説明

粉末炭の製造方法

【課題】簡単且つ安価な装置で熱損失を抑えながら高品質且つ均一な粉末炭を連続的に製造する。
【解決手段】原料を、加熱気体が循環する循環路101に導入し、加熱気体により加熱し乾燥させながら粉砕機20に搬送し、加熱気体の存在下で粉砕し乾燥させて粉末原料を得る。次いで、粉末原料を加熱気体とともに循環路に沿って炭化器30に搬送し、加熱気体の存在下で粉末原料を加熱し炭化させて粉末炭を得る。次いで、粉末炭を加熱気体とともに循環路に沿って粉末炭回収装置50に搬送し、加熱気体から粉末炭を回収する。粉末炭が回収された後の加熱気体は循環路に沿って原料が導入される地点P10に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末炭の製造方法に関する。特に、本発明は粉末炭を連続的に製造するのに適した粉末炭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保全のために発生する間伐材や竹または食品の副生物などを有効活用するために、種々の活用方法が提案されている。これらの活用方法の一つとして炭化がある。
【0003】
間伐材や竹などの炭化方法としては、いるいわゆる炭焼きと同様に、適当な大きさに切断した原料を窯に充填して不完全燃焼させる充填方式が一般的に知られている。しかしながら、この充填方式は、不完全燃焼であるために悪臭と煙が多量に発生すること、得られる炭化物中には揮発成分が多く残存するため高品質の炭化物が得られないこと、いわゆるバッチ処理であるために大量の炭化物を得るには長時間を要し効率が悪いことなどの問題を有している。
【0004】
特許文献1には、5〜50mm程度にチップ化された原料を回転するテーパー状の筒体内に投入し燃焼させて順次炭化させることができる連続炭化装置が記載されている。しかしながら、この装置では、原料は酸素を多く含む空気中で燃焼されるため灰分ダストが多く発生する。また、原料がチップ状であるために、炭化物の品質にばらつきが大きく、また熱効率が悪い。
【0005】
また、特許文献2には、処理筒内で原料をフィードスクリューで搬送しながら300〜500℃の過熱蒸気で炭化させる炭化装置が記載されている。しかしながら、この装置は構造が複雑で高価であり、装置全体を高温に保持する必要があるために熱損失が多くエネルギーコストが高くなる。また、処理に長時間を要し、効率が悪い。
【0006】
さらに、粉末炭を得るためには、上記の装置で得た炭化物を粉砕装置で粉砕し粉末化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2549481号公報
【特許文献2】特開平11−223476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の従来の問題を解決し、高品質且つ均一な粉末炭を連続的に効率良く製造することにある。また、本発明の目的は、簡単且つ安価な装置を用いて、少ない熱損失で粉末炭を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉末炭の第1の製造方法は、
原料を加熱気体が循環する循環路に導入する工程と、
前記原料を前記加熱気体により加熱し乾燥させながら粉砕機に搬送し、前記粉砕機にて前記原料を前記加熱気体の存在下で粉砕し乾燥させて粉末原料を得る工程と、
前記粉末原料を前記加熱気体とともに前記循環路に沿って炭化器に搬送し、前記炭化器にて前記粉末原料を前記加熱気体の存在下で加熱し炭化させて粉末炭を得る工程と、
前記粉末炭を前記加熱気体とともに前記循環路に沿って粉末炭回収装置に搬送し、前記粉末炭回収装置にて前記粉末炭を回収する工程と、
前記粉末炭が回収された後の前記加熱気体を前記循環路に沿って前記原料が導入される地点に送る工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の粉末炭の第2の製造方法は、
原料を加熱気体が循環する第1循環路に導入する工程と、
前記原料を前記加熱気体により加熱し乾燥させながら粉砕機に搬送し、前記粉砕機にて前記原料を前記加熱気体の存在下で粉砕し乾燥させて粉末原料を得る工程と、
前記粉末原料を前記加熱気体とともに前記第1循環路に沿って粉末原料回収装置に搬送し、前記粉末原料回収装置にて前記粉末原料を回収する工程と、
前記粉末原料が回収された後の前記加熱気体を前記第1循環路に沿って前記原料が導入される地点に送る工程と、
回収された前記粉末原料を加熱気体が循環する第2循環路に導入する工程と、
前記粉末原料を前記加熱気体とともに前記第2循環路に沿って炭化器に搬送し、前記炭化器にて前記粉末原料を前記加熱気体の存在下で加熱し炭化させて粉末炭を得る工程と、
前記粉末炭を前記加熱気体とともに前記第2循環路に沿って粉末炭回収装置に搬送し、前記粉末炭回収装置にて前記粉末炭を回収する工程と、
前記粉末炭が回収された後の前記加熱気体を前記第2循環路に沿って前記粉末原料が導入される地点に送る工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料を粉砕機で粉砕し乾燥させて粉末原料を得た後、この粉末原料を炭化器で炭化させる。したがって、高品質且つ均一な粉末炭を短時間で得ることができる。
【0012】
加熱気体とともに原料を搬送しながら、原料の加熱、粉砕、乾燥、炭化、粉末炭の回収を行うので、原料を連続的に導入すれば、原料は粉砕されながら粉末状で乾燥され、更に粉末状で炭化されて、粉末炭を連続的に効率よく製造することができる。
【0013】
原料の加熱、粉砕、乾燥、炭化は、外界と遮断された密閉系内で行われるので、大気中の酸素の影響を受けない。したがって、燃焼による悪臭、煙、灰分ダストなどの発生や、酸化による品質の劣化を抑えることができる。また、爆発の心配もない。
【0014】
高温に曝される炭化器が粉砕機や粉末炭回収装置等と分離されているために、粉砕機や粉末炭回収装置等の構造を簡単化することができ、装置全体のコストを低減することができる。また、炭化器以外の装置を炭化温度と同程度の高温に維持する必要はないので、熱損失を少なくし、エネルギーコストを低減できる。
【0015】
第2の製造方法によれば、加熱気体の循環路を第1循環路及び第2循環路に分離している。したがって、加熱気体の種類、温度、流速(流量)等の条件を第1循環路及び第2循環路のそれぞれで独立して設定することができるので、最適条件で粉末原料及び粉末炭を製造することができる。また、第1循環路を含む系及び第2循環路を含む系のいずれか一方のみを運転することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置の全体構成の概略を示した図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される粉砕機を示した図であり、図2Aはその断面図、図2Bはその外観斜視図、図2Cはケーシングを取り外した状態を示した斜視図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される炭化器の中心軸を含む面に沿った断面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの3B−3B線を含む面に沿った炭化器の断面図である。
【図3C】図3Cは、図3Aの3C−3C線を含む面に沿った炭化器の断面図である。
【図3D】図3Dは、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される別の炭化器の中心軸を含む面に沿った断面図である。
【図3E】図3Eは、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される更に別の炭化器の中心軸を含む面に沿った断面図である。
【図3F】図3Fは、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される更に別の炭化器の中心軸を含む面に沿った断面図である。
【図3G】図3Gは、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される更に別の炭化器の中心軸を含む面に沿った断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される粉末炭回収装置及び精油回収装置の構成を示した図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置に使用される精油回収装置の別の構成を示した図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る粉末炭の製造装置の全体構成の概略を示した図である。
【図7A】図7Aは、本発明の実施の形態2に係る粉末炭の製造装置に使用される容器の中心軸を含む面に沿った断面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aの7B−7B線を含む面に沿った容器の断面図である。
【図7C】図7Cは、図7Aの7C−7C線を含む面に沿った容器の断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2に係る別の粉末炭の製造装置の容器及びその周辺部の構成の概略を示した図である。
【図9A】図9Aは、図8に示した容器の中心軸を含む面に沿った断面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aの9B−9B線を含む面に沿った容器の断面図である。
【図9C】図9Cは、図9Aの9C−9C線を含む面に沿った容器の断面図である。
【図9D】図9Dは、図9Aの9D−9D線を含む面に沿った容器の断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態3に係る粉末炭の製造装置の全体構成の概略を示した図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態3に係る粉末炭の製造装置に使用される粉末原料回収装置及び精油回収装置の構成を示した図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態4に係る粉末炭の製造装置の全体構成の概略を示した図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態4に係る別の粉末炭の製造装置の全体構成の概略を示した図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態4に係る更に別の粉末炭の製造装置の全体構成の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、粉末炭を製造するための原料は、特に限定されず、植物由来の原料であっても、動物由来の原料であってもよい。例えば、間伐材などの木材、竹、稲藁、籾殻、茶殻・コーヒー粕・ジュースの絞り粕などの食品加工副産物、食品廃棄物、樹脂、エラストマー類、コラーゲン、ゼラチン、汚泥、家畜糞尿など、炭を生成することができるものであればその種類は問わない。但し、高品質の粉末炭(更には精油)を得るためには、間伐材、竹、稲藁、籾殻、食品加工副産物などが好ましい。原料は、高い含水率(例えば含水率が70%以上)を有していてもよく、また、粘着性を有していてもよい。また、異種材料が混合されていてもよい。汚泥のように含水率が高く(例えば85%以上)且つ粘着性の強い原料を用いる場合には、廃棄木材、稲藁、茶殻等の廃棄原料を混合することが好ましい。
【0018】
本発明において、循環路(第1循環路、第2循環路)は、加熱気体が環状に周回する経路である。循環路(第1循環路、第2循環路)には、加熱気体が迂回する迂回路や、別の循環路を構成するサブ循環路等が設けられていても良い。これら迂回路やサブ循環路は、加熱気体がこれらを通って最初の地点に戻る周回路が形成される場合には、循環路(第1循環路、第2循環路)の一部とみなすことができる。
【0019】
循環路(第1循環路、第2循環路)を加熱気体が「循環する」とは、加熱気体の一部が循環する場合を含む。即ち、循環路(第1循環路、第2循環路)中の加熱気体の一部が系外に排出されても良い。また、系外の気体が循環路(第1循環路、第2循環路)に導入されても良い。
【0020】
原料は循環路(または第1循環路)に導入される。原料は、迂回路やサブ循環路の少なくとも一部を通過して循環路(または第1循環路)に導入されても良い。
【0021】
本発明において、原料の燃焼や酸化を回避するために循環路(第1循環路、第2循環路)を循環する加熱気体の酸素濃度が低いことが好ましく、具体的には加熱気体の酸素濃度は6vol%以下、更には5vol%以下、特に4vol%以下であることが好ましい。これにより、酸素が希薄な雰囲気下で乾燥、炭化を行うことができるので、爆発の危険なく、高品質の原料粉末及び粉末炭を得ることができる。酸素濃度は、循環路上の地点によって変化する。上記の酸素濃度に関する数値範囲は、酸素濃度が最も高い地点において満足することが好ましい。
【0022】
上記のような低酸素濃度の加熱気体としては、例えば窒素ガス、不活性ガス、二酸化炭素ガス、燃焼排ガス、過熱蒸気などを用いることができる。特に、炭化器を加熱するために加熱炉(燃焼炉)を用いる場合には、加熱炉で発生する燃焼ガスを加熱気体として循環路(第1循環路、第2循環路)に導入しても良い。これにより、低酸素濃度のガスを低コストで調達することができるとともに、加熱気体を加熱するためのエネルギーコストを低減することができる。加熱気体が、原料を乾燥及び/又は炭化する際に発生した気体を含んでいてもよい。第1循環路と第2循環路を用いる場合には、それぞれを循環する加熱気体は同一であっても良く、異なっていても良い。第1循環路内の最高温度は比較的低いので、第1循環路には空気などの比較的酸素濃度が高い気体を導入しても良い。
【0023】
