素子及びその製造方法
【課題】生体分子の微量検出に表面プラズモン共鳴が利用されている。この測定には、プリズムに金属膜を成膜した、いわゆるクレッチマン配置を用いている。このプリズムとして、基材上に密着性の良い金属膜を直接設ける製造方法及びその製造方法によって作製される素子を提供する。
【解決手段】基材20上に遷移金属又はその合金からなる薄膜が形成された素子の製造方法において、成膜前に基材20の成膜面を、成膜する金属のイオン雰囲気に晒す工程を有するものとする。
【解決手段】基材20上に遷移金属又はその合金からなる薄膜が形成された素子の製造方法において、成膜前に基材20の成膜面を、成膜する金属のイオン雰囲気に晒す工程を有するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に金属薄膜が形成された素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体分子の微量検出に表面プラズモン共鳴が利用されている。この測定には、プリズムにAu膜を成膜した、いわゆるクレッチマン配置を用いている。このAu膜上に試料を載せP偏光の光を入射させると、ある入射角においてAu膜表面の極近傍の電場が大きく増強され、極微量の物質を検知できる。このことから医療分野への応用も考えられており、例えばガン診断などに利用することで早期にガンを発見することが期待されている。
【0003】
プリズムに成膜する金属膜は、例えばAuの場合、50nm程度が好ましく、スパッタや蒸着で成膜される。一般的に、ガラス基板上にAu膜を設けるには、下地にCrやTi、又はそれらの合金を介在層として設けるのが常である。これは、Auがガラスと反応しにくく、ガラス基板上に直接Au膜を設けると、ガラスとAuとの界面が不連続になるからである。一方、CrやTi、又はそれらの合金は酸素と非常に反応しやすく、薄膜酸化物を形成する。これは、ガラスと接触していても同様で、ガラス内に含まれる酸素と接触部分で反応し、ガラスとの接触面に連続的な組成が形成される。このため、ガラスとの密着性がよい。また、CrやTi、又はそれらの合金とAuとの接触部分は金属結合をとるため密着性がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−146208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような介在層を設けると、表面プラズモン共鳴発生の際、介在層で光エネルギーの一部が吸収され、Au膜近傍の電場にエネルギーロスが生じ、検出感度が落ちてしまうという問題がある。特に極微量の物質を検出する場合、このロスが影響して検出できない場合がある。したがって、Au膜は直接プリズムに成膜できることが望ましい。
【0006】
表面プラズモン共鳴とは無関係であるが、特許文献1には、基材と反射膜との間に酸素基を含む中間層を介し、銀又は銀合金からなる反射膜を成膜する技術が開示されている。
【0007】
本発明は、基材上に密着性の良い金属膜を直接設ける製造方法及びその製造方法によって作製される素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、基材上に遷移金属又はその合金からなる薄膜が形成された素子の製造方法において、成膜前に基材の成膜面を、成膜する金属のイオン雰囲気に晒す工程を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によると、基材が成膜する金属のイオン雰囲気に晒された後、基材上に直接金属膜が成膜される。
【0010】
前記工程では、成膜する金属のイオン濃度が50%以上のイオン雰囲気に3分以上晒すことが望ましい。金属膜の十分な密着性を確保するためである。
【0011】
また上記の製造方法では、プラズマ支援型スパッタ法、イオンアシスト法又はイオンプレーティング法など、金属イオンを用いる方法を採用できる。
【0012】
また、前記基材をガラス、前記金属をAuとすることで、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子に最適な素子を作製できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、Crなどの介在層を設けなくても、基材上に密着性の良い金属膜を直接設けることができ、作製される素子は表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態のヘリコンスパッタ装置の断面図である。
【図2】比較例1のヘリコンスパッタ装置の断面図である。
【図3】本発明の引張試験の様子を説明する図である。
【図4】第1実施形態の引張試験の結果である。
【図5】第1実施形態の薬品浸漬試験の結果である。
【図6】第1実施形態の蛍光出力の測定結果である。
【図7A】サンプルA〜Cのいずれかの模式断面図である。
【図7B】サンプルDの模式断面図である。
【図8】第2実施形態のイオンアシスト真空蒸着装置の断面図である。
【図9】第2実施形態のイオンアシスト源の断面図である。
【図10】第2実施形態の引張試験の結果である。
【図11】第2実施形態の薬品浸漬試験の結果である。
【図12】第2実施形態の蛍光出力の測定結果である。
【図13】第3実施形態の引張試験の結果である。
【図14】第3実施形態の薬品浸漬試験の結果である。
【図15】第3実施形態の熱処理後の引張試験の結果である。
【図16】第3実施形態の熱処理後の薬品浸漬試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態では、プラズマ支援型スパッタ法を用いてガラス基板(基材)上に直接Au膜を形成する。
【0016】
プラズマ支援型スパッタ法を行うため、日本真空光学株式会社製のヘリコンカソードを真空槽に取り付けたヘリコンスパッタ装置を用いた。到達真空度は1.33×10-4Pa(=1×10-6Torr)以下である。図1にヘリコンスパッタ装置10の断面図を示す。
【0017】
ヘリコンスパッタ装置10は、真空槽11と、真空槽11の下部に取り付けられたヘリコンカソード12と、真空槽11内にヘリコンカソード12と対向するように設けられた基材ホルダ13と、ヘリコンカソード12と基材ホルダ13との間に設けられたシャッター14と、シャッター14を上下左右に移動可能に支持する支持部15とを備えている。
【0018】
真空槽11には、排気系と繋ぐ排気管11aと、差動型分圧真空計へ接続される計測管11bとが形成されている。基材ホルダ13には基材20が取り付けられる。基材20としては、BK7のガラス基板を用い、ここでは、25×25×1(mm)の平行平面基板(OPB−25S01−P;シグマ光機株式会社)を用いた。
【0019】
ヘリコンカソード12は、カソード12aと、カソード12aの上面に設けられたターゲット12bと、ターゲット12bの上方に設けられた支援コイル12cと、Arガスを導入するガス導入管12dと、カソード12a、ターゲット12b、支援コイル12c及びガス導入管12dを上方を開放して覆うカバー12eと、カソード12aに接続される第1高周波電源12fと、支援コイル12cに接続される第2高周波電源12gと、カソード12aを冷却するための循環冷却系(不図示)とを備えている。ターゲット12bには、4N金ターゲット(フルウチ化学株式会社)を用いた。
【0020】
このヘリコンスパッタ装置10を用い、以下のように素子を作製する。まず、基材ホルダ13に基材20を取り付ける。そして、ヘリコンカソード12とシャッター14の隙間からAuイオンがあふれ出るようにするため、シャッター14の位置を、図1のように、カバー12eの上方30mm以上に調整する。
【0021】
