説明

経路情報計算装置

【課題】自車よりも前方の車両の経路を参照しながら、個々の車両による最適な経路計算を行わせ、これを通じて社会全体の交通流の一極集中を避けて分散化・平滑化を行い、ひいては渋滞の発生を未然に防止し、さらには交通渋滞に伴う社会全体の経済損失を低減し、また、安心かつ安全で快適なドライブを実現することを、目的とするものである。
【解決手段】他車の経路情報を受信する手段と、自車の経路を計算する手段と、受信した経路情報と自車の経路を積算(論理的に加算)する手段と、積算した経路情報を送信する手段を有するものである。 これにより、他車の経路を踏まえて交通流を分散させるように最適な経路を計算することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて車両の目的地または経由地までの最適な経路を計算し、自者よりも前を走行する車両から経路情報を自車の経路情報と重ね合わせ、自車よりも後方の車両に対して経路情報として送信することができる経路情報計算装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の経路情報計算装置として、推測航法またはGPS(Global Positioning System)により得られた車両の現在位置もしくは地図表示画面上の任意の地点から、別途指定した目的地までの経路を、移動時間(旅行時間)の短さや、走行距離の短さ、あるいは、経由する有料道路の通行料金の安さ等に配慮しながら計算するものがカーナビゲーションシステム等の名称で一般的に知られている。
【0003】
近年、車両の増加に伴う交通量の増加により各地で交通渋滞が発生することが多くなっているためVICS(登録商標)等の渋滞情報を参照しながら、目的地までの最適な経路を探索するカーナビゲーションシステムも多くなってきている。
【0004】
しかし、渋滞情報を参照して経路探索しているが渋滞情報の更新速度が遅い等の問題が慢性的に発生しているため、前方の車両が受信した渋滞情報を車車間通信を用いて後方にあたる車両に対して送信し、前方の車両が取得した渋滞情報を後方の車両の表示装置に表示することで渋滞状況を知らせるというものが考案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−148901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では前方の車両と自車との間での車車間通信を用いて渋滞情報を自分の表示装置に表示するだけであり、自車の前方の車両がどのような渋滞考慮をした経路を進もうとしているのかわからず、自車の経路が、自車の前方の車両の経路と一緒だったときに、同じ経路に車が集中することで新たな渋滞が発生してしまう恐れがあった。
【0007】
そこで本発明は、前記の従来の問題を解決するためになされたものであり、集計・計算をするための処理センターを必要とせず、かつ、個々の車両による最適な経路計算を行わせながら自車の前方に走行している車両から経路情報を取得し、取得した経路情報を用いて同じ経路又は道路に車両が集中しないように制御することができる経路情報計算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の経路情報計算装置は、他車の経路情報を受信する経路情報受信手段と、自車の現在の位置を検出する自車位置検出手段と、前記経路情報受信手段で受信した他車の経路情報を回避するように前記自車の目的地または経由地までの経路を計算する自車経路計算手段と、前記経路情報受信手段により受信した他車の経路情報に前記自車経路計算手段により計算した自車の経路を重ね合わせる経路情報積算手段と、前記経路情報積算手段で重ね合わされた他車および自車の経路を新たな経路情報として送
信する経路情報送信手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明の経路情報計算装置によれば、自車よりも前方の車両の経路情報を受信し、自車で目的地または経由地までの経路を経路計算する際に受信した経路情報を回避するように経路計算を行い、計算された経路と受信した自車よりも前方の経路情報を経路情報積算手段で重ね合わせ、重ね合わせた経路情報を自車よりも後方の車両に送信することができるように構成されている。
【0010】
また、本発明の経路情報計算装置の前記経路情報受信手段は、前記他車の経路情報に含まれる管理IDを検出する管理ID検出手段を備え、前記経路情報送信手段は、経路情報を送信する際に前記管理ID管理検出手段で検出した管理IDとは異なる新たな管理IDを付与する管理ID付与手段を備えることを特徴する。
【0011】
このように構成された本発明の経路情報計算装置によれば、自車の前方にいる車両から取得する経路情報に含まれる管理IDを検出し、自車よりも前方にいる車両からの経路情報なのか否かを管理IDから判別することができ、また、自車よりも後方の車両に経路情報を送信する際に、自車の前方の車両から取得した管理IDとは異なる新たな管理IDを付与することで、受信した経路情報に含まれる管理IDの内容を確認するだけで、自車が進もうとしている前方の経路情報なのか否かを判断することができるように構成されている。なお、管理IDとは、車両の位置情報、車両種別、日時情報等が含まれている。
