説明

紡機のスピンドル変速制御方法及びスピンドル変速制御装置

【課題】 糸切れが多発する場合に、簡単な操作で機台全体の糸切れ発生を少なくして生産性を向上させる紡機のスピンドル変速制御方法を提供する。
【解決手段】 機台の運転開始から満管停止までの各錘毎の糸切れ回数が積算される。糸切れ回数は、機台の運転開始から満管停止までのスピンドル駆動制御が異なる区間毎に積算され、各区間毎の積算値が予め設定された許容値と比較される。そして、許容値を超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度が低下されて運転される。「スピンドル駆動制御が異なる区間」とは、スピンドルの回転速度あるいは加速度が異なる区間、即ち異なる定速又は加速状態が異なる区間をいう。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多数の錘を装備するとともに各錘毎に糸切れ検出手段を備えたリング精紡機、リング撚糸機等の紡機のスピンドル変速制御方法及びスピンドル変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】リング精紡機、リング撚糸機等の紡機においては1台の機台に数百錘〜千錘装備されている。そして、糸切れが発生するとそれを報知して作業者又は糸継ぎ装置による糸継ぎ作業を行う必要がある。例えば、実開平3−45980号公報には、精紡機の各錘毎に糸切れを検出する光電管センサーを設け、精紡機の一端に配設された制御盤に前記センサーのいずれか一つが糸切れを検出するとリレーを介して糸切れを報知する糸切れ報知手段を設けた糸切れ検出装置が開示されている。また、特開平11−181636号公報には、各錘のスピンドル毎にモータが設けられた単錘駆動式の紡機において、各錘のスピンドルに供給される電流量を計測し、その計測データに基づいて機台の主制御装置が各錘の糸切れの有無を判断する紡機の糸切れ検出方法が開示されている。
【0003】従来、糸切れを検出して作業者に糸切れ発生を報知する装置はあるが、糸切れ状況に応じて機台の運転条件を変更することは行われず、糸継ぎ作業をいかにして効率良く行うかが考えられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】糸継ぎ作業を効率良く行うとしても、運転開始から満管停止までの間に糸切れが多発した場合、糸継ぎ作業に要する工数と時間を考慮すると、機台の運転速度を遅くして紡出した場合に比較して、機台全体として生産性が悪くなって生産コストが上昇する場合がある。
【0005】また、糸切れが特定の錘に集中して発生する場合は、当該錘の芯出し不良等の不具合があるためで、その不具合を修復すれば糸切れが少なくなる。しかし、錘側に特定の原因が無い状態で糸切れが多発する場合は、紡出条件が適性でない可能性がある。そのような紡出条件で繰り返し機台の運転を行っても、糸切れ発生状況は改善されない。
【0006】本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は糸切れが多発する場合に、簡単な操作で機台全体の糸切れ発生を少なくして生産性を向上させることができる紡機のスピンドル変速制御方法及びスピンドル変速制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、スピンドル回転速度が大きくなると他の条件が同じでも糸切れが発生し易くなることを考慮してこの発明に到った。
【0008】前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、多数の錘を装備するとともに各錘毎に糸切れ検出手段を備えた紡機において、機台の運転開始から満管停止までの各錘の糸切れ回数を積算し、所定ドッフ運転回数の積算値が予め設定された許容値を超えたとき、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げて運転を行う。所定ドッフ運転回数は1回でも複数回でもよい。「ドッフ運転」とは機台の運転開始から満管停止までの運転単位を意味する。
【0009】この発明では、機台の運転開始から満管停止までの各錘毎の糸切れ回数が積算され、所定ドッフ運転回数の積算値が許容値を超えると、次回の運転時にスピンドル回転速度が予め設定した分、下げられる。従って、次回の運転時には糸の巻取り張力が弱くなり、糸切れの発生が防止される。その結果、糸切れ停止時間が短くなり、生産性が向上するとともに、糸継ぎ作業者の負担が少なくなる。
【0010】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記糸切れ回数を機台の運転開始から満管停止までのスピンドル駆動制御が異なる区間毎に積算し、少なくとも積算値が予め設定された許容値を超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げて運転を行う。「スピンドル駆動制御が異なる区間」とは、スピンドルの回転速度あるいは加速度が異なる区間、即ち異なる定速状態の区間又は加速状態が異なる区間をいう。
