説明

組成物、感光性フイルム、感光性積層体、永久パターン形成方法およびプリント基板

【課題】埋め込み性、耐熱衝撃性、現像性、絶縁性、及び露光部の解像性に優れた高性能な硬化膜を得ることができるシリカ分散組成物の提供。
【解決手段】少なくとも1種のアクリル樹脂とシリカ微粒子を含有してなり、該アクリル樹脂が塩基性基と酸性基をそれぞれ有し、該酸性基が芳香環または脂環を有する酸性基である組成物、感光性フイルム、感光性積層体、永久パターン形成方法およびプリント基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダーレジスト等に好適に用いられる組成物、感光性フイルム、感光性積層体、永久パターン形成方法およびプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ソルダーレジスト等の永久パターンを形成するに際して、支持体上にシリカ分散組成物を塗布し、乾燥することにより感光層を形成させた感光性フィルムが用いられてきている。ソルダーレジスト等の永久パターンを形成する方法としては、例えば、永久パターンが形成される銅張積層板等の基体上に、感光性フィルムを積層させて積層体を形成し、該積層体における感光層に対して露光を行い、該露光後、感光層を現像してパターンを形成させ、その後硬化処理等を行うことにより永久パターンを形成する方法等が知られている。
【0003】
最近、デバイスの微細化に伴って、L/S(ラインスペース)の小さい半導体パッケージ基板等のソルダーレジストの開発が進められている。そこで、耐衝撃性を向上させるため、シリカ微粒子の高充填化が求められている。
一方、ソルダーレジスト組成物において、無機微粒子の分散剤として、高分子分散剤を使用することが知られており、例えば、シリカ微粒子では市販の特定の分散剤を流用(例えば、特許文献1参照)したり、硫酸バリウムの分散にスチレン/無水マレイン酸/ブチルアクリレート共重合体を使用することが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、ソルダーレジストなどの感光性樹脂組成物や感光性フイルム等でシリカ微粒子を高充填すると、膜物性が変化し、ソルダーレジストとしての性能が逆に損なわれる。例えば、シリカ微粒子を高充填すると溶融粘度が高くなり、転写性、現像性が低下する。
このため、シリカ微粒子を安定かつ高密度に分散できる分散剤およびその分散剤組成物の開発、特に、ソルダーレジストなどの感光性樹脂組成物や感光性フイルム等でシリカ微粒子を高充填化した場合、転写性や現像性、耐衝撃性、絶縁性、露光部の解像性に優れた分散組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−234439号公報
【特許文献2】国際公開2005−124462号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、無機微粒子、特にシリカ微粒子を安定に高密度に分散できる分散剤もしくはその組成物、シリカ微粒子を高充填化しても、埋め込み性、耐熱衝撃性、現像性、絶縁性、及び露光部の解像性に優れた高性能な硬化膜を得ることができ、感光性組成物もしくは感光性フイルム等、特にソルダーレジスト用などに好適なシリカ分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、塩基性基と酸性基を有する高分子分散剤の酸性基構造と分散剤樹脂の種類や構造の組合せが重要であるとの知見を見出すに至り、本発明に至った。通常、塩基性基と酸性基がポリマー中に共存すると塩を形成し、溶剤への溶解性も低下するものであるが、この点も特定の高分子樹脂、樹脂構造において解決された。
なかでも本発明の分散剤もしくはその分散剤組成物を感光性組成物もしくは感光性フイルム等、特にソルダーレジスト用などに使用した場合、露光部の解像性に優れ、耐熱衝撃性も優れる。
【0008】
本発明の前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)少なくとも1種のアクリル樹脂とシリカ微粒子を含有してなり、該アクリル樹脂が塩基性基と酸性基をそれぞれ有し、該酸性基が芳香環または脂環を有する酸性基であることを特徴とする組成物。
(2)前記酸性基が、カルボキシル基であることを特徴とする(1)に記載の組成物。
(3)前記酸性基が、芳香環または脂環に直結していることを特徴とする(1)または(2)に記載の組成物。
(4)前記酸性基が、6員の脂環に直結していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の組成物。
(5)前記アクリル樹脂が、該樹脂の側鎖に、ないしは主鎖末端にグラフト鎖を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組成物。
(6)前記シリカ微粒子の平均粒径(d50)が0.02μm〜3.0μmであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組成物。
(7)熱架橋剤を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の組成物。
(8)バインダー、重合性化合物および光重合開始剤を含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の組成物。
(9)前記組成物が、ソルダーレジスト用であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の組成物。
(10)前記組成物が、バインダーとして酸変性のエチレン性不飽和基を含有する樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
(11)前記組成物が、バインダーとして酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の組成物。
(12)前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の組成物を含む感光層を支持体上に有してなることを特徴とする感光性フィルム。
(13)基体上に、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の組成物を含む感光層を有することを特徴とする感光性積層体。
(14)前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の組成物により形成された感光層に対して露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法。
(15)前記(14)に記載の永久パターン形成方法で形成されてなることを特徴とするプリント基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、無機微粒子、特にシリカ微粒子を安定に高密度に分散できる分散剤もしくはその組成物、シリカ微粒子を高充填化しても、埋め込み性、耐熱衝撃性、現像性、絶縁性、及び露光部の解像性に優れた高性能な硬化膜を得ることができ、感光性組成物もしくは感光性フイルム等、特にソルダーレジスト用などに好適なシリカ分散組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(組成物)
本発明に用いられる組成物は、少なくとも1種のアクリル樹脂とシリカ微粒子を含有してなる組成物であり、熱架橋剤、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0011】
<アクリル樹脂>
本発明に用いられる組成物中に含有する本発明に用いられるアクリル樹脂は、塩基性基と酸性基をそれぞれ有す。塩基性基と酸性基をともに有することは、現像性だけでなく、絶縁性の点でも好ましい。
【0012】
アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドの繰り返し単位を含む樹脂であり、好ましくは、下記一般式(P)で表される繰り返し単位を有する。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(P)において、RP1は水素原子またはメチル基を表し、YP1は−COP2、CON(RP3)(RP4)または−CNを表す。ここで、RP2は水素原子またはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。RP3およびRP4は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。
これらの各基は置換基を有してもよく、該置換基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、ウレイド基、ウレタン基などが挙げられる。
また、本発明に用いられるアクリル樹脂は、上記一般式(P)で表される繰り返し単位のうち、一般式(P)で表される範囲内で、異なった繰り返し単位を含んでもよい。また、上記一般式(P)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでもよい。
【0015】
一般式(P)において、RP1はメチル基が好ましい。YP1は、好ましくは−COP2である。また、RP2は水素原子またはアルキル基が好ましく、本発明に用いられるアクリル樹脂は、一般式(P)のYP1が−COP2である部分構造の範囲内で、異なった2種以上の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0016】
本発明に用いられるアクリル樹脂は塩基性基を有する。
塩基性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、含窒素ヘテロ環基などが挙げられるが、第三級アミノ基、含窒素へテロ環基が好ましく、第三級アミノ基が特に好ましい。
アクリル樹脂中に含有する塩基性基は、無機もしくは有機のフィラーや顔料の表面、特にシリカ微粒子の表面と相互作用、例えば、イオン的相互作用で表面に吸着する。
【0017】
含窒素へテロ環基としては、環構成原子に窒素原子を含み、該窒素原子が塩基性を示すものであればどのようなものでも構わない。含窒素へテロ環基におけるヘテロ環としては、5または6員のヘテロ環基が好ましく、芳香環であっても、不飽和もしくは飽和の環であっても構わない。含窒素へテロ環はさらに芳香環、ヘテロ環または脂環が縮環してもよく、含窒素ヘテロ環に置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、ウレイド基、ウレタン基などが挙げられる。
【0018】
含窒素ヘテロ環としては、例えば、ピロリジン環、ピロリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、イミダゾール環、ピラゾリジン環、ピロリジン環、ピラゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、インドリン環、キヌクリジン環が挙げられる。
【0019】
第一級〜三級アミノ基としては、好ましくは下記一般式(M)で表される。
【0020】
一般式(M)
−N(RM1)(RM2
【0021】
一般式(M)において、RM1およびRM2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、これらの各基は置換基を有してもよい。また、RM1とRM2が互いに結合して環を形成してもよい。
アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシルが挙げられる。アルケニル基として、好ましくは炭素数2〜10で、例えばビニル、アリル、2−ブテニルが挙げられる。アルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜10で、例えばエチニル、2−プロピニル、2−ブチニルが挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜10で、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシルが挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜12が好ましく、例えばフェニル、ナフチルが挙げられる。ヘテロ環基としては、環骨格を構成するヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を少なくとも1個有し、5または6員のヘテロ環基が好ましく、上記N原子と結合する原子が炭素原子であるものが好ましい。ヘテロ環基のヘテロ環としては、例えばテトラヒドロフラン環、ピロリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ジオキサン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピラゾール環が挙げられる。
【0022】
これらの各基は置換基を有してもよく、該置換基としては、前述の含窒素へテロ環基が有してもよい置換基として例示した置換基が挙げられる。
【0023】
M1とRM2が互いに結合して形成される環としては、5または6員環が好ましく、また飽和環が好ましく、例えば、ピロリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルホリン環が挙げられる。
【0024】
ここで、RM1とRM2が共に水素原子の場合が第一級アミノ基であり、RM1とRM2のいずれか一方のみが水素原子である場合が第二級アミノ基であり、RM1とRM2が共に水素原子以外の上記の基である場合が第三級アミノ基である。本発明においては、第三級アミノ基が好ましい。
第三級アミノ基の中でも、RM1、RM2が、共にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましく、RM1、RM2が、共にアルキル基がより好ましい。アルキル基では、無置換のアルキル基が好ましく、炭素数としては1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、メチル基が最も好ましい。また、RM1とRM2が互いに結合してピロリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成した場合も好ましい。
【0025】
本発明に用いられるアクリル樹脂は、塩基性基、好ましくは前記一般式(M)で表される基を有するが、この塩基性基は、上記一般式(P)で表される繰り返し単位の一部に組み込まれても、これとは別のモノマーから得られる繰り返し単位中に塩基性基を有してもよい。
本発明においては、前記一般式(P)に組み込まれるのが好ましく、RP2〜RP4のいずれかに、RP2〜RP4で規定されている各基の置換基として組み込まれるのがより好ましい。
具体的には、例えば、塩基性基が置換したアルキル基、塩基性基が置換したアリール基等である。
塩基性基は、下記の一般式(PB)で表される繰り返し単位として含まれることが好ましい。
【0026】
【化2】