本発明の粉末炭の第1及び第2の製造方法において、前記粉末原料を得る工程が、原料を、粉砕機と容器との間で形成されるサブ循環路に沿って加熱気体とともに循環させる工程と、所定の大きさに粉砕され且つ乾燥された粉末原料を容器内で分級する工程とを備えることが好ましい。原料をサブ循環路に沿って加熱気体とともに循環させることにより原料の粉砕と乾燥が進行する。特に原料の含水率が高い場合や原料が粘着性を有している場合であっても、原料を効率良く乾燥及び粉末化することができる。そして、容器の分級作用によって選択された小さく且つ乾燥された粉末原料のみを炭化器に送ることができるので、より高品質且つより均一な粉末炭を安定して得ることができる。
【0024】
粉砕機は、原料を加熱気体の存在下で粉砕することができる粉砕機能を有していれば、その構成は特に制限はない。粉砕機内での加熱気体の温度は、原料の炭化温度以下で、なるべく高温であることが好ましい。原料の乾燥を促進するためである。
【0025】
粉砕機が、粉砕機能に加えて送風機能を有することが好ましい。これにより、加熱気体を循環させるための送風機(循環ファン)の能力の低下させたり、送風機の設置個数を低減したりすることができる。また、上述のサブ循環路を設ける場合には、サブ循環路に沿って加熱気体及び原料を循環させるための送風機を別途設ける必要がなくなる。
【0026】
炭化器は、粉砕機で粉砕された粉末原料を加熱気体の存在下で加熱し炭化させる。炭化器の構造は特に制限はないが、粉末原料を加熱気体で移動させながら炭化できることが好ましい。
【0027】
例えば、前記炭化器が、同軸に配された外筒及び内筒と、前記外筒の内周面に周方向に沿って延設された複数の邪魔板とを備えることが好ましい。この場合、前記加熱気体は、前記外筒と前記内筒とに囲まれた内部空間内を旋回しながら軸方向に移動する。前記加熱気体に搬送された前記粉末原料は、前記外筒の内周面に沿って旋回する。前記複数の邪魔板は、前記粉末原料の軸方向の移動を制限する。このような構成の炭化器を用いると、粉末原料の炭化器内での滞在時間が長くなり、また、粉末原料をムラなく加熱することができる。したがって、効率良く均質な粉末炭を得ることができる。
【0028】
炭化器内の温度は、原料や得ようとする粉末炭の品質などに応じて適宜設定することができるが、一般には280℃以上であることが好ましい。
【0029】
炭化器内で粉末原料をガス賦活させてもよい。ガス賦活とは、粉末原料を水蒸気、二酸化炭素などのガスと高温で反応させることにより微細孔を形成することをいい、これにより活性炭を得ることができる。
【0030】
粉末炭回収装置及び粉末原料回収装置は、加熱気体から粉末炭や粉末原料を捕集し回収することができれば特に制限はなく、公知の装置を用いることができる。例えば、遠心力を利用するサイクロンや、フィルタにより物理的に捕捉するバグフィルタなどを用いることができる。
【0031】
本発明によって得られる粉末炭(活性炭を含む)は、高品質且つ均一である。したがって、この粉末炭の用途としては、原料の種類にもよるが、例えば燃料の他、吸着剤、吸湿剤、吸臭剤、濾過材料、各種工業原料、健康食品などの粉末炭加工品として利用することができる。
【0032】
本発明の第1及び第2の粉末炭の製造方法が、粉末炭が回収された後の加熱気体の少なくとも一部を精油回収装置に導入し、精油回収装置にて加熱気体中の精油を回収する工程を更に備えていてもよい。また、本発明の粉末炭の第2の製造方法が、記粉末原料が回収された後の加熱気体の少なくとも一部を精油回収装置に導入し、精油回収装置にて加熱気体中の精油を回収する工程を更に備えていてもよい。これにより、粉末炭または粉末原料の製造と並行して精油を得ることができる。原料を加熱し乾燥させる過程や炭化させる過程で副産物として発生する精油は、原料の種類にもよるが、例えば防臭剤、防腐剤、防虫剤などの精油加工品として利用することができる。
【0033】
以下に本発明を、好適な実施の形態を示して詳細に説明する。但し、本発明は、以下に示す実施の形態に限定されないことはいうまでもない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る粉末炭の製造装置1の全体構成の概略を示した図である。
【0035】
本実施の形態1の粉末炭の製造装置1は、原料導入装置10、粉砕機20、炭化器30、粉末炭回収装置50、予熱器60を備えている。予熱器60と粉砕機20とは配管101aで接続され、粉砕機20と炭化器30とは配管101bで接続され、炭化器30と粉末炭回収装置50とは配管101cで接続され、粉末炭回収装置50と予熱器60とは配管101dで接続されている。このように配管101a〜101dは粉砕機20、炭化器30、粉末炭回収装置50、予熱器60を順に環状に接続して循環路101を構成している。循環路101に加熱気体を循環させるための循環ファン102が配管101d上に設けられている。配管101a〜101dを示す実線に設けられた矢印は、加熱気体の移動方向を示している。
【0036】
原料導入装置10は、原料を一時的に貯留するホッパー11と、ホッパー11の下端に設けられた定量供給装置12とを備える。定量供給装置12の出口は配管101a上の原料導入点P10に接続されている。定量供給装置12としては、原料を定量して配管101aに導入することができれば特に制限はないが、例えばロータリバルブ、スクリューフィーダなどを用いることができる。
【0037】
粉砕機20を図2A〜図2Cを用いて説明する。図2Aは粉砕機20の断面図、図2Bは粉砕機20の外観斜視図、図2Cはケーシング21を取り外した状態を示した斜視図である。粉砕機20は、吸引口22と吐出口23とが設けられたケーシング21と、ケーシング21内に配された羽根車27及びスクリーン24と、羽根車27を回転させる電動機25とを有している。吸引口22は、羽根車27の回転軸27aの延長上に設けられており、吐出口23は、羽根車27の回転軸27aを中心軸とする円筒面の接面と平行に設けられている。吸引口22は配管101aに接続され、吐出口23は配管101bに接続される(図1参照)。
【0038】
スクリーン24は、例えばステンレス鋼等の金属材料からなり、多数の開孔24aが穿孔された円筒形状の部材である。スクリーン24は羽根車27の回転軸27aと同軸に、羽根車27の周囲に配置されている。
【0039】
粉砕機20は、粉砕機能を有している。即ち、加熱気体とともに粉砕機20内に流入した原料は、スクリーン24で囲まれた空間内で、羽根車27による打撃、スクリーン24の内周面への衝突、羽根車27の先端とスクリーン24の内周面とによる剪断、原料同士の衝突、スクリーン24の開孔24aを通過する際の削りなどを受け粉砕される。
【0040】
更に、粉砕機20は、送風機能を有している。即ち、電動機25により羽根車27が回転すると、配管101aを通じて送られた加熱気体は、吸引口22から吸引され、スクリーン24の開孔24aを通過して吐出口23から高速(例えば、15m/s〜30m/s)の気流として吐出される。電動機25はインバーターモータ等のように可変速であることが好ましい。
【0041】
粉砕機20は、少なくとも粉砕機能を有していれば良く、その構成は図2A〜図2Cに限定されない。例えば、羽根車27の形状(例えば羽根の形状や枚数など)や、羽根車27の回転軸27aの向きなどは適宜変更することができる。図2Cに示すスクリーン24に形成された開孔24aの形状はスリット状であるが、本発明はこれに限定されず、例えば円形、楕円形などであってもよい。
【0042】
粉砕機20として、送風機能を有しない粉砕機を使用することも可能である。この場合には、必要に応じて、加熱気体を送風するための送風機を循環路101上に設けることができる。
【0043】
図1では1台の粉砕機20のみが図示されているが、2台以上の粉砕機を用いることもできる。2台以上の粉砕機を直列に連結する場合には、上流側の粉砕機で粗粉砕し、下流側の粉砕機で微粉砕するなど、上流側から下流側に向かって徐々に粉砕径が小さくなるように2台以上の粉砕機を配置するのが好ましい。また、2台以上の粉砕機を並列に接続する場合には、原料導入装置10も粉砕機と同数だけ設けることが好ましい。即ち、原料導入点P10よりも上流側にて配管101aを粉砕機と同数の枝配管に分岐し、各枝配管に原料導入装置10及び粉砕機をそれぞれ設け、粉砕機の下流側で複数の枝配管を1つの配管101bに統合することができる。
【0044】
炭化器30は、図1に示すように加熱炉70内に配置されている。加熱炉70は、上下方向に延びた略筒形状を有し、炭化器30よりも下側に燃焼室75を備える。燃焼室75には、加熱炉70内に向かって空気混合燃料を噴射するノズル71が設けられている。空気41は、燃焼空気ファン42によって加熱炉70の上方の煙突74内に設置された予熱器43に送られて予熱された後、燃料72と混合されてノズル71から加熱炉70内に噴射される。これにより、加熱炉70内での燃料の燃焼効率の向上を図っている。
【0045】
ノズル71に送られる空気41及び燃料72の各量や混合比をバルブ73b,73cでそれぞれ調整してもよい。バルブ73b,73cの開度は、温度検出調整器73aが検出した炭化器30と粉末炭回収装置50とを結ぶ配管101c内の加熱気体の温度に応じて制御することができる。これにより、加熱炉70内の燃焼を制御して、炭化器30内での粉末原料の加熱温度(炭化温度)を調整することができる。
【0046】
噴射された燃料は燃焼室75内で燃焼し、発生した高温の燃焼ガスは加熱炉70内を上方に流れ、煙突74から大気中に放出される。炭化器30は、この燃焼による火炎及び燃焼ガスによって加熱される。図1では、加熱炉70の燃料として液体燃料を使用しているが、気体燃料や固体燃料を使用してもよい。
【0047】
図3Aは炭化器30の上下方向と平行な中心軸を含む面に沿った断面図、図3Bは図3Aの3B−3B線を含む水平面に沿った炭化器30の断面図、図3Cは図3Aの3C−3C線を含む水平面に沿った炭化器30の断面図である。図3A〜図3Cには、加熱炉70の内壁面も併せて図示している。
【0048】
炭化器30は、いずれも円筒形状を有する外筒31a及び内筒31bを備え、これらが同軸に配されている。外筒31aと内筒31bとの間の空間(以下、「内部空間」という)39は、外筒31a及び内筒31bの上下端に設けられた封止板33a,33bによって密閉されている。封止板33a,33bは、中央が開口したドーナツ形状を有する。封止板33a,33bの外径はいずれも外筒31aの外径と略一致することが好ましい。一方、封止板33a,33bの内径は、その両方が内筒31bの内径と略一致しても良いが、少なくとも一方(図3Aでは下側に配される封止板33bの内径)は内筒31bの内径よりも小さいことが好ましい。内筒31b内を通過する燃焼ガスの流量を制限するためである。
【0049】
外筒31aの外周面には上下方向に延びた複数の第1フィン36が略等間隔に設けられており、内筒31bの内周面には上下方向に延びた複数の第2フィン37が略等間隔に設けられている。外筒31aの外周面には、更に、水平面と平行な複数の連結フィン36aが上下方向に略等間隔に設けられている。図3Bに示すように、連結フィン36aは複数の第1フィン36を周方向に連結し、その外周端縁は略円形である。なお、第1フィン36及び第2フィン37は、例えば螺旋状であってもよく、あるいは水平面と平行な円板であってもよい。
【0050】
加熱炉70の内周面には、いずれも略円弧状(または略C字状)である複数の仕切板76a及び複数の仕切板76bが水平面と平行に設けられている。仕切板76aと仕切板76bとは実質的に同一形状を有し、その中心角は180°よりやや大きい。図3Aに示されているように、上下方向において、複数の連結フィン36aとほぼ同一位置に仕切板76aと仕切板76bとが交互に配置されている。また、図3Bに示されているように、上方から見たとき、複数の仕切板76aは同一位置に配置されており、また、複数の仕切板76bも同一位置に配置され、更に、仕切板76aと仕切板76bとは炭化器30に対して互いに反対側に、それぞれの周方向の端部が互いに重なり合うように配置されている。仕切板76a,76bの内周端縁と連結フィン36aの外周端縁とは、僅かに離間している。加熱炉70の内周面に設けられる仕切板の形状は上記に限定されない。例えば略円弧状の仕切板の中心角は上記に限定されず、これより大きくても小さくてもよい。あるいは、連続する1つ又は複数の仕切板が加熱炉70の内周面に螺旋状に(一条ネジ又は多条ネジのごとくに)設けられていても良い。
【0051】
外筒31aの上端近傍には内部空間39に連通した流入口34が設けられており、外筒31aの下端近傍には内部空間39に連通した流出口35が設けられている。流入口34は配管101bと接続され、流出口35は配管101cと接続される(図1参照)。従って、炭化器30の内部空間39には、粉砕機20で粉砕された原料(粉末原料)が加熱気体とともに、流入口34から流入する。
【0052】
流入口34を通る面に沿った断面図を示した図3Bより理解できるように、流入口34は、流入口34を通って炭化器30内に流入する粉末原料を含む加熱気体が外筒31aの内周面に沿って旋回するように設けられている。より詳細には、流入口34は、円筒面である外筒31aの内周面の接線に沿って設けられている。
【0053】
流出口35を通る面に沿った断面図を示した図3Cより理解できるように、流出口35は外筒31aの内周面に沿って旋回する粉末原料を含む加熱気体がスムーズに流出口35を通って炭化器30外に流出するように設けられている。より詳細には、流出口35は、円筒面である外筒31aの内周面の接線に沿って設けられている。
【0054】