続いて、真空にした後、ガス導入管12dにArガスを流し、基材20の温度を150℃、第1高周波電源12fを100W、第2高周波電源12gを50Wとし、真空槽11内をAuイオン雰囲気にする。この状態において、真空槽11内のAuイオン濃度は50%以上(残りはArと若干の酸素及び炭素である)であり、真空度は6.66×10-2Pa(=5×10-4Torr)である。これにより、基材20の少なくとも成膜面がAuイオン雰囲気に晒される。
【0022】
そして、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒した後、シャッター14を退けて基材20にAu膜を成膜する。ここでは50nmの膜厚を得るため、成膜時間は3分40秒とする。上記の所定時間は3分、5分、15分とで行い、3種類のサンプルA、B、Cを作製する。
【0023】
また、比較例1として、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒す時間を0分、つまり、Arイオン雰囲気にし、その他は上記と同条件でAu膜を成膜する。これにより、基材20上に50nm厚のAu膜が成膜されたサンプルDが作製される。ここでは図2のように、シャッター14をカバー12eの上方10mm程の位置に調整することで、発生したAuイオンをシャッター14で遮り、真空槽11内をAr雰囲気にすることができる。
【0024】
さらに、比較例2として、予め基材20に5nm厚のCr膜を成膜し、その後、比較例1と同様の方法でCr膜上にAu膜を成膜する。これにより、基材20上に5nm厚のCr膜、50nm厚のAu膜が順に成膜されたサンプルEが作製される。
【0025】
そして、これらサンプルA〜Eについて密着性、耐薬品性、表面プラズモン共鳴の強度の評価を行った。密着性は、引張試験により剥離強度を測定することで評価した。図3は、引張試験の様子を説明する図である。引張圧縮試験機(SV−301;今田製作所)を用い、基材20を固定治具31に固定し、Au膜21上に接着剤(アラルダイトAR−R30;ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ)32で接着された引張治具33を引っ張ることで剥離強度を測定した。引張速度は12.5mm/minである。
【0026】
図4は、引張試験の結果である。比較例2のサンプルEが従来の製法によるサンプルなのでその結果を基準に考えると、比較例1のサンプルDは、剥離強度が弱く、剥離状況がガラスとAu膜の界面で剥離している。一方、第1実施形態の製法で作製したサンプルA〜Cは、従来品(サンプルE)と同等以上剥離強度を有しており、剥離状況もサンプルAではAu膜の一部に浮きが見られたものの、概ねガラス間での破損となっており、Au膜の密着性は良好であるといえる。
【0027】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、従来のようなCrなどの介在層がなくても、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、従来と同等以上の密着性を得ることができるといえる。
【0028】
次に、耐薬品性は、薬品浸漬試験により剥離状況を調べることで評価した。薬品はPBSバッファーを用い、薬品にそれぞれ12時間、24時間、48時間浸漬した後、サンプルのAu膜の剥離状況を目視により調べた。
【0029】
図5は、薬品浸漬試験の結果である。従来の製法によるサンプルEの結果を基準に考えると、比較例1のサンプルDは、12時間浸漬によってAu膜の浮きが見られ、24時間以上浸漬するとAu膜が剥がれてしまったので、耐薬品性がないといえる。一方、第1実施形態の製法で作製したサンプルA〜Cは、サンプルAで24時間浸漬によってAu膜のわずかな浮き、48時間浸漬によってAu膜の剥がれが見られ、サンプルEに若干劣る結果となったものの、サンプルB、Cでは、Au膜に変化は見られず、良好な耐薬品性を示した。
【0030】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分間Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して12時間までの耐性を有し、成膜前に基材20の成膜面を5分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して良好な耐性を得ることができるといえる。
【0031】
次に、表面プラズモン共鳴の強度は、SPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光)装置にサンプル素子をセットして蛍光出力を測定することで評価した。図6は、蛍光出力の測定結果である。第1実施形態の製法で作製したサンプルA〜Cはどれも同じ蛍光出力であり、その値を100とし、サンプルD、Eの蛍光出力はそれとの相対値である。
【0032】
図6から、介在層を含まないサンプルA〜C及びDは、介在層を含むサンプルEより蛍光出力が大きく、成膜前に基材20をAuイオン雰囲気に晒したサンプルA〜Cは、Auイオン雰囲気に晒していないサンプルDより蛍光出力が大きいことがわかる。すなわち、介在層があると電場にエネルギーロスが生じて出力が落ち、Au膜の密着性が弱くても出力が落ちるといえる。
【0033】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、高感度な検出素子を得ることができるといえる。
【0034】
次に、サンプルA〜CとサンプルDのAu密着面の状態を調べた。FIB−TEM(Focused Ion Beam - Transmission Electron Microscope)を用い、サンプルの断面を出し観察した。図7Aは、サンプルA〜Cのいずれかの模式断面図、図7Bは、サンプルDの模式断面図である。図7Bでは、基材20とAu膜21との界面が明確に分かれているのに対し、図7Aでは、基材20とAu膜21との界面が曖昧であり、数nm(5nm以下)の層22が観察された。この層22は、EDS(energy-dispersive X-ray spectroscopy)分析の結果、Auと基材(ここではガラス)からなることがわかった。
【0035】
このことから、サンプルDでは基材20表面にAu膜が載っているだけだが、サンプルA〜Cでは、Auイオン雰囲気に基材20が晒されている間にAuが基材20に侵入(埋設)して層22を形成し、Au膜の密着性を向上させているものと推測される。
【0036】
以上より、第1実施形態の製法で作製した素子は、Au膜の密着性が非常に良く、所定の耐薬品性があり、またSPFS装置用の検出素子として高感度であるといえる。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態では、イオンアシスト法を用いてガラス基板(基材)上に直接Au膜を形成する。
【0038】
イオンアシスト法を行うため、株式会社シンクロン製の真空蒸着装置にイオンアシスト源を設置したイオンアシスト真空蒸着装置を用いた。到達真空度は1.33×10-4Pa(=1×10-6Torr)以下である。図8にイオンアシスト真空蒸着装置40の断面図を示す。
【0039】
イオンアシスト真空蒸着装置40は、真空槽41と、真空槽41の下部に取り付けられた蒸発源42と、真空槽41内に蒸発源42と対向するように設けられた基材ホルダ43と、蒸発源42と基材ホルダ43との間に設けられたシャッター44と、シャッター44を上下左右に移動可能に支持する支持部45と、イオンアシスト源46とを備えている。
【0040】
真空槽41には、排気系と繋ぐ排気管41aと、差動型分圧真空計へ接続される計測管41bとが形成されている。基材ホルダ43には基材20が取り付けられる。基材20は第1実施形態で用いたものと同じである。蒸発源42では、切断された4N金ワイヤー(フルウチ化学株式会社)を電子ビームで蒸発させる。
