説明

紫外線照射装置用フランジ部材および紫外線照射装置

【課題】プロセスガスの供給しつつワークに対して紫外線を照射する際に、ワークを回転させる回転機構等の複雑な構成を備える必要をなくし、かつ、ワークの全面に対して均質な処理を行うことが可能な紫外線照射装置用フランジ部材および紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】フランジ部材20は、窓部材支持部524およびプロセスガス案内部を備える。プロセスガス案内部は、下側フランジ板52における各窓部材支持部524の周囲に形成された溝520と、溝520と処理チャンバ14内部とを連通するように鉛直方向に形成された複数のプロセスガス噴出孔522と、上側フランジ板54に設けられガス供給装置22から導入されたプロセスガスを溝520に導入するための導入孔542によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線を放射するように構成された発光ユニットを下から支持するように構成された紫外線照射装置用フランジ部材、およびこれを備えた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマ照射装置は、半導体関連産業、液晶関連産業、その他の分野で幅広く活用されている容量結合式高周波放電を利用した紫外線照射装置であり、エキシマ照射装置等の紫外線照射装置の中には、処理されるべきワークに対してプロセスガスを導入しながら、エキシマ光等の紫外線の照射を行うように構成されるものがある。例えば、CVDプロセスにおいては、処理されるべきワーク(例えば、半導体ウェハ)に対してプロセスガス雰囲気内で紫外線を照射する。
【0003】
従来、処理されるべきワークに対してプロセスガスを導入しながら、紫外線の照射を行う紫外線照射装置では、処理チャンバの側面からプロセスガスを導入しながら紫外線を照射する構成が採用されていた。このような構成では、ワークに対し水平方向にプロセスガスが流れるため、ワークにおけるプロセスガスの導入方向の下流側において膜厚が薄くなるという問題が発生することがあった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するための従来技術として、処理されるべきワークを紫外光線に対して回転させる回転機構を備えた半導体製造酸化膜生成装置が考案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−133301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に係る従来技術においては、ワークを回転させるための回転機構を設けることにより処理チャンバ内の構成が複雑化し、また、そのために新たなコストが発生するという不都合があった。さらに、ワークを回転させる際に、回転機構から微小な塵埃等が発生し、処理チャンバ内のクリーン度が低下する虞もあった。
【0007】
この発明の目的は、プロセスガスの供給しつつワークに対して紫外線を照射する際に、ワークを回転させる回転機構等の複雑な構成を備える必要をなくし、かつ、ワークの全面に対して均質な処理を行うことが可能な紫外線照射装置用フランジ部材および紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る紫外線照射装置用フランジ部材は、処理されるべきワークが配置される処理チャンバの上方に配置され、紫外線を放射するように構成された発光ユニットを下から支持するように構成される。発光ユニットの例としては、エキシマ光を放射するための放電容器を有する発光ユニットが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0009】
この紫外線照射装置用フランジ部材は、窓部材支持部およびプロセスガス案内部を備える。窓部材支持部は、ワークに照射されるべき紫外線を透過させる複数の窓部材をそれぞれ所定の位置にて支持するように構成される。フランジの素材としては、ステンレス、アルミニウム、またはアルミニウム合金が挙げられる一方で、窓部材の素材の例としては、透過性に優れた合成石英または、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、またはフッ化カルシウムが挙げられる。
【0010】
プロセスガス案内部は、上側から導入されたプロセスガスを、複数の窓部材支持部のそれぞれの周囲に配置された複数のプロセスガス噴出孔を介して処理チャンバ内に案内するように構成される。
【0011】
