説明

組み込み型ロータリエンコーダ

【発明の課題】 最小の構造コストで、コスト安く製造されかつ同時に最小の手段で導体板に対するロータリスイッチの操作部分正面に支承された調整要素の間の公差補償を可能にする、ロータリスイッチ用の光電的切り換え装置を提供することである。
【解決手段】 操作要素(13)と、導体板(3)上に配設された発光装置(4)と、同様に導体板上に配設されていて、光を受ける受光器(10,11)とから成る操作装置用のロータリスイッチであって、発光装置と受光器とは、ロータリスイッチ(1)の切り換え位置のオプトロニック検出を可能にするものにおいて、
発光装置(4)が、操作要素(13)の中空円筒状の延長部(5)の内方にラジアル方向外方に向けて固定され、延長部は発光装置の高さで周囲に規則的に分配された複数の開口(6)を有し、発光装置に対して、延長部の外側に少なくとも2つの受光器が配設されたことを特徴とする前記ロータリスイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作要素と、導体板上に配設された発光装置と、同様に導体板上に配設されていて光を評価する受光器とから成る操作装置用のロータリスイッチであって、その際発光装置及び受光器は、ロータリスイッチの切り換え位置のオプトロニック検出を可能にする方法で配設される前記ロータリスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
信号タップの原理により接触ばねを介して作動する、ロータリスイッチの機械的公差及び影響を排除するために、光学的エンコーダが公知であり、光学的エンコーダは運動する物体の回転角及び回転運動を検出するために役立つ。そのような装置の本質的な構成部分は、発光システム、ラスター板、通常ラスター円板又はラスター定規及び受光器の形の検出装置である。発光装置から射出される光束は、ラスター板によって変調される。このラスター板は運動する物体と結合しておりかつ周期的なビットパターンを有する。検出装置は、発光装置の光をラスター板によって変調した光を受けて、所属の回路の出力に値0又は1、 即ち、低又は高の方法でビットパターンとしてのディジタル信号を供給する。
【0003】
運動走行のオプトロニック検出のためのそのような光学的エンコーダは、独国特許出願公開公報OS3632084号から公知である。この光学的エンコーダは、周期的に有効となる光学的な構造の装置を有し、装置は、平行ではない光線を射出する光源並びに光源に固定された受光器と共に、少なくとも2つの受光要素と協働する。その際受光要素は、周期的な構造を有する装置の運動方向と垂直な又は殆ど垂直になっている。方向情報を得るために、少なくとも2つの受光要素によって変調を検出することが必要であり、その際信号の位相のずれは、方向弁別の値として使用される。
【0004】
ロータリヘッドの運動及び方向情報をオプトロニック手段によって実現するロータリスイッチは、未公開の独国特許出願第10314315号明細書に記載されている。ロータリヘッドの照明のために必要な既存の光源は、ロータリセッタ、 即ち、操作要素の運動及び方向情報の検出のためのエンコーダの部分として使用される。このために、光源から発せられる光の一部は、光ガイドを介して受光器に案内される。その際少なくとも2つの受光器は、光源と同一の平面に位置しかつ平面上の導体板上に取り付けられる。受光器には、デジタルビットパターン、例えばグレイコードが形成され、グレイコードは、後続の電子装置において再処理される。存在する光源、ビームスプリッタ、並びに受光器は、ロータリスイッチの光学的エンコーダを形成する。
【特許文献1】独国特許公開公報OS3632084号
【特許文献2】未公開のドイツ特許出願第10314315号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、最小の構造コストで、コスト安く製造されかつ同時に最小の手段で導体板に対するロータリスイッチの操作部分正面に支承された調整要素の間の公差補償を可能にする、ロータリスイッチ用のオプトロニック切り換え装置を開発することを課題の基礎とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、発光装置が、操作要素の中空円筒状の延長部の内方にラジアル方向外方に向けて固定されており、延長部は、発光装置の高さで周囲に規則的に分配された開口を有し、そして発光装置に対して、延長部の外側に少なくとも2つの受光器が配設されることによって、解決される。本発明による解決によって光学的エンコーダが実現され、その光学的エンコーダは、最小の手段と最小の構造的コストによって、ロータリスイッチの切り換え位置の検出のための、ロータリスイッチの操作要素と導体板上に配設されているオプトロニック手段との間の公差補償を可能にする。発光装置、並びに受光器も、直接ロータリスイッチの導体板上に組みつけられ、その結果これらは、電子構成部品として他の全ての要素と同様に導体板の製造の際に直接正確に組みつけられることができる。こうしうて、本発明による利点、 即ち、光学的エンコーダの組み込み及び実現のための追加の作業ステップが必要とされない利点が得られる。
【発明の効果】
【0007】