【0041】
イオンアシスト源46は、図9に示すように、Au板46aと、Au板46aを冷却するための循環冷却系(不図示)と、Au板46aの上方に設けられたタングステン線46bと、Arガスを導入するガス導入管46cと、Au板46a、タングステン線46b、ガス導入管46cを上方をSUSメッシュで開放して覆うカバー46dと、タングステン線46bに接続される交流電源46eとを備えている。この構成によると、負のバイアスをかけたタングステン線46bから放出された電子がAu板46aに衝突してAuイオンを発生させ、AuイオンはSUSメッシュを通して真空槽41内に放出される。
【0042】
このイオンアシスト真空蒸着装置40を用い、以下のように素子を作製する。まず、基材ホルダ43に基材20を取り付ける。そして、シャッター44が蒸発源42と基材20とを遮るようにシャッター44の位置を調整する。
【0043】
続いて、真空にした後、基材20の温度を100℃にし、イオンアシスト源46及び蒸発源42を駆動させて真空槽41内をAuイオン雰囲気にする。この状態において、真空槽11内のAuイオン濃度は50%以上(残りはArと若干の酸素及び炭素である)であり、真空度は6.66×10-3Pa(=5×10-5Torr)である。これにより、基材20の少なくとも成膜面がAuイオン雰囲気に晒される。
【0044】
そして、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒した後、シャッター44を退けて基材20にAu膜を成膜する。ここでは水晶式膜厚計にてリアルタイムにモニタリングし、50nmの膜厚を得る。そして、上記の所定時間は3分、5分、15分とで行い、3種類のサンプルF、G、Hを作製する。
【0045】
また、比較例3として、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒す時間を0分、つまり、Arイオン雰囲気にし、その他は上記と同条件でAu膜を成膜する。これにより、基材20上に50nm厚のAu膜が成膜されたサンプルIが作製される。
【0046】
さらに、比較例4として、予め基材20に5nm厚のCr膜を成膜し、その後、比較例3と同様の方法でCr膜上にAu膜を成膜する。これにより、基材20上に5nm厚のCr膜、50nm厚のAu膜が順に成膜されたサンプルJが作製される。
【0047】
そして、これらサンプルF〜Jについて密着性、耐薬品性、表面プラズモン共鳴の強度の評価を行った。各評価方法は第1実施形態での方法と同様であるので説明を省略する。
【0048】
図10は、引張試験の結果である。比較例4のサンプルJが従来の製法によるサンプルなのでその結果を基準に考えると、比較例3のサンプルIは、剥離強度が弱く、剥離状況がガラスとAu膜の界面で剥離している。一方、第2実施形態の製法で作製したサンプルF〜Hは、従来と同等以上剥離強度を有しており、剥離状況もサンプルFではAu膜の一部に浮きが見られたものの、概ねガラス間での破損となっており、Au膜の密着性は良好であるといえる。
【0049】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、従来のようなCrなどの介在層がなくても、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、従来と同等以上の密着性を得ることができるといえる。
【0050】
図11は、薬品浸漬試験の結果である。従来の製法によるサンプルJの結果を基準に考えると、比較例3のサンプルIは、12時間浸漬によってAu膜が剥がれてしまったので、耐薬品性がないといえる。一方、第2実施形態の製法で作製したサンプルF〜Hは、サンプルFで24時間浸漬によってAu膜のわずかな浮き、48時間浸漬によってAu膜の剥がれが見られ、サンプルJに若干劣る結果となったものの、サンプルG、Hでは、Au膜に変化は見られず、良好な耐薬品性を示した。
【0051】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分間Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して12時間までの耐性を有し、成膜前に基材20の成膜面を5分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して良好な耐性を得ることができるといえる。
【0052】
図12は、蛍光出力の測定結果である。第2実施形態の製法で作製したサンプルF〜Hはどれも同じ蛍光出力であり、その値を100とし、サンプルI、Jの蛍光出力はそれとの相対値である。
【0053】
図12から、介在層を含まないサンプルF〜H及びIは、介在層を含むサンプルJより蛍光出力が大きく、成膜前に基材20をAuイオン雰囲気に晒したサンプルF〜Hは、Auイオン雰囲気に晒していないサンプルIより蛍光出力が大きいことがわかる。すなわち、介在層があると電場にエネルギーロスが生じて出力が落ち、Au膜の密着性が弱くても出力が落ちるといえる。
【0054】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、高感度な検出素子を得ることができるといえる。
【0055】
次に、サンプルF〜HとサンプルIのAu密着面の状態を調べた。その結果、第1実施形態のサンプルA〜C及びサンプルDの場合と同じ結果が得られた。
【0056】
以上より、第2実施形態の製法で作製した素子は、Au膜の密着性が非常に良く、所定の耐薬品性があり、またSPFS装置用の検出素子として高感度であるといえる。
【0057】
このように、本発明によれば、基材上に密着性の良い金属膜を直接設けることができ、作製される素子は表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として最適である。
【0058】
(第3実施形態)
第3実施形態では、プラズマ支援型スパッタ法を用いてガラス基板(基材)上に直接Pt膜を形成する。
【0059】
プラズマ支援型スパッタ法に用いる装置は第1実施形態と同様、図1に示す装置であるので説明を省略する。基材20としては、4インチのシリコンウエハを用い、ターゲット12bには、Ptターゲットを用いた。
【0060】
このヘリコンスパッタ装置を用い、以下のように素子を作製する。まず、基材ホルダ13に基材20を取り付ける。そして、ヘリコンカソード12とシャッター14の隙間からPtイオンがあふれ出るようにするため、シャッター14の位置を、図1のように、カバー12eの上方30mm以上に調整する。
【0061】
続いて、真空にした後、ガス導入管12dにArガスを流し、基材20の温度を200℃、第1高周波電源12fを200W、第2高周波電源12gを50Wとし、真空槽11内をPtイオン雰囲気にする。この状態において、真空槽11内のPtイオン濃度は50%以上(残りはArと若干の酸素及び炭素である)であり、真空度は6.66×10-2Pa(=5×10-4Torr)である。これにより、基材20の少なくとも成膜面がPtイオン雰囲気に晒される。
【0062】
そして、基材20を所定時間Ptイオン雰囲気に晒した後、シャッター14を退けて基材20にPt膜を成膜する。ここでは300nmの膜厚を得るため、成膜時間は30分とする。上記の所定時間は3分、5分、15分とで行い、3種類のサンプルK、L、Mを作製する。
【0063】
また、比較例5として、基材20を所定時間Ptイオン雰囲気に晒す時間を0分、つまり、Arイオン雰囲気にし、その他は上記と同条件でPt膜を成膜する。これにより、基材20上に300nm厚のPt膜が成膜されたサンプルNが作製される。ここでは図2のように、シャッター14をカバー12eの上方10mm程の位置に調整することで、発生したPtイオンをシャッター14で遮り、真空槽11内をAr雰囲気にすることができる。