この構成においては、フランジに設けられたプロセスガス案内部を介して、プロセスガスがワークのほぼ全面に対して鉛直下向きに導入される。このため、プロセスガスをワークに対して水平に導入する場合に比較して、ワークの全面に均質的にプロセスガスを導入しやすくなるため、ワークの全面に対して均質な処理を行うことが可能になる。
【0012】
また、多数の小型の窓部材を配置しているため、発光ユニットからの紫外線を減衰させることなくワークに照射することが可能になる。しかも、ワークのほぼ全体に紫外線を照射することができ、照射効率も向上する。その結果、成膜ウェハ等のワークに対して、成膜、ドライ洗浄、表面改質処理などの処理を高効率的に行うことができる。
【0013】
また、例えば、300mmウェハに対応した従来の窓部材の大きさは、丸形の場合で直径340mm〜380mm、厚さが3〜30mmの高価な窓部材が必要となっていたが、小型の窓部材を用いることにより、窓部材の厚みを減らすことが可能となり、窓部材にかかるコストを低減することが可能になる。
【0014】
上述の紫外線照射装置用フランジ部材は、CVD、UVキュア、ドライ洗浄、表面改質等のプロセスを行うための紫外線照射装置の照射面に適用することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、プロセスガスの供給しつつワークに対して紫外線を照射する際に、ワークを回転させる回転機構等の複雑な構成を備える必要をなくし、かつ、ワークの全面に対して均質な処理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るウェハ処理装置の概略を示す図である。
【図2】ウェハ処理装置の概略を示すブロック図である。
【図3】フランジの構成の一例を示す図である。
【図4】フランジの構成の他の例を示す図である。
【図5】フランジに支持される窓部材の構成の他の例を示す図である。
【図6】プロセスガス案内部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るウェハ処理装置10の断面図である。ウェハ処理装置10は、上部に配置されたエキシマ照射部12、およびエキシマ照射部12の下方に配置された処理チャンバ14を備える。エキシマ照射部12は、処理チャンバ14内に配置されたワークに対して、紫外線であるエキシマ光を照射する。ここでは、ワークとして成膜ウェハ16が適用される例を説明するが、成膜ウェハ16以外のワークに対してもウェハ処理装置10を用いることは可能である。
【0018】
エキシマ照射部12は、エキシマ光を放射するように構成された発光ユニット11、発光ユニット11を下から支持するフランジ20、および発光ユニット11を覆うように構成されたハウジング24を備える。
【0019】
発光ユニット11は、放電容器120、窓側電極層126、背面側電極層128、電源装置18、電極側窓部材130、ガス供給装置22、センサ26、制御部28、および表示部30を備えている。
【0020】
放電容器120は、全体がエキシマ光を透過させる誘電体からなる薄箱形状を呈し、本体124および蓋体122から構成されており、厚さ方向に直交する2平面の一方の略全面が窓面にされている。放電容器120の素材となる誘電体としては、例えば、紫外線の透過性に優れた厚さが1〜8mm程度の石英または合成石英を用いることができる。放電容器120は、例えば、縦および横が十数〜数十cm、高さが1〜2cm程度にすることができる。放電容器120の内部には、放電用ガスが封入されている。
【0021】
放電容器120の内部には、窓面に平行な面内で互いに直交する2方向のそれぞれに沿って等間隔で複数の支柱125が配置されている。支柱125は、長手方向の両端を放電容器120の窓面および背面の内側面に溶接される。支柱125は、放電容器120の窓面と背面との間隔を維持するとともに、放電容器120に十分な強度を与える。支柱125の本数を増やすことで、各支柱125の断面積を小さくすることができ、放電容器120の窓面の全面におけるエキシマ光の照射光量の均一化を図ることができる。
【0022】
なお、複数の支柱125の全てを放電容器120の窓面および背面の内側面に溶接し、一部の支柱のみを背面の内側面に溶接することで、放電容器120の窓面および背面の外側面を平滑に形成し易くすることができる。
【0023】
放電用ガスは、種類によって波長の異なるエキシマ光を発生する。したがって、放電容器120には、使用目的に応じた波長のエキシマ光を発生する放電用ガスが封入される。放電容器120における放電用ガスの圧力は、目的の波長のエキシマ光を得るためのガスの種類および所望するエキシマ発光量に応じて、適宜設定され、通常1〜80KPa程度にされる。
