説明

粘弾性複合材料の押出のためのスクリュー要素

本発明は、一対の同一方向に回転する、一対の完全拭取スクリュープロファイルを備えた多軸スクリュー装置のための新規なスクリュー要素、多軸スクリュー装置でのスクリュー要素の使用方法、及び、加硫混合物の押出物のための製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正逆回転する一対の完全拭取スクリュープロファイルを有する、多軸スクリュー装置のための新規なスクリュー要素、多軸スクリュー要素に於けるスクリュー要素の使用方法、及び、粘弾性複合材料の押出のための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正逆回転する2軸又は多軸の装置は、ロータが互いを完全に拭き取るもので、随分と昔から公知である。そのようなスクリュー押出機を理解するための概要が、以下の刊行物(1)([1] = Kohlgruber(注:原文はuウムラウト): Der gleichlaufige(注:原文はaウムラウト) Doppelschneckenextruder [the co−running twin−screw extruder], Hanser Verlag Munich 2007)にて提供されている。
特に、刊行物(1)では、2軸又は多軸の押出機の構造、機能及び操作が詳細に説明されている。スクリュー要素と、それらの作動方法とが、その一章に割り当てられている(227〜248頁)。ここでは、搬送、混練、及び、混合の要素が詳細に説明されている。
【0003】
現在のスクリュー押出機はモジュール化されたシステムを有し、中心軸に異なるスクリュー要素を引き込むことができるようになっている。これにより、スクリュー押出機を各処理工程に採用することができる。
【0004】
スクリュー要素について記載すると、回転軸に垂直な断面形状が、短軸形状として後述され、通常、考慮されている。一対のスクリュー要素は、駆動スクリュープロファイルを備えたスクリュー要素と、従動スクリュープロファイルを備えたスクリュー要素とを備える。
【0005】
スクリュー外半径に等しいスクリュープロファイル領域はネジ山ランド領域として言及されている。ねじ山ランド領域の始点と終点の間の角度は、スクリュープロファイルの回転中心に対して、ネジ山ランド角度として言及されている。スクリュー外半径に1点でのみ接触するネジ山ランド領域は、ネジ山ランド角度が0であり、始点と終点がその位置で一致している。コア半径に等しいスクリュープロファイルは溝領域として言及されている。溝領域の始点と終点の間の角度は、スクリュープロファイルの回転中心に対する溝角度として言及されている。コア半径に1点でのみ接触する溝領域は溝角度が0であり、ここでも始点と終点が一致している。スクリュー外半径よりも小さく、かつ、コア半径よりも大きいスクリュープロファイルの領域は、隣接領域として言及されている。同様に、隣接領域の始点と終点の間の角度は、スクリュープロファイルの回転中心に対する隣接角度として言及されている。2つのバレル内腔によって貫通する多軸の押出機は、隙間領域として言及されている。2つの胴部穴が交差する2つの位置は、胴部間隙(1)として言及されている。
【0006】
ポリマーの準備及び加工中、スクリュー装置は、十分に摺接する形状の原理に基づいており、変更され続けている。特に、これは、表面に接着されるポリマーが溶融し、通常の加工温度で徐々に減少し、かつ、完全拭取スクリューの自浄効果によって阻止されるという事実に基づいている。完全拭取スクリューを製造するためのルールは、例えば、刊行物(1)の96〜109頁に示されている。そこには、一対のスクリュー押出機の第1軸のスクリュープロファイルが第2軸のスクリュープロファイルをも決定すると記載されている。つまり、前記第1軸のスクリュープロファイルは駆動するスクリュープロファイルとして言及されている。多軸押出機の場合、駆動スクリュープロファイルと、従動スクリュープロファイルとが、常に、隣接軸に交互に使用されている。
【0007】
正逆回転する2軸又は多軸の機械は、特にプラスチック複合材料の押し出しのために使用されている。プラスチック複合材料は、変形可能な複合材料を意味するものとして理解される。プラスチック複合材料の例は、溶融ポリマー、特に、熱可塑性樹脂及びエラストマー、溶融ポリマーの混合物、あるいは、固体、液体又は気体での溶融ポリマーの離散物である。
【0008】
押出は、刊行物(1)に詳細に記載されるように、正逆回転する2軸又は多軸のスクリュー押出機で、ある物質又はその混合物の処理を意図するものであると理解される。押出中の物質の処理は、搬送、溶融、分散、混合、脱気、及び、加圧の処理操作の1つ以上を備える。
【0009】
特に、押出は、ポリマーの準備、混合、及び、処理の殆どを実行する。
【0010】
ポリマーの準備では、押出は、例えば、ポリマーの脱気を行う(刊行物(1)の191頁から212頁参照)。
【0011】
ポリマーの混合では、押出により、例えば、追加の物質が混合されたり、異なるポリマーが混合されたりする。それらは、例えば、化学的混合、分子量、あるいは、分子構造によって相違する(例えば、刊行物(1)の59頁から93頁参照)。このプロセスは、未処理のポリマー材料を使用することにより、処理済みのポリマー成形複合材料を準備するためにポリマーを処理する混合サービスとして言及された。通常、それらは溶融され、フィラーを追加して混合し、あるいは、可塑剤、結合剤、潤滑剤、安定剤、染料等の材料を補強する。また、混合は、例えば、空気や水等の揮発性成分の除去を備える。この場合、揮発性成分の除去は、他の閉鎖された、ベントとして公知のスクリューバレルの開口を介して行われる。そのようなベントは、スクリュー軸の一方又は両方で開口してもよい。公知のように、押出機は摩擦により搬送するので、ベントでは、押出機の搬送動作が抑制され、このとき充填レベルが低下する。また、混合は、例えば、接合、官能基の変更、あるいは、分子量を意図的に大きくしたり小さくしたりすることによる分子量の変更等の化学反応を含めてもよい。
【0012】
ポリマーの加工時、ポリマーは、半完成品、完成品、あるいは、部品の形態で搬入されるのが好ましい。加工は、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、つや出し、あるいは、スピニング加工によって行うようにすればよい。また、加工では、ポリマーに、例えば、加硫等の化学的な変化のほか、フィラーや補助物質や添加剤を混合するようにしてもよい。
【0013】
