説明

粒状シリコンの製造方法及び製造装置

【課題】結晶性の高い多結晶もしくは単結晶の粒状シリコンを効率良く生産することが可能な粒状シリコンの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】シリコン原料を溶解する溶解炉1、種結晶用の微粉制御機構2と、落下管3と、回収装置4で構成される粒状シリコンの製造装置において、シリコン原料体を溶融ルツボにおいて加熱して溶融し、所定の圧力を前記溶融ルツボ内のシリコン融液上面にかけながら、前記溶融したシリコン原料体を前記溶融ルツボの底部に設けられたノズル穴より吐出させ、前記吐出させた溶融シリコンを、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにした落下管3内を溶融状態のままで降下させ、微粉を核として結晶成長させるとともに、粒状に凝固させ、回収装置4で回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶もしくは単結晶の粒状シリコンの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落下方法による粒状シリコンの作製においては、吐出されたシリコン液滴は不活性ガス雰囲気、あるいは真空中に落下しながら冷却され、過冷却状態になり、温度の低い表面に多量の結晶核が発生し、外部から内部に向かって固まっていき、多結晶を形成する。特に、凝固の時、体積の膨張の力により、割れたり変形したりすることが多い。この方法で生成されたシリコン粒にはエッチピットや転位などの結晶欠陥が多量に含まれる。
【0003】
粒状シリコンの結晶性を向上させるために、特許文献1では種結晶技術をすでに開示している。この先行技術では、落下中のシリコン融液にその場で単結晶の種を供給して、単結晶、もしくは多結晶の粒状シリコンを得る。多結晶のシリコン粒の外側の一部を溶かし、中心の一部を結晶種として残して、再び凝固させて単結晶を成長させる。この技術では、粒状シリコンを1個ずつ作製するものであるため量産性の点で問題がある。
【0004】
他の落下方法による粒状シリコンの作製は、吐出されたシリコン液滴を種結晶用の微粉を漂わせた不活性ガス雰囲気中を落下させることにより、温度の低い表面に結晶核を発生させ、外部から内部に向かって固まらせて、多結晶を形成するものである。これは例えば特許文献2にも開示されているように公知である。
粒状シリコンを製造する従来の装置を図9に示す。溶融ルツボを含みシリコン原料体を溶解する溶解炉1、溶融ルツボから吐出した溶融シリコンを落下させる落下管3、落下管を落下する間に凝固した粒状シリコンを回収する回収装置4及び落下管内に種結晶用の微粉を供給する種結晶用微粉供給装置20から構成されている。
【0005】
溶解炉1の内部には、図2に示すようにシリコン融液6を収納する石英ルツボ5が設けられ、石英ルツボ5の側面周辺はシリコン溶解用の加熱ヒータ11が設けられる。
石英ルツボ5には、高純度石英が用いられている。この石英ルツボ5の底部にノズル7が取り付けられている。
【0006】
以下、粒状シリコンを製造する方法について説明する。
まず、底にノズル7を有する石英ルツボ内でシリコンを溶解し、シリコン溶液の温度が、融点より十分高くなった時点で、石英ルツボの上部から微量の押出しガスを流し、ルツボの底にある穴から融液を吐出させる。
この時、融液を不連続に滴下させないで、線状に連続的に流れるように吐出させる。吐出した線状のシリコン融液は、溶解炉下方に配置された落下管3内を自由落下するが、その際に、重力加速度によって径が細くなり、最終的には、融液の表面張力によって細断されて粒状になる。
【0007】
その際、落下管3の上方部には種結晶生成用の微粉供給装置20の噴出管14が接続されているので、細断された直後のシリコン融液の滴は、融液状態のまま噴出管14から噴出された煙状シリコンを含む雰囲気ガス中に浸される。そしてシリコン融液の滴は、融液状態のまま雰囲気ガス中の種結晶用微粉と接触し、接触箇所から急速に冷却され落下管3内を落下中に凝固する。凝固した粒状シリコンは、落下管3の下端に設けた回収装置4内の冷却油中に回収される。
【0008】
ここで微粉供給装置20は、その内部にシリコンの粉末が収納された容器21と、容器21に雰囲気ガスを導入する導入管13と、容器21の内部に設けられシリコンの粉末を攪拌して煙状となったシリコンを生成する攪拌手段15と、生成され煙状となったシリコンを落下管3に噴出する噴出管14と、を備えて構成される。
