉛直下方に設けられ、サイクロンおよびバグフィルタから排出された粗粉および微粉を一時的に貯留する貯留部と、
前記貯留部に設けられ、一時的に貯留する粗粉および微粉を水平方向に略平行な搬送方向に搬送して、貯留槽の略鉛直上方から自然落下させて貯留槽に与える搬送手段とを含むことを特徴とする粉体回収装置である。
【0007】
また本発明は、前記搬送手段は、一時的に貯留する粗粉および微粉を撹拌しながら搬送することを特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、前記貯留部を冷却する冷却手段をさらに含むことを特徴とする。
さらに本発明は、前記分散粉体は、粉末状の触媒前駆体であることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、送風手段によって搬送される分散粉体を貯留槽にて回収する粉体回収方法であって、
送風手段によって搬送される分散粉体の粗粉を回収し、回収した粗粉を略鉛直下方に排出し、分散粉体の前記粗粉を除く残余の微粉を略鉛直上方から排出する粗粉回収工程と、
前記粗粉回収工程にて排出された微粉を回収し、回収した微粉を略鉛直下方に排出する微粉回収工程と、
前記粗粉回収工程および前記微粉回収工程にて、排出された粗粉および微粉を水平方向に略平行な搬送方向に搬送して、貯留槽に与える搬送工程とを含むことを特徴とする粉体回収方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉体回収装置は、サイクロンと、バグフィルタと、貯留部と、搬送手段とを備える。サイクロンは、送風手段によって搬送される分散粉体の粗粉を回収し、回収した粗粉を略鉛直下方に排出して、貯留部に与える。またサイクロンは、粗粉を除く残余の微粉をバグフィルタに与える。バグフィルタは、サイクロンから与えられる微粉を回収し、回収した微粉を略鉛直下方に排出して、貯留部に与える。これによって送風手段によって与えられる分散粉体を可及的に回収して、貯留部に与えることができる。搬送手段は、貯留部に設けられ、貯留部に一時的に貯留される粗粉および微粉を水平方向に略平行な搬送方向に搬送して、貯留槽に与える。したがって粗粉または微粉のいずれか一方が、搬送手段の搬送方向上流側にて貯留部に与えられ、いずれか他方が搬送方向下流側にて貯留部に与えられる。これによって搬送方向上流側で与えられる一方の粉体は、搬送方向下流側に搬送されると、搬送方向下流側にて他方の粉体が与えられる。これによって微粉と粗粉とが一緒になった状態で、搬送手段によって搬送方向下流側に搬送され、貯留槽の略鉛直上方から自然落下させて貯留槽に与える。したがって微粉と粗粉との粒度分布が可及的に一様な状態で、貯留槽に与えることができる。これによって分散粉体であっても、一様な粒度分布の状態で回収することができる。したがって本発明の粉体回収装置によって回収された粉体を用いて、部品を成形することによって、部品による個体差が生じることを防ぐことができる。
【0011】
また本発明によれば、搬送手段は、一時的に貯留する粗粉および微粉を撹拌しながら搬送する。このように搬送手段による搬送中に微粉と粗粉とが撹拌されるので、より一様な粒度分布の状態で貯留槽に粉体を与えることができる。
【0012】
さらに本発明によれば、貯留部を冷却する冷却手段をさらに含むので、送風手段によって分散粉体が高温の状態で与えられた場合であっても、貯留部にて搬送されている状態で冷却されるので、高効率で粉体を冷却することができる。したがって、粉体が、たとえば高温の状態で貯留槽にて保持すると変質ようなものであっても、冷却手段によって効率的に冷却されるので、貯留槽にて粉体の性質の変質することを防ぐことができる。また貯留槽に冷却手段を設けると、冷却設備が巨大化して、製造コストが多くなることがあるが、本発明のようの粉体を一時的に貯留する貯留部に冷却手段を設けるので、冷却設備を小形化することができ、製造コストを低減することができる。
【0013】
さらに本発明によれば、分散粉体は、粉末状の触媒前駆体である。粉末状の触媒前駆体は、粒度分布が触媒性能に与える影響が大きいが、前述したように一様な粒度分布で粉体を回収することができるので、所望の粒度分布の触媒を成形することができる。
【0014】
