説明

粉体用スクリュー及びその製造方法,成形用金型

【課題】粉体の搬送や撹拌を効率良く行うことができる樹脂製の羽根を有する粉体用スクリューとその製造方法及び成形用金型を提供する。
【解決手段】粉体用スクリュー10は、軸12の周囲に羽根14が螺旋状に設けられており、羽根14の搬送面16は、軸方向に沿った断面において先端14A側が搬送方向前方に傾くように形成される。前記羽根14を樹脂成形するにあたり、前記軸12の周囲に配置される複数の分割型30,50,70,80,100,110を用意し、これら分割型を前記軸12側へ移動させたときに、各分割型の成形部の集合により前記軸12及び羽根14に相当する形状のキャビティ部分を形成し、該キャビティ部分に溶融樹脂を充填する。前記軸12の軸方向に対して非直交方向に進退する分割型80,110の成形部86A,116Aが、前記羽根14の搬送面16に対応するキャビティの一部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーのような粉体の搬送や撹拌等に利用される粉体用スクリュー及びその製造方法,成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等で用いられるトナーカセット(トナーカートリッジ)には、トナーを撹拌・搬送するためのトナー用スクリューが設けられている。このようなトナー用スクリューは、軸の周囲に羽根を螺旋状に取り付けた構造のものが使用されるが、スクリュー全体を金属で形成するとコストが高くなることから、従来より、軸を金属製とし、羽根を樹脂製にしたものが提案されている。図7(A)には、背景技術のトナー用スクリュー300の一例が示されている。同図に示すトナー用スクリュー300は、金属製の軸部302の外周面に、樹脂製の羽根304が螺旋状に巻き付けられた構造となっている。前記螺旋状の羽根304を射出成形により成形する場合、羽根の厚みが均一であるとアンダーカットが生じてしまうために、通常の上型と下型の型開き構造では取り出すことができない。そこで、アンダーカットをなくすために、羽根304の先端304Aよりも根元304Bの方が厚くなるように、抜け勾配(テーパ)を設ける必要がある。図7(B)には、前記図7(A)の#D−#D断面図が示されている。図7(B)に示すように、羽根304の先端304Aよりも根元304Bの方が厚くなるように形成する,すなわち、羽根304の両側面306,308にテーパを設けることにより、型抜きが可能となっている。このようなテーパを有する樹脂製の羽根を有するスクリューとして、下記特許文献1には、断面形状が台形である樹脂製の螺旋状羽根を有するトナー撹拌・搬送スクリューが記載されている。
【0003】
しかしながら、このような構造のスクリューは、攪拌を目的として使用する場合には都合がよいが、羽根の両側面にテーパが設けられているため、例えば、図7(B)に矢印F7で示す方向に粉体を搬送する場合、搬送面となる側面306が搬送方向と逆向きに傾斜しているため、効率良く粉体を搬送することができない。このような問題に対して、下記特許文献2には、螺旋状羽根の搬送路の長手方向に沿った縦断面形状が、搬送方向下流側へ傾斜したことを特徴とするスクリュー搬送体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−6597号公報
【特許文献2】特開2004−123284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献2に記載の技術では、螺旋状羽根が均一な厚みとなっているため、羽根を金属製とする場合にはよいが、樹脂製とするためには、上述したアンダーカットが問題となる。前記特許文献2には、当該文献に開示された羽根の形状を樹脂で成形するための具体的な手法が示されておらず、従来の上型と下型からなる金型構造を単に適用しただけでは、当該形状の羽根の製造を実現することはできない。
【0006】
本発明は、以上のような点に着目したもので、軸の周囲に螺旋状に設ける羽根を樹脂製とした場合でも、トナーのような粉体の搬送や撹拌等を効率良く行うことができる粉体用スクリューと、前記羽根を樹脂成形するための成形用金型と、該成形用金型を利用した粉体用スクリューの製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粉体用スクリューは、略円柱状の軸の回転により、該軸の外周面に螺旋状に設けられた羽根の搬送面で、粉体を一定方向に搬送する粉体用スクリューであって、前記羽根を樹脂製とするとともに、前記搬送面を、前記軸の軸方向に沿った断面において前記搬送方向の前方へ傾いた形状としたことを特徴とする。