【特許文献1】米国特許第6264742号明細書
【特許文献2】特開2004−881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の粒状シリコンの製造方法及び製造装置では次のような問題があった。
落下管中へ噴出され煙状となったシリコン等の微粉の一部が自重によって、落下管の下部へ落ちて行くか、吐出中の上昇気流によって落下管の上部へ運ばれてしまい、落下管中の一定の空間に留まらないという問題があり、このため落下管3内でシリコン融液の滴の結晶化が十分ではなかった。
したがって、本発明は、上記のような問題点を除去した粒状シリコンの製造方法及びその製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するために、粒状シリコンの製造方法及びその製造装置において、微粉供給装置で生成されたシリコン等の微粉が下方に落下することなく落下管内の一定空間に留まるようにしたことを要点とする。
課題を解決する手段は次のとおりである。
(1)シリコン原料を溶融ルツボにおいて加熱して溶融する工程と、所定の圧力を前記溶融ルツボ内のシリコン融液上面にかけながら、溶融したシリコンを前記溶融ルツボの底部に設けられたノズル穴より吐出させる工程と、前記吐出させた溶融シリコンを、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにした落下管内を溶融状態のままで落下させ、微粉を核として結晶成長させるとともに、粒状に凝固させる工程と、を備えた粒状シリコンの製造方法。
(2)種結晶用の微粉を不活性ガスとともに落下管内の微粉噴出部から噴出させ、該微粉噴出部の下方及び上方から不活性ガスを供給すると同時に、微粉噴出部の上下の近傍から排気することにより、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにしたことを特徴とする粒状シリコンの製造方法。
(3)種結晶用の微粉を落下管内へプラズマの原料ガスと共に供給し、該微粉をプラズマの中で一定の密度で分布させることにより、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにしたことを特徴とする粒状シリコンの製造方法
(4)種結晶用の微粉はシリコン、石英ガラス、窒化シリコン、窒化ボロンの粉末体のいずれか、もしくはその混合物であることを特徴とする粒状シリコンの製造方法。
(5)上記ノズル穴より吐出されたシリコン融液は、上記一定の空間において過冷却度が300℃以内であることを特徴とする粒状シリコンの製造方法。
(6)上記種結晶用の微粉は、種結晶用の微粉を入れた容器の下部から不活性ガスをパルス状に吹き込むことにより、落下管中に煙状となって噴出していることを特徴とする粒状シリコンの製造方法。
【0011】
また本発明では次のような製造装置により上記課題は解決される。
(7)底部にノズルを有する溶融ルツボを含みシリコン原料を溶解する溶解炉と、溶融ルツボ底部から吐出した溶融シリコンを種結晶用の微粉に接触させて落下させる落下管と、前記落下管を落下する間に凝固した粒状シリコンを回収する回収装置と、を有する粒状シリコン製造装置において、
落下管の一部に、種結晶用の微粉が落下することなく落下管内部の一定の空間に滞留するように制御する微粉制御機構を備えたことを特徴とする粒状シリコン製造装置。
(8)上記微粉制御機構は、落下管中へ不活性ガスとともに微粉を噴出する微粉噴出ノズルと、該微粉噴出ノズルの上方及び下方に設けられ落下管中に不活性ガスを供給する上部ガス供給ノズル及び下部ガス供給ノズルと、上部ガス供給ノズル及び下部ガス供給ノズルと微粉噴出ノズルとの間にそれぞれ設けられた上部排気ノズル及び下部排気ノズルとを備えたことを特徴とする粒状シリコン製造装置。
(9)上記微粉制御機構は、種結晶用の微粉を前記空間へ不活性ガスと共に供給する手段と、落下管内部の一定の空間に不活性ガスのプラズマを発生させる手段と、を備えたことを特徴とする粒状シリコン製造装置。
(10)上記種結晶用の微粉を入れたロート状の容器と、該容器の下端より不活性ガスを吹き付ける手段と、該容器の上方より煙状となった種結晶用の微粉を不活性ガスとともに排出する排出手段とを有する種結晶用の微粉供給装置をさらに備えたことを特徴とする粒状シリコン製造装置。