外筒31aの内周面には、いずれも略円弧状(または略C字状)である複数の邪魔板38a及び複数の邪魔板38bが水平面と平行に(即ち周方向に)設けられている。邪魔板38aと邪魔板38bとは実質的に同一形状を有し、その中心角は180°よりやや大きい。図3Aに示されているように、邪魔板38a,38bは、その内周端縁がその外周端縁よりも下側に位置する傾斜曲面(即ち、円錐面の一部)を有しており、これにより粉末原料や炭化粉末がその上面に滞留するのを防いでいる。但し、本発明はこれに限定されず、邪魔板38a,38bが平面状であってもよい。複数の邪魔板38aは上下方向に等間隔で配置されており、また、複数の邪魔板38bも上下方向に等間隔で配置されており、更に、邪魔板38aと邪魔板38bとが上下方向に交互に配置されている。また、図3Bに示されているように、上方から見たとき、複数の邪魔板38aは同一位置に配置されており、また、複数の邪魔板38bも同一位置に配置され、更に、邪魔板38aと邪魔板38bとは内筒31bに対して互いに反対側に、それぞれの周方向の端部が互いに重なり合うように配置されている。邪魔板38a,38bは、外筒31aの内周面に沿って加熱気体とともに旋回する粉末原料の上下方向における位置を規制する。本実施形態では、周方向の配置が異なる2種類の邪魔板38a,38bを用いたが、本発明はこれに限定されず、例えば中心角が120°よりやや大きい複数の略円弧状の邪魔板を、周方向における位置を3通りに変えて配置してもよい。あるいは、上記邪魔板38a,38bよりも中心角が大きな略円弧状の邪魔板や、ドーナツ状の円板の一部を切り欠いた邪魔板、切り欠きのないドーナツ状の邪魔板など用いることができる。更に、連続する1つ又は複数の邪魔板が外筒31aの内周面に螺旋状に(一条ネジ又は多条ネジのごとくに)設けられていても良い。いずれの場合であっても、邪魔板の内周端縁がその外周端縁よりも下側に位置するように傾斜していてもよく、あるいは、水平であってもよい。
【0055】
加熱炉70内において、炭化器30の下方の燃焼室75での燃焼によって発生した燃焼ガスは、外筒31aの外側及び内筒31bの内側を通り上方へ移動する。第1フィン36及び第2フィン37は、燃焼ガスと炭化器30の内部空間39との間での熱交換を促進する。更に、外筒31aの外側を上昇する燃焼ガスは、仕切板76a,76bによってその流路をジグザグ状に変更されるので、高効率な熱交換が行われる。
【0056】
図3A〜図3Cに示した炭化器30は一例であって、本発明はこれに限定されない。
【0057】
例えば、図3A〜図3Cに示した炭化器30の外筒31a及び内筒31bはいずれも径が一定の円筒形状を有していたが、図3Dのように外筒31aが上側で径が大きく下側で径が小さな円錐面形状(テーパ形状)を有していてもよく、図3Eのように内筒31bが上側で径が小さく下側で径が大きな円錐面形状(テーパ形状)を有していてもよく、更に、図3Fのように外筒31aが上側で径が大きく下側で径が小さな円錐面形状(テーパ形状)を有し且つ内筒31bが上側で径が小さく下側で径が大きな円錐面形状(テーパ形状)を有していてもよい。図3D〜図3Fにおいて図3Aに示した部材と同一の部材には同一の符号を付している。仕切板76a,76b及び加熱炉70の内壁面の図示は省略している。
【0058】
また、図3A〜図3Fに示した炭化器30では、粉末原料は加熱気体とともに、上端近傍の流入口34から流入し内部空間39を旋回しながら下降し下端近傍の流出口35から流出するが、下端近傍に流入口34を設け、上端近傍に流出口35を設けて、粉末原料が加熱気体とともに、内部空間39を旋回しながら上昇させてもよい。
【0059】
更に、炭化器30は、図3Gに示すように、外筒31aと内筒31bとの間に中間筒31cを設けた三重筒構造を有していてもよい。中間筒31cの内周面には、外筒31aの内周面に設けられた邪魔板38a,38bと同様の構成を有する邪魔板38c,38dが設けられることが好ましい。流入口34は、内筒31bと中間筒31cとの間の内部空間39aの下端近傍に設けられており、流出口35は中間筒31cと外筒31aとの間の内部空間39bの下端近傍に設けられている。粉末原料は加熱気体とともに、流入口34から流入し内部空間39aを旋回しながら上昇し、次いで、内部空間39bを旋回しながら下降して流出口35から流出する。図3Gにおいて図3Aに示した部材と同一の部材には同一の符号を付している。仕切板76a,76b及び加熱炉70の内壁面の図示は省略している。
【0060】
炭化器30は、上述した構成に限定されず、加熱気体によって搬送される粉末原料を加熱炉70内の燃焼によって発生する熱で加熱し炭化させ粉末炭を生成することができればよい。例えば、加熱気体が流れるチューブをコイル状等に屈曲させ、外周面にフィンを設けたもの等を使用することができる。
【0061】
図1に戻り、粉末炭回収装置50は、炭化器30で生成された粉末炭を加熱気体から分離し回収する。粉末炭回収装置50の一例を図4に示す。配管101eは第1サイクロン51に接続され、第1サイクロン51の流出口は配管59を介して一対の第2サイクロン52a,52bに接続され、一対の第2サイクロン52a,52bの流出口は配管101dに接続されている。第1サイクロン51で遠心分離された粉末炭は受け器53aに一時的に貯留され、ロータリバルブ53bを通じて第1製品ホッパ53cに落下し回収される。また、第2サイクロン52a,52bで遠心分離された粉末炭は第2製品ホッパ54a,54bに落下し回収される。
【0062】
図4の粉末炭回収装置50では、サイクロンを直列に2段に繋ぎ、更に後段は2つのサイクロンを並列に配置したマルチサイクロンとしたが、本発明はこれに限定されない。例えばサイクロンの配置を1段のみとしてもよく、あるいはサイクロンを直列に3段以上に繋いでもよい。また、各段を、1つのみのサイクロンで構成してもよく、あるいは並列に繋いだ複数のサイクロンで構成してもよい。更に、バグフィルタなどを併用してもよい。また、粉末炭を捕集することができれば、粉末炭回収装置50をサイクロン以外の装置で構成してもよい。
【0063】
図4に示すように、配管101dに配管81を介して精油回収装置80が接続されている。精油回収装置80は、粉末炭が回収された後の加熱気体に含まれる気化した精油を液化して回収するためのものである。この精油回収装置80は、配管81を通じて送られた加熱気体を冷却水82aによって冷却するための凝縮器82と、凝縮器82によって液化された精油を貯留するための精油タンク83とを備える。配管101dには圧力検出調整器84aが設けられている。循環路101内の圧力は、例えば、原料を加熱し乾燥し炭化させることによって原料からガスが発生することにより、あるいは、後述するバルブ100aから気体100を導入することにより、上昇する。圧力検出調整器84aは配管101d内の圧力(即ち、循環路101内の圧力)をモニターし、配管101d内の圧力が所定値に維持されるように、配管81に設けられたバルブ84bの開度を調整する。バルブ84bの開度に応じて配管81を介して精油回収装置80に精油を含む加熱気体が送られる。精油回収装置80によって回収できなかった、加熱気体に残存する精油は、加熱気体とともに送風ファン89bによって配管89a、ノズル89cを通じて加熱炉70内に送られ燃焼される(図1参照)。凝縮器82を通過した後の冷却水82aは、系外に排出してもよい。但し、加熱気体として過熱蒸気を使用する場合には、加熱炉70内で加熱して過熱蒸気として循環路101に導入してもよい。図4では凝縮器82で加熱気体を冷却するための冷却媒体として冷却水82aを用いたが、冷却媒体はこれに限定されず、例えば空気を用いることもできる。
【0064】
加熱気体が過熱蒸気である場合、図4に示す精油回収装置80において過熱蒸気を凝縮器82で冷却すると、精油のみならず過熱蒸気も液化してしまう。これに対して、加熱気体が過熱蒸気以外の気体(例えば窒素ガス)である場合には、加熱気体が液化する可能性を考慮する必要がない。加熱気体として過熱蒸気以外の気体を用いる場合に好適な精油回収装置80の構成例を図5に示す。図5では、図4と同一の構成要素には同一の符号を付している。図5に示すように、配管101d上に凝縮器82が直接設けられている。凝縮器82の冷却媒体としては、冷却空気82bが好ましい。粉末炭回収装置50を通過した加熱気体は全て凝縮器82に送られ冷却される。したがって、原料の乾燥や炭化の過程で発生した、加熱気体に含まれる精油ガスのほぼ全てを凝縮器82で液化して回収することができる。よって、これらのガス成分は循環路101を更に循環して、例えば炭化器30で再加熱されることはない。その結果、図4の場合に比べて、より高品質でより多くの精油を回収することができる。
【0065】
凝縮器82より下流の配管101dに圧力検出調整器85aを設けることが好ましい。圧力検出調整器85aは、配管101d内の圧力をモニターし、配管101d内の圧力が所定値に保たれるようにバルブ85bの開度を調整する。バルブ85bの開度に応じて精油を含む加熱気体が配管89a、ノズル89cを通じて加熱炉70内に送られ燃焼される。循環路101内の圧力は、例えば、原料を加熱し乾燥し炭化させることによって原料からガスが発生することにより、あるいは、後述するバルブ100aから気体100を導入することにより、上昇する。圧力検出調整器85aは、配管101d内の圧力(即ち、循環路101内の圧力)を、バルブ85bの開度を調整することで調整し所定値に維持する。
【0066】
また、凝縮器82より下流の配管101d内の温度を調整するために、当該温度を温度検出調整器86aでモニタしてバルブ86bの開度を調整して、凝縮器82を通過する冷却空気82bの流量を調整してもよい。凝縮器82より下流の配管101d内の温度は、圧力検出調整器85aによって維持された所定圧力での精油の飽和蒸気温度以下となるように制御することが好ましい。これにより、凝縮器82で加熱気体に含まれる精油のほぼ全量を回収することができる。
【0067】
精油回収装置80の構成は、加熱気体に含まれる精油の少なくとも一部を回収することができれば、図4、図5に限定されない。
【0068】
精油回収装置80を省略することも可能である。但し、循環路101内の圧力を所定値に維持するために、原料の乾燥や炭化の過程で発生したガスや後述するバルブ100aから導入された気体100を循環路101外に放出することが望ましい。このため、例えば、図4において、バルブ84bが設けられた配管81を凝縮器82を介さずに直接送風ファン89bの流入口に接続することができる。
【0069】
図1に戻り、粉末炭が回収された加熱気体は、予熱器60により所望する温度に加熱される。予熱器60の構成は特に制限はなく、例えば多数のフィンが設けられた熱交換器を使用することができる。本実施の形態では予熱器60は加熱炉70内に設置されているが、予熱器60を加熱炉70以外の熱源により加熱してもよい。
【0070】
配管101dと配管101aとを、予熱器60を通過しないバイパス配管103によって繋いでもよい。この場合、バイパス配管103と配管101aとの接続点と原料導入点P10との間の配管101aの部分に温度検出調整器61aを設け、配管101a内の加熱気体の温度を所定値に維持することが好ましい。温度検出調整器61aで検出した温度に応じてバイパス配管103に設けられたバルブ61bの開度を調整することで、原料導入点P10での加熱気体の温度を適切に維持することができる。なお、温度検出調整器61aの設置位置は上記に限定されず、例えば原料導入点P10と粉砕機20との間の配管101aの部分に設けてもよく、あるいは、配管101bに設けてもよい。
【0071】
循環路101を循環する加熱気体となる気体100は、バルブ100aを介して循環路101に導入される。気体100が導入される循環路101上の位置は特に制限はない。導入される気体100の温度が低い場合は、図1に示されているように、予熱器60より上流に位置する配管101dに気体100を導入することが好ましい。気体100は、循環路101に導入される前に、所定温度に加熱されていることが好ましい。この加熱は、例えば加熱炉70にボイラー(加熱気体が過熱蒸気の場合)又は予熱器(加熱気体が過熱蒸気以外の場合)を設置して、気体100をこれに予め通過させることにより行うことができる。
【0072】
図1において、循環ファン102の位置は、配管101d上である必要はない。例えば、粉末炭回収装置50内(例えば図4の配管59上)に設けてもよい。あるいは、配管101d及び配管59など、異なる位置に複数台設けてもよい。循環ファン102は、風量を調整できるようにインバータモータ駆動が好ましい。
【0073】
以上のように構成された本実施の形態1に係る装置1を用いた粉末炭の製造方法の一例を以下に説明する。但し、本発明の粉末炭の製造方法は以下の例に限定されない。
【0074】
最初に、バルブ84b(図4参照)又はバルブ85b(図5参照)を開き、バルブ100aを開いて気体100を循環路101に導入する。これと並行して、循環路101に設けられた排気弁(図示せず)を開く。循環路101内の気体が気体100に置換された後、当該排気弁を閉じる。気体100としては、例えば蒸気(過熱蒸気を含む)や低酸素ガスを用いることができる。
【0075】
次いで、循環ファン102を駆動し、粉砕機20を駆動し羽根車27を回転させて、気体100を循環路101内に循環させる。そして、燃焼空気ファン42を駆動し、加熱炉70のパイロットバーナー(図示せず)を点火し、バルブ73b,73cを開き、ノズル71から空気混合燃料を燃焼室75内に噴射し、燃料を燃焼させる。これにより、循環路101を循環する気体100は、予熱器60及び炭化器30で加熱され加熱気体となる。加熱気体の温度は、温度検出調整器61aにより検出される温度で例えば約250℃である。
【0076】
循環路101を循環する加熱気体が所定温度に達した後、定量供給装置12を駆動してホッパー11に貯留されていた原料を原料導入点P10を通じて配管101aに導入する。
【0077】
原料は、加熱気体によって加熱され且つ乾燥されながら配管101a内を移動し、粉砕機20に搬送される。
【0078】
粉砕機20では、原料は、スクリーン24で囲まれた空間内で、スクリーン24の開孔24aを通過できる大きさになるまで粉砕される。原料が粉砕されると、その表面積は拡大し、加熱気体との接触面積が拡大する。粉砕前に原料内に存在していた水分は、粉砕によって表面に露出し表面水となるため、原料の乾燥は急速に進行する。
【0079】
スクリーン24の開孔24aを通過した、粉末状に粉砕され且つ乾燥された原料(粉末原料)は、循環ファン102及び粉砕機20の送風機能によって加熱気体とともに粉砕機20から吐出される。
【0080】
粉末原料の大きさは特に限定されないが、例えばその平均粒径が500μm以下、更には100μm以下が好ましい。粉末原料の平均粒径は、例えば、試料をエタノール中に分散させ、マイクロトラックにより測定することができる。粉末原料の粒径が大きすぎると、高品質且つ均一な炭化粉末を短時間で得ることが困難となる。
【0081】