【0064】
さらに、比較例6として、基材20を所定時間Ptイオン雰囲気に晒す時間を0分とし、Ar+O2(O2含有率20%)雰囲気にし、その他は上記と同条件でPt膜を成膜する。これにより、基材20上に300nm厚のPt膜が成膜されたサンプルOが作製される。Ar+O2雰囲気にするのは、公知のPt膜の密着性向上手法である。
【0065】
そして、これらサンプルK〜Oについて密着性、耐薬品性、熱処理後の密着性、熱処理後の耐薬品性の評価を行った。密着性の評価方法は第1実施形態での方法と同様であるので説明を省略する。
【0066】
図13は、引張試験の結果である。比較例6のサンプルOが公知の製法によるサンプルなのでその結果を基準に考えると、比較例5のサンプルNは、剥離強度が弱く、剥離状況がウエハとPt膜の界面で剥離している。一方、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜Mは、公知品(サンプルO)と同等以上剥離強度を有しており、剥離状況もサンプルKではPt膜の一部に浮きが見られたものの、概ねウエハ間での破損となっており、Pt膜の密着性は良好であるといえる。
【0067】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Ptイオン雰囲気に晒すことにより、従来と同等以上の密着性を得ることができるといえる。
【0068】
次に、耐薬品性は、薬品浸漬試験により剥離状況を調べることで評価した。薬品はエチルアルコールを用い、薬品にそれぞれ12時間、24時間、48時間浸漬した後、サンプルのPt膜の剥離状況を目視により調べた。
【0069】
図14は、薬品浸漬試験の結果である。公知の製法によるサンプルOの結果を基準に考えると、比較例5のサンプルNは、12時間以上浸漬するとPt膜が剥がれてしまったので、耐薬品性がないといえる。一方、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜Mは、サンプルKで24時間浸漬によってPt膜のわずかな浮き、48時間浸漬によってPt膜の剥がれが見られ、サンプルOと同等の結果となったものの、サンプルL、Mでは、Pt膜に変化は見られず、良好な耐薬品性を示した。
【0070】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分間Ptイオン雰囲気に晒すことにより、エチルアルコールに対して12時間までの耐性を有し、成膜前に基材20の成膜面を5分以上Ptイオン雰囲気に晒すことにより、エチルアルコールに対して良好な耐性を得ることができるといえる。
【0071】
次に、サンプルK〜OをAr雰囲気炉で650℃、2時間熱処理した。これは、サンプルK〜Oのようなシリコン基板上のPt膜は、アクチュエータ等に用いられるチタン酸鉛系の圧電素子の電極としてよく利用されることから、塗布焼成型の圧電素子の焼成条件に準じたものである。そして、熱処理後、上記と同様の密着性及び耐薬品性の評価を行った。
【0072】
図15は、熱処理後の引張試験の結果である。熱処理前の引張試験の結果と比較して、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜M及び比較例5のサンプルNの結果には変化がないが、比較例6のサンプルOの剥離強度が低下し、剥離状況もウエハとPt膜の界面で剥離している。そして、比較例6のサンプルOは比較例5のサンプルNと同等の結果となっている。
【0073】
図16は、熱処理後の薬品浸漬試験の結果である。熱処理前の薬品浸漬試験の結果と比較して、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜M及び比較例5のサンプルNの結果には変化がないが、比較例6のサンプルOは12時間以上浸漬するとPt膜が剥がれてしまったので、熱処理により耐薬品性が低下したといえる。
【0074】
熱処理後の引張試験及び薬品浸漬試験の結果から、熱処理によってサンプルOのPt膜は、密着性が弱くなったといえる。これは、Pt膜とウエハとの界面で密着性を向上させていたO2が、熱処理することで膜外へ逃げてしまうことが原因であると考えられる。
【0075】
一方、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜Mでは、図7Aと同様の結果も得られ、基材20とPt膜との界面が曖昧であり、Ptイオン雰囲気に基材20が晒されている間にPtが基材20に侵入(埋設)して層を形成し、Pt膜の密着性を向上させているものと推測される。そのため、熱処理によってサンプルOのように組成が変わることなく、Pt膜の密着性も変化しないものと考えられる。
【0076】
以上より、第3実施形態の製法によれば、Pt膜の密着性が非常に良く、所定の耐薬品性があり、熱処理後でも性能に変化がないので、圧電素子の電極の形成方法として好適であるといえる。
【0077】
上記第1及び第2実施形態では、基材20としてガラス基板を用いたが、樹脂を用いてもよい。特に、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として利用する場合は、透明な材料であれば問題なく、例えば、ポリカーボネート、フルオレン系ポリエステル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、アクリル、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの樹脂を用いてもよい。また、基材の形状は利用形態に合った形状を選べばよく、プリズムなどでもよい。
【0078】
また上記第1及び第2実施形態では成膜材料としてAuを、第3実施形態ではPtを用いたが、遷移金属又はその合金であれば適用可能である。特に、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として利用する場合は、Au、Pt、Agやそれらの合金などが有効である。
【0079】
また上記第1及び第2実施形態では、Au膜の膜厚を50nmとしたが、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として利用する場合は、30〜100nmであればよく、好ましくは、40〜60nmである。
【0080】
また上記第1〜第3実施形態の手法以外でも、成膜する金属のイオン雰囲気を作ることができる手法であれば適用可能であり、例えば、イオンプレーティング法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の素子は、SPFS装置用の検出素子など表面プラズモン共鳴センサ用検出素子をはじめ、様々な光学素子又は圧電素子など光学以外の素子として利用することができる。したがって、本発明の素子の製造方法は、基材に簡便な手法で密着性の高い金属膜を成膜する方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
20 基材
21 Au膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に金属薄膜が形成された素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体分子の微量検出に表面プラズモン共鳴が利用されている。この測定には、プリズムにAu膜を成膜した、いわゆるクレッチマン配置を用いている。このAu膜上に試料を載せP偏光の光を入射させると、ある入射角においてAu膜表面の極近傍の電場が大きく増強され、極微量の物質を検知できる。このことから医療分野への応用も考えられており、例えばガン診断などに利用することで早期にガンを発見することが期待されている。