刊行物(1)の73頁以降には、溶融物の搬送及び昇圧について記載されている。押出機のスクリューに於ける溶融物の搬送領域は、生成物を一方の処理から次の処理へと搬送し、フィラーを吸い込むことを目的として提供されている。搬送のために必要とされるエネルギーは消失し、溶融ポリマーの温度上昇が不利益であることが明白である。したがって、できるだけ小さなエネルギーに分散するスクリュー部材が搬送領域で使用されるべきである。単に溶融物を搬送するために、内部の押出機の直径に対してほぼ1回のピッチを有するねじ込み部材は一般的である。
【0014】
非常に大きな搬送容量が押出スクリューで必要とされており、そのために第2機械が側方に形成され、押し出される混合物の一部を流動させるために使用されている。この位置で必要とされるものに申し分なく適した機械は、供給された流れの一部を受け止めなければならない軸の第2軸に比べて大きな搬送容量を有する。
【0015】
一対のスクリュー押出機の搬送容量は、自由断面領域にほぼ比例しているということが公知である(刊行物(1)106頁)。しかしながら、従来技術によれば、この自由断面領域は、各部材個別に固定されている。
【0016】
前記押出機内部の圧力消費の上流、例えば、後方搬送部材、混合部材、後方搬送又は中間混合ブロック等と、前記押出機外部の圧力商品の上流、例えば、ダイプレート、押出ダイ、溶融フィラー等とが、押出機の後方圧力領域内に形成されている。そこには、十分に充填された状態で搬送が行われ、圧力消費を無くすための圧力が付加される。押出機の圧力形成領域は、排出に必要な圧力が生成され、排出領域として言及されている。溶融ポリマー内に導かれるエネルギーは、圧力を形成するために有用な力と、溶融物を搬送して力を散逸させるために有用な力とに分割され、溶融温度で増加することが明らかであるという利点がある。圧力形成領域では、スクリューのネジ山ランドを介して溶融物が力強く逆流し、その結果、増加したエネルギー(1)の出力が得られる。したがって、スクリュー部材は、できるだけ小さなエネルギーを放散し、圧力形成領域に使用される。
【0017】
従来技術(1)によれば(例えば、101頁参照)、完全拭取スクリュー部材の結合構造は、ネジ山の下図Z、中心線距離A、及び、外径RAからなる独立した変数を条件とすることによって決定される。従来技術によれば、プロファイルの全ての位置が円筒部を清掃する領域でのネジ山のランド角度は、問題の目的に適合できるような変数とはなっていないが、次式を満足するネジ山のランド領域を備えた部材が得られる。
KW0=π/Z−2arccos(A/2RA)
KW0は、完全拭取形状のネジ山のランド角度をラジアンで示す。pは、円周率(P=3.14159)である。
【0018】
従来技術(1)によれば、密接して噛合する一対の部材間のネジ山のランド角度SKW0は必然的に次のようになる。
SKW0=2π−4Zarccos(A/2RA)
【0019】
スクリュー形状は、1以上のねじ山で構成されている。1つのネジ山を備えた公知のスクリュー形状は、昇圧中の搬送容量と剛性が優れている。特に、それらは非常に広いスクリューのネジ山ランドを有しており、狭い隙間のスクリューバレルを清掃する。狭い隙間のために、非常に大きな量のエネルギーがスクリューネジ山ランドの領域に溶融物として消失し、製品を局所的に加熱過剰とする。
【0020】
これは、例えば、刊行物(1)の160頁以降に、公知のエルドメンガースクリュー形状を備えた一対のネジ山を形成された搬送部材として記載されている。これらの局所的な過熱例は、例えば、におい、色、化学成分、あるいは、分子量の変化等の製品に発生するダメージや、ジェル体又は傷等の製品に異質な構成をもたらす。特に、ここでは大きなネジ山のランド角度が弊害をもたらす。さらに、多くの処理で、高いエネルギー入力が一対のスクリュー押出機の処理可能な量を制限し、その結果コストがかかる。
【0021】
したがって、従来例に係る、協働する一対のスクリュー押出機では、2重のネジ山を形成されたスクリュー形状は、狭いスクリューネジ山ランドを備えるだけであり、広く使用されている。しかしながら、これらは単一のネジ山を形成されたスクリュー形状に比べて昇圧での効率がかなり低い。
【0022】
公知のエルドメンガースクリュー形状を備えた、一対のネジ山を形成された搬送部材での効率が約10%であることが当業者に公知である(刊行物(1)129頁から146頁)。10%の効率、1000kg/mである溶融物の密度、及び、2000J/kg/Kである溶融物の熱容量のため、50バールの圧力の上昇により25K温度が上昇する(刊行物(1)120頁)。この熱により、例えば、におい、色、化学成分、あるいは、分子量の変化等の製品に発生するダメージや、ジェル体や傷等の製品の異質構造がもたらされる。
【0023】
同一方向に回転する一対のスクリュー押出機は、熱可塑性ポリマーの製造のための従来技術として確立している。一方、これらの機械は、例えば、ゴム等の高粘弾性特性を備えたポリマーの製造に広く使用されているわけではない。
【0024】
粘弾性は特別な現象と次のような問題をもたらす。
【0025】
弾性には、製品が固体と同様に機能するという効果がある。均一な溶融物の代わりに、スクリューの充填領域の一部に、柔軟な弾性粒子を含めてもよい。
【0026】
これらの粒子すなわち「小片」は、明らかに低密度であり、その結果、スクリューの開口領域に於けるスクリューネジ山の容量は十分でなく、製品は開口(例えば、ベント)を閉鎖する。
【0027】
弾性により、例えば、スクリューとバレルの隙間を通過した後、あるいは、(ダイに於ける「ダイスウェル」の作用と同様に)隙間領域で、形状復帰する。これにより、充填されたスクリュー領域の一部で粒子の幾つかが大きくなるという効果がある。大きくなった粒子は、揮発成分の脱気等の拡散処理にとって不都合である。
【0028】
大きくて回復中の粒子は、ネジの開放領域(例えば、脱気領域)でスクリューのネジ山から膨らむ傾向があり、その結果、閉塞される。
【0029】
弾性により、粒子をスクリューのネジ山や隙間に引き入れるのが難しくなり、粒子は離れる傾向にある。この結果、スクリューの搬送能力が抑制される。
【0030】
また、粒子の引込妨害は、混合効果や、スクリューの充填領域の一部に於ける表面再生は抑制され、その結果、例えば、押出機の脱気性能が低下する。
【0031】
多くの一般に使用されるゴムの場合、粘弾性特性は高粘着性を伴い、高エネルギー消失をもたらし、その結果、材料の過熱と劣化が、もたらされる。
【0032】
