説明

組電池システム、組電池の充電方法及び充電式掃除機

【課題】組電池のサイクル特性が向上される組電池システム、組電池の充電方法及び充電式掃除機を提供する。
【解決手段】25℃環境下で1Cにて定電流充電を行った場合のSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)が満充電電圧VH1に達する時に20(mV/%SOC)よりも大きい単電池を少なくとも1個備える複数の電池ユニットが直列接続された組電池3と、前記組電池3に充電電流を供給するための電流供給手段と、前記単電池の電圧を検出し得る電圧検出手段4と、前記電圧検出手段4により検出された前記単電池の電圧のうち最大値Vmaxが前記満充電電圧VH1に達するまで前記充電電流を電流値I1に制御した後、前記組電池3の電圧を次式(1)に示す電圧値V2に制御する電流電圧制御手段とを具備することを特徴とする組電池システム。 V2=VH2×n (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池が少なくとも直列に接続された組電池を備えた組電池システムと、この組電池システムを用いた充電式掃除機と、組電池の充電方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコン(PC)などの小型情報機器用の電源として、高エネルギー密度の二次電池が開発され、利用されている。それぞれの機器に必要な電圧及び電流に応じ、組電池を構成する二次電池(単電池)の本数を変更したり、直列接続や並列接続の仕方を変えたりすることが行われている。上記のような小型情報機器の電源電圧は数Vから10V程度であるため、二次電池を単独で使用するか、複数の二次電池を直列に接続した組電池を使用するにしても2〜3直列程度がほとんどであった。しかし近年、二次電池の用途は情報機器にとどまらず、家電、パワーツール、アシスト自転車、ハイブリッド自動車など、高出力化、高電圧化の方向へと急速に広がりを見せている。これに伴い、組電池の直列数も増加し、10本以上の二次電池を直列接続して使用する場合も珍しくない。
【0003】
電池を直列接続した場合、問題になるのは、単セル間のばらつきである。ばらつきには、容量ばらつき、インピーダンスばらつき、SOC(充電状態)ばらつきなど色々な観点があるが、特に不具合につながりやすい問題として、充電状態における電圧ばらつきがある。容量の異なる電池を直列接続したり、SOCがずれた状態で接続すると、組電池の満充電状態において、電圧が平均より高い単電池と低い単電池が生じ、電圧が高い単電池は過充電状態となって、劣化が大きくなってしまう。このような充電を繰り返すと、過充電により劣化が大きくなった単電池は容量が低下するため、さらに過充電され、加速度的に劣化が進行してしまう。結果として、組電池のサイクル寿命は、単電池の寿命より著しく短くなるという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、ニッケル水素電池の組電池においては、均等化充電と呼ばれる充電を適宜行うことにより、充電状態での電圧ばらつきを解消するという方法が一般にとられている。ニッケル水素電池は、満充電に近い状態でさらに充電を継続しようとすると、電極材料の充電反応と、電解液中の水の分解・再結合反応とが競争反応となり、充電反応が進まなくなるという特徴がある。そのため、満充電を超えた領域での充電を、電池の劣化が起こらないように適切な充電条件で行えば、電池内部での電気化学的な電流バイパス機能を利用し、直列接続した組電池の充電電圧をそろえることができる。このような均等化充電の方法について多数の公知例があるが、例えば特許文献1などを挙げることができる。
【0005】
一方、非水電解質を用いた二次電池やキャパシタにおいては、一般に充放電のクーロン効率はほぼ100%であり、ニッケル水素電池のような電池内部での電流バイパス機能は期待できない。このような場合に対しては、電池の外部回路として、各電池をバイパスする平均化回路を設け、一定電圧を超えた単電池に対しては充電電流をバイパスすることにより、充電電圧のばらつきを抑える方法が提案されている。例えば、特許文献2には、複数の単電池を直列に接続した組電池において、各単電池に並列となるようにツェナーダイオードを接続し、そのツェナー電圧を超えた単電池の充電電流をバイパスするという技術が開示されている。
【0006】
しかし、このような方法をとったとしても、次のような問題から効果的に単電池の充電電圧ばらつきを解消することは困難である。まず、ツェナーダイオードのように単一の素子で機能を実現しようとした場合、電池の充電電圧はツェナー電圧のばらつきに支配される。ツェナー電圧のばらつきを抑えることは、ばらつきの小さい電池を製造することと同様、困難である。また、ツェナー電圧に達したときのツェナー電流の立ち上がりは決して急峻でなく、必要な充電電圧よりも低い電圧からバイパス電流が流れてしまうため、数十mVのオーダーで電圧制御が必要な二次電池には適用しにくい。他の問題としては、組電池の容量が大きい、または急速充電を行う場合など、充電電流が大きい場合には、ツェナーダイオードでの電力消費が大きくなり、発熱等の問題で実現困難となる。以上のような問題を回避するには、バイパス回路をツェナーダイオードのような単一素子でなく、基準電圧やフィードバック制御などを備え、大電流スイッチ素子を適用したバイパス回路にすれば原理的には実現可能である。しかしながら、実際には電池の直列数が大きいと回路が非常に煩雑になるうえ、サイズやコストの面からも電池に対して大きくなりすぎ、実現困難である。
【0007】
上記のようなバイパス制御回路をICチップ化してコンパクトにまとめた場合には、直列数が多い組電池においても適用可能である。その反面、バイパス電流を大きくとることができなくなるため、非常にゆっくりとした平均化制御しかできなくなってしまう。特に、満充電電圧付近での電池容量に対する電圧変化率が大きい単電池を使用した場合、充電が進行すると電圧ばらつきが急激に拡大するため、バイパスによる電圧ばらつき抑制を期待するのに必要なバイパス電流が大きすぎる。そのため、バイパス回路のみで単電池充電電圧のばらつきを抑制することは非常に困難である。
【特許文献1】特開2001−314046号公報
【特許文献2】特開2002−238179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、組電池のサイクル特性が向上される組電池システム、組電池の充電方法及び充電式掃除機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る組電池システムは、25℃環境下で1Cにて定電流充電を行った場合のSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)が満充電電圧VH1に達する時に20(mV/%SOC)よりも大きい単電池を少なくとも1個備える複数の電池ユニットが直列接続された組電池と、
前記組電池に充電電流を供給するための電流供給手段と、
前記単電池の電圧を検出し得る電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された前記単電池の電圧のうち最大値Vmaxが前記満充電電圧VH1に達するまで前記充電電流を電流値I1に制御した後、前記組電池の電圧を下記(1)式に示す電圧値V2に制御する電流電圧制御手段と
を具備することを特徴とする。
【0010】
V2=VH2×n (1)
但し、VH2は、前記電圧変化率A(mV/%SOC)がA<20(mV/%SOC)からA=20(mV/%SOC)に達する時の前記単電池の電圧VM1よりも低い電圧値で、nは直列接続される前記電池ユニットの数である。
【0011】
本発明に係る充電式掃除機は、前記組電池システムを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る組電池の充電方法は、25℃環境下で1Cにて定電流充電を行った場合のSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)が満充電電圧VH1に達する時に20(mV/%SOC)よりも大きい単電池を少なくとも1個備える複数の電池ユニットが直列接続された組電池の充電方法であって、
前記各単電池の電圧のうち最大値Vmaxが前記満充電電圧VH1に達するまで電流値I1で定電流充電を施す第1の充電工程と、
前記組電池の電圧を下記(1)式に示す電圧値V2に制御する定電圧充電を施す第2の充電工程と
を具備することを特徴とする。
【0013】
V2=VH2×n (1)
但し、VH2は、前記電圧変化率A(mV/%SOC)がA<20(mV/%SOC)からA=20(mV/%SOC)に達する時の前記単電池の電圧VM1よりも低い電圧値で、nは直列接続される前記電池ユニットの数である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組電池のサイクル特性が向上された組電池システム、組電池の充電方法及び充電式掃除機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0016】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る組電池の充電方法を説明する。