さらに本発明によれば、粉体回収方法は、粗粉回収工程と、微粉回収工程と、搬送工程とを備える。粗粉回収工程では、送風手段によって搬送される分散粉体の粗粉を回収し、回収した粗粉を略鉛直下方に排出する。また粗粉回収工程では、粗粉を除く残余の微粉を略鉛直上方に排出する。微粉回収工程では、粗粉回収工程にて排出された微粉を回収し、回収した微粉を略鉛直下方に排出する。これによって送風手段によって与えられる分散粉体を可及的に回収することができる。搬送工程では、排出された粗粉および微粉を搬送方向に搬送して、貯留槽に与える。したがって粗粉または微粉のいずれか一方が、搬送方向上流側にて与えられ、いずれか他方が搬送方向下流側にて与えられる。これによって搬送方向上流側で与えられる一方の粉体は、搬送方向下流側に搬送されると、搬送方向下流側にて他方の粉体が与えられる。これによって微粉と粗粉とが一緒になった状態で、搬送方向下流側に搬送され、貯留槽に与える。したがって微粉と粗粉との粒度分布が可及的に一様な状態で、貯留槽に与えることができる。これによって分散粉体であっても、一様な粒度分布の状態で回収することができる。したがって本発明の粉体回収方法によって回収された粉体を用いて、部品を成形することによって、部品による個体差が生じることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の実施の一形態の粉体回収装置1を簡略化して示す正面図である。粉体回収装置1は、送風手段(図示せず)によって搬送される分散粉体10を貯留槽2にて回収する。分散粉体10は、粒径が異なる粉体10の集合体である。本実施の形態では、水性スラリーを送風手段によって乾燥させ、乾燥させた分散粉体10を粉体回収装置1に与える。分散粉体10は、本実施の形態では酸化触媒、たとえばアクロレイン、アクリル酸、メタクロレイン、メタクリル酸製造用触媒の原料となる粉末状の触媒前駆体である。送風手段では、触媒前駆体成分を含む水溶液または水性スラリーを熱風によって乾燥し、触媒前駆体を固体状にして、粉体回収装置1に与える。送風手段は、たとえばスプレードライヤによって実現され、噴霧乾燥によって乾燥させる。また、触媒前駆体の水性スラリーを乾燥する場合、水性スラリー中に存在する粒子の平均粒子径は、たとえば2μm以上10μm以下程度である。
【0016】
粉体回収装置1は、貯留槽2、サイクロン3、バグフィルタ4、スクリューフィーダ5、および排ガス処理部6を含んで構成される。サイクロン3は、送風手段によって搬送される分散粉体10の粗粉7を回収し、回収した粗粉7を略鉛直(用語「略鉛直」は鉛直を含む)下方Z1に排出し、分散粉体10の粗粉7を除く残余の微粉8を略鉛直上方Z2から排出する。サイクロン3は、筒状のサイクロン容器9と駆動部11とを備え、サイクロン容器9の接線方向に流入した分散粉体10を含む気流がサイクロン容器9内壁に沿って旋回しながら下降する間に、遠心力の違いによって粗粉7と微粉8とを分離する装置である。また駆動部11は、サイクロンで捕集した粗粉7が閉塞することなく排出できるように設けた設備である。換言すると、サイクロン3は、駆動部11によって駆動するロータの上に分散粉体10を通して分散粉体10に遠心力を作用させると共に、遠心力に抗した方向つまりサイクロン容器9の半径方向内方に気体搬送力を作用させ、両者の粉体10に作用する搬送力のバランスに従って大きな粒径の粉体7である粗粉7はサイクロン容器9の半径方向外方へ、また小さな粒径の粉体8である微粉8はサイクロン容器9の半径方向内方に搬送させる方式のものである。したがってサイクロン3は、分散粉体10から粗粉7を回収し、回収した粗粉7を、略鉛直下方Z1に設けられるスクリューフィーダ5に自然落下させて与える。
【0017】
バグフィルタ4は、サイクロン3から排出された微粉8を回収し、回収した微粉8を略鉛直下方Z1に排出する。バグフィルタ4は、サイクロン3によって回収しきれない微粉8を、バグフィルタ4の濾布を通過させて補集し、適当な時間間隔で、気流の流れと反対方向から加圧した空気等の気体をこの濾布に掛け、回収した微粉8を、略鉛直下方Z1に設けられるスクリューフィーダ5に自然落下させて与える。またバグフィルタ4は、微粉8を回収した後の排ガス12をデミスタ14に与える。このようなサイクロン3およびバグフィルタ4にて回収される粉体の割合は、9:1程度となる。
【0018】