【0027】
一般式(PB)において、RP1は一般式(P)のRP1と同義であり、好ましい範囲も同じである。XP1は−O−または−N(RP3)−を表す。ここで、RP3は前記一般式(P)におけるRP3と同義である。LP1はアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基もしくはこれらの基が組み合わされた基、またはこれらの基と他の2価の基(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−SO−、−N(RP5)−など)が組み合わされた基(ただし、この他の2価の基が直接XP1に結合することはない)を表す。ここで、RP5はRP3で表される基、アシル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。なお、LP1の各基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、一般式(P)におけるRP3およびRP4の基が有してもよい置換基が挙げられる。BP1は塩基性基を表し、第一級〜第三級アミノ基または含窒素ヘテロ環基が好ましい。
【0028】
一般式(PB)で表される繰り返し単位のうち、XP1は−O−が好ましく、LP1はアルキレン基が好ましく、また炭素数は1〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2が最も好ましい。
一般式(PB)で表される繰り返し単位のうち、下記一般式(PB1)で表される繰り返し単位がさらに好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
一般式(PB1)において、RP1、XP1およびLP1は一般式(PB)の、RP1、XP1およびLP1と同義であり、好ましい範囲も同じである。RM1およびRM2は一般式(M)のRM1およびRM2と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0031】
本発明に用いられるアクリル樹脂は酸性基を有する。
酸性基としては、特に制限はなく、本発明においては、芳香環または脂環を含む酸性基であればどのような酸性基であっても構わない。ここで、酸性基の酸部分の基としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホニル基、−COCHCO−R、−CONHCO−R、−COCHCN、フェノール性水酸基、−RCHOH、−(RCHOH、アルキルもしくはアリールスルホンアミド基などが挙げられる。ここで、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Rはペルフルオロアルキル基を表す。なお、炭化水素基は、飽和、不飽和または環状の炭化水素基で、好ましくは環状の炭化水素基である。
酸性基のうち、カルボキシル基、スルホ基、ホスホニル基が好ましく、現像性の点で、カルボキシル基が特に好ましい。
【0032】
本発明においては、酸性基は芳香環または脂環を有するが、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。一方、脂環は、飽和環であっても不飽和環であっても、縮合多環、架橋環、スピロ環等の複合環であってもよい。また、これらの芳香環や脂環は置換基を有してもよく、このような置換基としては、一般式(P)におけるRP3およびRP4の基が有してもよい置換基が挙げられる。
これらの芳香環または脂環のうち好ましい環は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環である。
【0033】
本発明においては、これらの芳香環または脂環に酸性基が直結している場合が好ましい。
具体的には、前述したカルボキシル基、スルホ基、ホスホニル基では、これらの基が芳香環または脂環に直結する場合であり、また、(*)−COCHCO−R、(*)−CONHCO−Rでは、少なくとも、Rが芳香環基または脂環基であるか、(*)部分に直結して芳香環または脂環が存在する場合であり、(*)−COCHCN、(*)−RCHOH、(*)−(RCHOHでは、(*)部分に直結して芳香環または脂環が存在する場合であり、これに加えて、フェノール性水酸基やアリールスルホンアミド基である場合である。
【0034】
このような酸性基は、前記一般式(P)で表される繰り返し単位中に組み込んでもよく、また他の繰り返し単位中に組み込んでもよい。
酸性基を有する他のモノマーと共重合させることによって組み込む場合は、このようなモノマーとして、例えば、マレイン酸モノアルキルエステル、フマール酸モノアルキルエステルおよびイタコン酸モノアルキルエステルにおいて、各エステルのアルコール部に芳香環や脂環を有するモノマー、p−ヒドロキシスチレン、p−スルホスチレン、p−カルボキシスチレンなどが挙げられる。
【0035】
本発明においては、酸性基を前記一般式(P)で表される繰り返し単位中に組み込んだものが好ましい。
このような繰り返し単位としては、以下の一般式(PA)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化4】

【0036】
一般式(PA)において、RP1は一般式(P)のRP1と同義であり、好ましい範囲も同じである。XP2は−O−または−N(RP3)−を表す。ここで、RP3は前記一般式(P)におけるRP3と同義である。LP2はアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基もしくはこれらの基が組み合わされた基、またはこれらの基と他の2価の基(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−SO−、−N(RP5)−など)が組み合わされた基(ただし、この他の2価の基が直接XP2に結合することはない)を表す。ここで、RP5はRP3で表される基、アシル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。なお、LP2の各基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、一般式(P)におけるRP3およびRP4の基が有してもよい置換基が挙げられる。AP1は酸性基を表す。
ここで、XP2、LP2およびAP1のいずれかは芳香環または脂環を有す。
【0037】
一般式(PA)で表される繰り返し単位のうち、XP2は−O−が好ましく、LP2は以下の一般式(L)で表される基が好ましい。
【0038】
一般式(L)
−(LPA1)nA1−(LPA2)nA2−(LPA3)nA3−(XPA−C(=O)nA4
【0039】
一般式(L)において、LPA1およびLPA3は各々独立にアルキレン基を表し、LPA2はオキシアルキレン基を表し、XPAは−N(RP3)−または−O−を表す。ここで、RP3は、一般式(P)におけるRP3と同義であり、好ましい範囲も同じである。nA1は1〜12を表し、nA2およびnA3は各々独立に0〜50を表し、nA4は0または1を表す。
−(LPA1)nA1−、−(LPA3)nA3−は、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、炭素数4〜20のアルキレン基が好ましい。
PA2におけるオキシアルキレン基は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。XPAは−NH−または−O−が好ましく、−O−がより好ましい。
P1は、カルボキシル基、スルホ基、ホスホニル基のいずれかが置換した芳香環基(好ましくはフェニル基)または脂環基(好ましくはシクロヘキシル基、シクロへキセニル基)が好ましく、カルボキシル基が置換した芳香環基(好ましくはフェニル基)または脂環基(好ましくはシクロヘキシル基、シクロへキセニル基)がさらに好ましい。
【0040】
なお、本発明に用いられる酸性基を有するアクリル樹脂は、上記の本発明における酸性基とともに、これ以外の酸性基を有してもよく、例えば、モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などにより、共重合させが挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
【0041】
本発明に用いられるアクリル酸樹脂のアミン価は、0.65mmol/g以上が好ましく、0.75mmol/g以上がより好ましく、0.9mmol/g以上がさらに好ましい。アミン価の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは4mmol/g以下であり、さらに好ましくは3mmol/g以下である。
ここで、前記アミン価の測定は、例えば、試料をビーカーにはかりとり、酢酸を加え、撹拌して溶解させて、測定温度を25℃に調整後、滴定試薬として0.1N過塩素酸酢酸を用いて、滴定装置で滴定することにより、求めることができる。
アミン価は滴定した際に消費される過塩素の量を、アクリル樹脂1g当たりのモル数で表したものである。
【0042】
本発明に用いられるアクリル酸樹脂の酸価は、0.3mmol/g以上が好ましく、0.45mmol/g以上がより好ましい。酸価の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは3.0mmol/g以下であり、さらに好ましくは2.3mmol/g以下である。
ここで、前記酸価の測定は、例えば、試料をビーカーにはかりとり、THF/水=5/1(体積比)の溶液を加え、撹拌して溶解させて、測定温度を25℃に調整した後、滴定試薬として0.1NのNaOH水溶液を用いて、滴定装置で滴定することにより、酸価を求めることができる。
酸価は滴定した際に消費されるNaOHの量を、アクリル樹脂1g当たりのモル数で表したものである。
【0043】
−グラフト鎖−
本発明に用いられるアクリル樹脂は、側鎖に、ないしは主鎖末端の少なくともいずれかにグラフト鎖を有することが好ましい。
グラフト鎖としては、例えばポリエステル鎖、ポリアルキルアクリレート鎖、ポリアルキルメタクリレート鎖、ポリアルキレンオキシド鎖(好ましくはポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖)、ポリカーボネート鎖、ポリスチレン鎖、またはこれらが組合されたものおよびこれらの鎖を部分構造に含むものが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル部位を有するグラフト鎖(ポリエステルグラフト鎖)であることが、解像性の点で好ましい。
前記グラフト鎖の鎖長は、重合度が、1〜100が好ましく、1〜80がより好ましく、1〜60が特に好ましい。
前記グラフトの含有量は、アクリル樹脂全体に対し10質量%〜60質量%が好ましく、20質量%〜50質量%がより好ましい。
グラフト鎖は、アクリル樹脂が下記一般式(PG)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0044】
【化5】