導体板は、通常の方法でロータリスイッチのために操作要素に対して平行に配設されている。本発明によれば、送信機を表わす発光装置は、導体板の側方に組みつけられ、 その結果光は導体板に対して平行に発光される。同様に受光器は、送信機に向かい合って、導体板上に垂直に組みつけられる。送信機と受光器との間に操作要素の中空円筒状の延長部が配設されており、その際延長部は、同時に符号化リングとして作用する。ロータリスイッチのオプトロニック構成部分と操作要素との分離によって、本発明による他の利点が創造される。操作要素は、殆ど任意の公差で製造されることができ、規則的に周囲に分配された開口が操作要素の延長部において、送信機と受光器との間の作用領域に配設されていることが保証されるだけでよい。したがって、操作要素と導体板との間の公差補償を可能にするロータリスイッチが創造される。操作要素が傾倒され又は導体板の方向に対して垂直に移動する場合でも、 送信機及び受光器によって発生される信号の誤差のあるコード化は行われ得ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の最良の実施形態によれば、発光装置が、操作要素の中空円筒状の延長部の内方にラジアル方向外方に向けて固定されており、延長部は、発光装置の高さで周囲に規則的に分配された複数の開口を有し、そして発光装置に対して、延長部の外側に少なくとも2つの受光器が配設されている。
【0009】
本発明の他の実施形態において、延長部と受光器との間に光を集束させるアパーチャマスクを付設することが提案される。アパーチャマスクは、例えば、ロータリスイッチのハウジングと一体的に形成され又は導体板上受光器の直前に固定されることができる。その際、アパーチャマスクは、散乱により発生する誤差のある信号を抑制するために、発光装置から送られる光を集束させかつ整向させるという課題を有する。
【0010】
本発明によれば、送信機と受光器は直角に、即ち、導体板上に直立して組みつけられている。操作要素又はロータリスイッチの実施形態によって、例えば、このことがコストの安い製造と結びつき又はこのことがスイッチの幾何学的形状と関連する場合に、オプトロニック構造を他の方向に向けて導体板上に固定することは、同様に実施可能である。
【0011】
次に本発明を図面に基づいてかつ実施例によって詳しく説明する。
【実施例】
【0012】
図1中、本発明によるロータリスイッチ1が断面で表されている。図1は、ロータリスイッチ1の原理的構成を示す。ロータリスイッチの直接中央に、発光ダイオード(LED)が配設されている。LED2の直ぐ近くに、プレート3上に発光装置4が組み込まれている。発光装置4の回りに、ロータリスイッチ1の操作要素の延長部5が断面で表されている。延長部5は、開口6と閉じた領域7とから成る。延長部5の外方にはこの実施例においては、アパーチャマスク8が配設されている。アパーチャマスク8は、発光装置4からの光を受光器10,11の方向に集束させる2つの孔9を有する。オプトロニック回路を取り囲むリングは、ロータリスイッチのハウジング12を表わす。
【0013】
ロータリスイッチ1の中央に配設されたLED2は、ロータリスイッチ1の操作要素の照明のために役立つ。発光装置4は、好ましくは、赤外領域の光を送るLEDである。図示の実施例において、発光装置4は、光を延長部5の方向に発生し、光は一方では閉じた領域7上に、かつ他方では延長部5の開口6上に入射する。受光器10上には、光が開口6及び孔9を通って入射する。受光器10の後方に配設された図示しない電子装置は、ロータリスイッチ1の操作要素の位置を検出し、受光器10においては信号が発生し、受光器11においては信号は発生しない。従って、ビットパターン1,0が発生する。延長部5がロータリスイッチ1の操作要素によって15°の角度だけ時計方向に回転すると、 両受光器10,11上に電子装置においてビットパターン1,1として、開口6と孔9を通る光線が現れる。両受光器10,11は、電子装置がビットパターン1,1として変換する1つの信号を発生する。これに対して、ロータリスイッチ1の操作要素は、15°反時計方向に回転され、その結果受光器10,11のいずれの上にも光は入射せず、 かつ電子装置において、符合0,0が発生する。例えば、グレイコードであり得るこのデジタルビットパターンは、回転方向の明らかな弁別を与える。それによって最も簡単な方法で、符合を発生させることを可能にし、その符合によって、確定したステップが与えられるか、又はロータリスイッチの使用目的に依存してプラス又はマイナス方向に発生されることができる。時計方向又は反時計方向の回転は、グレイコードに変換され、その際休止位置から休止位置に変わる際に発生する符合中の1つのビットのみが変わる。
【0014】
発光する送信機4と受光器10,11の配列を明らかにするために、図2にロータリスイッチ1が図1のII−II線に沿う縦断面で表されている。操作要素13には、中空円筒状の延長部5が一体的に形成されている。延長部5は、発光装置4と受光器11との間の領域にまで達する。赤外線送信機4に相応して、同様に受光器10,11は、赤外線受光器、好ましくは、赤外線フォトトランジスタとして形成されている。集束のために、延長部5と受光器11との間にアパーチャマスク8が配設されている。アパーチャマスク8は、ハウジング12に一体的に形成されている。アパーチャマスク8の孔9は、受光器10,11が特殊なv字状の配列で、最適に光を供給される方法で取り付けられる。v字状の配列は、ロータリスイッチ1の中心点に関して行われ、その際受光器10,11は、ロータリスイッチ1の中心点にv字状に向けられている。
【0015】
図2から明らかなように、操作要素の機構はオプトロニック手段4,10,11から分離されている。それによってオプトロニック手段4,10,11と操作要素との間の公差補償が与えられる。垂直方向への操作要素13の移動の場合でも、同様であり、操作要素の操作性に積極的に影響を与えることができる可動的支承による移動は、ロータリスイッチ1の機能性へのマイナスの作用を生じさせることはあり得ない。延長部5の開口6が送信機4と受光器10,11との間の作用領域にある限り、同時に垂直の移動を伴う操作要素の傾倒のさえでも、ロータリスイッチの誤機能は発生し得ない。
【0016】