(11)上記種結晶用の微粉供給装置は、上記ロート状の容器を振動させる振動手段及び不活性ガスの導入経路にパルス電磁バルブ手段を含むことを特徴とする粒状シリコン製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微粉が落下管中の一定の空間に留まるため、結晶性の高い多結晶もしくは単結晶の粒状シリコンを効率良く生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る粒状シリコンの製造装置を図1に示す。シリコン原料を溶解する溶解炉1、種結晶用の微粉制御機構2と、落下管3と、回収装置4で構成される。
【0014】
次に図2は、溶解炉1の要部を示すものである。
シリコン原料は石英ルツボ5に貯留し、溶解炉の加熱ヒータ11によってシリコンを融点以上の温度まで加熱し溶解させる。
石英ルツボ内部にAr、Heなどの不活性ガスによって圧力を印加して、押出用ガスを供給し、ルツボの底のノズルからシリコン融液6を吐出させる。
【0015】
吐出されたシリコン融液6は、重力及び表面張力によって細断されて粒状のシリコン滴8になり、落下しながら不活性ガスによって冷却され、過冷却状態になる。そこで、種結晶の微粉を供給し、過冷却になったシリコン滴と接合させる。接合された部分は局所的に核を形成し結晶成長しながら凝固する。
【0016】
本発明では種結晶の微粉を供給し、過冷却になったシリコン滴と接合させるに際し、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにしたことを特徴とする。
以下種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにした実施態様を例示して本発明の詳細を説明する。
【0017】
図4は、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにした微粉制御機構の一実施態様を示すものである。この実施態様では、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにするため、落下管3の一部に微粉制御機構2の中心軸を落下シリコン融液の経路と一致するように設置するものである。
【0018】
図3のような種結晶用の微粉供給装置の出口より噴出した微粉と不活性ガスは、清浄なチューブを通して微粉制御機構まで輸送され、微粉及び不活性ガス噴出ノズル23から落下管3中に噴出される。噴出ノズル23は輸送チューブから分岐され、一つ以上設置されている。
上部ガス供給ノズル26及び下部ガス供給ノズル27より不活性ガスを供給し、同時に、上部排気ノズル24及び下部排気ノズル25から排気する。落下管内の圧力が常に一定になるようにガスの供給量及び排気量を精密に制御する。
【0019】
上記のような微粉制御機構を設けることによって、噴出ノズル23から噴出された微粉は、下へ落ちず、上部空間へ拡散もせず、噴出ノズル付近の一定の空間に留まる。
更に、上部ガス供給ノズル26及び下部ガス供給ノズル27からのガス供給量を調整することによって、微粉の滞在空間範囲を調整することができる。微粉の濃度調整は、微粉輸送不活性ガスの流量によって実現できる。
微粉の分布を均一にするために、ガス供給ノズル及び排気ノズルはそれぞれ複数個、円周上に均等に設置することが好ましい。ガスの供給量及び排気速度は、それぞれの経路にバルブを設置して独立に調整することができる。各ノズル間の間隔は、落下管及び微粉制御機構の直径に応じて設計する。
なお微粉制御機構は、落下管の一部分を利用してもよいし、別途製作して落下管の中途に挿入してもよい。
上記微粉制御機構によって、種結晶用の微粉を安定に供給し、かつ一定の空間に均一に分布させることができる。
【0020】
上記のものとは別に、プラズマにより微粉を閉じ込めたり分散させたりすることにより、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにすることも可能である。
図5、図6を例示して微粉制御機構の他の実施態様を説明する。
【0021】