【0045】
一般式(PG)において、RP1は一般式(P)のRP1と同義であり、好ましい範囲も同じである。XP1は一般式(PB)のXP1と同義であり、好ましい範囲も同じである。LP3は単結合、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基もしくはこれらの基が組み合わされた基、またはこれらの基と他の2価の基(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−SO−、−N(RP5)−など)が組み合わされた基(ただし、この他の2価の基が直接XP1に結合することはない)を表す。ここで、RP5はRP3で表される基、アシル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。なお、LP3の各基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、一般式(P)におけるRP3およびRP4の基が有してもよい置換基が挙げられる。RP6は水素原子または置換基が挙げられ、該置換基としては、一般式(P)におけるRP3およびRP4の基が有してもよい置換基が挙げられる。
【0046】
P1は−O−が好ましい。
P3はポリオキシアルキレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレンを部分構造に有す2価の基が好ましい。
ポリオキシアルキレンは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが好ましい。ポリエステルは、−[(CH)mP1−COO]np1−、ポリカーボネートは、−[(CH)mp2−OCOO]np2−で表され、nP1およびnP2は各々独立に1〜50を表すものが好ましく、mP1およびmP2はそれぞれ独立に1〜10を表すものが好ましい。
上記ポリエステル、ポリカーボネート部分構造は、XP1との結合に際して、2価の連結基を介してポリエステル、ポリカーボネートが結合するものが好ましい。この場合の2価の連結基としては、例えばアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基もしくはこれらの基が組み合わされた基、またはこれらに、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−SO−、−N(RP5)−が組み合わされた基が挙げられる。
【0047】
アクリル樹脂の分子量を調節する際にはチオール基を含む連鎖移動剤などを使用して行うことが好ましい。本発明に用いられるアクリル樹脂の質量平均分子量は3000〜30000が好ましく、5000〜18000がより好ましい。
【0048】
本発明に用いられるアクリル樹脂は、樹脂全体に一般式(P)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有してもよいが、本発明においては、一般式(P)で表される繰り返し単位の含有量は50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
また、本発明に用いられるアクリル樹脂は、前記一般式(PB)で表される繰り返し単位を10モル%〜70モル%、前記一般式(PG)で表される繰り返し単位を3モル%〜25モル%、前記一般式(PA)で表される繰り返し単位を2モル%〜40モル%含有することが好ましい。
なお、前記一般式(P)で表され、かつ前記一般式(PB)、(PA)、(PG)とは異なる繰り返し単位としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルから得られる繰り返し単位が好ましく、エステルのアルコール部は炭素数1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。
【0049】
以下に、本発明に用いられるアクリル樹脂の具体例を示すが、これによって本発明が制限されるものではない。なお、数値は質量%であり、xは重合度であって、1〜50である。
【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
本発明に用いられるアクリル樹脂は対応するモノマーを使用し、一般的な重合反応で容易に合成することができる。具体的な合成例は、実施例において示す。
【0054】
<シリカ微粒子>
本発明で使用するシリカ微粒子のシリカとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、気相法シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、などが挙げられる。
【0055】
本発明で使用するシリカ微粒子の平均粒径(d50)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.02μm〜3.0μmが好ましく、0.1μm〜2.0μmがより好ましく、0.2μm〜1.5μmが特に好ましい。
シリカ粒子の平均粒径(d50)が、0.04μm未満であると、塗布粘度が高くなってしまうことがあり、3.0μmを超えると、平滑性を維持することができないことがある。一方、シリカ粒子の平均粒径(d50)が、前記特に好ましい範囲内であると、塗布粘度と硬化膜の平滑性及び耐熱性の点で有利である。
ここで、シリカ粒子の平均粒径(d50)は、積算(累積)質量百分率で表したときの積算値50%の粒度で定義されるもので、d50(D50)などと定義されるものであり、例えば、ダイナミック光散乱光度計(商品名:DLS7000、大塚電子社製)を用いて、測定原理を動的光散乱法として、サイズ分布解析手法をキュムラント法、ヒストグラム法などにより、測定することができる。
【0056】
シリカ微粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、SO−C2(アドマテックス社製)などが挙げられる。
【0057】
シリカ微粒子とシリカ微粒子分散剤との混合物におけるシリカ微粒子の固形分含有量は、5質量%〜80質量%が好ましく、10質量%〜70質量%がより好ましい。
含有量が、5質量%未満であると、耐衝撃性が劣ることがあり、80質量%を超えると、分散性が不十分となることがある。
【0058】
<熱架橋剤>
本発明に用いられる組成物は熱架橋剤を含有するのが好ましい。
熱架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、多官能オキセタン化合物、などが挙げられる。
これらの中でも、1分子内に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ樹脂化合物、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物が好ましい。
【0059】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0095〕に記載された化合物、特開2010−72340号公報の段落〔0130〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0060】
前記多官能オキセタン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0096〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0061】
前記熱架橋剤の前記シリカ分散組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜50質量%が好ましく、2質量%〜40質量%がより好ましく、3質量%〜30質量%が特に好ましい。
前記含有量が、1質量%未満であると、耐熱性が劣ることがあり、50質量%を超えると、現像性及び耐クラック性が劣ることがある。一方、前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、良好な感度で硬化膜が作製でき、形成された硬化膜も、耐熱性と耐クラック性とを両立できる点で有利である。
【0062】
前記その他の熱架橋剤としては、前記エポキシ樹脂及び前記多官能オキセタン化合物とは別に添加することができる。前記その他の熱架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0098〕〜〔0100〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0063】
<<バインダー>>
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂、エチレン性不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、酸変性エチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂、ポリイミド前駆体、などが挙げられる。
【0064】
−酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂−
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)側鎖にエチレン性不飽和結合(ビニル基)を有するポリウレタン樹脂、(ii)カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂、などが挙げられる。
【0065】
−−(i)側鎖にエチレン性不飽和基を有するポリウレタン樹脂−−
前記側鎖にエチレン性不飽和基を有するウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その側鎖に、下記一般式(1)〜(3)で表される官能基のうち少なくとも1つを有するものが挙げられる。
【0066】
【化9】

【0067】
前記一般式(1)において、前記Rとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、メチル基が好ましい。また、前記R2及びR3としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、それぞれ独立に、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
前記一般式(1)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表し、前記R12は、水素原子、又は1価の有機基を表す。前記R12としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましい。
ここで、導入し得る前記置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、などが挙げられる。
【0068】
【化10】

【0069】
前記一般式(2)において、R4〜R8としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
【0070】
導入し得る置換基としては、前記一般式(1)と同様のものが挙げられる。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表す。前記R12は、前記一般式(1)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
【0071】
【化11】