開口6を備えた操作要素13の延長部5が、両受光器10,11が光を入射される位置にある場合、それによって信号1,1が電子装置において評価される。この状態は、第1の休止位置と定義され得る。操作要素13によって延長部5がある角度だけ時計方向に回転されると、 受光器10はもはや光を受けず、ビットパターン0,1が発生し、このことは、休止位置2に相応し得る。操作要素が再び一定量回転される次のステップにおいて、閉じた領域7は、同様に受光器11の前に移動し、ビットパターン0,0が発生し、このことは再び第3の休止位置に相応する。操作要素13の更なる回転の後に、受光器10のみが光により1つのパルスを発生し、その結果ビットパターン1,0が発生し、このことは、第4の休止位置に相応する。操作要素13の更なる回転の後に、状態1,1が再び電子装置において発生する。この第5の休止位置は、休止位置1と一致する。この第5の休止位置から、操作要素13は、プラスに、即ち、時計方向に、 又はマイナスに、 即ち、反時計方向に回転され、 その際電子装置において、回転方向は明らかに弁別される。プラスの方向において、ビットパターン0,1が発生し、かつマイナス方向において、ビットパターン1,0が発生する。それによって最も簡単な手段で、操作要素から分離された、大きな公差を有するロータリスイッチが形成され、この公差は、全構成部分に亘って一定の隙間寸法を有することができかつその上、コスト安く製造されることができる。好ましくは、このロータリスイッチは自動車の操作装置に使用される。ここでは、ロータリスイッチは、例えば空調装置、ラジオ受信機、ナビゲーション装置等々に使用されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
アパーチャマスクは、例えば、ロータリスイッチのハウジングと一体的に形成され又は導体板上受光器の直前に固定されることができ、散乱により発生する誤差のある信号を抑制するために、発光装置から送られる光を集束させかつ整向させる。送信機と受光器は直角に、即ち、導体板上に直立して組みつけられている。操作要素又はロータリスイッチの実施形態によって、例えば、このことがコストの安い製造と結びつき又はこのことがスイッチの幾何学的形状と関連する場合に、導体板の製造の際にオプトロニック構造を他の方向においても直接導体板上に固定することが、同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるロータリスイッチの原理構成の断面図を示す。
【図2】ロータリスイッチのオプトロニック構成部分の配列の縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0019】
3 導体板
4 発光装置
5 延長部
6 開口
10 受光器
11 受光器
13 操作要素


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作要素(13)と、導体板(3)上に配設されている発光装置(4)と、同様に導体板(3)上に配設されていて、光を評価する受光器(10,11)とから成る操作装置用のロータリスイッチであって、
その際発光装置(4)と受光器(10,11)とは、ロータリスイッチ(1)の切り換え位置のオプトロニック検出を可能にする、前記ロータリスイッチにおいて、
発光装置(4)が、操作要素(13)の中空円筒状の延長部(5)の内方にラジアル方向外方に向けて固定されており、延長部(5)は、発光装置(4)の高さで周囲に規則的に分配された複数の開口(6)を有し、そして発光装置(4)に対して、延長部(5)の外側に少なくとも2つの受光器(10,11)が配設されていることを特徴とする前記ロータリスイッチ。
【請求項2】
延長部(5)と受光器(10,11)との間に、受光器(10,11)の方向に光を集束させる位置固定のアパーチャマスク(8)が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリスイッチ。
【請求項3】
受光器(10,11)が、縦軸線に対して直角な平面上に並んで配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の操作要素。
【請求項4】
延長部(5)における複数の開口(6)が、
各受光器(10,11)が個々に遮蔽され、
両受光器(10,11)が一緒に遮蔽され、かつ
両受光器(10,11)が光の入射を受けずに調整可能であるような、相互の距離を有することを特徴とする請求項1から3までのうちのいずれか1つに記載の操作要素。
【請求項5】
操作要素(13)が、自動車の操作装置の部分であり、
発光装置(4)が、発光ダイオード(LED)で、各受光器(10,11)がフォトトランジスタであり、そしてLED及びフォトトランジスタが電気回路を介して互いに接続されていることを特徴とする請求項1から4までのうちのいずれか1つに記載の操作要素。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−505456(P2007−505456A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525747(P2006−525747)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009983
【国際公開番号】WO2005/027352
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(504162556)プレー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (24)
【Fターム(参考)】