説明

精油含有組成物

【課題】精油が水を含む組成物中に透明に可溶化された液状あるいはゲル状の精油含有組成物を提供する。
【解決手段】精油含有組成物に、ポリソルベート、アルコール、精油、水を含む。更に、ゲル化剤を含む。即ち、精油としてキーライムオイルを使用し、エタノール、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、イオン交換水、更にゲル化剤として、キサンタンガムおよびローカストビーンガムを混和することにより、精油を含む透明なゲル化剤ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精油が透明に可溶化された液状あるいはゲル状の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精油(エッセンシャルオイル)の持つナチュラルな香りを使って心とからだの健康管理をするアロマテラピーなどが注目され、石鹸、入浴剤、芳香剤、歯磨き製品などのトイレタリー用品、食品用香料、医薬部外品などに利用されている。このような製品に精油を含ませるためには水溶化しなければならないものが多く、更には、見た目にも透明に可溶化させたいという要望もある。
【0003】
例えば、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルなどの親水性のポリオール脂肪酸エステル5〜30重量%、50重量%以上のテルペン類を含有する油溶性物質30〜80重量%、及びグリセリンなどの多価アルコールを含むポリオール水溶液10〜30重量%からなる透明ゲル状組成物(特許文献1)や、ポリグリセリン脂肪酸エステル、テルペン類、水の3成分を必須成分として含み、保持温度の調節によってテルペン類が可溶化可能になされているテルペン類含有液状組成物(特許文献2)などがある。これらのポリオール脂肪酸エステル類を使用した場合には、未だに精油を水に溶解した場合に白濁するという問題点がある。
【0004】
更には、透明ゲル状組成物の界面活性剤として、ポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤(ポリソルベート)が使用できることが知られている。しかし、精油と水とポリソルベートとを合わせて可溶化しようとしても、白濁化してしまい、可溶化することは出来なかった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−299890号公報
【特許文献2】特開2004−323638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、精油が水を含む組成物中に透明に可溶化された精油含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、ポリソルベート、アルコール、精油、水を含むことにより、精油が白濁することなく透明状態となり、油相の分離がなく可溶化できることを見いだした。更に、ゲル化剤を併用することにより、透明な精油含有ゲル状組成物が調製できることを見いだした。
【0008】
すなわち本発明は以下の態様を有するものである;
項1.ポリソルベート、アルコール、精油、水を含み、精油が可溶化されていることを特徴とする精油含有組成物。
項2.更に、ゲル化剤を含む項1に記載の精油含有ゲル状組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、精油が水を含む組成物中に透明に可溶化された液状組成物やゲル状組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の精油含有組成物は、ポリソルベート、アルコール、精油、水を含み、精油が透明に可溶化されていることを特徴とする。組成物の形態としては、液状の形態とゲル状の形態のものを挙げることができる。
【0011】
本発明で使用するポリソルベートは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシド20モルを付加させた親水性の非イオン界面活性剤である。効果の点より、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を用いることが望ましい。好ましくは、ポリソルベート80である。添加量としては、組成物に使用する原料によって異なるが、組成物中0.1〜40重量%程度である。これ以上の量を添加すると、却って白濁化することがあり、また、これ以下の量では可溶化効果が充分でないことがある。
【0012】
本発明で使用するアルコールは、エタノール、グリセリン、プロパノール、メタノール、プロピレングリコール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、炭素数が4〜20の1価のアルコール類として、具体的には1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノールなどが挙げられる。これらから選ばれる1種又は2種以上を挙げることが出来るが、好ましくは、エタノールおよび/またはグリセリン、更に好ましくは、エタノールである。添加量としては、組成物に使用する原料によって異なるが、組成物中0.1〜40重量%程度である。これ以上の量を添加するとゲル化を阻害することがあり、また、これ以下の量では可溶化効果が充分でないことがある。