【0012】
また、本発明の経路情報計算装置は、前記自車経路計算手段により得られた自車の経路を表示する表示手段を有することを特徴とする。
【0013】
このように構成された本発明の経路情報計算装置によれば、自車経路計算手段で計算した経路を表示手段に表示して経路案内することができるように構成されている。
【0014】
また、本発明の経路情報計算装置は、前記自車経路計算手段により得られた経路に従って自車を案内する経路案内手段を有することを特徴とする
【0015】
このように構成された本発明の経路情報計算装置によれば、自車経路計算手段で計算された経路に対して経路案内手段を用いて案内することができるように構成されている。なお、経路案内手段は、音、音声、文字、案内図などを用いて案内することができるように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、先行する他車の目的地または経由地までの経路情報を受信し、それを回避するように自車の最適な経路を計算するとともに、自車の目的地または経由地までの経路を重ね合わせて、後続する車両に経路情報として送信することにより、同じ経路や同じ道路に車両が集中させずに車両を分散させることができるので、経路情報計算装置の経路案内において道路や経路に一極集中することを避けることができるので、道路の分散化・平滑化を行うことができ、ひいては渋滞の発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態における経路情報計算装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態における経路情報計算装置の動作を示すフローチャート
【図3】第2の実施の形態における経路情報計算装置の動作を示すフローチャート
【図4】(a)は、経路情報の伝達を示すフローチャートであり、(b)は、経路情報の伝達を示す模式図
【図5】図3で示したフローチャートにおけるID情報処理の動作を示すフローチャート
【図6】(a)、(b)は、図3で示したフローチャートにおける経路情報にIDを付与する処理を示すフローチャート
【図7】第3の実施の形態の動作を示す模式図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態における経路情報計算装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における経路情報計算装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の経路情報計算装置Nは、他車から経路情報を取得する経路情報受信部1と、地図表示や経路表示を行う表示部2と、案内音声を出力する音声出力部3と、他車へ経路情報を送信する経路情報送信部4と、経路情報計算装置Nを構成する各部の動作を制御すると共に経路計算部5a、経路情報積算部5b、地図表示/経路表示制御部5cと、経路案内部5dを備えた制御部5と、自車位置を検出する自車位置検出部6と、経路情報計算装置Nに対してキー操作による入力や画面操作による入力を行うことができる入力部7と、地図データ8a、経路情報計算装置Nを動作させるプログラムが保存されたプログラムROM8bと、経路情報計算装置Nの構成各部から転送されてくる情報を格納することができると共に必要に応じて情報を消去することができるように構成されたRAM8cと、経路情報計算装置Nの構成各部を接続するバスライン9とを備えて構成されている。
【0020】
ここで、経路情報受信部1は、受信用空中線/受講素子1aと復調回路/検波回路1bとで構成されている。受信用空中線/受光素子1aは、経路情報計算装置Nの外部から送信されてくる経路情報をデータで受信することができるように構成されており、また、復調回路/検波回路1bは、受信用空中線/受光素子1aで受信したデータを復調や検波してバスライン9を介して経路情報計算装置Nに伝達することができるように構成されている。
【0021】
表示部2は、液晶ディスプレイなどで構成されており、地図や経路を表示することができるように構成されている。また、制御部5の地図表示/経路表示制御部5cによって表示部2を制御することができるように構成されており、地図表示/経路表示制御部5cによって表示部2に地図や経路を表示することができるように構成されている。
【0022】
音声出力部3は、スピーカから構成されており、経路案内時の音声案内などを行うことができるように構成されている。
【0023】
経路情報送信部4は、送信用空中線/発光素子4aと変調回路4bで構成されている。送信用空中線/発光素子4aは、変調回路4bで変調された経路情報を自車よりも後方の車両に送信することができるように構成されている。変調回路4bは、経路情報計算装置Nから他の車両に経路情報を送信する際に送信用空中線/発光素子4aから送信することができるように変調することができるように構成されている。
【0024】
制御部5は、経路情報計算装置Nを構成する各部構成の動作を制御することができると共に、経路計算部5a、経路情報積算部5b、地図表示/経路表示制御部5cと、経路案内部5dを備えて構成されている。