図5の微粉制御機構は、落下管の外部にプラズマ装置を設け、そこにプラズマ放電用ガスを導入し、プラズマを発生させる。種結晶用微粉をプラズマの中へ導入し、プラズマ装置の開口から、プラズマとともに種結晶用の微粉を落下管中に供給するものである。そして微粉は、一定の密度でプラズマの制限空間内に均一に分布する。
なおプラズマ装置を落下管の内部に設けることも可能である。
【0022】
図6の微粉制御機構は、落下管の周囲に円筒状のマイクロ波プラズマ装置を配置したものである。マイクロ波とプラズマ放電ガスを導入し、落下管中にプラズマを発生させ、種結晶用微粉をプラズマの中へ導入する。そして微粉は、一定の密度でプラズマの制限空間内に均一に分布する。
【0023】
その他の実施態様としては、落下管の中にプラズマ電極を設置し、高周波電力を供給して、不活性ガスのプラズマを発生させ、プラズマ空間へ種結晶用の微粉を一定の流量で供給し、プラズマ電位によって電極間に分散させることもできる。
プラズマ電極は、垂直方向の平行平板型、水平方向での平行Oリング型、垂直方向のコイル型の一つから成る。何れの場合も落下シリコン融液滴通路の中心軸に微粉が均一になるように設計し、シリコン融液が通過するために50mmφ以上の円柱状空間を確保する。
以上により、微粉は一定の密度でプラズマの制限空間内に均一に分布できる。
【0024】
次に図4に示す微粉制御機構を採用した粒状シリコンの製造方法について詳細に説明する。
まず、120gのシリコン原料を石英ルツボに入れ、シリコンの融点より高い温度である1500℃に昇温した。そしてこの温度を約30分間維持すると、シリコンは完全に溶解し、40分で吐出を開始した。
【0025】
吐出を開始する前に種結晶用の微粉を調整しておく。種結晶用の微粉はサイズ1〜100μmφの単結晶シリコン微粉を用いた。シリコン微粉の純度は5N(ナイン)以上であった。シリコン微粉5gを図3に示す石英製ロート状の微粉容器21に入れて、容器の下より流量1L/minのArガスを供給し、容器の上部空間で煙状にさせた。微粉が固まらないように、微粉容器を超音波発振機によって振動させ、更に、Arガスの経路にパルス電磁バルブを設け、周波数5Hzで電磁バルブを動作させて、Arガスを供給した。こうすることにより、シリコン微粉は固まらず、容器上方の出口から連続的に噴出した。なお微粉が固まらないのであれば、微粉容器の振動は低周波によるものであってもよい。
【0026】
噴出したシリコン微粉は、テフロン(登録商標)チューブによって、微粉制御機構の微粉及び不活性ガス噴出ノズル23まで輸送されて噴出される。同時に、上部ガス供給ノズル26及び下部ガス供給ノズル27よりArガスを供給し、それぞれの流量は5L/min、10L/minとした。排気ノズルと接続しているバルブを徐々に開いて、落下管内の圧力が1気圧になるように調整した。すると、シリコン微粉は微粉及び不活性ガス噴出ノズルの面を中心に約50mmの高さ範囲内にとどまり、安定な分布になった。
【0027】
種結晶用の微粉が上記の安定状態になってから吐出を開始した。吐出の前にルツボの内部と外部は同圧であるように同圧用の電磁弁を設けた。吐出の時、同圧用の電磁弁を閉めて、ルツボの内部空間へ押し出し用の高純度(6N)Arガスを供給し、0.02MPaまで加圧すると、ノズルから連続的に吐出した。ノズルからシリコンは線状に吐出されるが、表面張力及び重力によって、粒状に細断される。
【0028】
微粉制御機構の設置場所は、基本的にシリコン粒状体がすでに過冷却になった場所に設置する。ただし、設置場所によって、粒状シリコンの結晶性に大きく影響する。過冷却度が50℃以下では、シリコン粒状体は単結晶になり、50〜150℃の間では多結晶になり、150℃を超えるとデンドライト成長になる傾向が見られる。微粉制御機構の設置場所は、シリコン粒状体の過冷却度が300℃以下の場所が好ましい。
【0029】
種結晶用の微粉は高純度なシリコン、石英ガラス(ガラスビーズ)、窒化シリコン、窒化ボロンの粉末体のいずれか、もしくはその混合物を用いる。シリコン粒状体は微粉と接合した瞬間、局所的に温度が低くなり、シリコン中に核を生成させ、結晶成長が始まる。ガラスビーズ、窒化シリコン、窒化ボロンの粉末体はシリコン中への固溶度が低いため、シリコン中への不純物の持込は少ない。シリコン微粉の場合は、核生成以外に、結晶の方位を提供できる役割もある。ただし、シリコン微粉はシリコン粒状体に溶け込むので、微粉中の不純物は粒状シリコンに持ち込まれてしまう。そのため、高純度の微粉を使用することは粒状シリコン中の不純物低減に重要である。