【0008】
主要な形態の一つは、前記搬送面の断面が、円弧状ないし曲面状の部分を有することを特徴とする。他の形態は、前記搬送面の断面が円弧状の部分を有するときに、前記円弧状の部分と前記軸の接する点から、前記軸に対して直交方向に伸ばした直線を第1の直線とし、該第1の直線が前記円弧状の部分と交わる点を通過し、かつ、前記第1の直線に対して20度傾斜した直線を第2の直線としたときに、前記円弧状の部分が、前記第2の直線からはみ出さないように、前記円弧状の部分の曲率を設定したことを特徴とする。更に他の形態は、前記羽根の根元側の厚みが、先端側の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0009】
本発明の成形用金型は、略円柱状の軸の回転により、該軸の外周面に螺旋状に設けられた羽根の搬送面で、粉体を一定方向に搬送し、前記搬送面が、前記軸の軸方向に沿った断面において、搬送方向の前方へ傾いた粉体用スクリューを樹脂成形するための金型であって、前記軸の周囲に、該軸を挟んで対向するように、該軸の上方と下方にそれぞれ複数配置された複数の分割型よりなり、前記複数の分割型は、前記軸と対向する側に、該軸及び前記羽根に相当するキャビティの一部を形成する成形部をそれぞれ有しており、これら複数の分割型の成形部の集合により前記キャビティを形成するとともに、前記複数の分割型のうち、前記軸の上方に位置する分割型の少なくとも一つと、前記軸の下方に位置する分割型の少なくとも一つが、前記軸の軸方向に対して非直交方向に進退可能であり、前記複数の分割型のうち、前記非直交方向に進退する分割型以外の分割型は、前記軸方向に対して直交方向に進退可能であって、前記非直交方向に進退可能な分割型の成形部が、前記搬送面に対応するキャビティの一部を形成することを特徴とする。
【0010】
主要な形態の一つは、前記軸の上方及び下方に配置される複数の分割型がそれぞれ、前記軸と直交する方向に進退可能な第1の分割型と、前記軸と直交する方向であって、かつ、前記第1の分割型の進退方向と直交する方向へ進退可能な第2の分割型と、前記第1及び第2の分割型の双方の進退方向に対して傾斜した方向であって、前記軸方向と非直交方向に進退可能な第3の分割型と、からなることを特徴とする。
【0011】
本発明の粉体用スクリューの製造方法は、前記いずれかに記載の成形用金型を利用した粉体用スクリューの製造方法であって、前記複数の分割型の成形部を組み合わせて略円柱状のキャビティ部分と螺旋状のキャビティ部分を形成し、少なくとも前記螺旋状のキャビティ部分に溶融樹脂を充填することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転可能な軸の外周面に螺旋状に設けられた羽根の搬送面で、粉体を一定方向に搬送する粉体用スクリューにおいて、前記軸の軸方向に沿った断面における前記搬送面の断面が、前記搬送方向の前方へ傾くように、前記羽根を樹脂成形によって形成したので、狭い管路内のみならず、開放された空間で使用する場合であっても、効率良く粉体を搬送したり撹拌したりすることができる。また、前記羽根を成形するにあたり、前記軸の周囲に配置される複数の分割型を用意し、これら分割型を前記軸側へ移動させたときに、各分割型の成形部の集合部分により前記軸及び羽根に相当する形状のキャビティ部分を形成して溶融樹脂を充填する。そして、前記軸方向に対して非直交方向に進退する分割型の成形部が、前記羽根の搬送面に対応するキャビティの一部を形成することとしたので、型抜き時にアンダーカットが問題となることがなく、前記羽根を樹脂成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)は粉体用スクリューが搬送路にセットされた状態を示す主要断面図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図2】実施例の1の変形例を示す図であり、(A)は粉体用スクリューを示す側面図,(B)は前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図3】前記実施例1の粉体用スクリューを成形するための金型を示す図であり、(A)は型締め中の様子を示す外観斜視図,(B)は型開き状態を示す外観斜視図である。
【図4】前記金型の型開き状態を示す図であり、図4(A)は前記図3(B)を矢印F3a方向から見た面を、矢印F2方向に反転させて見た平面図,図4(B)は前記図3(B)を矢印F3b方向に見た平面図である。
【図5】前記金型の型締め状態を示す図であり、図5(A)は前記図3(B)を前記矢印F3a方向に見た面を、矢印F2方向に反転させて見た平面図に相当し、図5(B)は前記図3(B)を前記矢印F3b方向に見た平面図に相当する。