【0017】
組電池は、少なくとも1個の単電池を備える複数の電池ユニットが直列接続されたものから形成される。電池ユニットが複数の単電池から構成されている場合、単電池同士を並列接続したものを1つの電池ユニットとすることが望ましい。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係る組電池の充電方法で単電池として使用される非水電解質二次電池を25℃環境下で1C充電した場合の充電曲線の一例である。ここで、1Cとは、単電池を1時間で放電しきるに要する電流値であり、便宜的には単電池の公称容量の数値を1C電流値と置き換えることができる。図1の横軸が非水電解質二次電池の充電状態(SOC)を示し、縦軸が非水電解質二次電池の電圧(閉回路電圧)を示す。SOCは、満充電容量に対する単電池の充電容量の比である。満充電容量には、単電池の公称容量が使用される。図1に示す通り、25℃環境下で1C充電した際の充電曲線におけるSOCに対する電圧変化率A(電圧は閉回路電圧)は、満充電電圧VH1(V)に達する時に20(mV/%SOC)よりも大きな値となっている。例えば電圧変化率Aが100(mV/%SOC)である場合、満充電付近でのSOCばらつきが1%あると電圧のばらつきが100mV発生することになる。従って、組電池の電流及び電圧に対して定電圧定電流制御を行うと、制御電圧よりも高い電圧を持つ単電池は容易に過充電に陥り、著しく劣化する。ここで、電圧変化率Aは、SOCと電池電圧の関係において、あるSOC・電圧の一点における、電圧をSOCで微分した微分値である。言い換えれば、SOC対電圧で表した充電曲線においては、曲線上のある点での傾きが、電圧変化率Aということになる。ここでは、SOCの単位を(%)、電池電圧の単位を(mV)としたとき、電圧変化率Aの単位を(mV/%SOC)と表記することとする。
【0019】
第1の充電工程として、任意に設定した充電電流I1で各単電池の電圧のうちの最大値Vmax(V)がVH1(V)に達するまで定電流充電を行う。通常、非水電解質二次電池の組電池においては、安全性確保のため、各単電池の電圧を監視する機能を持っている。従って、単電池電圧の最大値がある値に達したことを検知することは比較的容易である。この時点で第1の充電工程を終了すれば、第1の充電工程で過充電される単電池が発生することはない。第1の充電工程での充電電流は比較的小さいため、充電時間を長くすると公称容量に近い容量を充電することが可能である。しかしながら、急速充電を行う場合などのように充電電流が大きい場合には、第1の充電工程で充電されうる容量は公称容量よりもずっと小さいため、これだけで充電完了とすることはできない。第1の充電工程での充電電流I1は、組電池のSOCが0%から80%に達した際の充電時間が20分以内となるように設定することが望ましい。具体的には、5C以上にすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、10C以上である。なお、組電池を構成する単電池それぞれが持つSOCが同じでなく、ばらつきが存在する場合、組電池のSOCは、組電池を構成する単電池のSOCのうち最も低い値のSOCとする。この場合、組電池のSOCが0%から80%に達した際の充電時間は、組電池を構成する単電池のSOCのうち最低SOC値が、80%に達するまでに要する充電時間を意味する。
【0020】
第2の充電工程として、組電池の電圧を下記(1)式に示す電圧値V2(V)に制御する定電圧充電を行う。
【0021】
V2=VH2×n (1)
但し、VH2は、前記電圧変化率A(mV/%SOC)がA<20(mV/%SOC)からA=20(mV/%SOC)に達する時の前記単電池の電圧VM1よりも低い電圧値(V)で、nは直列接続される電池ユニットの数である。
【0022】
このとき、組電池は単電池1つあたりVM1(V)よりも低い電圧で定電圧充電されることになる。単電池電圧がVM1(V)よりも低いとき、単電池のSOCに対する電圧変化率Aは20(mV/%SOC)よりも小さい。従って、仮にSOCばらつきが5%あっても電圧のばらつきは100mVよりも小さく抑えられることになる。また、単電池電圧をVM1(V)よりも小さい値に設定しているため、単電池電圧がわずかにばらついたとしても満充電電圧VH1(V)を超えて過充電に至ることがない。さらに、単電池電圧をVM1(V)よりも低い値に制御した結果、充電電流は特に制限しなくてもI1よりも小さくなり、充電器や電池に与えるダメージを少なくすることができる。
【0023】
また、第2の充電工程では、定電圧充電の前に、充電電流値I1よりも低い値I2(I2<I1)に制御する定電流充電を行うこともできる。これにより、充電末期の単電池間の電圧ばらつきをより小さくすることができるため、組電池のサイクル特性をより向上することができる。
【0024】
仮に、第1の充電工程を省略し、第2の充電工程のみで充電を行った場合でも、単電池電圧のばらつきを抑えて充電することが可能であるが、第1の充電工程は第2の充電工程よりも大電流で充電することができるため、第1の充電工程を設けるとより急速に、短時間で充電することが可能となる。第2の充電工程での定電圧値はVM1より小さい値で任意に設定することができ、小さい値であるほど単セル電圧のばらつきを小さく抑えることができる。その反面、小さすぎると充電される容量が小さくなり、好ましくない。第2の充電工程が終了した時点での組電池の充電容量が、満充電電圧VH1での充電容量を100%としたSOCで70〜98%の範囲に達するように電圧値V2を設定することが好ましい。組電池のSOCは、組電池を構成する単電池のSOC間にばらつきが存在する場合、そのうちの最低SOC値とする。この場合、組電池を構成する単電池のSOCのうち最低SOC値が70〜98%に達した際に、組電池のSOCが70〜98%に達したと言うことができる。
【0025】
さらに、必要に応じて第3の充電工程を行うことができる。第3の充電工程では、3C以下の電流値での定電流充電と、組電池の電圧を下記(2)式に示す電圧値VH3(V)以下に制御する定電圧充電とを行う。
【0026】
H3=VH1×n (2)
但し、VH1は前記満充電電圧(V)で、nは直列接続される前記電池ユニットの数である。
【0027】
H1×n(V)で定電圧定電流充電を行うこと自体は一般的な充電方法であるが、その前に第1、第2の充電工程を経て充電が進んでいること、また電池の急速充電性能にあわせて3C以下の小さな定電流値に抑えることで、単電池電圧ばらつきを抑えつつ満充電に近づけることができる。よって、組電池の初期容量をより向上することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る組電池システムの一例を詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る組電池システムのブロック図の一例である。組電池システムは、電池パック1と、充電器2とを備える。電池パック1は、組電池3と、保護回路とを有している。保護回路は、電圧検出回路4と、スイッチ回路(SW回路)5と、通信回路6とを含んでいる。組電池3は単電池からなる電池ユニット7を複数直列に接続したものである。単電池には非水電解質二次電池が使用されている。図2では直列数は5個となっているが、この数は2個以上、任意の個数であってもよい。ただし、あまり直列数が多いと1個の電圧検出回路での電圧検出が困難になり、回路が複雑化するため、通常は2〜20個程度で必要な組電池電圧が得られる直列数とするのが好ましい。
【0030】
また、図2では、1個の単電池から電池ユニット7を構成したが、複数の単電池を並列接続して電池ユニットを構成してもよい。その場合、並列接続と直列接続の両方を含む組電池となる。電圧検出手段としての電圧検出回路4は、電池パック1に含まれる全ての単電池の電圧を測定できるよう、電池ユニット7同士の各接続点にそれぞれ接続される。但し、組電池が並列接続を含む場合には、並列の組は電圧が等しいから、並列1組あたり電圧1箇所測定とすればよい。測定された単電池の電圧値を比較し、最大値を示す値が、所定の電圧設定値に達したかどうか、という信号を通信回路6に送り、通信回路6は、充電器に対して信号を送信する。送信する信号の内容は、電圧設定値に達したかどうかに限らず、電圧値そのものを送信してもよい。本発明においては、複数の充電工程において異なる電圧設定値が存在するため、それらは外部から同じ通信回路を用いて設定できることが好ましい。電池パックに含まれる電圧検出回路4は、充電制御に利用されるだけでなく、本来、電池異常や充電器の故障などの場合に電池の過充電を防ぐことが目的のひとつであるから、そのような場合に充放電電流を遮断するスイッチ回路5が電流路に挿入され、電圧検出回路4がそれを制御する。電圧検出回路4は、各単電池の電圧の最大値を監視して電圧設定値と比較するのみであればマイコン回路を含まない回路構成で可能であるが、外部からの設定に柔軟に対応するにはマイコン回路を含むものであってもよい。