【0024】
窓側電極層126は、放電容器120の窓面の外側面に貼付される。窓側電極層126は、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、酸化銅、またはそれらの合金を素材として網目状に形成されている。窓側電極層126は、網目状に限るものではないが、放電容器120の窓面の全面にわたって均一に開口部を備える必要がある。放電容器120の窓面を透過したエキシマ光は、窓側電極層126の開口部を透過して成膜ウェハ16に向かう。
【0025】
背面側電極層128は、放電容器120の背面の外側面に貼付される。背面側電極層128は、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、酸化銅、またはそれらの合金を素材として構成されている。背面側電極層128は、エキシマ光が放電容器120内の各部で均一に放電して放電容器120の窓面での照射分布が均一になるように、放電容器120の背面の全面に均一に配置される。
【0026】
背面側電極層128の上面は、背面部材132で被覆されている。背面側電極層128および背面部材132には、貫通孔134,136,138が形成されている。貫通孔134と貫通孔136とは、互いにオーバーラップするように配置される。背面部材132は、エキシマ光を遮光する素材で構成されており、放電容器120内で発生したエキシマ光のうち背面に向かうエキシマ光が放電容器120の外部に漏出することを防止する。
【0027】
電源装置18は、窓側電極層126と背面側電極層128との間に高周波電圧を印加する。窓側電極層126と背面側電極層128との間への高周波電圧の印加により、放電容器120内で放電用ガスがエキシマ光を発生する。
【0028】
電極側窓部材130は、例えば、光透過性に優れた石英、合成石英、フッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウム等を素材として、板状に形成されている。電極側窓部材130は、上面の全面を窓側電極層126に密着させて配置されている。
【0029】
フランジ20は、成膜ウェハ16に照射されるべきエキシマ光を透過させる複数の窓部材50をそれぞれ所定の位置にて支持するように構成される。また、フランジ20は、ガス供給装置22から導入されたプロセスガスを、複数の窓部材50の周囲に配置された複数のプロセスガス噴出孔522を介して処理チャンバ14内に案内するように構成される。フランジ20の詳細については後述する。
【0030】
ガス供給装置22は、複数のダクトを介して、窒素ガス等の不活性ガス、放電ガス、およびプロセスガスを所定の空間に導入するように構成される。例えば、ガス供給装置22は、ダクト140を介して放電ガスを放電容器120の供給し、ダクト142を介して不活性ガスを電極側窓部材130およびフランジ20の間の空間146に供給する。ダクト142の内側面および支持体144の内外側面には所定の間隔で水平方向に孔部が形成されている。ダクト142の孔部から吐出された不活性ガスは、支持体144の内部を経由して空間146内に導入される。空間146は、不活性ガスによってパージされ、空気が排除される。また、エキシマ照射部12から成膜ウェハ16にエキシマ光を照射している間に、ガス供給装置22による空間146への不活性ガスの供給を継続することで、空間146に不活性ガスが流通し、電極側窓部材130を介して放電容器120が冷却される。
【0031】
放電容器120、窓側電極層126、背面側電極層128、電源装置18、電極側窓部材130および背面部材132は、フランジ20の上面に載置された状態で配置され、ハウジング24で被覆されている。ハウジング24は、上面に窓部242および孔部244が形成されている。窓部242は、貫通孔134および136に対向する位置に形成されている。放電容器120内で発生したエキシマ光の一部は、貫通孔134および貫通孔136を経由して上方に露出する。孔部244は、貫通孔138に対向する位置に形成されている。孔部22には、配線管150が挿入されている。配線管150の下端部は貫通孔138を貫通する。配線管150内には、電源装置18と窓側電極層126および背面側電極層128とを接続する電源線が挿入される。
【0032】
センサ26は、ハウジング24の窓部242の外部に配置されている。センサ26は、窓部242を介して貫通孔134および貫通孔136から露出したエキシマ光を受光し、エキシマ光の受光量に応じたレベルの検出信号を制御部28に出力する。放電容器120の側面が被覆されていない場合には、センサ26を放電容器120の側面に対向するように配置してもよい。