排ガス処理部6は、バグフィルタ4から与えられる排ガス12に水13を供給し、排ガス12に含まれる水溶性の物質、たとえば硝酸アンモニウムを溶解させる。排ガス処理部6は、排ガス12を放出する放出口にメッシュ状の網であるデミスタ14を備え、このデミスタ14に水13を供給する。送風手段によって水性スラリーを乾燥させた際にたとえば硝酸アンモニウムを含んだ排ガス12が発生する。硝酸アンモニウムは、低温になると析出し、配管中および放出口に堆積するおそれがある。硝酸アンモニウムは、危険物に該当し、堆積すると危険なため除去する必要がある。したがって排ガス処理部6を備えることによって、放出口に設けられるデミスタ14に水13を供給し、硝酸アンモニウムを安全で確実に除去することができる。
【0019】
スクリューフィーダ5は、搬送手段および撹拌手段としての機能を有し、サイクロン3およびバグフィルタ4の略鉛直下方Z1に設けられ、サイクロン3およびバグフィルタ4から排出された粗粉7および微粉8を撹拌しながら水平方向に略平行(用語「略平行」は平行を含む)な搬送方向Xに搬送して、貯留槽2の略鉛直上方Z2の排出口15から自然落下させて貯留槽2に与える。
【0020】
貯留槽2は、スクリューフィーダ5の排出口15の略鉛直下方Z1に開口して設けられ、分散粉体10を貯留可能な空間10aを形成する。貯留槽2は、必要に応じて下方Z1に設けられる排出口2aから回収した分散粉体10を排出する。
【0021】
次に、スクリューフィーダ5に関して、さらに詳細に説明する。図2は、スクリューフィーダ5を簡略化して示す斜視図である。図3は、スクリューフィーダ5に設けられる撹拌部16の一部を拡大して示す正面図である。図4は、スクリューフィーダ5を示す端面図である。スクリューフィーダ5は、サイクロン3およびバグフィルタ4から与えられる粉体7,8を一時的に貯留する貯留部17、貯留部17に貯留される粉体10を撹拌しながら搬送する撹拌部16、および貯留部17を冷却する冷却部18を備える。貯留部17は、粉体10を一時的に貯留する貯留空間17aであって、搬送方向Xに延びる貯留空間17aを形成する。また貯留部17は、軸線方向の一方の上方Z2部分に、貯留空間17aの一部を開口し、サイクロン3から粗粉7が自然落下で供給される第1供給口19が形成される。また貯留部17は、第1供給口19から軸線方向の他方側の上方Z2部分に、貯留空間17aの一部を開口し、バグフィルタ4から微粉8が自然落下で供給される第2供給口20が形成される。また貯留部17は、軸線方向の他方の下方Z1部分に、貯留空間17aの一部を貯留槽2に臨んで開口し、貯留空間17aから自然落下させて貯留槽2に粉体10を供給する排出口15が形成される。貯留空間17aを規定する貯留部17の形状は、サイクロン3とバグフィルタ4とから与えられる分散粉体10の供給量、および撹拌部16の搬送力に起因する排出口15から排出される排出量に基づいて決定され、少なくとも前記供給量が排出量以下となるように決定される。貯留部17は、貯留空間17aの軸線方向の長さが、たとえば1750mmであり、高さが、たとえば150mmであり、幅が、たとえば150mmである。また貯留部17は、熱伝導性の優れる材料、たとえば銅などから成ることが好ましい。
【0022】
撹拌部16は、図3に示すように、回転軸21と、撹拌羽根22とを含む。回転軸21は、貯留部17によって回転自在に支持され、撹拌用駆動部23によって軸線回りに回転駆動する。撹拌羽根22は、回転軸21の外周面において、回転軸21の軸線方向一端部から螺旋状に延びて貯留部17の排出口15の近傍に達するように形成される。回転軸21の回転駆動に伴って撹拌羽根22が回転し、貯留部17の軸線方向一方から他方の排出口15に向う搬送方向Xに粉体10を搬送する。回転軸21の回転数すなわち撹拌部16材の回転数は、たとえば6rpmである。回転軸21の径は、たとえば165mmである。また、撹拌羽根22の径は、たとえば265mmである。
【0023】
冷却部18は、貯留部17の外方を覆って設けられ、貯留部17に一時的に貯留される粉体10を冷却する。冷却部18は、その冷却する構成は特に限定しないが、好ましくは水冷方式が用いられる。冷却部18は、貯留部17の少なくとも底部、および側部を覆って設けられる。
【0024】