【0031】
充電器2は、交流電源8に接続された整流回路9、パワースイッチ回路10、高周波トランス回路11、整流回路12及び平滑回路13からなる変換部で電池パックの充電に必要な直流電圧・電流に変換し、電池パックの組電池に充電電流を供給する。すなわち、電流供給手段は、整流回路9、パワースイッチ回路10、高周波トランス回路11、整流回路12及び平滑回路13を備えるものである。交流電源8は、図2に示すように充電器2が備えていても良いが、充電器2の外部に設置されていても良い。電流供給手段の出力の電流及び電圧を、電流検出手段としての電流検出回路14、定電圧定電流制御回路15で検出し、フィードバック制御する。マイコン回路16は、それぞれの充電工程にあわせて定電圧設定値、定電流設定値を定電圧定電流制御回路15に与える。また、マイコン回路16は、電池パック1からの信号を受け、単電池電圧に関して判定を行って充電工程を制御する。本実施形態では、上記定電圧定電流制御回路15及びマイコン回路16を備えるものを定電圧定電流制御手段と呼ぶ。
【0032】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る組電池システムのブロック図の別の一例である。
【0033】
組電池、電圧検出回路4、スイッチ回路5、通信回路6を備えた電池モジュールは前述の電池パックと同じ構成であるが、これをさらに任意の個数直列に接続し、高電圧を得ている。電池モジュールの通信回路6同士を接続し、その情報を統合して、マイコン回路17で全ての電池モジュールの中での単電池電圧最大値などを監視する。また、電池モジュール毎のスイッチ回路5は、通常ONのままとし、別に用意したさらに高耐圧のスイッチ回路18を制御して過充電禁止を行う。
【0034】
便宜上、充電器と電池パックとに分けて説明したが、本発明を実施する際に機能的に分かれていた方が合理的と考えられるところで分割した一例にすぎない。基本的には、本発明は、単電池の電圧を検出し、それに基づいて充電電圧と電流を制御できれば実施できるのであって、電池パックや充電器の構成は上記の例に限定されるものではない。
【0035】
図4は、第1の実施形態に係る充電方法及び第2の実施形態に係る組電池システムによって充電を行うための制御フローチャートの例である。
【0036】
まずS1のステップで第1の充電工程を開始、電流I1で定電流充電を行う。マイコン回路16は、第1の充電工程の定電流設定値を定電圧定電流制御回路15に与える。電流供給手段の出力の電流及び電圧を、電流検出回路14及び定電圧定電流制御回路15で検出し、フィードバック制御することによって、定電流充電がなされる。
【0037】
S2では組電池を構成する単電池の中で最大の電圧を監視し、それがVH1を超えた場合は第1の充電工程を終了する。マイコン回路16には、単電池の25℃環境下で1C電流にて定電流充電を行った場合の充電曲線のデータから決定された充電制御データが予め保存されている。このデータは、電圧検出回路4に与えられる。電圧検出回路4は、検出される単電池電圧の中での最大値と、充電制御データによる満充電電圧VH1(V)とを比較し、最大値が満充電電圧VH1(V)に達した場合に、通信回路6に信号を送信する。通信回路6は、充電器のマイコン回路16に信号を送信する。その結果、第1の充電工程が終了する。
【0038】
S3のステップでは、第2の充電工程を開始、前述した(1)式に示す定電圧値V2で定電圧充電を行う。なお、定電圧値V2は、マイコン回路16により決定され、決定された値が定電圧定電流制御回路15に与えられる。
【0039】
S4のステップでは、第2の充電工程を終了するための条件分岐を行う。第2の充電工程の定電圧充電において、電流が減少してI3より小さくなった場合に第2の充電工程を終了する。具体的には、定電圧定電流制御回路15は、データとして保存されているI3と、電流検出回路14により検出される電流値とを比較し、電流値がI3に達した際にマイコン回路16に信号を送信し、これにより第2の充電工程が終了する。I3の電流は任意に決めることができるが、1Cに相当する電流の1/20以上、1/5以下が適当である。
【0040】
S4の条件分岐は、電流減少のほかに単純に一定の時間が経過したら次のステップに進むようにしてもよい。
【0041】
S5のステップは、第3の充電工程を行う例となるが、前述した(2)式に示す電圧値VH3以下、かつ電流I4で定電圧定電流充電を行う。I4は3C相当の電流以下の値にすることができるが、電池のインピーダンス等によって0.2Cから1C程度の値にすることが好ましい。
【0042】
S6のステップでは、第3の充電工程を終了するための条件分岐を行う。第3の充電工程の定電圧定電流充電において、充電モードが定電圧充電に移行後、電流が減少してI5より小さくなった場合に第2の充電工程を終了する。具体的には、定電圧定電流制御回路15は、データとして保存されているI5と、電流検出回路14により検出される電流値とを比較し、電流値がI5に達した際にマイコン回路16に信号を送信し、第3の充電工程が終了する。I5の電流は任意に決めることができるが、1Cに相当する電流の1/40以上、1/10以下が適当である。S6の条件分岐は、電流減少のほかに単純に一定の時間が経過したら次のステップに進むようにしてもよい。
【0043】
単電池として使用される非水電解質二次電池を、図5〜図6を参照して説明する。図5は、非水電解質二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池を示す断面図、図6は図5のA部を示す拡大断面図である。
【0044】
図5に示すように、例えばフィルムからなる外装部材21内には、電極群22が収納されている。電極群22は、正極23と負極24がセパレータ25を介して偏平形状に捲回された構造を有する。図6に示すように、正極23は、正極集電体23aと、正極集電体23aの少なくとも片面に形成された正極活物質含有層23bとを含む。また、負極24は、負極集電体24aと、負極集電体24aの少なくとも片面に形成された負極活物質含有層24bとを含む。セパレータ25は、正極活物質含有層23bと負極活物質含有層24bの間に介在されている。
【0045】
帯状の正極端子26は、電極群6の正極集電体23aに接続されており、先端が外装部材21の外部に引き出されている。また、帯状の負極端子27は、電極群6の負極集電体24aに接続されており、先端が外装部材21の外部に引き出されている。正極端子26と負極端子27は、外装部材21の同じ辺から引き出されており、正極端子26の引き出し方向と負極端子27の引き出し方向が同一になっている。
【0046】
以下、正極、負極、セパレータ、非水電解質及び外装部材について説明する。
【0047】
1)負極
前記負極は、例えば負極活物質、導電剤および結着剤を適当な溶媒に分散させて得られる負極材ペーストを集電体の片側、もしくは両面に塗布することにより作製する。
【0048】
前記負極活物質は、例えばリチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、合金、軽金属などが挙げられる。
【0049】
前記リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物としては、例えばコークス、炭素繊維、熱分解気相炭素物、黒鉛、樹脂焼成体、メソフェーズピッチ系炭素繊維またはメソフェーズ球状カーボンの焼成体などを挙げることができる。中でも、2500℃以上で黒鉛化したメソフェーズピッチ系炭素繊維またはメソフェーズ球状カーボンを用いると電極容量が高くなるため好ましい。
【0050】
金属酸化物としては、例えば、チタン含有金属複合酸化物、例えばSnB0.40.63.1やSnSiO3などのスズ系酸化物、例えばSiOなどのケイ素系酸化物、例えばWO3などのタングステン系酸化物などが挙げられる。これら金属酸化物のなかで、金属リチウムに対する電位が0.5Vよりも高いような負極活物質、例えばチタン酸リチウムのようなチタン含有金属複合酸化物を用いた場合、電池を急速に充電した場合でも負極上でのリチウムデンドライトの発生が起こらず、劣化が少なくなるため好ましい。
【0051】
チタン含有金属複合酸化物としては、例えば、酸化物合成時はリチウムを含まないチタン系酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムチタン酸化物の構成元素の一部を異種元素で置換したリチウムチタン複合酸化物などを挙げることができる。リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi4+xTi512(xは充放電により変化する値で、0≦x≦3))、ラムステライド型のチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi37(yは充放電により変化する値で、0≦y≦3)などを挙げることができる。