【0003】
プリズムに成膜する金属膜は、例えばAuの場合、50nm程度が好ましく、スパッタや蒸着で成膜される。一般的に、ガラス基板上にAu膜を設けるには、下地にCrやTi、又はそれらの合金を介在層として設けるのが常である。これは、Auがガラスと反応しにくく、ガラス基板上に直接Au膜を設けると、ガラスとAuとの界面が不連続になるからである。一方、CrやTi、又はそれらの合金は酸素と非常に反応しやすく、薄膜酸化物を形成する。これは、ガラスと接触していても同様で、ガラス内に含まれる酸素と接触部分で反応し、ガラスとの接触面に連続的な組成が形成される。このため、ガラスとの密着性がよい。また、CrやTi、又はそれらの合金とAuとの接触部分は金属結合をとるため密着性がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−146208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような介在層を設けると、表面プラズモン共鳴発生の際、介在層で光エネルギーの一部が吸収され、Au膜近傍の電場にエネルギーロスが生じ、検出感度が落ちてしまうという問題がある。特に極微量の物質を検出する場合、このロスが影響して検出できない場合がある。したがって、Au膜は直接プリズムに成膜できることが望ましい。
【0006】
表面プラズモン共鳴とは無関係であるが、特許文献1には、基材と反射膜との間に酸素基を含む中間層を介し、銀又は銀合金からなる反射膜を成膜する技術が開示されている。
【0007】
本発明は、基材上に密着性の良い金属膜を直接設ける製造方法及びその製造方法によって作製される素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、基材上に遷移金属又はその合金からなる薄膜が形成された素子の製造方法において、成膜前に基材の成膜面を、成膜する金属のイオン雰囲気に晒す工程を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によると、基材が成膜する金属のイオン雰囲気に晒された後、基材上に直接金属膜が成膜される。
【0010】
前記工程では、成膜する金属のイオン濃度が50%以上のイオン雰囲気に3分以上晒すことが望ましい。金属膜の十分な密着性を確保するためである。
【0011】
また上記の製造方法では、プラズマ支援型スパッタ法、イオンアシスト法又はイオンプレーティング法など、金属イオンを用いる方法を採用できる。
【0012】
また、前記基材をガラス、前記金属をAuとすることで、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子に最適な素子を作製できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、Crなどの介在層を設けなくても、基材上に密着性の良い金属膜を直接設けることができ、作製される素子は表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態のヘリコンスパッタ装置の断面図である。
【図2】比較例1のヘリコンスパッタ装置の断面図である。
【図3】本発明の引張試験の様子を説明する図である。
【図4】第1実施形態の引張試験の結果である。
【図5】第1実施形態の薬品浸漬試験の結果である。
【図6】第1実施形態の蛍光出力の測定結果である。
【図7A】サンプルA〜Cのいずれかの模式断面図である。
【図7B】サンプルDの模式断面図である。
【図8】第2実施形態のイオンアシスト真空蒸着装置の断面図である。
【図9】第2実施形態のイオンアシスト源の断面図である。
【図10】第2実施形態の引張試験の結果である。
【図11】第2実施形態の薬品浸漬試験の結果である。
【図12】第2実施形態の蛍光出力の測定結果である。
【図13】第3実施形態の引張試験の結果である。
【図14】第3実施形態の薬品浸漬試験の結果である。
【図15】第3実施形態の熱処理後の引張試験の結果である。
【図16】第3実施形態の熱処理後の薬品浸漬試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態では、プラズマ支援型スパッタ法を用いてガラス基板(基材)上に直接Au膜を形成する。
【0016】
プラズマ支援型スパッタ法を行うため、日本真空光学株式会社製のヘリコンカソードを真空槽に取り付けたヘリコンスパッタ装置を用いた。到達真空度は1.33×10-4Pa(=1×10-6Torr)以下である。図1にヘリコンスパッタ装置10の断面図を示す。
【0017】
ヘリコンスパッタ装置10は、真空槽11と、真空槽11の下部に取り付けられたヘリコンカソード12と、真空槽11内にヘリコンカソード12と対向するように設けられた基材ホルダ13と、ヘリコンカソード12と基材ホルダ13との間に設けられたシャッター14と、シャッター14を上下左右に移動可能に支持する支持部15とを備えている。
【0018】
真空槽11には、排気系と繋ぐ排気管11aと、差動型分圧真空計へ接続される計測管11bとが形成されている。基材ホルダ13には基材20が取り付けられる。基材20としては、BK7のガラス基板を用い、ここでは、25×25×1(mm)の平行平面基板(OPB−25S01−P;シグマ光機株式会社)を用いた。
【0019】
ヘリコンカソード12は、カソード12aと、カソード12aの上面に設けられたターゲット12bと、ターゲット12bの上方に設けられた支援コイル12cと、Arガスを導入するガス導入管12dと、カソード12a、ターゲット12b、支援コイル12c及びガス導入管12dを上方を開放して覆うカバー12eと、カソード12aに接続される第1高周波電源12fと、支援コイル12cに接続される第2高周波電源12gと、カソード12aを冷却するための循環冷却系(不図示)とを備えている。ターゲット12bには、4N金ターゲット(フルウチ化学株式会社)を用いた。
【0020】
このヘリコンスパッタ装置10を用い、以下のように素子を作製する。まず、基材ホルダ13に基材20を取り付ける。そして、ヘリコンカソード12とシャッター14の隙間からAuイオンがあふれ出るようにするため、シャッター14の位置を、図1のように、カバー12eの上方30mm以上に調整する。
【0021】
続いて、真空にした後、ガス導入管12dにArガスを流し、基材20の温度を150℃、第1高周波電源12fを100W、第2高周波電源12gを50Wとし、真空槽11内をAuイオン雰囲気にする。この状態において、真空槽11内のAuイオン濃度は50%以上(残りはArと若干の酸素及び炭素である)であり、真空度は6.66×10-2Pa(=5×10-4Torr)である。これにより、基材20の少なくとも成膜面がAuイオン雰囲気に晒される。
【0022】
そして、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒した後、シャッター14を退けて基材20にAu膜を成膜する。ここでは50nmの膜厚を得るため、成膜時間は3分40秒とする。上記の所定時間は3分、5分、15分とで行い、3種類のサンプルA、B、Cを作製する。
【0023】
また、比較例1として、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒す時間を0分、つまり、Arイオン雰囲気にし、その他は上記と同条件でAu膜を成膜する。これにより、基材20上に50nm厚のAu膜が成膜されたサンプルDが作製される。ここでは図2のように、シャッター14をカバー12eの上方10mm程の位置に調整することで、発生したAuイオンをシャッター14で遮り、真空槽11内をAr雰囲気にすることができる。
【0024】