粉末原料は、配管101bを介して炭化器30に搬送される。ここでは、図3A〜図3Cに示した炭化器30を用いた場合を説明する。加熱気体によって搬送された粉末原料は、炭化器30の上端近傍に設けられた流入口34から炭化器30内に流入し、外筒31aと内筒31bとの間の内部空間39内を旋回する。このとき、加熱気体に比べて質量の大きな粉末原料は旋回によってより大きな遠心力を受け、外筒31aの内周面に沿って旋回する。粉末原料の旋回速度は粉末原料と外筒31aの内周面との摩擦抵抗により抑制され、また、粉末原料の下降は外筒31aの内周面に設けられた複数の邪魔板38a,38bによって制限されるので、炭化器30内での粉末原料の滞留時間が長くなる。粉末原料は、このように炭化器30内で旋回しながら徐々に下降する過程で加熱され、炭化される。炭化器30の温度は、上部より燃焼室75に近い下部の方が高いので、粉末原料が下降するにしたがってその炭化が促進される。
【0082】
なお、流入口34が炭化器30の下端近傍に設けられ、流出口35が炭化器30の上端近傍に設けられている場合、流入口34から流入した直後の粉末原料は重く且つ大きいため、重力と、粉末原料と外筒31aの内周面との摩擦抵抗と、外筒31aの内周面に設けられた複数の邪魔板38a,38bとによって上昇が制限され、内部空間39の下端近傍に旋回しながら滞留する。粉末原料は、その炭化が進行するにしたがって、質量が減少し、また、小さくなる。その結果、加熱気体に乗って上昇し、流出口35から流出する。
【0083】
炭化器30内の温度は、炭化器30の流出口35の近傍に設けられた温度検出調整器73aで検出され、加熱炉70の下部に設けられたノズル71に供給される燃料72の量をバルブ73bの開度を調整することで制御することができる。炭化器30内の温度を適切に設定することで所望する粉末原料の炭化物(粉末炭)を得ることができる。一般的には、炭化器30内の温度は、原料の種類などにもよるが280〜600℃(好ましくは300〜450℃)に設定される。600〜900℃(好ましくは600〜700℃)に設定すると、炭化器30内で粉末原料をガス賦活して活性炭を得ることができる。
【0084】
粉末炭を含む加熱気体は、流出口35から炭化器30を出て配管101cを通って粉末炭回収装置50に導入される。必要に応じて、配管101c上に冷却器を設置して、炭化器30で加熱された粉末炭を含む加熱気体を冷却(例えば400〜450℃程度に)してもよい。冷却器の構成は特に制限はなく、例えば公知の空冷式の冷却器を用いることができる。
【0085】
粉末炭回収装置50では、比較的大きな(例えば粒径が10μm以上)粉末炭が第1サイクロン51にて遠心分離され捕捉され、製品として第1製品ホッパ53cに貯留される。第1サイクロン51で遠心分離されなかった微細な(例えば粒径が10μm未満)粉末炭は、第2サイクロン52a,52bにて遠心分離され捕捉されて、製品として第2製品ホッパ54a,54bに貯留される。
【0086】
循環路101内の圧力は、原料の乾燥による水蒸気の発生、炭化や賦活による原料中のガスの放出や分解ガスの発生などにより上昇する。
【0087】
図4に示す精油回収装置80を用いる場合には、圧力検出調整器84aで配管101d内の圧力をモニターし、圧力が所定値に維持されるようにバルブ84bの開度を調整する。配管101d内の加熱気体の一部は配管81を介して精油回収装置80に送られる。精油回収装置80に送られた加熱気体は凝縮器82で冷却され、加熱気体中の精油が液化され精油タンク83に回収される。凝縮器82で凝縮されないガス成分(例えば、酸化炭素ガス、水素ガス等)は、配管89aを介して加熱炉70に送られて燃焼され、煙突74から放出される。
【0088】
図5に示す精油回収装置80を用いる場合には、粉末炭回収装置50を通過した加熱気体は全て凝縮器82に送られる。この場合は、圧力検出調整器85aで配管101d内の圧力をモニターし、圧力が所定値に維持されるようにバルブ85bの開度を調整する。配管101d内の加熱気体の一部は配管89aを介して加熱炉70に送られ燃焼され、煙突74から放出される。
【0089】
精油回収装置80を用いない場合には、例えば図4において、バルブ84bが設けられた配管81を凝縮器82を介さずに直接送風ファン89bの流入口に接続することができる。圧力検出調整器84aで配管101d内の圧力をモニターし、圧力が所定値に維持されるようにバルブ84bの開度を調整する。配管101d内の加熱気体の一部は、配管81、送風ファン89b、配管89aを順に介して加熱炉70に送られ燃焼され、煙突74から放出される。
【0090】
粉末炭が回収され、必要に応じて精油が回収された後の加熱気体は、循環ファン102により加熱炉70内の予熱器60に送られて加熱昇温され、原料導入点P10にて新たに供給された原料を加熱し乾燥させながら粉砕機20に搬送する。以下、上記と同様の工程が繰り返される。
【0091】
循環路101内を循環する加熱気体の温度は、温度検出調整器61a,73aでモニターされる。温度検出調整器61aで検出した温度に応じてバルブ61bの開度を調整しバイパス配管103を通過する加熱気体の量を制御する。また、温度検出調整器73aで検出した温度に応じてバルブ73b,73cの開度を調整し加熱炉70内の燃焼を制御する。このようにして、循環路101内を循環する加熱気体を所望する温度に制御することができる。
【0092】
以上のように、本実施の形態1によれば、原料を粉砕機20で粉砕し乾燥させて粉末原料を得た後、この粉末原料を炭化器30で炭化させる。原料は粉末状で乾燥され炭化されるため、高品質且つ均一な粉末炭を短時間で得ることができる。従来のように原料を適当な大きさに切断したりチップ化したりした後乾燥し炭化した場合や、含水率が高く塊状の原料をそのまま乾燥し炭化した場合に比べて、極めて短時間に均一な炭化物を得ることができる。
【0093】
しかも、加熱気体が循環する循環路101に沿って原料を搬送しながら、原料の加熱、乾燥、炭化、粉末炭の回収を行うので、原料を連続的に導入すれば、粉末炭を連続的に効率よく製造することができる。
【0094】
また、原料の加熱、乾燥、炭化は外界と遮断された密閉系内で行われるので、大気中の酸素の影響を受けない。したがって、燃焼による悪臭、煙、灰分ダストなどの発生や、酸化による品質の劣化を抑えることができる。また、爆発の心配もない。
【0095】
更に、高温に曝される炭化器30が粉砕機20や粉末炭回収装置50等と分離されているために、粉砕機20や粉末炭回収装置50等の設計温度を炭化器30のそれより低くすることができる。したがって、粉砕機20や粉末炭回収装置50等の構造を簡単化することができ、装置全体のコストを低減することができる。また、炭化器30以外の装置を炭化温度と同程度の高温に維持する必要はないので、熱損失を少なくし、エネルギーコストを低減できる。
【0096】
精油回収装置80を用いることにより、原料の乾燥や炭化によって発生したガスの少なくとも一部を精油として回収することができる。精油として回収されなかったガスを、加熱炉に送り燃焼させれば、有害なガスや異臭の発生を更に低減することができる。
【0097】
本実施の形態1では、加熱炉70は縦型であったが、加熱炉の構成はこれに限定されず、例えば横型の加熱炉を用いても良い。
【0098】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る粉末炭の製造装置2の全体構成の概略を示した図である。図6において図1と同一の部材には同一の符号を付しており、それらについての詳細な説明を省略する。以下、本実施の形態2を実施の形態1と相違する点を中心に説明する。
【0099】
本実施の形態2の粉末炭回収装置2は、加熱気体の循環路101上に容器90を備えている。
【0100】
図7Aは容器90の上下方向と平行な中心軸を含む面に沿った断面図、図7Bは図7Aの7B−7B線を含む水平面に沿った容器90の断面図、図7Cは図7Aの7C−7C線を含む水平面に沿った容器90の断面図である。
【0101】
容器90は、略円筒面である内周面を有する容器本体91と、容器本体91の下端に接続された、略円錐面である内周面を有する下側カップ92と、容器本体91の上端に接続された、略円錐面である内周面を有する上側カップ93とを備えている。容器本体91には、第1導入口94a及び第2導入口94bが形成されている。下側カップ92の頂部には第1導出口95aが形成されており、上側カップ93の頂部には第2導出口95bが形成されている。容器本体91の内周面上であって、第2導入口94bと上側カップ93との間に、中央が開口したドーナツ状の分別板96が設けられている。
【0102】
第1導入口94aを通る面に沿った断面図を示した図7Bより理解できるように、第1導入口94aは、第1導入口94aを通って容器90内に流入する加熱気体が容器本体91の内周面に沿って旋回するように設けられている。より詳細には、第1導入口94aは、円筒面である容器本体91の内周面の接線に沿って設けられている。
【0103】
第2導入口94bを通る面に沿った断面図を示した図7Cより理解できるように、第2導入口94bも、第2導入口94bを通って容器90内に流入する加熱気体が容器本体91の内周面に沿って旋回するように設けられている。より詳細には、第2導入口94bは、円筒面である容器本体91の内周面の接線に沿って設けられている。
【0104】
図6に示されているように、容器90の第1導出口95aと粉砕機20の吸引口22(図2B参照)とは管路106aで接続され、容器90の第2導入口94bと粉砕機20の吐出口23(図2B参照)とは管路106bで接続されている。
【0105】
配管101aの下流側端は分岐部D1にて第1配管104aと第2配管104bとに分岐している。第1配管104aは、分岐部D1と容器90の第1導入口94aとを接続しており、第1配管104aには、分岐部D1側から、第1バルブ105a、原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10が設けられている。第2配管104bは、分岐部D1と管路106aとを接続しており、第2配管104bには第2バルブ105bが設けられている。
【0106】
容器90の第2導出口95bには配管101bが接続されている。実施の形態1に示した粉末炭の製造装置1と異なり、本実施の形態2では、温度検出調整器61aは配管101bに設けられている。但し、温度検出調整器61aを、実施の形態1に示した粉末炭の製造装置1と同様に、配管101aに設けても良い。あるいは、温度検出調整器61aを、第1配管104a、管路106a、管路106bのいずれかに設けても良い。
【0107】
上述したように、粉砕機20は、送風機能を有しているので、容器90、第1導出口95a、管路106a、粉砕機20、管路106b、第2導入口94bを加熱気体が順に循環する循環路が形成される。この粉砕機20と容器90との間の循環路をサブ循環路110と呼ぶ。サブ循環路110の少なくとも一部が循環路101を構成していてもよい。サブ循環路110に沿って第2導入口94bから容器90内に流入した加熱気体の一部は、上方に流れ、第2導出口95bを通って配管101bを介して炭化器30へ向かい、循環路101を循環する。サブ循環路110に沿って第2導入口94bから容器90内に流入した加熱気体の残りは、下方に流れ、第1導出口95aを通って管路106aを介して粉砕機20へ向かい、サブ循環路110を再循環する。
【0108】
第2配管104bに設けられた第2バルブ105bが閉じられた状態では、循環路101を循環する加熱気体は、配管101aから第1配管104a及び第1導入口94aを通って容器90内に流入する。第1導入口94aから容器90内に流入した加熱気体の一部は、上方に流れ、第2導出口95bを通って配管101bを介して炭化器30へ向かい、循環路101を循環する。第1導入口94aから容器90内に流入した加熱気体の残りは、下方に流れ、第1導出口95aを通って管路106aを介して粉砕機20へ向かい、サブ循環路110を循環する。
【0109】
第2配管104bに設けられた第2バルブ105bが開かれた状態では、循環路101を循環する加熱気体は、分岐部D1で第1配管104aを流れる加熱気体と第2配管104bを流れる加熱気体とに分岐される。第1配管104aを流れる加熱気体は、第1導入口94aから容器90内に流入し、上述したように、その一部は上方に流れ炭化器30へ向かい、残りは下方に流れ粉砕機20へ向かう。第2配管104bを流れる加熱気体は、粉砕機20を通過し、第2導入口94bから容器90内に流入し、上述したように、その一部は上方に流れ炭化器30へ向かい、残りは下方に流れ粉砕機20へ向かう。
【0110】
循環路101を循環する加熱気体の少なくとも一部とサブ循環路110を循環する加熱気体の少なくとも一部とは、少なくとも容器90内において相互に入れ替わることが可能である。
【0111】
第1導入口94a及び第2導入口94bは、上述したように容器本体91の内周面の接線に沿って設けられているので、容器90内には加熱気体の旋回流が形成される。第1導入口94aと第1導出口95aとの間の領域には、加熱気体が旋回しながら下向きに移動する第1旋回流97aが形成され、第2導入口94bと第2導出口95bとの間の領域には、加熱気体が旋回しながら上向きに移動する第2旋回流97bが形成される。第1導入口94aと第2導入口94bとの間の領域に形成される加熱気体の旋回流が上下方向のいずれに移動するかは、第1導入口94a及び第2導入口94bのそれぞれから容器90に流入する加熱気体の流量に依存する。第1導入口94a及び第2導入口94bのそれぞれから流入する加熱気体の流量の大小に特に制限はないが、一般には、第2導入口94bから流入する加熱気体の流量は、第1導入口94aから流入する加熱気体の流量より大きいことが好ましい。
【0112】
図6では1台の粉砕機20のみが図示されているが、2台以上の粉砕機を用いることもできる。2台以上の粉砕機を直列に連結する場合には、上流側の粉砕機で粗粉砕し、下流側の粉砕機で微粉砕するなど、上流側から下流側に向かって徐々に粉砕径が小さくなるように2台以上の粉砕機を配置するのが好ましい。また、2台以上の粉砕機を並列に接続する場合には、粉砕機と同数の管路106a,106bを設け、管路103aと管路106bとの間にそれぞれ粉砕機を設けることができる。