【0033】
図2は、ウェハ処理装置10の概略を示すブロック図である。制御部28は、表示気30、電源装置18、センサユニット90、I/F部92、ガス供給装置22、熱処理部94、扉駆動部96、および操作部98等の各部に接続されている。制御部28は、ウェハ処理装置10の動作に必要な複数のプログラムを格納したROMや、一時的にデータを格納するためのRAMを有しており、ウェハ処理装置10の各部の動作を統括的に制御するように構成される。
【0034】
制御部28は、センサ26が出力した検出信号に基づいて、表示部30の点灯状態を制御する。制御部28は、センサ26から所定レベル以下の検出信号が入力されると、表示部30を点灯させる。表示部30の点灯状態を視認することにより、エキシマ照射部12から成膜ウェハ16にエキシマ光が照射されているか否かを確認できる。
【0035】
また、制御部28は、検出信号のレベルに基づいて、電源装置18の出力を制御する。制御部28は、検出信号のレベルに応じた制御データを電源装置18に出力する。例えば、制御部28は、検出信号のレベルを基準レベルと比較し、比較結果に応じて電源装置18の高周波電圧を昇降させるように制御データを出力する。電源装置18は、制御データに応じた周波数の高周波電圧を窓側電極層126と背面側電極層128との間へ印加する。放電容器120内におけるエキシマ光の発生状態に基づいて電源装置2の出力をフィードバック制御することができ、成膜ウェハ16に対する処理に適した光量のエキシマ光を安定して照射することができる。
【0036】
なお、制御部28による表示部30の点灯制御、および電源装置18の出力制御は、必ずしも必須ではなく、何れか一方または両方を省略することもできる。
【0037】
電源装置18から窓側電極層126と背面側電極層128との間に高周波電圧を印加することによって、放電容器120内で無声放電が起こり、窓面2Aから均一且つ十分なエキシマ光が照射される。電源装置18は、例えば、1MHz〜20MHzの周波数で高周波電圧を印加する。これによって、発光効率や熱効率を向上させることができ、消費電力を小さくすることができる。より好ましい高周波電圧の周波数は、1MHz〜4MHzである。この時の高周波電圧は、1〜20kVが好ましい。高周波電圧が1kV未満の場合には、窓側電極層126と背面側電極層128との間で均一且つ十分な放電が起こらず、エキシマ照射面から十分なエキシマ光を均一に照射することができない。
【0038】
また、高周波電圧が20kVを超える場合には、エキシマ照射量が飽和し、入力電力に対して十分な発光効率を得ることができないとともに、消費電力が大きくなるので効率が悪くなる。高周波電圧は、電源装置18は、放電開始時と放電時のランプ静電容量が異なる。このため、例えば、電源装置18に放電開始時の印加周波数と放電時の印加周波数を切り換える機能を設け、電源装置18の出力をトランスにより昇圧して窓側電極層126と背面側電極層128との間に印加するようにしてもよい。
【0039】
また、制御部28は、処理チャンバ14の内部の温度や圧力等の状況を検出するセンサユニット90の検出結果に基づいて熱処理部94および減圧駆動部99の動作を制御する。さらに、制御部28は、I/F部92や操作部98を介して入力される信号に基づいて扉駆動部96を制御することによって処置チャンバ14の扉の開閉制御を行う。
【0040】
図3(A)および図3(B)は、フランジ20の構成を示す図である。フランジの材質としてはステンレス、アルミニウム、またはアルミニウム合金を用いることができ、フランジ20の大きさが円形状の場合には、直径150mm〜400mm程度で,厚さ8mm〜20mm程度のものを用いることが好ましい。
【0041】
フランジ20は、上側フランジ板54および下側フランジ板52から構成されている。下側フランジ板52は、四角形状を呈する複数の窓部材50および三角形状を呈する複数の窓部材502をそれぞれ成膜ウェハ16上の所定の位置にて支持するように構成された複数の窓部材支持部524を備える。窓部材50および窓部材502は、エキシマ光を透過する合成石英またはフッ化マグネシウム、フッ化リチウム、またはフッ化カルシウムから構成される。窓部材50および窓部材502の形状は、四角形状や三角形状に限定されるものではなく、円形状または他の多角形状(六角形等)であっても良い。
【0042】
各窓部材支持部524に窓部材50および窓部材502をそれぞれ配置した状態で上側フランジ板54を下側フランジ板52に重なると、上側フランジ板54および下側フランジ板52の間にて窓部材50および窓部材502が挟みこまれて位置決めされる。