次に、粉体回収装置1による粉体10の回収方法に関して説明する。図5は、粉体回収装置1による粉体回収方法を示すフローチャートである。本フローは、サイクロン3に送風手段から分散粉体10が与えられると、ステップa1にて開始される。本フローは、サイクロン3に搬送される分散粉体10を回収するまで繰り返し実行される。ステップa1は、粗粉回収工程に相当し、送風手段によって搬送される分散粉体10から、前述したサイクロン3によって粗粉7を回収し、回収した粗粉7を略鉛直下方Z1に排出し、分散粉体10の前記粗粉7を除く残余の微粉8を略鉛直上方Z2から排出し、ステップa2に移る。ステップa2は、微粉回収工程に相当し、サイクロン3にて排出された微粉8を回収し、回収した微粉8を略鉛直下方Z1に排出し、ステップa3に移る。ステップa3は、搬送工程に相当し、ステップa1およびステップa2にて排出された粗粉7および微粉8を搬送方向Xに搬送して、貯留槽2に与え、本フローを終了する。
【0025】
次に、本実施の形態の粉体回収装置1に好適に用いられる分散粉体10の一例に関して詳述する。分散粉体10は、たとえばメタクリル酸製造用触媒の原料となる粉末状の触媒前駆体である。メタクリル酸製造用触媒は、次に示す一般式(I)のものが好適に用いられる。
Mo …(I)
【0026】
ここで(I)式中、P、Mo、VおよびOはそれぞれリン、モリブデン、バナジウムおよび酸素を表し、Xはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素を表し、Yは銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタンおよびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素を表す。a、b、c、d、eおよびfはそれぞれP、Mo、V、X、YおよびOの原子比を表し、b=12としたとき、a、c、dおよびeはそれぞれ独立して0を越える3以下の値であり、fは酸素以外の元素の酸化状態および原子比によって定まる値である。メタクリル酸製造用触媒は、(I)式で示される組成を有するケギン型ヘテロポリ酸塩からなるものである。中でも、X元素としてセシウムを必須とするものが好ましく、また、Y元素として銅を必須とするものが好ましく、銅とヒ素、または銅とアンチモンを必須とするものがさらに好ましい。
【0027】
メタクリル酸製造用触媒は、硝酸アンモニウムを含有するドーソン型ヘテロポリ酸塩の成形体を調製し、これを焼成する際、ドーソン型ヘテロポリ酸塩からケギン型ヘテロポリ酸塩への転移反応が硝酸アンモニウムの存在下に起こるように、成形体中の硝酸アンモニウム含有量や焼成条件を調整することにより、好適に製造することができる。該成形体中の硝酸アンモニウムの含有量は、好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは15重量%以上であり、また、触媒の強度の観点から、好ましくは40重量%以下である。
【0028】
前記成形体は、触媒原料を水中で混合した後、得られた水性スラリーを前述の熱風を用いた送風手段によって乾燥し、前述の粉体回収装置10によって得られた粉体を成形することにより、調製される。触媒原料としては、前記触媒に含まれる各元素を含む化合物、たとえば、各元素のオキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が、所望の原子比を満たすような割合で用いられる。たとえば、リンを含む化合物としては、リン酸、リン酸塩等が用いられ、モリブデンを含む化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸塩、酸化モリブデン、塩化モリブデン等が用いられ、バナジウムを含む化合物としては、バナジン酸、バナジン酸塩、酸化バナジウム、塩化バナジウム等が用いられる。また、X元素を含む化合物としては、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられ、Y元素を含む化合物としては、オキソ酸、オキソ酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられる。一般式(I)中の酸素以外の各元素が一般式(I)中のa、b、c、dおよびeの割合を満たすように、上記の化合物を用いればよい。
【0029】