【0052】
チタン系酸化物としては、TiO2、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiO2はアナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO2−P25、TiO2−V25、TiO2−P25−SnO2、TiO2−P25−MeO(MeはCu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。この金属複合酸化物は、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能が大幅に向上することができる。中でも、リチウムチタン酸化物、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物が好ましい。
【0053】
金属硫化物として硫化リチウム(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2),硫化鉄(FeS、FeS2、LixFeS2)などが挙げられる。金属窒化物としてリチウムコバルト窒化物(LixCoyN、0<x<4,0<y<0.5)などが挙げられる。
【0054】
負極活物質には、スピネル構造を有するチタン酸リチウムを使用することが望ましい。この場合、正極活物質には、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のうちのいずれかを使用することが望ましい。このような正極活物質及び負極活物質を用いた非水電解質二次電池は、25℃環境下で1C充電した際の充電曲線におけるSOCに対する電圧変化率Aが満充電電圧VH1(V)に達する時に20(mV/%SOC)よりも大きな値となる。なお、上記充電曲線を示す非水電解質二次電池は、負極活物質として炭素質物を使用し、かつ正極活物質にリチウムマンガン複合酸化物を使用することによっても実現可能である。
【0055】
負極活物質の平均粒子径は1μm以下であることが望ましい。平均粒子径1μm以下の負極活物質を使用することにより、上記充電曲線を示す非水電解質二次電池のサイクル性能を向上することができる。とくに、急速充電時および高出力放電時においてこの効果は顕著となる。但し、平均粒径が小さ過ぎると、非水電解質の分布が負極側に偏り、正極での電解質の枯渇を招く恐れがあるため、その下限値は0.001μmにすることが好ましい。
【0056】
なお、負極活物質の粒径測定は、例えば、レーザー回折式分布測定装置(島津SALD-300)を用い、まず、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定できる。
【0057】
前記導電剤として、炭素材料を用いることができる。例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛等を挙げることができる。
【0058】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0059】
前記集電体としては、負極の電位に応じて種々の金属箔等を用いることができるが、例えばアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ステンレス箔、チタン箔等、銅箔、ニッケル箔などが挙げられる。このときの箔の厚さとしては、8μm以上25μm以下であることが好ましい。また、負極電位が金属リチウムに対して0.3Vよりも貴である場合、例えば負極活物質としてリチウムチタン酸化物を使用する際には、アルミニウム箔やアルミニウム合金箔が電池重量を抑えることができるため好ましい。
【0060】
アルミニウム箔及びアルミニウム合金箔の平均結晶粒径は、50μm以下であることが好ましい。これにより、集電体の強度を飛躍的に増大させることができるため、負極を高いプレス圧で高密度化することが可能となり、電池容量を増大させることができる。また、高温環境下(40℃以上)における過放電サイクルでの負極集電体の溶解・腐食劣化を防ぐことができるため、負極インピーダンスの上昇を抑制することができる。さらに、出力特性、急速充電、充放電サイクル特性も向上させることができる。平均結晶粒径のより好ましい範囲は30μm以下であり、更に好ましい範囲は5μm以下である。
【0061】
平均結晶粒径は次のようにして求められる。集電体表面の組織を光学顕微鏡で組織観察し、1mm×1mm内に存在する結晶粒の数nを求める。このnを用いてS=1x106/n(μm2)から平均結晶粒子面積Sを求める。得られたSの値から下記(A)式により平均結晶粒子径d(μm)を算出する。
【0062】
d=2(S/π)1/2 (A)
前記平均結晶粒子径の範囲が50μm以下の範囲にあるアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔は、材料組成、不純物、加工条件、熱処理履歴ならび焼なましの加熱条件など多くの因子に複雑に影響され、前記結晶粒子径(直径)は、製造工程の中で、前記諸因子を組み合わせて調整される。
【0063】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。なお、車載用の場合、アルミニウム合金箔が特に好ましい。
【0064】
前記負極の活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤1.5〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0065】
2)正極
前記正極は、例えば正極活物質、導電剤および結着剤を適当な溶媒に分散させて得られる正極材ペーストを集電体の片側、もしくは両面に塗布することにより作製する。
【0066】
前記正極の活物質は、種々の酸化物、硫化物などが挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnyCo1-yO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4など)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5) などが挙げられる。 また、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)、フッ化カーボンなどの有機材料および無機材料も挙げられる。
【0067】
より好ましい二次電池用の正極は、電池電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-yCoyO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-yO2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)などが挙げられる。なお、x、yは0〜1の範囲であることが好ましい。
【0068】
また、正極活物質には、組成がLiaNibCocMndO2(但し、モル比a,b,c及びdは0≦a≦1.1、0.1≦b≦0.5、0≦c≦0.9、0.1≦d≦0.5)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を使用することができる。
【0069】
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、人工黒鉛、天然黒鉛、導電性ポリマー等を用いることができる。
【0070】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、PVdFの水素もしくはフッ素のうち、少なくとも1つを他の置換基で置換した変性PVdF、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレンの共重合体、ポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−6フッ化プロピレンの3元共重合体等を用いることができる。
【0071】
前記結着剤を分散させるための有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が使用される。
【0072】
前記集電体としては、例えば厚さ8〜25μmのアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、ステンレス箔、チタン箔等を挙げることができる。
【0073】