【図6】本発明の実施例2を示す図であり、(A)は粉体用スクリューを示す側面図であり、(B)は前記(A)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図7】(A)は背景技術のトナー用スクリューを示す平面図,(B)は前記(A)を矢印#D−#D線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
最初に、図1〜図5を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本発明の粉体用スクリューは、トナーのような粉体の搬送や撹拌等をするものであり、例えば、トナーカセットなどに利用される。本実施例では、本発明をトナーの搬送に利用する場合を例に挙げて説明する。図1(A)は本実施例の粉体用スクリューが搬送路にセットされた状態を示す主要断面図,図1(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図2は、粉体用スクリューの変形例を示す図であり、図2(A)は側面図,図2(B)は前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図3は、本実施例の粉体用スクリューを成形するための金型を示す図であり、図3(A)は型締め中の様子を示す外観斜視図,(B)は型開き状態を示す外観斜視図である。図4は、前記金型の型開き状態を示す図であり、図(A)は前記図3(B)を矢印F3a方向から見た面を、矢印F2方向に反転させて見た平面図,図4(B)は前記図3(B)を矢印F3b方向に見た平面図である。図5は、前記金型の型締め状態を示す図であり、図5(A)は前記図3(B)を前記矢印F3a方向に見た面を、矢印F2方向に反転させて見た平面図に相当し、図5(B)は前記図3(B)を前記矢印F3b方向に見た平面図に相当する。
【0016】
本発明の粉体用スクリューは、トナーカセットなどに利用されるものであり、図1(A)に示すように、本実施例の粉体用スクリュー10は、略円柱状の軸12の外周部に、羽根14が螺旋状に巻き付けられた構成となっている。該粉体用スクリュー10は、搬送路120内に設置されており、前記軸12が軸受け122によって回転可能に支持され、図示しない駆動機構により図1(B)に矢印FAで示す方向に回転可能となっている。そして、前記軸12及び羽根14の回転により、該羽根14の搬送面16によって、トナーなどの粉体が、図1(A)に矢印F1で示す方向に搬送される構成となっている。本実施例では、前記軸12として、金属製(例えば、スチール)の棒を利用しており、羽根14は樹脂製である。前記羽根14の材料となる樹脂としては、例えば、耐熱性が低い汎用プラスチック(PE,PVC,PP,PS,ABS,AS,PMMA,PVA,PVDC,PBD,PET等)や、耐熱性が高い汎用エンプラ(ポリアミド(PA),ポリアセタール(POM),ポリカーボネート(PC),変性ポリフェニレンエーテル(PPE),ポリブチレンテレフタレート(PBT),GF入りポリエチレンテレフタレート(GF−PET),超高分子量ポリエチレン(UHPE),GF入りのPC/ABSアロイ(GF−PC/ABS)等)が用いられる。
【0017】
前記羽根14は、前記軸12の軸方向に沿った断面において、先端14A側が、搬送方向(矢印F1方向)の前方へ傾くように傾斜している。本実施例では、前記搬送面16の軸方向に沿った断面の延長線Laと前記軸12と直交する直線L1とのなす角度aと、前記直線L1に対する非搬送面18の断面の延長線Lbとのなす角度bとは、ともに10°に設定されている。すなわち、前記羽根14は、図1(A)の左側の一部断面に示すように、軸12の軸方向に沿った断面において、先端14から根元14Bまでの厚みが均一となっている。なお、図1の例では、搬送面16と非搬送面18の傾きを同一にすることにより、羽根14の厚みを先端14Aから根元14Bまで均一にすることとしたが、図2(A)及び(B)に示す搬送スクリュー10´のように、非搬送面18の傾きを大きくして、軸方向と直交する方向に対する非搬送面18の角度bを30°程度に設定してもよい。前記角度aは、スライドストロークに応じて設定され、前記角度bは、製品ピッチに応じて設定される。
【0018】