【0072】
前記一般式(3)において、前記R9としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、メチル基が好ましい。前記一般式(3)中、前記R10及びR11としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
【0073】
ここで、導入し得る置換基としては、前記一般式(1)と同様のものが挙げられる。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13)−、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。前記R13としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、置換基を有してもよいアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル反応性が高い点で、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0074】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するウレタン樹脂は、下記一般式(4)で表されるジイソシアネート化合物の少なくとも1種と、下記一般式(5)で表されるジオール化合物の少なくとも1種と、の反応生成物で表される構造単位を基本骨格とするポリウレタン樹脂である。
【0075】
OCN−X0−NCO ・・・一般式(4)
HO−Y0−OH ・・・一般式(5)
ただし、前記一般式(4)及び(5)中、X0、Y0は、それぞれ独立に2価の有機残基を表す。
【0076】
前記一般式(4)で表されるジイソシアネート化合物、又は、前記一般式(5)で表されるジオール化合物の少なくともどちらか一方が、前記一般式(1)〜(3)で表される基のうち少なくとも1つを有していれば、当該ジイソシアネート化合物と当該ジオール化合物との反応生成物として、側鎖に前記一般式(1)〜(3)で表される基が導入されたポリウレタン樹脂が生成される。かかる方法によれば、ポリウレタン樹脂の反応生成後に所望の側鎖を置換、導入するよりも、側鎖に前記一般式(1)〜(3)で表される基が導入されたポリウレタン樹脂を容易に製造することができる。
【0077】
前記一般式(4)で表されるジイソシアネート化合物としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリイソシアネート化合物と、不飽和基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させて得られる生成物、などが挙げられる。
前記トリイソシアネート化合物としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0034〕〜〔0035〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0078】
前記一般式(5)で表されるジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、などが挙げられる。
【0079】
前記不飽和基を有する単官能のアルコール又は前記単官能のアミン化合物としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0037〕〜〔0040〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0080】
ここで、前記ポリウレタン樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に不飽和基を含有するジイソシアネート化合物を用いる方法が好ましい。前記ジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、トリイソシアネート化合物と不飽和基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させることにより得ることできるジイソシアネート化合物であって、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0042〕〜〔0049〕に記載された側鎖に不飽和基を有する化合物、などが挙げられる。
【0081】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、重合性組成物中の他の成分との相溶性を向上させ、保存安定性を向上させるといった観点から、前記不飽和基を含有するジイソシアネート化合物以外のジイソシアネート化合物を共重合させることもできる。
【0082】
前記共重合させるジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することでき、例えば、下記一般式(6)で表されるジイソシアネート化合物である。
OCN−L1−NCO ・・・一般式(6)
ただし、前記一般式(6)中、Lは、置換基を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表す。必要に応じて、Lは、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基を有していてもよい。
【0083】
前記一般式(6)で表されるジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することでき、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物;などが挙げられる。
【0084】
ここで、前記ポリウレタン樹脂の側鎖に不飽和基を導入する方法としては、前述の方法の他に、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物を用いる方法も好ましい。前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルのように市販されているものでもよいし、ハロゲン化ジオール化合物、トリオール化合物、アミノジオール化合物等の化合物と、不飽和基を含有する、カルボン酸、酸塩化物、イソシアネート、アルコール、アミン、チオール、ハロゲン化アルキル化合物等の化合物との反応により容易に製造される化合物であってもよい。前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0057〕〜〔0060〕に記載された化合物、下記一般式(G)で表される特開2005−250438号公報の段落〔0064〕〜〔0066〕に記載された化合物、などが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(G)で表される特開2005−250438号公報の段落〔0064〕〜〔0066〕に記載された化合物が特に好ましい。
【0085】
【化12】

【0086】
ただし、前記一般式(G)中、R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を表し、Aは2価の有機残基を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表し、前記R12は、水素原子、又は1価の有機基を表す。
なお、前記一般式(G)におけるR1〜R3及びXは、前記一般式(1)におけるR1〜R3及びXと同義であり、好ましい態様もまた同様である。
前記一般式(G)で表されるジオール化合物に由来するポリウレタン樹脂を用いることにより、立体障害の大きい2級アルコールに起因するポリマー主鎖の過剰な分子運動を抑制効果により、層の被膜強度の向上が達成できるものと考えられる。
【0087】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、例えば、重合性組成物中の他の成分との相溶性を向上させ、保存安定性を向上させるといった観点から、前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物以外のジオール化合物を共重合させることができる。
前記側鎖に不飽和基を含有するジオール化合物以外のジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、などが挙げられる。
【0088】
前記ポリエーテルジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0068〕〜〔0076〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0089】
前記ポリエステルジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0077〕〜〔0079〕、段落〔0083〕〜〔0085〕におけるNo.1〜No.8及びNo.13〜No.18に記載された化合物、などが挙げられる。
【0090】
前記ポリカーボネートジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0080〕〜〔0081〕及び段落〔0084〕におけるNo.9〜No.12に記載された化合物、などが挙げられる。
【0091】
また、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成には、上述したジオール化合物の他に、イソシアネート基と反応しない置換基を有するジオール化合物を併用することもできる。
前記イソシアネート基と反応しない置換基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0087〕〜〔0088〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0092】
更に、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成には、上述したジオール化合物の他に、カルボキシル基を有するジオール化合物を併用することもできる。前記カルボキシル基を有するジオール化合物としては、例えば、以下の式(X)〜(Z)に示すものが含まれる。
【0093】
【化13】

【0094】
前記式(X)〜(Z)中、R15としては、水素原子、置換基(例えば、シアノ基、ニトロ基、−F、−Cl、−Br、−I等のハロゲン原子、−CONH、−COOR16、−OR16、−NHCONHR16、−NHCOOR16、−NHCOR16、−OCONHR16(ここで、前記R16は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数7〜15のアラルキル基を表す。)などの各基が含まれる。)を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水素原子、炭素数1〜8個のアルキル基、炭素数6〜15個のアリール基が好ましい。前記式(X)〜(Z)中、L、L10、L11は、それぞれ同一でもよいし、相違していてもよく、単結合、置換基(例えば、アルキル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜8個のアルキレン基がより好ましい。また必要に応じ、前記L〜L11中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、カルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、エーテル基を有していてもよい。なお、前記R15、L、L、Lのうちの2個又は3個で環を形成してもよい。
前記式(Y)中、Arとしては、置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数6〜15個の芳香族基が好ましい。
【0095】
前記式(X)〜(Z)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド、などが挙げられる。
【0096】
このようなカルボキシル基の存在により、ポリウレタン樹脂に水素結合性とアルカリ可溶性といった特性を付与できるため好ましい。より具体的には、前記側鎖にエチレン性不飽和結合基を有するポリウレタン樹脂が、更に側鎖にカルボキシル基を有する樹脂である。
【0097】
また、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成には、上述したジオール化合物の他に、テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させた化合物を併用することもできる。
前記テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させた化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0095〕〜〔0101〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0098】
また、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂としては、ポリマー末端、主鎖にアルカリ現像性基を有するものも好適に使用される。ポリマー末端、主鎖にアルカリ現像性基を有することにより、更に、アルカリ現像時の現像性が向上し、優れたパターン形成性を与える。更に熱架橋剤と側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂との間で架橋反応性が向上し、硬化物強度が増す。その結果、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂をプリント基板材料に使用した際、耐久性に優れる材料を与えることができる。ここで、アルカリ現像性基としては、希アルカリによる現像性の付与から、カルボキシル基を有することが特に好ましい。
【0099】
ポリマー末端にアルカリ現像性基を導入する方法としては、以下に示す方法がある。
【0100】
−主鎖の末端のカルボキシル基−
前記ポリウレタン樹脂の主鎖の末端に、少なくとも1つのカルボキシル基を有し、2つ以上5つ以下のカルボキシル基を有することが好ましく、2つのカルボキシル基を有することが現像性に優れ、微細パターン形成性の点で特に好ましい。
なお、前記ポリウレタン樹脂における主鎖の末端は、2つあるが、片末端に少なくとも1つのカルボキシル基を有することが好ましく、両末端に少なくとも1つのカルボキシル基を有していてもよい。
前記ポリウレタン樹脂の主鎖の末端に、下記一般式(7)で表される構造を有することが好ましい
−L100−(COOH) ・・・ 一般式(7)
ただし、前記一般式(7)中、L100は、(n+1)価の有機連結鎖を表し、nは1以上の整数を示し、1〜5が好ましく、2が特に好ましい。
100で表される有機連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される1以上の原子を含んで構成され、具体的には、L100で表される有機連結基の主骨格を構成する原子数は、1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜20が更に好ましく、1〜10が特に好ましい。
なお、前記「有機連結基の主骨格」とは、後述する一般式(8)におけるL200と末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を意味し、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。
【0101】
前記ポリウレタン樹脂の主鎖の末端に、少なくとも1つのカルボキシル基を導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂製造の原料として、少なくとも1つのカルボキシル基を有するカルボン酸化合物を用いる方法などが挙げられる。
【0102】
−カルボン酸化合物−
前記カルボン酸化合物としては、カルボキシル基を1つ有するモノカルボン酸化合物、カルボキシル基を2つ有するジカルボン酸化合物、カルボキシル基を3つ有するトリカルボン酸化合物、カルボキシル基を4つ有するテトラカルボン酸化合物、カルボキシル基を5つ有するペンタカルボン酸化合物などが挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基を2つ有するジカルボン酸化合物が、現像性に優れ、微細パターン形成性の点で特に好ましい。
【0103】
前記カルボン酸化合物としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(8)で表される化合物が好適である。
【0104】
H−O−L200−L100−(COOH)n 一般式(8)
【0105】
ただし、前記一般式(8)中、L100及びnは、前記一般式(7)と同じ意味を表す。
【0106】
前記一般式(8)におけるL200は、単結合又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。前記アルキレン基としては、炭素原子数1〜20のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2〜10のアルキレン基がより好ましい。前記アルキレン基に導入可能な置換基としては、例えばハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、置換基を有していてもよいアルキル基、などが挙げられる。
【0107】
前記一般式(8)で表されるカルボン酸化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシへキサン酸、クエン酸、ジオール化合物と酸無水物の反応物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、リンゴ酸が特に好ましい。
前記ジオール化合物と酸無水物の反応物としては、例えば、下記構造式で表される化合物などが挙げられる。
【0108】
【化14】