【0030】
種結晶用微粉のサイズは、1〜100μm程度の大きさである。吐出されたシリコン粒状体は種結晶用の微粉分散空間28を通過した。微粉の分布状態はシリコン粒状体の通過に影響を受けず、安定な状態を保った。
過冷却になったシリコン粒状体は微粉と接合して核生成した後、急に成長し始める。核生成された場所から一方向へ成長する。シリコンの凝固熱(潜熱)が大きいため、成長方向でシリコンの一部は融点近くに溶けながら再び成長する。この過程によって、結晶性の高い涙型の粒状シリコンが形成される。
【0031】
凝固した粒状シリコンは落下管中に落下しながら冷却される。しかし、粒状シリコンは高い温度の状態で回収装置へ到着する。回収装置に入ると急冷されるので、回収用媒体の耐熱度、熱伝導係数、粘度などの性能は粒状シリコン中の転位や、粒界生成へ影響を与える。そこで、回収装置に蒸気圧及び揮発性が低く、耐熱性の高いシリコーンオイルを用いる。シリコーンオイルは、粒状シリコンの着地時の衝撃を十分に低減し、粒状シリコンの熱を吸収でき、転位や粒界の密度を減少させる役割がある。
【0032】
回収装置に耐熱温度250℃以上のシリコーンオイルを使用した。シリコン粒状体がシリコーンオイルに着地する時、燃焼や分解の発生、色の変化は見られず、安定な状態に保たれていた。
【0033】
このように作製された粒状シリコンの径は、ノズルの径及び押し出すArの圧力によって決定される。ノズルの径が0.2から0.5mmへと大きくなるにつれて、粒状シリコンの径は徐々に大きくなる。なお、ノズルの径を一定にしても、押し出すArの圧力が0.02MPaから0.05MPaへ大きくなるにつれて、吐出速度が速くなり、粒状シリコンの径も大きくなった。一般に約1.0mmの粒状シリコンを作製するためのノズル径は、0.2〜0.5mmであった。
【0034】
また上記の条件で作製した粒状シリコンは涙型になり、図7の右図の写真に示すような高い結晶性を示した。ここで図7は、本発明により作製された涙型粒状シリコンを断面研磨した後の断面電子顕微鏡写真及び断面の拡大写真である。シリコン粒の表面は滑らかで、粒界や凹凸が見られない。また、断面研磨して選択エッチングしても、エッチピットや結晶欠陥、粒界は少ないことが分かる。
本発明によれば良品とされる涙型の割合は、微粉制御機構を用いない場合の10%程度から60%以上に大きく向上した。
なお図8は、参考のため不良とされる粒状シリコンを断面研磨した後の断面電子顕微鏡写真及び断面の拡大写真である。表面には、熱膨張及び応力によって粒界と凹凸が多量に見られ、単面研磨して選択エッチングした後、高密度なエッチピットと粒界が見られる。このような粒状シリコンはキャリア寿命が短く、太陽電池としての性能が低いことが確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る粒状シリコンの製造装置の模式図である。
【図2】溶解炉の要部を示す模式図である。
【図3】微粉供給装置を示す模式図である。
【図4】微粉制御機構を示す模式図である。
【図5】プラズマを用いた微粉制御機構を示す模式図である。
【図6】プラズマを用いた他の微粉制御機構を示す模式図である。
【図7】本発明により作製された涙型粒状シリコンを断面研磨した後の断面電子顕微鏡写真及び断面の拡大写真である。
【図8】作製された不良の粒状シリコンを断面研磨した後の断面電子顕微鏡写真及び断面の拡大写真である。
【図9】従来の粒状シリコンの製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 溶解炉
2 微粉制御機構
3 落下管
4 回収装置
5 石英ルツボ
6 シリコン融液
7 ノズル
8 シリコン滴
11 加熱ヒータ
12 溶融炉心管
13 導入管
14 噴出管
15 撹拌手段
20 種結晶用微粉供給装置
21 微粉容器
22 種結晶用微粉
23 微粉及び不活性ガス噴出ノズル
24 上部排気ノズル
25 下部排気ノズル
26 上部ガス供給ノズル
27 下部ガス供給ノズル
28 種結晶用微粉分散空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原料を溶融ルツボにおいて加熱して溶融する工程と、所定の圧力を前記溶融ルツボ内のシリコン融液上面にかけながら、溶融したシリコンを前記溶融ルツボの底部に設けられたノズル穴より吐出させる工程と、前記吐出させた溶融シリコンを、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにした落下管内を溶融状態のままで落下させ、微粉を核として結晶成長させるとともに、粒状に凝固させる工程と、を備えた粒状シリコンの製造方法。