例えば、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、及び、合成ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレン‐ブタジエンゴム | スチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、部分水素化ブタジエン・アクリルニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)等のジエン系ゴムを押し出す際、極高温で架橋によりゲル組成となり、形成された構成要素の機械的特性が損なわれる。塩化ゴム及びブロモブチルゴムの場合、温度上昇により、腐食性ガスの塩化水素酸又は臭化水素酸が除去され、さらにポリマーの分解を引き起こす。
【0033】
例えば、硫黄又は過酸化物等の加硫剤を含有するゴム合成物を押し出す際、極高温により、早期の加硫がもたらされる。この結果、もはや、これらのゴム混合物からどのような製品であっても生成することは不可能となる。
【0034】
したがって、粘弾性混合物は、押出機に特殊な要求を強要する。
【0035】
現在の2軸スクリュー押出機はモジュールシステムを有し、そのシステムでは、公知の異なるスクリュー要素を軸心に設けることができる。これにより、当業者であれば、2軸スクリュー押出機を各処理作業に採用することができる。しかしながら、公知のスクリュー要素は、実際の作業のために最適となるようには殆ど設計されていない。むしろ、製造業者が、実際の作業とは関係なしに、固定されたモジュラーシステムからスクリュー要素(搬送、混練及び混合要素)を調達している。
【0036】
粘弾性製品をよりよく処理することができるように、適切なスクリュー構造が必要とされている。一般に市場で利用可能な標準のスクリュー要素は、全ての処理ではないが、十分に目的を達成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】Kohlgruber(注:原文はuウムラウト): Der gleichlaufige(注:原文はaウムラウト) Doppelschneckenextruder [the co-running twin-screw extruder], Hanser Verlag Munich 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
したがって、従来技術に基づけば、その目的は、できるだけ効果的かつ効率的に粘弾性製品を押し出す2軸又は多軸機構を同一方向に回転させるためのスクリュー要素を提供することである。必要とされるスクリュー要素は、いかにして粘弾性混合物を押出機内に引き込むかということによって改善される。必要とされるスクリュー要素は、押し出された材料中に大きな粒子が出現することを回避すべきである。必要とされるスクリュー要素は、製品のダメージを回避するために、できるだけ少ないエネルギーで押し出された材料を案内すべきである。しかしながら、削減されたエネルギー入力は、より低い圧力の強化に費やされるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明によれば、この目的は、独立項に係るスクリュー要素によって達成される。好ましい実施形態は、独立項に見つけることができる。
【0040】
スクリュー要素の断面は、回転軸に垂直な平面での断面形状を意味する。
【0041】
スクリューの外半径RAと等しいスクリュープロファイル領域はネジ山ランド領域として言及されている。
【0042】
スクリュープロファイルの回転中心に対する、スクリューネジ山ランド領域の始点と終点との間の角度は、ネジ山ランド角度として言及されている。
【0043】
本発明に係るスクリュー要素のプロファイルは、円弧の配置として特別に記載することができる。
【0044】
好ましくは、本発明に係るスクリュー要素のプロファイルは、n個の円弧の断面で形成され、nは4以上の整数である。
【0045】
各円弧j(jは1からn)の位置は、2つの異なる位置を明らかにすることによって、適宜、決定することができる。円弧の位置は、中心点と、始点又は終点を特定することによって適切に決定される。各円弧jのサイズは、始点と終点の間の中心点を中心とする半径Rjと角度ajによって決定される。半径Rjは、0以上、軸間の中心線距離以下である。単位ラジアンの角度ajは、0以上、2p以下であり、pは円周率(p=3.14159)である。
【0046】
また、本発明に係るスクリュー要素のプロファイルは、1以上の「ねじれ」を有するようにしてもよい。ねじれは、適宜、カム角R=0を備えた円弧のように取り扱う。「ねじれのサイズ」は、カム角R=0を備えた円弧の対応角によって得られる。すなわち、ねじれでは、ほぼカム角R=0を備えた第2円弧の角度だけ回転することにより第1円弧が移動する。換言すれば、カム角R=0の第2円弧の中心点に於ける第1円弧のタンジェントは、第2円弧の角度に対応する角度の第2円弧の中心点と同様に、第3円弧の接線と交差している。しかしながら、第2円弧を考慮すれば、全ての隣接する(第1、第2及び第3)円弧は、お互いに接線方向に統合されている。特に、半径R=0の円弧はepsに等しい半径を有する円弧のように取り扱われる。epsは、0に近付く傾向のある非常に小さい正の数(eps<<1,eps→1)である。
【0047】
本発明に係る形状の場合、円弧は常に始点と終点とで互いに接線方向に統合されている。
【0048】
2軸スクリュー押出機では、穴は隙間領域として公知のものの断面と部分的に一致する。公知のように、2軸押出機の図中8つの穴の断面領域に於ける自由端表面積は、次式となる。
acht=r・(2π−gw+sin(gw))
rは半径、pは円周率、gwは胴部の角度 gw=2・arccos(A/DE)
【0049】
ある要素を原則として利用可能である断面領域Fhalbは、全領域の半分である。
halb=Facht/2
【0050】
駆動スクリューの断面領域は、領域F1として取り上げられ、Ffrei=Fnalb−Fの自由断面領域Ffreiが残されている。
【0051】
隣接する駆動スクリューの自由断面領域のために、次式が利用される。
frei=Fnalb−F
【0052】
自由断面領域は、押し出された材料に利用可能な自由な容量が大きくなればなる程、押出機の搬送容量が大きくなるというものである。
【0053】
本発明の目的は、以下の特徴の組み合わせによって区別されるスクリュー要素である。
【0054】
スクリュー溝の自由体積は、従来技術に比べて増大し、筒体の場合、脱気特性に有利な影響を与える。同様に、本発明に係る軸が不均等なスクリュー形状の場合、増大した搬送能力は、押出機が連結される場所であれば、いずれの場所であっても使用することができる。
【0055】