【0043】
上側フランジ板54および下側フランジ板52における窓部材50および窓部材502
の配置位置には、開口540および開口526がそれぞれ形成されているため、発光ユニット11からのエキシマ光はフランジ20を通過して成膜ウェハ16の上面に到達する。
【0044】
ここでは、窓部材50および窓部材502がいずれも、波長光172nmの場合、紫外光透過率は70%以上となっており紫外光の照射を妨げることは無い。よって紫外光をほとんど減衰させることなく効率的に成膜ウェハ16を照射することが可能になる。窓部材50および窓部材502の大きさは、形状が四角形の場合には1辺が10〜80mm程度、厚みは1〜10mm程度が好ましい。窓材の断面形状は、平面または凹もしくは凸のレンズ形状のものが用いられる。
【0045】
さらに、フランジ20には、ガス供給装置22から導入されたプロセスガスを、窓部材50および窓部材502の周囲に配置された複数のプロセスガス噴出孔522を介して処理チャンバ14内に案内するように構成されたプロセスガス案内部が設けられる。
【0046】
プロセスガス案内部は、下側フランジ板52における各窓部材支持部524の周囲に形成された溝520と、溝520と処理チャンバ14内部とを連通するように鉛直方向に形成された複数のプロセスガス噴出孔522と、上側フランジ板54に設けられガス供給装置22から導入されたプロセスガスを溝520に導入するための導入孔542によって構成される。
【0047】
プロセスガス噴出孔522は、窓部材50および窓部材502の周囲にほぼ等間隔で配置されており、各プロセスガス噴出孔522の大きさが0.5〜3mm程度にされている。また、プロセスガス案内部を構成する溝520、プロセスガス噴出孔522、および導入孔542の内壁はすべて鏡面に加工してあることが好ましい。
【0048】
この実施形態では、成膜ウェハ16へプロセスガスを供給しながらエキシマ光を照射している。具体的には、処理チャンバ14内の成膜ウェハ16にエキシマ光を照射する時、ガス供給装置22から出力されたプロセスガスが、ダクト141、導入孔542、溝520、およびプロセスガス噴出孔522を介して、成膜ウェハ16の上面にほぼ全面に均等に吹き付けられる。
【0049】
以上のように、ウェハ処理装置10では、フランジ20のほぼ全面に分散して配置された複数の窓部材50および窓部材502を使用し、プロセスガスを窓部材50および窓部材502のそれぞれの付近のプロセスガス噴出孔522から成膜ウェハ16に吹き付けている。このため、成膜ウェハ16に対してプロセスガスの流れは垂直方向となり、成膜ウェハ16の膜厚の偏りがなくなる。つまり、成膜ウェハ16に対して水平方向にプロセスガスを導入する従来の構成の場合には、プロセスガス導入方向の下流にいくにしたがって成膜ウェハ16の膜厚が薄くなるといった不具合が発生するが、成膜ウェハ16に対して垂直方向にプロセスガスを導入する場合にはこのような不具合が発生しない。
【0050】
このため、成膜ウェハ16上の膜圧を均一化するために成膜ウェハ16を回転させるような機構を別途設ける必要がなくなる。このため、回転機構を設けるためのコストが削減されるとともに、回転機構の回転部から塵埃等のゴミが発生するといった不具合が解消され、チャンバ内のクリーン度を維持しやすくなる。
【0051】
また、窓部材50および窓部材502のそれぞれを小さくしたことにより、窓部材50および窓部材502のそれぞれに加えられる圧力が小さくなる。このため、単一の大サイズの窓部材を設ける場合に比較して、窓部材の厚さを薄くすることが可能となり、窓部材にかかるコストを削減することが可能になる。さらに、処理チャンバ14を真空状態まで減圧する場合であっても、窓部材50および窓部材502の厚さを適宜調整することにより対応可能となるため、エキシマ照射部12の構成を大幅に変更する必要がなくなる。
【0052】
ここで、ウェハ処理装置10における有機化合物の分解方法について説明する。有機化合物は、エキシマ照射面上に、エキシマ光を受けて効率的に分解される。有機化合物の含む被処理物の場合には、エキシマ光の照射によって空気中に励起酸素原子が発生し、また、エキシマ光の照射によって処理室内微量水分により−OHや−COOH等の官能基が生成される。これらの励起酸素原子や各ラジカル種は、極めて反応性が高いので、そこに含まれる有機化合物の分子間結合が切断され、その切断された部分にさらに励起酸素原子やラジカル種が反応して分解される。特に、真空紫外線領域である200nm以下のエキシマ光を照射することによって、分解反応をより一層効率的に行うことができる。