以上のような傾きを有する搬送面16を有する羽根14を螺旋状に射出成形して型抜きするために、本実施例では、図3〜図5に示す金型20を利用している。該金型20は、粉体用スクリュー10の軸12の周囲に配置される複数の分割型により構成されており、本実施例では、6つの分割型30,50,70,80,100,110を用いている。このうち、分割型30と分割型50が、前記軸12を挟んで対向しており、前記分割型30は軸12の上方に配置され、分割型50は軸12の下方に配置されており、それぞれ軸方向に対して直交する方向(図2(B)の矢印F3a,F3b方向)に進退可能となっている。前記分割型30,50は、図3〜図5には、それぞれ複数のブロックとして図示されているが、実際には、図示しない駆動機構により進退可能な基部に櫛歯状に設けられた櫛歯部分に相当するものである。他の分割型70,80,100,110についても同様である。
【0019】
同様に、前記分割型70と分割型100が、前記軸12を挟んで対向しており、前記分割型70は軸12の上方(図3では右上方)に配置され、分割型100は軸12の下方(図3では左下方)に配置されており、それぞれ軸方向に対して直交し、かつ、前記分割型30,50の進退方向とも直交する方向(図2(B)の矢印F4a,F4b)に進退可能となっている。更に、前記分割型80と分割型110が、前記軸12を挟んで対向しており、前記分割型80は軸12の上方(図3では左上方)に配置され、軸方向に対して傾いた方向(図3(B)の矢印F5a,F5b方向)に進退可能となっている。他方の分割型110は、軸12の下方(図3では右下方)に配置され、軸方向に対して傾いた方向(図3(B)の矢印F6a,F6b方向)に進退可能となっている。前記分割型80,110の進退方向は、前記分割型30,50,70,100のいずれの進退方向に対しても非直交である。
【0020】
次に、各分割型について説明する。まず、分割型30は、図3(B)及び図4(A)に示すように、側面32,34,36,38,40,42,44,46,47を有した形状をしており、上面は平坦に形成され、軸12に対向する側の面には、略円柱状の軸12の一部に相当する形状の成形部48が形成されている。また、前記側面36には、羽根14に相当する部分のキキャビティの一部を形成する成形部36Aが設けられている。該成形部36Aは、前記羽根14の搬送面16側の一部に相当する。更に、前記側面46には、羽根14に相当する部分のキャビティの一部を形成する成形部46Aが設けられている。該分割型30は、前記分割型70,80と組み合わされることで、キャビティの上半分を形成する。該分割型30の側面32は、軸方向に対して直交しており、該側面32に沿って前記分割型70が矢印F4a,F4b方向に進退可能となっている。また、前記側面40は、軸方向に対して傾いており、該側面40に沿って前記分割型80が矢印F5a,F5b方向に進退可能となっている。
【0021】
前記分割型30と組み合わされる一方の分割型70は、図3(B)及び図4(A)に示すように、側面72,74,76,78を有しており、上面は平坦に形成され、軸12に対向する側面74には、略円柱状の軸12の一部に相当する形状の成形部74Aが形成されている。また、前記側面76には、羽根14に相当する部分のキャビティの一部を形成する成形部76Aが設けられている。前記側面72は、軸方向に対して直交しており、前記分割型30の側面32に沿って、分割型70が矢印F4a,F4b方向に進退可能となっている。
【0022】
前記分割型30と組み合わされる他方の分割型80は、図3(B)及び図4(A)に示すように、側面82,84,86,88,90を有しており、上面は平坦に形成され、軸12に対向する側面84には、略円柱状の軸12の一部に相当する形状の成形部84Aが形成されている。また、前記側面86には、羽根14に相当する部分のキャビティの一部を形成する成形部86Aが設けられている。該成形部86Aは、前記羽根14の搬送面16側の一部に相当する。前記側面82は、軸方向に対して傾いており、前記分割型30の側面40に沿って、分割型80が矢印F5a,F5b方向に進退可能となっている。このため、均一な厚みであり、かつ、搬送面16及び非搬送面18の双方が共に軸方向に対して傾斜している形状の羽根14を成形しても型抜きを行うことができる。
【0023】
次に、分割型50は、図3(B)及び図4(B)に示すように、側面52,54,56,58,60,62,64を有しており、下面は平坦に形成され、軸12に対向する側の面(上面)には、略円柱状の軸12の一部に相当する形状の成形部68が形成されている。また、前記側面56には、羽根14に相当する部分のキャビティの一部を形成する成形部56Aが設けられている。該成形部56Aは、前記羽根14の搬送面16側の一部に相当する。該分割型50は、前記分割型100,110と組み合わされることで、キャビティの下半分を形成する。該分割型50の側面52は、軸方向に対して直交しており、該側面52に沿って前記分割型100が矢印F4a,F4b方向に進退可能となっている。また、前記側面60は、軸方向に対して傾いており、該側面60に沿って前記分割型110が矢印F6a,F6b方向に進退可能となっている。