【請求項2】
種結晶用の微粉を不活性ガスとともに落下管内の微粉噴出部から噴出させ、該微粉噴出部の下方及び上方から不活性ガスを供給すると同時に、微粉噴出部の上下の近傍から排気することにより、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコンの製造方法。
【請求項3】
種結晶用の微粉を落下管内へプラズマの原料ガスと共に供給し、該微粉をプラズマの中で一定の密度で分布させることにより、種結晶用の微粉が落下することなく一定の空間に滞留するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコンの製造方法
【請求項4】
種結晶用の微粉はシリコン、石英ガラス、窒化シリコン、窒化ボロンの粉末体のいずれか、もしくはその混合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粒状シリコンの製造方法。
【請求項5】
上記ノズル穴より吐出されたシリコン融液は、上記一定の空間において過冷却度が300℃以内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粒状シリコンの製造方法。
【請求項6】
上記種結晶用の微粉は、種結晶用の微粉を入れた容器の下部から不活性ガスをパルス状に吹き込むことにより、落下管中に煙状となって噴出していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粒状シリコンの製造方法。
【請求項7】
底部にノズルを有する溶融ルツボを含みシリコン原料を溶解する溶解炉と、溶融ルツボ底部から吐出した溶融シリコンを種結晶用の微粉に接触させて落下させる落下管と、前記落下管を落下する間に凝固した粒状シリコンを回収する回収装置と、を有する粒状シリコン製造装置において、
上記落下管の一部に、種結晶用の微粉が落下することなく落下管内部の一定の空間に滞留するように制御する微粉制御機構を備えたことを特徴とする粒状シリコン製造装置。
【請求項8】
上記微粉制御機構は、落下管中へ不活性ガスとともに微粉を噴出する微粉噴出ノズルと、該微粉噴出ノズルの上方及び下方に設けられ落下管中に不活性ガスを供給する上部ガス供給ノズル及び下部ガス供給ノズルと、上部ガス供給ノズル及び下部ガス供給ノズルと微粉噴出ノズルとの間にそれぞれ設けられた上部排気ノズル及び下部排気ノズルとを備えたことを特徴とする請求項7に記載の粒状シリコン製造装置。
【請求項9】
上記微粉制御機構は、種結晶用の微粉を前記空間へ不活性ガスと共に供給する手段と、落下管内部の一定の空間に不活性ガスのプラズマを発生させる手段と、を備えたことを特徴とする請求項7に記載の粒状シリコン製造装置。
【請求項10】
上記種結晶用の微粉を入れたロート状の容器と、該容器の下端より不活性ガスを吹き付ける手段と、該容器の上方より煙状となった種結晶用の微粉を不活性ガスとともに排出する排出手段とを有する種結晶用の微粉供給装置をさらに備えたことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の粒状シリコン製造装置。
【請求項11】
上記種結晶用の微粉供給装置は、上記ロート状の容器を振動させる振動手段及び不活性ガスの導入経路にパルス電磁バルブ手段を有することを特徴とする請求項10に記載の粒状シリコン製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−284321(P2007−284321A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116701(P2006−116701)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電技術研究開発 革新的次世代太陽光発電システム技術研究開発 粒状シリコン太陽電池セル製造技術の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】