前記正極集電体は、アルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましく、負極集電体と同様にその平均結晶粒径は50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、30μm以下である。更に好ましくは5μm以下である。前記平均結晶粒径が50μm以下であることにより、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の強度を飛躍的に増大させることができ、正極を高いプレス圧で高密度化することが可能になり、電池容量を増大させることができる。
【0074】
前記平均結晶粒径の範囲が50μm以下の範囲にあるアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔は、材料組織、不純物、加工条件、熱処理履歴、ならびに焼鈍条件など複数の因子に複雑に影響され、前記結晶粒径は製造工程の中で、前記諸因子を組合せて調整される。
【0075】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。
【0076】
前記正極の活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤1.5〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0077】
3)セパレータ
セパレータには多孔質セパレータを用いる。
【0078】
多孔質セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレンか、あるいはポリプロピレン、または両者からなる多孔質フィルムは、電池温度が上昇した場合に細孔を閉塞して充放電電流を大幅に減衰させるシャットダウン機能を付加しやすく、二次電池の安全性を向上できるため、好ましい。
【0079】
4)非水電解質
非水電解質として、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、Li(CF3SO2)3C、LiB[(OCO)2]2などから選ばれる一種以上のリチウム塩を0.5〜2mol/Lの濃度で有機溶媒に溶解した有機電解液が挙げられる。
【0080】
前記有機溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などの環状カーボネートや、ジエチレルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などの鎖状カーボネートや、ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)などの鎖状エーテルや、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン(DOX)などの環状エーテルや、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)などの単独もしくは混合溶媒を用いることが好ましい。
【0081】
また、非水電解質として、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)を用いることができる。リチウムイオンと有機物カチオンとアニオンから構成されるイオン性融体であり、100℃以下、好ましくは室温以下でも液状であるものを選択すると、広い動作温度の二次電池を得ることができる。
【0082】
5)外装部材
外装部材に使用されるラミネートフィルムの厚さは、0.2mm以下にすることが望ましい。
【0083】
ラミネートフィルムは、例えば、最内層に位置する熱融着性樹脂フィルム(熱可塑性樹脂フィルム)、アルミニウム箔のような金属箔および剛性を有する有機樹脂フィルムをこの順序で積層した複合フィルム材から構成することが可能である。
【0084】
前記熱融着性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体フィルム、アイオノマーフィルム、エチレンビニルアセテート(EVA)フィルム等を用いることができる。また、前記剛性を有する有機樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロンフィルム等を用いることができる。
【0085】
6)正極端子及び負極端子
正極端子には、アルミニウム、チタン及びそれらをもとにした合金、ステンレスなどを用いることができる。負極端子には、ニッケル、銅及びそれらをもとにした合金などを用いることができる。負極電位が金属リチウムに対し1Vよりも貴な場合、例えば負極活物質としてリチウムチタン酸化物を使用した場合などは、負極端子としてアルミニウムあるいはアルミニウム合金を用いることができる。この場合、正極端子、負極端子ともアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いると、軽量かつ電気抵抗を小さく抑えることができるため好ましい。
【0086】
非水電解質二次電池は、前述した図5乃至図6に示す構成のものに限らず、例えば、図7及び図8に示す構成にすることができる。図7は扁平型非水電解質二次電池を模式的に示す部分切欠斜視図で、図8は図7のB部の拡大断面図である。
【0087】
図7に示すように、ラミネートフィルム製の外装部材21内には、積層型電極群22が収納されている。積層型電極群22は、図8に示すように、正極23と負極24とをその間にセパレータ25を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極23は複数枚存在し、それぞれが正極集電体23aと、正極集電体23aの両面に担持された正極活物質含有層23bとを備える。負極24は複数枚存在し、それぞれが負極集電体24aと、負極集電体24aの両面に担持された負極活物質含有層24bとを備える。それぞれの負極24の負極集電体24aは、一辺が正極23から突出している。正極23から突出した負極集電体24aは、帯状の負極端子27に電気的に接続されている。帯状の負極端子27の先端は、外装部材21から外部に引き出されている。また、ここでは図示しないが、正極23の正極集電体23aは、負極集電体24aの突出辺と反対側に位置する辺が負極24から突出している。負極24から突出した正極集電体23aは、帯状の正極端子26に電気的に接続されている。帯状の正極端子26の先端は、外装部材21の辺から外部に引き出されている。正極端子26が外装部材21から引き出されている方向は、負極端子27が外装部材21から引き出されている方向と反対向きである。
【0088】
電極群の構造として、前述した図5〜図6に示すような捲回構造、前述した図7,8に示す積層構造を挙げたが、優れた入出力特性に加え、高い安全性と信頼性を兼ね備えるために、電極群の構造を積層構造とすることが好ましい。更に、長期間使用した際にも高い大電流性能を実現させるためには、正極と負極を含む電極群が積層構造であって、図9に示されるようにセパレータを九十九に折って使用することが好ましい。帯状のセパレータ25は、九十九に折り重ねられている。九十九に折り重なったセパレータ25の最上層に短冊状の負極241が積層されている。セパレータ25同士が重なった部分に上から順番に短冊状の正極231、短冊状の負極242、短冊状の正極232、短冊状の負極243が挿入されている。このように九十九に折り重なったセパレータ25の間に正極23と負極24を交互に配置することによって、積層構造の電極群を得る。
【0089】
(第3の実施の形態)
第2の実施形態の組電池システムの用途としては、大電流特性でのサイクル特性が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用、充電式掃除機が挙げられる。特に、車載用が好適である。
【0090】
第3の実施形態に係る自動車は、第2の実施形態に係る組電池システムを備える。ここでいう自動車としては、二輪〜四輪のハイブリッド電気自動車、二輪〜四輪の電気自動車、アシスト自転車などが挙げられる。以下の図10〜図15には、二輪〜四輪の自動車に第2の実施形態に係る組電池システムの電池パックを搭載し、第2の実施形態に係る組電池システムの充電器を充電スタンド(図示しない)に搭載した例を示す。
【0091】
図10〜12は、内燃機関と電池駆動の電動機とを組み合わせて走行動力源としたハイブリッドタイプの自動車を示している。自動車の駆動力には、その走行条件に応じ、広範囲な回転数及びトルクの動力源が必要となる。一般的に内燃機関は理想的なエネルギー効率を示すトルク・回転数が限られているため、それ以外の運転条件ではエネルギー効率が低下する。ハイブリッドタイプの自動車は、内燃機関を最適条件で稼動させて発電すると共に、車輪を高効率な電動機にて駆動することによって、あるいは内燃機関と電動機の動力を合わせて駆動したりすることによって、自動車全体のエネルギー効率を向上できるという特徴を有する。また、減速時に車両のもつ運動エネルギーを電力として回生することによって、通常の内燃機関単独走行の自動車に比較して、単位燃料当りの走行距離を飛躍的に増大させることができる。
【0092】