【0024】
前記分割型50と組み合わされる一方の分割型100は、図3(B)及び図4(B)に示すように、側面102,104,106,108を有しており、上面は平坦に形成され、軸12に対向する側面104には、略円柱状の軸12の一部に相当する形状の成形部104Aが形成されている。また、前記側面106には、羽根14に相当する部分のキャビティの一部を形成する成形部106Aが設けられている。前記側面102は、軸方向に対して直交しており、前記分割型50の側面52に沿って、分割型100が矢印F4a,F4b方向に進退可能となっている。
【0025】
前記分割型50と組み合わされる他方の分割型110は、図3(B)及び図4(B)に示すように、側面112,114,116,118,120を有しており、上面は平坦に形成され、軸12に対向する側面114には、略円柱状の軸12の一部に相当する形状の成形部114Aが形成されている。また、前記側面116には、羽根14に相当する部分のキャビティの一部を形成する成形部116Aが設けられている。該成形部116Aは、前記羽根14の搬送面16側の一部に相当する。前記側面112は、軸方向に対して傾いており、前記分割型30の側面60に沿って、分割型110が矢印F6a,F6b方向に進退可能となっている。このため、均一な厚みであり、かつ、搬送面16及び非搬送面18の双方が共に軸方向に対して傾斜している形状の羽根14を成形しても、型抜きを行うことができる。
【0026】
本実施例では、前記軸12として金属棒を利用しているため、前記分割型30,50,70,80,100,110を型締めして形成される軸用のキャビティ部に予め金属棒を設置しておき、周囲の螺旋状のキャビティ部に溶融樹脂を射出充填する。そして、所定時間が経過し、樹脂が硬化したら、分割型30,50,70,80,100,110が互いに離れるように移動させ、粉体用スクリュー10を取り出す。例えば、分割型30を固定する場合には、分割型50を下方に開き、該分割型50の移動に連動するように、他の分割型70,80,100,110も移動させるという具合である。分割型50を固定し、分割型30を上方に開く場合にも同様である。なお、本実施例では、キャビティの上半分を構成する分割型30,70,80のうち、搬送面16の一部に相当する部分の成形部86Aを有する分割型80を、軸方向に対して傾斜した方向(矢印F5a,F5b方向)に進退させ、キャビティの下半分を構成する分割型50,100,110のうち、搬送面16の一部に相当する部分の成形部116Aを有する分割型110を、軸方向に対して傾斜した方向(矢印F6a,F6b方向)に進退させることとした。このため、均一の厚みを有し、かつ、搬送面16及び非搬送面18が軸方向に対して傾斜した羽根14を形成しても、アンダーカットが問題になることはなく、金型20から取り出すことができる。以上のようにして形成された粉体用スクリュー10は、前記軸12が図1(A)の搬送路120内に回転可能に支持され、該搬送路120内に収容されたトナーの搬送を行う。
【0027】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)粉体用スクリュー10の羽根14を樹脂製とし、かつ、搬送面16が軸12の軸方向に沿った断面に搬送方向の前方に傾いた形状としたので、トナーなどの粉体をスクリューに巻き込み、効率良く搬送を行うことができる。特に、上述した背景技術(特許文献2)に記載されたような細い管路内で使用される場合のみならず、開放された空間で使用しても、粉体を効率良く搬送することができる。
(2)前記羽根14を樹脂製としたので、同形状の粉体用スクリューを全て金属で形成した場合と比べて、コンパクト化(軽量化)を図るとともに、製造コストの低減が可能となる。
(3)上述した軽量化及び搬送性の改善により、省電力に効果がある。
(4)前記羽根14を成形するにあたり、前記軸12の周囲に軸方向に沿って複数の分割型30,50,70,80,100,110を配置し、これら分割型30,50,70,80,100,110を前記軸12側へ移動させたときに、各分割型30,50,70,80,100,110の成形部の集合により前記軸12及び羽根14に相当する形状のキャビティ部分を形成して溶融樹脂を充填する。そして、前記軸方向に対して非直交方向に進退する分割型80,110の成形部86A,116Aが、前記羽根14の搬送面16に対応するキャビティの一部を形成することとしたので、羽根14の形状が型開き時に支障をきたすことがなく、スムースに金型10から取り出すことができる。