【0013】
本発明で使用する精油としては、特に限定はないが、テルペン系の有機溶媒を使用したものを例示することが出来る。精油中に含まれるテルペンの種類は、その起源により様々であるが、例えば、テルペン類の一種であるリモネンは、オレンジ油、レモン油、マンダリン油、ライム油、キーライム油、ベルガモット油などに含まれるモノテルペン系化合物であり、広く植物界に存在する。また、まつやにの水蒸気蒸留で得られるテレピン油は、主成分がα−及びβーピネンであり、カンフェン、ジペンテン等のテルペン類を含み、ワニスや合成ショウノウの原料として使用される。
【0014】
なお、一般的にテルペンは、種々の植物(まれに動物)から水蒸気蒸留で得られる精油中に含まれる炭素数が5の倍数の有機化合物であり、生合成的見地からはn個のイソプレン又はイソペンタンから構成される前駆物質に由来すると考えられる物質の総称であり、狭義には、モノテルペン(及びセスキテルペン)を意味する(1989年2月24日、株式会社岩波書店発行、岩波「理化学辞典」第4版、第843頁参照)。モノテルペン類としては、α−ピネン、リモネン、ターピノレン、ミルセン、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、l−メントール、シトラール、トロネラール、樟脳、メントン等が挙げられ、セスキテルペン類としては、β−カリオフィレン、サンタロール、ネロリドール、セドロール、ベチベロール、パチュリアルコール等が挙げられる。
【0015】
本発明で使用する精油は、これらテルペン系有機溶媒、テルペン類と称される物質を含むものであり、テルペンの含有量としては精油中少なくとも50重量%以上を含む精油を使用する。また、精油のままでも、これを更に精製したものであってもよい。また、本発明の効果に悪影響を与えない限度において、精油と他の液状油性物質との混合物であってもよい。この様な油性物質としては、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、菜種油、オリーブ油、ひまし油、ホホバ油などの動植物性油脂類、オクチルドデカノール、オレインアルコール等の高級アルコール、オレイン酸などの高級脂肪酸、オクチルドデシルミリステート、2−エチルヘキサン酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド等の合成エステル油、グリコール高級脂肪酸エステル、シリコン油などが挙げられる。なお、本発明の組成物は、精油の配合量を増やしても可溶化が可能となり、特に液状組成物に対しては、15重量%までの量の精油を透明に可溶化させることも可能となる。
【0016】
更に、本発明で使用する水は、例えば、水道水、イオン交換水、硬水、軟水、鉱水などを使用することができ特に限定されないが、好ましくはイオン交換水を使用する。また、水に各種原料を添加する温度は、特に限定されず、冷水でも温水でも同様に可溶化することができる。組成物に対する、水の配合量としては、組成物に使用する原料によって異なるが、組成物中1〜99重量%程度である。
【0017】
本発明は、前記の通り、ポリソルベート、アルコール、精油、水を含むことを特徴とするが、この配合量としては、液状組成物を調製する場合、配合比率としては、重量換算で、精油に対して、ポリソルベート、アルコールともに、それぞれ2倍量以上、好ましくは2.5倍量以上の添加量を加えると良い。
【0018】
また、液状組成物の調製方法としては、精油をあらかじめ、アルコール、ポリソルベートと混和しておき、そこへ水を添加し混和する方法や、精油、ポリソルベートと混和しておき、そこへ水を混和した後(この状態では白濁する)、アルコールを過剰量(精油に対して20〜100倍重量程度)添加していく(無色透明の溶液となる)方法を挙げることができる。
【0019】
更に、本発明では、ゲル状組成物を調製する場合、ポリソルベート、アルコール、精油、水に加えて、ゲル化剤を含むことを特徴とする。
【0020】
ゲル状組成物を調製する場合の、ポリソルベート、アルコール、精油の配合量としては、ポリソルベート0.025〜3重量%、アルコール0.025〜10重量%、精油0.01〜0.15重量%を挙げることが出来る。また、配合比率としては、重量換算で、精油に対して、ポリソルベート、エタノールともに、それぞれ2倍量以上、好ましくは2.5倍量以上の添加量を加えると良い。なお、本発明のゲル状組成物は、最大0.15重量%程度の精油を透明に可溶化させることが可能となる。
【0021】