【0011】この発明では、スピンドル駆動制御が異なる区間毎に糸切れ回数が積算され、少なくとも積算値が予め設定された許容値を超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度が下げられる。従って、最高運転速度に到達するより前の区間で糸切れが多発した場合は、最高運転速度を下げる必要がなく、生産性がより向上する。
【0012】請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記積算値と前記許容値との比較において、特定錘の糸切れ回数が予め設定した値より多い場合は、その回数を前記積算値から除いた値と前記許容値とを比較する。従って、この発明では、スピンドル回転速度が糸切れに関係している錘の結果を適正に反映することが可能になる。
【0013】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記紡機は各錘のスピンドルを各錘毎に設けられたモータにより独立して駆動する単錘駆動式の紡機であって、糸切れ回数が予め設定された回数より多い錘は、次回の運転時に駆動を停止する。この発明では、次回の運転時に不調錘の駆動が停止されるため、無駄な糸継ぎ作業が無くなる。
【0014】請求項5に記載の発明では、多数の錘を装備するとともに各錘毎に糸切れ検出手段を備えた紡機において、各錘毎に設けられたスピンドル駆動用モータと、各錘の糸切れ回数をスピンドル駆動制御が異なる区間毎に計測可能な計測手段と、前記各区間毎の糸切れ回数の積算値が予め設定された許容値を超えたか否かを判断する判断手段と、少なくとも前記積算値が前記許容値を超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げるようにスピンドル駆動用モータを制御する制御手段とを備えた。
【0015】従って、この発明では、各錘毎に設けられた糸切れ検出手段により各錘毎の糸切れが検出され、計測手段により各錘毎の糸切れ回数が、スピンドル駆動制御が異なる区間毎に計測される。各区間の所定ドッフ運転回数の積算値が許容値を超えると、次回の運転時に当該区間のスピンドル回転速度が予め設定した分、下げられる。従って、次回の運転時には当該区間の糸の巻取り張力が弱くなり、糸切れの発生が防止される。その結果、請求項2に記載の発明と同様の効果を有する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を単錘駆動のリング精紡機に具体化した一実施の形態を図1〜図3に従って説明する。
【0017】図2(a)に示すように、紡機の各スピンドル1にはそれぞれスピンドル駆動用モータ(以下、スピンドルモータという)2が設けられている。スピンドルモータ2としては同期モータが使用されている。各スピンドルモータ2はハウジング3内にそれぞれスピンドル制御装置4(図2(b)及び図3に図示)を備えている。スピンドル制御装置4には商用電源をAC/DCコンバータ(いずれも図示せず)で変換した直流が供給される。
【0018】図2(b)に示すように、スピンドル制御装置4はインバータ5及び制御部6を備えている。制御部6はCPU7及びメモリ8を備えている。インバータ5とスピンドルモータ2とを接続する3本の給電線の任意の1本には各スピンドルモータ2に供給される電流を計測する電流センサ9が設けられている。CPU7は電流センサ9の出力をA/D変換器及びインタフェース(いずれも図示せず)を介して入力する。CPU7は糸切れ時には当該錘のスピンドルモータ2への電力供給を停止するようになっている。CPU7は糸切れを、後記する機台制御装置からの信号で確認(検知)する。
【0019】ハウジング3には糸切れ表示用の表示部10が設けられている。表示部10にはLED(発光ダイオード)が使用され、図2(a)に示すように、表示部10はハウジング3の前面に設けられている。また、ハウジング3にはスピンドルモータ2の起動、停止を指令するスイッチ11が装備されている。
【0020】紡機機台の全錘は複数のグループに分割され、図3に示すように、各制御部6は複数錘(例えば、48錘)を1グループとして、それぞれセクション制御ユニット12に通信ライン13を介して接続されている。各セクション制御ユニット12は全錘を統括する機台制御装置14に通信ライン13を介して接続されている。通信ライン13にはシリアル・インタフェースを使用したマルチドロップ接続が採用されている。シリアル・インタフェースとして例えばRS−485が使用されている。各セクション制御ユニット12は当該セクション制御ユニット12に接続されたグループの制御部6と、機台制御装置14との間の信号の授受を中継する。各錘毎に設けられた電流センサ9の出力が機台制御装置14からの指令に基づいて、各制御部6に所定時期に入力され、その計測データが各セクション制御ユニット12を介して、ディジタルの電流値データとして機台制御装置14に送信される。