ここで、経路計算部5aは、経路情報受信部1で取得した他車の経路情報を回避するように現在位置から目的地または経由地までの経路を計算することができるように構成されている。経路情報積算部5bは、経路計算部5aで検索された経路と経路情報受信部1で
取得した経路情報を重ね合わせた経路を作成することができるように構成されている。基本的には、経路計算部5aは、経路情報受信部1で取得した経路情報を回避するように経路を計算しているため、同じ経路が重複することが無いように構成されている。地図表示/経路表示制御部5cは、表示部2で表示する地図や画像を制御することができるように構成されている。経路案内部5dは、経路計算部5aで計算した経路を自車位置検出部6で検出される現在位置に応じて目的地または経由地までの経路を経路案内することができるように構成されている。
【0025】
自車位置検出部6は、GPS受信部及び自立航法ユニットを備えて構成されており、GPSは、GPS(Global Positioning System)に代表される測位システムに収容される人工衛星からの電波を受信して、移動体の現在位置を示す位置情報を出力することができるように構成されている。
【0026】
入力部7は、例えばタッチパネルやリモートコントローラのように、経路情報計算装置Nに対して使用者による操作やデータ入力のために使うことができるように構成されている。なお、表示部2の表面に入力部7を設け、表示部2に表示される項目を押圧して選択するようなタッチパネル式にしてもよい。
【0027】
記憶部8は、一般的にはHDD(ハードディスクドライブ)に代表される記録媒体であり、この記憶媒体にはナビゲーションに必要な地図データ8aと、本経路情報計算装置Nの動作を規定するコンピュータプログラムが保存されたプログラムROM8bと、本経路情報計算装置Nの構成各部から転送されてくる情報を格納することができると共に必要に応じて情報を消去することができるように構成されたRAM8cを備えて構成されている。
【0028】
バスライン9は、本経路情報計算装置Nを構成する各部を通信可能に接続することができるように構成されている。
【0029】
次にこのように構成された経路情報計算装置Nの動作について図面を用いて詳細に説明する。図2は、第1の実施の形態における経路情報計算装置の動作を示すフローチャートである。
図2に示すように経路情報計算装置Nは、経路情報計算装置Nを搭載している自車よりも前方を走行している車両から経路情報を受信・取得する(S1)。S1において自車よりも前方の車両から経路情報を受信すると、ナビゲーション装置Nを搭載している自車の目的地または経由地を設定するか否かを入力部7の入力に対して制御部5が判断し(S2)、S2において目的地または経由地を設定すると制御部2が判断すると(S2、YES)、自車位置検出部6を用いて自車位置を検出する(S3)。S3において自車位置を検出した後、他車から受信した経路情報を除く(回避する)現在位置から目的地または経由地までの経路に関して経路計算部5aを用いて経路計算を行う(S4)。S4で経路計算を行った後、計算された経路に関して経路案内部5dを用いて経路案内を行う(S5)。そしてS4で経路計算した経路とS1で取得した他車の経路情報を経路情報積算部5bで積算して新たな経路情報を作成する(S6)。S6で作成された新たな経路情報を自車よりも後方にいる車両に対して経路情報送信部4から送信する(S7)。なお、S2においてナビゲーション装置Nに対して目的地または経由地が設定されなかったと制御部2が判断したときには(S2、NO)、S1で取得した自車よりも前方の車両の経路情報を自車よりも後方にいる他車に対して送信する(S7)。なお、経路情報とは、経路をはじめ、位置情報、時間情報、道路に対する進行方向等の情報が含まれており、これらの情報を用いて自車に対して前方の車両からの情報か後方の車両からの情報かを判別することができる。
【0030】
このように構成された本発明の第1の実施の形態における経路情報計算装置Nは、自車よりも前方の車両から取得した経路情報を用いて、自車が目的地または経由地まで経路計算する際に取得した経路情報にある経路を回避するように現在位置から目的地または経由地まで経路計算を行って経路案内すると共に、自車よりも前方の車両から取得した経路と自車が経路計算した経路を重ねて新たな経路情報として自車よりも後方の車両に送信するようにしているので、同じ目的地または経由地へ向かう車両や同じ方向にある他の目的地または経由地に向かう車両によって生じる同じ道路に車両が集中することを防止することができ、道路に車両が一極集中することによって生じる新たな渋滞の発生を防止することができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、第2の実施の形態の構成は、第1の実施の形態と同様であり詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態においては、自車よりも前方の車両から経路情報を取得した時の処理について記載したが、第2の実施の形態においては、自車よりも前方の車両から経路情報を取得しなかったときの処理、自車が目的地または経由地を設定してない状態での処理(経路案内しない場合)についてフローチャートを用いて説明する。