本発明で使用するゲル化剤としては、特に限定はされないが、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギナン、グァーガム、ペクチン、プルラン、カシアガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、寒天、ラムザンガム、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、ガティガム、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース等のセルロース誘導体、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工澱粉、未加工・未化工澱粉(生澱粉)などの中から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。中でも透明なゲルを調製できるゲル化剤を使用するのが好ましい。好ましくは、透明タイプのキサンタンガムとローカストビーンガムの組み合わせや、透明タイプのネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、透明タイプの寒天などを挙げることが出来る。ゲル化剤の添加量としては、ゲル状組成物中0.01〜3重量%、好ましくは、0.1〜1.5重量%を挙げることが出来る。
【0022】
ゲル状組成物の調製方法としては、液状組成物の調製方法と同様に、精油をあらかじめ、アルコール、ポリソルベートと混和しておき、そこへ冷水(5〜20℃程度)を添加し混和する方法や、精油、ポリソルベートと混和しておき、そこへ冷水を混和した後(この状態では白濁する)、アルコールを過剰量(精油に対して20〜100倍重量程度)添加して(無色透明の溶液となる)精油含有液状組成物を調製しておく。これに前記ゲル化剤を加熱攪拌溶解(70〜95℃で5〜30分程度)した後、精油含有液状組成物を添加して、混和した後、冷却固化を行うことにより精油が透明に可溶化されたゲル状組成物を調製することが出来る。
【0023】
本発明の精油が透明に可溶化された組成物は、各種医薬、化粧品、生活用品、食品用途に応用することが出来る。例えば、医薬用途としては、経口投与製剤、皮膚又は粘膜適用外用剤、注射製剤など、化粧品用途としては、洗浄剤、シャンプー、リンス、ヘアートニック、ヘアーオイル、ヘアーローション、アフターシェーブローション、ボディローション、エモリエントオイル、化粧用のローション、クレンジング剤など、生活用品としては、経口洗浄剤(デンタルウオッシュ)、歯磨き、脱臭剤、消臭剤、芳香剤、入浴剤など、食品用ととしては、飲料、ゼリー、デザートなど使用することが出来る。
【0024】
その他、本発明の精油含有組成物に配合するその他の原料としては、香料、着色料、甘味料、保存料、日持ち向上剤、酸化防止剤、抗菌剤、殺虫剤、防虫剤、忌避剤、消臭剤などをあげることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載のない限り、「部」は「重量部」を示すものとし、文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標を示す。
【0026】
実施例1:精油可溶化液状組成物の調製
下記表1に掲げる処方のうち、キーライムオイル、エタノール、ポリソルベートを予め混和しておいたものに、イオン交換水(25℃)を加えて充分に混和して、精油可溶化液を調製した。この液は透明であり、キーライムオイルが可溶化されていた。
【0027】
また、同様の処方で、イオン交換水(80℃)を使用した以外は同様の方法で精油可溶化液を調製したが、この液も透明であり、キーライムオイルが可溶化されていた。
【0028】
比較例として、キーライムオイルとポリソルベートを予め混和したのち、イオン交換水(25℃)を加えて充分に混和したが、白濁しており、キーライムオイルを可溶化することはできなかった。また、同様の処方でイオン交換水(80℃)を使用した以外は同様の方法で調製したが、やはり液が白濁した。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例2:精油可溶化ゲル状組成物の調製
下記表2に掲げる処方のうち、80℃のイオン交換水にキサンタンガムとローカストビーンガムを添加し、10分間撹拌溶解する。別途、キーライムオイル、エタノール、ポリソルベートを予め混和しておく。キサンタンガム及びローカストビーンガムの溶解液を全量補正したものに、別途調製したキーライムオイル混和液を添加して混和した後、冷却固化して、ゲル状組成物を調製した。得られたゲルは透明であり、キーライムオイルが可溶化されていた。
【0031】
それに対して、比較例として、エタノールを添加しない以外は上記実施例と同様の方法でゲル状組成物を調製したが、得られたゲルは白濁していた。
【0032】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、精油が透明に可溶化された液状あるいはゲル状の組成物を提供できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリソルベート、アルコール、精油、水を含み、精油が透明に可溶化されていることを特徴とする精油含有組成物。
【請求項2】
更に、ゲル化剤を含む請求項1に記載の精油含有ゲル状組成物。

【公開番号】特開2007−23065(P2007−23065A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202668(P2005−202668)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】