一対の要素のネジ山のランド角度の計算値は、従来技術による公知のスクリュー要素の場合に比べて小さい。この結果、本発明に係るスクリュー要素は、従来技術に比べて、プロファイルの全地点で胴部を掃除する、より小さな領域を有する。特に、この領域の押出材料に大きな量のエネルギーを付与できるので、本発明に係るスクリュー要素により押出材料に必要とされるのは、より小さな機械的及び熱負荷となる。より低い負荷により、処理量を増大可能とするために、製品の品質と処理のコスト面での効率化(刊行物(1)60頁)による効果を有する。さらに、ネジ山のランド角度を抑えることによって引き起こされた圧力の増大に於ける犠牲は、熱負荷の抑制に比べて小さい。この結果、圧力増大時のより高い効率が達成される。
【0056】
一対の要素の一方又は両方のネジ山領域は、テーパ領域として知られたものに隣接するのが好ましい。これにより、テーパ状のネジ山のランドギャップが従来技術に比べて大きくなる。テーパ領域は、比較的小さな自由容積を特徴とする。このテーパ領域は、粘弾性材料を処理する(ダイスウェル効果を抑制する)際、大きな粒子を抑制又は回避すらする効果を有する。
【0057】
記載された特徴は、本発明に係るスクリュー要素の場合、種々の方法で理解できる。例えば、一方の軸の大きな自由容積の開口スクリュー溝として理解することができる一方、テーパ領域は隣接軸で理解される。そのようなスクリュー要素は、本発明の第1の主部を形成する。また、そのようなスクリュー要素は、後述するように、異なるプロファイルのスクリュー要素として言及される。
【0058】
また、単一の軸の、開口スクリュー溝の大きな自由容積と、テーパ領域とを理解することができる。そのようなスクリュー要素は、本発明の第2の主部を形成する。また、そのようなスクリュー要素は、後述するように同一プロファイルのスクリュー要素として言及されている。
【0059】
本発明に係る異なるプロファイルのスクリュー要素から、同様に、本発明の課題を解決する第3のタイプのスクリュー要素を導き出すことができる。また、このタイプのスクリュー要素は、ここでは開口スクリュー要素として言及されている。
【0060】
以下、Aはスクリュー要素の間の中心線距離であり、DEはスクリュー要素の直径であり、RAはスクリュー要素の半径であり、RIはスクリュー要素の内径であり、pは円周率である。
【0061】
異なるプロファイルのスクリュー要素
本発明の第1の主部は、一対の同一方向に回転するスクリュー軸を備えた多軸スクリュー装置のためのスクリュー要素であって、
隣接スクリュー要素は、異なる非対称のプロファイルを有し、
前記スクリュー要素は、各ケースに単一のネジ山ランド領域を有し、
一対の隣接スクリュー要素のネジ山全てのランド角度の合計SKWは0以上、2π−4・arccos(A/DE)以下であり、
隣接スクリュー要素の自由断面領域Ffrei及びFfreiは、互いにサイズが相違していることを特徴とする。
【0062】
隣接軸に使用される、本発明に係る異なるプロファイルのスクリュー要素は、異なるプロファイルを有する。すなわち、駆動スクリューのプロファイルと、従動スクリューのプロファイルは相違している。
【0063】
さらに、異なるプロファイルのスクリュー要素は非対称である。すなわち、それらは共に、鏡面対象でも点対称でもない。
【0064】
駆動スクリュー及び従動スクリューのネジ山全てのランド角度の合計は、0以上、好ましくは0.8・(2π−4arccos(A/DE))以下、特に好ましいのは、0.6・(2π−4arccos(A/DE))以下であり、最も好ましいのは、0.4・(2π−4arccos(A/DE))以下である。
【0065】
この結果、本発明に係る異なるプロファイルのスクリュー要素は、1つのネジ山のランド領域を備えた従来のスクリュー要素に比べて、プロファイルの全ての点が胴部を拭き取る(”clean off”, ”scrap clean” or ”scrap off”)、より小さな領域を有する。特に大きな量のエネルギーが、この領域の押出材料に導かれ、本発明に係るスクリュー要素は、押出材料に、より少ない機械的及び熱的負荷を作用させ、より少ない負荷により処理量を増大させることができるため、製品の品質と処理のコスト面での有効性の両方の効果を有する(例えば、刊行物(1)の60頁参照)。さらに、ネジ山のランド角度を抑えることにより生じた圧力上昇の犠牲は、熱的負荷の抑制と比較して小さく、その結果、圧力上昇のより高い効率が達成される。
【0066】
異なるプロファイルのスクリュー要素のための中心線距離Aに対するスクリューの外径RAの割合は、0.51から0.7の範囲であるのが好ましく、特に好ましいのは0.52から0.66の範囲であり、最も好ましいのは、0.57から0.63の範囲である。
【0067】
本発明に係る異なるプロファイルのスクリュー要素の場合、隣接するプロファイルの自由断面領域Ffrei及びFfreiは、互いにサイズが相違している。小さい領域に対する大きな領域の割合は、少なくとも1.2であるのが好ましく、特に好ましいのは少なくとも1.5であり、最も好ましいのは少なくとも2である。
【0068】
また、本発明に係るスクリュー要素は、駆動スクリュー又は従動スクリューのいずれか一方のネジ山のランド領域が「テーパ領域」として言及された領域によって一方に接近しているという事実によって特徴付けられる。
【0069】
テーパ領域は、1以上の円弧を備え、テーパ領域の円弧に位置する全ての点は、(RA+RI)/2とRAの間に位置する回転中心から離れている。テーパ領域は、回転中心に対してある角度を超えて延びており、それは90度以上である。テーパ領域は、120度以上の角度を超えて延びているのが好ましく、特に好ましいのは180度以上である。
【0070】
テーパ領域は、ネジ山ランド領域に隣接し、長いテーパ状のネジ山ランド隙間を生成し、それは、粘弾性材料を生成する際、大きな粒子を抑え、あるいは、回避する効果がある(ダイスウェル効果を抑制する)。
【0071】
従来技術に比べて大きなテーパ領域により、隣接スクリュー要素の開口スクリュー溝に、従来技術に比べて大きな自由容積をもたらし、脱気特性の好ましい効果をもたらす。
【0072】
同一プロファイルのスクリュー要素
本発明の第2の主部は、同一方向に回転する一対のスクリュー軸を備えた多軸スクリュー装置のためのスクリュー要素であって、隣接スクリュー要素は、同一の非対称なプロファイルを有し、
前記プロファイルは、π−2・arccos(A/2RA)以下のネジ山ランド角度を備えた単一のネジ山ランド領域を備え、
そのプロファイルでは、ネジ山ランド領域は、テーパ領域として言及されている領域によって一方に隣接していることを特徴とする。
【0073】
テーパ領域は、1以上の円弧を備え、円弧にある全ての点は、(RA+RI)/2とRAの間に位置する回転中心からある距離を有する円弧上に位置する。駆動スクリュー及び従動スクリューのプロファイルは同じであるので、テーパ領域は回転中心に対してある角度を超えて延び、それは30度以上であり、好ましくは45度以上であり、特に好ましくは90度以上である。