【0109】
また、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂としては、ポリマー末端、主鎖に不飽和基を有するものも好適に使用される。ポリマー末端、主鎖に不飽和基を有することにより、更に、シリカ分散組成物と側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂との間、又は側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂間で架橋反応性が向上し、光硬化物強度が増す。その結果、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂をプリント基板材料に使用した際、耐久性に優れる。ここで、不飽和基としては、架橋反応の起こり易さから、不飽和基を有することが特に好ましい。
【0110】
ポリマー末端に不飽和基を導入する方法としては、以下に示す方法がある。即ち、上述した側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の合成の工程での、ポリマー末端の残存イソシアネート基と、アルコール類又はアミン類等で処理する工程において、不飽和基を有するアルコール類又はアミン類等を用いればよい。このような化合物としては、具体的には、先に、不飽和基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物として挙げられた例示化合物と同様のものを挙げることができる。
なお、不飽和基は、導入量の制御が容易で導入量を増やすことができ、また、架橋反応効率が向上するといった観点から、ポリマー末端よりもポリマー側鎖に導入されることが好ましい。
導入されるエチレン性不飽和結合基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、架橋硬化膜形成性の点で、メタクリロイル基、アクリロイル基、スチリル基が好ましく、メタクリロイル基、アクリロイル基がより好ましく、架橋硬化膜の形成性と生保存性との両立の点で、メタクリロイル基が特に好ましい。
また、メタクリロイル基の導入量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エチレン性不飽和基当量としては、0.05mmol/g〜3.0mmol/gが好ましく、0.5mmol/g〜2.7mmol/gがより好ましく、0.75mmol/g〜2.4mmol/gが特に好ましい。
【0111】
主鎖に不飽和基を導入する方法としては、主鎖方向に不飽和基を有するジオール化合物をポリウレタン樹脂の合成に用いる方法がある。前記主鎖方向に不飽和基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2−ブテン−1,4−ジオール、ポリブタジエンジオール、などが挙げられる。
【0112】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、該特定ポリウレタン樹脂とは異なる構造を有するポリウレタン樹脂を含むアルカリ可溶性高分子を併用することも可能である。例えば、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂は、は、主鎖及び/又は側鎖に芳香族基を含有したポリウレタン樹脂を併用することが可能である。
【0113】
前記(i)側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の具体例としては、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0293〕〜〔0310〕に示されたP−1〜P−31のポリマー、などが挙げられる。これらの中でも、段落〔0308〕及び〔0309〕に示されたP−27及びP−28のポリマーが好ましい。
【0114】
−−(ii)カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂−−
前記ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネートと、カルボン酸基含有ジオールとを必須成分とするカルボキシル基含有ポリウレタンと、分子中にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂である。目的に応じて、ジオール成分として、質量平均分子量300以下の低分子ジオール、質量平均分子量500以上の高分子ジオールを共重合成分として加えてもよい。
前記ポリウレタン樹脂を用いることにより、無機充填剤との安定した分散性及び耐クラック性及び耐衝撃性に優れることから、耐熱性、耐湿熱性、密着性、機械特性、電気特性が向上する。
また、前記ポリウレタン樹脂としては、置換基を有していてもよい二価の脂肪族及び芳香族炭化水素のジイソシアネートと、C原子及びN原子のいずれかを介してCOOH基と2つのOH基を有するカルボン酸含有ジオールとを必須成分とした反応物であって、得られた反応物と、−COO−結合を介して分子中にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応して得られるものであってもよい。
また、前記ポリウレタン樹脂としては、下記一般式(I)で示されるジイソシアネートと、下記一般式(II−1)〜(II−3)で示されるカルボン酸基含有ジオールから選ばれた少なくとも1種とを必須成分とし、目的に応じて下記一般式(III−1)〜(III−5)で示される質量平均分子量が80〜8,000、好ましくは80〜3,000の範囲にある高分子ジオールから選ばれた少なくとも1種との反応物であって、得られた反応物と、下記一般式(IV−1)〜(IV−16)で示される分子中にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応して得られるものであってもよい。
【0115】
【化15】

【化16】

【0116】
ただし、前記一般式(I)中、Rは、置換基(例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲノ基のいずれかが好ましい)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を表す。必要に応じて、前記Rは、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エステル基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基のいずれかを有していてもよい。
前記一般式(II−1)中、Rは、水素原子、置換基(例えば、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、−I)、−CONH、−COOR、−OR、−NHCONHR、−NHCOOR、−NHCOR、−OCONHR、−CONHR(ここで、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜15のアラルキル基のいずれかを表す)、などの各基が含まれる)を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基を表す。これらの中でも、水素原子、炭素数1個〜3個のアルキル基、炭素数6個〜15個のアリール基が好ましい。
前記一般式(II−1)及び(II−2)中、R、R及びRは、それぞれ同一でも相異していてもよく、単結合、置換基(例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲノ基の各基が好ましい)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を表す。これらの中でも、炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜8個のアルキレン基が更に好ましい。また、必要に応じて、前記R、R及びR中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、カルボニル基、エステル基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基、エーテル基のいずれかを有していてもよい。なお、前記R、R、R及びRのうちの2個又は3個で環を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を表し、炭素数6個〜15個の芳香族基が好ましい。
【0117】
【化17】

【0118】
ただし、前記一般式(III−1)〜(III−3)中、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ同一でもよいし、相異していてもよく、二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を表す。前記R、R、R10及びR11は、それぞれ炭素数2個〜20個のアルキレン基又は炭素数6個〜15個のアリーレン基が好ましく、炭素数2個〜10個のアルキレン又は炭素数6個〜10個のアリーレン基がより好ましい。前記Rは、炭素数1個〜20個のアルキレン基又は炭素数6個〜15個のアリーレン基を表し、炭素数1個〜10個のアルキレン又は炭素数6個〜10個のアリーレン基がより好ましい。また、前記R、R、R、R10及びR11中には、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エーテル基、カルボニル基、エステル基、シアノ基、オレフィン基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基、又はハロゲン原子などがあってもよい。前記一般式(III−4)中、R12は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノ基又はハ
ロゲン原子を表す。水素原子、炭素数1個〜10個のアルキル基、炭素数6個〜15個のアリール基、炭素数7個〜15個のアラルキル、シアノ基又はハロゲン原子が好ましく、水素原子、炭素数1個〜6個のアルキル及び炭素数6個〜10個のアリール基がより好ましい。また、前記R12中には、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、アルコキシ基、カルボニル基、オレフィン基、エステル基又はハロゲン原子などがあってもよい。
前記一般式(III−5)中、R13は、アリール基又はシアノ基を表し、炭素数6個〜10個のアリール基又はシアノ基が好ましい。前記一般式(III−4)中、mは、2〜4の整数を表す。前記一般式(III−1)〜(III−5)中、n、n、n、n及びnは、それぞれ2以上の整数を表し、2〜100の整数が好ましい。前記一般式(III−5)中、nは、0又は2以上の整数を示し、0又は2〜100の整数が好ましい。
【0119】
【化18】