さらに、比較例2として、予め基材20に5nm厚のCr膜を成膜し、その後、比較例1と同様の方法でCr膜上にAu膜を成膜する。これにより、基材20上に5nm厚のCr膜、50nm厚のAu膜が順に成膜されたサンプルEが作製される。
【0025】
そして、これらサンプルA〜Eについて密着性、耐薬品性、表面プラズモン共鳴の強度の評価を行った。密着性は、引張試験により剥離強度を測定することで評価した。図3は、引張試験の様子を説明する図である。引張圧縮試験機(SV−301;今田製作所)を用い、基材20を固定治具31に固定し、Au膜21上に接着剤(アラルダイトAR−R30;ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ)32で接着された引張治具33を引っ張ることで剥離強度を測定した。引張速度は12.5mm/minである。
【0026】
図4は、引張試験の結果である。比較例2のサンプルEが従来の製法によるサンプルなのでその結果を基準に考えると、比較例1のサンプルDは、剥離強度が弱く、剥離状況がガラスとAu膜の界面で剥離している。一方、第1実施形態の製法で作製したサンプルA〜Cは、従来品(サンプルE)と同等以上剥離強度を有しており、剥離状況もサンプルAではAu膜の一部に浮きが見られたものの、概ねガラス間での破損となっており、Au膜の密着性は良好であるといえる。
【0027】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、従来のようなCrなどの介在層がなくても、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、従来と同等以上の密着性を得ることができるといえる。
【0028】
次に、耐薬品性は、薬品浸漬試験により剥離状況を調べることで評価した。薬品はPBSバッファーを用い、薬品にそれぞれ12時間、24時間、48時間浸漬した後、サンプルのAu膜の剥離状況を目視により調べた。
【0029】
図5は、薬品浸漬試験の結果である。従来の製法によるサンプルEの結果を基準に考えると、比較例1のサンプルDは、12時間浸漬によってAu膜の浮きが見られ、24時間以上浸漬するとAu膜が剥がれてしまったので、耐薬品性がないといえる。一方、第1実施形態の製法で作製したサンプルA〜Cは、サンプルAで24時間浸漬によってAu膜のわずかな浮き、48時間浸漬によってAu膜の剥がれが見られ、サンプルEに若干劣る結果となったものの、サンプルB、Cでは、Au膜に変化は見られず、良好な耐薬品性を示した。
【0030】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分間Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して12時間までの耐性を有し、成膜前に基材20の成膜面を5分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して良好な耐性を得ることができるといえる。
【0031】
次に、表面プラズモン共鳴の強度は、SPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光)装置にサンプル素子をセットして蛍光出力を測定することで評価した。図6は、蛍光出力の測定結果である。第1実施形態の製法で作製したサンプルA〜Cはどれも同じ蛍光出力であり、その値を100とし、サンプルD、Eの蛍光出力はそれとの相対値である。
【0032】
図6から、介在層を含まないサンプルA〜C及びDは、介在層を含むサンプルEより蛍光出力が大きく、成膜前に基材20をAuイオン雰囲気に晒したサンプルA〜Cは、Auイオン雰囲気に晒していないサンプルDより蛍光出力が大きいことがわかる。すなわち、介在層があると電場にエネルギーロスが生じて出力が落ち、Au膜の密着性が弱くても出力が落ちるといえる。
【0033】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、高感度な検出素子を得ることができるといえる。
【0034】
次に、サンプルA〜CとサンプルDのAu密着面の状態を調べた。FIB−TEM(Focused Ion Beam - Transmission Electron Microscope)を用い、サンプルの断面を出し観察した。図7Aは、サンプルA〜Cのいずれかの模式断面図、図7Bは、サンプルDの模式断面図である。図7Bでは、基材20とAu膜21との界面が明確に分かれているのに対し、図7Aでは、基材20とAu膜21との界面が曖昧であり、数nm(5nm以下)の層22が観察された。この層22は、EDS(energy-dispersive X-ray spectroscopy)分析の結果、Auと基材(ここではガラス)からなることがわかった。
【0035】
このことから、サンプルDでは基材20表面にAu膜が載っているだけだが、サンプルA〜Cでは、Auイオン雰囲気に基材20が晒されている間にAuが基材20に侵入(埋設)して層22を形成し、Au膜の密着性を向上させているものと推測される。
【0036】
以上より、第1実施形態の製法で作製した素子は、Au膜の密着性が非常に良く、所定の耐薬品性があり、またSPFS装置用の検出素子として高感度であるといえる。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態では、イオンアシスト法を用いてガラス基板(基材)上に直接Au膜を形成する。
【0038】
イオンアシスト法を行うため、株式会社シンクロン製の真空蒸着装置にイオンアシスト源を設置したイオンアシスト真空蒸着装置を用いた。到達真空度は1.33×10-4Pa(=1×10-6Torr)以下である。図8にイオンアシスト真空蒸着装置40の断面図を示す。
【0039】
イオンアシスト真空蒸着装置40は、真空槽41と、真空槽41の下部に取り付けられた蒸発源42と、真空槽41内に蒸発源42と対向するように設けられた基材ホルダ43と、蒸発源42と基材ホルダ43との間に設けられたシャッター44と、シャッター44を上下左右に移動可能に支持する支持部45と、イオンアシスト源46とを備えている。
【0040】
真空槽41には、排気系と繋ぐ排気管41aと、差動型分圧真空計へ接続される計測管41bとが形成されている。基材ホルダ43には基材20が取り付けられる。基材20は第1実施形態で用いたものと同じである。蒸発源42では、切断された4N金ワイヤー(フルウチ化学株式会社)を電子ビームで蒸発させる。
【0041】
イオンアシスト源46は、図9に示すように、Au板46aと、Au板46aを冷却するための循環冷却系(不図示)と、Au板46aの上方に設けられたタングステン線46bと、Arガスを導入するガス導入管46cと、Au板46a、タングステン線46b、ガス導入管46cを上方をSUSメッシュで開放して覆うカバー46dと、タングステン線46bに接続される交流電源46eとを備えている。この構成によると、負のバイアスをかけたタングステン線46bから放出された電子がAu板46aに衝突してAuイオンを発生させ、AuイオンはSUSメッシュを通して真空槽41内に放出される。
【0042】
このイオンアシスト真空蒸着装置40を用い、以下のように素子を作製する。まず、基材ホルダ43に基材20を取り付ける。そして、シャッター44が蒸発源42と基材20とを遮るようにシャッター44の位置を調整する。
【0043】
続いて、真空にした後、基材20の温度を100℃にし、イオンアシスト源46及び蒸発源42を駆動させて真空槽41内をAuイオン雰囲気にする。この状態において、真空槽11内のAuイオン濃度は50%以上(残りはArと若干の酸素及び炭素である)であり、真空度は6.66×10-3Pa(=5×10-5Torr)である。これにより、基材20の少なくとも成膜面がAuイオン雰囲気に晒される。