【0113】
容器90を加熱炉70内に設置することもできる。この場合、加熱炉70は炭化器30よりも温度が低い場所に配置されることが好ましい。容器90を加熱炉70内に設置することにより、容器90の外周面から外界への放熱によるエネルギー損失を低減することができる。また、容器90の内周面は高温に保たれるので、原料の乾燥が促進される。
【0114】
以上のように構成された本実施の形態2に係る装置2を用いた粉末炭の製造方法の一例を以下に説明する。但し、本発明の粉末炭の製造方法は以下の例に限定されない。
【0115】
最初に、第1配管104aに設けられた第1バルブ105aを開き、第2配管104bに設けられた第2バルブ105bを閉じる。次いで、バルブ84b(図4参照)又はバルブ85b(図5参照)を開き、バルブ100aを開いて気体100を循環路101に導入する。これと並行して、循環路101に設けられた排気弁(図示せず)を開く。循環路101内の気体が気体100に置換された後、当該排気弁を閉じる。気体100としては、例えば蒸気(過熱蒸気を含む)や低酸素ガスを用いることができる。
【0116】
次いで、循環ファン102を駆動し、粉砕機20を駆動し羽根車27を回転させて,気体100を循環路101及びサブ循環路110内に循環させる。そして、燃焼空気ファン42を駆動し、加熱炉70のパイロットバーナー(図示せず)を点火し、バルブ73b,73cを開き、ノズル71から空気混合燃料を燃焼室75内に噴射し、燃料を燃焼させる。これにより、循環路101及びサブ循環路110を循環する気体100は、予熱器60及び炭化器30で加熱され加熱気体となる。加熱気体の温度は、温度検出調整器61aにより検出される温度で例えば約180℃である。
【0117】
循環路101及びサブ循環路110を循環する加熱気体が所定温度に達した後、定量供給装置12を駆動してホッパー11に貯留されていた原料を原料導入点P10を通じて第1配管104aに導入する。
【0118】
原料は、加熱気体によって第1配管104a内を移動し、第1導入口94aから容器90内に流入する。流入した原料は、大きく且つ多くの水分を含んでいるために重く、下向きに移動する第1旋回流97aによって旋回しながら下方に移動し、第1導出口95a、管路106aを通り、粉砕機20に搬送される。原料は、原料導入点P10から粉砕機20に至るまでの間、加熱気体によって加熱され且つ乾燥されながら移動する。
【0119】
粉砕機20では、原料は、スクリーン24で囲まれた空間内で、スクリーン24の開孔24aを通過できる大きさになるまで一次粉砕される。原料が粉砕されると、その表面積は拡大し、加熱気体との接触面積が拡大する。粉砕前に原料内に存在していた水分は、粉砕によって表面に露出し表面水となるため、原料の乾燥は急速に進行する。
【0120】
スクリーン24の開孔24aを通過した、粉砕され且つ乾燥された原料は、粉砕機20の送風機能によって加熱気体とともに粉砕機20から吐出され、管路106b内を移動し、第2導入口94bから容器90内に再流入する。
【0121】
第2導入口94bから容器90内に再流入した原料は、容器90内の旋回流により旋回する。
【0122】
再流入した原料のうち比較的大きな原料は、依然として多くの水分を含み塊状をなしており重い。したがって、このような原料は、下降して、下向きに移動する第1旋回流97aによって旋回しながら下方に移動し、第1導出口95a、管路106aを通り、再度粉砕機20に搬送され、更に小さく粉砕され乾燥される。このように、容器90と粉砕機20との間のサブ循環路110を原料が加熱気体に搬送されながら循環することで、原料の粉砕と乾燥が進行する。
【0123】
第2導入口94bから容器90内に再流入した原料のうち、十分に細かく粉砕された粉末原料は軽いので、上向きに移動する第2旋回流97bによって旋回しながら上方に移動する。
【0124】
旋回する粉末原料には遠心力が作用する。乾燥が不十分な粉末原料は、受ける遠心力が大きいので、容器本体91の内周面に沿って旋回する。したがって、分別板96によって上昇が制限され、容器90内で旋回を続ける。粉末原料は、容器90内で旋回し続けることにより、乾燥が進行し、軽くなる。そして、十分に乾燥された粉末原料のみが加熱気体流に乗って分別板96の開口を通過して、更に上昇して第2導出口95bを通過して配管101bを介して炭化器30に搬送される。
【0125】
炭化器30以降の工程は実施の形態1の製造装置1と同じであるので、説明を省略する。
【0126】
以上のように、本実施の形態2によれば、加熱気体の循環路101上に容器90を設け、容器90と粉砕機20との間にサブ循環路110を形成したことにより、原料は、サブ循環路110を循環することで乾燥及び粉砕を繰り返し受ける。そして、容器90内の旋回流によって原料をサイズや乾燥の程度によって分級し、小さく且つ乾燥された粉末原料のみが炭化器30に搬送され炭化される。原料が水分を多く含む場合であっても、容器90の分級機能により小さく且つ乾燥された粉末原料になるまでは炭化器30に導入されることはない。したがって、より高品質且つより均一な粉末炭を安定して得ることができる。
【0127】
また、本実施の形態2では、原料が水分を多く含む(例えば水分率が50%以上)場合や粘着性を有する場合であっても、原料導入点P10を通じて導入された原料は、最初に容器90に送られるので、粉砕機20に導入される前に、ある程度乾燥される。また、容器90内では、既に存在するある程度粉砕及び乾燥が進行した原料と混合されるので、粉砕機20に導入される原料の平均水分率は更に低くなる。したがって、水分を多く含む原料や粘着性を有する原料が粉砕機20のスクリーン24や羽根車27などに付着することによって、粉砕機20の送風機能や粉砕機能が低下したり、粉砕機20が閉塞したりするのを防止することができる。汚泥のように含水率が高く且つ粘着性の強い原料を用いる場合には、廃棄木材、稲藁、茶殻等の廃棄原料を混合することが好ましい。このような廃棄原料を混合することにより、汚泥は分塊されやすくなり、また、装置内面への原料の付着が廃棄原料の掻き取り(スクリーニング)作用により低減されるからである。
【0128】
本実施の形態2では、温度検出調整器61aの設定温度を高くして、サブ循環路110内で一部の粉末原料の炭化を進行させてもよい。
【0129】
上述した本実施の形態2は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0130】
上記の製造方法では、第2配管104bに設けられた第2バルブ105bを閉じていたが、第2バルブ105bを開いてもよい。これにより、配管101aからの加熱気体の一部が容器90を通過せずに粉砕機20に送られる。したがって、粉砕機20内の温度が上昇するので、粉砕機20内で粉砕された原料が乾燥されやすくなる。その結果、水分を多く含む原料や粘着性を有する原料が粉砕機20のスクリーン24や羽根車27などに付着することによって、粉砕機20の送風機能や粉砕機能が低下したり、粉砕機20が閉塞したりするのを防止することができる。
【0131】
第2配管104bを省略しても良い。
【0132】
容器90の長手方向において、第1導入口94aを、第2導入口94bよりも第2導出口95b側に配置しても良く、第1導入口94aと第2導入口94bとをほぼ同じ位置に配置しても良い。
【0133】
分別板96の形状は、中央に開口を有していればよく、図7Aのように円錐面形状を有している必要はない。容器90内に設けられる分別板96の数は1つに限られず、2つ以上であってもよい。また、分別板96を省略してもよい。
【0134】
下側カップ92の内周面のテーパ角度は自由に設定することができる。下側カップ92の内周面のテーパ角度を大きくすると、未乾燥の原料を下側カップ92の内周面上に滞留させてある程度乾燥させることができるので、水分を多く含む原料や粘着性を有する原料が粉砕機20に流入することによって、粉砕機20の送風機能や粉砕機能が低下したり、粉砕機20が閉塞したりするのを防止することができる。
【0135】
原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10を、第2配管104b上に設けてもよい。この場合、原料導入点P10で第2配管104bに導入された原料は、加熱気体により加熱し乾燥されながら、最初に容器90ではなく、粉砕機20に送られる。この場合、第1配管104aを省略しても良い。
【0136】
あるいは、原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10を、管路106a又は管路106bに設けてもよい。この場合、第1配管104aを省略しても良い。
【0137】
更には、原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10を容器90に設けてもよい。この場合も、第1配管104aを省略しても良い。
【0138】
上記の容器90内には、加熱気体が旋回しながら下向きに移動する第1旋回流97aと加熱気体が旋回しながら上向きに移動する第2旋回流97bとが形成された。本発明はこれに限定されず、例えば、容器内に、加熱気体が旋回しながら一方向に移動する単一の旋回流のみが形成されてもよい。
【0139】
図8は、このような容器150を用いた粉末炭の製造装置の、容器150及びその周辺部の構成の概略を示した図である。図8では、配管101aの上流側及び配管101bの下流側の部分は、図6と同じであるので図示を省略している。また、図8において、図6と同じ部材には同一の符号を付している。
【0140】
図8に示されているように、容器150は加熱気体の循環路101上に設けられている。
【0141】
図9Aは容器150の上下方向と平行な中心軸を含む面に沿った断面図、図9Bは図9Aの9B−9B線を含む水平面に沿った容器150の断面図、図9Cは図9Aの9C−9C線を含む水平面に沿った容器150の断面図、図9Dは図9Aの9D−9D線を含む水平面に沿った容器150の断面図である。
【0142】
容器150は、略円筒面である内周面を有する容器本体151と、容器本体151の下端に接続された、略円錐面である内周面を有する下側カップ152と、容器本体151の上端に接続された、略円錐面である内周面を有する上側カップ153とを備えている。下側カップ152の頂部には第1導入口154aが形成されている。容器本体151には、第2導入口154b、第3導入口154c、第1導出口155aが形成されている。上側カップ152の頂部には第2導出口155bが形成されている。
【0143】
容器本体151の内周面上であって、第1導出口155aと上側カップ153との間に、中央が開口したドーナツ状の分別板156が設けられている。
【0144】
容器150内には、第2導入口154bと第1導入口154aとの間に、サポート部材160が設けられている。サポート部材160は、本体部材161と整流部材162とを備えている。整流部材162は、円錐面形状を有する第1及び第2円錐キャップ162a,162bをその底面側で接続したものである。整流部材162は、本体部材161の中央の開口に嵌め込まれて本体部材161に保持されている。本体部材161は、複数の貫通孔161aを備えている。
【0145】
第2導入口154bを通る面に沿った断面図を示した図9Bより理解できるように、第2導入口154bは、第2導入口154bを通って容器150内に流入する加熱気体が容器本体151の内周面に沿って旋回するように設けられている。より詳細には、第2導入口154bは、円筒面である容器本体151の内周面の接線に沿って設けられている。
【0146】
第3導入口154cを通る面に沿った断面図を示した図9Cより理解できるように、第3導入口154cは、第3導入口154cを通って容器150内に流入する加熱気体が容器本体151の内周面に沿って旋回するように設けられている。より詳細には、第3導入口154cは、円筒面である容器本体151の内周面の接線に沿って設けられている。
【0147】
第1導出口155aを通る面に沿った断面図を示した図9Dより理解できるように、第1導出口155aは、容器本体151の内周面に沿って旋回する加熱気体が第1導出口155aを通って容器150外に流出するように設けられている。より詳細には、第1導出口155aは、円筒面である容器本体151の内周面の接線に沿って設けられている。
【0148】
図8に示されているように、容器150の第1導出口155aと粉砕機20の吸引口22(図2B参照)とは管路109aで接続され、容器150の第2導入口154bと粉砕機20の吐出口23(図2B参照)とは管路109bで接続されている。
【0149】
配管101aの下流側端は分岐部D2にて第1配管107aと第2配管107bとに分岐している。第1配管107aは、分岐部D2と容器150の第1導入口154aとを接続しており、第1配管107aには第1バルブ108aが設けられている。第2配管107bは、分岐部D2と容器150の第3導入口154cとを接続しており、第2配管107bには、分岐部D2側から、第2バルブ108b、原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10が設けられている。
【0150】
容器150の第2導出口155bには配管101bが接続されている。
【0151】
上述したように、粉砕機20は、送風機能を有しているので、容器150、第1導出口55a、管路109a、粉砕機20、管路109b、第2導入口154bを加熱気体が順に循環する循環路が形成される。この粉砕機20と容器150との間の循環路をサブ循環路110と呼ぶ。サブ循環路110の少なくとも一部が循環路101を構成していてもよい。
【0152】
循環路101を循環する加熱気体は、配管101aから分岐部D2にて第1配管107aと第2配管107bとに分流される。第1配管107aに分流された加熱気体は、第1バルブ108aを通過し、第1導入口154aを通って容器150内に流入する。第2配管107bに分流された加熱気体は、第2バルブ108bを通過し、第3導入口154cを通って容器150内に流入する。
【0153】