【0021】機台制御装置14はCPU15、ROM16、RAM17、入力装置18及び入出力インタフェース19を備えている。CPU15は入出力インタフェース19を介して巻量検出手段20に接続されている。巻量検出手段20にはフロントローラ(図示せず)の回転数を積算するカウンタが使用され、CPU15はそのカウント値からその時の巻量を演算する。
【0022】ROM16にはプログラムデータと、その実行に必要な各種データとが記憶されている。プログラムデータには種々の繊維原料、紡出糸番手及び撚り数等の紡出条件と、運転時のスピンドル回転速度、ドラフト駆動系及びリフティング駆動系のモータの回転速度との対応データや、種々の巻量における回転数と供給電流量との関係を示すマップ等がある。このマップは紡出条件によって異なり、予め紡出試験を行って又は理論的に求められる。RAM17は入力装置18により入力されたデータやCPU15における演算処理結果等を一時記憶する。
【0023】CPU15は各錘の電流センサ9の計測データを各制御部6及び各セクション制御ユニット12を介して入力し、特開平11−181636号公報に開示された糸切れ検出装置と同様な方法で、所定時間毎に各錘の糸切れの有無を判断するようになっている。そして、CPU15は糸切れと判断した錘には、セクション制御ユニット12を介して糸切れ報知信号を出力する。電流センサ9及びCPU15は糸切れ検出手段を構成する。
【0024】スピンドルの回転速度は紡出量(巻取り量)に対応して変化するように、各紡出条件毎に予め設定されており、機台の運転開始から満管停止までの間(1ドッフ間)が複数の区間(この実施の形態では9区間)に分けられて、各区間毎にスピンドル駆動制御が異なる状態で行われるようになっている。例えば、図1に実線で示すように、始動時に急な加速が行われた後、徐々に速度が上昇され、満管近くで急な減速が行われた後、停止される。
【0025】CPU15は機台の運転開始から満管停止までの間(1ドッフ間)の各錘の糸切れ回数を、スピンドル駆動制御が異なる区間毎に積算する。RAM17には糸切れ回数を記憶する記憶領域が各区間に対応して各錘毎に設けられ、CPU15は糸切れが発生すると、対応する領域に糸切れ回数を積算記憶させ、満管に伴う玉揚げ停止後の機台再起動時に各領域の積算値をゼロにリセットする。
【0026】CPU15は満管停止時に、各区間の全錘の積算値の合計値が予め設定された許容値Npを超えたか否かを判断する。そして、少なくとも前記合計値が許容値Npを超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げるように、各制御部6に速度指令を出力する。スピンドル回転速度の低下量は、例えば、合計値が許容値Npを超えた区間の回転速度を前回の回転速度の所定の割合と設定される。当該区間の最高回転速度が下げられることにより、合計値が許容値Npを超えなかった区間についても少なくとも前半の回転速度が下げられる。CPU7,15は積算値が許容値Npを超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げるようにスピンドル駆動用モータを制御する制御手段を構成する。
【0027】なお、CPU15は各錘について、それぞれ積算糸切れ回数が予め設定した値より多いか否かを判断し、多い場合は当該錘を不調錘と判断する。そして、その錘を除去して前記積算値を求め、許容値Npと比較する。また、CPU15は次回の運転開始前に当該錘の制御部6に駆動禁止指令信号を出力する。駆動禁止指令信号を入力した制御部6は、駆動禁止解除指令を入力するまでは、スイッチ11や機台制御装置14からスピンドル駆動指令信号が入力されても、スピンドルモータ2を起動しないようになっている。
【0028】次に前記のように構成された装置の作用を説明する。精紡機の運転に先立って繊維原料、紡出糸番手、撚り数等の紡出条件が入力装置18により機台制御装置14に入力される。そして、精紡機の運転が開始されると、各錘の制御部6は機台制御装置14からの指令に基づき、紡出条件に対応してインバータ5を介してスピンドルモータ2を所定の回転速度となるように制御する。
【0029】機台制御装置14のCPU15は所定時間毎に、各錘の電流センサ9の計測電流値データを制御部6及びセクション制御ユニット12を介して入力し、その値に基づいて各錘の糸切れの有無を判断する。CPU15は糸切れと判断した錘の制御部6に糸切れ信号を出力するとともに、巻量検出手段20の出力信号から1ドッフのどの区間かを判断し、当該区間の糸切れ回数積算領域のカウント値に1加算する。以下、糸切れが発生する毎に、該当する区間の糸切れ回数積算領域のカウント値に1が加算される。また、錘毎に糸切れ回数が積算される。
【0030】満管にともない機台の運転が停止されると、CPU15は各区間の糸切れ回数の積算値を許容値Npと比較する。各積算値と許容値Npとの比較において、特定錘の糸切れ回数が予め設定した値より多い場合は、その回数を積算値から除いた値と許容値Npとを比較する。積算値Nが許容値Npを超えると、CPU15は次回の運転時の当該区間及び次の区間のスピンドル回転速度の指令値を予め設定された方法に従って変更する。そして、機台再起動後の運転時には、CPU15から各制御部6に変更後のスピンドル回転速度の指令値が出力される。