【0044】
そして、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒した後、シャッター44を退けて基材20にAu膜を成膜する。ここでは水晶式膜厚計にてリアルタイムにモニタリングし、50nmの膜厚を得る。そして、上記の所定時間は3分、5分、15分とで行い、3種類のサンプルF、G、Hを作製する。
【0045】
また、比較例3として、基材20を所定時間Auイオン雰囲気に晒す時間を0分、つまり、Arイオン雰囲気にし、その他は上記と同条件でAu膜を成膜する。これにより、基材20上に50nm厚のAu膜が成膜されたサンプルIが作製される。
【0046】
さらに、比較例4として、予め基材20に5nm厚のCr膜を成膜し、その後、比較例3と同様の方法でCr膜上にAu膜を成膜する。これにより、基材20上に5nm厚のCr膜、50nm厚のAu膜が順に成膜されたサンプルJが作製される。
【0047】
そして、これらサンプルF〜Jについて密着性、耐薬品性、表面プラズモン共鳴の強度の評価を行った。各評価方法は第1実施形態での方法と同様であるので説明を省略する。
【0048】
図10は、引張試験の結果である。比較例4のサンプルJが従来の製法によるサンプルなのでその結果を基準に考えると、比較例3のサンプルIは、剥離強度が弱く、剥離状況がガラスとAu膜の界面で剥離している。一方、第2実施形態の製法で作製したサンプルF〜Hは、従来と同等以上剥離強度を有しており、剥離状況もサンプルFではAu膜の一部に浮きが見られたものの、概ねガラス間での破損となっており、Au膜の密着性は良好であるといえる。
【0049】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、従来のようなCrなどの介在層がなくても、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、従来と同等以上の密着性を得ることができるといえる。
【0050】
図11は、薬品浸漬試験の結果である。従来の製法によるサンプルJの結果を基準に考えると、比較例3のサンプルIは、12時間浸漬によってAu膜が剥がれてしまったので、耐薬品性がないといえる。一方、第2実施形態の製法で作製したサンプルF〜Hは、サンプルFで24時間浸漬によってAu膜のわずかな浮き、48時間浸漬によってAu膜の剥がれが見られ、サンプルJに若干劣る結果となったものの、サンプルG、Hでは、Au膜に変化は見られず、良好な耐薬品性を示した。
【0051】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分間Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して12時間までの耐性を有し、成膜前に基材20の成膜面を5分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、PBSバッファーに対して良好な耐性を得ることができるといえる。
【0052】
図12は、蛍光出力の測定結果である。第2実施形態の製法で作製したサンプルF〜Hはどれも同じ蛍光出力であり、その値を100とし、サンプルI、Jの蛍光出力はそれとの相対値である。
【0053】
図12から、介在層を含まないサンプルF〜H及びIは、介在層を含むサンプルJより蛍光出力が大きく、成膜前に基材20をAuイオン雰囲気に晒したサンプルF〜Hは、Auイオン雰囲気に晒していないサンプルIより蛍光出力が大きいことがわかる。すなわち、介在層があると電場にエネルギーロスが生じて出力が落ち、Au膜の密着性が弱くても出力が落ちるといえる。
【0054】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Auイオン雰囲気に晒すことにより、基材20上に直接Au膜を成膜するだけで、高感度な検出素子を得ることができるといえる。
【0055】
次に、サンプルF〜HとサンプルIのAu密着面の状態を調べた。その結果、第1実施形態のサンプルA〜C及びサンプルDの場合と同じ結果が得られた。
【0056】
以上より、第2実施形態の製法で作製した素子は、Au膜の密着性が非常に良く、所定の耐薬品性があり、またSPFS装置用の検出素子として高感度であるといえる。
【0057】
このように、本発明によれば、基材上に密着性の良い金属膜を直接設けることができ、作製される素子は表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として最適である。
【0058】
(第3実施形態)
第3実施形態では、プラズマ支援型スパッタ法を用いてガラス基板(基材)上に直接Pt膜を形成する。
【0059】
プラズマ支援型スパッタ法に用いる装置は第1実施形態と同様、図1に示す装置であるので説明を省略する。基材20としては、4インチのシリコンウエハを用い、ターゲット12bには、Ptターゲットを用いた。
【0060】
このヘリコンスパッタ装置を用い、以下のように素子を作製する。まず、基材ホルダ13に基材20を取り付ける。そして、ヘリコンカソード12とシャッター14の隙間からPtイオンがあふれ出るようにするため、シャッター14の位置を、図1のように、カバー12eの上方30mm以上に調整する。
【0061】
続いて、真空にした後、ガス導入管12dにArガスを流し、基材20の温度を200℃、第1高周波電源12fを200W、第2高周波電源12gを50Wとし、真空槽11内をPtイオン雰囲気にする。この状態において、真空槽11内のPtイオン濃度は50%以上(残りはArと若干の酸素及び炭素である)であり、真空度は6.66×10-2Pa(=5×10-4Torr)である。これにより、基材20の少なくとも成膜面がPtイオン雰囲気に晒される。
【0062】
そして、基材20を所定時間Ptイオン雰囲気に晒した後、シャッター14を退けて基材20にPt膜を成膜する。ここでは300nmの膜厚を得るため、成膜時間は30分とする。上記の所定時間は3分、5分、15分とで行い、3種類のサンプルK、L、Mを作製する。
【0063】
また、比較例5として、基材20を所定時間Ptイオン雰囲気に晒す時間を0分、つまり、Arイオン雰囲気にし、その他は上記と同条件でPt膜を成膜する。これにより、基材20上に300nm厚のPt膜が成膜されたサンプルNが作製される。ここでは図2のように、シャッター14をカバー12eの上方10mm程の位置に調整することで、発生したPtイオンをシャッター14で遮り、真空槽11内をAr雰囲気にすることができる。
【0064】
さらに、比較例6として、基材20を所定時間Ptイオン雰囲気に晒す時間を0分とし、Ar+O2(O2含有率20%)雰囲気にし、その他は上記と同条件でPt膜を成膜する。これにより、基材20上に300nm厚のPt膜が成膜されたサンプルOが作製される。Ar+O2雰囲気にするのは、公知のPt膜の密着性向上手法である。
【0065】
そして、これらサンプルK〜Oについて密着性、耐薬品性、熱処理後の密着性、熱処理後の耐薬品性の評価を行った。密着性の評価方法は第1実施形態での方法と同様であるので説明を省略する。
【0066】
図13は、引張試験の結果である。比較例6のサンプルOが公知の製法によるサンプルなのでその結果を基準に考えると、比較例5のサンプルNは、剥離強度が弱く、剥離状況がウエハとPt膜の界面で剥離している。一方、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜Mは、公知品(サンプルO)と同等以上剥離強度を有しており、剥離状況もサンプルKではPt膜の一部に浮きが見られたものの、概ねウエハ間での破損となっており、Pt膜の密着性は良好であるといえる。