第2導入口154b及び第3導入口154cは、上述したように容器本体151の内周面の接線に沿って設けられているので、容器150内には加熱気体の旋回流が形成される。また、第1導入口154a、第2導入口154b、第3導入口154cから容器150内に流入した加熱気体は上方に流れ、その一部は第1導出口155aを通ってサブ循環路110を循環し、残りは第2導出口155bを通って配管101bを介して炭化器30へ向かう。したがって、容器150内には、加熱気体が旋回しながら上向きに移動する旋回流157が形成される。
【0154】
図8では1台の粉砕機20のみが図示されているが、2台以上の粉砕機を用いてもよいことは図6の場合と同様である。また、容器150を加熱炉70内に設置してもよいことは、容器90の場合と同様である。
【0155】
以上のように構成された容器150を用いた粉末炭の製造方法の一例を以下に説明する。但し、本発明の粉末炭の製造方法は以下の例に限定されない。
【0156】
最初に、第1配管107aに設けられた第1バルブ108a及び第2配管107bに設けられた第2バルブ108bを開く。次いで、図6の製造装置の場合と同様に、気体100を循環路101及びサブ循環路110に導入し循環させながら気体を加熱する。これと並行して、粉砕機20を駆動し、羽根車27を回転させる。
【0157】
循環路101及びサブ循環路110を循環する加熱気体が所定温度に達した後、定量供給装置12を駆動してホッパー11に貯留されていた原料を原料導入点P10を通じて第2配管107bに導入する。
【0158】
原料は、加熱気体によって第2配管107b内を移動し、第3導入口154cから容器150内に流入する。流入した原料は、旋回流157によって容器150内を旋回しながら上昇する。但し、流入した原料のうちの一部は、大きな塊状であったり、多くの水分を含んでいたりするために、旋回流157に乗って上昇することができず、サポート部材160の本体部材161の上面近傍で旋回しながら滞留する。このような原料は、第1導入口154aから流入する加熱気体及び第2導入口154bから流入する粉砕された原料を含む気流によって徐々に乾燥され、分塊され、前記粉砕された原料と混合されて、旋回流157によって容器150内を旋回しながら上昇する。大きく且つ多くの水分を含む原料(粉砕が十分でない原料を含む)は、大きな遠心力を受け、容器本体151の内周面に沿って旋回する。上述したように、第1導出口155aは、容器本体151の内周面の接線に沿って設けられている。このため、容器本体151の内周面に沿って旋回する、大きく且つ水分を多く含む原料は第1導出口155aに流入し、管路109aを通り、粉砕機20に搬送される。原料は、原料導入点P10から粉砕機20に至るまでの間、加熱気体によって加熱され且つ乾燥されるとともに、サブ循環路110を循環する原料と混合されながら移動する。
【0159】
粉砕機20では、原料は、スクリーン24で囲まれた空間内で、スクリーン24の開孔24aを通過できる大きさになるまで一次粉砕され乾燥される。
【0160】
粉末状に粉砕され且つ乾燥された原料は、粉砕機20の送風機能によって加熱気体とともに粉砕機20から吐出され、管路109b内を移動し、第2導入口154bから容器150内に再流入する。
【0161】
第2導入口154bから容器150内に再流入した原料は、旋回流157によって容器150内を旋回しながら上昇する。
【0162】
再流入した原料のうち比較的大きな原料は、依然として多くの水分を含んでいるので重い。このような原料は、大きな遠心力を受け、容器本体151の内周面に沿って旋回するため、第1導出口155aに再流入し、粉砕機20に搬送される。このように、容器150と粉砕機20との間のサブ循環路110を原料が加熱気体に搬送されながら循環することで、原料の粉砕と乾燥が進行する。
【0163】
第2導入口154bから容器150内に再流入した原料のうち、十分に細かく粉砕された粉末原料は軽い。また、このような粉末原料は、上述の大きく且つ未乾燥の原料に比べて受ける遠心力が小さい。従って、分別板156の中央の開口を通過する気流に乗って上昇して第2導出口155bを通過して配管101bを介して炭化器30に搬送される。
【0164】
炭化器30以降の工程は実施の形態1の製造装置1と同じであるので、説明を省略する。
【0165】
以上のように、加熱気体が旋回しながら一方向に移動する単一の旋回流157のみが形成される容器150を用いても、容器150と粉砕機20との間にサブ循環路110を形成することができるので、図6の場合と同様の効果が得られる。
【0166】
図8、図9A、図9B、図9C、図9Dは一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0167】
容器150の長手方向において、第3導入口154cは、第2導入口154bとほぼ同じ位置に配置しても良く、あるいは、第1導出口155aとほぼ同じ位置に配置しても良い。
【0168】
分別板156の形状は、中央に開口を有していればよく、図9Aのようにドーナツ形状を有している必要はない。容器150内に設けられる分別板156の数は1つに限られず、2つ以上であってもよい。あるいは、分別板156を省略してもよい。第1導出口155aと第2導入口154bとの間に、少なくとも1つ以上の分別板156を設置してもよい。
【0169】
サポート部材160の形状は、図9Aに限定されない。旋回流157によって上昇できない原料が落下して第1導入口154aを閉塞することを防止することができ、且つ、第1導入口154aから流入した加熱気体が第2導出口155bに向かって移動することができる流路が確保されればよい。
【0170】
原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10を、第1配管107a上に設けてもよい。この場合、サポート部材160は不要である。また、第2配管107bを省略しても良い。
【0171】
あるいは、原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10を、管路109a又は管路109bに設けてもよい。この場合、第2配管107bを省略しても良い。原料導入点P10を管路109aに設けた場合には、原料導入点P10で管路109aに導入された原料は、加熱気体により加熱し乾燥されながら、最初に容器150ではなく、粉砕機20に送られる。
【0172】
更には、原料導入装置10からの原料が導入される地点である原料導入点P10を容器150に設けてもよい。この場合も、第2配管107bを省略しても良い。
【0173】
図6及び図8に示した容器90,150は、その長手方向を上下方向にして配置(縦置き)されていたが、その長手方向を水平方向にして配置(横置き)して同様の分級機能を発揮させてもよい。
【0174】
図6及び図8に示した粉砕機20は粉砕機能に加えて送風機能を有していたが、粉砕機20が送風機能を有していなくても良い。この場合には、サブ循環路110に沿って加熱気体を循環させるための送風機をサブ循環路110上に設置することが望ましい。この送風機は粉砕機20よりも下流側の管路106b,109bに設置されることが望ましい。
【0175】
その他、実施の形態1で説明したのと同様の変更を本実施の形態2に適用しても良い。
【0176】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る粉末炭の製造装置3の全体構成の概略を示した図である。図10において図1、図6、図8と同一の部材には同一の符号を付しており、それらについての詳細な説明を省略する。以下、本実施の形態3を実施の形態1,2と相違する点を中心に説明する。
【0177】
本実施の形態3の粉末炭の製造装置3は、いずれも加熱気体が循環する第1循環路310及び第2循環路320を備えている。第1循環路310を含む系では原料を加熱して乾燥させ且つ粉砕して粉末原料を製造し、第2循環路320を含む系では粉末原料を加熱して炭化させて粉末炭(必要に応じて更に精油)を製造する。
【0178】
第1循環路310を含む系は、原料投入装置10、容器90、粉砕機20、粉末原料回収装置350、第1予熱器361を備えている。第1予熱器361と分岐点D1とは配管311aで接続され、容器90の第2導出口95bと粉末原料回収装置350とは配管311bで接続され、粉末原料回収装置350と第1予熱器361とは配管311cで接続されている。このように配管311a〜311cは容器90、粉末原料回収装置350、第1予熱器361を順に環状に接続して第1循環路310を構成している。第1循環路310に加熱気体を循環させるための第1循環ファン312が配管311c上に設けられている。配管311a〜311cを示す実線に設けられた矢印は、加熱気体の移動方向を示している。
【0179】
原料投入装置10、容器90、粉砕機20を含む部分の構成及び動作は、実施の形態2で説明した図6に示した粉末炭の製造装置2のそれと同じである。
【0180】
粉末原料回収装置350は、容器90で分級された粉末原料を加熱気体から分離し回収する。粉末炭回収装置350の一例を図11に示す。
【0181】
配管311bは第1サイクロン351に接続され、第1サイクロン351の流出口は配管359を介して一対の第2サイクロン352a,352bに接続され、一対の第2サイクロン352a,352bの流出口は配管311cに接続されている。第1サイクロン351で遠心分離された粉末原料は粉末原料ホッパ353に落下し回収される。また、第2サイクロン352a,352bで遠心分離された粉末原料も粉末原料ホッパ353に落下し回収される。粉末原料ホッパ353の流出口には、2つの定量供給装置354a,354bが並列に接続されている。定量供給装置354a,354bとしては、例えばロータリバルブ、スクリューフィーダなどを用いることができる。定量供給装置354aの出口は配管321a上の粉末原料導入点P350に接続されている。定量供給装置354aを駆動すると、粉末原料ホッパ353内の粉末原料を粉末原料導入点P350を通じて第2循環路320を構成する配管321aに導入することができる。定量供給装置354bを駆動すると、粉末原料ホッパ353内の粉末原料を第2循環路320に導入せずに取り出すことができる。
【0182】
図11の粉末原料回収装置350では、サイクロンを直列に2段に繋ぎ、更に後段では2つのサイクロンを並列に配置したマルチサイクロンとしたが、本発明はこれに限定されない。例えばサイクロンの配置を1段のみとしてもよく、あるいはサイクロンを直列に3段以上に繋いでもよい。また、各段を、1つのみのサイクロンで構成してもよく、あるいは並列に繋いだ複数のサイクロンで構成してもよい。更に、バグフィルタなどを併用してもよい。また、粉末原料を捕集することができれば、粉末原料回収装置350をサイクロン以外の装置で構成してもよい。
【0183】
図11に示すように、配管311cに配管381を介して精油回収装置380が接続されている。精油回収装置380は、粉末原料が回収された後の加熱気体に含まれる気化した精油を回収するためのものである。この精油回収装置380は、配管381を通じて送られた加熱気体を冷却水382aによって冷却するための凝縮器382と、凝縮器382によって液化された精油を貯留するための精油タンク383とを備える。配管311cには圧力検出調整器384aが設けられている。第1循環路310内の圧力は、例えば、原料を加熱し乾燥させることによって原料からガスが発生することにより、あるいは、後述するバルブ315aから気体315を導入することにより、上昇する。圧力検出調整器384aは配管311c内の圧力(即ち、第1循環路310内の圧力)をモニターし、配管311c内の圧力が所定値に維持されるように、配管381に設けられたバルブ384bの開度を調整する。バルブ384bの開度に応じて配管381を介して精油回収装置380に精油を含む加熱気体が送られる。精油回収装置380によって回収できなかった、加熱気体に残存する精油は、加熱気体とともに送風ファン389bによって配管389a、ノズル389cを通じて加熱炉70内に送られ燃焼される(図10参照)。凝縮器382を通過した後の冷却水382aは、系外に排出してもよい。但し、加熱気体として過熱蒸気を使用する場合には、加熱炉70内で加熱して過熱蒸気として第1循環路310及び/又は第2循環路320に導入してもよい。図11では凝縮器382で加熱気体を冷却するための冷却媒体として冷却水382aを用いたが、冷却媒体はこれに限定されず、例えば空気を用いることもできる。
【0184】
第1循環路320を循環する加熱気体が過熱蒸気以外の気体である場合には、凝縮器382内で加熱気体が液化する可能性を考慮する必要がない。したがって、この場合には、図5に示した精油回収装置80と同様に、粉末原料回収装置350を通過した加熱気体を全て凝縮器382に送り冷却してもよい。このような精油回収装置380は、図5に示した精油回収装置80と同様に構成することができる。これにより、より高品質でより多くの精油を回収することができる。
【0185】
精油回収装置380の構成は、加熱気体に含まれる精油の少なくとも一部を回収することができれば、図11に限定されない。精油回収装置380で回収される精油は、精油回収装置80で回収される精油と異なり、炭化時の高温に曝されていないので、高品質の精油を得ることができる。
【0186】
精油回収装置380を省略することも可能である。但し、第1循環路310内の圧力を所定値に維持するために、原料の乾燥の過程で発生したガスや後述するバルブ315aから導入された気体315を第1循環路310外に放出することが望ましい。このため、例えば、図11において、バルブ384bが設けられた配管381を凝縮器382を介さずに直接送風ファン389bの流入口に接続することができる。
【0187】
図10に戻り、粉末原料が回収された加熱気体は、第1予熱器361により所望する温度に加熱される。第1予熱器361の構成は特に制限はなく、例えば多数のフィンが設けられた熱交換器を使用することができる。本実施の形態では第1予熱器361は加熱炉70内に設置されているが、第1予熱器361を加熱炉70以外の熱源により加熱してもよい。
【0188】