【化19】

【0120】
ただし、前記一般式(IV−1)〜(IV−16)中、R14は、水素原子又はメチル基を表し、R15は、炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R16は、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。pは、0又は1〜10の整数を表す。
【0121】
また、前記ポリウレタン樹脂は、更に第5成分として、カルボン酸基非含有の低分子量ジオールを共重合させてもよく、該低分子量ジオールとしては、前記一般式(III−1)〜(III−5)で表され、質量平均分子量が500以下のものである。該カルボン酸基非含有低分子量ジオールは、アルカリ溶解性が低下しない限り、また、硬化膜の弾性率が十分低く保つことができる範囲で添加することができる。
【0122】
前記ポリウレタン樹脂としては、特に、前記一般式(I)で示されるジイソシアネートと、前記一般式(II−1)〜(II−3)で示されるカルボン酸基含有ジオールから選ばれた少なくとも1種とを必須成分とし、目的に応じて、前記一般式(III−1)〜(III−5)で示される質量平均分子量が800〜3,000の範囲にある高分子ジオールから選ばれた少なくとも1種、前記一般式(III−1)〜(III−5)で示される質量平均分子量が500以下のカルボン酸基非含有の低分子量ジオールとの反応物に、更に一般式(IV−1)〜(IV−16)のいずれかで示される分子中に1個のエポキシ基と少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有する化合物を反応して得られる、酸価が20mgKOH/g〜120mgKOH/gであるアルカリ可溶性光架橋性ポリウレタン樹脂が好適である。
【0123】
前記ポリウレタン樹脂は、上記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を、非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知の触媒を添加し、加熱することにより合成される。合成に使用されるジイソシアネート及びジオール化合物のモル比(Ma:Mb)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1:1〜1.2:1が好ましく、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、分子量あるいは粘度といった所望の物性の生成物が、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0124】
前記ポリウレタン樹脂におけるエチレン性不飽和結合の導入量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エチレン性不飽和基当量としては、0.05mmol/g〜3.0mmol/gが好ましく、0.5mmol/g〜2.7mmol/gがより好ましく、0.75mmol/g〜2.5mmol/gが特に好ましい。更に、前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂には、前記エチレン性不飽和結合基とともに、側鎖にカルボキシル基が導入されていることが好ましい。前記酸価としては、20mgKOH/g〜120mgKOH/gが好ましく、30mgKOH/g〜110mgKOH/gがより好ましく、35mgKOH/g〜100mgKOH/gが特に好ましい。
【0125】
前記側鎖にエチレン性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量平均分子量で3、000〜60,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、4,000〜30,000が特に好ましい。特に、前記組成物を感光性ソルダーレジストに用いた場合には、無機充填剤との分散性に優れ、クラック耐性と耐熱性にも優れ、アルカリ性現像液による非画像部の現像性に優れる。
【0126】
−カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応して得られるポリウレタン樹脂の合成法−
前記ポリウレタン樹脂の合成方法としては、上記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知な触媒を添加し、加熱することにより合成される。使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は好ましくは、0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最絡的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0127】
−−ジイソシアネート−−
前記一般式(I)で示されるジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0021〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0128】
−−高分子量ジオール−−
前記一般式(III−1)〜(III−5)で示される高分子量ジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0022〕〜〔0046〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0129】
−−カルボン酸基含有ジオール−−
また、前記一般式(II−1)〜(II−3)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0047〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0130】
−−カルボン酸基非含有低分子量ジオール−−
前記カルボン酸基非含有低分子量ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0048〕に記載された化合物、などが挙げられる。
前記カルボン酸基非含有ジオールの共重合量としては、低分子量ジオール中の95モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、50%モル以下が特に好ましい。前記共重合量が、95モル%を超えると現像性のよいウレタン樹脂が得られないことがある。
【0131】
前記(ii)カルボキシル基含有ポリウレタンと分子中にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂の具体例としては、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0314〕〜〔0315〕に示されたU1〜U4、U6〜U11のポリマーにおけるエポキシ基及びエチレン性不飽和基含有化合物としてのグリシジルアクリレートを、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(商品名:サイクロマーA400、ダイセル化学社製)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(商品名:サイクロマーM400(ダイセル化学社製))に代えたポリマー、などが挙げられる。
【0132】
−−酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の含有量−−
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の前記シリカ分散組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜80質量%が好ましく、10質量%〜75質量%がより好ましく、15質量%〜70質量%が特に好ましい。
前記含有量が、5質量%未満であると、耐クラック性が良好に保つことができないことがあり、80質量%を超えると、耐熱性が破綻をきたすことがある。一方、前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、良好な耐クラック性と耐熱性の両立の点で有利である。
【0133】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3、000〜60,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、4,000〜30,000が特に好ましい。前記質量平均分子量が、3,000未満であると、硬化膜の高温時の十分な低弾性率が得られないことがあり、60,000を超えると、塗布適性及び現像性が悪化することがある。
ここで、前記質量平均分子量は、例えば、高速GPC装置(東洋曹達社製、HLC−802A)を使用して、0.5質量%のTHF溶液を試料溶液とし、カラムはTSKgel HZM−M 1本を使用し、200μLの試料を注入し、前記THF溶液で溶離して、25℃で屈折率検出器あるいはUV検出器(検出波長254nm)により測定することができる。次に、標準ポリスチレンで較正した分子量分布曲線より質量平均分子量を求めることができる。
【0134】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20mgKOH/g〜120mgKOH/gが好ましく、30mgKOH/g〜110mgKOH/gがより好ましく、35mgKOH/g〜100mgKOH/gが特に好ましい。前記酸価が、20mgKOH/g未満であると、現像性が不十分となることがあり、120mgKOH/gを超えると、現像速度が高すぎるため現像のコントロールが難しくなることがある。
ここで、前記酸価は、例えば、JIS K0070に準拠して測定することができる。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒としてジオキサン又はテトラヒドロフランなどを使用する。
【0135】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂のエチレン性不飽和基当量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mmol/g〜3.0mmol/gが好ましく、0.5mmol/g〜2.7mmol/gがより好ましく、0.75mmol/g〜2.5mmol/gが特に好ましい。前記エチレン性不飽和基当量が、0.05mmol/g未満であると、硬化膜の耐熱性が劣ることがある。
ここで、前記エチレン性不飽和基当量(代表的にはビニル基当量)は、例えば、臭素価を測定することにより求めることができる。なお、前記臭素価は、例えば、JIS K2605に準拠して測定することができる。臭素価で得られた測定する樹脂100gに対して付加した臭素(Br)のグラム数(gBr/100g)から、樹脂1g当たりの付加した臭素(Br)のモル数に変換した値である。
【0136】
−不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂−
前記不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第2877659号公報に記載されたもの、などが挙げられる。
【0137】
−酸変性エチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂−
前記酸変性エチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第4127010号公報(特開2004−133060号公報)に記載されたもの、などが挙げられる。
【0138】
−不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂−
前記不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、国際公開第2004/034147号パンフレットに記載されたもの、などが挙げられる。
【0139】
−ポリイミド前駆体−
前記ポリイミド前駆体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2010−6946号公報に記載されたもの、などが挙げられる。
【0140】
<重合性化合物>
本発明の組成物は重合性化合物を含有することが好ましい。
重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分子中に少なくとも1個の付加重合可能な基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。なお、この重合性化合物は、先に説明したバインダー樹脂とは異なる化合物で、例えば分子量が1000以下のモノマーもしくはオリゴマー、好ましくはモノマーであることが好ましい。
【0141】
前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレート;単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報、特開昭51−37193号公報などの各公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報などの各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能アクリレート及びメタクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートが特に好ましい。
重合性化合物としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を2個以上有するものやトリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートのように脂環を有する化合物が特に好ましい。
【0142】
前記重合性化合物の前記シリカ分散組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2質量%〜50質量%が好ましく、3質量%〜40質量%がより好ましく、4質量%〜35質量%が特に好ましい。
前記含有量が、2質量%未満であると、パターン形成ができないことがあり、50質量%を超えると、耐クラック性が劣ることがある。一方、前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、良好なパターン形成と耐クラック性とを両立できる点で有利である。
【0143】
<光重合開始剤>
本発明に用いられる組成物は光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの)、ホスフィンオキサイド、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、などが挙げられる。
【0144】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42,2924(1969)に記載された化合物、英国特許1388492号明細書に記載された化合物、特開昭53−133428号公報に記載された化合物、独国特許3337024号明細書に記載された化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.,29,1527(1964)に記載された化合物、特開昭62−58241号公報に記載された化合物、特開平5−281728号公報に記載された化合物、特開平5−34920号公報に記載された化合物、などが挙げられ、前記オキサジアゾール骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、米国特許第4212976号明細書に記載された化合物、などが挙げられる。
【0145】
前記オキシム誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0085〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0146】
前記ケトン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0087〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0147】
また、上記以外の光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0086〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0148】
また、後述する感光層への露光における露光感度及び感光波長を調整する目的で、前記光重合開始剤に加えて、増感剤を添加することが可能である。
前記増感剤は、後述する光照射手段としての可視光線、紫外光レーザ、可視光レーザなどにより適宜選択することができる。
前記増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、他の物質(例えば、ラジカル発生剤、酸発生剤など)と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動など)することにより、ラジカル、酸などの有用基を発生することが可能である。
【0149】
前記増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0089〕に記載された化合物、などが挙げられる。
【0150】
前記光重合開始剤と前記増感剤との組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
【0151】
前記増感剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記シリカ分散組成物中の全成分に対し、0.05質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.2質量%〜10質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.05質量%未満であると、活性エネルギー線への感度が低下し、露光プロセスに時間がかかり、生産性が低下することがあり、30質量%を超えると、保存時に前記感光層から前記増感剤が析出してしまうことがある。
【0152】
前記光重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤の特に好ましい例としては、ホスフィンオキサイド類、前記α−アミノアルキルケトン類、前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物と後述する増感剤としてのアミン化合物とを組合せた複合光開始剤、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、あるいは、チタノセン、などが挙げられる。
【0153】
前記光重合開始剤の前記シリカ分散組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が特に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、露光部が現像中に溶出する傾向があり、20質量%を超えると、耐熱性が低下することがある。一方、前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、良好なパターン形成ができ、耐熱性も良好になる点で有利である。
【0154】
<その他の成分>
本発明に用いられる組成物はその他の成分を含んでもよい。
このような成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性エラストマー、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(着色顔料あるいは染料)などが挙げられ、更に基材表面への密着促進剤、又はその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。
これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする感光性フィルムの安定性、写真性、膜物性などの性質を調整することができる。
【0155】
前記熱可塑性エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びシリコーン系エラストマー、などが挙げられる。
これらのエラストマーは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分から成り立っており、一般に前者が耐熱性、強度に、後者が柔軟性、強靭性に寄与している。
前記熱可塑性エラストマーとしては、特開2007−199532号公報の段落〔0197〕〜〔0207〕に記載されている。
前記フィラーについては、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0098〕〜〔0099〕に詳細に記載されている。
前記熱重合禁止剤については、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0101〕〜〔0102〕に詳細に記載されている。
前記熱硬化促進剤については、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0093〕に詳細に記載されている。
前記可塑剤については、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0103〕〜〔0104〕に詳細に記載されている。
前記着色剤については、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0105〕〜〔0106〕に詳細に記載されている。
前記密着促進剤については、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0107〕〜〔0109〕に詳細に記載されている。
【0156】
(感光性フィルム)
本発明に用いられる組成物は、導体配線の形成された基板上に塗布乾燥することにより液状レジストとしても使用可能であるが、感光性フィルムの製造に特に有用である。
前記感光性フィルムは、少なくとも支持体と、感光層とを有してなり、好ましくは保護フィルムを有してなり、更に必要に応じて、クッション層、酸素遮断層(以下、PC層と省略する)などのその他の層を有してなる。
前記感光性フィルムの形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記支持体上に、前記感光層、及び前記保護膜フィルムをこの順に有してなる形態、前記支持体上に、前記PC層、前記感光性層、及び前記保護フィルムをこの順に有してなる形態、前記支持体上に、前記クッション層、前記PC層、前記感光層、及び前記保護フィルムをこの順に有してなる形態、などが挙げられる。なお、前記感光層は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。
【0157】
<感光層>
前記感光層は、本発明に用いられる前記シリカ分散組成物から形成される。
前記感光層の70℃における溶融粘度としては、1.4×10Pa・s以下が好ましく、1.0×10Pa・s以下がより好ましく、6.0×10Pa・s以下が更に好ましい。
前記感光層の70℃における溶融粘度が、1.4×10Pa・sを超えると、埋め込み性が悪化することがあり、前記70℃における溶融粘度が、より好ましい範囲であると、埋め込み性が充分得られる点で有利である。
前記感光層の30℃における溶融粘度としては、1.0×10Pa・s以上が好ましく、1.3×10Pa・s以上がより好ましく、3.0×10Pa・s以上が更に好ましい。
前記感光層の30℃における溶融粘度が、1.0×10Pa・s未満であると、エッジヒュージョンが悪化することがあり、前記30℃における溶融粘度が、より好ましい範囲であると、埋め込み性とエッジヒュージョンを両立できる点で有利である。
【0158】
ここで、前記感光層の溶融粘度の測定は、例えば、レオメーター・VAR−1000型(レオロジカル株式会社製)、バイブロン・DD−III型(東洋ボールドウイン株式会社製)などの溶融粘度測定装置を用いて測定することができる。詳細は、特開2007−2030号公報の段落「0115」〜段落「0127」に記載された通りである。
【0159】
<永久パターン及び永久パターン形成方法>
本発明で用いられる永久パターンは、前記永久パターン形成方法により得られる。
前記永久パターンとしては、特開2007−2030号公報の段落〔0128〕〜〔0283〕に記載されている。
【0160】
<プリント基板>
本発明で用いられるプリント基板は、少なくとも基体と、前記永久パターン形成方法により形成された永久パターンとを有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、その他の構成を有してなる。
その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基体と前記永久パターン間に、更に絶縁層が設けられたビルドアップ基板などが挙げられる。
【実施例】
【0161】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0162】
−ポリウレタンバインダーの合成−
下記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂を合成した。
【0163】
【化20】