【0067】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分以上Ptイオン雰囲気に晒すことにより、従来と同等以上の密着性を得ることができるといえる。
【0068】
次に、耐薬品性は、薬品浸漬試験により剥離状況を調べることで評価した。薬品はエチルアルコールを用い、薬品にそれぞれ12時間、24時間、48時間浸漬した後、サンプルのPt膜の剥離状況を目視により調べた。
【0069】
図14は、薬品浸漬試験の結果である。公知の製法によるサンプルOの結果を基準に考えると、比較例5のサンプルNは、12時間以上浸漬するとPt膜が剥がれてしまったので、耐薬品性がないといえる。一方、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜Mは、サンプルKで24時間浸漬によってPt膜のわずかな浮き、48時間浸漬によってPt膜の剥がれが見られ、サンプルOと同等の結果となったものの、サンプルL、Mでは、Pt膜に変化は見られず、良好な耐薬品性を示した。
【0070】
その結果、成膜前に基材20の成膜面を3分間Ptイオン雰囲気に晒すことにより、エチルアルコールに対して12時間までの耐性を有し、成膜前に基材20の成膜面を5分以上Ptイオン雰囲気に晒すことにより、エチルアルコールに対して良好な耐性を得ることができるといえる。
【0071】
次に、サンプルK〜OをAr雰囲気炉で650℃、2時間熱処理した。これは、サンプルK〜Oのようなシリコン基板上のPt膜は、アクチュエータ等に用いられるチタン酸鉛系の圧電素子の電極としてよく利用されることから、塗布焼成型の圧電素子の焼成条件に準じたものである。そして、熱処理後、上記と同様の密着性及び耐薬品性の評価を行った。
【0072】
図15は、熱処理後の引張試験の結果である。熱処理前の引張試験の結果と比較して、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜M及び比較例5のサンプルNの結果には変化がないが、比較例6のサンプルOの剥離強度が低下し、剥離状況もウエハとPt膜の界面で剥離している。そして、比較例6のサンプルOは比較例5のサンプルNと同等の結果となっている。
【0073】
図16は、熱処理後の薬品浸漬試験の結果である。熱処理前の薬品浸漬試験の結果と比較して、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜M及び比較例5のサンプルNの結果には変化がないが、比較例6のサンプルOは12時間以上浸漬するとPt膜が剥がれてしまったので、熱処理により耐薬品性が低下したといえる。
【0074】
熱処理後の引張試験及び薬品浸漬試験の結果から、熱処理によってサンプルOのPt膜は、密着性が弱くなったといえる。これは、Pt膜とウエハとの界面で密着性を向上させていたO2が、熱処理することで膜外へ逃げてしまうことが原因であると考えられる。
【0075】
一方、第3実施形態の製法で作製したサンプルK〜Mでは、図7Aと同様の結果も得られ、基材20とPt膜との界面が曖昧であり、Ptイオン雰囲気に基材20が晒されている間にPtが基材20に侵入(埋設)して層を形成し、Pt膜の密着性を向上させているものと推測される。そのため、熱処理によってサンプルOのように組成が変わることなく、Pt膜の密着性も変化しないものと考えられる。
【0076】
以上より、第3実施形態の製法によれば、Pt膜の密着性が非常に良く、所定の耐薬品性があり、熱処理後でも性能に変化がないので、圧電素子の電極の形成方法として好適であるといえる。
【0077】
上記第1及び第2実施形態では、基材20としてガラス基板を用いたが、樹脂を用いてもよい。特に、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として利用する場合は、透明な材料であれば問題なく、例えば、ポリカーボネート、フルオレン系ポリエステル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、アクリル、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの樹脂を用いてもよい。また、基材の形状は利用形態に合った形状を選べばよく、プリズムなどでもよい。
【0078】
また上記第1及び第2実施形態では成膜材料としてAuを、第3実施形態ではPtを用いたが、遷移金属又はその合金であれば適用可能である。特に、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として利用する場合は、Au、Pt、Agやそれらの合金などが有効である。
【0079】
また上記第1及び第2実施形態では、Au膜の膜厚を50nmとしたが、表面プラズモン共鳴センサ用検出素子として利用する場合は、30〜100nmであればよく、好ましくは、40〜60nmである。
【0080】
また上記第1〜第3実施形態の手法以外でも、成膜する金属のイオン雰囲気を作ることができる手法であれば適用可能であり、例えば、イオンプレーティング法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の素子は、SPFS装置用の検出素子など表面プラズモン共鳴センサ用検出素子をはじめ、様々な光学素子又は圧電素子など光学以外の素子として利用することができる。したがって、本発明の素子の製造方法は、基材に簡便な手法で密着性の高い金属膜を成膜する方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
20 基材
21 Au膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に遷移金属又はその合金からなる薄膜が形成された素子の製造方法において、
成膜前に基材の成膜面を、成膜する金属のイオン雰囲気に晒す工程を有することを特徴とする素子の製造方法。
【請求項2】
前記工程では、成膜する金属のイオン濃度が50%以上のイオン雰囲気に3分以上晒すことを特徴とする請求項1記載の素子の製造方法。
【請求項3】
プラズマ支援型スパッタ法、イオンアシスト法又はイオンプレーティング法を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の素子の製造方法。
【請求項4】
前記基材がガラスであり、前記金属がAuであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の素子の製造方法により製造した素子。
【請求項1】
基材上に遷移金属又はその合金からなる薄膜が形成された素子の製造方法において、
成膜前に基材の成膜面を、成膜する金属のイオン雰囲気に晒す工程を有することを特徴とする素子の製造方法。
【請求項2】
前記工程では、成膜する金属のイオン濃度が50%以上のイオン雰囲気に3分以上晒すことを特徴とする請求項1記載の素子の製造方法。
【請求項3】
プラズマ支援型スパッタ法、イオンアシスト法又はイオンプレーティング法を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の素子の製造方法。
【請求項4】
前記基材がガラスであり、前記金属がAuであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の素子の製造方法により製造した素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−285658(P2010−285658A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140661(P2009−140661)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]