【0053】
図4(A)および図4(B)は、フランジの構成の他の例を示す図である。ここでは、下側フランジ板53に複数の円形の窓部材504が支持される例を示している。各窓部材504の周囲には、ハニカム状を呈する溝530が形成され、溝530に沿ってほぼ等間隔にプロセスガス噴出孔532が設けられる。窓部材504は、その断面が球面または非球面の凹形状を呈している。
【0054】
図5(A)および図5(B)は、フランジの構成の他の例を示す図である。図5(A)および図5(B)に示す構成は、窓部材506の断面形状を除くと、図4(A)および図4(B)に示す構成と同一である。ここでは、その断面が球面または非球面の凸形状を呈する窓部材506を用いている。
【0055】
以上の実施形態では、下側フランジ板52、53に、プロセスガスの流路を構成する溝520、530を形成する例を説明したが、本発明のプロセスガス案内部の構成はこれらのものに限定されるものではない。例えば、図6(A)および図6(B)に示すように、下側フランジ板52、53に溝520、530を彫る構成に代えて、溝520、530と同様の形状に加工されたパイプ55、57を上側フランジ板54および下側フランジ板52、53で挟み込むようにしてプロセスガス案内部を構成するようにしても良い。このとき、パイプ55、57は、その内壁が鏡面加工されていることが好ましい。
【0056】
また、以上の実施形態では、平面タイプの光源を用いる例を説明したが、単一または複数のチューブタイプのランプからなる光源を用いる場合であっても本発明を適用することが可能である。
【0057】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
10−ウェハ処理装置
11−発光ユニット
12−エキシマ照射部
14−処理チャンバ
20−フランジ
50−窓部材
52−下側フランジ板
54−上側フランジ板
520−溝
522−プロセスガス噴出孔
542−プロセスガス導入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理されるべきワークが配置される処理チャンバの上方に配置され、紫外線を放射するように構成された発光ユニットを下から支持するように構成された紫外線照射装置用フランジ部材であって、
前記ワークに照射されるべき紫外線を透過させる複数の窓部材をそれぞれ所定の位置にて支持するように構成された複数の窓部材支持部と、
上側から導入されたプロセスガスを、前記複数の窓部材支持部のそれぞれの周囲に配置された複数のプロセスガス噴出孔を介して前記処理チャンバ内に案内するように構成されたプロセスガス案内部と、
を備えた紫外線照射装置用フランジ部材。
【請求項2】
前記紫外線照射装置用フランジ部材は、上側フランジ板および下側フランジ板から構成されており、
前記プロセスガス案内部は、
下側フランジ板における前記複数の窓部材支持部のそれぞれの周囲に形成された溝と、
前記溝と前記処理チャンバ内部とを連通するように鉛直方向に形成された複数の貫通孔と、
前記上側フランジ板に設けられ前記上側フランジ板の上面から前記溝にプロセスガスを導入するための導入部と、
を含む請求項1に記載の紫外線照射装置用フランジ部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の紫外線照射装置用フランジ部材と、
紫外線を放射するように構成された発光ユニットと、
前記紫外線照射装置用フランジ部材に支持され、前記ワークに照射されるべき紫外線を透過させる複数の窓部材と、を少なくとも備え、
前記複数の窓部材は、紫外線を透過する合成石英またはフッ化マグネシウム、フッ化リチウム、またはフッ化カルシウムからなる紫外線照射装置。
【請求項4】
前記窓部材は、円形状または多角形状を呈しており、前記ワークの上面に対向するように分散して複数配置された請求項3に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−5458(P2011−5458A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153805(P2009−153805)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(508335668)株式会社クォークテクノロジー (4)
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【出願人】(500460782)株式会社シー・ヴィ・リサーチ (4)
【Fターム(参考)】