【0032】
第2の実施の形態における経路情報計算装置Nの動作について図面を用いて詳細に説明する。図3は、第2の実施の形態における経路情報計算装置の動作を示すフローチャートである。
【0033】
図3に示すように経路情報計算装置Nは、経路情報計算装置Nを搭載している自車よりも前方を走行している車両から経路情報を受信・取得する(S10)。このときに自車よりも前方の車両から経路情報を受信できたか否かを判定し(S11)、S11において経路情報を受信した場合には(S11、YES)、自車の目的地または経由地を設定するか否かを入力部7の入力から制御部5が判断し(S12)、S12において目的地または経由地を設定すると判断されると(S12、YES)、自車位置検出部6を用いて自車位置を検出する(S13)。S13において自車位置を検出した後、他車から受信した経路情報を除く現在位置から目的地または経由地までの経路を経路計算部5aで経路計算を行う(S14)。S14で経路計算を行った後、計算された経路に関して経路案内部5dを用いて経路案内を行う(S15)。そしてS14で経路計算した経路とS10で取得した他車の経路情報を経路情報積算部5bで積算して新たな経路情報を作成する(S16)。S16で作成された新たな経路情報を自車よりも後方にいる車両に対して経路情報送信部4から送信する(S17)。
【0034】
また、S11において、他車から経路情報を受信していない場合には(S11、NO)、経路情報計算装置Nで目的地または経由地を設定するか否かを確認し(S19)、S19において目的地または経由地が設定されると(S19、YES)、自車位置を検出し(S20)、自車位置から目的地または経由地までの経路を経路計算部5aで計算する(S21)。S21で計算された経路に対して経路案内部5dを用いて表示部2や音声出力部3を用いて経路案内を行う(S22)。S22で経路案内を開始すると共に、経路情報送信部4から自車よりも後方の車両に自車の経路情報を送信する(S23)。
また、S12において目的地または経由地が設定されていない・設定しないと判断された場合には(SS12、NO)、自車よりも前方の車両から取得した経路情報を経路情報送信部4から自車よりも後方の車両に送信する(S18)。
【0035】
このように構成された本発明の第2の実施の形態における経路情報計算装置Nは、自車よりも前方にいる車両から経路情報を取得し自車で目的地または経由地を設定すると、取得した経路情報を回避して現在位置から目的地または経由地までの経路を計算し、計算さ
れた経路を案内することができる。また、計算された経路を自車よりも後方の車両に対して送信するように構成することで、同じ経路や道路に車両が一極集中することを自動的に避けることができ、新たな渋滞発生を防止することができる。
【0036】
次に、第1の実施の形態及び第2の実施の形態に関して図面を用いて説明したが、具体的にどのように経路情報の伝達を行うのかに関して図面を用いて説明する。
図4は、(a)は経路情報の伝達を示すフローチャートであり、(b)は、経路情報の伝達を示す模式図である。
【0037】
図4(a)に示すように、第1の実施の形態又は第2の実施の形態に示す経路情報計算装置Nを備えた各車両は、図4(a)に示すように、各車両において自車よりも前方の車両から取得した経路情報を用いて取得した経路を回避するように経路計算を行い、経路計算した経路と取得した経路を重ね合わせて新たな経路情報として他車に送信することを行うように構成されており、図4(a)では、自車の前方の車両(S30)から送信された経路情報を自車が取得し、取得した経路情報を用いて前記処理を行い、新たな経路情報を自車の後方の車両に送信し(S31)、S31から送信された経路情報を受信した自車よりも後方の車両が処理を行うように構成されている(S32)。
【0038】
つまり図4(b)に示すように、他車M1は他車M1よりも前方の車両から経路情報を取得し、その経路情報を回避するように経路計算を行って、計算された経路と取得した経路情報を重ね合わせた新たな経路情報を他車M1の経路情報をとして自車Mに送信する。自車Mは他車M1から取得した経路情報を回避するように経路計算を行って、計算された経路と取得した経路情報を重ね合わせた新たな経路情報を他車M2に送信するように構成されている。
【0039】
このように、経路情報を順々に伝達していくことができるので、他車が走行する経路を回避した経路計算を行うことができ、同じ道路や経路に車両が集中することで生じる新たな渋滞の発生を防止することができる。
【0040】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、第1の実施の形態で示した経路情報計算装置Nの構成は同じであり詳細な説明は省略する。第3の実施の形態では、経路情報に送信した車両のIDが付与されているものとして説明する。
図5は、図3で示したフローチャートにおけるID情報処理の動作を示すフローチャートである。図6(a)、(b)は、図3で示したフローチャートにおける経路情報にIDを付与する処理を示すフローチャートである。