【実施例2】
【0028】
次に、図6を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図6(A)は、本実施例の粉体用スクリューの側面図であり、一部を軸方向に沿って切断した断面として示し、図6(B)は前記(A)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。前記粉体用スクリュー200は、略円柱状の軸202の外周部に、羽根204が螺旋状に巻き付けられた構成となっている。該粉体用スクリュー200は、前記実施例1と同様に搬送路に設置され、図示しない駆動機構により、図6(B)に矢印FCで示す方向に回転可能となっている。そして、前記軸202及び羽根204の回転により、該羽根204の搬送面206によって、トナーなどの粉体を一定方向(本実施例では図6(A)の右方向)に搬送する構成となっている。前記軸202及び羽根204は、前記実施例1と同様の材質により形成される。
【0029】
本実施例では、前記搬送面206を軸方向に沿って切断したときの断面に円弧210が形成されている。前記円弧210の曲率は、次の条件を満たすように定められる。まず、前記円弧210と前記軸202の接する点P1から、前記軸202に直交方向に伸ばした直線L1が、再び円弧210と交わる点をP2とする。そして、前記点P2を通過し、かつ、前記直線L1に対する角度cが20°の直線を直線Lcとしたときに、前記円弧210が前記直線Lcからはみ出さないように、前記円弧210を構成する円Cの曲率を設定する。このように円弧210の曲率を設定すると、上述した実施例1と同様の構成の金型20を利用し、各金型の成形部の形状を変更することによって、アンダーカットが問題となることなく羽根204を成形して型抜きすることができる。なお、本実施例では、前記非搬送面208に沿って延長した延長線Lbと前記直線L1のなす角度bが約30°程度となっており、羽根204の先端204A側よりも根元204B側の方が厚く設定されているが、前記角度bについても、上述した実施例1と同様に、製品ピッチに応じて適宜変更してよい。
【0030】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法,角度は一例であり、同様の効果を奏する範囲内で必要に応じて適宜変更可能である。
(2)上述した実施例1及び2では、軸を金属製とし、羽根を樹脂製としたが、これも一例であり、軸と羽根の双方を樹脂製としてもよい。また、軸と羽根の双方を樹脂製とし、更に、前記軸に中空部を設けて軽量化を図るようにしてもよい。前記中空部は、例えば、ガスインジェクション成形により可能である。樹脂の具体例も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更してよい。
(3)前記実施例1では、金型20を、6つの分割型30,50,70,80,100,110により構成したが、これも一例であり、更に分割数を増やしてもよい。
【0031】
(4)前記実施例2では、搬送面206に円弧210を設けることとしたが、これも一例であり、非搬送面208側へ向けて凹んだ形状であれば、円弧以外の曲面形状としてもよい。
(5)スクリューのピッチや径は、一定としてもよいし、適宜変更してもよい。例えば、中央付近はピッチを大きく設定し、両端付近はピッチを小さく設定するという具合である。
(6)前記実施例では、本発明をトナー搬送用に利用することとしたが、これも一例であり、本発明は、トナー以外の粉体の搬送の用途全般に適用可能である。むろん、本発明の粉体用スクリューは、搬送以外の目的,例えば、撹拌などにも適用可能であり、効率良く撹拌を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、回転可能な軸の外周面に螺旋状に設けられた羽根の搬送面が、軸方向に沿った断面において搬送方向前方へ傾くように、前記羽根を樹脂成形するにあたり、前記軸の周囲に複数の分割型を配置し、これら分割型を前記軸側へ移動させたときに、各分割型の成形部の集合により前記軸及び羽根に相当する形状のキャビティ部分を形成して溶融樹脂を充填する。そして、前記軸方向に対して非直交方向に進退する少なくとも分割型の成形部が、前記羽根の搬送面に対応するキャビティの一部を形成することとしたので、型抜き時にアンダーカットが問題となることがなく、前記羽根を樹脂成形することができる。これにより、樹脂製の羽根の搬送面に上述した傾きを設けることができるため、粉体を効率良く搬送したり撹拌等したりするための粉体用スクリューの用途に適用できる。特に、開放された空間で搬送等を行う場合に好適である。