このようなメタクリル酸製造用触媒は、たとえば直径3mm以上10mm以下、長さ3mm以上10mm以下の円柱状または円筒状、直径3mm以上10mm以下の球状などの成形体として用いられるが、以下に定義される落下強度が97%以上であるものが好ましい。落下強度は、目開き2.36mmのJIS標準網篩の上に、内径30mm、長さ5000mmのパイプを垂直に立て、パイプの上部から約30gの触媒を落下させた際の、落下させた触媒に対する、篩の上に残った触媒の割合(重量%)として定義する。このような落下強度を有する触媒とすることにより、触媒の輸送や反応器充填の際の粉化や崩壊を抑制することができる。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態の粉体回収装置1では、サイクロン3およびバグフィルタ4を用いることによって、送風手段によって与えられる分散粉体10を可及的に回収して、貯留部17に与えることができる。撹拌部16は、貯留部17に一時的に貯留される粗粉7および微粉8を水平方向に略平行な搬送方向Xに搬送して、貯留槽2に与える。したがって粗粉7または微粉8のいずれか一方であって、本実施の形態では粗粉7が撹拌部16の搬送方向X上流側にて貯留部17に与えられ、いずれか他方であって、本実施の形態では微粉8が搬送方向X下流側にて貯留部17に与えられる。これによって搬送方向X上流側で与えられる一方の粉体7は、搬送方向X下流側に搬送されると、搬送方向X下流側にて他方の粉体8が与えられる。これによって微粉8と粗粉7とが貯留部17の第2供給口20から搬送方向X下流側では一緒になった状態で、撹拌部16によって搬送方向X下流側に搬送され、貯留槽2の略鉛直上方Z2から自然落下させて貯留槽2に与える。これによって微粉8と粗粉7との粒度分布が可及的に一様な状態で、貯留槽2に与えることができる。これによって分散粉体10であっても、一様な粒度分布の状態で回収することができる。したがって本実施の形態の粉体回収装置1によって回収された粉体10を用いて、部品を成形することによって、部品による個体差が生じることを防ぐことができる。
【0031】
また本実施の形態では、貯留槽2を大きくすることなく、スクリューフィーダ5を設けるだけで本実施の形態の粉体回収装置1を実現することができる。貯留槽2を大きくすると、スペースの制限および製造コストなどで困難であるが、本実施の形態では、スクリューフィーダ5を設けるだけで前述のような効果を得ることができるので、小さいスペースおよび低コストで実現することができる。
【0032】
また本実施の形態では、撹拌部16は、一時的に貯留する粗粉7および微粉8を撹拌しながら搬送する。このように撹拌部16による搬送中に微粉8と粗粉7とが撹拌されるので、より一様な粒度分布の状態で貯留槽2に粉体10を与えることができる。また撹拌しながら搬送するので、粉体10の伝熱を促進することができ、効率よく冷却することができる。
【0033】
さらに本実施の形態では、貯留部17を冷却する冷却部18をさらに含むので、送風手段によって分散粉体10が高温の状態で与えられた場合であっても、貯留部17にて搬送されている状態で冷却されるので、高効率で粉体10を冷却することができる。したがって、粉体10が、たとえば高温の状態で貯留槽2にて保持すると変質する粉体、たとえば80℃以上で性能が悪化するメタクリル酸製造用触媒であっても、冷却部18によって効率的に冷却されるので、貯留部17にて粉体10の性質の変質することを防ぐことができる。また貯留槽2に冷却部18を設けると、冷却設備が巨大化して、製造コストが多くなることがあるが、本実施の形態のように粉体10を一時的に貯留する貯留部17に冷却部18を設けるので、冷却設備を小形化することができ、製造コストを低減することができる。また貯留部17の軸線方向の寸法を大きくすることによって、冷却部18が冷却可能な部分が大きくなるので、所望の冷却能力に応じて貯留部17の形状を選択することができる。
【0034】
さらに本実施の形態では、貯留部17は、サイクロン3から排出される粗粉7が供給される第1供給口19を、バグフィルタ4から排出される微粉8が供給される第2供給口20より搬送方向X上流側に設けられる。サイクロン3によって回収される粗粉7の量は、バグフィルタ4によって回収される微粉8の量より多い。したがってより多く回収される粗粉7を、搬送方向X上流側から供給することによって、撹拌および冷却する距離を大きくすることができる。これによって、撹拌および冷却を効率よく行うことができる。
【0035】
さらに本実施の形態では、分散粉体10は、粉末状の触媒前駆体である。粉末状の触媒前駆体は、粒度分布が触媒性能に与える影響が大きいが、前述したように一様な粒度分布で粉体10を回収することができるので、所望の粒度分布の触媒を成形することができる。