【0041】
本発明の第3の実施の形態の経路情報計算装置Nは、図5に示すように図3で示したフローチャートにおけるS11とS12の間にID情報処理S40を設けたものである。
なお、この経路情報のIDとは車両の位置情報、進行方向、時間、情報送信時間等で構成されている。
本発明の第3の実施の形態の経路情報計算装置Nは、経路情報計算装置Nを搭載している自車よりも前方を走行している車両から経路情報を受信・取得する(S10)。このときに自車よりも前方の車両から経路情報を受信できたか否かを判定し(S11)、S11において経路情報を受信した場合には(S11、YES)、受信した経路情報に対してID情報処理を行う(S40)。
【0042】
ここでID情報処理S40の処理について図面を用いて説明する。
図5に示すように、ID情報処理S40は、S11で取得した経路情報の中に車両を識別するIDが付与されているか否かを判定する(S41)。S41において経路情報にID
が付与されていると(S41、YES)、過去に取得したID、または、自車のIDと照合を行う(S42)。なお、過去に経路情報に付与されていたIDは経路情報を取得した際に記憶部8に保存されるように構成されている。また、自車のIDは分かっている。S42において記憶部8に保存されているIDを取得した経路情報に付与しているIDとの比較を行い、IDが同じであると判断すると(S43、NO)、取得した経路情報は過去に取得した経路情報と同じであると判断して取得した経路情報を破棄し、また、自車のIDが含まれた経路情報であれば、自車が送信した経路情報が直接または後方の車両を経由して回り込んで受信したものとして、同様に破棄する(S44)。また、S43においてIDが異なっていると制御部2が判断すると、取得した経路情報を用いてS12に戻り処理を続けて行う。また、S41において経路情報にIDが付与されていないと制御部2が判断すると(S41、NO)、記憶部8に記憶された情報とは異なると判断してS12に戻り処理を続けて行う。
【0043】
S12において経路情報計算装置Nに対して自車の目的地または経由地を設定するか否かを入力部7の入力から制御部5が判断し(S12)、S12において目的地または経由地を設定すると判断されると(S12、YES)、自車位置検出部6を用いて自車位置を検出する(S13)。S13において自車位置を検出した後、他車から受信した経路情報を除く現在位置から目的地または経由地までの経路を経路計算部5aで経路計算を行う(S14)。S14で経路計算を行った後、計算された経路に関して経路案内部5dを用いて経路案内を行う(S15)。S14で計算した自車の経路に、自車のIDを付与する(S50)。そしてS14で経路計算した経路とS10で取得した他車の経路情報を経路情報積算部5bで積算して新たな経路情報を作成する(S16)。S16で経路情報を作成した後、自車よりも後方にいる車両に対して経路情報送信部4から送信する(S17)。
【0044】
また、S11において、他車から経路情報を受信していない場合には(S11、NO)、経路情報計算装置Nで目的地または経由地を設定するか否かを確認し(S19)、S19において目的地または経由地が設定されると(S19、YES)、自車位置を検出し(S20)、自車位置から目的地または経由地までの経路を経路計算部5aで計算する(S21)。S21で計算された経路に対して経路案内部5dを用いて表示部2や音声出力部3を用いて経路案内を行う(S22)。S21で計算した自車の経路に、自車のIDを付与する(S50)。S50において経路情報に対してIDを付与した後、経路情報送信部4から自車よりも後方の車両に自車の経路情報を送信する(S23)。
また、S12において目的地または経由地が設定されていない・設定しないと判断された場合には(S12、NO)、自車の前方の車両から取得した経路情報を経路情報送信部4から送信する(S18)。
【0045】
このように構成された第3の実施の形態の経路情報計算装置Nによれば、図5に示したように、取得した経路情報にIDが付与しているか否か、および、付与されているIDが記憶部8に記憶されている過去に取得した経路情報のIDと比較し、同じIDが記憶部8に保存されているときは同じ経路情報だと判断して情報を破棄し、異なるIDのときは新しい経路情報であると判断して処理を行うことができる。また、図6に示したように自車の経路に固有のIDを付与して自車よりも後方の車両に送信するように構成しているので、経路情報を取得した車両は、回り込んで受信した後方の車両の経路情報なのか、前方の車両からの経路情報なのかを、IDから判別することができる。
【0046】
また、自車から後方の車両に向けて送信した経路情報が回り込んで自車よりも前方の車両が受信した場合でも、ID情報に含まれる時刻情報や位置情報等の詳細情報を比較することで有効な経路情報なのか否かを判断することができる。また、前方の車両から経路情報を受信しなかった場合でも(S11)、自車の経路情報計算装置Nで目的地または経由地を設定して現在位置から目的地または経由地までの経路計算した結果を経路情報として