【0074】
テーパ領域は、ネジ山ランド領域に隣接し、長いテーパ状のネジ山のランド隙間を形成し、粘弾性材料を処理する際、大きな粒子を抑制又は回避すらする効果がある(「ダイスウェル」効果を抑制する)。
【0075】
本発明に係るスクリュー要素は、隣接軸に使用され、同一プロファイルを有する。すなわち、駆動スクリュー及び従動スクリューのプロファイルは同様である。
駆動スクリュー及び従動スクリューのプロファイルの同一性は、従来技術に比べて大きなテーパ領域と組み合わせることにより、従来技術に比べて、開口スクリュー溝のより大きな自由容量でのテーパ領域とは反対側にあるスクリュー要素の一方に得られる。
【0076】
さらに、同一プロファイルのスクリュー要素は非対称である。すなわち、それは線対称でも点対称でもない。
【0077】
本発明に係る同一プロファイルのスクリュー要素は、単一のネジ山ランド領域を有する。
【0078】
本発明に係る同一プロファイルのスクリュー要素は、π−2・arccos(A/2RA)以下のネジ山ランド角度を有し、好ましくは、0.8・(π−2・arccos(A/2RA)以下であり、特に好ましくは、0.6・(π−2・arccos(A/2RA)以下であり、最も好ましくは、0.5・(π−2・arccos(A/2RA)以下である。
【0079】
ネジ山ランド角度KW0=π−2・arccos(A/2RA)は、エルドメンガータイプの単一のネジ山からなるスクリュー要素のネジ山ランド角度と一致している。この結果、本発明に係るスクリュー要素は、従来技術に比べて、プロファイルの全ての点が筒部を拭き取るより小さな領域を有する。特に大きな量のエネルギーがこの領域の押出材料に導かれるので、本発明に係るスクリュー要素は、押出材料により少ない機械的及び熱的負荷を作用させ、より少ない負荷により処理量を増大させることができるので、製品の品質及び処理のコスト面での効率性の両方の効果がある(例えば、刊行物(1)の60頁参照)。さらに、ネジ山ランド角度を抑制することによって引き起こされた圧力上昇の犠牲は、熱的負荷の削減に比べて小さく、その結果、圧力上昇でのより高い効率が達成される。
同一プロファイルのスクリュー要素の中心線距離Aに対するスクリューの外径RAの割合は、0.51から0.7の範囲であるのが好ましく、特に好ましいのは0.52から0.66の範囲であり、最も好ましいのは、0.57から0.63の範囲である。
【0080】
開放スクリュー要素
本発明の第3の主部は、一対の同一方向に回転するスクリュー軸を備えた多軸スクリュー装置のためのスクリュー要素であって、
隣接スクリュー要素は異なるプロファイルを有し、
一方の外径は丁度一方のネジ山ランド領域を有し、隣接外径は丁度2つのネジ山ランド領域を有し、
自由断面領域は、隣接する外径の自由断面領域Ffrei及びFfreiはサイズが互いに相違することを特徴とする。
【0081】
隣接軸に使用される本発明に係る開放スクリュー要素は、異なるプロファイルを有することが必須である。すなわち、駆動スクリューと従動スクリューのプロファイルは同じではない。
【0082】
開放スクリュー要素のプロファイルは、対称又は非対称のいずれであってもよい。駆動及び従動スクリューのプロファイルの特徴は、鏡面対称であるのが好ましい。すなわち、それらは各回転軸が位置する鏡面を有するのが好ましい。
【0083】
本発明に係る開放スクリューの場合、隣接スクリュー要素の自由断面領域Ffrei及びFfreiは互いにサイズが相違している。狭い領域に対する大きい領域の割合は、少なくとも1.2であるのが好ましく、特に好ましいのは、少なくとも1.4であり、最も好ましいのは、少なくとも1.6である。
【0084】
本発明に係る一対の開放スクリュー要素の一方のプロファイルは、丁度、一方のネジ山ランド領域を有し、他方のプロファイルは2つのネジ山ランド領域を有する。
【0085】
本発明に係る開放スクリュー要素は、従来技術に比べて、プロファイルに全ての点で筒部を拭き取るより小さい領域を有する。特に大きな量のエネルギーがこの領域の押出材料に導かれるので、本発明に係るスクリュー要素は、押出材料により少ない機械的及び熱的負荷を作用させ、より低い負荷により処理量を増大させることができるので、製品の品質とコスト面での処理の効率化という効果がある(例えば、刊行物(1)の60頁参照)。さらに、ネジ山ランド角度を抑制することによって引き起こされる圧力上昇の犠牲は、熱的負荷の抑制に比べて小さく、その結果、より高い圧力上昇の効率化が達成される。
【0086】
丁度1つのネジ山ランド領域を有する、本発明に係る一対の要素のプロファイルは、従来技術に比べて、脱気及び搬送特性の点で有効な効果を有する大きな自由容積によって特徴付けられる。
【0087】
同一プロファイルのスクリュー要素の中心線距離Aに対するスクリュー要素の外径RAの割合は、0.51から0.7の範囲であるのが好ましく、特に好ましいのは、0.52から0.66の範囲であり、最も好ましいのは、0.57から0.63の範囲である。
【0088】
異なるプロファイルのスクリュー要素、同一外径のスクリュー要素、及び、開放スクリュー要素
本発明に係る全てのスクリュー要素は、搬送要素や要素を混合する混練要素として構成されてもよい。
【0089】
公知のように(例えば、刊行物(1)227から248頁参照)、搬送要素は、スクリュー外径が連続して螺旋状に回転して軸方向に延びることによって特徴付けられる。軸の回転方向に依存して、搬送要素は、右巻又は左巻構造となっている。後方搬送要素は、反対方向に回転することによりそれぞれ得られる。搬送要素のピッチは、中心線距離の0.1から10倍の範囲であるのが好ましく、そのピッチは、スクリュープロファイルの完全な回転のために必要とされる軸方向の長さを意味するものとして理解され、搬送要素の軸方向の長さは、スクリュー直径の0.1から10倍の範囲であるのが好ましい。
【0090】
公知のように(例えば、刊行物(1)の227から248頁参照)、混練要素は、混練ディスクの形態で偏心して軸方向に連続することによって特徴付けられる。混練ディスクの配置は、右巻又は左巻又は中立であればよい。混練ディスクの軸方向の長さは、中心線距離の0.05から10倍の範囲であるのが好ましい。隣接する混練ディスクの間の軸方向の距離は、スクリュー直径の0.002から0.1倍の範囲であるのが好ましい。
【0091】
公知のように(例えば、刊行物(1)の227から248頁参照)、混合要素は、スクリューのネジ山ランドに開口を設けた搬送要素によって構成されている。混合要素は、左巻又は右巻であればよい。これらのピッチは、中心線距離の0.1から10倍の範囲であるのが好ましく、その要素の軸方向の長さは中心線距離の0,1から10倍の範囲であるのが好ましい。前記開口は、U字形又はV字形の溝を有し、逆搬送又は軸方向に平行に配置されているのが好ましい。