【符号の説明】
【0033】
10,10´:粉体用スクリュー
12:軸
14:羽根
14A:先端
14B:根元
16:搬送面
18:非搬送面
20:金型
30:分割型
32〜47:側面
36A,46A,48:成形部
50:分割型
52〜64:側面
56A,64A,68:成形部
70:分割型
72〜78:側面
74A,76A:成形部
80:分割型
82〜90:側面
84A,86A:成形部
100:分割型
102〜108:側面
104A,106A:成形部
110:分割型
112〜120:側面
114A,116A:成形部
120:搬送路
122:軸受け
200:粉体用スクリュー
202:軸
204:羽根
204A:先端
204B:根元
206:搬送面
208:非搬送面
210:円弧
300:トナー用スクリュー
302:軸部
304:羽根
304A:先端
304B:根元
306,308:側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状の軸の回転により、該軸の外周面に螺旋状に設けられた羽根の搬送面で、粉体を一定方向に搬送する粉体用スクリューであって、
前記羽根を樹脂製とするとともに、前記搬送面を、前記軸の軸方向に沿った断面において前記搬送方向の前方へ傾いた形状としたことを特徴とする粉体用スクリュー。
【請求項2】
前記搬送面の断面が、円弧状ないし曲面状の部分を有することを特徴とする請求項1記載の粉体用スクリュー。
【請求項3】
前記搬送面の断面が円弧状の部分を有するときに、
前記円弧状の部分と前記軸の接する点から、前記軸に対して直交方向に伸ばした直線を第1の直線とし、
該第1の直線が前記円弧状の部分と交わる点を通過し、かつ、前記第1の直線に対して20度傾斜した直線を第2の直線としたときに、
前記円弧状の部分が、前記第2の直線からはみ出さないように、前記円弧状の部分の曲率を設定したことを特徴とする請求項2記載の粉体用スクリュー。
【請求項4】
前記羽根の根元側の厚みが、先端側の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体用スクリュー。
【請求項5】
略円柱状の軸の回転により、該軸の外周面に螺旋状に設けられた羽根の搬送面で、粉体を一定方向に搬送し、前記搬送面が、前記軸の軸方向に沿った断面において、搬送方向の前方へ傾いた粉体用スクリューを樹脂成形するための金型であって、
前記軸の周囲に、該軸を挟んで対向するように、該軸の上方と下方にそれぞれ複数配置された複数の分割型よりなり、
前記複数の分割型は、前記軸と対向する側に、該軸及び前記羽根に相当するキャビティの一部を形成する成形部をそれぞれ有しており、これら複数の分割型の成形部の集合により前記キャビティを形成するとともに、
前記複数の分割型のうち、前記軸の上方に位置する分割型の少なくとも一つと、前記軸の下方に位置する分割型の少なくとも一つが、前記軸の軸方向に対して非直交方向に進退可能であり、
前記複数の分割型のうち、前記非直交方向に進退する分割型以外の分割型は、前記軸方向に対して直交方向に進退可能であって、
前記非直交方向に進退可能な分割型の成形部が、前記搬送面に対応するキャビティの一部を形成することを特徴とする粉体用スクリューの成形用金型。
【請求項6】
前記軸の上方及び下方に配置される複数の分割型がそれぞれ、
前記軸と直交する方向に進退可能な第1の分割型と、
前記軸と直交する方向であって、かつ、前記第1の分割型の進退方向と直交する方向へ進退可能な第2の分割型と、
前記第1及び第2の分割型の双方の進退方向に対して傾斜した方向であって、前記軸方向と非直交方向に進退可能な第3の分割型と、
からなることを特徴とする請求項5記載の粉体用スクリューの成形用金型。
【請求項7】
請求項5又は6記載の成形用金型を利用した粉体用スクリューの製造方法であって、
前記複数の分割型の成形部を組み合わせて略円柱状のキャビティ部分と螺旋状のキャビティ部分を形成し、少なくとも前記螺旋状のキャビティ部分に溶融樹脂を充填することを特徴とする粉体用スクリューの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−40003(P2013−40003A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177296(P2011−177296)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(510247102)日本エフ・ティ・ビー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】