後方の車両に送信することができ、送信する際に図6(b)に示すように経路情報にIDを付与して送信することができるように構成することで、経路情報に付与されたIDの詳細情報用いて取得した経路情報が新しい情報なのか古い情報なのか(正しい情報なのか間違っている情報なのか)判断することができる。
【0047】
第3の実施の形態の動作について、図面を用いて簡単に説明する。図7は、第3の実施の形態の動作を示す模式図である。第3の実施の形態の動作については、例えば、図7に示すように、他車M1から自車MにIDが付与された経路情報が送信されると、取得した自車Mがその経路情報を回避するように経路計算を行い、経路計算された経路と受信した経路情報をあわせて新たなIDが付与された経路情報を作成し、作成された経路情報を他車M2に送信することができる。経路情報を取得した他車M2は、自車Mと同様の処理を行い、他車M2の後方の車両に経路情報を送信することができる。また、図7に示すように、自車M1から他車M2に対して経路情報が送信されると共に他車M1から他車M2に経路情報が送信された場合、経路情報に含まれる詳細情報を比較することで、他車M2に有効な経路情報がどれなのか自動的に判断することができる。なお、図7の場合では、他車M2が受信した他車M1の経路情報には自車Mの情報が入っておらず、自車Mから取得した経路情報の方が、IDや経路情報に付与されている位置情報と自車位置とを比較することで近いことが自動的に判断することができるように構成されている。
【0048】
以上より、第1の実施の形態から第3の実施の形態を用いて本発明の経路情報計算装置について説明したが、本発明は、自車よりも前方の車両の経路を参照しながら、個々の車両による最適な経路計算を行わせ、この経路計算結果も含めて後続する車両に経路情報を伝播させ、これを通じて社会全体の交通流の一極集中を避けて分散化・平滑化を行い、ひいては渋滞の発生を未然に防止し、さらには交通渋滞に伴う社会全体の経済損失を低減し、また、安心かつ安全で快適なドライブを実現することを、目的とするものである。また、第1の実施の形態から第3の実施の形態を用いて本発明の経路情報計算装置について説明したが本発明を限定するものではなく種々の変更を行っても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の経路情報計算装置は、カーナビゲーションシステムをはじめとする、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)関連の、経路計算・経路案内に関する機能、および、交通管理の最適化(交通流分散・交通流制御)の機能のための技術として、きわめて有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 経路情報受信部
1a 受信用空中戦/受光素子
1b 復調回路/検波回路
2 表示部
3 音声出力部
4 経路情報送信部
4a 送信用空中戦/発光素子
4b 変調回路
5 制御部
5a 経路計算部
5b 経路情報積算部
5c 地図表示/経路表示制御部
5d 経路案内部
6 自車位置検出部
7 入力部
8 記憶部
8a 地図データ
8b プログラムROM
8c RAM
9 バスライン
N 経路情報計算装置
M 自車
M1 他車
M2 他車


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他車の経路情報を受信する経路情報受信手段と、
自車の現在の位置を検出する自車位置検出手段と、
前記経路情報受信手段で受信した他車の経路情報を回避するように前記自車の目的地または経由地までの経路を計算する自車経路計算手段と、
前記経路情報受信手段により受信した他車の経路情報に前記自車経路計算手段により計算した自車の経路を重ね合わせる経路情報積算手段と、
前記経路情報積算手段で重ね合わされた他車および自車の経路を新たな経路情報として送信する経路情報送信手段と、
を有することを特徴とする経路情報計算装置。
【請求項2】
前記経路情報受信手段は、前記他車の経路情報に含まれる管理IDを検出する管理ID検出手段を備え、
前記経路情報送信手段は、経路情報を送信する際に前記管理ID管理検出手段で検出した管理IDとは異なる新たな管理IDを付与する管理ID付与手段を備えることを特徴する請求項1に記載の経路情報計算装置。
【請求項3】
前記自車経路計算手段により得られた自車の経路を表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の経路情報計算装置。
【請求項4】
前記自車経路計算手段により得られた経路に従って自車を案内する経路案内手段を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の経路情報計算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209171(P2011−209171A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78429(P2010−78429)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】