配管311cと配管311aとを、第1予熱器360を通過しないバイパス配管313によって繋いでもよい。この場合、配管311bに温度検出調整器61aを設け、配管311b内の加熱気体の温度を所定値に維持することが好ましい。温度検出調整器61aで検出した温度に応じてバイパス配管313に設けられたバルブ61bの開度を調整することで、第1循環路310を循環する加熱気体の温度を適切に維持することができる。なお、温度検出調整器61aの設置位置は上記に限定されず、例えば配管311a、第1配管104a、第2配管104b、管路106bのいずれかに設けてもよい。
【0189】
第1循環路310を循環する加熱気体となる気体315は、バルブ315aを介して第1循環路310に導入される。気体315が導入される第1循環路310上の位置は特に制限はない。図10では、第1予熱器361より下流に位置する配管311aに気体315を導入している。導入される気体315の温度が比較的低い場合は、第1予熱器361より上流に位置する配管311cに気体315を導入してもよい。気体315は、第1循環路310に導入される前に、所定温度に加熱されていることが好ましい。この加熱は、例えば加熱炉70にボイラー(加熱気体が過熱蒸気の場合)又は予熱器(加熱気体が過熱蒸気以外の場合)を設置して、気体315をこれに予め通過させることにより行うことができる。
【0190】
図10において、第1循環ファン312の位置は、配管311c上である必要はない。例えば、粉末原料回収装置350内(例えば図11の配管359上)に設けてもよい。あるいは、配管311c及び配管359など、異なる位置に複数台設けてもよい。第1循環ファン312は、風量を調整できるようにインバータモータ駆動が好ましい。
【0191】
第2循環路320を含む系は、炭化器30、粉末炭回収装置50、第2予熱器362を備えている。第2予熱器362と炭化器30とは配管321aで接続され、炭化器30と粉末炭回収装置50とは配管321bで接続され、粉末炭回収装置50と第2予熱器362とは配管321cで接続されている。このように配管321a〜321cは炭化器30、粉末炭回収装置50、第2予熱器362を順に環状に接続して第2循環路320を構成している。第2循環路320に加熱気体を循環させるための第2循環ファン322が配管321c上に設けられている。配管321a〜321cを示す実線に設けられた矢印は、加熱気体の移動方向を示している。
【0192】
炭化器30、粉末炭回収装置50は、実施の形態1のそれと同じである。粉末炭回収装置50に精油回収装置80(図4、図5)が併設されていても良いことも実施の形態1と同じである。配管321b上に、、炭化器30で加熱された粉末炭を含む加熱気体を冷却(例えば400〜450℃程度に)するための冷却器を設けても良いことも実施の形態1と同じである。
【0193】
第2予熱器362は、粉末炭が回収された加熱気体を所望する温度に加熱するためのものである。第2予熱器362の構成は特に制限はなく、例えば多数のフィンが設けられた熱交換器を使用することができる。
【0194】
図1に示したバイパス配管103と同様に、第2予熱器362を通過しないバイパス配管(図示せず)で配管321dと配管321aとを繋いでもよい。この場合、図1に示した温度検出調整器61a及びバルブ61bと同様に、配管321aに温度検出調整器を設け、また、バイパス配管にバルブを設け、温度検出調整器で検出した温度に応じてバルブの開度を調整して配管321a内の加熱気体の温度を適切に維持してもよい。
【0195】
第2循環路320を循環する加熱気体となる気体325は、バルブ325aを介して第2循環路320に導入される。気体325が導入される第2循環路320上の位置は特に制限はない。図10では第2予熱器362より上流に位置する配管321dに気体325を導入しているが、例えば配管321aに気体325を導入してもよい。気体325は、第2循環路320に導入される前に、所定温度に加熱されていることが好ましい。この加熱は、例えば加熱炉70にボイラー(加熱気体が過熱蒸気の場合)又は予熱器(加熱気体が過熱蒸気以外の場合)を設置して、気体325をこれに予め通過させることにより行うことができる。
【0196】
図10において、第2循環ファン322の位置は、配管321d上である必要はない。例えば、粉末炭回収装置50内(例えば図4の配管59上)に設けてもよい。あるいは、配管321d及び配管59など、異なる位置に複数台設けてもよい。第2循環ファン322は、風量を調整できるようにインバータモータ駆動が好ましい。
【0197】
以上のように構成された本実施の形態3に係る装置3を用いた粉末炭の製造方法の一例を以下に説明する。但し、本発明の粉末炭の製造方法は以下の例に限定されない。
【0198】
最初に、第1循環路310を含む系を用いて粉末原料を製造する方法を説明する。
【0199】
まず、第1配管104aに設けられた第1バルブ105aを開き、第2配管104bに設けられた第2バルブ105bを閉じる。次いで、バルブ384bを開き、バルブ315aを開いて気体315を第1循環路310に導入する。これと並行して、第1循環路310に設けられた排気弁(図示せず)を開く。第1循環路310内の気体が気体315に置換された後、当該排気弁を閉じる。気体100としては、例えば蒸気(過熱蒸気を含む)、低酸素ガス、空気を用いることができる。
【0200】
次いで、第1循環ファン312を駆動し、粉砕機20を駆動し羽根車27を回転させて、気体315を第1循環路310及びサブ循環路110内に循環させる。そして、燃焼空気ファン42を駆動し、加熱炉70のパイロットバーナー(図示せず)を点火し、バルブ73b,73cを開き、ノズル71から空気混合燃料を燃焼室75内に噴射し、燃料を燃焼させる。これにより、第1循環路310及びサブ循環路110を循環する気体315は、第1予熱器361で加熱され加熱気体となる。加熱気体の温度は、温度検出調整器61aにより検出される温度で例えば約180℃である。
【0201】
第1循環路310及びサブ循環路110を循環する加熱気体が所定温度に達した後、定量供給装置12を駆動してホッパー11に貯留されていた原料を原料導入点P10を通じて第1配管104aに導入する。
【0202】
原料は、加熱気体によって第1配管104a内を移動し、第1導入口94aから容器90内に流入する。原料は、実施の形態2で説明したのと同様に、粉砕機20と容器90との間で形成されるサブ循環路110に沿って加熱気体によって循環しながら加熱され乾燥され、また粉砕機20で粉砕される。そして、所定の大きさに粉砕され且つ乾燥された粉末原料は容器90内で分級されて、第2導出口95bを通過して配管311bを介して粉末原料回収装置350に搬送される。
【0203】
図11において、粉末原料収装置350では、比較的大きな(例えば粒径が10μm以上)粉末原料が第1サイクロン351にて遠心分離され捕捉され、粉末原料ホッパ353に貯留される。第1サイクロン351で遠心分離されなかった微細な(例えば粒径が10μm未満)粉末原料は、第2サイクロン352a,352bにて遠心分離され捕捉されて、粉末原料ホッパ353に貯留される。
【0204】
第1循環路310内の圧力は、原料の加熱及び乾燥による水蒸気の発生や、原料中のガスの放出や分解ガスの発生などにより上昇する。
【0205】
図11に示す精油回収装置380を用いる場合には、圧力検出調整器384aで配管311c内の圧力をモニターし、圧力が所定値に維持されるようにはバルブ384bの開度を調整する。配管311c内の加熱気体の一部は配管381を介して精油回収装置380に送られる。精油回収装置380に送られた加熱気体は凝縮器382で冷却され、加熱気体中の精油が液化され精油タンク383に回収される。凝縮器382で凝縮されないガス成分(例えば、酸化炭素ガス、水素ガス等)は、配管389aを介して加熱炉70に送られて燃焼され、煙突74から放出される。
【0206】
精油を回収しない場合には、例えば図11において、バルブ384bが設けられた配管381を凝縮器382を介さずに直接送風ファン389bの流入口に接続することができる。圧力検出調整器384aで配管311c内の圧力をモニターし、圧力が所定値に維持されるようにバルブ384bの開度を調整する。配管311c内の加熱気体の一部は、配管381、送風ファン389b、配管389aを順に介して加熱炉70に送られ燃焼され、煙突74から放出される。
【0207】
粉末原料が回収され、必要に応じて精油が回収された後の加熱気体は、加熱炉70内の第1予熱器361により加熱昇温される。以下、上記と同様の工程が繰り返される。
【0208】
第1循環路310内を循環する加熱気体の温度は、温度検出調整器61aでモニターされる。温度検出調整器61aで検出した温度に応じてバルブ61bの開度を調整しバイパス配管313を通過する加熱気体の量を制御する。このようにして、第1循環路310内を循環する加熱気体を所望する温度に制御することができる。
【0209】
第1循環路310に導入される気体315は空気であってもよい。気体315として空気を用いる場合には、温度検出調整器61aの設定温度を、第1循環路310への原料導入開始時は低く(例えば100℃)し、原料導入量を増やすのにともなって所定温度まで徐々に上昇させることが好ましい。第1循環路310内の加熱気体は、運転開始時は空気であっても、運転を継続するしたがって、原料を加熱し乾燥させることにより発生した水蒸気や、原料中のガス、原料の分解ガス等が混合されて、過熱蒸気及び分解ガスが主体の加熱気体に置き換わる。
【0210】
次に、粉末原料ホッパ353に貯留された粉末原料から、第2循環路320を含む系を用いて粉末炭を製造する方法を説明する。
【0211】
最初に、バルブ84b(図4参照)又はバルブ85b(図5参照)を開き、バルブ325aを開いて気体325を第2循環路320に導入する。これと並行して、第2循環路320に設けられた排気弁(図示せず)を開く。第2循環路320内の気体が気体325に置換された後、当該排気弁を閉じる。気体325としては、例えば蒸気(過熱蒸気を含む)や低酸素ガスを用いることができる。気体325は、第1循環路310を循環する気体315と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0212】
次いで、循環ファン322を駆動して、気体325を第2循環路320内に循環させる。加熱炉70が点火されていない場合には、燃焼空気ファン42を駆動し、加熱炉70のパイロットバーナー(図示せず)を点火し、バルブ73b,73cを開き、ノズル71から空気混合燃料を燃焼室75内に噴射し、燃料を燃焼させる。これにより、第2循環路320を循環する気体325は、第2予熱器362及び炭化器30で加熱され加熱気体となる。加熱気体の温度を温度検出調整器73aにより検出して、バルブ73b,73cの開度を調整し加熱炉70内の燃焼を制御することができる。
【0213】
第2循環路320を循環する加熱気体が所定温度に達した後、定量供給装置354aを駆動して粉末原料ホッパー353に貯留されていた粉末原料を配管321aに導入する。粉末原料は、第2循環路320を循環する加熱気体によって炭化器30に搬送される。炭化器30以降の工程は実施の形態1の製造装置1と同じであるので、説明を省略する。
【0214】
以上のように、本実施の形態3によれば、加熱気体の循環路を第1循環路310及び第2循環路320に分離し、第1循環路310を含む系で未乾燥且つ未粉砕の原料から粉末原料を製造し、第2循環路320を含む系で粉末原料から粉末炭を製造する。したがって、加熱気体の種類、温度、流速(流量)等の条件を第1循環路310及び第2循環路320のそれぞれで独立して設定することができるので、最適条件で粉末原料及び粉末炭を製造することができる。例えば、原料を乾燥及び粉砕して粉末原料を製造するのに要する時間と、粉末原料を炭化するのに要する時間とが異なっていても、それぞれに最適な条件を設定して2つの系を並行して運転することができる。
【0215】
また、第1循環路310を含む系及び第2循環路320を含む系のいずれか一方のみを運転することもできる。例えば、未乾燥且つ未粉砕の原料から粉末原料のみを製造する、あるいは、粉末原料から粉末炭のみを製造するなど、需要等に応じて生産品種を臨機応変に変更することができる。また、第1循環路310を含む系及び第2循環路320を含む系のいずれか一方にトラブルが発生したりメインテナンスを行ったりする場合にも他方のみを運転することが可能である。
【0216】
更に、第一循環路310で生産された粉末原料の1部をそのまま、あるいはペレット化して加熱炉70の燃料として使用することも可能である。これにより、外部よりの他の燃料の導入量を削減できる。また他の燃料を導入することなく粉末炭を製造することもできる。
【0217】
上述した本実施の形態3は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0218】
例えば、容器90を用いずに、実施の形態1と同様に、配管311aの下流側端を粉砕機20の吸引口22に接続し、配管311bの上流側端を粉砕機20の吐出口23に接続してもよい。
【0219】
第1循環路310を含む系及び第2循環路320を含む系のうちの少なくとも一方が複数設けられていても良い。例えば、粉末原料を製造するのに要する時間が、粉末原料から粉末炭を製造するのに要する時間よりも長くなる場合には、第1循環路310を含む系の数を第2循環路320を含む系の数よりも多くすることで、運転休止期間を低減して装置の稼働率を向上させることができる。
【0220】
その他、実施の形態1,2で説明したのと同様の変更を本実施の形態3に適用しても良い。
【0221】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、循環路を循環する加熱気体として炭化器を加熱する加熱炉で発生する燃焼ガスを利用する。
【0222】
図12は、本発明の実施の形態4に係る粉末炭の製造装置4の全体構成の概略を示した図である。図12に示す製造装置4は、実施の形態1で説明した製造装置1を、循環路101を循環する加熱気体として燃焼ガスを利用するように変更したものである。図12において実施の形態1で説明した製造装置1を示す図1と同一の部材には同一の符号を付しており、それらについての詳細な説明を省略する。以下、本製造装置4を実施の形態1と相違する点を中心に説明する。