【0164】
<酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂PU1の合成と樹脂溶液の調整>
コンデンサー、及び撹拌機を備えた1Lの3つ口丸底フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)9.6g、グリセロールモノメタクリレート(GLM)29.6、リンゴ酸4.0gをシクロヘキサノン76gに溶解した。これに、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)50.1g、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)8.4g、2,6-ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン0.3g、及び触媒として、商品名:ネオスタンU−600(日東化成社製、無機ビスマス)0.3gをシクロヘキサノン77gと共に添加し、75℃にて、5時間加熱撹拌した。
酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂PU1の質量平均分子量は12000であった。固形分の酸価は68.9mmol/gであり、固形分のエチレン性不飽和基当量は1.82であった。
【0165】
<酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂PU2の合成と樹脂溶液の調整>
上記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂PU1の合成において、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を使用し、リンゴ酸を抜き、これらの添加量を変更することで、上記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂PU1と同様に変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂PU2を合成した。
酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂PU2の質量平均分子量は13000であり、固形分の酸価は63.3mmol/gであり、固形分のエチレン性不飽和基当量は1.46であった。
【0166】
−アクリル樹脂分散剤の合成−
<マクロモノマーの合成>
ε−カプロラクトン250g、2−エチルヘキサノール14.3g、モノブチルすずオキシド0.125gを500mLの3つ口丸底フラスコに入れ、90℃で4時間撹拌し、110℃で4時間撹拌し、80℃に温度を下げ、昭和電工(株)製MOI 17.3g、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン0.07gを入れ、2時間撹拌した。シクロへキサノン650gで希釈し、ポリエステルマクロモノマーを得た。マクロモノマーの分子量はMn3100であった。
【0167】
<分散剤P−1の合成>
三つ口フラスコにシクロヘキサノン36gを入れた後、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルエステル21.6g、ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル24.8g、マクロモノマー溶液112g、Dimethyl 2,2’−Azobis(isobutyrate)1.28g、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルへキシルエステル3.2gを混合した液を80℃、窒素気流下、1時間半かけて滴下し、3時間撹拌した後、シクロヘキサノン200gを加え、分散剤溶液P−1を得た。
分散剤溶液P−1における例示ポリマーP−1の固形分濃度は20%である。
【0168】
<分散剤P−11の合成>
三つ口フラスコにシクロヘキサノン36gを入れた後、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルエステル21.6g、ヘキサヒドロフタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル24.8g、東亜合成(株)製マクロモノマーAS−6 33.6g、Dimethyl 2,2’−Azobis(isobutyrate)1.28g、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルへキシルエステル3.2g、シクロヘキサノン78gを混合した液を80℃、窒素気流下、1時間半かけて滴下。3時間撹拌した後、シクロヘキサノン200gを加え、分散剤溶液P−11を得た。
分散剤溶液P−11における例示ポリマーP−11の固形分濃度は20%である。
【0169】
<エラストマーE−1の合成>
テレフタル酸ジメチル699質量部、イソフタル酸ジメチル524質量部、アジピン酸ジメチル226質量部、セバシン酸ジメチル553質量部、2,2−ジメチルプロパンジオール417質量部、ブタンジオール324質量部、エチレングリコール769質量部、酸化防止剤として、イルガノックス1330(チバジャパン株式会社製)2質量部、及びテトラブチルチタネート0.9質量部を反応器内で混合させ、攪拌下室温から260℃まで2時間かけて昇温し、その後260℃で1時間加熱しエステル交換反応を行った。次いで、反応器内を徐々に減圧にすると共に昇温し、30分間かけて245℃、0.5〜2torrにして初期重縮合反応を行った。更に、245℃、0.5〜2torrの状態で4時間重合反応を行った後、乾燥窒素を導入しながら30分間かけて常圧へ戻し、ポリエステルをペレット状に取り出し、ポリエステル樹脂E−1を得た。得られたポリエステル樹脂E−1をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて60質量%の固形分濃度となるように希釈溶解し、ポリエステル樹脂E−1溶液を得た。
得られたポリエステル樹脂E−1のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した質量平均分子量(ポリスチレン標準)は3.4万であった。
【0170】
<アミン価の測定方法>
各シリカ分散剤0.7gを100mLビーカーにはかりとり、酢酸60mLを加え、撹拌して溶解させた。測定温度を25℃に調整後、滴定試薬として0.1N過塩素酸酢酸を用いて、滴定装置で滴定し、アミン価を測定した。
【0171】
<酸価の測定>
各シリカ分散剤0.7gを100mLビーカーにはかりとり、THF/水=5/1(体積比)の溶液60mLを加え、撹拌して溶解させた。測定温度を25℃に調整した後、滴定試薬として0.1NのNaOH水溶液を用いて、滴定装置で滴定し、酸価を測定した。
【0172】
実施例1
−シリカ分散組成物溶液の組成−
上記で合成したポリウレタンバインダー樹脂溶液PU1(40%) 32.3質量部
着色顔料:HELIOGEN BLUE D7086(BASF社製)
0.021質量部
着色顔料:Pariotol Yellow D0960(BASF社製)
0.006質量部
分散剤:分散剤P−1溶液 0.22質量部
重合性化合物:DCP−A(共栄社化学社製) 5.3質量部
開始剤:イルガキュア907(BASF(株)製) 0.6質量部
増感剤:DETX−S(日本化薬株式会社製) 0.005質量部
反応助剤:EAB−F(保土ヶ谷化学(株)製) 0.019質量部
硬化剤:メラミン(和光純薬製) 0.16質量部
熱架橋剤:エポトートYDF−170(東都化成(株)製) 2.9質量部
フィラー:SO−C2(アドマテックス社製) 16.0質量部
イオントラップ剤:IXE−6107(東亞合成製) 0.82質量部
塗布助剤:メガファックF−780F 0.2質量部
(大日本インキ(株)製:30質量%メチルエチルケトン溶液)
エラストマーE−1 2.7質量部
シクロヘキサノン(溶媒) 38.7質量部
【0173】
−感光性フィルムの製造−
支持体としての厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、16FB50)上に、上記の組成からなるシリカ分散組成物溶液を塗布し、乾燥させて、前記支持体上に厚み30μmの感光層を形成した。前記感光層上に、保護層として厚み20μmのポリプロピレンフィルム(王子特殊紙株式会社製、アルファンE−200)を積層し、感光性フィルムを製造した。
【0174】
−基体への積層−
前記基体として、銅張積層板(スルーホールなし、銅厚み12μm)の表面に化学研磨処理を施して調製した。該銅張積層板上に、前記感光性フィルムの感光層が前記銅張積層板に接するようにして前記感光性フィルムにおける保護フィルムを剥がしながら、真空ラミネータ(ニチゴーモートン株式会社製、VP130)を用いて積層させ、前記銅張積層板と、前記感光層と、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)とがこの順に積層された積層体を調製した。
圧着条件は、真空引きの時間40秒、圧着温度70℃、圧着圧力0.2MPa、加圧時間10秒とした。
【0175】
得られた各感光性フィルム及び積層体について、以下のようにして、溶融粘度、埋め込み性、現像性(未露光部)、解像性(露光下部)、絶縁性、及び耐熱衝撃性(TCT)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0176】
<溶融粘度の測定>
ここでは、各感光性フィルムについて、レオメーター・VAR−1000型(レオロジカル株式会社製)を用いて、下記条件により溶融粘度の測定を行った。
−溶融粘度の測定条件−
直径20mmのプレートを用い歪0.005、周波数1Hzで溶融粘弾性を測定した。温度範囲を25℃〜85℃とし、5℃/分の昇温速度で測定を行った。なお、表1中の溶融粘度は、70℃での値を示す。
【0177】
<埋め込み性の評価>
L/S(ライン/スペース)=50μm/50μmの配線パターン間への感光層の埋め込み状態を、光学顕微鏡を用いて50倍〜200倍の倍率で観察し、下記基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:感光性フィルムが、前記パターン回路とベースフイルムとの段差を埋め込み、前記感光性フィルムと前記回路付き銅張り積層板との間に隙間ができていない場合
△:前記感光性フィルムと上記回路付き銅張り積層板との間に隙間が生じている場合、又はパターン回路と感光性積層体との間に空気の泡等が生じている場合
×:溶融粘度が高すぎてラミネートできない場合
【0178】
<現像性及び解像性の評価>
前記感光性積層体を室温(23℃)で55%RHにて10分間静置した。得られた感光性積層体のポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上から、回路基板用露光機EXM−1172(オーク製作所製)を用いて、直径の幅50μm〜200μmの丸穴パターンを有するフォトマスク越しに40mJ/cmで露光を行った。
この際の露光量は、前記感度の評価における前記感光性フィルムの感光層を硬化させるために必要な光エネルギー量である。室温にて10分間静置した後、前記感光性積層体からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取った。
銅張積層板上の感光層の全面に、前記現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて前記最短現像時間の2倍の時間スプレーし、未硬化領域を溶解除去した。
このようにして得られた硬化樹脂パターン付き銅張積層板の表面を光学顕微鏡で観察し、パターンの丸穴底部に残渣が無いこと、パターン部の捲くれ・剥がれなどの異常が無く、かつスペース形成可能な最小の丸穴パターン幅を測定し、これを解像度とし、下記基準で評価した。該解像度は数値が小さいほど良好である。
〔現像性の評価基準〕
現像時間:最短現像時間を目視で評価した。
残渣については、以下の基準で評価した。
○:残渣なし
△:若干壁及び底面に残渣が見られる
×:残渣が明確に見られる
〔解像性の評価基準〕
○:直径90μm以下の丸穴が解像可能で、解像性に優れている
△:直径200μm以下の丸穴が解像可能で、解像性がやや劣る
×:丸穴が解像不可で、解像性が劣る
【0179】
<絶縁性(HAST)>
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント基板の銅箔にエッチングを施して、ライン幅/スペース幅が50μm/50μmであり、互いのラインが接触しておらず、互いに対向した同一面上の櫛形電極を得た。この基板の櫛形電極上にソルダーレジスト層を定法にて形成し、最適露光量(40mJ/cm)で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液にて20秒間スプレー現像を行った。続いて、オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で感光層に対する紫外線照射を行った。更に感光層を150℃で60分間加熱処理を行うことにより、ソルダーレジストを形成した評価用基板を得た。
加熱後の評価用積層体の櫛形電極間に電圧が印加されるように、ポリテトラフルオロエチレン製のシールド線をSn/Pbはんだによりそれらの櫛形電極に接続した後、評価用積層体に50Vの電圧を印可した状態で、該評価用積層体を130℃で85%RHの超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に200時間静置した。その後の評価用積層体のソルダーレジストのマイグレーションの発生程度を100倍の金属顕微鏡により観察した。〔評価基準〕
○:マイグレーションの発生が確認できず、絶縁性に優れる。
△:マイグレーションの発生が確認され、絶縁性にやや劣る。
×:電極間が短絡し、絶縁性に劣る。
【0180】
<耐熱衝撃性(耐クラック性)(TCT)>
信頼性試験項目として、温度サイクル試験(TCT)によりクラック及び剥れ等の外観を評価した。TCTは気相冷熱試験機を用い、電子部品モジュールを温度が−55℃及び125℃の気相中に各30分間放置し、これを1サイクルとして1,000サイクル及び1,500サイクルの条件で行い、以下の基準で耐熱衝撃性を評価した。
〔評価基準〕
○:クラック発生無し
△:浅いクラック発生有り
×:深いクラック発生有り
【0181】
実施例2〜8及び比較例1〜3
実施例1において、下記表1に示すように、シリカ分散剤P−1を、本発明のシリカ分散剤P−2〜P−4、P−11、P−12、比較のシリカ分散剤P−a〜P−cにそれぞれ代え、実施例6ではバインダーをPU2に、実施例7ではシリカ含率を16%に代えた以外は、実施例1と同様にして、下記表1の組合せの実施例2〜8及び比較例1〜3の感光性フィルム、積層体、及び永久パターンを製造した。
得られた各感光性フィルム及び積層体について、実施例1と同様にして、溶融粘度、埋め込み性、現像性(未露光部)、解像性(露光下部)、絶縁性、及び耐熱衝撃性(TCT)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0182】
【表1】