【0092】
本発明に係るスクリュー要素のプロファイルは、十分に拭き取るプロファイルに基づいている。十分に拭き取るスクリュープロファイルは、一対のスクリュー押出機で直接使用することができないことが、当業者にとって公知である。むしろ、スクリュー間には隙間が必要とされる。このための種々の方法が刊行物(1)の28頁等に記載されている。本発明に係るスクリュー要素のスクリュープロファイルに、スクリュープロファイルの直径に対して、0.001から0.1の範囲の隙間を使用することができ、0.002から0.05であるのが好ましく、特に0.004から0.02であるのが好ましい。当業者にとって公知のように、スクリューと胴部の間、及び、スクリューとスクリューの間の隙間は、異なるサイズであっても同一サイズであってもよい。また、隙間は、一定であっても、規定した限界値内であれば変化してもよい。可能な隙間は、中心線距離を増大させるという刊行物(1)の28頁等に記載された可能性の範囲であり、縦断面及び空間的に等距離であり、それらは全て当業者にとって公知である。中心線距離を増大させる場合、小径側のスクリュープロファイルは、スクリュー間の隙間の大きさによって決まる。縦断面で等距離となる方法の場合、縦断面プロファイルカーブ(軸に平行)は、スクリュー間の隙間の半分だけ内方に変位している。空間的に等距離となる方法の場合、スクリュー要素は、互いに清掃する空間カーブから始まり、全拭取プロファイルの表面に直交する方向でのスクリュー間の隙間の半分にサイズを抑制される。縦断面及び空間的に等距離で使用されるのが好ましく、特に好ましいのは空間的に等距離である。
【0093】
本発明に係るスクリュー要素は、PCT/EP2009/003549に記載された方法の1つに基づいて構成することができる。
【0094】
上述のように、本発明に係るスクリュー要素の外径は、円弧で現すことができる。したがって、本発明に係るスクリュー要素を駆動するために、円弧は、凸形状を生成し、始点及び終点で互いに接線方向に向かうように組み立てられている。
【0095】
この場合、そのプロファイルは、1以上の「捻れ」を有していてもよい。捻れでは、その捻れは、半径が0に等しい円弧のように取り扱われるならば、隣接する円弧は互いに向かって接線方向に向かう。
【0096】
また、駆動スクリュープロファイルの円弧は、いずれの場合でも従動スクリュープロファイルの円弧に「対応」しているということを考慮にいれるべきであり、「対応」は、以下の意味として理解される。
対応する円弧の角度は同じサイズであること
対応する円弧の半径の合計は中心線距離Aに等しいこと
駆動スクリュープロファイルの円弧の中心点と端点との間の連結線の一つは、いずれの場合でも従動スクリュープロファイルの対応する円弧の中心点と端点との間の連結線と平行であること
駆動スクリュープロファイルの円弧の端点がその円弧の中心点から延びる距離は、従動スクリュープロファイルの対応する円弧の端点がその円弧の中心点まで延びる方向とはそれぞれ反対側であり、駆動スクリュープロファイルの円弧の中心点は、その中心線距離に対応する従動スクリュープロファイルの対応する円弧の中心点からの距離にあること
駆動スクリュープロファイルの円弧の中心点と、従動スクリュープロファイルの対応する円弧の中心点との間の連結線は、駆動スクリュープロファイルの回転中心と従動スクリュープロファイルの回転中心との間の連結線と平行であること
駆動スクリュープロファイルの円弧の中心点が従動スクリュープロファイルの対応する円弧の中心点と一致するようにして置き換えた場合の方向は、駆動スクリュープロファイルの回転中心が従動スクリュープロファイルの回転中心に一致するように置き換えた場合の方向と同一であること
【0097】
本発明に係るスクリュー要素のプロファイルは、丁度、三角定規と一対のコンパスとで形成することができるという点に特徴がある。例えば、駆動スクリュープロファイルのj番目と(j+1)番目の円弧間の接線方向への移行は、j番目の円弧の端点を中心として半径Rj+1の円を描き、この円の交点によって形成され、円の交点は、j番目の円弧の中心点及び端点が(j+1)番目の円弧の中心点であることによって決定される直線を備えた駆動スクリュープロファイルの回転中心に接近している。
【0098】
コンピュータで、本発明に係る駆動スクリュープロファイルのための方法を実行することが推奨されている。そして、スクリュー要素の立体形状は、対応するスクリュー要素を製作するためのコンピュータ制御されたフライス盤に移すことができる形状となっている。
【0099】
前述の構成上の特徴を考慮して、好ましくはコンピュータで、それらが形成されるとすると、本発明に係るスクリュー要素は、例えば、フライス盤によって加工することができる。このスクリュー要素を加工するのに好ましい材料は、鋼、特に、窒化鋼、クロム鋼、工具鋼、及び、鉄、ニッケル、コバルトに基づく金属混合材料を粉体機械加工したのと同様な特別な鋼である。
【0100】
また、本発明の課題は、多軸スクリュー装置で本発明に係るスクリュー要素を使用することである。本発明に係るスクリュー要素は、2軸スクリュー装置で使用されるのが好ましい。多軸スクリュー装置では、スクリュー要素は、1つのスクリュー装置で互いに、混練、混合、あるいは、搬送する要素を混成した形態をとることができる。また、本発明に係るスクリュー要素は、例えば、従来から公知の他のスクリュー要素と組み合わせることもできる。
【0101】
本発明に係るスクリュー要素は、押出樹脂や粘弾性混合物、例えば、懸濁液、ペースト、ガラス、セラミック組成物、溶融した金属、樹脂、ポリマー溶融、高分子溶液、エラストマー、及び、ゴム組成物に適している。
【0102】
樹脂組成物は、変形可能な構成を意味するものとして理解される。樹脂組成物の例は、ポリマー溶融物、特に、エラストマーと同様な熱可塑性樹脂、ポリマー溶融物の混合物、あるいは、固体、液体又は気体のポリマー溶融物の分散物である。
【0103】