【0223】
図12に示す製造装置4では、実施の形態1の製造装置1に設けられていた予熱器60、気体100を循環路101に導入するバルブ100aが設けられていない。また、実施の形態1の製造装置1と異なり、配管101aの上流側端は加熱炉70の燃焼室75の上方に設けられた吸い込みノズル77に接続されており、また、配管101dの下流側端は加熱炉70の燃焼室75に設けられた吹き出しノズル78に接続されている。この製造装置4では、粉砕機20、炭化器30、粉末炭回収装置50、加熱炉70が配管101a〜101dで順に環状に接続されて循環路101を構成している。
【0224】
本実施の形態4に係る製造装置4を用いた粉末炭の製造方法の一例を以下に説明する。但し、本発明の粉末炭の製造方法は以下の例に限定されない。
【0225】
最初に、バルブ84b(図4参照)又はバルブ85b(図5参照)を開き、循環ファン102を駆動し、粉砕機20を駆動し羽根車27を回転させる。これにより、加熱炉70内の気体が吸い込みノズル77から吸引され、配管101a,101b,101c,101dを順に通って吹き出しノズル78から加熱炉70の燃焼室75に放出される。
【0226】
次いで、燃焼空気ファン42を駆動し、加熱炉70のパイロットバーナー(図示せず)を点火し、バルブ73b,73cを開き、ノズル71から空気混合燃料を燃焼室75内に噴射し、燃料を燃焼させる。
【0227】
吸い込みノズル77は、吹き出しノズル78から燃焼室75に放出されたガスと、燃焼室75で発生した燃焼ガスとの混合ガスを吸引する。吸い込みノズル77から循環路101内に高温の燃焼ガスが導入され、更に、循環路101を循環する気体が炭化器30で加熱される結果、循環路101内の気体の温度は上昇する。循環路101を循環する加熱気体の温度が所定温度(例えば温度検出調整器61aにより検出される温度で約250℃)に到達した後、原料を原料導入点P10を通じて配管101aに導入し、以下、実施の形態1と同様にして粉末炭が製造される。
【0228】
上記以外は実施の形態1と同じである。実施の形態1で説明したのと同様の変更を本実施の形態4の製造装置4に適用することができる。
【0229】
図13は、本発明の実施の形態4に係る別の粉末炭の製造装置5の全体構成の概略を示した図である。図13に示す製造装置5は、実施の形態2で説明した製造装置2を、循環路101を循環する加熱気体として燃焼ガスを利用するように変更したものである。図13において実施の形態2で説明した製造装置2を示す図6と同一の部材には同一の符号を付しており、それらについての詳細な説明を省略する。以下、本製造装置5を実施の形態2と相違する点を中心に説明する。
【0230】
図13に示す製造装置5では、実施の形態2の製造装置2に設けられていた予熱器60、気体100を循環路101に導入するバルブ100aが設けられていない。また、実施の形態2の製造装置2と異なり、配管101aの上流側端は加熱炉70の燃焼室75の上方に設けられた吸い込みノズル77に接続されており、また、配管101dの下流側端は加熱炉70の燃焼室75に設けられた吹き出しノズル78に接続されている。この製造装置5では、容器90(または粉砕機20)、炭化器30、粉末炭回収装置50、加熱炉70が配管101a〜101dで順に環状に接続されて循環路101を構成している。
【0231】
本実施の形態4に係る製造装置5を用いた粉末炭の製造方法の一例を以下に説明する。但し、本発明の粉末炭の製造方法は以下の例に限定されない。
【0232】
最初に、第1バルブ105aを開き、第2バルブ105bを閉じる。次いで、バルブ84b(図4参照)又はバルブ85b(図5参照)を開き、循環ファン102を駆動し、粉砕機20を駆動し羽根車27を回転させる。これにより、加熱炉70内の気体が吸い込みノズル77から吸引され、配管101a,101b,101c,101dを順に通って吹き出しノズル78から加熱炉70の燃焼室75に放出される。
【0233】
次いで、燃焼空気ファン42を駆動し、加熱炉70のパイロットバーナー(図示せず)を点火し、バルブ73b,73cを開き、ノズル71から空気混合燃料を燃焼室75内に噴射し、燃料を燃焼させる。
【0234】
吸い込みノズル77は、吹き出しノズル78から燃焼室75に放出されたガスと、燃焼室75で発生した燃焼ガスとの混合ガスを吸引する。吸い込みノズル77から循環路101内に高温の燃焼ガスが導入され、更に、循環路101を循環する気体が炭化器30で加熱される結果、循環路101内の気体の温度は上昇する。循環路101を循環する加熱気体の温度が所定温度(例えば温度検出調整器61aにより検出される温度で約180℃)に到達した後、原料を原料導入点P10を通じて第1配管104aに導入し、以下、実施の形態2と同様にして粉末炭が製造される。
【0235】
上記以外は実施の形態2と同じである。実施の形態2で説明したのと同様の変更を本実施の形態4の製造装置5に適用することができる。
【0236】
図14は、本発明の実施の形態4に係る粉末炭の製造装置6の全体構成の概略を示した図である。図14に示す製造装置6は、実施の形態3で説明した製造装置3を、第2循環路320を循環する加熱気体として燃焼ガスを利用するように変更したものである。図14において実施の形態3で説明した製造装置3を示す図10と同一の部材には同一の符号を付しており、それらについての詳細な説明を省略する。以下、本製造装置6を実施の形態3と相違する点を中心に説明する。
【0237】
図14に示す製造装置6では、実施の形態3の製造装置3に設けられていた第2予熱器362、気体325を第2循環路320に導入するバルブ325aが設けられていない。また、実施の形態3の製造装置3と異なり、配管321aの上流側端は加熱炉70の燃焼室75の上方に設けられた吸い込みノズル77に接続されており、また、配管321cの下流側端は加熱炉70の燃焼室75に設けられた吹き出しノズル78に接続されている。この製造装置6では、炭化器30、粉末炭回収装置50、加熱炉70が配管321a〜321cで順に環状に接続されて第2循環路320を構成している。
【0238】
本実施の形態4に係る製造装置6を用いて、粉末原料ホッパ353に貯留された粉末原料から、第2循環路320を含む系を用いて粉末炭を製造する方法の一例を以下に説明する。但し、本発明の粉末炭の製造方法は以下の例に限定されない。
【0239】
最初に、バルブ84b(図4参照)又はバルブ85b(図5参照)を開き、第2循環ファン322を駆動する。これにより、加熱炉70内の気体が吸い込みノズル77から吸引され、配管321a,321b,321cを順に通って吹き出しノズル78から加熱炉70の燃焼室75に放出される。
【0240】
次いで、加熱炉70が点火されていない場合には、燃焼空気ファン42を駆動し、加熱炉70のパイロットバーナー(図示せず)を点火し、バルブ73b,73cを開き、ノズル71から空気混合燃料を燃焼室75内に噴射し、燃料を燃焼させる。
【0241】
吸い込みノズル77は、吹き出しノズル78から燃焼室75に放出されたガスと、燃焼室75で発生した燃焼ガスとの混合ガスを吸引する。吸い込みノズル77から第2循環路320内に高温の燃焼ガスが導入され、更に、第2循環路320を循環する気体が炭化器30で加熱される結果、第2循環路320内の気体の温度は上昇する。第2循環路320を循環する加熱気体の温度が所定温度に到達した後、粉末原料を配管321aに導入し、以下、実施の形態3と同様にして粉末炭が製造される。
【0242】
上記以外は実施の形態3と同じである。実施の形態3で説明したのと同様の変更を本実施の形態4の製造装置6に適用することができる。
【0243】
図10に示した製造装置3及び図14に示した製造装置6において、第1予熱器361及び気体315を第1循環路310に導入するバルブ315aを省略して、第1循環路310を循環する加熱気体として加熱炉70で発生する燃焼ガスを利用するように変更することも可能である。
【0244】
以上のように、本実施の形態4によれば、循環路を循環する加熱気体として炭化器30を加熱する加熱炉70で発生する燃焼ガスを使用する。燃焼ガスは一般に酸素ガス濃度が低いので、酸素が希薄な雰囲気下で乾燥、炭化を行うことが可能となり、爆発の危険なく、高品質の原料粉末及び粉末炭を得ることができる。また、窒素ガスなどの高価な低酸素ガスを使用する必要がなく、また、気体を別途加熱する必要もないので、低コストを実現できる。
【0245】
また、加熱気体中に未回収の粉末炭や精油が仮に残存しても、それらは燃焼室75に導入されて燃料とともに燃焼される。従って、未回収の粉末炭や精油が循環路を何度も巡回し炭化器30で再加熱されることによって変質物が発生するのを防止できるので、より高品質でより多くの精油を回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0246】
本発明の利用分野は特に制限はないが、粉末炭や活性炭粉末の製造に広く利用することができる。また、本発明では、水分を含む原料や粘着性を有する原料も使用することができるので、従来であれば廃棄処理されていた材料や炭化の原料としては未利用の材料の有効活用が可能となり、環境問題の解決や資源の有効利用の観点からも利用価値が高い。
【符号の説明】
【0247】
1,2,3,4,5,6 粉末炭の製造装置
10 原料導入装置
20 粉砕機
30 炭化器
40 冷却器
50 粉末炭回収装置
60 予熱器
70 加熱炉
80,380 精油回収装置
90,150 容器
101 循環路
110 サブ循環路
310 第1循環路
320 第2循環路
350 粉末原料回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を加熱気体が循環する循環路に導入する工程と、
前記原料を前記加熱気体により加熱し乾燥させながら粉砕機に搬送し、前記粉砕機にて前記原料を前記加熱気体の存在下で粉砕し乾燥させて粉末原料を得る工程と、
前記粉末原料を前記加熱気体とともに前記循環路に沿って炭化器に搬送し、前記炭化器にて前記粉末原料を前記加熱気体の存在下で加熱し炭化させて粉末炭を得る工程と、
前記粉末炭を前記加熱気体とともに前記循環路に沿って粉末炭回収装置に搬送し、前記粉末炭回収装置にて前記粉末炭を回収する工程と、
前記粉末炭が回収された後の前記加熱気体を前記循環路に沿って前記原料が導入される地点に送る工程とを備えることを特徴とする粉末炭の製造方法。
【請求項2】
原料を加熱気体が循環する第1循環路に導入する工程と、
前記原料を前記加熱気体により加熱し乾燥させながら粉砕機に搬送し、前記粉砕機にて前記原料を前記加熱気体の存在下で粉砕し乾燥させて粉末原料を得る工程と、
前記粉末原料を前記加熱気体とともに前記第1循環路に沿って粉末原料回収装置に搬送し、前記粉末原料回収装置にて前記粉末原料を回収する工程と、
前記粉末原料が回収された後の前記加熱気体を前記第1循環路に沿って前記原料が導入される地点に送る工程と、
回収された前記粉末原料を加熱気体が循環する第2循環路に導入する工程と、
前記粉末原料を前記加熱気体とともに前記第2循環路に沿って炭化器に搬送し、前記炭化器にて前記粉末原料を前記加熱気体の存在下で加熱し炭化させて粉末炭を得る工程と、
前記粉末炭を前記加熱気体とともに前記第2循環路に沿って粉末炭回収装置に搬送し、前記粉末炭回収装置にて前記粉末炭を回収する工程と、
前記粉末炭が回収された後の前記加熱気体を前記第2循環路に沿って前記粉末原料が導入される地点に送る工程とを備えることを特徴とする粉末炭の製造方法。
【請求項3】
前記加熱気体の酸素濃度が6vol%以下である請求項1又は2に記載の粉末炭の製造方法。
【請求項4】
前記加熱気体が、前記炭化器を加熱する加熱炉で発生する燃焼ガスを含む請求項1〜3のいずれかに記載の粉末炭の製造方法。
【請求項5】
前記粉末原料を得る工程が、
前記原料を、前記粉砕機と容器との間で形成されるサブ循環路に沿って前記加熱気体とともに循環させる工程と、
所定の大きさに粉砕され且つ乾燥された前記粉末原料を前記容器内で分級する工程と
を備える請求項1〜4のいずれかに記載の粉末炭の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕機が、粉砕機能に加えて送風機能を有する請求項1〜5のいずれかに記載の粉末炭の製造方法。
【請求項7】
前記炭化器が、同軸に配された外筒及び内筒と、前記外筒の内周面に周方向に沿って延設された複数の邪魔板とを備え、
前記加熱気体は、前記外筒と前記内筒とに囲まれた内部空間内を旋回しながら軸方向に移動し、
前記加熱気体に搬送された前記粉末原料は、前記外筒の内周面に沿って旋回し、
前記複数の邪魔板は、前記粉末原料の軸方向の移動を制限する請求項1〜6のいずれかに記載の粉末炭の製造方法。
【請求項8】
前記粉末原料及び/又は前記粉末炭が回収された後の前記加熱気体の少なくとも一部を精油回収装置に導入し、前記精油回収装置にて前記加熱気体中の精油を回収する工程を更に備える請求項1〜7のいずれかに記載の粉末炭の製造方法。
【請求項9】
前記炭化器内で前記粉末原料をガス賦活させる請求項1〜8のいずれかに記載の粉末炭の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法により得られた前記粉末炭からなる粉末炭加工品。
【請求項11】
請求項8に記載の前記精油回収装置によって回収された精油。
【請求項12】
請求項11に記載の精油からなる精油加工品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図3F】
image rotate

【図3G】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−63644(P2011−63644A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213083(P2009−213083)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(505345299)株式会社アースリンク (2)
【Fターム(参考)】