【0183】
酸価の1mmol/gは56.11KOHmg/gである。また、解像性は露光下部の強さおよび壁面の粗さを意味する。
また、比較の分散剤P−a〜P−cは以下の構造であり、いずれも分散剤の固形分濃度が20%のシクロヘキサノン溶液を使用した。なお、数値は質量%であり、xは重合度であって、1〜50である。
【0184】
【化21】

【0185】
上記表1から明らかなように、本発明の分散剤は、優れた分散性を示し、この結果、本発明の分散剤でシリカ微粒子を安定かつ高密度に分散でき、これを含む組成物を使用して得られた感光性フイルムは溶融粘度が増大することなく、ソルダーレジストのような感光性フイルムとしての埋め込み性、現像性、絶縁性および耐熱衝撃性(TCT)に優れた性能を示すことがわかる。特に本発明の分散剤は芳香環または脂環を有する酸性基を有することにより、露光部の解像性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアクリル樹脂とシリカ微粒子を含有してなり、該アクリル樹脂が塩基性基と酸性基をそれぞれ有し、該酸性基が芳香環または脂環を有する酸性基であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記酸性基が、カルボキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸性基が、芳香環または脂環に直結していることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸性基が、6員の脂環に直結していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アクリル樹脂が、該樹脂の側鎖に、ないしは主鎖末端にグラフト鎖を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記シリカ微粒子の平均粒径(d50)が0.02μm〜3.0μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
熱架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
バインダー、重合性化合物および光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ソルダーレジスト用であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、バインダーとして酸変性のエチレン性不飽和基を含有する樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、バインダーとして酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を含む感光層を支持体上に有してなることを特徴とする感光性フィルム。
【請求項13】
基体上に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を含む感光層を有することを特徴とする感光性積層体。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物により形成された感光層に対して露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法。
【請求項15】
請求項14に記載の永久パターン形成方法で形成されてなることを特徴とするプリント基板。

【公開番号】特開2012−255111(P2012−255111A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129643(P2011−129643)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】