熱可塑性樹脂ポリマー又は後述する一例の材料からのポリマー混合物を使用するのが好ましい。ポリマー混合物に使用する材料としては、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステル、特に、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテル、熱可塑性樹脂ポリウレタン、ポリアセタール、フッ素重合体、特に、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルサルホン、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアクリル酸塩、特に、ポリ(メチル)メタクリル樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、スチレンポリマー、特に、スチロール樹脂、スチレン共重合体、特に、スチレンアクリロニトリル共重合体、アクリルオニトリルブタジエンスチレンブロック共重合体、ポリ塩化ビニルが挙げられる。同様に、記載された樹脂の混合物を使用するのが好ましく、それは2以上の樹脂を混合するものとして当業者に理解される。
【0104】
粘弾性混合物は、時間、温度、及び、自由度の点で従属した弾性を有する、これらの材料及び混合物を意味するものとして理解される。粘弾性は、部分的に弾性があり、部分的に粘性のある振る舞いによって区別される。その材料は、外力が除去された後、不完全に弛緩するだけであり、残されたエネルギーは流れ工程の形で消失する。
【0105】
粘弾性材料の例は、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム(halobutyl rubber)、クロロプレンゴム、エチレン酢酸ビニールゴム、ウレタンゴム、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ガッタパーチャ、アクリル酸ゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、硫化ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(chlorosulphonyl−polyethylene rubber)である。記載されたゴムの2以上の組み合わせ、又は、1以上の樹脂を備えた1以上のゴムの組み合わせも、勿論可能である。
【0106】
押し出される樹脂又は粘弾性ポリマーは、単独で、フィラーを混合し、特にガラス繊維等の材料を補強した形態で、互いに又は他のポリマーを混合した形態で、あるいは、一般的なポリマー添加剤を混合した形態で使用することができる。
【0107】
添加剤は、固体、液体、あるいは、ポリマーとの混合溶液として押出物に導入することができるほか、添加物の少なくとも幾つか、あるいは、全てはサイドストリームで押出物に送り込んでもよい。
【0108】
添加剤は、ポリマーの種々の特性に役立つ。それらは、例えば、着色剤、顔料、加工助剤、充填剤、酸化防止剤、強化材、紫外線吸収剤及び光安定剤、金属不活性剤、過酸化物スカベンジャー、基礎安定剤(basic stabilizers)、核形成剤、安定剤又は酸化防止剤として機能するベンゾフラン及びインドリノン、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、色素製剤及び溶融安定剤であればよい。充填剤及び補強材の例は、カーボンブラック、ガラス繊維、粘土、マイカ、グラファイト繊維、二酸化チタン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、イオン液体、及び、天然繊維である。
【0109】
前述のように、本発明に係るスクリュー要素は、粘弾性混合物の押出に特に適している。つまり、本発明の主部は、本発明に係るスクリュー要素を使用する2軸又は多軸押出機で粘弾性混合物を押し出すためのプロセスでもある。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る一対の異なるプロファイルのスクリュー要素の断面図である。
【図2】本発明に係る一対の同一プロファイルのスクリュー要素の断面図である。
【図3】本発明に係る一対の開放スクリュー要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0111】
本発明は、例として図面に基づいて、しかしながら図面に限定されることなく、以下により詳細に説明される。
【0112】
無次元の特性値を使用し、異なる押出サイズに容易に変更することが有効である。中心線距離Aは、押出機では変化できないので、例えば、長さや半径等の幾何学的変数のための基準値として適切である。
【0113】
以下の用語が図面で使用されている。
全ての寸法は中心線距離Aに標準化されている。標準化された寸法は、大文字で記載されている。
角度はラジアンで記載されている。
駆動スクリュー要素と従動スクリュー要素のプロファイルは、円弧として記載されている。円弧は、その都度連続して番号が付与されている。駆動プロファイルの円弧は番号1,2,3等が記載され、隣接する従動プロファイルの円弧は番号1´,2´,3´等が記載されている。
MxとMyは、デカルトシステムの座標に於けるプロファイル駆動円弧の中心点のx及びy座標であり、その原点は各スクリュープロファイルの回転中心に位置している。
Rは中心線距離Aに標準化された半径であり、aは円弧の円弧角である。
RAは中心線距離Aに標準化されたスクリュー要素の外径である。
後述する全図は同じ構成である。駆動スクリュープロファイルは、左側のスクリュープロファイルとして表示されている。従動スクリュープロファイルは、右側のスクリュープロファイルとして表示されている。駆動スクリュープロファイル及び従動スクリュープロファイルの円弧は厚さが同一であり、実線には円弧の角番号が付与されている。円弧の数が多く、かつ、図面がコンピュータプログラムによって形成されているため、各円弧の番号が重なり、その結果、判読しづらくなっているかもしれない。各番号はときには判別が困難であるにも拘わらず、プロファイル構造は、本実施形態に関する記載から明らかである。
円弧の中心点は小さな円で表示されている。円弧の中心点は、始点と、関係する円弧の端点とに向かって細くて連続する線で結ばれている。スクリュー外径は、駆動スクリュー外径及び従動スクリュー外径に応じて同一サイズ又はほぼ同一サイズである。スクリュー外径は、スクリュー胴部の領域に細い鎖線で示され、隙間領域に細い点線で示されている。
図1は、本発明に係る一対の異なるプロファイルのスクリュー要素の断面図である。駆動プロファイル及び従動プロファイルは、それぞれ9つの円弧で形成されている。図1の下方には、各円弧の中心点の座標、半径、及び、角度が記載されている。円弧1及び1´、2及び2´、3及び3´等は、それぞれ互いに対応している。
隣接要素の外径は相違している。その外径は対称ではない。左側には、大きな自由断面領域があり、右側には、円弧5´,4´及び3´を超えて延びるテーパ領域がある。
隣接要素の自由断面領域は相違している。本例では、次に挙げる値となっている。
halb=Fachr/2=2531.5
=1482.5