【0031】例えば、図1に実線で示す速度変化でスピンドル1の駆動制御を行った際、第4区間で積算値Nが許容値Npを超えた場合、次回の運転時には、図1に鎖線で示すように、第4区間と第5区間のスピンドル速度の設定が変更される。第4区間の最高速度が所定の割合で下げられ、第5区間の最高速度は変更されず、第4区間の最高速度から第5区間の最高速度まで一定割合で変更される。
【0032】また、糸切れ回数が予め設定した値より多い錘に対しては、駆動禁止指令信号が出力され、次回の運転時には当該錘のスピンドルモータ2は駆動されない。当該錘に対しては保全作業者による修復作業が行われ、修復後、機台の満管停止後の再起動前に機台制御装置14から駆動禁止解除指令信号が入力される。
【0033】この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) 機台の運転開始から満管停止までの各錘の糸切れ回数を積算し、所定ドッフ運転回数(この実施の形態では1ドッフ)の積算値が予め設定された許容値を超えたとき、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げて運転を行う。従って、次回の運転時において同じ紡出量(巻取り量)でのスピンドル回転速度が低速になり、糸切れが発生し難くなり、生産性を向上させることができる。
【0034】(2) 糸切れ回数を機台の運転開始から満管停止までのスピンドル駆動制御が異なる区間毎に積算し、少なくとも積算値が予め設定された許容値Npを超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げて運転を行う。従って、最高運転速度に到達するより前の区間で糸切れが多発した場合は、最高運転速度を下げる必要がなく、全区間に渡って全体的にスピンドル回転速度を低下させる場合に比較して、生産性が向上する。
【0035】(3) 前記積算値と許容値Npとの比較において、特定錘の糸切れ回数が予め設定した値より多い場合は、その回数を積算値から除いた値と許容値Npとを比較する。従って、スピンドル回転速度が糸切れに関係している錘の結果を適正に反映することが可能になる。
【0036】(4) 各錘毎にスピンドルモータ2を設け、糸切れ回数が所定の値より多い錘は不調錘として、起動を禁止するため、不調錘の無駄な糸継ぎ作業をなくすことができる。
【0037】(5) 各スピンドル制御装置4毎にそれぞれインバータ5が装備されているため、各錘のスピンドルモータ2を精度良く制御できる。実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0038】○ 糸切れ数を各区間毎に積算して、各区間毎に所定の許容値Npと比較する代わりに、1ドッフの糸切れ数を積算して許容値と比較し、許容値より多い場合に、次回の運転時に全区間に渡って平均してスピンドル回転速度を低下させてもよい。
【0039】○ 次回にスピンドル回転速度を低下させるか否かの判断を行う糸切れ回数の積算期間を、1ドッフではなく、複数ドッフ運転とし、その間の糸切れ回数の総和又は平均をそれぞれ許容値と比較してもよい。
【0040】○ スピンドル回転速度を低下させる際、低下後の当該区間の最高回転速度を設定しておいてもよい。また、スピンドル回転速度を低下させる際、低下後の当該区間の最高回転速度の点から、次の区間の最高速度の点まで一定加速度で増速する代わりに、図4に示すように、当該区間と同じ加速度で次の区間の途中まで増速するようにしてもよい。
【0041】○ 糸切れ数の下限値を設け、下限値より糸切れ数が下回った場合に、次回の運転時にスピンドルの回転速度を上昇させる構成としてもよい。回転速度の上昇割合は低下割合より小さく設定するのが好ましい。この場合、一度スピンドル回転速度を下降する処置が取られた場合であっても、再び元の運転実施の形態に戻ることが可能になる。また、予め最適変速パターンを設定しなくても、最適なスピンドル変速パターンを自動的に決定することができる。
【0042】○ 各機台制御装置14をホストコンピュータと接続し、各機台制御装置14における糸切れに関するデータに基づいて、ホストコンピュータが次回の各機台運転時のスピンドル回転速度を各機台制御装置14に指令するようにしてもよい。この場合、各機台制御装置14毎に、各紡出条件に対応してスピンドルの回転速度の低下量を設定するためのデータを記憶する必要が無くなる。
【0043】○ 区間の数は9区間に限らず、スピンドル1の最高回転速度及び紡出番手等の紡出条件によって、8区間以下あるいは10区間以上としてもよい。また、最高回転速度以外の区間においても、回転速度が一定の区間を設けてもよい。