【0036】
本実施の形態では、搬送手段は、スクリューフィーダ5が用いられるけれどもそれに限定されず、たとえば、振動コンベアなどを用いてもよい。ただし粉体の混合と搬送とを同時に行うことができ、さらに撹拌によって伝熱効率が上昇することから、スクリューフィーダ5を用いることが好ましい。またスクリューフィーダ5は、一段だけで粉体10を搬送しているが、多段でジグザグ状に配置して、搬送距離を確保して、撹拌される距離、および冷却される距離を大きく調節してもよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するけれども、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0038】
図6は、比較例の粉体回収装置1Aを簡略化して示す正面図である。比較例の粉体回収装置1Aでは、図6に示すように、図1に示す粉体回収装置1からスクリューフィーダ5および排ガス処理部6を除く残余の部分によって構成される。図7は、各シリーズにおける粉体混合の結果を示すグラフである。縦軸は、粉体10の色目を表すb値であり、横軸はバッチ数である。ここでb値は、Lab系表示系における色相を表す指標の1つで、ハンターの色差式における色座標の1つであり、プラス側で値が大きいほど黄色味が強いことを表し、マイナス側で値が大きいほど青味が強いことを表すものである。具体的には、たとえば日本工業規格(略称:JIS)の規格番号Z8722で規定されるXYZ表色系において三刺激値、X、YおよびZのうち、YおよびZを用いて、次式によって計算される。
b=7.0・(Y−0.847・Z)/√(Y)
【0039】
このb値は、本触媒の転化率を判断する目安として用いられる。b値の目標範囲は、7.0以上9.0以下であり、転化率の目標範囲は、80%以上90%以下であり、選択率の目標範囲は、80%以上である。b値が目標の範囲内に入ることで、転化率および選択率も目標の性能を満足することがわかっている。b値は、主に転化率の推移と相関性があるが、粒度分布の違いによるBET比表面積の差が転化率に大きく影響するため、分散粉体の混合具合の目安としてb値を用いることができる。
【0040】
図7で用いられる分散粉体10は、前述のメタクリル酸製造用触媒の前駆体である。具体的なメタクリル酸製造用触媒の組成は、P1.5Mo120.5Cs1.4Cu0.3Sb0.5である。図7で用いられる分散粉体10は、次のように製造される。先ず、40℃に加熱したイオン交換水224kgに、硝酸セシウム38.2kg、硝酸銅(II)3水和物10.2kg、85重量%リン酸24.2kgおよび70重量%硝酸25.2kgを溶解した(これをA液と称する)。40℃に加熱したイオン交換水330kgに、モリブデン酸アンモニウム4水和物297kgを溶解した後、メタバナジン酸アンモニウム8.19kgを懸濁させた(これをB液と称する)。このB液の中に、撹拌下、A液を滴下した後、三酸化アンチモン10.2kgを加え、密封容器中で120℃にて17時間撹拌した。得られたスラリーのpHは6.3であった。このスラリーを、図1に示す粉体回収装置1および図6に示す比較例の粉体回収装置1Aを用いて乾燥させて、回収した。
【0041】
図7では、1シリーズが、比較例であり、2シリーズおよび3シリーズが本発明の実施例である。各シリーズは、互いに同じ量である。図7に示すように、1シリーズは、b値のばらつきが大きく、2シリーズおよび3シリーズは、1シリーズに比べて、b値のばらつきが小さい。図6に示すように、比較例の粉体回収装置1Aでは、サイクロン3およびバグフィルタ4から自然落下させて、貯留槽2に直接回収した粉体10を与えるので、貯留槽2にて粗粉7が多い領域と微粉8が多い領域とがある。これによって貯留槽の排出口2aから排出される粉体10は、図7に示すように、b値にばらつきが生じる。これに対して本実施の形態の粉体回収装置1では、スクリューフィーダ5によって微粉8と粗粉7とを撹拌して、貯留槽2に与えるので、貯留槽2から排出される粉体10は、b値のばらつきを小さくすることができる。
【0042】