=2010.5
frei=644.1
frei=1050.4
frei/Ffrei=1.63
【0114】
図2は、本発明に係る一対の同一プロファイルのスクリュー要素の断面図を示す。駆動プロファイル及び従動プロファイルは、14個の円弧でそれぞれ形成されている。図2の下方には、各円弧の中心点の座標、半径及び角度が記載されている。円弧1及び1´、2及び2´、3及び3´等は、それぞれ互いに対応している。
【0115】
隣接要素の外径は同一である。それらプロファイルは対称ではない。各プロファイルは大きなテーパ領域(円弧12、11及び10、又は、5´、4´及び3´)を有し、プロファイルの反対側には大きな自由断面領域を有する。
【0116】
図3は、本発明に係る一対の開放スクリュー要素の断面図を示す。駆動プロファイル及び従動プロファイルは、それぞれ10個の円弧で形成されている。図3の下方には、各円弧の中心点の座標、半径及び角度が記載されている。円弧1及び1´、2及び2´、3及び3´等はそれぞれ互いに対応している。
【0117】
隣接要素のプロファイルは相違している。それらプロファイルはそれぞれ鏡面対称である。左側の駆動プロファイルは丁度2つのネジ山ランド領域(円弧3,4及び5、円弧7,8及び9)を有し、右側の従動プロファイルは丁度1つのネジ山領域(円弧2´,1´及び10´)を有する。
【0118】
隣接要素の自由断面領域は相違している。本例では、次に挙げる値となっている。
halb=Fachr/2=2531.5
=1887.1
=1481.1
frei=644.4
frei=1050.4
frei/Ffrei=1.63
【符号の説明】
【0119】
1、1´、2、2´、3、3´…円弧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の同一方向に回転するスクリュー軸を備えた多軸スクリュー装置のためのスクリュー要素であって、
隣接スクリュー要素は、異なる非対称のプロファイルを有し、
前記スクリュー要素は、各ケースに単一のネジ山ランド領域を有し、
一対の隣接スクリュー要素のネジ山全てのランド角度の合計SKWは0以上、2π−4・arccos(A/DE)以下であり、
隣接スクリュー要素の自由断面領域Ffrei及びFfreiは、互いにサイズが相違していることを特徴とするスクリュー要素。
【請求項2】
従動スクリュー及び駆動スクリューのネジ山ランド角度の合計は、
0.8・(2π−4arccos(A/DE))以下
であることを特徴とする請求項1に記載のスクリュー要素。
【請求項3】
隣接するプロファイルの小さい方の自由断面領域に対する大きい方の自由断面領域の割合は、少なくとも1.2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリュー要素。
【請求項4】
一対の要素のうちの一方のプロファイルは、その回転中心に対してある角度を超えて延びるテーパ領域を有し、前記角度は90度以上であり、前記テーパ領域は1以上の円弧を備え、前記テーパ領域の円弧が位置する全ての点は、(RA+RI)/2とRAの間に位置する回転中心から離れており、RAはスクリュー外半径であり、RIはスクリュー内半径であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスクリュー要素。
【請求項5】
一対の同一方向に回転するスクリュー軸を備えた多軸スクリュー装置のためのスクリュー要素であって、
隣接スクリュー要素は、同一の、非対称プロファイルを有し、
前記プロファイルは、π−2arccos(A/2RA)以下のネジ山ランド角度を備えた単一のネジ山ランド領域を備え、
前記プロファイルでは、ネジ山ランド領域は、テーパ領域の一方の側に隣接し、1以上の円弧を備え、テーパ領域の円弧が位置する全ての点は、RA+RI)/2とRAの間に位置するプロファイルの回転中心からの距離を有し、Aは中心距離であり、RAは外半径であり、RIはスクリュー半径であり、pは円周率であることを特徴とするスクリュー要素。
【請求項6】
前記ネジ山ランド角度は、0.8・(π−2・arccos(A/2RA))以下であることを特徴とする請求項5に記載のスクリュー要素。
【請求項7】
前記テーパ領域は、プロファイルの回転中心に対してある角度を超えて延び、その角度は30度以上であることを特徴する請求項6に記載のスクリュー要素。
【請求項8】
一対の同一方向に回転するスクリュー軸を備えた多軸スクリュー装置のためのスクリュー要素であって、
隣接スクリュー要素は非同一のプロファイルを有し、
隣接する一対の要素の場合、一方のプロファイルは丁度1つのネジ山ランド領域と、丁度2つのネジ山ランド領域とを有し、
隣接プロファイルの自由端断面領域Ffrei及びFfreiは、サイズが互いに相違することを特徴とするスクリュー要素。
【請求項9】
隣接プロファイルの小さい方の自由断面領域に対する大きい方の自由断面領域の割合が、少なくとも1.2であることを特徴とする請求項8に記載のスクリュー要素。
【請求項10】
前記プロファイルは、それぞれの場合で、鏡面対称であることを特徴とする請求項8又は9に記載のスクリュー要素。
【請求項11】
中心線距離Aに対する外半径RAの割合は、0.51から0.7の間の範囲であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のスクリュー要素。
【請求項12】
前記スクリュー要素と胴部の間、又は、隣接スクリュー要素の間に隙間を有することにより、完全拭取プロファイルをもたらすことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のスクリュー要素。
【請求項13】
多軸スクリュー装置に設けたことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のスクリュー要素の使用方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載のスクリュー要素を使用する2軸又は多軸押出機で粘弾性混合物を押し出すことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514204(P2013−514204A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543647(P2012−543647)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069470
【国際公開番号】WO2011/073121
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】