ハイブリッド自動車は、内燃機関と電動機の組み合わせ方によって、大きく3つに分類することができる。
【0093】
図10には、一般にシリーズハイブリッド自動車と呼ばれるハイブリッド自動車50が示されている。内燃機関51の動力を一旦すべて発電機52で電力に変換し、この電力をインバータ53を通じて電池パック54に蓄える。電池パック54には本発明の第4の実施形態に係る電池パックが使用される。電池パック54の電力はインバータ53を通じて電動機55に供給され、電動機55により車輪56が駆動する。電気自動車に発電機が複合されたようなシステムである。内燃機関は高効率な条件で運転でき、電力回生も可能である。その反面、車輪の駆動は電動機のみによって行われるため、高出力な電動機が必要となる。また、電池パックも比較的大容量のものが必要となる。電池パックの定格容量は、5〜50Ahの範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は10〜20Ahである。ここで、定格容量とは、0.2Cレートで放電した時の容量を意味する。
【0094】
図11には、パラレルハイブリッド自動車と呼ばれるハイブリッド自動車57が示されている。付番58は、発電機を兼ねた電動機を示す。内燃機関51は主に車輪56を駆動し、場合によりその動力の一部を発電機58で電力に変換し、その電力で電池パック54が充電される。負荷が重くなる発進や加速時には電動機58により駆動力を補助する。通常の自動車がベースになっており、内燃機関51の負荷変動を少なくして高効率化を図り、電力回生なども合わせて行うシステムである。車輪56の駆動は主に内燃機関51によって行うため、電動機58の出力は必要な補助の割合によって任意に決定することができる。比較的小さな電動機58及び電池パック54を用いてもシステムを構成することができる。電池パックの定格容量は、1〜20Ahの範囲にすることができる。より好ましい範囲は5〜10Ahである。
【0095】
図12には、シリーズ・パラレルハイブリッド車と呼ばれるハイブリッド自動車59が示されている。シリーズとパラレルの両方を組み合わせた方式である。動力分割機構60は、内燃機関51の出力を、発電用と車輪駆動用とに分割する。パラレル方式よりもきめ細かくエンジンの負荷制御を行い、エネルギー効率を高めることができる。
【0096】
電池パックの定格容量は、1〜20Ahの範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は5〜10Ahである。
【0097】
上述した図10〜図12に示すようなハイブリッド自動車に搭載される電池パックの公称電圧は、200〜600Vの範囲にすることが望ましい。
【0098】
本発明の実施形態に係る組電池システムは、シリーズ・パラレル方式のハイブリッド自動車での使用に特に適している。
【0099】
電池パック54は、一般に外気温度変化の影響を受けにくく、衝突時などに衝撃を受けにくい場所に配置されるのが好ましい。例えば図13に示すようなセダンタイプの自動車では、後部座席61後方のトランクルーム62内などに配置することができる。また、座席61の下や後ろに配置することができる。電池重量が大きい場合には、車両全体を低重心化するため、座席の下や床下などに配置するのが好ましい。
【0100】
電気自動車(EV)は、自動車外部から電力を供給して充電された電池パックに蓄えられたエネルギーで走行する。よって、電気自動車は、他の発電設備などを用いて高効率に発電された電気エネルギーを利用することが可能である。また、減速時には自動車の運動エネルギーを電力として回生できるため、走行時のエネルギー効率を高くすることができる。電気自動車は二酸化炭素その他の排気ガスを全く排出しないため、クリーンな自動車である。その反面、走行時の動力はすべて電動機であるため、高出力の電動機が必要である。一般には一回の走行に必要なすべてのエネルギーを一度の充電で電池パックに蓄えて走行する必要があるため、非常に大きな容量の電池が必要である。電池パックの定格容量は、100〜500Ahの範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は200〜400Ahである。
【0101】
また、車両の重量に占める電池重量の割合が大きいため、電池パックは床下に敷き詰めるなど、低い位置に、かつ車両の重心から大きく離れない位置に配置することが好ましい。1回の走行に相当する大きな電力量を短時間のうちに充電するためには、大容量の充電器と充電ケーブルが必要である。このため、電気自動車は、それらを接続する充電コネクタを備えることが望ましい。充電コネクタには、電気接点による通常のコネクタを用いることができるが、電磁結合による非接触式の充電コネクタを用いても良い。
【0102】
図14には、ハイブリッドバイク63の一例を示す。二輪車の場合においても、ハイブリッド自動車と同様に、内燃機関64、電動機65、電池パック54を備えたエネルギー効率の高いハイブリッドバイクを構成することができる。内燃機関64は主に車輪66を駆動し、場合によりその動力の一部で電池パック54が充電される。負荷が重くなる発進や加速時には電動機65により駆動力を補助する。車輪66の駆動は主に内燃機関64によって行うため、電動機65の出力は必要な補助の割合によって任意に決定することができる。比較的小さな電動機65及び電池パック54を用いてもシステムを構成することができる。電池パックの定格容量は、1〜20Ahの範囲にすることができる。より好ましい範囲は3〜10Ahである。
【0103】
図15には、電動バイク67の一例を示す。電動バイク67は、外部から電力を供給して充電された電池パック54に蓄えられたエネルギーで走行する。走行時の動力はすべて電動機65であるため、高出力の電動機65が必要である。一般には一回の走行に必要なすべてのエネルギーを一度の充電で電池パックに蓄えて走行する必要があるため、比較的大きな容量の電池が必要である。電池パックの定格容量は、10〜50Ahの範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は15〜30Ahである。
【0104】
図16には、第3の実施形態に係る充電式掃除機の一例を示す。充電式掃除機は、掃除機の筐体70内に第2の実施形態に係る組電池システムの電池パックが収容されている。置き台兼用の充電器71は、第2の実施形態に係る組電池システムの充電器として機能する。電池パックの定格容量は、2〜10Ahの範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は2〜4Ahである。また、電池パックの公称電圧は、40〜80Vの範囲にすることが望ましい。
【0105】
[実施例]
以下に例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、発明の主旨を超えない限り本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0106】
(実施例1)
正極活物質にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)を用いた。正極活物質、導電材及び結着剤を配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmで、平均結晶粒子径が50μmのアルミニウム箔(純度99.99%)に塗布、乾燥、プレス工程を経て正極を作製した。
【0107】
負極活物質としてチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を用意した。負極活物質、導電材及び結着剤を配合してn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmで、平均結晶粒子径が50μmのアルミニウム箔(純度99.99%)に塗布、乾燥、プレス工程を経て負極を作製した。
【0108】
次に、厚さ20μmの帯状ポリエチレン製多孔質フィルムのセパレータを横向きに配し、その左端に短冊状に裁断した正極片を乗せ、セパレータを正極片の右端に沿って左に折り返し、その上に、短冊状に裁断した負極片を乗せ、セパレータを負極片の左端に沿って右に折り返し、という手順を繰り返して、正極と負極をその間に九十九に折られたセパレータを挟みながら積層し、正極を31枚及び負極を30枚有する発電要素を作製した。
【0109】
作製した発電要素は、プレスし、形状を整えた後、正極端子と負極端子を接続し、ラミネートフィルム製の外装部材内に密封し、非水電解質を注液し、容量3Ahの扁平状の非水電解質二次電池を作製した。得られた二次電池の満充電電圧VH1は2.8Vであった。満充電に達するときのSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)は150(mV/%SOC)であった。また、電圧変化率A(mV/%SOC)がA<20(mV/%SOC)からA=20(mV/%SOC)に達する時の単電池電圧VM1は、2.63Vであった。