次に、回収した粉体10の保存性に関して説明する。表1および表2は、粉体10を用いて、表1および表2に示す温度で触媒前駆体粉体を、表1および表2に示す時間保管したときのb値、転化率、および選択率の繊維を示す。表1および表2では、用いた粉体10が互いに異なる。表中に保管温度の欄で処理無しと記載したサンプルは、粉体10を高温での温度保持を行わずb値、転化率および選択率を測定したサンプルである。表1および表2に示すように、60℃以上の保管温度で粉体10を保管することによって、b値および転化率が上昇し、選択率が低下する傾向にあることがわかる。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
したがって本実施の形態の粉体回収装置1では、図7に関連して説明したように、粉体を少なくとも60℃以下にまで冷却することで安定して粉体10を保管することができる。粉体の冷却を行わない場合は、b値が上昇するため貯留槽2で保管することが困難となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の一形態の粉体回収装置1を簡略化して示す正面図である。
【図2】スクリューフィーダ5を簡略化して示す斜視図である。
【図3】スクリューフィーダ5に設けられる撹拌部16の一部を拡大して示す正面図である。
【図4】スクリューフィーダ5を示す端面図である。
【図5】粉体回収装置1による粉体回収方法を示すフローチャートである。
【図6】比較例の粉体回収装置1Aを簡略化して示す正面図である。
【図7】各シリーズにおける粉体混合の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 粉体回収装置
2 貯留槽
3 サイクロン
4 バグフィルタ
5 スクリューフィーダ
6 排ガス処理部
7 粗粉
8 微粉
9 サイクロン容器
10 粉体
11 駆動部
12 排ガス
13 水
14 デミスタ
15 排出口
16 撹拌部
17 貯留部
18 冷却部
19 第1供給口
20 第2供給口
21 回転軸
22 撹拌羽根
23 撹拌用駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風手段によって搬送される分散粉体を貯留槽にて回収する粉体回収装置であって、
送風手段によって搬送される分散粉体の粗粉を回収し、回収した粗粉を略鉛直下方に排出し、分散粉体の前記粗粉を除く残余の微粉を略鉛直上方から排出するサイクロンと、
前記サイクロンから排出された微粉を回収し、回収した微粉を略鉛直下方に排出するバグフィルタと、
サイクロンおよびバグフィルタの略鉛直下方に設けられ、サイクロンおよびバグフィルタから排出された粗粉および微粉を一時的に貯留する貯留部と、
前記貯留部に設けられ、一時的に貯留する粗粉および微粉を水平方向に略平行な搬送方向に搬送して、貯留槽の略鉛直上方から自然落下させて貯留槽に与える搬送手段とを含むことを特徴とする粉体回収装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、一時的に貯留する粗粉および微粉を撹拌しながら搬送することを特徴とする請求項1に記載の粉体回収装置。
【請求項3】
前記貯留部を冷却する冷却手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の粉体回収装置。
【請求項4】
前記分散粉体は、粉末状の触媒前駆体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の粉体回収装置。
【請求項5】
送風手段によって搬送される分散粉体を貯留槽にて回収する粉体回収方法であって、
送風手段によって搬送される分散粉体の粗粉を回収し、回収した粗粉を略鉛直下方に排出し、分散粉体の前記粗粉を除く残余の微粉を略鉛直上方から排出する粗粉回収工程と、
前記粗粉回収工程にて排出された微粉を回収し、回収した微粉を略鉛直下方に排出する微粉回収工程と、
前記粗粉回収工程および前記微粉回収工程にて、排出された粗粉および微粉を水平方向に略平行な搬送方向に搬送して、貯留槽に与える搬送工程とを含むことを特徴とする粉体回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−239336(P2008−239336A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86056(P2007−86056)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】