【0044】○ 各機台制御装置14をホストコンピュータと接続し、機台制御装置14から糸切れに関するデータをホストコンピュータに出力し、ホストコンピュータから駆動禁止指令や駆動禁止解除指令を各制御部6に出力可能に構成してもよい。
【0045】○ 特定の錘に糸切れが多発した場合に、当該錘に駆動禁止指令を出力しなくてもよい。また、糸切れ多発錘を除去せずに糸切れ数を積算してもよい。
○ 各錘毎にスピンドルモータ2が装備された単錘駆動式のリング精紡機に限らず、複数のスピンドルが1本のベルトで駆動されるベルト駆動方式のリング精紡機に具体化してもよい。
【0046】○ 各錘の糸切れの有無の判断を各制御部6が電流センサ9の検出信号に基づいて行う構成としてもよい。また、糸切れ検出はスピンドルモータ2への供給電流を電流センサ9で検出する方式に限らず、他の方式の糸切れ検出センサを使用してもよい。
【0047】○ 各錘毎にインバータ5を設ける代わりに、各グループ毎に1個のインバータを設けて各グループのスピンドルモータ2を駆動制御したり、全錘のスピンドルモータ2を1個のインバータを介して駆動制御する構成としてよい。この場合、インバータの数が少なくなり、製造コストが安くなる。
【0048】○ リング精紡機に限らず、単錘駆動方式のリング撚糸機等に適用してもよい。前記各実施の形態から把握できる請求項記載以外の技術的思想(発明)について以下に記載する。
【0049】(1) 請求項5に記載の発明において、変速制御装置は、前記各区間毎の糸切れ回数の積算値が予め設定された下限値より小さいか否かを判断する判断手段と、前記積算値が前記下限値未満の時に、次回の運転時に当該区間のスピンドル回転速度を予め設定した分上昇させる制御手段とを備えている。
【0050】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜請求項5に記載の発明によれば、糸切れが多発する場合に、簡単な操作で機台全体の糸切れ発生を少なくして生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スピンドル回転速度と紡出量との関係を示すグラフ。
【図2】 (a)は一実施の形態の錘を示す概略正面図、(b)スピンドル制御装置のブロック図。
【図3】 電気的構成を示すブロック回路図。
【図4】 別の実施の形態の回転速度の設定方法を示すグラフ。
【符号の説明】
1…スピンドル、2…スピンドルモータ、7…制御手段を構成するCPU、9…糸切れ検出手段を構成する電流センサ、15…糸切れ検出手段及び制御手段を構成するとともに計測手段、判断手段としてのCPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 多数の錘を装備するとともに各錘毎に糸切れ検出手段を備えた紡機において、機台の運転開始から満管停止までの各錘の糸切れ回数を積算し、所定ドッフ運転回数の積算値が予め設定された許容値を超えたとき、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げて運転を行う紡機のスピンドル変速制御方法。
【請求項2】 前記糸切れ回数を機台の運転開始から満管停止までのスピンドル駆動制御が異なる区間毎に積算し、少なくとも積算値が予め設定された許容値を超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げて運転を行う請求項1に記載の紡機のスピンドル変速制御方法。
【請求項3】 前記積算値と前記許容値との比較において、特定錘の糸切れ回数が予め設定した値より多い場合は、その回数を前記積算値から除いた値と前記許容値とを比較する請求項1又は請求項2に記載の紡機のスピンドル変速制御方法。
【請求項4】 前記紡機は各錘のスピンドルを各錘毎に設けられたモータにより独立して駆動する単錘駆動式の紡機であって、糸切れ回数が予め設定された回数より多い錘は、次回の運転時に駆動を停止する請求項3に記載の紡機のスピンドル変速制御方法。
【請求項5】 多数の錘を装備するとともに各錘毎に糸切れ検出手段を備えた紡機において、各錘毎に設けられたスピンドル駆動用モータと、各錘の糸切れ回数をスピンドル駆動制御が異なる区間毎に計測可能な計測手段と、前記各区間毎の糸切れ回数の積算値が予め設定された許容値を超えたか否かを判断する判断手段と、少なくとも前記積算値が前記許容値を超えた区間について、次回の運転時に予め設定した分スピンドル回転速度を下げるようにスピンドル駆動用モータを制御する制御手段とを備えた紡機のスピンドル変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−105772(P2002−105772A)
【公開日】平成14年4月10日(2002.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−289090(P2000−289090)
【出願日】平成12年9月22日(2000.9.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】