【0110】
この単電池を5個直列に接続し、各接続部から電圧測定端子を取り出して、図2に示すように電池パックを組み立て、充電器を接続し、組電池システムを得た。第1の充電工程における充電電流I1は60A(20C)とし、第2の充電工程においてはVH2を2.6V、V2を13Vとする定電圧充電とした。また、第2の充電工程を終了する分岐の電流値I3を0.15Aとし、第2の充電工程で充電を終了する充電方法とした。充電を終了した時点での組電池のSOCは95%であった。放電状態から組電池のSOC80%まで充電するのに要する時間は約5分であった。このときの組電池電圧と充電電流の変化は概ね図17のようになった。
【0111】
図17に示す通り、第1の充電工程は、電圧検出回路4により検出される単電池電圧の中での最大値が満充電電圧VH1に達した際に終了され、第2の充電工程に移行した。第2の充電工程は、組電池の電圧を前述した(1)式に示すV2に制御する定電圧充電のため、充電電流が徐々に収束し、電流値I3に達した。
【0112】
(実施例2)
実施例1と同様に単電池を作製し、電池パックを組み立てて充電器を接続し、組電池システムを得た。満充電に達するときのSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)、VM1はそれぞれ実施例1と同じ値となった。充電電流I1を実施例1と同じ値にして第1の充電工程とした。その後、VH2、V2、I3はそれぞれ実施例1と同じ値に設定し、I2を15Aと設定して第2の充電工程を定電圧定電流充電とした。その他の条件はすべて実施例1と同様とし、放電状態から組電池のSOC80%まで充電するのに要する時間は約6分であった。充電が完了した時点での組電池のSOCは95%であった。このときの組電池電圧と充電電流の変化は概ね図18のようになった。
【0113】
図18に示す通り、第1の充電工程での組電池の電圧変化及び電流変化は、実施例1の場合と同様な傾向が得られた。第2の充電工程の初期段階では、第1の充電工程での充電電流I1よりも低い電流値I2で定電流充電がなされたため、組電池の電圧を満充電電圧VH1よりも低い値に抑えることができた。組電池の電圧がV2まで上昇した時点で定電圧充電に切り替えて第2の充電工程を行った。
【0114】
(実施例3)
実施例1と同様に単電池を作製し、電池パックを組み立てて充電器を接続し、組電池システムを得た。満充電に達するときのSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)、VM1はそれぞれ実施例1と同じ値となった。I1、VH2、V2、I2、I3はそれぞれ実施例2と同じ値に設定して、第2の充電工程までを行うこととした。その後、第3の充電工程として、充電電流I4を1.5A、充電電圧VH3をVH1×n=14Vと設定した定電圧定電流充電を行った。第3の充電工程を終了する分岐の電流値I5は0.15Aとし、第1から第3の充電工程で充電を終了する充電方法とした。充電が完了した時点での組電池のSOCは100%であった。放電状態から組電池のSOC80%まで充電するのに要する時間は約6分であった。このときの組電池電圧と充電電流の変化は概ね図19のようになった。
【0115】
図19に示す通り、第1,第2の充電工程での組電池の電圧変化及び電流変化は、実施例1の場合と同様な傾向が得られた。第3の充電工程では、充電電流I4で定電流充電が行われた後、(満充電電圧VH1×n)で表される電圧値での定電圧充電がなされた。
【0116】
(実施例4)
正極活物質としてLiNi0.75Co0.19Al0.052で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物粉末を用いた他は、実施例1と同様に単電池を作製し、電池パックを組み立てて充電器を接続し、組電池システムを得た。この単電池の満充電電圧VH1は、実施例1と同じく2.8Vである。満充電に達するときのSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)は160(mV/%SOC)で、VM1は2.61Vであった。
【0117】
第1の充電工程における充電電流I1は60A(20C)とし、第2の充電工程においてはI2を15Aとし、VH2を2.6V、V2を13Vとする定電圧定電流充電とした。その後、第3の充電工程として、充電電流I4を1.5A、充電電圧をVH1×n=14Vと設定した定電圧定電流充電を行った。
【0118】
第3の充電工程を終了する分岐の電流値I5は0.15Aとし、第1から第3の充電工程で充電を終了する充電方法とした。充電が完了した時点での組電池のSOCは100%であった。
【0119】
放電状態から組電池のSOC80%まで充電するのに要する時間は約6分であった。組電池電圧と充電電流の変化は、前述した図19に示したのとほぼ同様な傾向が得られた。
【0120】
(比較例1)
実施例1と同様に単電池を作製し、電池パックを組み立てて充電器を接続した。満充電に達するときのSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)、VM1はそれぞれ実施例1と同じ値となった。充電方法としては、VH1×n=14Vを定電圧設定値、I=60Aを定電流設定値として、定電圧定電流充電を行い、充電電流が0.15Aまで減少した時点で充電終了とする方法とした。
【0121】
(比較例2)
実施例1と同様に単電池を作製し、電池パックを組み立てて充電器を接続した。満充電に達するときのSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)、VM1はそれぞれ実施例1と同じ値となった。充電方法としては、VH1×n=14Vを定電圧設定値、I=3Aを定電流設定値として、定電圧定電流充電を行い、充電電流が0.15Aまで減少した時点で充電終了とする方法とした。
【0122】
作製した組電池システムは、繰り返し充放電を行うサイクル寿命試験を行った。25℃環境において、充電は接続した充電器で行い、充電方法は各実施例、比較例で説明したとおりとした。放電方法は、25℃環境において、放電容量測定装置を接続し、定電流値30Aで、各単電池電圧の最低値が2Vになるまで放電するという方法とした。
【0123】
試験によって得られた放電容量のサイクル依存性を図20に示す。
【0124】
実施例1は、1000サイクルまで単調に、わずかずつ容量が減少するものの、大きな劣化はみられなかった。実施例2は、実施例1と殆んど変わらないが、実施例1より僅かに劣化が少なかった。実施例3は、第3の充電工程を含み、実施例1より満充電に近づくまで充電しているため、初期の放電容量は大きい。容量の劣化速度は実施例1よりわずかに大きいものの、やはり同様に、単調な容量劣化にとどまった。実施例4は、同様の充電方法である実施例3に似た傾向を示したが、正極活物質が異なるために初期容量がわずかに大きく、繰り返しによる容量低下の割合もわずかに大きいという結果であった。これらは、単セルをサイクル試験した場合とほぼ同様の特性と考えられる。
【0125】
一方、比較例1では容量の劣化速度が大きく、さらに20サイクル程度から著しい劣化加速がみられた。このときの充電状態を調べてみると、単セル電圧ばらつきのために保護回路の過充電禁止電圧2.9V以上となるセルが発生し、正常な充電工程が終了する前に電流が遮断されていることがわかった。比較例2についても同様で、劣化速度はやや緩やかだったものの、100サイクル程度で著しい劣化加速がみられた。
【0126】
以上のように、満充電に達するときのSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)が20(mV/%SOC)より大きな非水電解質二次電池を直列接続した組電池を従来方法で充電すると、単電池電圧のばらつきにより過充電が発生し、サイクル寿命が著しく短くなるが、本実施形態の充電方法によれば、過充電が発生することなく、サイクル特性を向上することができる。
【0127】
以上述べた如く、本実施形態によれば、複数の非水電解質二次電池を直列に接続した組電池の充電方法において、充電時の単電池電圧ばらつきを抑えることによって組電池のサイクル特性を向上させ、また過充電の可能性を低減して安全性を向上した充電方法を提供することができる。
【0128】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】第1の実施形態に係る組電池の充電方法で単電池として使用される非水電解質二次電池を25℃環境下で1C充電した場合の充電曲線の一例を示す特性図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る組電池システムの一例を示すブロック図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る組電池システムの別の例を示すブロック図。
【図4】第1の実施形態に係る充電方法及び第2の実施形態に係る組電池システムによって充電を行うための制御フローの一例を示すフローチャート図。
【図5】扁平型非水電解質二次電池の一例を模式的に示す断面図。
【図6】図5のA部を示す拡大断面図。
【図7】扁平型非水電解質二次電池の別な例を模式的に示す部分切欠斜視図。
【図8】図7のB部の拡大断面図。
【図9】非水電解質二次電池で使用される積層構造の電極群を示す斜視図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るシリーズハイブリッド自動車を示す模式図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るパラレルハイブリッド自動車を示す模式図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るシリーズ・パラレルハイブリッド自動車を示す模式図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る自動車を示す模式図。
【図14】本発明の第3の実施形態に係るハイブリッドバイクを示す模式図。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る電動バイクを示す模式図。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る充電式掃除機を示す模式図。
【図17】実施例1の組電池システムにおける組電池の電圧及び電流の経時変化を示す特性図。
【図18】実施例2の組電池システムにおける組電池の電圧及び電流の経時変化を示す特性図。
【図19】実施例3の組電池システムにおける組電池の電圧及び電流の経時変化を示す特性図。
【図20】実施例1〜4及び比較例1,2の組電池システムの放電容量とサイクル数との関係を示す特性図。
【符号の説明】
【0130】
1…電池パック、2…充電器、3…組電池、4…電圧検出回路、5…スイッチ回路、6…通信回路、7…電池ユニット、8…交流電源、9…整流回路、10…パワースイッチ回路、11…高周波トランス回路、12…整流回路、13…平滑回路、14…電流検出回路、15…定電圧定電流制御回路、16,17…マイコン回路、18…高耐圧スイッチ回路、21…外装部材、22…電極群、23…正極、23a…正極集電体、23b…正極活物質含有層、24…負極、24a…負極集電体、24b…負極活物質含有層、25…セパレータ、26…正極端子、27…負極端子、50,57,59…ハイブリッド自動車、51,64…内燃機関、52…発電機、53…インバータ、54…電池パック、55,65…電動機、56,66…車輪、58…発電機を兼ねた電動機、60…動力分割機構、61…後部座席、62…トランクルーム、63…ハイブリッドバイク、67…電動バイク、70…筐体、71…置き台を兼ねた充電器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃環境下で1Cにて定電流充電を行った場合のSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)が満充電電圧VH1に達する時に20(mV/%SOC)よりも大きい単電池を少なくとも1個備える複数の電池ユニットが直列接続された組電池と、
前記組電池に充電電流を供給するための電流供給手段と、
前記単電池の電圧を検出し得る電圧検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された前記単電池の電圧のうち最大値Vmaxが前記満充電電圧VH1に達するまで前記充電電流を電流値I1に制御した後、前記組電池の電圧を下記(1)式に示す電圧値V2に制御する電流電圧制御手段と
を具備することを特徴とする組電池システム。
V2=VH2×n (1)
但し、VH2は、前記電圧変化率A(mV/%SOC)がA<20(mV/%SOC)からA=20(mV/%SOC)に達する時の前記単電池の電圧VM1よりも低い電圧値で、nは直列接続される前記電池ユニットの数である。
【請求項2】
前記電流電圧制御手段は、前記電流値I1での制御後で、かつ前記電圧値V2での制御前に、前記充電電流を電流値I2(但し、I2<I1)に制御することを特徴とする請求項1記載の組電池システム。
【請求項3】
前記電流電圧制御手段は、前記電圧値V2での制御後に、前記充電電流を3C以下に設定する定電流制御と、前記組電池の電圧を下記(2)式に示す電圧値VH3以下に設定する定電圧制御とを行うことを特徴とする請求項1記載の組電池システム。
H3=VH1×n (2)
但し、VH1は前記満充電電圧で、nは直列接続される前記電池ユニットの数である。
【請求項4】
前記電流電圧制御手段は、前記組電池のSOCが0%から80%に達した際の充電時間が20分以内となるように前記電流値I1を制御することを特徴とする請求項1記載の組電池システム。
【請求項5】
前記電流値I1は5C以上であることを特徴とする請求項4記載の組電池システム。
【請求項6】
前記電流電圧制御手段は、前記電圧値V2での制御後の前記組電池のSOCが70〜98%に達するように前記電圧値V2を制御することを特徴とする請求項1記載の組電池システム。
【請求項7】
前記単電池は、リチウムチタン酸化物を含む負極、正極及びセパレータを備えた非水電解質二次電池であることを特徴とする請求項1記載の組電池システム。
【請求項8】
前記リチウムチタン酸化物はスピネル構造を有することを特徴とする請求項7記載の組電池システム。
【請求項9】
前記リチウムチタン酸化物の平均粒径は1μm以下であることを特徴とする請求項7記載の組電池システム。
【請求項10】
前記負極は、50μm以下の平均結晶粒径を有するアルミニウムまたは50μm以下の平均結晶粒径を有するアルミニウム合金から形成された負極集電体を具備することを特徴とする請求項7記載の組電池システム。
【請求項11】
前記非水電解質二次電池は、前記正極と前記負極がその間に前記セパレータを介在させて交互に積層された積層構造を有することを特徴とする請求項7記載の組電池システム。
【請求項12】
前記セパレータは帯状で、九十九に折り重ねられており、折り重なった部分の間に前記正極と前記負極が交互に挿入されていることを特徴とする請求項6記載の組電池システム。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか1項記載の組電池システムを備える充電式掃除機。
【請求項14】
25℃環境下で1Cにて定電流充電を行った場合のSOCに対する電圧変化率A(mV/%SOC)が満充電電圧VH1に達する時に20(mV/%SOC)よりも大きい単電池を少なくとも1個備える複数の電池ユニットが直列接続された組電池の充電方法であって、
前記各単電池の電圧のうち最大値Vmaxが前記満充電電圧VH1に達するまで電流値I1で定電流充電を施す第1の充電工程と、
前記組電池の電圧を下記(1)式に示す電圧値V2に制御する定電圧充電を施す第2の充電工程と
を具備することを特徴とする組電池の充電方法。
V2=VH2×n (1)
但し、VH2は、前記電圧変化率A(mV/%SOC)がA<20(mV/%SOC)からA=20(mV/%SOC)に達する時の前記単電池の電圧VM1よりも低い電圧値で、nは直列接続される前記電池ユニットの数である。
【請求項15】
前記第2の充電工程では、前記電圧値V2での定電圧充電の前に、前記充電電流を電流値I2(但し、I2<I1)に制御する定電流充電が行われることを特徴とする請求項14記載の組電池の充電方法。
【請求項16】
3C以下の電流値に制御する定電流充電と、前記組電池の電圧を下記(2)式に示す電圧値VH3以下に制御する定電圧充電とを行う第3の充電工程をさらに具備することを特徴とする請求項14記載の組電池の充電方法。
H3=VH1×n (2)
但し、VH1は前記満充電電圧で、nは直列接続される前記電池ユニットの数である。
【請求項17】
前記組電池のSOCが0%から80%に達した際の充電時間が20分以内となるように前記電流値I1を設定することを特徴とする請求項14記載の組電池の充電方法。
【請求項18】
前記第2の充電工程後の前記組電池のSOCが70〜98%に達するように前記電圧値V2を設定することを特徴とする請求項14記載の組電池の充電方法。
【請求項19】
前記単電池は、リチウムチタン酸化物を含む負極、正極及びセパレータを備えた非水電解質二次電池であることを特徴とする請求項14記載の組電池の充電方法。
【請求項20】
前記リチウムチタン酸化物はスピネル構造を有することを特徴とする請求項19記載の組電池の充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−273192(P2007−273192A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96001(P2006−96001)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】